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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

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2005-08-08 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第2回 蘇れ、猫の目レンズ塔 その1
2005-08-07 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第2回 蘇れ、猫の目レンズ塔 その2
2005-08-06 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第2回 蘇れ、猫の目レンズ塔 その3
2005-08-05 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第1回 レミングの恩返し その1
2005-08-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第1回 レミングの恩返し その2
2005-08-03 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第1回 レミングの恩返し その3
2005-08-02 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第1回 レミングの恩返し その4
2005-08-01 ポロの日記 2005年8月1日(光曜日)今日も暑いぜ! その1
2005-07-31 ポロの日記 2005年8月1日(光曜日)今日も暑いぜ! その2
2005-07-29 画像テストその2 冬将軍


2005-08-08 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第2回 蘇れ、猫の目レンズ塔 その1

蘇れ、猫の目レンズ塔 その1

 偉大な老ゴーヒャ・キージェからオリンピア工房を引き継いだブージー(猫の星の歴史教科書第3回 「ゴーヒャ・キージェ」参照)の初仕事は、魔術師たちが失敗した“猫の目レンズ塔”の復活でした。
 ここには国中のダイヤモンドと水晶が集められて使われています。水晶は溶かしてしまったし、ダイヤモンドは結晶構造面にそってカットされ、まるで隙間がないかのように組み合わされているので、元にもどして持ち主に返すこともできません。国王の側近の不正によって当初の計画とは異なる形で完成してしまった猫の目レンズ塔を本来の形に戻すのです。
 仕事を依頼してきたのはドーラ土木組合のゴジャイという男でした。

ゴジャイ「レンズ塔とオリンピア号の仕事は、言ってみりゃライバル同士の戦いだ。だがよ、いいものを作りたいだけのオレたちにとっちゃ、そんなことは関係ねえと思うんだ。ゴーヒャ・キージェっていう男もそうだと聞いてやってきた。ゴジャイが来たと伝えてくれ」
ブージー「親方はいません」
ゴジャイ「どっか出かけてるのかい。なら、また出直してくるぜ」
ブージー「そうではありません。親方はここを去られました」
ゴジャイ「そうか。隠居した場所はどこだ?」
ブージー「分かりません。親方は私に工房を引き継ぐと人知れず街を出ました」
ゴジャイ「そうか・・・・・・」
ブージー「・・・・・・・・・」
ゴジャイ「お前さんが工房を引き継いだんだな」
ブージー「そうです」
ゴジャイ「正直言って、オレにはおまえさんが頼りなく見える。少なくともオレの下で働いている若い衆のほうが頼りになりそうだ」
ブージー「申し訳ありません」
ゴジャイ「いやあ、謝る必要はないぜ。若いってえのはそういうことだ。もし、お前さんに見込みがあるなら、これからだんだんにそうなっていくってことさ」
ブージー「はい、精進します」
ゴジャイ「だが、もしゴーヒャという男の目に狂いがないのなら、お前さんは実はすごい男なのかもしれんな」
ブージー「すごいかどうかは仕事を見ていただくほかありません」
ゴジャイ「お前さんを試すというわけじゃあないが、もし、お前さんが猫の目塔の太陽追尾装置を設計できるなら、オレは図面を見ただけじゃ分からんから、本当に動く模型を作ってくれ。それを見てから仕事を頼むかどうか決めさせてもらうぜ。もちろん模型代は払う」
ブージー「この仕事の発注先はどこですか? ドーラ王ですか?」
ゴジャイ「いや、違う。オレたちだ。正確に言うと、オレたちの有志だ」
ブージー「えっ?」
ゴジャイ「考えてもみろ。国中の猫たちが家宝まで差しだして作ったレンズ塔がただのゴミになってるんだぜ。おまけに宮廷は、猫の目塔はもともとダメな計画だったと決めつけていやがる。だから、オレたちがやる」


つづく

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2005-08-07 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第2回 蘇れ、猫の目レンズ塔 その2

