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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

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2005-05-19 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その1
2005-05-18 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その2
2005-05-17 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その3
2005-05-16 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その1
2005-05-15 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その2
2005-05-14 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その3
2005-05-13 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その4
2005-05-12 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その5
2005-05-11 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その6
2005-05-10 ポロの日記 2005年5月10日(熱曜日)今日のお昼ごはん その1


2005-05-19 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その1

熱き修業の日々 その1


 46億年の旅から戻ったポロは迷いもふっ切れて、猛然と修業生活に戻ったのでした。

「よし、最初は自然の観察からだ。やっぱり自然を観察しないとポロの中に美的基準が育たないからな。計画によると、今日は、てんとう虫の産卵からだぞ。まずはてんとう虫を探さなくちゃだな」

 ポロはさっそく和菓子屋さんの店頭とかケーキ屋さんの店頭に出かけて、てんとう虫を探しました。でも、いくら歩き回ってもとうとうてんとう虫は見つかりませんでした。
 すると道端で一匹の小さな黒い虫がひっくり返っていました。

「今日は転倒虫一匹を見つけたって修業日記に書いておこう」

 次は音楽の勉強だ。ベートーヴェンのピアノ協奏曲を毎日1曲ずつ聴くって決めたんだっけな。ポロは工房のリビングに戻るとCDをセットして聴き始めました。
はっと目を覚ますと、CDは終わっていました。

「ま、いっか。睡眠学習というやつだな。きっと知らず知らずのうちに身についたに違いない」

 お昼になりました。
 せんせいが、きのうの煮物の残りと漬物と赤だし味噌汁にとろろごはんを用意してくれました。

「わあ、せんせいヘルシーだね。この生姜のぬか漬け、ポロ好きだなあ」
「体脂肪計を買ってから、どうも気になるんだ」
「ポロ、こういうの好きだよ〜、んまいんまい!」
「朝食の時に修業するって息巻いていたが、午前中は何をしたんだい?」
「今日はね、自然観察をしてから、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を聴いたよ」
「そうか。ベートーヴェンはどうだった?」
「うん、・・・とっても気持ち良かったよ」
「そうか」
「午後は?」
「えっとね、最初は読書だよ。それから音楽コラムを書くよ」
「今日のコラムのテーマは?」
「えっと、せんせいに前に聴いたシェーンベルクの話にしようかと思ってるよ」
「なかなか難しいテーマだね」
「ふふふ。せんせい、ポロの力をみくびってもらっちゃ困るよ」
「そうか」
「ははは!」

 ポロは自信たっぷりに笑いました。

 午後になって食器を洗い終わったせんせいが仕事部屋に戻ると、ポロは読書を始めました。今日はまだ発売されて間もない「のだめカンタービレ」という音楽マンガの12巻です。みなさんは、もう読みましたか?

「そだよ。やっぱ平均律だよな〜! ポロも対位法を勉強しなくちゃだな」

 ああ、面白かった。はやく13巻を読みたいなあ。
 それからポロは音楽コラムの執筆にとりかかりました。せんせいの話を録音したMDを用意してイヤホンで聞きなおします。


つづく

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2005-05-18 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その2

熱き修業の日々 その2


 初公開! 音楽コラムの元の会話は、こんなだった。

ポ「せんせい、ポロ、シェーンベルクなんて興味ないよ〜」
せ「ガタガタ言わないで聞くんだ!」

 あ、ちょっと違ったかも。

ポ「せんせい、シェーンベルクのこと話してよ」
せ「どうしてシェーンベルクのことなんか聞きたいんだ?」
ポ「ぜんぜん分からないからだよ〜」
せ「シェーンベルクの音楽を聴きこんで興味が出てきた人に話すことならあるが、そうじゃない場合は話を聞いても単に言葉が音波として耳に流れ込んでくるだけだぞ」
ポ「そんなことないよ。一所懸命聞くからさあ」
せ「シェーンベルクは、○▲××□☆○―△▲☆×・・・・・・・・◇◎×〜・・・▲■☆○×・・・・・◎▽◆☆☆★・・・・というわけだ」
ポ「な〜るほど(音波っていうのは)そういうことか〜」

