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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2005-05-21 ポロの日記 2005年5月19日(草曜日)熱き修業の日々 解決編 その2
2005-05-20 ポロの日記 2005年5月19日(草曜日)熱き修業の日々 解決編 その3
2005-05-19 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その1
2005-05-18 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その2
2005-05-17 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その3
2005-05-16 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その1
2005-05-15 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その2
2005-05-14 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その3
2005-05-13 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その4
2005-05-12 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その5


2005-05-21 ポロの日記 2005年5月19日(草曜日)熱き修業の日々 解決編 その2

熱き修業の日々 解決編 その2


「せんせい。ポロは今まで、こんなにいい曲は聴いたことがないよ!」
「そうか。本当はこんなに集中して聴いたことがないということかも知れない」
「なるほど、そうか。じゃあさ、ほかの曲も集中して聴けばいい曲かな?」
「そういうこともあるだろう。いつも言っているように、その人の価値は大事に思っていることがあるかどうかだ。大事に思っていることというのは、その事のためなら真剣になれる、あるいは心を傾けることができるということだ。だから自分にさえウソがつけない」
「今ならそれがスイスイ分かるよ」
「ポロ、ほらそこの植え込みにてんとう虫がいるじゃないか」
「あ゛〜〜! ホントだ。きのう、あんなに探したのに・・」
「どこを探したんだ?」
「え・・、そ、それはナイショだよ」
「おおかた和菓子屋の店先というところだろうな」
「ギクっ! ・・・なんで分かるんだ〜・・」
「それ以外のところは思いつかないだろう、ポロの場合」
「ねえ、ポロって単純?」
「悪いことはしないほうがいいと思うね。すぐに捕まる」
「そうか〜。これからは、もう少し複雑で陰のある猫を目指すことにしよう」
「ところで、ポロはてんとう虫を見つけたら何を見ようとしたんだ?」
「だからてんとう虫だよ」
「同じ音楽を聴いても同じ景色を見ても、人によって見るものが異なる。なぜなら、どんなものでも、あまりに情報量が多いので、我々はそれらから選択して受け取らなければならないからだ」
「そだったね。思いだしたよ」
「何を見なくちゃいけないという決まりはない。だからこれから話す視点は、ほんの一例だよ。ポロは、これを超えていかなくてはならない」
「うん」
「てんとう虫はどこにいる?」
「あの植え込みの葉っぱの上」
「どうしてそこにいるんだ?」
「あの葉っぱがエサなんじゃないかな」
「そういうてんとう虫もいるだろう。そこに住み着いている小さな虫をエサにしているてんとう虫もいるだろう。私はあまりくわしくないからどちらなのかよく分からないが、どちらにせよ、エサに関係しているのは十分考えられることだ」
「うん」
「では、あの植物はなぜあそこに生えているんだ?」
「沼も近いし、水があるし日も当たるからかな」
「そうだ」
「では、どうしてここに沼があるのかな?」
「えっと、そういう地形なんだよ」
「では、この地形はなぜできたのかな?」
「ん〜〜〜と、それは地球のせいだよ」
「まあ、多少乱暴ないい方だが、そういうことだ」
「せんせい、ポロに何を言いたいの?」
「ポロ、この沼のまわりにずっと植えられている大木はメタセコイアだ」
「うん。モリアキおじいちゃんから聞いたよ。どこかの奥地で発見された珍しい木だったのに、人間のせいで日本中に増えたって」
「そうだね。植物は水のポンプと考えることができる。根から吸い上げた水分をてっぺんの葉にまで届かせているからね」
「そうか、何十メートルも汲み上げているんだね」
「そして、葉からは水分がどんどん蒸散している。さあ、想像してごらん。木の中の水の動きを」
「わあ、木は水でいっぱいだよ」


つづく

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2005-05-20 ポロの日記 2005年5月19日(草曜日)熱き修業の日々 解決編 その3