蘇れ、猫の目レンズ塔 その2


 ブージーは感動すると同時に、どうして自分にそういう発想がなかったのだろうと少し悔しくも思いました。

ブージー「やらせてください。僕も、その仲間に加えてください」

 ブージーは、さっそく太陽追尾装置の設計に入りました。しかし、模型はおろか、実験用の試作品を作るお金もありませんでした。しかし、ゴジャイに資金援助を頼む気にはなりませんでした。ゴジャイだって似たような境遇だろうと思ったからです。
 ブージーは、昼は道路工事、夜は警備員のアルバイトをしながら仕事の合間に設計を続けました。長く長く動き続ける、まるで宇宙の縮図のような機械です。

--モーターなんてダメだ。だいいち、電力を使うなんてもってのほかだ。こちらが制御しなければならないというのもダメだ。何万年かたって、猫たちが滅んだあとでも動き続けるようなものでなくちゃいけないんだ。

 そして、ついに思いついたのが“コリオリの力”でした。これはドーラの自転によって起こる力でした。これなら無限に動き続けるし、ドーラの自転周期が変動しても、それに合わせるように動くはずです。

 ゴジャイ親方から依頼を受けて3年後。ブージーは、ついに模型の完成させました。

 親方が工房にやってきました。妻のワンダも一緒でした。

ゴジャイ「こ、こいつがどうしても来るっていうからよ」
ブージー「どうぞ、ぜひ一緒にご覧になってください」

 なんだか不器用に照れる親方を、道路工事ですっかりたくましくなったブージーが迎えました。

ゴジャイ「さっそく動くところを見せてもらおうか」
ブージー「これですが、動きません」
ゴジャイ「動くっていう約束だ」
ブージー「実物は動きます。しかし、この大きさでは動きません。原理を説明します」

 そういうと、ブージーはコリオリ力が台風を渦巻かせるほどの力であること、電力などが一切必要ないことを説明しました。

ゴジャイ「・・・・ちんぷん・・・かんぷん・・・・ちんぷん・・・・かんぷん・・・」

 ゴジャイ親方には、さっぱり分かりませんでした。

ゴジャイ「悪いが、オレにはちんぷんかんぷんだ。だがよ、お前さんを信じるぜ。お前さんがやった仕事なら、きっと間違いはねえ」
ブージー「どうしてそれが分かるのですか?」


つづく

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2005-08-06 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第2回 蘇れ、猫の目レンズ塔 その3

蘇れ、猫の目レンズ塔 その3


 すると、ワンダが言いました。

ワンダ 「ブージーさん、あたしを覚えていませんか?」
ブージー「・・・・・?」
ワンダ 「ほら、ツンドラデパートの強盗事件の時に・・・」
ブージー「えっ? あの時の?」
ワンダ 「警察が駆けつける前に、警備員のあなたに助けてもらったのは私です。あの時、警備の人たちみんなが警察を頼りにしていたら私はどうなっていたか分かりませんでした。あなたの判断に救われたんです」
ゴジャイ「それだけじゃないぜ。お前さん、道路工事の現場にいただろ?」
ブージー「はい」
ゴジャイ「そういうところで監督してるのは、みんなオレの息のかかった連中ばかりなのさ。そういう連中からおれに“なかなか見上げたヤツがいる”ってオレはいつも聞かされてたんだ。それがお前さんのことだって分かったのは、つい最近のことだ。模型が動かないのは分かった。本物がどうなるのか、オレに分かるように説明してくれねえか」
ブージー「はい」

 ブージーは、自由に回転する巨大な羽根車のような円盤を地下に埋めて、そこに落ちる水の渦の力を合わせてレンズ動かすアイディアを話しました。そのほとんどが土木工事だったので、ゴジャイは、ますます感心しました。なぜなら王立科学アカデミーの設計図は、たくさんの複雑な制御機構を持った機械仕掛けの追尾装置だったからです。

