危惧していた部分を全て払拭させてくれていた「鎌足」。
主役はもちろんのこと、脇を固める役者陣が素晴らしく、その諸先輩の中で身体を張って鎌足を演じてるDECOがすごく大きく見えた。主役、脇との括りなしで、誰一人欠けても成り立たない作品に仕上がっていたのは、DECOだけでなく個々の作品に対する思いが強かったからだろう。そう、エキストラの一人一人までもが主役として存在していたように見えた。
前後半にわたる鎌足の変化も見事で、後半は圧巻、DECOの影の欠片もなく鎌足にしか見えなくなっていたのはさすが。いつも「失敗したら次はない」との崖っぷち状態で臨んでいるのが痛いくらい伝わってくる演技は鬼気迫るものがあり、演技を突き抜けた演技、全身全霊入り込んだゆえ素の感情が引き起こした計算できなかった芝居に驚愕した。これこそ役者の醍醐味っていうんじゃないのかな。芝居に入る前は考えるけど、入ってしまったらその場の空気と相手で芝居すると言ってたけど、まさにそうなんだと思わせてくれる芝居を見せてくれた。未熟な部分もあったけど、それがこの先どれほどの存在感のある芝居になるのかと期待が膨らむ作品だった。
今まで「賭けた作品」という言葉を聞くのは作品を選んでいるような気がしてあまり好きじゃなかったんだけど、今回初めてDECOの言うところの「賭ける」という意味が分かったような気がした。ベテラン役者の力を借りて、また一回り大きくなれたDECO、宝物もこうやって一つづつ増えていくことだろう。
目の当たりにこういう作品を見ると、好きな芝居をどんどんさせてあげたくなってくる。生粋の「役者魂」を持って生まれてきたんじゃないかと思うほど。DECOの役者の心髄をまざまざと見せ付けられた気がした。
DECOと鎌足が共存しているのではないかと思わせるシーンも多々あり、見応えは大。できれば出切る限り大画面、HD(高精細度、敢えてハイビジョンとは言わない)で見て頂きたい。525インチでのHD、5.1chサラウンドはその作品のスケールをさらに引き伸ばしていて、まさに大作というに相応しい作品に押し上げていた。(特に自分は525インチでの上映というのに惹かれて見に行ったようなもの)
役者であるには感情の柔軟性、素直さが絶対的に必要なんだなとDECOを見て感じた。
23歳、まだまだこれから。 |