熱き修業の日々 解決編 その3


「今度はその想像力で、てんとう虫の身体の中の水を想像するんだ。てんとう虫には閉鎖されて完全に循環する閉鎖血管系はないはずだけれど、体液は心臓をポンプにして循環している」
「うん、なんとなく分かってきたぞ。これが命のデザインというやつだね」
「そうだ。その水や栄養の流れを、今とまっている植物、あいだにアブラムシのようなエサを介しているかも知れないが、とにかく“てんとう虫-植物”の系としてイメージするんだ」
「うん、水と栄養の流れをイメージしたよ。てんとう虫は植物がないところでは生きていけないんだね」
「そうだ。では次に、この地面の水分もその系に加えて」
「ああ、別所沼がないと、この植物は育たないかもしれないんだね。そして、その植物とアブラムシとてんとう虫はシステム(系)なんだ」
「よし。これはひとつの視点に過ぎないけれども、ポロはてんとう虫が見えたことになるんじゃないかな」
「・・・あ〜。すごいよ、せんせい。すごすぎるな。今まで命は独立しているような気がしてたよ、ポロ」
「そうか」
「生きるって、こういうことなんだね。たんぽぽもてんとう虫もポロたちも地球の一部じゃないか〜」
「これが“ガイア理論”だ」
「そうか〜。“ガイア理論”なんて知ってるつもりだったよ〜、ポロ。レイモンド・ラブロック博士のことを書いてある本、読んだもん」
「でも、想像力がついていかなかった・・」
「そうだよ、今こそ分かったよ。ポロのなかには言葉だけがあったっていうことだな。でも、今日は事実から学んだよ」
「実はガイア理論が真実かどうかは分からないんだ。それに、そんなことはどうでもいい」
「きっかけなんだね。こうやって事実に目と想像力を向けるための」
「そうだよ。生け花をたしなむひと全てが花を理解しているわけではないし、ピアノを弾く人全てが音楽を理解しているわけでもない。しかし、それらは必ず理解のきっかけにはなることだろう」
「しなきゃならないよ。もったいなさすぎるよ〜」

 それからせんせいは近くのコンビニで、おむすびとお茶を買ってきてくれました。ポロたちはちょっと早いお昼を食べてから、また歩き始めました。

「せんせい。ポロさ、このコンチェルト4番が聴けるような気がしてきたよ。帰りも聴きながら帰る」
「そうか」

 ポロは、きのうと全然ちがってしまった今日が、まだ残り何時間もあることを心強く思ったのでした。

 ふふふ、修業なんて分かればチョロいじゃないか〜♪

(うわ、ポロ、それがいけないんだ〜、その軽いノリはなんとかならないものか)


※いつか書かれる真の解決編につづく(かも)


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

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ポロの掲示板はここ。
ポロの道場

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真の解決編は書けないかも〜! / ポロ ( 2005-05-20 20:22 )
おお、ポロちゃんもついに開眼なのですね〜。真の解決編も楽しみです♪ / みた・そうや ( 2005-05-18 19:26 )

2005-05-19 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その1

熱き修業の日々 その1


 46億年の旅から戻ったポロは迷いもふっ切れて、猛然と修業生活に戻ったのでした。

「よし、最初は自然の観察からだ。やっぱり自然を観察しないとポロの中に美的基準が育たないからな。計画によると、今日は、てんとう虫の産卵からだぞ。まずはてんとう虫を探さなくちゃだな」

 ポロはさっそく和菓子屋さんの店頭とかケーキ屋さんの店頭に出かけて、てんとう虫を探しました。でも、いくら歩き回ってもとうとうてんとう虫は見つかりませんでした。
 すると道端で一匹の小さな黒い虫がひっくり返っていました。

「今日は転倒虫一匹を見つけたって修業日記に書いておこう」

 次は音楽の勉強だ。ベートーヴェンのピアノ協奏曲を毎日1曲ずつ聴くって決めたんだっけな。ポロは工房のリビングに戻るとCDをセットして聴き始めました。
はっと目を覚ますと、CDは終わっていました。

