2006-01-29 コーヒー
2006-01-08 検証(食品考古学）
2005-12-18 忘れ物
2005-12-09 もひとつお裾分け
2005-11-26 お裾分け
2005-10-30 秋を感じるとき
2005-05-25 スリランカ報告１　「スリランカ交通事情」
2005-04-24 人口問題
2005-03-06 香港中国報告５「中国ホテル事情　その1」
2005-01-30 香港中国報告４「中国までの遥かなる道　　その２」

昨日の話である。
大阪へ行くために特急に乗った。発車前に自販機で紙コップのコーヒーを買って
車内に持ち込んだ。
コップを前席の背もたれに取りつけられているホルダーに置き、上着を脱ぎ、
シートを少しリクライニングさせた。
さあコーヒーを飲もうとホルダーに手を伸ばした。
ん？おかしい。コーヒーが取り出せない。知らぬ間に前席の人もシートを
少し倒していて、ホルダーの上のスペースが狭くなっているのだ。
私はコーヒーを飲むための方法を探った。

1、前の人にシートを戻してもらう。
　一番正当な方法だと思うが、いつまでも戻してもらうわけにもいかないので、
　コーヒーを取り出したらまた「もう倒していただいていいです」と言うこと
　になる。　でもそうするとコーヒーを置く場所がなくなるので「すみませんが
　もう1度シートを戻してください」と言う。でもいつまでもそのままだと
　前の人に窮屈な思いをさせるのでまたシートを倒してもらう。でもそのままだと
　コーヒーが飲めないのでもう一口コーヒーを飲みたくなったらまたシートを
　戻してもらう・…ということを延々と繰り返さなければならないのだ。
　この案ボツ

2、ホルダーを取り外してカップを開放する。
　ホルダーはネジで留められていた。プラスのドライバーが必要だ。
　私は普段プラスのドライバーもマイナスドライバーも持ち歩かない。
　のこぎりも包丁も芝刈り機も座布団も持ち歩かない。外出時いろんなものが
　必要になるが、起こり得ること全てを予測して必要なものを携帯しようとし
　たら私は玄関から１歩も出ることができなくなってしまう。
　だからこの日プラスドライバーを持っていなかった私を責めることはできない。
　車内の乗客一人一人に聞けば一人ぐらいはドライバーを持っている人がいる
　かもしれない。誰も持っていない場合先頭車両の最前の席まで行って最後の人に
　尋ねることになる。彼は答えるであろう「まあ、私もドライバーといえばドライバー
　です普段は運転手と呼ばれています。どちらかといえばプラス思考
　の方だと思うんですが。」
　残念ながらこの場合、前向きな運転手も役に立たない。

3、前のシートを取り外す。
　プラスドラ-バーよりももっと大掛かりな工具が必要になりそうな気がする。
　それに取り外し方を調べるために前席の足元を床に這いつくばらなければ
　いけない。あきらかに不審者である。まあ１案も２案も不審者であることに
　は違いないが。こんなことなら事前に電車のシートの取り外し方の本を
　買って勉強しておけばよかった。
　シートには６０歳くらいの男性が座っている。いきなりシートがはずれたら
　びっくりするであろう。かといって「すみません、シート取り外してもいい
　ですか？」と聞いたところで快く了承してくれるとも思えない。
　でもそもそもこのおっさんのせいで私はコーヒーを飲めないのである。
　強気に出てもいいのかもしれない。でも勇気がない。ああもっと強くならな
　ければ。

４、電車を傾けてコーヒーを飲む。
　この案あたりが一番現実味のあるところかもしれない。
　しかし困ったことが1つある。車体はつるつるしていて持つところがない。
　電車にはなぜ取っ手がついてないのだ。誰も必要だとは思わないのか？
　あきらかに電鉄会社の怠慢である。　コストダウンの弊害がこんなところ
　にも現れている。こういった小さなサービスの積み重ねが集客数の向上に
　もつながってくるのではないだろうか。

