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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2005-06-25 ポロの日記 2005年6月30日(草曜日)粉屋襲撃 その6
2005-06-23 ポロの日記 2005年6月23日(草曜日)昔話 その1
2005-06-22 ポロの日記 2005年6月23日(草曜日)昔話 その2
2005-06-09 ポロの日記 2005年6月6日(光曜日)ポロのホントの望み その1
2005-06-08 ポロの日記 2005年6月6日(光曜日)ポロのホントの望み その2
2005-06-07 ポロの日記 2005年6月6日(光曜日)ポロのホントの望み その3
2005-06-06 ポロの日記 2005年6月6日(光曜日)ポロのホントの望み その4
2005-06-05 ポロの日記 2005年6月5日(風曜日) ポロの携帯“糸”電話
2005-05-27 ポロの日記 2005年5月27日(岩曜日)せんせいを救え! その1
2005-05-26 ポロの日記 2005年5月27日(岩曜日)せんせいを救え! その2


2005-06-25 ポロの日記 2005年6月30日(草曜日)粉屋襲撃 その6

粉屋襲撃 その6


「キャプテン・レンジャー」
「なんだ?」
「ダイじょぶだった?」
「大丈夫なわけないだろ。醜態さらしちまったよ」
「そんなことないよ。身体はって戦ったんだもん」
「お前さんこそケガはなかったのか」
「うん。猫はネズミには滅法つよいんだ」
「そうか。いいな」
「あのさ、ウルトラマンがどうして怪獣相手にプロレス技をかけるのかやっとわかったよ」
「そうか」
「ホントに強いからなんだね」
「たりめーよ。今回集められたヒーローも自然破壊しない連中ばかりだぜ」
「最新式だね」
「ははは。でもこのザマじゃしょーがないな」
「いいじゃないか〜、ネズミはいなくなったんだし」
「おおかた、お前さんがドーラ防衛軍を呼んだんだろうよ」
「え゛〜! どうして分かったの?」
「おれは、お前さんの番組欠かさず見てるんだぜ」
「そっか〜。ポロって有名?」
「ああ、コビトテレビと契約してる家では有名だろうよ」
「どのくらいあるの?」
「太陽系全体で500世帯くらいかな」
「な〜んだ。ほんのちょっとなんだね」
「それもこの星が400世帯だ」
「マイナーなテレビ局だねえ」
「だが、その500世帯はみんなお前さんのファンに違いないぜ。お前さんは最新式のヒーローだ」
「わあ、照れちゃうなあ」
「さあ、明日は朝早い便で帰るんだ。早く休もう」
「うん、そうするよ」

 ポロは小惑星ララトーヤでホントの進歩というものを知った気がしました。
来るときにはショボイ会社に思えた大泉学園航空でしたが、帰りには機内食の経木のカップ麺までが、ホントに最新式のピカピカに思えたのでした。


おしまい


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先頭 表紙

2005-06-23 ポロの日記 2005年6月23日(草曜日)昔話 その1

昔話 その1


「ねえ、せんせい」
「なんだい?」
「また海が迫ってきたみたいだよ」
「ここも引っ越さなくちゃならないくらいかね」
「今ね、焼米(やきごめ)坂の八合目くらいまでかな」
「もうそんなに来たのか」
「たぶん作曲工房は完全に水没したと思うな」
「そうか・・・」
「せんせい。奥さんもさそって最強線沿いに探検に行こうよ」
「そうだな、久しぶりに行ってみようか」

 午後遅く、少し涼しくなってからせんせいと奥さんとポロの3人は、最強線の中弁慶駅から高架軌道に入るために歩き始めました。ところが、もう中弁慶駅周辺も水没していて近づけませんでした。

せ「そうか。このあたりも、よく考えてみれば低地だったからなあ」
奥「そうね。あたしたち最後に線路を歩いたのはいつごろだったかしら?」
ポ「えっと、ポロが覚えてるのは1年くらい前だよ」