 MDで聞きなおしたのに、やっぱり肝心なところは音波にしか聞こえませんでした。
 さっそく壁にぶち当たったので、3時も近いことだし、ポロはお茶にすることにしました。
 インターホンでせんせいに連絡します。

ポ「あ、せんせい。お茶にしようよ」

 せんせいがリビングに降りてきました。

せ「ポロ、どうだ、コラム書きは進んでいるかい?」
ポ「ははは、ばっちりだよ。でも、テーマは変えるかも」
せ「そうか」

 せんせいとポロはカルダモンの入ったフレーバーティーで、日曜日にたろちゃんが作ったスィートポテトを食べました。

ポ「せんせい、ポテト残す?」
せ「うん。やっぱり体脂肪が気になるな」
ポ「わ〜い、ポロにちょうだい」

 ポロは、おイモを食べて充電したので、ちょっと眠くなってきました。よし、ストロマトライトの修業だな。ちょっと昼寝をしよう。ポロはぐっすりと眠り込んでしまいました。

 夕方、たろちゃんが学校から帰ってきたのでポロは目を覚ましました。

た「ポロ、まったくあんたていう猫は昼寝ばっかりしてるんだから」
ポ「ん、んんん〜! たろちゃん、お帰り〜。ああ、もう夕方か〜。これも修業なんだよ。睡眠学習っていうやつ」
た「なに言ってんのよ。それより、あたし今日当番なんだ。ポロ、ちょっと手伝いなさいよ」
ポ「ほえ〜」

 たろちゃんとポロはキッチンで夕食の下ごしらえを始めました。

た「ポロ、お米くらい量れるでしょ」
ポ「うん。えっとカップに4杯半だっけ」
た「そう」

 ポロは、お米をカップで量りはじめました。


つづく

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2005-05-17 ポロの日記 2005年5月17日(熱曜日)熱き修業の日々 その3

熱き修業の日々 その3


ポ「カップに1ぱい。じゃー。カップに2はい。じゃー。カップに3ばい。じゃー。あれ、えっと今何はいまで数えたっけ? もう一度量りなおそう。カップに1ぱい。じゃー。カップに2はい。じゃー」
た「あ、ポロ。それが終わったら片手鍋にお水を2カップ沸かしてね」
ポ「うん。あれ? いまいくつ数えたんだっけ? まあ、いいや。もう一度数え直そう」
た「ポロ、いつまでお米量ってんのよ!」
ポ「たろちゃんに話しかけられて分からなくなっちゃったんだよ〜」
た「あたしがやるから、ポロはお鍋に水を入れて」

 ポロは今度は水を量りはじめましたが、やっぱり数を見失ってやり直していると、たろちゃんが般若のような形相で、ダイニングを指さしました。

た「ポロは、もうここ手伝わなくていいから、テーブルの上をきれいにして」
ポ「は〜い!」

 ポロがテーブルを拭いていると、奥さんが仕事から帰ってきました。

奥「ただいま〜。あら、ポロちゃん。お手伝いしてくれてるの?」
ポ「おかえり〜奥さん。ふふふ。手伝いならまかせてよ」
た「でもさあ、ポロってぜんぜん役に立たないんだよ」
奥「当たりまえじゃないの。猫は昔から役に立たないの。ポロちゃんなんて上出来よ」

 ポロは、ちょっとプライドが傷つきながらもテーブルを拭き終わりました。

奥「でもね、ポロちゃん。テーブルの上でご飯粒をこねまわしちゃいけないわ。これじゃ拭く前よりも大変なことになってるわね」
ポ「わ、ホントだ。ゴメなさ〜い!」
た「役立たずじゃなくて、ポロは足手まといなんだよ」

ポロのプライドの傷口は、もうちょっと広がりました。

そして夜遅く、ポロは今日の修業日記を書きました。


5月17日(熱曜日)

今日の修業
午前中、自然観察に出かけた。テントウ虫一匹を発見。
帰宅後、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を聴く。途中から、一石二鳥で、より効率のよい睡眠学習に切り替えた。
昼食後の読書は「のだめカンタービレ第12巻」。やっぱり対位法を勉強しなくちゃと思った。
その後、コラムの執筆。途中から、より効率のよい睡眠執筆に切り替えたので完成しなかった。
夕方、たろちゃんが当番だったので、夕食の準備を手伝って、ポロの家事能力を見せつけた。
夜はテレビで学習した。バラエティ番組は雑学の宝庫だと思った。
では、お休みなさい。

