カンブリア爆発(Cambrian explosion)
古生代カンブリア紀、およそ5億4200万年前から5億3000万年前の間に突如として
今日見られる動物の「門(生物の体制)」が出そろった現象であるとされる。
カンブリア大爆発と呼ばれる事もある。
A.D 2008
米国が京都議定書を正式に批准すると発表。
数値目標は他の国を大幅に超える14%とし、国策としてバイオエタノールや水素のインフラを10年以内にガソリンと同等以上のレベルまで引き上げる事を明示。
これに追随するようにユーロ圏でも数値目標の引き上げを行った結果、世界の温室効果ガス排出量は議定書発効時の85%にまで削減される事になる。
A.D 2015
世界でのSS(ガソリンスタンド)において、三年以内の水素供給及び電源供給が義務付けられる。またトヨタ自動車を中心とした各国の自動車メーカーは省エネ基準を達していないガソリン車の販売を禁止。
石油及び天然ガス採取は三年後までに半分以下にする事もその年のサミットで採択され、オイルマネーに不安感が広がり一時的に世界の株価が急落。
その後石油をはじめとする電力、ガスなどエネルギー会社が相次いで合併を発表。
A.D. 2017
目標より一年ほど早く米国が数値目標を達成。
全世界での所持率はいまだ30%を下回るものの水素及びバイオエタノール対応の新車販売台数がガソリン車を上回る。
環境保護団体が世界中でテロまがいのデモを繰り返す。
A.D 2044
鉄鋼など一部の製造業を除き全世界での化石燃料使用量が大幅に制限される。
OPECで生産量も毎月日量5万バレルずつ減らしていく事に合意。
北極の氷の融解が前年度を初めて下回る。
南極が今までの最低気温の記録を更新し氷点下100度を下回る。
……そして西暦2468年。
調査を終え、シャワーを浴びて自室に戻った灯(あかり)はベッドに倒れこんだ。
外の風が壁を揺らし軋ませ音を立てる。
この壁一枚隔てた向こう側には、今の自分の服装ではおそらく5分と生きていられない世界があるのだと思うと、自分たちを守ってくれているこの建物がものすごく心もとなくなってしまう。
彼がこのプロジェクト ―通称NCExp― を担当する事になってもう8年。それはこの南極の観測所に彼が初めて来たのと同じ時間だ。
京都議定書、なんて言葉をもう全世界で彼を含む何人が知っているだろう。
当時は環境問題を取り扱う事が世界中で流行し、北極の氷が溶け出し白熊が取り残されるなんて映画まであったそうだが今……世界の平均気温が当時より20度も下がった現在となってはもう笑い話にしかならない。
それまで人間が過ごしてきた間氷期、いわゆる氷河期と氷河期の間はもう当時から緩やかだが着実に終焉を迎えていたのだ。
それなのに人間は温室効果ガスを削減する事に躍起になった。
そのツケがこの氷河期の到来。……とほとんどの人間が教科書にあるとおりに思っていたし、彼も8年前まではそんな人間だった。
このNCExp −正式名称:Neo Cambrian Explosion―に携わるまでは。 |