 ポロたちは、南義経駅まで行くことにしました。でも、南義経駅近くの地面にも海が押し寄せていて、ポロたちは水辺にうち捨てられていた小さなボートの水を掻き出してそれで、ようやく南義経駅にたどりつきました。

 ホームまで昇る階段は荒れ果てていました。5階建てビルくらいの高さのところにある高架軌道までたどり着くと、3人は線路に降りて南に向かって歩き始めました。
線路は真っ赤に錆びていました。

奥「最後に電車が走ったのはいつごろだったかしらねえ」
せ「10年くらい前じゃないかな」
ポ「ポロ知ってるよ。正確には12年と3ヶ月前だよ」
奥「もうそんなに経つのね」

 夕方のピンク色の空の下、ポロたちは中弁慶駅をとおり過ぎました。
 空の色を反射して金属板のように光る海面から、ビルやマンションの上層部がニョキニョキと立ち上がっていました。
 もう冬なのに、夕方の風はやっと涼しくなったという感じで、奥さんもせんせいも半そででした。武蔵弁慶駅のあたりから電気羊市のほうをみると、ポロたちはかなり海の沖合に出た感じで、海岸線にいくつかの灯が見えました。
 まだ何百人かの人がこのあたりで暮らしているのです。


つづく

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2005-06-22 ポロの日記 2005年6月23日(草曜日)昔話 その2

昔話 その2


 武蔵弁慶駅とタドタド駅との間は、ほかの区間より少し長くて、とうとう夜になってしまいましたが、ちょうど満月が昇ってきて周囲を明るく照らしました。今、月の距離は10万キロくらいで、目で見てもクレーターがはっきりと見えます。満月から満月までの期間もとても短くなりました。だから空は明るくて、まるで夕方くらいの感じです。あと何年かでお月さまはロッシュの限界を超えて、ついには粉々に砕けて地球の環となるそうです。

 3人ともくたびれてきたころ、やっとタドタド駅に着きました。ホームに上がると、せんせいと奥さんは作曲工房があったあたりを眺めていました。目印の見なれたマンションはすぐに分かりました。でも、その近くの海面には何もありませんでした。

奥「去年来たときには太陽電池パネルが波間から出ていたのにね」
せ「そうだね。もう完全に水没したみたいだね」
ポ「ボートで真上に行けばきっと見えるよ」
奥「そうね」

 奥さんは用意してきた紅茶とビスケットを出してくれました。

ポ「おいしいなあ」
奥「そうね。でも、そろそろまた食べ物探しに行かないと、パントリーの在庫が少なくなってきたわ」
せ「よし、じゃあ明日は北のほうに行ってみようか」
ポ「あのさ、あのさ。もし音速ビルのほうに行くんだったらさ、イオタさんのお店でコーヒー飲もうよ」
奥「そうね。まだやってるかしら」
ポ「やっててほしいなあ」

 すると、目の前でイルカがジャンプしました。水しぶきが月の光を反射してキラキラ光りました。

ポ「わ、びっくりした!」
奥「地球が全部海になったらイルカたちの天下ね」
せ「そうだね」
ポ「じゃあさ、ポロたちもイルカになろうよ」
奥「じゃ、さっそく明日から泳ぐ練習しなくちゃね」
ポ「あ、やっぱりポロやめとく」

 さっきのイルカが、今度は少し離れたところで連続ジャンプしました。

ポ「いいなあ」

 ポロは思わずつぶやきました。


おしまい


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ミタさん。でもさ、ちょっとだけこんなところに行ってみたくない? / ポロ ( 2005-06-24 09:24 )
なんだか、ちょっと悲しくなってしまいました… / みた・そうや ( 2005-06-23 19:57 )

2005-06-09 ポロの日記 2005年6月6日(光曜日)ポロのホントの望み その1

ポロのホントの望み その1


 ポロは、なんだかすっきりしない気分だったので、久しぶりに日本橋馬喰町(ばくろちょう)のデカルト商会を訪ねました。

 とんとん! ごめんくらさーい!

