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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2005-05-27 ポロの日記 2005年5月27日(岩曜日)せんせいを救え! その1
2005-05-26 ポロの日記 2005年5月27日(岩曜日)せんせいを救え! その2
2005-05-22 ポロの日記 2005年5月19日(草曜日)熱き修業の日々 解決編 その1
2005-05-21 ポロの日記 2005年5月19日(草曜日)熱き修業の日々 解決編 その2
2005-05-20 ポロの日記 2005年5月19日(草曜日)熱き修業の日々 解決編 その3
2005-05-19 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その1
2005-05-18 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その2
2005-05-17 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その3
2005-05-16 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その1
2005-05-15 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その2


2005-05-27 ポロの日記 2005年5月27日(岩曜日)せんせいを救え! その1

せんせいを救え! その1


奥「ポロちゃん」
ポ「なあに、奥さん」
奥「せんせいの健康診断の結果がよくないのよ」
ポ「どうしたの?」
奥「高脂血症だって」
ポ「それってなあに?」
奥「血液中の中性脂肪やコレステロールの値が高くなる病気よ」
ポ「せんせいがビョーキだっていうことは知ってたけど、病気も持ってたのか〜」
奥「もちろん病院にも行かせるけど、ちょっと調べたら食事と生活を変えないとダメらしいのよ」
ポ「そうなのか〜。それじゃ、ポロたちで無理やり変えちゃえばいいよ」
奥「何から始めればいいのかしら?」
ポ「うん、ポロがいろいろと調べてみるよ」


 それからポロは、猫の星ドーラ王立病院の内科部長のステファニー博士に連絡をとりました。ステファニー博士はドーラ医学界きっての凄腕女性内科医です。

ポ「あ、ステファニー博士。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
ス「アメン王子、お久しぶりでございます。どのようなことですか?」
ポ「あのさ、せんせいが高脂血症になっちゃったんだけど、どうすればいいかなと思って」
ス「高脂血症の敵は不摂生です。そのようなだらしない人は放っておいたらいかがですか?」
ポ「そ、それを言われるとつらいんだけど、せんせい、けっこういいとこあるから何とかしてあげたいんだよ。それに、猫の世界と違って、高脂血症の人って多いのさ」
ス「昔は人間世界だって高脂血症の人は少なかったのではないでしょうか、王子」
ポ「そ、そだけど・・・」
ス「人間社会が堕落している証拠です。王子、そんなところにいつまでもいらっしゃらずに、はやくドーラにお戻りになられたほうがよろしいんじゃありませんこと?」
ポ「うん、アリガト。じゃあね」

 ステファニー博士は、ぜんぜん悪い人じゃないんだけど、猫の星には生活習慣病が少ないので地球の様子が理解できないようでした。ポロは、今度はクランベリーヒルの松戸博士に連絡しました。

ポ「あ、松戸博士?」
松「いかにも。その声はポロどんじゃの?」
ポ「そだよ、博士、元気?」
松「ああ、ちょっと中性脂肪値と総コレステロール値が高いがの、なんとかやっておる」
ポ「わ、実はせんせいも高脂血症って診断されちゃったんだ」
松「それはいかん。じゃが、ちょうどよいことに、ワシが生活習慣自動変更装置を開発したから、さっそく1セット届けよう」
ポ「ホント? アリガト〜!」
松「なあに、いいんじゃ」

 次の日の夜、松戸博士はリンゴ丸にいろいろ積み込んでやってきました。

 どどどどどどどど〜!

 ワンボックスカータイプの宇宙船、りんご丸II世号は工房の玄関前に派手に減速スラスターを噴射しながら着陸しました。

ポ「わ〜、博士。これじゃご近所から苦情殺到だよ」
松「ごめんごめん。今日は荷物が多いので、いつものエンジンだけでは着陸できんかったのじゃ」

 ぴゆぴゆ!