ポロの修業 解決編につづく


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

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ポロの道場

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う〜ん、修行をする分だけ我が家のネコどもよりも上ですね〜。(^^) / みた・そうや ( 2005-05-17 19:17 )

2005-05-16 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その1

ポロの再生記 その1


“さがさないでください ポロ”

 置き手紙を書き終えると、なんだかマンネリだなあと思いながらも、スランプだからしょうがないさと自分に言い聞かせてポロは作曲工房を後にしました。せんせいからもらったヘビみたいな小銭入れには、もらったばかりの1200円が入っていました。
 ポロは行くあてもないので、とりあえずシュデンガンガー商会を目指しました。

 トントン・・・。

修士「はい、そのノックの音はポロ様でございますね?」
ポロ「そだよ」
修「どうぞ、お入りください」
ポ「コバワ、修士さん」
修「元気がありませんね。今夜はどうなさったんですか?」
ポ「スランプなんだよ」
修「さようでございますか。さすがの当店にもスランプの治療薬はございません」
ポ「それならさ、なんだか元気が出るようなものはない?」
修「冗談グッズですが“ビッグバンスイッチ”というものがあります。宇宙をリセットしたくなった時のアイテムでございます」
ポ「わあ、面白いね。持ってるだけで宇宙を支配してるような気分になるね」
修「はい、少しは元気が出るかと思います」
ポ「いくらなの?」
修「はい、1200円でございます」
ポ「ちょうど持ってるよ。それ買うよ!」

 ポロは修士さんにお礼を言って裏神田の街に出ました。すると、シュデンガンガー商会の近くに、あたらしい旅行会社ができていました。ぴかぴか光るネオンサインに“バラード旅行社”と書いてありました。店の前には“開店記念スピードくじ実施中”という立て看板があったので、ポロは店に入ってみました。

店員「いらっしゃいませ。すてきな旅行があたるスピードくじはいかがですか?」
ポロ「やるやる!」

 ポロがクジを引くと、バラード賞があたりました。

 ぱぷ〜ぱぷ〜!

 店員のお兄さんが変なラッパを吹くと、それを聞いた店長がやってきました。

店長「特等のバラード賞への当選、おめでとうございます」
ポロ「わあ、どこへ旅行できるの?」
店長「はい、銀河系一周宇宙旅行でございます」
ポロ「こないだも、ぜんまい商店街の福引で、ポロ、宇宙旅行当てたんだよ、夢だったけど」
店長「さようでございますか。しかし、バラード賞の宇宙旅行は現実でございます」
ポロ「銀河系一周なんてすごいなあ。いつ出発なの?」
店長「はい。毎日深夜0時出発で、どの便にもお乗りいただけます」
ポロ「今夜の便にも乗れる?」
店長「はい。まだ間に合います。お乗りになりますか?」
ポロ「ちょうどよかったよ。旅に出たい気分だったんだ」
店長「では、裏神田宇宙空港から11時00分発のシャトルにお乗りください」

 ポロは江戸城の本丸跡の地下にある裏神田宇宙空港に急ぎました。この空港はサンダーバードで知られる国際救助隊の技術協力によって建設されました。
 搭乗手続きを済ませてシャトルに乗り込むと、お堀の水面が割れて発射台が現れます。そしてサンダーバードのテーマ曲が流れて、シャトルは千代田区の夜空に舞い上がりました。


つづく

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2005-05-15 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その2

ポロの再生記 その2


 10分ほどで到着した宇宙ステーション“第4越後ステーション”は、銀河系一周旅行に出かける人々でごったがえしていました。ポロたちが乗るのは“エターナル号”という最新式の大型客船でした。
 もう搭乗手続きは必要なくて、ポロは乗船と同時に部屋に案内されました。とてもステキな部屋でした。ベッドも、工房の書庫の段ボール製のベッドとは比べものにならないくらい豪華で快適でした。でも、ちょっと気になることがありました。それは、いたるところに“人類補完機構”というステッカーが貼ってあることでした。
 ポロが船室でくつろいでいると船内放送がありました。

