28日に、事故をおこしたみたいだ。
気が付いたら、騒がしい病院だった。看護婦の、点滴が何とかとか何番ベッドがなんとかとか、声と足音が響いていた。ベッドとベッドを区切るカーテンと、その上にある蛍光灯がとってもまぶしかった。寝そべりながら手をあげてみる。光に反射されて逆光気味の右手には包帯が巻かれていた。
何があったのだろうと通った看護婦に声をかけた。事故で、救急車に運ばれたんですよ、といわれた。ああ、そうなのか、それだけ思ってまた眠りについた。その直前、ちょっとした不安を持っていることに気づいた。自分はどうしたんだろう。なんでここにいるんだろう。まったく、思い出せない。
目がさめたらベッドサイドに彼がいた。疲れ気味の目はいつ会っても変わらない。知っている人がそばにいる、それだけで安心した。安心したら、全身にあるキズの痛みに初めて気づいた。
事故の直後だか、私は彼に電話を何回もかけていたらしい。「消え入りそうな声で、顔に血が出てるんだけど、なんでこうなったかわからない、といっていた」らしい。すぐに彼は駆けつけてきて、彼が救急車を呼んだそうだ。夜の11時過ぎのことだったと、後に見る携帯の履歴で知った。私からの発信履歴、彼からの着信履歴、そして彼からの、「もう少しでつくからまってて」というメール。
朝まで、病院の待合室のソファで寝ていたらしい彼は、明らかに睡眠不足そうだった。「心配したんだよ」と私の目を見て言った。「とても心配した」。そして、私の横で目を閉じたあとすぐ寝息を立てた。CTを待つ病院の廊下、硬くてすわり心地の悪い待合用の椅子。彼は、こんな狭くて硬い椅子の上で、一夜を明かした。
閉じた目のした、クマが深い。彼を見ながらはじめておもった、
生きててよかった |