 雑居ビルの地下1階にある、デカルト商会の陰気なドアが開くと、松戸哲学さんのもの静かな声が聞こえてきました。

「いらっしゃいませ。お久しぶりでございます」

 ポロが中に入ると、哲学さんとポロは古い木のテーブルに向かいあって座りました。

「今日は、どのようなご用でしょうか」
「どうして来たか分かんないの」
「私どものもっとも得意な分野のひとつでございます。少々お待ちください」

 哲学さんは部屋の奥から技術文書養成キットのようなものを持ってきました。

「それなに?」
「これは、自分が本当は何をしたいのか教えてくれる願望真贋判定キットでございます」
「どうしてポロにそんなものが必要なの?」
「ポロ様は、1000曲以上も収められる携帯音楽再生装置をお持ちでしょうか?」
「ううん、持ってないよ」
「欲しいとお思いですか?」
「もっちろん! ポロは音楽が大好きなんだ!」
「では、判定してごらんにいれましょう」

 願望真贋判定キットは小さなノートパソコンのような形をしていましたが、木でできていました。ディスプレイは寒天みたいなゼラチンみたいな感じでした。

「ゼリーディスプレイです」
「スイッチがないけど、どうやって電源を入れるの?」
「スイッチはありません。よびかけるのです」

 そう言うと、哲学さんはゼリーディスプレイに向かって呼びかけました。

「ニミュエさん」

 ・・・ふぉん!

 不思議な雰囲気でゼリーディスプレイに光が宿ると、そこにティンカーベルのような妖精が現れました。


つづく

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2005-06-08 ポロの日記 2005年6月6日(光曜日)ポロのホントの望み その2

ポロのホントの望み その2


ニ「呼んだ? 哲学さん」
哲「はい、あなたを必要とする人、というか猫が現れました」
ポ「わ、かーいいなあ!」
ニ「初めまして。私はニミュエ」
ポ「ポロだよ。ニュミエさん」
ニ「ニミュエよ」
ポ「ご、ゴメなさいニュミエさん」
ニ「・・・・・」
哲「さっそくですが、お答えを・・」
ニ「大容量の携帯型音楽再生機ね。多くの人がそうだけど、この猫ちゃんも霧の中をさまよっているわね」
ポ「わ、せんせいみたいなこと言う!」
ニ「あなた、好きな曲を言ってみて」
ポ「えっと“夕べの祈り”だよ」
ニ「それから?」
ポ「それから、えっと“ウィンドワード”かな・・」
ニ「それから?」
ポ「あ、思いだした。“タコタコあがれ”」
ニ「それから?」
ポ「急に言われても分かんないよ」
ニ「そんなものよ。あと997曲分はどうするの?」
ポ「そのうち埋まるよ」
ニ「その頃は、以前聴いていた曲は聴かなくなるわ」
ポ「でも、持ってると便利かも」
ニ「それが売る側の戦略なの。心の霧に乗じて売り込むのよ。霧が晴れている人は本当に欲しいのかどうか分かるものなの」
ポ「でも、きっと役にたつよ」
ニ「大容量っていうのは確かに人によっては使い道があるのよ。でも、それは聴くためじゃないの。あなたに限らず、多くの人には要らないわ」
ポ「でも、欲しいよ」
ニ「欲しいだけだわ。必要じゃないの」
ポ「必要だから欲しいんじゃないか〜」
ニ「いえ、あなたが自分のことを理解していないだけだわ」
ポ「そんなことないよ」
ニ「あなたは、もう音楽の真実に気づきつつあるわ」
ポ「どういうこと?」
ニ「あなたは人の演奏じゃ満足できないはずよ」
ポ「ポロ、ピアノがちょーヘタだよ」
ニ「うまいに越したことはないけど、うまいヘタじゃないわ。あなたにとっての真実の演奏よ」
ポ「・・・・そうかな」
ニ「あなたは自分では弾けない難しい曲をCDで聴いたり、演奏会に行ったりして本当に満足できるかした?」
ポ「そう言われると、いつもなんかしっくりこないかも」
ニ「それはね、ゲームセンターですごく上手な人の見てるのと似てるのよ。最初は感動しちゃうの。すごいなあって。でも、その驚きがなくなると、興味がなくなってくるはずよ。次の興味はもっと凄い人を見つけたときまでお預け。あなたがそこで得ているのは本当に必要なものじゃなくて、ただの刺激よ」
ポ「・・・!」
ニ「あなたが求めている本当の音楽は決して飽きたりしない、心の底から満たされるものよ」
ポ「そうかも」
ニ「それはアクロバティックな技巧を要求する音楽というわけじゃないの。心休まる、本当に簡単な音並びの中に宿っているのよ。そういう音楽は録音しちゃったら命を失うの」
ポ「そうかも〜・・・・!」
ニ「携帯型音楽再生機の中に、あなたが本当に求めている音楽はないわ。ご自分で演奏なさい。それも真剣に」
ポ「がび〜〜ん! そうだよ、そうに違いない。アリガト、ニュミエさん」
ニ「いい、もう一度だけ言うわ。ニミュエよ」
ポ「わ、ゴメんよ〜、もう間違えないよニュミエさん!」
ニ「哲学さん、あたしの名前も言えないような猫に買われていくのはお断りよ」
ポ「わ、ニュミエさん、お願い。ポロ、ニュミエさんの弟子になりたいよ〜!」
哲「残念ですが、ポロ様。ここの商品は特殊ですから、嫌われてしまうと無理です」
ポ「わ〜〜〜! ニュミエさ〜ん!」