船長「まもなく本船は銀河系一周旅行に出発いたします。快適な旅になりますよう、クルー一同務めます。では、発進時の衝撃に備えて座席にお座りになって、ベルトをしめてお待ちください」

 船長の注意とは違って、とても静かな船出でした。エターナル号は大型船らしく、ゆっくりと地球軌道を離れました。船室の円窓からは降るような星空が見えました。
 ベルトサインが消えると、ポロはベッドに入って眠ってしまいました。

 朝になって目が覚めると、船室の丸窓の外は何も見えませんでした。前方に目をこらすと、スターボウ(星の虹)が見えました。ああ、もう亜光速航行をしているのか、とポロは思いました。

船内放送「お食事の用意ができました」

 わあ待ってました。ポロは、すぐにラウンジに向かいました。バイキング形式の朝食をポロはお腹いっぱい食べました。
 食後に、お茶を飲みながらふと壁を見ると時計が2つありました。ひとつは船内時刻という表示のある普通の時計で朝8時を指していました。もうひとつの時計は船外時刻という4けたのデジタル表示の数字が猛スピードで回っていました。
 これが相対論的効果というやつか〜。ポロは、なんとなく思いました。
 それから何日かがたちましたが、窓の外は単調なスターボウが見えるだけで、ポロは飽きてしまいました。こんなことなら宇宙旅行なんか来るんじゃなかった。
 一週間がたったある日、船長からの船内放送がありました。

「お待たせいたしました。間もなく本船は銀河系一周を終え、地球に戻ります」

 あれ? 変だぞ。いくら亜高速航行をしてもこんなに早く銀河系を回れるわけはないじゃないか。
 でも、その謎はすぐに解けました。ポロたちはラウンジに集められました。
 そこに現れたのは人類補完機構のエラい人でした。

「みなさん、私たちは今こそ地球に到達いたしました。船内時間では一週間でしたが、エターナル号の外では1万2000年という時間が経過しています。これは、今まで知られていた相対論効果による時間遅延現象よりも大きな数字です。超相対論効果とでも呼ぶべきでしょう」

 ここで、乗客たちからざわめきがあがりました。


つづく

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2005-05-14 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その3

ポロの再生記 その3


「みなさん。驚かれるのも無理はありません。みなさんが出発した地球は末期症状でした。資源は枯渇し、環境は汚れ、国や自治体は借金まみれ、ピアノの音は狂い、本当の音楽を理解する人はごくわずか。これがどうしてまともでありましょうか」

 またまた、ざわめきが広がりました。

「地球はその後も荒廃し、船外時間で今から1万1900年前、つまり、出発から100年後には全人類が滅びてしまいました。しかし、その危機を事前に察知した人類補完機構は、スピードくじで運の強い人を選別し、こうして何隻もの宇宙船にご招待して生き残った人々で地球の再生を計ることにしました」

 ポロは、それからの話はボーッとしてしまって、よく覚えていません。

 人類滅亡から1万1900年が経過した地球には、デブリ(宇宙ゴミ)を含めたすべての人工天体がなくなっていました。もちろん“第4越後ステーション”だって跡形もありませんでした。でもエターナル号は大型宇宙船なのに地球に着陸する能力を持っていました。それも1回だけ。もう2度と飛び立つことはできません。
 窓の外に近づいてきたのは地球とは似ても似つかぬ星でした。陸と海の区別がなくて、星全体が水色でツヤツヤ光っていました。雲もありませんでした。
 エターナル号が着陸したのは、ガラスのようなツルツルした不思議な地面でした。着陸しても、下船の指示はなかなかありませんでした。

 心配になったポロは猫の特質を生かして通気ダクトに入り込んで、会議室の天井裏から人類補完機構の人たちが話しているのを近くで聞いてしまいました。

「・・・これは、地球が高温にさらされて岩石がガラス化してしまったに違いない・・」
「・・・よほど大規模な核戦争があったのだろう・・・」
「・・・大気も失われている。雲ひとつないじゃないか・・」
「・・・何もないにしても原始惑星ならまだしも、これでは自然の回復は不可能だ・・・」
「・・・この計画は失敗だったのではないか・・・」
「・・・いや、しかし、これは誰にも予想できなかった・・・」
「・・・この船の酸素と食料はいつまでもつんだ・・・」