 1年後。それまで1日に1回、ほんの瞬間だけ光を受け入れていた猫の目レンズ塔が太陽の出ている間じゅう、塔の周辺のどこかを照らして春をもたらしました。子どもたちは、移動する春の区域を追いかけるのが楽しみでした。

 ドーラ王はブージーの働きに大変驚いて、それからというもの、オリンピア工房に多くの重要な仕事を発注するようになったとさ。めでたしめでたし。


おしまい


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2005-08-05 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第1回 レミングの恩返し その1

レミングの恩返し その1


 それはずっと昔のこと。太陽系のはずれにある猫の星ドーラは氷に包まれまま年の瀬を迎えようとしていました。

 ドーラは長く続く不景気にあえいでいました。そういう時に真っ先に影響を受けるのがドーラ土木組合でした。収入が減ってにっちもさっちもいかなくなったドーラ土木組合のゴジャイ親方は、寒さに弱い猫に売れるかも知れないと思って、妻のワンダに暖かい綿入れ袢纏を作らせました。器用なワンダは上手に袢纏を作りました。ゴジャイ親方が着てみるとどんなメーカー品よりも軽く暖かく着心地も最高でした。

「これはいい。ワンダ、でかしたぞ。これなら全部売れるに違いない。さっそく宮殿前の酉の市で売ってこよう」
「ええ、あなた。おいしい夕食を用意して待っていますよ」

 雪の降る明け方、ゴジャイ親方はたくさんの綿入れ袢纏をかついで宮殿までの5キロの道のりを歩いて出かけました。
 途中、いつもの猫地蔵のところを通りかかりました。昔はお供え物を欠かさなかったものです。しかし、不景気の今はそれさえままなりません。親方は一列に並ぶ猫地蔵の雪を払って手を合わせると、今日は必ずお供え物を買って帰ろうと思いました。

 早く出かけたゴジャイ親方は、その甲斐あって宮殿前の一番よい場所に店を出すことができました。しかし、ワンダが心を込めて縫った綿入れ袢纏はいつになってもひとつも売れませんでした。誰もがメーカー品のほうが暖かいに決まっていると考えていたからです。
 親方は、袢纏の売り上げの一部をお昼代にしようと思っていたのに、一枚も売れないので、夕方までとうとう何も食べることができませんでした。しかし、本当に辛かったのは空腹ではなく、猫地蔵さまにお供え物が買えないことでした。
 暗くなり始めた道を、親方は売れ残った袢纏を背負って再び戻っていきました。
 猫地蔵たちの前に来ると、ゴジャイ親方は猫地蔵の雪を払って、お供え物の代わりに綿入れ袢纏を着せていきました。しかし、ひとつ足りません。

「おや? 猫地蔵さまはこんなにいなすったかな」

 親方は自分が着ていた綿入れ袢纏を脱ぐと、最後の猫地蔵にかぶせました。そして手を合わせると、寒さに震えながら家路を急ぎました。

 その晩おそく、一番はずれの猫地蔵に異変が起きました。
 はじめ、基台の小さな黄色いLEDが点灯しました。次に温度上昇を知らせる赤いLEDが点灯し、1時間後には全ての警告LEDが点滅を繰り返して、最後には焼け焦げた匂いとともに消灯しました。

 そのとき、はるかドーラ上空では誘導電波を待つ宇宙艦隊がいました。ドーラの征服を企む敵艦隊でしたが、たったいま、着陸誘導ビーコンが意図的に破壊されたことを知りました。奇襲作戦は開始前に失敗してしまったのです。猫地蔵にカムフラージュされた誘導ビーコン発信機は雪を冷却材として使う寒冷地仕様だったのです。


つづく

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2005-08-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第1回 レミングの恩返し その2