つづく

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2005-06-07 ポロの日記 2005年6月6日(光曜日)ポロのホントの望み その3

ポロのホントの望み その3


 ポロは工房に戻ると、哲学さんに書いてもらった<ニ・ミュ・エ>というメモを前に、発音の特訓を始めました。

「ニ・ミュ・エ」

 言えるじゃないか、ニュミエ! あ・・、続けると言えないかも。
 ポロは、イモようかん断ちをして願をかけると、来る日も来る日も<ニミュエ>の発音練習を続けました。
 そして2週間が過ぎ、とうとうポロは100回つづけて発音しても間違えなくなりました。
 ポロは馬喰町に向かいました。

「ニミュエニミュエニミュエニミュエニミュエニミュエニミュエニミュエ・・・・・」

 ばっちりだぜ!

 デカルト商会につくと、さっそく願望真贋判定キットの妖精に話かけました。

ポ「ニミュエさん! ポロ、言えるようになったでしょ!」
ニ「・・・そうね、嬉しいわ・・・」

 なんだか様子が変でした。憎まれ口をきいていた時の元気がありません。

哲「ポロ様、願望真贋判定キットは寿命が近づいています」
ポ「!」

 ポロは技術文書達人養成キットに宿っていた師匠のことを思いだしました。

ポ「わ〜〜〜〜〜〜! ニミュエさん、死なないで!」
ニ「発音練習、頑張ったわね。その練習のお陰で、あなたが私の教えを必要だと思う心は本物になったわ」
ポ「もちろん本物だよ〜!」
ニ「そうね。全てのものに寿命があるわ。あなたのせんせいは不死身なの?」
ポ「そんなことないよ」
ニ「それでは私と同じことだわ。寿命の長さじゃないの。私はまだもう少しは持つわよ。でも、せんせいを含めて、あなたのまわりにいる誰かだって、大きな事故に遭えば、私より早く死んでしまうかも知れないのよ」
ポ「わ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」

 ポロは、ニミュエさんが言ってることを一気に理解したのでした。考えてみれば命とはそういうものなのでした。自分の馬鹿さと後悔と悲しさに、涙があとからあとからあふれ出してきました。