ポ「わ、ロケット号! 久しぶりだねえ。地球でもしゃべれるようになったのか〜」
ロ「ぴゆぴゆ」

 せんせい以外の家族みんなも加わって、深夜の突貫工事が始まりました。


つづく

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2005-05-26 ポロの日記 2005年5月27日(岩曜日)せんせいを救え! その2

せんせいを救え! その2


松「最初は、自動逆走階段の取り付けじゃ」
海「博士、ステップは全部今までのを使うんだね?」
松「そうじゃ。さすが海太郎くん、察しがいいのう」

 大工仕事が苦手な風にいちゃんとたろちゃんは材料運びの手伝いをしました。奥さんはお茶を入れて、ポロはイモようかんを食べながらお茶を飲みました。

松「さあ、できた」
奥「これは、どういうふうに役に立つの、博士?」
松「これは、ワシが発明した自動逆走階段というものじゃ。せんせいを識別して、昇ろうとすれば下り、下ろうとすれば昇る階段じゃ。これを使えば3階に行くまでに、知らず知らずのうちに6階に行くだけの運動量になるのじゃ」
奥「でも、エスカレーターのように動いたらすぐに怪しまれるんじゃないんですか?」
松「はーっはっは! よいところに気がつきなすった。今、識別機能を停止して誰にでも作動するようにしたから、さあ、昇ってみてくだされ」

 さっそく、みんなで昇ってみました。

奥「これ壊れていませんか。いつもと全然変わりませんけど」
松「では奥さん、今どこにいるかよくご覧くだされ」
奥「ま〜! もう昇りきったつもりだったのに、半分しか来てないわ!」
松「これは、日本に古来より伝わる“キツネに化かされた”時の“キツネ効果”を応用したものじゃ」
風「すごいね! とむりんなんていつもうわの空で階段昇ってるからきっと気がつかないよ」
松「ははは。きっと効果抜群ですじゃ!」
たろ「あれ、ポロは?」
奥「大変、階段の途中で行き倒れてるわ」
海「こいつ、イモようかん食っちゃ寝てるから、体力ゼロなんだよ」

 松戸博士は識別機能にポロを加えました。

 そして、次にキッチンに行くと、電子レンジやガスレンジに小さな部品を取り付けました。まな板にも取り付けました。

松「これは脂肪分解装置じゃ。これの装置があれば、調理するとサーロインステーキがヒレステーキになり、このまな板に乗せればトロがただの赤身になるのじゃ」
奥「まずくなったりしませんか?」
松「もちろんなる」
奥「まあ!」
松「大丈夫じゃ。とむりん君は味オンチじゃからのう、ははははは!」

 そこにいた誰もが、それって松戸博士のことだろうと思いましたが、黙っていました。松戸博士は、ひどい味オンチだったのです。

 最後に、松戸博士はせんせいのピアノにも部品を取り付けました。

松「これは、ピアノ用体力消耗装置じゃ。鍵盤もペダルも全部が重くなるのじゃ」
ポ「うわ、鍵盤が鉄ゲタみたいに重いよ」
松「ペダルはランボルギーニのクラッチの重さに合わせてある」

 ポロには踏めませんでした。

松「階段は有酸素運動、このピアノは無酸素運動ができる。キッチンでは食餌療法じゃ。これでとむりん君も健康が取り戻せることは間違いないじゃろう」

 明け方、博士とロケット号は帰っていきました。

 さらばじゃ!
 ぴゆぴゆ!

 どどどどどどどど〜〜〜!