レミングの恩返し その2


 宇宙を支配しているのは誰でしょうか。
 実は誰でもありません。強いて言うなら神さまですが、厳密には神さまは宇宙の支配者というわけではありません。
 たとえば地球では人が支配者を考えられていますが、猫に言わせれば猫こそ支配者であって、人間は猫の食事を用意したり世話をするしもべに過ぎません。銀河連盟では地球の支配者は“植物”であると“銀河連盟ハンドブック”に記されています。人類が滅びた後も、人の生きた痕跡などすべて覆い尽くして地球は植物の星となることでしょう。
 ドーラでも、猫たちは自分たちこそ星の支配者と思っていましたが、少数の宇宙レミングもまたそう思っていました。
 宇宙レミングは、宇宙で一番早く恒星間航行に成功した生き物でした。彼らは宇宙全体にあまねく住み着き、お互いに連絡をとりあって、巨大なレミング文明を築き上げているのでした。だから、ドーラにはほんの少しのレミングしかいませんでしたが、彼には宇宙の支配者としての自負と誇りがありました。
 ところが、宇宙のもうひとつの大きな勢力がレミングたちと熾烈な覇権争いを挑んできたのです。それはケイ素系生命体のシリカでした。あの“お地蔵さんカムフラージュ型着陸誘導ビーコン発信機”を送り込んできたのもシリカ軍でした。

 レミングたちは綿入れ袢纏を調べて、シリカ製のにせ地蔵を破壊した功労者がゴジャイ親方と妻のワンダであることを突き止めました。
 レミングたちは親方夫婦に何かお礼をしたいと思いましたが、猫のことゆえ、何が欲しいのかわかりませんでした。

レミングA「仕事だ。親方は仕事を欲しがっている」
レミングB「仕事はなんだ?」
レミングA「ゴジャイ親方はドーラ土木組合のまとめ役だ」
レミングC「よし、土木と来れば公共事業だ」
レミングB「なにかよいアイディアでもあるのか?」
レミングC「そうだな、ここは寒いから春を呼ぶレンズ灯台はどうだろう。これなら大規模な工事になることは間違いない」
レミングA「よし、王室顧問をしている大魔術師にこのアイディアをこっそりと伝えよう。きっと王に進言することだろう」
レミングB「魔術師の水晶玉にイメージ転送できるか?」
レミングC「それなら簡単だ」

 それから数日後、ゴジャイ親方の家に王室から使者がやってきて、太陽の光を集めてドーラに春をもたらす「大レンズ塔」の建設を命じました。
 親方とワンダは大喜びしました。

 さっそくドーラの各地から腕自慢の職人たちが集められました。親方は、みんなが不況で苦しんでいるのを知っていましたから、職人を試験で選抜したりせずにみんなで仕事をシェアすることにしました。
 しかし、渡された設計図と仕様書がどう考えても不完全なものでした。命令書のとおりではまともな塔が建つとは思えませんでした。
 ある朝、目が覚めると玄関の上がりかまちに一枚の図面がありました。それは、王の命令書よりもずっと精密で詳細な塔の構造計算書の一部でした。次の日も、また一枚。その翌日もまた一枚。こうして塔の設計図は徐々に完全なものになっていきました。
 その次の晩には、とうとう親方は寝ずに物陰から玄関を見張ることにしました。


つづく

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2005-08-03 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第1回 レミングの恩返し その3

レミングの恩返し その3


 真夜中を過ぎても誰も現れません。2時を過ぎても3時を過ぎても誰も現れませんでした。しかし、思わずウトウトしはじめた午前4時、書類をくわえたレミングが1匹ほんの小さな壁の隙間から出てきて書類を置くと、立ち上がって腕を広げて大あくびをすると、帰っていきました。まるで残業明けであるかのようでした。
 朝になって、ゴジャイ親方は妻のワンダに夜中に見たことを話しました。

 ワンダ「それはきっとお地蔵さまの使いにちがいありませんよ」

 親方もそう思いました。

 いよいよ工事が始まりました。ゴジャイ親方は、集まった1000人もの職人たちを前に訓示しました。


 --諸君。いよいよドーラの土木技術を宇宙に知らしめるときが来た。作業は次にかかげる理念で行なう。
 第一に安全確保だ。これは全てに優先する。
 第二に質の高さだ。安全が確保できたら可能なかぎり質の高い作業をする。作業の質とはすなわち、我々の志であり、妥協を許さぬ覚悟である。
 以上!

