2001-07-03 友、遠方より来たる。
2001-06-30 走る酔人、大ピンチ
2001-06-24 スペイン・ポルトガル報告３５「行き先は風に訊いてくれ」
2001-06-16 スペイン・ポルトガル報告３４「グエル公園決死の彷徨」
2001-05-28 スペイン・ポルトガル報告３３「サン・ジュセップ市場　魚屋篇」
2001-05-26 スペイン・ポルトガル報告３２「サン・ジュセップ市場　肉屋篇」
2001-05-20 スペイン・ポルトガル報告３１「住宅事情」
2001-05-17 スペイン、ポルトガル報告３０「パンはポルトガル語でもパン」
2001-05-16 スペイン・ポルトガル報告２９「私はもひとつ胃が欲しい」
2001-05-12 スペイン、ポルトガル報告２８「バルセロナのキワモノ」

今週から３週間、メキシコ人とアメリカ人を相手に仕事をしている。
そのアメリカ人Ｍ氏とはもう１３年の付き合いになるのだが、
約２年毎に来日しているため、聞きかじった妙な関西弁を話すのだ。

私「How are you　doing?」
Ｍ氏「あきまへーん」
私「How is your business going?」
Ｍ氏「ぼちぼちでんなー」
と言った具合である。

コンピューターに向かってたびたび
「さっぱりわえや」とか「ＯＨ！やってしもたー」
と独り言を言っている。

彼と会うたびに私は１０数年前のあの悪夢のような出来事を思い出すのである。

その日我々２人は大阪空港から成田へ飛び、ニューヨーク行きの飛行機を待っていた。
トランジットタイムは４時間以上あり、自販機とトイレしかない狭いスペースで
我々はヒマを持て余していた。
搭乗時間が迫ってくると我々の周りにフライト待ちの人たちがどんどん増えてきた。

その時Ｍ氏は何を思ったかいきなり大声で「チチ、モミモミ〜〜」と叫んだのである。
一斉に周りの人たちが私たちの方を見る。
そこに立っているのはアメリカ人と日本人。
普通に考えてアメリカ人が日本語でそんなこと言うわけないから全ての疑いは私にかけられる。
私を見る冷たい目！目！目！
そんな事態を収拾する術を持たない私は「いつかこいつに仕返ししてやる」と固く心に誓うのが精一杯なのであった。

先頭 表紙

昨日の飲み会でちょっと飲みすぎたため、きょうは軽い二日酔い。
しかしジョギングは欠かすわけには行かない。

じとーーっとした空気が体にまとわりつき、すぐに汗が吹き出してくる。
走る前に水分は補給しているが、のどもすぐ乾く。やはり昨日のアルコールのせいであろう。
いつもは１時間ほど走ったところの自販機でスポーツドリンクを買って給水するのだが、今日は少し早い目に給水しようか。・・・まあもう少し我慢しよう。
漸く遠くの方にヨットハーバーが見えてくる。その近くにいつもの自販機があるのだ。
うう・・・のど乾いた。

自動販売機にやっとたどり着いてランニングパンツのポケットを探る。
いつもは１２０円ちょうど持って走るのだが、今日は２０円がなかったので１００円硬貨が２枚入っている・・・・・・あれ・・・・いやな予感。
２枚のうちの一枚が軽い。・・・まさか・・・。
手のひらに載せてみる。１０１円である。間違えて１円玉もってきてしまった。
どっからみても１０１円。ひゃくいちえん。百一円。ヒャクイチエン。ワンハンドレッド＆ワンyen.
自販機の前では全くの無力である。
自販機に「すんまへんなあ、今日はこんだけしか持ってきてまへんのや。ちょっとまけといてえなぁ。ええやろ？いつもこうたってるし。」と言っても通じるわけがない。

手のひらの上の１円玉をじっと見る。「なんでおまえ１円玉なんや。ほんまに役立たずやのう。」製造コスト２円でありながら流通価値たったの１円の間抜けな奴なのだ。
「１円を笑うものは１円に泣く」なんてもう信じない。
明日からは「１円を笑う門には福来たる」でいってやる。
たとえここに「中途半端に親切な人」が足りない１９円をくれたとしても、１円玉が入っている限り私の喉を潤してくれることはない。

