その男は最果ての空港でアーシャを待っていた。
「僕はパーシャ、宜しく」、イケメンじゃん。
シュワルツネッカーとコスナーを足して2でわった感じ。
しかし、笑顔が不自然なほどまばゆい。
うっ、まぶしい。 見たら、前歯が3−4本金歯だった。 がっくし。
しかし、奴の運転はすごかった。
少しの隙も逃さず反対車線に飛び出し、前の車をごぼう抜き。
反対車線に出れないときは前の車を後ろからあおり、怯えた前車は
路肩に寄り、追い抜かれる。 抜くが抜かれない男、パーシャ。
急にハエが止まるようなゆるいスピードになったと思うと、
その先には必ずGAI(ロシアの交通警察)がいる。
そして、爽やかな笑顔と会釈をGAIに振りまき通り過ぎる。
GAIがいない所ではかなりのスピードオーバーでひたすら前の車を
抜きまくり、普通のドライバーなら2時間半かかる道のりも1時間50分で
着いてしまった。
今まで、数々のドライバーと旅を共してきたが、一番の凄腕だ。
金歯だが、最高にかっこいい男、パーシャ。
帰りもパーシャだといいなと思っていたら、パーシャだった。
爽やかにホテルに現れ、一緒に車に乗り込むと、そこには
小パーシャが。(一応マキシムという名がある)
12歳にしては、父に似てイケメン。 将来有望だ、うん。
パーシャと小パーシャと3人のドライブ。 小パーシャが隣に
いても、パーシャは相変らず抜きまくる。
そんなエキサイティングなドライブに慣れてしまったアーシャは
殆ど夢の世界。着いたら空港だった。
凄腕パーシャと小パーシャに見送られ、アーシャは最果ての地を
あとにした。
こんな出会いがあるから、この仕事はやめられないのかも。
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