 この短い訓示が、後に遺跡とまでなる大レンズ塔の長い長い寿命を決定づけたのでした。
 石積みの塔には原石の精密な加工が必要です。刀鍛冶たちが日本刀を集中力で鍛えてまっすぐにしてしまうようにドーラ土木組合の職人たちも、まるで石をダイキャスト加工したかのように精密な形に仕上げていきました。ところが外気や人目にふれる石の肌は自然な感じを残して、できあがりが工業製品のようになるのを防いでいました。
 レミングの届けてくれた塔の設計図は、その正確さと詳細さゆえに、その後のドーラ土木組合の仕事の指針となりました。
 毎晩、仕事が終わると職人たちは塔の下の広場のたき火のまわりに集まって、家に帰る前の少しの時間、だんだん高くなる塔を眺めながら酒を酌み交わしました。

猫職人A「親方、こいつができあがったらドーラに春が来ますぜ」
ゴジャイ「こんな安酒よりもあったまるだろうよ」
猫職人B「俺はいまに子どもができたら、とうちゃんがこの塔を建てたんだぞって自慢するのが夢なんだ」
ゴジャイ「ああ、自慢できるとも」

 職人たちの志気は高く、誰もがこの仕事に誇りを感じていました。

 ようやく塔の完成のメドが立ったある日、ドーラ宮廷からの使者がやってきて予定していた予算を使い切ったので、塔の上部とレンズの間に入る太陽追尾装置を装備できないことになったと言ってきました。
 それでは、この塔はその役目の半分も果たせないことになってしまいます。
 ゴジャイ親方は、予算を少しも余分に使っていないという自信がありました。親方は信頼できる仲間を集めて足りなくなった予算の行方を探しました。そして、とうとう王室の役人の一人が不正をはたらいて、大レンズ塔の予算の一部を着服したことが分かりました。さっそく王に不正を進言しようとしましたが、位の高い役人ゆえ、職人たちの訴え程度では、下っ端役人の途中で情報が止められてしまうのでした。

 仲間が帰宅したいつものたき火の残り火に当たりながら、親方はひとり考えていました。ふと気がつくと、目の前の地面に一匹のレミングがじっとこちらを見ていました。親方は、独りごとを言うかのように、レミングに向かって不正のことを話しました。
 それを聞くと、まるで合点承知したとでもいうようにうなずいたレミングは、一目散にどこかへ駆けていきました。


つづく

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謎の女議長さんに拍手だよ! / ポロ ( 2005-08-04 22:46 )

2005-08-02 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第1回 レミングの恩返し その4

レミングの恩返し その4


 親方は、宮廷のシステムを打ち破る方法を思いつくことができませんでした。しかし、このまま不正を許すわけには行きません。結局、実力行使に出ることにしました。大臣の公邸に忍び込んで直接大臣を問いただして不正を認めさせるのです。しかし、その結果、親方自身が罪に問われて、場合によっては死罪になるかも知れません。
 しかし親方の心の中では、これは命を賭ける価値があるという結論に達していたのでした。
 翌日、親方は今日を決行の日と決め、いつもとは違う気持ちで目を覚ましました。
 いつものように朝食のテーブルには妻のワンダが置いた新聞、イル・ガット・デロ・スポルト紙があり、その朝刊一面の次のような記事見出しが目に入りました。

 レミング、謎の襲撃!
 これが衝撃の現場写真だ。襲われた大臣公邸を本紙記者が決死の撮影。

 写真には何万匹ものレミングが大臣公邸になだれ込む様子がちょっとブレて写っていました。

 それを見た妻のワンダが言いました。

「やっぱり、ネズミはお地蔵さまのお使いだったんですねえ」


Fine(フィーネ)