私はまた走り始めた。給水できなかった私の精神的ダメージは大きくわたしは「へなちょこくん」になってふらふら走っているうちにビーチへ出た。いつもは海風が気持いい砂浜も今日の私にとっては砂漠である。

２ｋｍ程さらに走ってやっとカップ入り１００えんドリンクを見つけた時は、オアシスに辿り着いた砂漠の旅人の心境であった。

先頭 表紙

ミロの美術館で作品を見終わった充実感と軽い疲れを感じつつカフェでビールを飲む。
空気が乾燥しているので冷たいビールがまことに旨い。体全体にじゅわじゅわーとしみわたっていくのだ。

私は行き当たりばったりでその日の気分と天気しだいで行く場所を決めることが多い。
その日もビールを飲みながら地図とにらめっこしてその日の予定を決めていた。

目的地が決まって歩いていても、気持よさそうな芝生が目につくと、急遽予定を変更してごろごろ寝転がっているうちにうたた寝してしまうこともよくあるから、まあそこらへんの猫とやってることはあまり変らない。

先頭 表紙

その日私はガウディの設計で有名な「グエル公園」へ行こうと地下鉄を乗り継ぎ、最寄の駅で降りた。
最寄の駅といっても相当歩かなければならないようである。
ときおり立ち止まって、地図で確認しながら漸く《グエル公園あっち⇒》という標識のあるところまできた。ここまで来ればひと安心である。もう道に迷うこともあるまい。
その日は2月とは思えないほどやわらかな日差しが降り注ぎ、半袖のＴシャツ1枚になって目的地を目指した。
瀟洒な住宅地を抜けると舗装路もなくなり丘の上の市内が一望できる展望場所に出た。
私はさらに奥に向かって歩みを進めていった。
確かにそこは公園のようなところであるが、ガイドブックで見たようなガウディの作品がひとつもない。標識もそこにはなくどちらに向いて歩いて行っていいかもわからない。
その時遠くから子供の泣き声が聞こえてきた。親とはぐれた迷子のようである。私も一緒になって泣きたい気分であったが、大人は泣いてはいけないのである。大人が泣いていいのは冷蔵庫を開けてビールを冷やし忘れたのに気づいた時だけである。しばらくすると迷子の子も親が見つかりよかったよかったという状況であるが私の状況はまったく「よくない」ままであった。
人に聞けばいいのであろうが、「グエル公園はどこですか？」と聞けば「ここです」という返事が返ってくるであろう。多分私はすでにグエル公園内にいるのである。
そうしたらなんと尋ねればいいのだろう。
「私は何処へ行けばいいのですか？」明らかにこれはおかしい。
「私は何処へ行きたいのですか？」ますますおかしい。これでは英語の苦手な中学生の英作文である。
「私が昨日ガイドブックでみた写真はどっちの方向ですか？」相手は超能力者か！

私はひとに道を聞くのも諦め山道をどんどん歩いて行った。
周りに人は全くいなくなった。道も細くなり足もとの草の背も高くなってきた。
おまけに腹も減ってきた。これじゃグエル公園でなくてウエル公園である。
「うう。このままでは遭難してしまう。」
5日後に衰弱しきった私が発見され朦朧とした意識の中で「わ、私の行く場所は・・・どこです・・か？」と言うのである。
間違いなくあなたの行く場所は病院だ。


丘を反対側に回りこんで降りていくとやっと観光者らしい人が増え、ガイドブック
で見たガウディの作品群にも出会え、私はやっと「わたしの行きたい場所」へたどり着いたのである。

先頭 表紙

肉屋に引き続いて魚屋である。
スペイン、ポルトガル人は肉のみならず魚介類も大好物である。

魚屋を覗いてみると日本で見たこともないような魚や、同じ種類でも日本のものとは顔つきの違うのや、サイズが全然違うのにお目にかかることができる。

前回ポルトガルを訪れた時に入った魚屋で巨大な太刀魚を見て腰を抜かしそうになったことがある。
目ン玉なんかピンポン玉くらいあり、胴体も一抱えもありそうな大きさで、手足をつければワニとしてでも立派にやっていくことができるのではないかと思ったほどである。