ポ「うわ〜、ご近所から苦情が来ちゃうよ!」

 リンゴ丸が空の点になって、それが消えるまでポロは手を振りつづけました。


おしまい



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わ〜、ミタさん。レスが遅くなっちゃった。ゴメなさい! ポロも体脂肪が減ったかも〜! / ポロ ( 2005-06-06 10:36 )
ポロちゃんも鍛えられて、一石二鳥ですね♪ / みた・そうや ( 2005-05-28 12:51 )

2005-05-22 ポロの日記 2005年5月19日(草曜日)熱き修業の日々 解決編 その1

熱き修業の日々 解決編 その1


「せんせい」
「どうした?」
「正直に白状するよ〜。ポロは修業のやりかたが分からない〜」
「なんだ。きのうはずいぶんと自信がありそうだったじゃないか」
「ありそうだっただけなんだよ〜。はい、これ修業日記」
「どれどれ。てんとう虫一匹を発見か。発見してどうしたんだ」
「どうもしないんだよ〜」
「ベートーヴェンのピアノ協奏曲が気持ちよかったと言っていたのは眠ってしまったからなのか」
「うん、気がついたら終わってたんだよ」
「そうだったのか」
「ポロは、どうすればいいんだ〜」
「今までのレッスンは、ほとんど全てそのためにやってきたつもりだったんだが、まるで成果が上がっていなかったということか・・」
「わあ〜、ゴメんよゴメんよ〜! せんせい、今度からちゃんとやるからさ〜」
「いや、ポロのせいではないかも知れないね。私がポロに向かないやり方をしていたのかも知れない」
「そ、そっかなあ? ポロに向いたやり方なんてあるのかなあ?」
「たとえば深みを探ろうとしない人に型を教えても意味がない。その人は型どおりやろうとするだけだからだ」
「うんうん」
「しかし、すぐに自分流でやろうとする人には型をきっちりと伝える必要があるわけだ」
「なんだか音楽コラムみたいになってきたね、せんせい」

 でも、そこからが違いました。

「ポロ、愛用のポータブルMDプレーヤーはフル充電してあるか?」
「いつでもバッチリだよ」
「よし、それではこのMDをセットして出かけるぞ」
「ど、どこに行くの〜?」
「いいからついてくるんだ」

 せんせいは、ポロを笹目川の自然遊歩道に連れてきました。

「さあ、ポロ。MDを再生してごらん」
「うん。あ、この曲なあに?」
「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。今から40年以上前のケンプ、ライトナー、ベルリンフィルの、背筋がピンと伸びた演奏だ」
「古くてもいい音だね〜」
「最近は技術が進んで、こういうことができるようになったんだ」
「この曲を聴いてると、いつも見てる景色なのになんだか雄大に見えるなあ。でも、どうして歩きながら聴くの?」
「寝ないようにだ」
「・・・そ、そっか」

 それからポロたちは一言も言葉を交わさずにピアノ協奏曲第4番が終わるまで歩き続けました。そして、とうとう別所沼まで来てしまいました。
 沼のほとりの木陰のベンチにたどり着くと、せんせいは一休みしようといって、どっこしょと腰掛けました。


つづく

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2005-05-21 ポロの日記 2005年5月19日(草曜日)熱き修業の日々 解決編 その2