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ポロ・プロジェクトばんざい! / ポロ ( 2005-08-04 22:47 )

2005-08-01 ポロの日記 2005年8月1日(光曜日)今日も暑いぜ! その1

今日も暑いぜ! その1


天気予報「今日は、すでに朝から40度を超えたところがあります・・・」
ポロ「せんせい、朝から暑いね」
せんせい「夏は暑くて当たり前だ」
天「防熱対策済の帽子や日傘を忘れると黒焦げになる可能性がありますからお気をつけください・・・」
ポ「せんせい、普通の暑さじゃなさそうだよ」
せ「おおげさな天気予報だな」
風「みんな、テレビ見て!」

 テレビは天気予報が終わってニュースになっていました。

アナ「昨日昼過ぎ、外出中に暑さで倒れ、その後の日射で黒焦げになり、ついには灰になって発見された人がありました。いまだ身元は分かっていません」
たろ「うそ〜! それじゃ外に出られないじゃない」
せんせい「温暖化のせいだ」
海「そんなこと言ってる場合じゃなさそうだよ」

 テレビは消防庁が定めた規格による耐熱服“国民1号”の配布に関するニュースでした。製造が追いつかず、国民全体に行き渡るには数ヶ月かかるということを告げていました。
 次のニュースはファッションショーの話題でした。

アナ「今年のミラノコレクションは、今までのアルミコーティング耐熱ファッションからプラチナコーティングのものが主流になっています」

 画面では銀色に光るステキな耐熱ファッションを着たモデルたちが次々と新作を披露していました。いつの世もお金があれば助かりそうです。

奥「いつの間にこんなふうになったのかしら?」

 風のお兄ちゃんがチャンネルを変えると、銀色の耐熱服“国民1号”を着た民放のニュースレポーターが何かをまくしたてていました。
 ショップチャンネルでは、格安の耐熱服や、外気温が100度を超えても使えるエアコンが紹介されていました。

せ「いくらなんでも100度を越えることなんてないだろう。50度だって世界記録なみだ」

 そういって外気温時計を見ると、針は計測限界の50度を振り切っていました。

ポ「せんせい、外が50度を超えてるよ!」
風「どおりで暑いと思った。いくら計画された空調でもこれは性能限界を超えてるよ」
奥「どうすればいいの? うちには耐熱服なんてないわよ」
せ「う〜〜ん」
海「地震災害用にアルミコーティング・ブランケット買ってあるじゃないか。あれと毛布かタオルケットを貼り合わせてポンチョ作ったらどうだろう」
せ「よし、いいアイディアだ。さっそくやろう」
た「でもさ、外を見てよ。なんだか白くなってきたよ」

 外の景色は、白くまぶしく光っていました。おとなりの家の茶色い外壁も白く見えました。

風「外は発火するほどの温度かも知れないね、この部屋も50度は超えたよ」
せ「まさか」

 でも、窓からの熱放射は議論の余地がないほど激しくなっていました。
 ポロたちは大急ぎでアルミでコーティングされた薄い樹脂膜でできたブランケットと断熱用のタオルケットや毛布を合わせて縁を糸で縫い始めました。
その時、リビングの窓ガラスが急激な温度上昇に耐えきれずに大きな音を立てて砕け散りました。同時に熱風が吹き込んできました。

みんな「あちちちっち〜!」

 全員、おおきそぎで床に伏せると、製作途中のブランケットをかぶって熱風を防ぎました。

奥「みんな大丈夫?」
風「なんとか」
海「同じく」
た「やけどしたかも〜、怖いよ〜」
ポ「あわわわわわ〜!」
せ「全ての外壁から離れたクロゼットに移動しよう。今のチャンスを逃すと床も熱くて歩けなくなるだろう」