「ま、いっか。睡眠学習というやつだな。きっと知らず知らずのうちに身についたに違いない」

 お昼になりました。
 せんせいが、きのうの煮物の残りと漬物と赤だし味噌汁にとろろごはんを用意してくれました。

「わあ、せんせいヘルシーだね。この生姜のぬか漬け、ポロ好きだなあ」
「体脂肪計を買ってから、どうも気になるんだ」
「ポロ、こういうの好きだよ〜、んまいんまい!」
「朝食の時に修業するって息巻いていたが、午前中は何をしたんだい?」
「今日はね、自然観察をしてから、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を聴いたよ」
「そうか。ベートーヴェンはどうだった?」
「うん、・・・とっても気持ち良かったよ」
「そうか」
「午後は?」
「えっとね、最初は読書だよ。それから音楽コラムを書くよ」
「今日のコラムのテーマは?」
「えっと、せんせいに前に聴いたシェーンベルクの話にしようかと思ってるよ」
「なかなか難しいテーマだね」
「ふふふ。せんせい、ポロの力をみくびってもらっちゃ困るよ」
「そうか」
「ははは!」

 ポロは自信たっぷりに笑いました。

 午後になって食器を洗い終わったせんせいが仕事部屋に戻ると、ポロは読書を始めました。今日はまだ発売されて間もない「のだめカンタービレ」という音楽マンガの12巻です。みなさんは、もう読みましたか?

「そだよ。やっぱ平均律だよな〜! ポロも対位法を勉強しなくちゃだな」

 ああ、面白かった。はやく13巻を読みたいなあ。
 それからポロは音楽コラムの執筆にとりかかりました。せんせいの話を録音したMDを用意してイヤホンで聞きなおします。


つづく

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2005-05-18 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その2

熱き修業の日々 その2


 初公開! 音楽コラムの元の会話は、こんなだった。

ポ「せんせい、ポロ、シェーンベルクなんて興味ないよ〜」
せ「ガタガタ言わないで聞くんだ!」

 あ、ちょっと違ったかも。

ポ「せんせい、シェーンベルクのこと話してよ」
せ「どうしてシェーンベルクのことなんか聞きたいんだ?」
ポ「ぜんぜん分からないからだよ〜」
せ「シェーンベルクの音楽を聴きこんで興味が出てきた人に話すことならあるが、そうじゃない場合は話を聞いても単に言葉が音波として耳に流れ込んでくるだけだぞ」
ポ「そんなことないよ。一所懸命聞くからさあ」
せ「シェーンベルクは、○▲××□☆○―△▲☆×・・・・・・・・◇◎×〜・・・▲■☆○×・・・・・◎▽◆☆☆★・・・・というわけだ」
ポ「な〜るほど(音波っていうのは)そういうことか〜」

 MDで聞きなおしたのに、やっぱり肝心なところは音波にしか聞こえませんでした。
 さっそく壁にぶち当たったので、3時も近いことだし、ポロはお茶にすることにしました。
 インターホンでせんせいに連絡します。

ポ「あ、せんせい。お茶にしようよ」

 せんせいがリビングに降りてきました。

せ「ポロ、どうだ、コラム書きは進んでいるかい?」
ポ「ははは、ばっちりだよ。でも、テーマは変えるかも」
せ「そうか」

 せんせいとポロはカルダモンの入ったフレーバーティーで、日曜日にたろちゃんが作ったスィートポテトを食べました。

ポ「せんせい、ポテト残す?」
せ「うん。やっぱり体脂肪が気になるな」
ポ「わ〜い、ポロにちょうだい」

 ポロは、おイモを食べて充電したので、ちょっと眠くなってきました。よし、ストロマトライトの修業だな。ちょっと昼寝をしよう。ポロはぐっすりと眠り込んでしまいました。

 夕方、たろちゃんが学校から帰ってきたのでポロは目を覚ましました。

た「ポロ、まったくあんたていう猫は昼寝ばっかりしてるんだから」
ポ「ん、んんん〜! たろちゃん、お帰り〜。ああ、もう夕方か〜。これも修業なんだよ。睡眠学習っていうやつ」
た「なに言ってんのよ。それより、あたし今日当番なんだ。ポロ、ちょっと手伝いなさいよ」
ポ「ほえ〜」