ニ「花は寿命が短いけど、あなたは枯れない造花のほうが好きかしら?」

 ポロは泣きじゃくっていてしゃべれないので首をよこに振りました。花は、みずから、そのことをポロたちに教えてくれていたのでした。

ニ「あなたは、せんせいが生きている間に全てを学ぼうとしているかしら? 第一、今のせんせいと来年のせんせいは、厳密には違う人よ。あなたは今の先生から学べることも、来年のせんせいから学べることも必要と思っているのではないかしら?」

 ポロは何回も何回も首を縦に振りました。

ニ「だから真剣になれるのよ」

 うんうん・・。

ニ「そう。じゃ、あなたは不死身の私やせんせいじゃなくて、命の限りある私やせんせいを選ぶのね」

 びえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!


つづく

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2005-06-06 ポロの日記 2005年6月6日(光曜日)ポロのホントの望み その4

ポロのホントの望み その4


 ポロは、ますます悲しくなってしまいました。本当にそうだったからです。ポロは、きっと不死身の人なんかとお友達にはなれません。不死身の人は何回失敗しても次があるからです。どうして今まで生きていること、生きていくことの意味に気づかなかったのでしょか。
 生きていくって、こんなに悲しいことだったのです。

ニ「いいえ、だからすばらしいのよ」

 ぴえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!

 そんなこと、もう気がついてるよ。これは後悔の涙なんだってば。技術文書養成キットの師匠の時にも分かったはずなのに、どうしてポロは懲りない猫なんだ〜。

ニ「ああ。思ったよりも早く終わりになりそうよ」

 やだよやだよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!

 ポロは泣きながら地団駄を踏みました。

ニ「私のために毎日発音練習をしてくれてありがとう。あなたの身体からイモようかん好きの匂いが消えてるわ。イモようかん断ちまでしてくれたのね・・・・」
ポ「ニミュエさんは、ポロの師匠だよ!」

 ポロは、やっとの思いで言葉を口にすることができました。

ニ「そんなにエラくないわ。でも、私もあなたに巡り会えて幸せよ。あなたはもう霧の中にはいないわ・・・・さようならポロちゃん、哲学さん」

 そういうと、ゼリーディスプレイの光が一瞬明るく輝いて、それから徐々に暗くなって、ついにニミュエさんの姿が見えなくなりました。
 哲学さんはディスプレイに向かって深々と一礼しました。

 まもなく、キットそのものが力なく崩れ去りました。それは気高く、神々(こうごう)しい残がいでした。
 ポロは哲学さんにお願いして、残がいをもらって帰りました。

 その日の夕方、ポロは、おばあちゃんの畑の片隅の技術文書達人養成キットの師匠のお墓のとなりに、ニミュエさんのお墓を建てました。

 ぱよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んんん!

 その音のする方向に目を向けると、真っ赤な夕焼けの中、畑の西側の高架軌道を走る上り最強線のシルエットが、ニミュエさんの死を悼むかのように、長い長い警笛を響かせながら夕焼けの中をゆっくりと進んで行くのでした。


おしまい


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先頭 表紙

マチルダさん、じ〜んと来たでしょ。アリガト〜! / ポロ ( 2005-06-08 00:49 )
じ〜ん。私が写真を撮ろうと思った時の気持ちを思い出しました。衝撃から立ち直れるかも、です。 / マチルダ ( 2005-06-07 19:12 )

2005-06-05 ポロの日記 2005年6月5日(風曜日) ポロの携帯“糸”電話

ポロの携帯“糸”電話


「せんせい」
「なんだい?」
「とうとう工房で携帯電話持ってないの、せんせいとポロだけになっちゃったね」
「そうか」
「でも、心配しなくてもいいよ」
「別に心配なんかしてないさ」
「いいの。ポロがさ、携帯“糸”電話作ったから」