結局私は紙コップを少し歪ませて取り出すことにした。
　
　　

先頭 表紙

待ち合わせの場所でのぞいた化石屋にあったエビの化石。
数千年前もしくは一億年以上前の地層から出てきたエビ。
化石ファン、あるいは考古学ファンであればそこから遥か昔の生物たちの生きていた時代
に思いをはせるのであろう。
しかし私は考古学ファンでもないし、遥か昔のことよりももうすぐ空っぽの胃袋を
満たしてくれるであろう旨い食いもんや酒のことを考える思考回路ががっちり太古
のロマンをブロックしていた。
エビの化石を見ながら私は思った。「エビ満月とどう違うねん。」
皆さん「エビ満月」をご存知でしょうか？そうです、小エビが入った塩味の白いせんべい。
確か私の子供の頃から存在する定番のお菓子である。
今回は「エビの化石」と「えび満月」はどう違うのか、ということを検証していきたい。
“形状”→ほとんど同じである。とくにエビの押し潰された様は私にはどちらがどちら
か区別がつかない。
“味覚”→エビ満月の味はよく知っているが、残念ながらエビの化石は食べたことがな
いのでよくわからない。化石屋で味を確認してもよかったのだが、店員に聞いても知って
いるとは思えないし、ショーケースを開けてもらっていきなり化石をぺろぺろ舐めたり
したら、待ち合わせの友人とは会えず、病院に場所を移しての面会という形に変わって
しまうであろう。
“年代”→化石は数千万年から数億年、エビ満月は私の子供の頃からあるのでかなり古い。
　全く年数が違う、と反論されるあなた、あなたは目の前のこと卑近な物事に振りまわ
されて冷静な判断力を失っているのではないでしょうか。たとえばこれから20億年後に
このエビの化石とエビ満月が同時に発見されたとしたら、多分2つとも未来の化石屋に
並んで「約20億年前のエビの化石」と説明がつけられて、同じ値段で売られるであろう。
いや、エビ満月の方は青海苔も入っているから「エビと青海苔の化石」としてより高い
値段がつけられるかもしれない。まだ反論があるなら、20億年後に議論しましょう、
お互い化石になっているかもしれませんが……

何はともあれあけましておめでとうございます。
今年も私はこんなですがよろしくお願いいたします。

先頭 表紙

少し前ひとり飲みに行くため乗ったタクシーに「タクシー協会
忘れ物センター」の電話番号が貼ってあった。
タクシーでは忘れものがよくあると聞く。だが果たして車内に
忘れ物センターの電話番号を掲示しておく意味があるのだろうか。
忘れ物が忘れ物となりえるのは客がモノを車内に置き去りにして
車外に出た瞬間からである。降車後忘れ物をしたことに気が付い
ても、車内の番号は見ることはできない。
タクシーに乗っている間にその番号をメモするくらいの几帳面
で注意深い人であれば忘れ物なんかしないであろう。
ひょっとしたら忘れ物自身が後部座席から自分で電話する
ことを期待しているのであろうか？確かに携帯電話であれば
自分で電話することも可能かもしれない。しかし財布はどうしたら
いいのだ。金を持っていても、通信手段をもたない財布はどうしよ
うもないのだ。普段「小物界」の中で威張っている財布なのにこの
ときばかりはじっと忘れ物センターの電話番号を見つめていること
しかできないのである。
このむなしさを私の財布は十分知っていると見えて、持ち主の私が
大金持ちなのにもかかわらず、いつも私の財布には金があまり入
っていない。かといって銀行の口座にたっぷり溜め込んでいるわけ
でもないので今私の最大の関心事は大金持ちの私がどこに金を
溜め込んでいるか探すことである。誰か知ってたら教えてください。

そうこうしているうちにタクシーは目的地に到着した。もちろん私は
忘れ物がないか確認しタクシーを降りた。忘れ物センターの番号
なんて一見役に立ちそうに見えて実は無用なのだ。
なじみの店を何軒かまわって私は帰宅した。
翌朝は休日出勤。いつものとおり財布を持って、キーをもって、
携帯をもっ・・・・携帯を・・携帯を・・・・・・ん？ない？。
ないないないない！！！。ないのである！
携帯がない。忘れたのか？どこでだ、どこでだ。私は前夜の記憶を
たどった。
確かにタクシーを降りたときには持っていたし、最後の店でも携帯を使った。
そしてタクシーに乗って・・・うーん。どうやら可能性の一番大きいのは
帰りのタクシーである。そうだ「タクシー忘れ物センター」に電話しよう！
と思ったがあれだけ見つめていた電話番号だが私の記憶にはまったく
残っていない。どうだ！みなさん！やっぱり私の言ったように「タクシー
忘れ物センター」の番号を貼っていても何の役にもたたないでしょう。
私は電話帳で「タクシー忘れ物センター」を探したが見つからない。
番号どころか忘れ物センターの名前も正確には覚えきれていなかった
らしい。私の財布が金を持たないようにするのを信条としているように、
私の脳みそも記憶領域を持たないことを信条としているらしい。
そのかわり私は脳みその空いたスペースをビールのリザーブタンク
として使用している。
でもひょっとしたら私の記憶領域が少ないと思い込んでいるのは
私だけで、実は私はすごい頭脳の持ち主で記憶力もすばらしいが
脳みそが自分の所有者を私だと認識していなくて、せっかくの記憶
を私に提供してくれていないだけかもしれない。もしそれが事実だと
したら、脳みそが私の財産のありかを知っている可能性が高く
そうなれば私は明晰な頭脳と巨額の富を一挙に手に入れることに
なるのだ、がはははは。私のこれからのテーマは以下に自分の
脳みそと仲良くなり、記憶を提供してもらえる関係になるかである。