熱き修業の日々 解決編 その2


「せんせい。ポロは今まで、こんなにいい曲は聴いたことがないよ!」
「そうか。本当はこんなに集中して聴いたことがないということかも知れない」
「なるほど、そうか。じゃあさ、ほかの曲も集中して聴けばいい曲かな?」
「そういうこともあるだろう。いつも言っているように、その人の価値は大事に思っていることがあるかどうかだ。大事に思っていることというのは、その事のためなら真剣になれる、あるいは心を傾けることができるということだ。だから自分にさえウソがつけない」
「今ならそれがスイスイ分かるよ」
「ポロ、ほらそこの植え込みにてんとう虫がいるじゃないか」
「あ゛〜〜! ホントだ。きのう、あんなに探したのに・・」
「どこを探したんだ?」
「え・・、そ、それはナイショだよ」
「おおかた和菓子屋の店先というところだろうな」
「ギクっ! ・・・なんで分かるんだ〜・・」
「それ以外のところは思いつかないだろう、ポロの場合」
「ねえ、ポロって単純?」
「悪いことはしないほうがいいと思うね。すぐに捕まる」
「そうか〜。これからは、もう少し複雑で陰のある猫を目指すことにしよう」
「ところで、ポロはてんとう虫を見つけたら何を見ようとしたんだ?」
「だからてんとう虫だよ」
「同じ音楽を聴いても同じ景色を見ても、人によって見るものが異なる。なぜなら、どんなものでも、あまりに情報量が多いので、我々はそれらから選択して受け取らなければならないからだ」
「そだったね。思いだしたよ」
「何を見なくちゃいけないという決まりはない。だからこれから話す視点は、ほんの一例だよ。ポロは、これを超えていかなくてはならない」
「うん」
「てんとう虫はどこにいる?」
「あの植え込みの葉っぱの上」
「どうしてそこにいるんだ?」
「あの葉っぱがエサなんじゃないかな」
「そういうてんとう虫もいるだろう。そこに住み着いている小さな虫をエサにしているてんとう虫もいるだろう。私はあまりくわしくないからどちらなのかよく分からないが、どちらにせよ、エサに関係しているのは十分考えられることだ」
「うん」
「では、あの植物はなぜあそこに生えているんだ?」
「沼も近いし、水があるし日も当たるからかな」
「そうだ」
「では、どうしてここに沼があるのかな?」
「えっと、そういう地形なんだよ」
「では、この地形はなぜできたのかな?」
「ん〜〜〜と、それは地球のせいだよ」
「まあ、多少乱暴ないい方だが、そういうことだ」
「せんせい、ポロに何を言いたいの?」
「ポロ、この沼のまわりにずっと植えられている大木はメタセコイアだ」
「うん。モリアキおじいちゃんから聞いたよ。どこかの奥地で発見された珍しい木だったのに、人間のせいで日本中に増えたって」
「そうだね。植物は水のポンプと考えることができる。根から吸い上げた水分をてっぺんの葉にまで届かせているからね」
「そうか、何十メートルも汲み上げているんだね」
「そして、葉からは水分がどんどん蒸散している。さあ、想像してごらん。木の中の水の動きを」
「わあ、木は水でいっぱいだよ」


つづく

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2005-05-20 ポロの日記 2005年5月19日(草曜日)熱き修業の日々 解決編 その3

熱き修業の日々 解決編 その3


「今度はその想像力で、てんとう虫の身体の中の水を想像するんだ。てんとう虫には閉鎖されて完全に循環する閉鎖血管系はないはずだけれど、体液は心臓をポンプにして循環している」
「うん、なんとなく分かってきたぞ。これが命のデザインというやつだね」
「そうだ。その水や栄養の流れを、今とまっている植物、あいだにアブラムシのようなエサを介しているかも知れないが、とにかく“てんとう虫-植物”の系としてイメージするんだ」
「うん、水と栄養の流れをイメージしたよ。てんとう虫は植物がないところでは生きていけないんだね」
「そうだ。では次に、この地面の水分もその系に加えて」
「ああ、別所沼がないと、この植物は育たないかもしれないんだね。そして、その植物とアブラムシとてんとう虫はシステム(系)なんだ」
「よし。これはひとつの視点に過ぎないけれども、ポロはてんとう虫が見えたことになるんじゃないかな」
「・・・あ〜。すごいよ、せんせい。すごすぎるな。今まで命は独立しているような気がしてたよ、ポロ」
「そうか」
「生きるって、こういうことなんだね。たんぽぽもてんとう虫もポロたちも地球の一部じゃないか〜」
「これが“ガイア理論”だ」
「そうか〜。“ガイア理論”なんて知ってるつもりだったよ〜、ポロ。レイモンド・ラブロック博士のことを書いてある本、読んだもん」
「でも、想像力がついていかなかった・・」
「そうだよ、今こそ分かったよ。ポロのなかには言葉だけがあったっていうことだな。でも、今日は事実から学んだよ」
「実はガイア理論が真実かどうかは分からないんだ。それに、そんなことはどうでもいい」
「きっかけなんだね。こうやって事実に目と想像力を向けるための」
「そうだよ。生け花をたしなむひと全てが花を理解しているわけではないし、ピアノを弾く人全てが音楽を理解しているわけでもない。しかし、それらは必ず理解のきっかけにはなることだろう」
「しなきゃならないよ。もったいなさすぎるよ〜」

