一年前の夏休み、私の誕生日だったかにロッポンギヒルズのTokyo city viewとかいう展望エリアで彼氏と一時間くらい、ぼーっと外をみていた。
それは夕方から夜に変わる時間で、街が薄暗くなり、ライトが目に余るくらいの主張を始めるときだった。東京は、この時間帯が一番好き。
居酒屋の看板が点灯する瞬間にはちあい、薄暗い中、渋滞の道路をノロノロ走る車にノロノロついてまわるライトを目で追う。昼と夜のグラデーションの真ん中。
それを上からずっと眺めていた。六本木通りの車の渋滞ははげしく、ライトが列になってゆらゆら動いていた。それを私はナウシカのオームの群れみたいだね、と例えてしまって、それを聞いた彼は、オレも同じことかんがえてた!とかいいながら笑っていた。
トーキョーとニューヨークは違う。昨日までここに滞在していた彼は、東京も飽きてきたし、ニューヨークに住みたいなという。私は逆に、ニューヨークに滞在すればするほど東京が恋しくなる。
ニューヨークみたいに画一的な道路の構造を持たない曲がりくねったトーキョーの道路。湿度に後押しされて現れるゆらゆらした空気と微妙な寒さ。そして、ニューヨークよりも一段と明るい東京の夜。
ニューヨークの夜は思ったほど主張をしない。タイムズスクエアみたいなどきつい広告が張り巡らされているエリアは別だけれども。夜になると繁華街の道は昼から一転して暗闇が広がる。
昼の終わりは、空が暗くなると同時に訪れてしまうのが分かるニューヨーク。The city never sleeps,確かに眠らないけれども、昼と夜の境目がハッキリしている。東京は、空が暗くなるかわりに、ライトが人を照らし続けてくれる。
東京の曖昧さが懐かしい。曲がりくねった道も、微妙な冬も、昼から夜に変わる瞬間が存在しない曖昧さも。
ニューヨークの街は全てがall or nothing,黒か白かで構成されている。ハッキリした美しさを持つ街なのだろう。対するハッキリしない美しさ、というものを持っている街があるとしたらそれは多分東京なんじゃないかと思う。
50階ほどの高さから見た車の渋滞は、時にはすす、と動き、時には全く動かなく見えて、不安定に動くライトが曖昧に残像を残していたのを覚えている。確かに私はそれに魅入られていた。 |