何とか忘れ物センターの番号を調べた私は
各タクシー会社に連絡をとってもらい、1週間後にめでたく携帯は
私の手元に戻ってきた。
　　　

先頭 表紙

絶品でした

先頭 表紙

ああ旨かった

先頭 表紙

休日を返上して仕事をしていた日曜日、「鈴木様」と
打とうとして間違えて「スズキサンマ」と入力したら、
「鈴木秋刀魚」と変換された。
コンピューターのくせにそれくらいの判断もできないのか！
ヒトの名前に秋刀魚なんてつける親がどこにいるのだ！
常識を持って考えろ！といいたい。
しかしよく考えたら劇団「大人計画」の「松尾スズキ」
というのがいるくらいだから、コンピューターが「秋刀魚」
と変換して何も疑問を感じなかったとしても責めることは
できない。
ただ私と一緒に今後も仕事をしていきたいと思うなら、
たとえ私が「サンマ」と打ったとしても、「ご主人様、念
のためにお伺いいたしますが、今ご主人様が打たれた
「サンマ」というのは「サマ」とすべきところを、私を退屈
させまいとして、「サンマ」と打たれたわけですね？
ええ。もちろんご主人様がミスタイピングなんかされる
はずがございませんからねえ。しかし今年は「秋刀魚
が豊漁と聞いておりますがご主人様は最近お召し上
がりになりましたか？秋が深まりますます脂がのって
辛味大根に柚子なんかぎゅっと絞ると最高でござい
ますねえ。」くらいのことを言ってくれないと困る。
今回はまあ大目に見ておくから今後気をつけるように。

先頭 表紙

１、車線は無い、もしくはあっても意味が無い。

　　多分スリランカの運転手は車線を道の模様くらいにしか考えて
　　いないのではないか。
　　2車線の道はたいてい3台くらいの車が横並びで走っている。

２、横断歩道に意味は無い。

　　人は横断歩道があろうが無かろうが、渡りたいときに道を渡る。
　　車は人が横断してるのを見るとクラクションを鳴らして威嚇するが、
　　ブレーキはかけない。人は近づいてくる車を睨みつけて威嚇する。

３、中央分離帯にはあまり意味は無い。低ければ反対走行車線に飛び出して
　　走ってもかまわない。

　　私は何回対向車が同じ車線をこちらに向かってくるのを見て胆をつぶし
　　たことか。

４、常にクラクションは鳴らしっぱなしでよい。

　　周りに他の車が全く走っていないとき等、特殊な事情に限ってクラク
　　ションをやめる。
　　スリランカに売る車は、ボタンを押したときだけクラクションが止まる
　　ようにしてはどうだろうか？