 たろちゃんとポロはキッチンで夕食の下ごしらえを始めました。

た「ポロ、お米くらい量れるでしょ」
ポ「うん。えっとカップに4杯半だっけ」
た「そう」

 ポロは、お米をカップで量りはじめました。


つづく

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2005-05-17 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その3

熱き修業の日々 その3


ポ「カップに1ぱい。じゃー。カップに2はい。じゃー。カップに3ばい。じゃー。あれ、えっと今何はいまで数えたっけ? もう一度量りなおそう。カップに1ぱい。じゃー。カップに2はい。じゃー」
た「あ、ポロ。それが終わったら片手鍋にお水を2カップ沸かしてね」
ポ「うん。あれ? いまいくつ数えたんだっけ? まあ、いいや。もう一度数え直そう」
た「ポロ、いつまでお米量ってんのよ!」
ポ「たろちゃんに話しかけられて分からなくなっちゃったんだよ〜」
た「あたしがやるから、ポロはお鍋に水を入れて」

 ポロは今度は水を量りはじめましたが、やっぱり数を見失ってやり直していると、たろちゃんが般若のような形相で、ダイニングを指さしました。

た「ポロは、もうここ手伝わなくていいから、テーブルの上をきれいにして」
ポ「は〜い!」

 ポロがテーブルを拭いていると、奥さんが仕事から帰ってきました。

奥「ただいま〜。あら、ポロちゃん。お手伝いしてくれてるの?」
ポ「おかえり〜奥さん。ふふふ。手伝いならまかせてよ」
た「でもさあ、ポロってぜんぜん役に立たないんだよ」
奥「当たりまえじゃないの。猫は昔から役に立たないの。ポロちゃんなんて上出来よ」

 ポロは、ちょっとプライドが傷つきながらもテーブルを拭き終わりました。

奥「でもね、ポロちゃん。テーブルの上でご飯粒をこねまわしちゃいけないわ。これじゃ拭く前よりも大変なことになってるわね」
ポ「わ、ホントだ。ゴメなさ〜い!」
た「役立たずじゃなくて、ポロは足手まといなんだよ」

ポロのプライドの傷口は、もうちょっと広がりました。

そして夜遅く、ポロは今日の修業日記を書きました。


5月17日(熱曜日)

今日の修業
午前中、自然観察に出かけた。テントウ虫一匹を発見。
帰宅後、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を聴く。途中から、一石二鳥で、より効率のよい睡眠学習に切り替えた。
昼食後の読書は「のだめカンタービレ第12巻」。やっぱり対位法を勉強しなくちゃと思った。
その後、コラムの執筆。途中から、より効率のよい睡眠執筆に切り替えたので完成しなかった。
夕方、たろちゃんが当番だったので、夕食の準備を手伝って、ポロの家事能力を見せつけた。
夜はテレビで学習した。バラエティ番組は雑学の宝庫だと思った。
では、お休みなさい。

ポロの修業 解決編につづく


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

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ポロの掲示板はここ。
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先頭 表紙

う〜ん、修行をする分だけ我が家のネコどもよりも上ですね〜。(^^) / みた・そうや ( 2005-05-17 19:17 )

2005-05-16 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その1

ポロの再生記 その1


“さがさないでください ポロ”

 置き手紙を書き終えると、なんだかマンネリだなあと思いながらも、スランプだからしょうがないさと自分に言い聞かせてポロは作曲工房を後にしました。せんせいからもらったヘビみたいな小銭入れには、もらったばかりの1200円が入っていました。
 ポロは行くあてもないので、とりあえずシュデンガンガー商会を目指しました。