 ポロは、それを聞いて悲しくなりました。せんせいも奥さんもたろちゃんもお兄ちゃんたちも、それから工房に遊びに来てくれる人たちも、みんな1万年以上も前に死んでしまって、それどころか、最後に残ったポロたちも残された命はあとわずかです。

 そのとき、ポロはポケットのなかの“ビッグバン・スイッチ”を思いだしました。おもちゃだけど、なんだか頼れるような気がきてきました。
小さな本体の裏には使用法が書いてありました。

“光よあれ!と叫んでからボタンを押します。本当の危機の時だけ作動します”

 ポロが大きな声で「光よあれ!」と叫んでボタンを押すと、周囲は光で満ち、ポロは一瞬のうちに、まぶしさの中に呑み込まれていきました。


つづく

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2005-05-13 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その4

ポロの再生記 その4


 気がつくとポロは神でした。眼下には宇宙でも特別な星、原始地球がありました。まだ生命はなく、太陽も生まれたばかりで雲をまとった青白い星でした。ポロは、神さまになるのはイヤだなあと思っていると、聞き覚えがある声がしました。

声「神さま・・・」

ポ「だあれ?」

声「あたしよ、忘れたのポロちゃん」

ポ「わ、女神さま」

め「今度はポロちゃんが神さまになったのね」

ポ「今度って、こんなこと何度もあったの?」

め「そう。ビッグバンスイッチを押したら神さまよ」

ポ「そうだったのか〜。でもポロ、神さまなんかになりたくないなあ」

め「なら、誰かに譲っちゃえばいいわ。前の神さまならポロちゃんの後ろにいるわよ」

ポ「わ、神さま」

神「いや、もと神じゃ」

ポ「ねえ、神さまってなんでもできるの?」

神「できるとも」

ポ「じゃあさ、ポロ、もと神さまに神さまを譲るからさ、あの地球をもう一度前と同じ姿にしてよ」

神「同じ進化の道を辿らせるのじゃな」

ポ「そ、そだよ!」

神「しかし、神の立場を譲ってしまうとポロ神さまの存在がなくなってしまうのう・・・おう、そうじゃ。いいことがある」

め「そうね、それがいいわ。ポロちゃん、じゃなくて神さま。また46億年後に会いましょう」


つづく

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2005-05-12 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その5

ポロの再生記 その5


 気がつくと、ポロは浅い海のなかでまどろんでいました。身体からぷくぷくと酸素の泡を出して気持ちよく昼寝していたのでした。来る日も来る日もポロは、昼寝ばかりしているストロマトライトなのでした。
ポロは、その日が何の日なのかなんて知る由もありませんでしたが、それは何億年もたったクリスマスイヴのことでした。
 空に何か光の点が現れました。それは、サンタクロースのドレッドノート号の先頭を走るルドルフの光る鼻でした。しかし、海の中から見ると、それがなんであるかよく分かりませんでした。(お話の部屋2004年12月23日“クリスマスイヴ2004”参照)
 ソリからは光の粉が降り注いで来ました。
それを浴びたポロたちは何だか楽しくなって笑い始めました。体中に力がみなぎってくるような感じでした。

 それからまた何億年かが過ぎました。
 ポロはフズリナであったり、アンモナイトであったり、鱗木であったり、ムカシトンボであったりしました。何百回、何千回、何万回と生まれ変わるうちに、地球もどんどん姿を変えていきました。
 ポロは、生命と地球、そいて時間との関係がおぼろげながらも分かってきました。時間が過ぎるから何かが変化するのではなくて、何かが変化するから時間がたつのでした。
 そしてポロは体温を獲得するまでになりました。
 そんなある日、ポロは神さまから呼ばれました。


つづく

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その6につっこめないのでここに。そうかー。だからドーラの命は地球と似ているのですね。でもそうなると地球の命の方が『親』なのに、ドーラの方が科学が進んでいる…う〜ん、地球も負けては居られませんね〜。(^^) / みた・そうや ( 2005-05-15 14:18 )