５、無理な割り込み、車線変更、無理な追い越しをしないと目的地に着かな
　　い。

　　ただし4割くらいのドライバーは目的地に着かなくても別に気にしない
　　ように思う。

６、車間距離を測るのは３０センチの定規一本あればいい。

７、車だけでなく、牛や象にも気をつけろ。

　　もちろん彼らの糞にも。　　

先頭 表紙

中国の報告も済んでいないのに（それどころか昨年のイタリアの話も
そのままである）ボスが「スリランカへ行け」という。
昨年末以来日本を脱出しておらずそろそろ外の空気も吸ってみたい
気分だったので2つ返事で引き受けることにした。
スリランカ人相手に仕事をしたことは何回かあるものの、現地に赴く
のは初めてのことでこの国に関する知識は皆無に等しい。
先ず場所の確認。職場の地球儀をクルクルと回してチェック。
インドの下の方にちんまりと位置している。インドが紀伊半島だと
するとスリランカは紀伊大島みたいなもんだ。インドが篠ひろ子の鼻
だとしたらスリランカは鼻の下のほくろみたいなもんだ（あ,位置が逆か）
いかんいかんいつもの妄想癖に突入するところだった。
任務をスムーズに遂行するためにはその土地の最低限の基本データは
頭に叩き込んでおかなければならない。例えばその国が酒に関して
どの程度寛容な国であるかとか、食前にどんな酒を飲んで、食事中に
どんな酒を飲んで、食後酒には何があるかとか、その国のバーの形態
や注文の方法など、その国に関するあらゆるデータを広範囲にわたって
調べ尽くさなければならない。
ということでネットで「スリランカ」を検索してみる。
えーーっと人口・・1930万人。よかった。人がいた。ところでその
地域に住まう人間の数のことをなぜ「人口」というのだろう。「人」は
わかる。私が疑問に思うのはなぜそこで「口」なんだ？鼻じゃダメなのか？
耳じゃダメなのでしょうか？？あ、耳はマズイぞ人ひとりに対して2つ
ずつあるから計算が面倒だ。例えばスリランカの人口・・じゃなくて
「人耳」は一挙に倍の3860万人耳になってしまう。こんな単純な計算
をするのでさえ算数が苦手な私は電卓のお世話にならなければならない。
おいおいそこで笑ってるあなた。1930×２が瞬時に暗算できますか？
私にはできません！9が繰りあがるところで脳みそがせり上がって意識が
遠のくのだ。いかんいかんと思って気付け薬に焼酎を口に含む。再チャレ
ンジする。やはり9が繰りあがるところで意識が遠のき気付け薬を口に含
む。またチャレンジする・・・・そのうち9が繰りあがらなくても意識が
遠のくようになる。話を元へ戻そう。
「人耳」数÷２＝人間の数
しかしそれで安心してはいけない。「壁に耳あり障子に目あり」という
ことわざを忘れてはいないだろうか。壁の数だけ耳があるのである。
つまり「人耳」数ー壁の数÷２＝人間の数なのである。
おっと「王様の耳はロバの耳」も忘れてはならぬ。スリランカの王様の
耳もロバの耳であることを考えると王様がカウントから漏れてしまって
いる恐れがある。「人耳」数ー壁の数÷２＋１（王様）＝人間の数と
なりスリランカの人数を導き出すだけで3日くらいかかりそうなのである。

やはり人数を数えるのは「人口」がふさわしいようだ。
待てよ？もし無口な人が１割いるとすると・・・・・


というわけでスリランカの情報集めがなかなか進まない私に誰か
救いの手を。
スリランカについて知っていることなんでも教えてください。
ちなみに出発は5月半ばの予定。

先頭 表紙

さて中国へ我々を運んでくれる車も無事見つかり、ジョーと私は中国へ向った。
香港が中国に返還されたとはいえ行政特区の香港から出るときには出国書類
に記入してパスポートに沿えて手続きをうけ、中国へ入るときには再び同様の入国
手続きが必要となる。また国境では我々は中国側の車に乗り換えないと行けない。
運転手の指示にしたがって我々は滞りなく中国側に無事移動し、車に乗り込む
ことができた。ジョーさえ何もしなければ全てうまくことが運ぶようである。果たして
こいつは何のためにいるのか。一応案内役兼通訳兼助手ということだが、どうも私を
トラブルの方へ一直線に案内してくれているだけのような気がする。
あるいはヒマジンネタをコンスタントに提供してくれる有能な助手ということか。

無事客先に到着し、その日の仕事をすませた我々は夕食後ホテルに到着した。
チェックインの際、インターネットが部屋で使えるか訊いてみると、使いたいときに
フロントに電話を入れれば、チャージはかかるがアクセス番号とパスワードが発行され
ネットワークを通じて繋げる様にできるとのこと。
部屋に案内されたあと私は早速フロントに電話をした。

私　　　　　　　　「インターネットを使いたいんですけど。」
ホテルスタッフＡ「あ、○△♯♭×英語わかる人に代わります。」
ホテルスタッフＢ「お電話代わりました。」
私　　　　　　　　「インターネットを使いたいんですけど。」
ホテルスタッフＢ「あ、え？あ、もっと英語わかる人に代わります。」
ホテルスタッフＣ「はい、失礼しました。ご用件は？」
私　　　　　　　　　「インターネットを使いたいんですけど。」　
ホテルスタッフＣ「えーと、インターネット使っていただいていいですけど。」
私　　　　　　　　「先ほどフロントでパスワードとアクセス番号発行してもらえると
　　　　　　　　　聞いたんですけど。」
ホテルスタッフＣ「あ、そ、そうですねえ。そうですけど私インターネットのことわか
　　　　　　　　　らないのです、コンピューターのことわかる人に代わります。」
私　　　　　　　　「・・・」
ホテルスタッフＤ「インターネットの接続ですね。アクセス番号はエス・ケイ・
　　　　　　　　　スリー・ツェー・ファー・・・・」