 トントン・・・。

修士「はい、そのノックの音はポロ様でございますね?」
ポロ「そだよ」
修「どうぞ、お入りください」
ポ「コバワ、修士さん」
修「元気がありませんね。今夜はどうなさったんですか?」
ポ「スランプなんだよ」
修「さようでございますか。さすがの当店にもスランプの治療薬はございません」
ポ「それならさ、なんだか元気が出るようなものはない?」
修「冗談グッズですが“ビッグバンスイッチ”というものがあります。宇宙をリセットしたくなった時のアイテムでございます」
ポ「わあ、面白いね。持ってるだけで宇宙を支配してるような気分になるね」
修「はい、少しは元気が出るかと思います」
ポ「いくらなの?」
修「はい、1200円でございます」
ポ「ちょうど持ってるよ。それ買うよ!」

 ポロは修士さんにお礼を言って裏神田の街に出ました。すると、シュデンガンガー商会の近くに、あたらしい旅行会社ができていました。ぴかぴか光るネオンサインに“バラード旅行社”と書いてありました。店の前には“開店記念スピードくじ実施中”という立て看板があったので、ポロは店に入ってみました。

店員「いらっしゃいませ。すてきな旅行があたるスピードくじはいかがですか?」
ポロ「やるやる!」

 ポロがクジを引くと、バラード賞があたりました。

 ぱぷ〜ぱぷ〜!

 店員のお兄さんが変なラッパを吹くと、それを聞いた店長がやってきました。

店長「特等のバラード賞への当選、おめでとうございます」
ポロ「わあ、どこへ旅行できるの?」
店長「はい、銀河系一周宇宙旅行でございます」
ポロ「こないだも、ぜんまい商店街の福引で、ポロ、宇宙旅行当てたんだよ、夢だったけど」
店長「さようでございますか。しかし、バラード賞の宇宙旅行は現実でございます」
ポロ「銀河系一周なんてすごいなあ。いつ出発なの?」
店長「はい。毎日深夜0時出発で、どの便にもお乗りいただけます」
ポロ「今夜の便にも乗れる?」
店長「はい。まだ間に合います。お乗りになりますか?」
ポロ「ちょうどよかったよ。旅に出たい気分だったんだ」
店長「では、裏神田宇宙空港から11時00分発のシャトルにお乗りください」

 ポロは江戸城の本丸跡の地下にある裏神田宇宙空港に急ぎました。この空港はサンダーバードで知られる国際救助隊の技術協力によって建設されました。
 搭乗手続きを済ませてシャトルに乗り込むと、お堀の水面が割れて発射台が現れます。そしてサンダーバードのテーマ曲が流れて、シャトルは千代田区の夜空に舞い上がりました。


つづく

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2005-05-15 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その2

ポロの再生記 その2


 10分ほどで到着した宇宙ステーション“第4越後ステーション”は、銀河系一周旅行に出かける人々でごったがえしていました。ポロたちが乗るのは“エターナル号”という最新式の大型客船でした。
 もう搭乗手続きは必要なくて、ポロは乗船と同時に部屋に案内されました。とてもステキな部屋でした。ベッドも、工房の書庫の段ボール製のベッドとは比べものにならないくらい豪華で快適でした。でも、ちょっと気になることがありました。それは、いたるところに“人類補完機構”というステッカーが貼ってあることでした。
 ポロが船室でくつろいでいると船内放送がありました。

船長「まもなく本船は銀河系一周旅行に出発いたします。快適な旅になりますよう、クルー一同務めます。では、発進時の衝撃に備えて座席にお座りになって、ベルトをしめてお待ちください」

 船長の注意とは違って、とても静かな船出でした。エターナル号は大型船らしく、ゆっくりと地球軌道を離れました。船室の円窓からは降るような星空が見えました。
 ベルトサインが消えると、ポロはベッドに入って眠ってしまいました。