先頭 表紙

あ、ホントだ!よく見るとうっすらと日付が!(^^) / みた・そうや ( 2005-06-06 10:52 )
マチルダさん、当たり! マチルダさんも超能力があったのか〜。(それとも風にいちゃんのスキャナとマチルダさんのPCが超能力なんだね) これは、たろちゃんのいたずら描きなの。ポロが糸電話で遊んでたらカレンダーを切って作ったメモ用紙にサササって描いてくれたの。 / ポロ ( 2005-06-06 10:35 )
ミタさん、そだよ。ミタさんが糸電話持っていっても、せんせいはちゃんとお話してくれます。せんせいってね、そういう人なの。 / ポロ ( 2005-06-06 10:31 )
私も携帯を持っていないので、糸電話つくりましょ。これはカレンダーの裏ですね。 / マチルダ ( 2005-06-06 09:10 )
ポロちゃんのイラスト、せんせいとお話中なのでしょうか。可愛いですね。 / みた・そうや ( 2005-06-06 07:24 )

2005-05-27 ポロの日記 2005年5月27日(岩曜日)せんせいを救え! その1

せんせいを救え! その1


奥「ポロちゃん」
ポ「なあに、奥さん」
奥「せんせいの健康診断の結果がよくないのよ」
ポ「どうしたの?」
奥「高脂血症だって」
ポ「それってなあに?」
奥「血液中の中性脂肪やコレステロールの値が高くなる病気よ」
ポ「せんせいがビョーキだっていうことは知ってたけど、病気も持ってたのか〜」
奥「もちろん病院にも行かせるけど、ちょっと調べたら食事と生活を変えないとダメらしいのよ」
ポ「そうなのか〜。それじゃ、ポロたちで無理やり変えちゃえばいいよ」
奥「何から始めればいいのかしら?」
ポ「うん、ポロがいろいろと調べてみるよ」


 それからポロは、猫の星ドーラ王立病院の内科部長のステファニー博士に連絡をとりました。ステファニー博士はドーラ医学界きっての凄腕女性内科医です。

ポ「あ、ステファニー博士。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
ス「アメン王子、お久しぶりでございます。どのようなことですか?」
ポ「あのさ、せんせいが高脂血症になっちゃったんだけど、どうすればいいかなと思って」
ス「高脂血症の敵は不摂生です。そのようなだらしない人は放っておいたらいかがですか?」
ポ「そ、それを言われるとつらいんだけど、せんせい、けっこういいとこあるから何とかしてあげたいんだよ。それに、猫の世界と違って、高脂血症の人って多いのさ」
ス「昔は人間世界だって高脂血症の人は少なかったのではないでしょうか、王子」
ポ「そ、そだけど・・・」
ス「人間社会が堕落している証拠です。王子、そんなところにいつまでもいらっしゃらずに、はやくドーラにお戻りになられたほうがよろしいんじゃありませんこと?」
ポ「うん、アリガト。じゃあね」

 ステファニー博士は、ぜんぜん悪い人じゃないんだけど、猫の星には生活習慣病が少ないので地球の様子が理解できないようでした。ポロは、今度はクランベリーヒルの松戸博士に連絡しました。

ポ「あ、松戸博士?」
松「いかにも。その声はポロどんじゃの?」
ポ「そだよ、博士、元気?」
松「ああ、ちょっと中性脂肪値と総コレステロール値が高いがの、なんとかやっておる」
ポ「わ、実はせんせいも高脂血症って診断されちゃったんだ」
松「それはいかん。じゃが、ちょうどよいことに、ワシが生活習慣自動変更装置を開発したから、さっそく1セット届けよう」
ポ「ホント? アリガト〜!」
松「なあに、いいんじゃ」

 次の日の夜、松戸博士はリンゴ丸にいろいろ積み込んでやってきました。

 どどどどどどどど〜!

 ワンボックスカータイプの宇宙船、りんご丸II世号は工房の玄関前に派手に減速スラスターを噴射しながら着陸しました。

ポ「わ〜、博士。これじゃご近所から苦情殺到だよ」
松「ごめんごめん。今日は荷物が多いので、いつものエンジンだけでは着陸できんかったのじゃ」

 ぴゆぴゆ!