かなり中国語訛りが入っている。ところでツェー、ファーってなんだ？
数字か？アルファベットか？この人はコンピューターはわかるが英語はちょっと苦手ら
しい。

私　　　　　　　　　「Ｓ・Ｋ・３のあとがわからないんですけど」
ホテルスタッフＤ　「エス・ケイ・スリー・チョ−・ホェー・・・・」

う・・・さっきとちょっと違ってるし・・・

私はかなり消耗してきた、もうインターネットなんかどうでもよくなってきた。

私　　　　　　　　　「あ、もういいです。またフロントへ行ったときお尋ねします。」
ホテルスタッフＤ　「え？ダメです。エス・ケイ・スリー・チィー・フェー・・・・」
私　　　　　　　　　「・・・・」
ホテルスタッフＤ「紙に書いて部屋にお持ちします。」

５分後わたしの部屋をノックする音がした。ドアを開けるとそこにはひょろりとした
ホテルマンがメモを手に立っていた。そのホテルマンはお笑いの「カラテカ」の
矢部太郎（ああ−地味）が眼鏡をかけたような実直で頼りなさそうな青年であった。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく

先頭 表紙

下の日記のつづき

地下鉄駅に降りて彼について行った。地下通路の十字路でいきなり彼は立ち止まり全く
動かなくなった。2分ほどあちこち見まわし、考えた挙句結局ジョーは近くにいた駅員に
道を尋ねた。そして少し表情を引き締め、先ほどよりもかなり早足で歩き出した。
おいおいもう大丈夫なんじゃなかったのか？
私はその時、ジョーはかなりの方向音痴であることを悟った。熱が引いたとはいえ私は
まだインフルエンザから立ち直っていない身であり、荷物を抱えての早歩きはかなり辛い。
しかしそんなことも言ってはいられないので、汗をかきながらジョーの後をついていった。
そんなこんなでようやく目的のホームへたどり着くことができ、先方との待ち合わせの
地の駅へ到着したのである。約束の時間は９時。あと１５分くらい時間はある。
改札を出ていきなりまたジョーが立ち止まった。そして左へ行くか右へ行くか悩み出した。
考えてみたらさっきから分岐点では必ず迷っている。この様子から見ると彼は今まで生
きてきた中で、彼の時間の30パーセントくらいは、迷っていたり、道を探す時間に費や
してきたのではないだろうか。今度は彼は携帯電話を取り出してどこかに電話をして
道を訊いて「多分もう大丈夫です」と私に向って言った。彼の不安そうな表情を見て
私は即座に、「多分まだ大丈夫ではない」ということを確信した。
彼は駅から表へ出て、通りを反対側に渡って遠くの方を見つめて「ほら、あれが我々の
迎えの車です。」と言った。彼の視線の先には１台のミニバンが停まってあった。
時間は待ち合わせの9時まであと3分。やれやれ間に合った、と思ったその時ジョーは
言った。「朝ご飯食べていいですか？」私が「え？でももうすぐ9時だから時間がないで
しょう？」と言い終わる前に彼は目の前にあった食堂に入って行き「あ、さっきの電話で
少し遅れるって言っときました。」こういうところには抜け目のないジョーであった。

食堂から出た我々は、先ほどのミニバン目指して歩き始めた。その時そのミニバンの
運転手が降りてきて後の扉を開けた。私は我が目を疑った。車内に豚がびっしり吊り下
げられているのが見えた。
私は中国までの4時間あの荷室に薄目を開けた豚と一緒に吊り下げられて揺られていか
ないといけないのか？そういえばエージェントのフランキーが私に中国の仕事を頼みに
来たときなんとなく申し訳なさそうな顔をしていたのはこういう訳だったのか？
ジョーはつぶやいた「あれじゃない…」
わかっとるわい！
ジョーと私はまた汗をかきながら、本当の送迎車を探すために歩き始めた。
この旅またしてもハプニングが待ちうけてそうである。

先頭 表紙