 朝になって目が覚めると、船室の丸窓の外は何も見えませんでした。前方に目をこらすと、スターボウ(星の虹)が見えました。ああ、もう亜光速航行をしているのか、とポロは思いました。

船内放送「お食事の用意ができました」

 わあ待ってました。ポロは、すぐにラウンジに向かいました。バイキング形式の朝食をポロはお腹いっぱい食べました。
 食後に、お茶を飲みながらふと壁を見ると時計が2つありました。ひとつは船内時刻という表示のある普通の時計で朝8時を指していました。もうひとつの時計は船外時刻という4けたのデジタル表示の数字が猛スピードで回っていました。
 これが相対論的効果というやつか〜。ポロは、なんとなく思いました。
 それから何日かがたちましたが、窓の外は単調なスターボウが見えるだけで、ポロは飽きてしまいました。こんなことなら宇宙旅行なんか来るんじゃなかった。
 一週間がたったある日、船長からの船内放送がありました。

「お待たせいたしました。間もなく本船は銀河系一周を終え、地球に戻ります」

 あれ? 変だぞ。いくら亜高速航行をしてもこんなに早く銀河系を回れるわけはないじゃないか。
 でも、その謎はすぐに解けました。ポロたちはラウンジに集められました。
 そこに現れたのは人類補完機構のエラい人でした。

「みなさん、私たちは今こそ地球に到達いたしました。船内時間では一週間でしたが、エターナル号の外では1万2000年という時間が経過しています。これは、今まで知られていた相対論効果による時間遅延現象よりも大きな数字です。超相対論効果とでも呼ぶべきでしょう」

 ここで、乗客たちからざわめきがあがりました。


つづく

先頭 表紙

2005-05-14 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その3

ポロの再生記 その3


「みなさん。驚かれるのも無理はありません。みなさんが出発した地球は末期症状でした。資源は枯渇し、環境は汚れ、国や自治体は借金まみれ、ピアノの音は狂い、本当の音楽を理解する人はごくわずか。これがどうしてまともでありましょうか」

 またまた、ざわめきが広がりました。

「地球はその後も荒廃し、船外時間で今から1万1900年前、つまり、出発から100年後には全人類が滅びてしまいました。しかし、その危機を事前に察知した人類補完機構は、スピードくじで運の強い人を選別し、こうして何隻もの宇宙船にご招待して生き残った人々で地球の再生を計ることにしました」

 ポロは、それからの話はボーッとしてしまって、よく覚えていません。

 人類滅亡から1万1900年が経過した地球には、デブリ(宇宙ゴミ)を含めたすべての人工天体がなくなっていました。もちろん“第4越後ステーション”だって跡形もありませんでした。でもエターナル号は大型宇宙船なのに地球に着陸する能力を持っていました。それも1回だけ。もう2度と飛び立つことはできません。
 窓の外に近づいてきたのは地球とは似ても似つかぬ星でした。陸と海の区別がなくて、星全体が水色でツヤツヤ光っていました。雲もありませんでした。
 エターナル号が着陸したのは、ガラスのようなツルツルした不思議な地面でした。着陸しても、下船の指示はなかなかありませんでした。

 心配になったポロは猫の特質を生かして通気ダクトに入り込んで、会議室の天井裏から人類補完機構の人たちが話しているのを近くで聞いてしまいました。

「・・・これは、地球が高温にさらされて岩石がガラス化してしまったに違いない・・」
「・・・よほど大規模な核戦争があったのだろう・・・」
「・・・大気も失われている。雲ひとつないじゃないか・・」
「・・・何もないにしても原始惑星ならまだしも、これでは自然の回復は不可能だ・・・」
「・・・この計画は失敗だったのではないか・・・」
「・・・いや、しかし、これは誰にも予想できなかった・・・」
「・・・この船の酸素と食料はいつまでもつんだ・・・」