 それからせんせいは近くのコンビニで、おむすびとお茶を買ってきてくれました。ポロたちはちょっと早いお昼を食べてから、また歩き始めました。

「せんせい。ポロさ、このコンチェルト4番が聴けるような気がしてきたよ。帰りも聴きながら帰る」
「そうか」

 ポロは、きのうと全然ちがってしまった今日が、まだ残り何時間もあることを心強く思ったのでした。

 ふふふ、修業なんて分かればチョロいじゃないか〜♪

(うわ、ポロ、それがいけないんだ〜、その軽いノリはなんとかならないものか)


※いつか書かれる真の解決編につづく(かも)


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先頭 表紙

真の解決編は書けないかも〜! / ポロ ( 2005-05-20 20:22 )
おお、ポロちゃんもついに開眼なのですね〜。真の解決編も楽しみです♪ / みた・そうや ( 2005-05-18 19:26 )

2005-05-19 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その1

熱き修業の日々 その1


 46億年の旅から戻ったポロは迷いもふっ切れて、猛然と修業生活に戻ったのでした。

「よし、最初は自然の観察からだ。やっぱり自然を観察しないとポロの中に美的基準が育たないからな。計画によると、今日は、てんとう虫の産卵からだぞ。まずはてんとう虫を探さなくちゃだな」

 ポロはさっそく和菓子屋さんの店頭とかケーキ屋さんの店頭に出かけて、てんとう虫を探しました。でも、いくら歩き回ってもとうとうてんとう虫は見つかりませんでした。
 すると道端で一匹の小さな黒い虫がひっくり返っていました。

「今日は転倒虫一匹を見つけたって修業日記に書いておこう」

 次は音楽の勉強だ。ベートーヴェンのピアノ協奏曲を毎日1曲ずつ聴くって決めたんだっけな。ポロは工房のリビングに戻るとCDをセットして聴き始めました。
はっと目を覚ますと、CDは終わっていました。

「ま、いっか。睡眠学習というやつだな。きっと知らず知らずのうちに身についたに違いない」

 お昼になりました。
 せんせいが、きのうの煮物の残りと漬物と赤だし味噌汁にとろろごはんを用意してくれました。

「わあ、せんせいヘルシーだね。この生姜のぬか漬け、ポロ好きだなあ」
「体脂肪計を買ってから、どうも気になるんだ」
「ポロ、こういうの好きだよ〜、んまいんまい!」
「朝食の時に修業するって息巻いていたが、午前中は何をしたんだい?」
「今日はね、自然観察をしてから、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を聴いたよ」
「そうか。ベートーヴェンはどうだった?」
「うん、・・・とっても気持ち良かったよ」
「そうか」
「午後は?」
「えっとね、最初は読書だよ。それから音楽コラムを書くよ」
「今日のコラムのテーマは?」
「えっと、せんせいに前に聴いたシェーンベルクの話にしようかと思ってるよ」
「なかなか難しいテーマだね」
「ふふふ。せんせい、ポロの力をみくびってもらっちゃ困るよ」
「そうか」
「ははは!」

 ポロは自信たっぷりに笑いました。

 午後になって食器を洗い終わったせんせいが仕事部屋に戻ると、ポロは読書を始めました。今日はまだ発売されて間もない「のだめカンタービレ」という音楽マンガの12巻です。みなさんは、もう読みましたか?