先頭 表紙

わたしは旅先で楽しみにしていることのひとつに、市場を訪ねるということがある。
特に海外ではいろんなものに出会える確率が高い。
それに商品のレイアウトひとつとってみても日本人の感覚とまったく違ってるので面白い。

ここはバルセロナの中心にあるサン・ジュセップ市場。

肉屋では大きな肉やハムの塊を吊るして売っている。日本とは売る重さの単位も違うようだ。
日本であれば計量器の上に載せたミンチを少しずつ削ったり載せたりしながら、店員と客が鋭い視線でデジタル表示を見つめ、１ｇでも違おうものなら肉切り包丁とみりんの瓶を手に戦いが始まるような緊迫感があるのだが、ここではもっと大雑把で大らかなようである。

しかしどちらがいいかっていうのは別問題で、日本人の国民性や販売時の緊迫感が、日本の計量器の技術を世界のトップまで押し上げたのかも知れない。いやほんと。

先頭 表紙

バルセロナ/ランブラス通りでは実に様々なものを売っている。
その中でも特に目を引くのは鳥類専門のペットショップ（街頭販売）。
インコやオウムはよくあるがニワトリまである。
それごときで驚いてはいけない。なんと孔雀まで売っているのだ。
売るほうも売るほうだが、買い手があるから置いているのであろう。

孔雀を飼うくらいの人の庭はやっぱり広大なんだろうな。

日本で孔雀なんか飼おうもんなら、羽根を広げたとたんに
日照権の侵害で訴えられてしまう。

先頭 表紙

ポルトガルのポルトにあるレストランで出てきたパンなのである。
ポルトガルのパンはかたくてずっしりしているものが多い。
味はたいていかすかな塩味がするだけなのだが、噛めば噛むほど素材の味がでてきてとても旨いのである。
　
むこう側の黒っぽいパンはとうもろこしパンでしっとりずっしり密度がとても高い。
これが私的には大ヒットで、ポルトのそれもごく限られた地域でしか手に入らないらしいのだが、これとオリーブとチーズを齧りながらワインを飲んでると、涙がじわーと出てくるほど感動的な旨さであった。

ふと思い出したのだがラ・フォンテーヌ寓話かなにかで
「この老夫婦はとても貧乏で食事にパンと少しのチーズとワインしか買うお金がありませんでした。」というくだりを読んで、こども心に「毎日パンとチーズを食ってワインまで飲んで何が貧乏やねん」と不思議に思っていた。
この歳になってやっとわかった。それがメインディッシュが買えない比喩であったことを。

なにはともあれポルトガルのパンは質実剛健（今や日本では消滅しつつある概念だが）なのである。

先頭 表紙

ポルトガル人の昼飯にまともに付きあっていたら胃がいくつあっても足りない。

胃がひとつしかないというハンディを「食意地」という私の最大の武器で補って、
ポルトガル人と対等の勝負をしてきたのであるが、物事にはやはり限界というものがある。夕食まで毎日付き合っていたら間違いなく帰りのフライトでオーバーウエイト料金を徴収されるであろう。

夜仕事が終わって一人になった私は、いつも軽い目の食事で十分であったので、
ホテルの隣のスーパーで胃にもたれない程度の量り売りのお惣菜を買ってきて、安くて旨いワインとビールで軽く夕食を済ますということが常であった。

この日はシーフードのサラダと、エビのマリネ、それにオリーブをつまみに赤ワインとスーパーボックという私好みのビールなのである。

うーんしあわせ。

先頭 表紙

バルセロナでわたしが泊まっていたすぐ近くの地下鉄駅「マリア　クリスティナ」入り口に貼ってあったポスターなのだが、広告主不明、広告対象不明（私にだけわからないのかもしれないが）、妙な居心地のワルさとインパクトだけあるのである。

いつも地下鉄に乗るたびにわたしは頭の上にいっぱい「？？？」マークをつけたまま階段を駆け下りていた。

何の広告だったのか今でも気になる。

先頭 表紙