ポ「わ、ロケット号! 久しぶりだねえ。地球でもしゃべれるようになったのか〜」
ロ「ぴゆぴゆ」

 せんせい以外の家族みんなも加わって、深夜の突貫工事が始まりました。


つづく

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2005-05-26 ポロの日記 2005年5月27日(岩曜日)せんせいを救え! その2

せんせいを救え! その2


松「最初は、自動逆走階段の取り付けじゃ」
海「博士、ステップは全部今までのを使うんだね?」
松「そうじゃ。さすが海太郎くん、察しがいいのう」

 大工仕事が苦手な風にいちゃんとたろちゃんは材料運びの手伝いをしました。奥さんはお茶を入れて、ポロはイモようかんを食べながらお茶を飲みました。

松「さあ、できた」
奥「これは、どういうふうに役に立つの、博士?」
松「これは、ワシが発明した自動逆走階段というものじゃ。せんせいを識別して、昇ろうとすれば下り、下ろうとすれば昇る階段じゃ。これを使えば3階に行くまでに、知らず知らずのうちに6階に行くだけの運動量になるのじゃ」
奥「でも、エスカレーターのように動いたらすぐに怪しまれるんじゃないんですか?」
松「はーっはっは! よいところに気がつきなすった。今、識別機能を停止して誰にでも作動するようにしたから、さあ、昇ってみてくだされ」

 さっそく、みんなで昇ってみました。

奥「これ壊れていませんか。いつもと全然変わりませんけど」
松「では奥さん、今どこにいるかよくご覧くだされ」
奥「ま〜! もう昇りきったつもりだったのに、半分しか来てないわ!」
松「これは、日本に古来より伝わる“キツネに化かされた”時の“キツネ効果”を応用したものじゃ」
風「すごいね! とむりんなんていつもうわの空で階段昇ってるからきっと気がつかないよ」
松「ははは。きっと効果抜群ですじゃ!」
たろ「あれ、ポロは?」
奥「大変、階段の途中で行き倒れてるわ」
海「こいつ、イモようかん食っちゃ寝てるから、体力ゼロなんだよ」

 松戸博士は識別機能にポロを加えました。

 そして、次にキッチンに行くと、電子レンジやガスレンジに小さな部品を取り付けました。まな板にも取り付けました。

松「これは脂肪分解装置じゃ。これの装置があれば、調理するとサーロインステーキがヒレステーキになり、このまな板に乗せればトロがただの赤身になるのじゃ」
奥「まずくなったりしませんか?」
松「もちろんなる」
奥「まあ!」
松「大丈夫じゃ。とむりん君は味オンチじゃからのう、ははははは!」

 そこにいた誰もが、それって松戸博士のことだろうと思いましたが、黙っていました。松戸博士は、ひどい味オンチだったのです。

 最後に、松戸博士はせんせいのピアノにも部品を取り付けました。

松「これは、ピアノ用体力消耗装置じゃ。鍵盤もペダルも全部が重くなるのじゃ」
ポ「うわ、鍵盤が鉄ゲタみたいに重いよ」
松「ペダルはランボルギーニのクラッチの重さに合わせてある」

 ポロには踏めませんでした。

松「階段は有酸素運動、このピアノは無酸素運動ができる。キッチンでは食餌療法じゃ。これでとむりん君も健康が取り戻せることは間違いないじゃろう」

 明け方、博士とロケット号は帰っていきました。

 さらばじゃ!
 ぴゆぴゆ!

 どどどどどどどど〜〜〜!

ポ「うわ〜、ご近所から苦情が来ちゃうよ!」

 リンゴ丸が空の点になって、それが消えるまでポロは手を振りつづけました。


おしまい



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わ〜、ミタさん。レスが遅くなっちゃった。ゴメなさい! ポロも体脂肪が減ったかも〜! / ポロ ( 2005-06-06 10:36 )
ポロちゃんも鍛えられて、一石二鳥ですね♪ / みた・そうや ( 2005-05-28 12:51 )

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