「そだよ。やっぱ平均律だよな〜! ポロも対位法を勉強しなくちゃだな」

 ああ、面白かった。はやく13巻を読みたいなあ。
 それからポロは音楽コラムの執筆にとりかかりました。せんせいの話を録音したMDを用意してイヤホンで聞きなおします。


つづく

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2005-05-18 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その2

熱き修業の日々 その2


 初公開! 音楽コラムの元の会話は、こんなだった。

ポ「せんせい、ポロ、シェーンベルクなんて興味ないよ〜」
せ「ガタガタ言わないで聞くんだ!」

 あ、ちょっと違ったかも。

ポ「せんせい、シェーンベルクのこと話してよ」
せ「どうしてシェーンベルクのことなんか聞きたいんだ?」
ポ「ぜんぜん分からないからだよ〜」
せ「シェーンベルクの音楽を聴きこんで興味が出てきた人に話すことならあるが、そうじゃない場合は話を聞いても単に言葉が音波として耳に流れ込んでくるだけだぞ」
ポ「そんなことないよ。一所懸命聞くからさあ」
せ「シェーンベルクは、○▲××□☆○―△▲☆×・・・・・・・・◇◎×〜・・・▲■☆○×・・・・・◎▽◆☆☆★・・・・というわけだ」
ポ「な〜るほど(音波っていうのは)そういうことか〜」

 MDで聞きなおしたのに、やっぱり肝心なところは音波にしか聞こえませんでした。
 さっそく壁にぶち当たったので、3時も近いことだし、ポロはお茶にすることにしました。
 インターホンでせんせいに連絡します。

ポ「あ、せんせい。お茶にしようよ」

 せんせいがリビングに降りてきました。

せ「ポロ、どうだ、コラム書きは進んでいるかい?」
ポ「ははは、ばっちりだよ。でも、テーマは変えるかも」
せ「そうか」

 せんせいとポロはカルダモンの入ったフレーバーティーで、日曜日にたろちゃんが作ったスィートポテトを食べました。

ポ「せんせい、ポテト残す?」
せ「うん。やっぱり体脂肪が気になるな」
ポ「わ〜い、ポロにちょうだい」

 ポロは、おイモを食べて充電したので、ちょっと眠くなってきました。よし、ストロマトライトの修業だな。ちょっと昼寝をしよう。ポロはぐっすりと眠り込んでしまいました。

 夕方、たろちゃんが学校から帰ってきたのでポロは目を覚ましました。

た「ポロ、まったくあんたていう猫は昼寝ばっかりしてるんだから」
ポ「ん、んんん〜! たろちゃん、お帰り〜。ああ、もう夕方か〜。これも修業なんだよ。睡眠学習っていうやつ」
た「なに言ってんのよ。それより、あたし今日当番なんだ。ポロ、ちょっと手伝いなさいよ」
ポ「ほえ〜」

 たろちゃんとポロはキッチンで夕食の下ごしらえを始めました。

た「ポロ、お米くらい量れるでしょ」
ポ「うん。えっとカップに4杯半だっけ」
た「そう」

 ポロは、お米をカップで量りはじめました。


つづく

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2005-05-17 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その3

熱き修業の日々 その3


ポ「カップに1ぱい。じゃー。カップに2はい。じゃー。カップに3ばい。じゃー。あれ、えっと今何はいまで数えたっけ? もう一度量りなおそう。カップに1ぱい。じゃー。カップに2はい。じゃー」
た「あ、ポロ。それが終わったら片手鍋にお水を2カップ沸かしてね」
ポ「うん。あれ? いまいくつ数えたんだっけ? まあ、いいや。もう一度数え直そう」
た「ポロ、いつまでお米量ってんのよ!」
ポ「たろちゃんに話しかけられて分からなくなっちゃったんだよ〜」
た「あたしがやるから、ポロはお鍋に水を入れて」