 ポロは、それを聞いて悲しくなりました。せんせいも奥さんもたろちゃんもお兄ちゃんたちも、それから工房に遊びに来てくれる人たちも、みんな1万年以上も前に死んでしまって、それどころか、最後に残ったポロたちも残された命はあとわずかです。

 そのとき、ポロはポケットのなかの“ビッグバン・スイッチ”を思いだしました。おもちゃだけど、なんだか頼れるような気がきてきました。
小さな本体の裏には使用法が書いてありました。

“光よあれ!と叫んでからボタンを押します。本当の危機の時だけ作動します”

 ポロが大きな声で「光よあれ!」と叫んでボタンを押すと、周囲は光で満ち、ポロは一瞬のうちに、まぶしさの中に呑み込まれていきました。


つづく

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2005-05-13 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その4

ポロの再生記 その4


 気がつくとポロは神でした。眼下には宇宙でも特別な星、原始地球がありました。まだ生命はなく、太陽も生まれたばかりで雲をまとった青白い星でした。ポロは、神さまになるのはイヤだなあと思っていると、聞き覚えがある声がしました。

声「神さま・・・」

ポ「だあれ?」

声「あたしよ、忘れたのポロちゃん」

ポ「わ、女神さま」

め「今度はポロちゃんが神さまになったのね」

ポ「今度って、こんなこと何度もあったの?」

め「そう。ビッグバンスイッチを押したら神さまよ」

ポ「そうだったのか〜。でもポロ、神さまなんかになりたくないなあ」

め「なら、誰かに譲っちゃえばいいわ。前の神さまならポロちゃんの後ろにいるわよ」

ポ「わ、神さま」

神「いや、もと神じゃ」

ポ「ねえ、神さまってなんでもできるの?」

神「できるとも」

ポ「じゃあさ、ポロ、もと神さまに神さまを譲るからさ、あの地球をもう一度前と同じ姿にしてよ」

神「同じ進化の道を辿らせるのじゃな」

ポ「そ、そだよ!」

神「しかし、神の立場を譲ってしまうとポロ神さまの存在がなくなってしまうのう・・・おう、そうじゃ。いいことがある」

め「そうね、それがいいわ。ポロちゃん、じゃなくて神さま。また46億年後に会いましょう」


つづく

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2005-05-12 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その5

ポロの再生記 その5


 気がつくと、ポロは浅い海のなかでまどろんでいました。身体からぷくぷくと酸素の泡を出して気持ちよく昼寝していたのでした。来る日も来る日もポロは、昼寝ばかりしているストロマトライトなのでした。
ポロは、その日が何の日なのかなんて知る由もありませんでしたが、それは何億年もたったクリスマスイヴのことでした。
 空に何か光の点が現れました。それは、サンタクロースのドレッドノート号の先頭を走るルドルフの光る鼻でした。しかし、海の中から見ると、それがなんであるかよく分かりませんでした。(お話の部屋2004年12月23日“クリスマスイヴ2004”参照)
 ソリからは光の粉が降り注いで来ました。
それを浴びたポロたちは何だか楽しくなって笑い始めました。体中に力がみなぎってくるような感じでした。

 それからまた何億年かが過ぎました。
 ポロはフズリナであったり、アンモナイトであったり、鱗木であったり、ムカシトンボであったりしました。何百回、何千回、何万回と生まれ変わるうちに、地球もどんどん姿を変えていきました。
 ポロは、生命と地球、そいて時間との関係がおぼろげながらも分かってきました。時間が過ぎるから何かが変化するのではなくて、何かが変化するから時間がたつのでした。
 そしてポロは体温を獲得するまでになりました。
 そんなある日、ポロは神さまから呼ばれました。


つづく

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その6につっこめないのでここに。そうかー。だからドーラの命は地球と似ているのですね。でもそうなると地球の命の方が『親』なのに、ドーラの方が科学が進んでいる…う〜ん、地球も負けては居られませんね〜。(^^) / みた・そうや ( 2005-05-15 14:18 )

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