 みんな、近くにあったスリッパやサンダルをはいて、ゆっくりとメインベッドルームのクロゼットに移動しました。


つづく

先頭 表紙

2005-07-31 ポロの日記 2005年8月1日(光曜日)今日も暑いぜ! その2

今日も暑いぜ! その2


風「これからどうしたらいいと思う?」
ポ「これからどうするって、設定に無理があると思うよ。文豪のポロとしては、これ以上は読者がついてこないと思うな」
風「そうか。どこがまずんだと思う?」
ポ「全部だな」
風「そんな、ミもフタもないこと言わないでくれよ。ポロだったらどうする?」
ポ「ふふふ。ポロなら簡単さ。だって、もう“物語救助隊”も“悪夢救助隊”も設定してあるから、これを物語ってことにするか、悪夢っていうことにするか決めるだけさ。今までのところを読むかぎりじゃ、どちらにでもできるよね」
風「じゃ、今から救助隊を作るよ」
ポ「話の流れが中断しちゃうかも知れないよ」
風「そうか。確かにそうだ」
ポ「だからさ、お話を書くときには、最初に出口を決めるんだよ。それでね、それに向けて入り口を作るの。せんせいもいいコーダ(結尾)ができたら曲を書き始めるって言ってるよ」
風「そうなのか。だから終わるんだな」
ポ「最初に出口を決めておくと伏線も張れるんだよ」
風「そうだよな。伏線のある話を書きたいよね」
ポ「それがテクニックていうやつさ」
風「でもさ、ポロだったらどうする? この話」
ポ「う〜ん。えっとねえ。ポロだったら3つくらいの結末を思いつくな。ひとつは夜まで持ちこたえて地下に耐熱壕を掘る。これは長編向きだな。きっといくらでも続きが書けるよ。もうひとつは世界中が発火温度に達して、みんな燃えちゃうの。その様子を詳しく書くんだ。これは破滅テーマだな。3つめはポロふう。なんとか夜まで耐えたポロたちが夜の間に食料や水を確保するために外に出て、無人になったスーパーの業務用冷凍庫から溶けてないアイスクリームを見つけるの。で、みんなでアイスクリームっておいしいね〜って食べたところでおしまい。その情景をとってもいい雰囲気で描写するんだ」
風「そうか。じゃ、風ふうに鉱山の坑道の奥深くに眠るコールドスリープ中のマグロを追いだして、代わりに中に入って温暖化っていうか灼熱化現象が去るのを待つっていう結末にしよう」
ポ「ま、それでもいいけどさ。お話を書くって、筋がとおるっていうだけじゃダメなんだ。楽譜どおりにピアノ弾いてもたしかに曲にはなるけど、感動的じゃないよね。それと同じなんだ」
風「う〜〜ん。そう言われると、どうすればいいか分からないな」

 いつのまにか、ポロと風にいちゃんは、せんせいとポロのような立ち場で話をしているのでした。昔のポロは、せんせいから同じようなことを言われてもなんだかよく分からなかったのに、今のポロは風のおにいちゃんが霧の中にいる様子が手に取るように分かるのでした。

 ふふふ。いっぱいお話を書いてきた修業の成果さ。ポロは天才だからな。
 ははは、はははははははははははははははははは!

 それから数分後に目覚めるまで、ポロは夢の中で天才気分に酔いしれていたのでした。


おしまい


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ポロの掲示板はここ。
ポロの道場

先頭 表紙

2005-07-29 画像テストその2 冬将軍

猫の星の歴史教科書「けやきとの約束」第2回のためのイラスト。本編にもアップしてあります。


先頭 表紙

マチルダさん、そしてみた・そうやさん、つっこみありがとうございます。嫉妬に狂う?冬将軍です。季節外れですが。あ、そうそう、ポロプロジェクトの・・・ぷちっ / 風呂敷の中は芋羊羹 ( 2005-08-01 20:29 )
おかげで涼しい気分になりました! / マチルダ ( 2005-08-01 15:33 )
冬将軍の襟元から顔を出している雪だるまくんがおちゃめですね…(笑)。ところで、ポロ・プロジェクトの連絡先はどこなのでしょうか? / みた・そうや ( 2005-07-31 14:10 )

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