 ポロは今度は水を量りはじめましたが、やっぱり数を見失ってやり直していると、たろちゃんが般若のような形相で、ダイニングを指さしました。

た「ポロは、もうここ手伝わなくていいから、テーブルの上をきれいにして」
ポ「は〜い!」

 ポロがテーブルを拭いていると、奥さんが仕事から帰ってきました。

奥「ただいま〜。あら、ポロちゃん。お手伝いしてくれてるの?」
ポ「おかえり〜奥さん。ふふふ。手伝いならまかせてよ」
た「でもさあ、ポロってぜんぜん役に立たないんだよ」
奥「当たりまえじゃないの。猫は昔から役に立たないの。ポロちゃんなんて上出来よ」

 ポロは、ちょっとプライドが傷つきながらもテーブルを拭き終わりました。

奥「でもね、ポロちゃん。テーブルの上でご飯粒をこねまわしちゃいけないわ。これじゃ拭く前よりも大変なことになってるわね」
ポ「わ、ホントだ。ゴメなさ〜い!」
た「役立たずじゃなくて、ポロは足手まといなんだよ」

ポロのプライドの傷口は、もうちょっと広がりました。

そして夜遅く、ポロは今日の修業日記を書きました。


5月17日(熱曜日)

今日の修業
午前中、自然観察に出かけた。テントウ虫一匹を発見。
帰宅後、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を聴く。途中から、一石二鳥で、より効率のよい睡眠学習に切り替えた。
昼食後の読書は「のだめカンタービレ第12巻」。やっぱり対位法を勉強しなくちゃと思った。
その後、コラムの執筆。途中から、より効率のよい睡眠執筆に切り替えたので完成しなかった。
夕方、たろちゃんが当番だったので、夕食の準備を手伝って、ポロの家事能力を見せつけた。
夜はテレビで学習した。バラエティ番組は雑学の宝庫だと思った。
では、お休みなさい。

ポロの修業 解決編につづく


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う〜ん、修行をする分だけ我が家のネコどもよりも上ですね〜。(^^) / みた・そうや ( 2005-05-17 19:17 )

2005-05-16 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その1

ポロの再生記 その1


“さがさないでください ポロ”

 置き手紙を書き終えると、なんだかマンネリだなあと思いながらも、スランプだからしょうがないさと自分に言い聞かせてポロは作曲工房を後にしました。せんせいからもらったヘビみたいな小銭入れには、もらったばかりの1200円が入っていました。
 ポロは行くあてもないので、とりあえずシュデンガンガー商会を目指しました。

 トントン・・・。

修士「はい、そのノックの音はポロ様でございますね?」
ポロ「そだよ」
修「どうぞ、お入りください」
ポ「コバワ、修士さん」
修「元気がありませんね。今夜はどうなさったんですか?」
ポ「スランプなんだよ」
修「さようでございますか。さすがの当店にもスランプの治療薬はございません」
ポ「それならさ、なんだか元気が出るようなものはない?」
修「冗談グッズですが“ビッグバンスイッチ”というものがあります。宇宙をリセットしたくなった時のアイテムでございます」
ポ「わあ、面白いね。持ってるだけで宇宙を支配してるような気分になるね」
修「はい、少しは元気が出るかと思います」
ポ「いくらなの?」
修「はい、1200円でございます」
ポ「ちょうど持ってるよ。それ買うよ!」

 ポロは修士さんにお礼を言って裏神田の街に出ました。すると、シュデンガンガー商会の近くに、あたらしい旅行会社ができていました。ぴかぴか光るネオンサインに“バラード旅行社”と書いてありました。店の前には“開店記念スピードくじ実施中”という立て看板があったので、ポロは店に入ってみました。

店員「いらっしゃいませ。すてきな旅行があたるスピードくじはいかがですか?」
ポロ「やるやる!」

 ポロがクジを引くと、バラード賞があたりました。

 ぱぷ〜ぱぷ〜!

 店員のお兄さんが変なラッパを吹くと、それを聞いた店長がやってきました。

店長「特等のバラード賞への当選、おめでとうございます」
ポロ「わあ、どこへ旅行できるの?」
店長「はい、銀河系一周宇宙旅行でございます」
ポロ「こないだも、ぜんまい商店街の福引で、ポロ、宇宙旅行当てたんだよ、夢だったけど」
店長「さようでございますか。しかし、バラード賞の宇宙旅行は現実でございます」
ポロ「銀河系一周なんてすごいなあ。いつ出発なの?」
店長「はい。毎日深夜0時出発で、どの便にもお乗りいただけます」
ポロ「今夜の便にも乗れる?」
店長「はい。まだ間に合います。お乗りになりますか?」
ポロ「ちょうどよかったよ。旅に出たい気分だったんだ」
店長「では、裏神田宇宙空港から11時00分発のシャトルにお乗りください」

 ポロは江戸城の本丸跡の地下にある裏神田宇宙空港に急ぎました。この空港はサンダーバードで知られる国際救助隊の技術協力によって建設されました。
 搭乗手続きを済ませてシャトルに乗り込むと、お堀の水面が割れて発射台が現れます。そしてサンダーバードのテーマ曲が流れて、シャトルは千代田区の夜空に舞い上がりました。


つづく

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2005-05-15 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その2

ポロの再生記 その2


 10分ほどで到着した宇宙ステーション“第4越後ステーション”は、銀河系一周旅行に出かける人々でごったがえしていました。ポロたちが乗るのは“エターナル号”という最新式の大型客船でした。
 もう搭乗手続きは必要なくて、ポロは乗船と同時に部屋に案内されました。とてもステキな部屋でした。ベッドも、工房の書庫の段ボール製のベッドとは比べものにならないくらい豪華で快適でした。でも、ちょっと気になることがありました。それは、いたるところに“人類補完機構”というステッカーが貼ってあることでした。
 ポロが船室でくつろいでいると船内放送がありました。

船長「まもなく本船は銀河系一周旅行に出発いたします。快適な旅になりますよう、クルー一同務めます。では、発進時の衝撃に備えて座席にお座りになって、ベルトをしめてお待ちください」

 船長の注意とは違って、とても静かな船出でした。エターナル号は大型船らしく、ゆっくりと地球軌道を離れました。船室の円窓からは降るような星空が見えました。
 ベルトサインが消えると、ポロはベッドに入って眠ってしまいました。

 朝になって目が覚めると、船室の丸窓の外は何も見えませんでした。前方に目をこらすと、スターボウ(星の虹)が見えました。ああ、もう亜光速航行をしているのか、とポロは思いました。

船内放送「お食事の用意ができました」

 わあ待ってました。ポロは、すぐにラウンジに向かいました。バイキング形式の朝食をポロはお腹いっぱい食べました。
 食後に、お茶を飲みながらふと壁を見ると時計が2つありました。ひとつは船内時刻という表示のある普通の時計で朝8時を指していました。もうひとつの時計は船外時刻という4けたのデジタル表示の数字が猛スピードで回っていました。
 これが相対論的効果というやつか〜。ポロは、なんとなく思いました。
 それから何日かがたちましたが、窓の外は単調なスターボウが見えるだけで、ポロは飽きてしまいました。こんなことなら宇宙旅行なんか来るんじゃなかった。
 一週間がたったある日、船長からの船内放送がありました。

「お待たせいたしました。間もなく本船は銀河系一周を終え、地球に戻ります」

 あれ? 変だぞ。いくら亜高速航行をしてもこんなに早く銀河系を回れるわけはないじゃないか。
 でも、その謎はすぐに解けました。ポロたちはラウンジに集められました。
 そこに現れたのは人類補完機構のエラい人でした。

「みなさん、私たちは今こそ地球に到達いたしました。船内時間では一週間でしたが、エターナル号の外では1万2000年という時間が経過しています。これは、今まで知られていた相対論効果による時間遅延現象よりも大きな数字です。超相対論効果とでも呼ぶべきでしょう」

 ここで、乗客たちからざわめきがあがりました。


つづく

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