2005-05-11 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その6

ポロの再生記 その6


神「ポロよ。お願いがあるのじゃ」
ポ「なあに? 神さま」
神「地球の将来のためにドーラにも生き物が必要なのじゃ。ドーラは寒くて生命の発生は不可能じゃ。だから、途中まで進化した生き物を送らねばならん。それをポロにお願いしたいのじゃ」
ポ「でも、ポロはせんせいが進化してくるのを待ってるんだ。どうしても会わなくちゃならないんだよ」
神「それなら大丈夫。ポロの子孫には優秀な技術者があらわれて宇宙船を建造するじゃろう」
ポ「ゴーヒャ・キージェだね!」
神「そうじゃ」
ポ「キージェはポロの子孫だったのか〜」
神「ははは。今回の太陽系の炭素系生命は全部ポロの子孫じゃ」
ポ「すごいね〜、ポロって」
神「そうじゃとも。では行ってくれるの?」
ポ「うん、行くよ」

 それから、また長い長い時間が流れました。

 そして、とうとう昨日の晩になりました。
 せんせいの仕事部屋に行くと、せんせいが作曲していました。もちろん、そばには女神さま。せんせいの耳元でフルートソナタのつづきを歌っていました。あれ、女神さま、前よりもっと薄着になったかも。あ゛〜〜〜! せんせいのクビに両腕をからめたりしてちょっとえっちじゃないか〜。わ゛〜〜、それからあんなこともこんなことも〜〜!

め「し〜〜! いい子にしててねポロちゃん」

 女神さまは、そんなふうに目配せしました。
 女神さまの帰り際にポロが、女神さまって少し変わった?って聞いたら、女神さまは「進化は完全に同じものが繰り返されるわけじゃないのよ、それに3日会わないだけで誰でも少しは変わるものよ」と言いました。
 ポロがあっけにとられていると「でも大丈夫。パップラ丼はいつまでも同じ味よ」と言ってふわっと消えてしまいました。

 そして朝。スランプレースに勝ったポロは46億年ぶりに道場のページを開いたのでした。


おしまい


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2005-05-10 ポロの日記 2005年5月10日(熱曜日)今日のお昼ごはん その1

今日のお昼ごはん その1


「ただいま」
「わ、せんせいお帰り、どこ行ってきたの?」
「銀行とかね、いろいろ用事を済ませてきた。ついでにお昼の買い物してきたから食べよう」
「わあ、今日はなあに?」
「今日はお蕎麦だよ」
「ポロは手打ちじゃなくちゃいやだなあ」
「ぜいたく言うんじゃない。一応、今日は生(なま)蕎麦だよ」
「そうか〜、それは楽しみだね〜」

 それからせんせいは、わざわざ東京消防庁で買ってきた防炎かっぽう着を着てお昼のしたくを始めました。
できあがるまで、ポロはテーブルで、読みかけの“サルでも分かる相対論”を読み始めました。

 ・・・・マイケルソンとモーリーは、極めて精密な実験を行なった結果、全ての方向からやってくる光の速度がすべて同じであるという結論に達しました・・・。

でも、サルには分かっても猫にはちょっと難しいかも・・・。

「さあできたぞ。食べよう」

 せんせいは、茹でたてのお蕎麦とおつゆ、それから薬味をテーブルに置きました。

ポ「いたーきま〜す!」

 ぞぞぞぞぞぞ!

ポ「ぶっ!」
せ「どうした、つっかえたか?」
ポ「・・・・ん・・・・、んまい! んますぎるよ、せんせい!」
せ「そうか、それはよかった」
ポ「よかったとか、そんな問題じゃないよ」
せ「じゃ、どんな問題なんだ」
ポ「これは電気羊市の蕎麦処“大上段”よりもおいしい!」
せ「だろ?」
ポ「だろって、せんせいどうしてこのお蕎麦知ってるの? いったいどこのお蕎麦なの」
せ「あ、パッケージはキッチンのダストボックスだ」

 ポロは、すぐにパッケージを持ってきてラベルで製造元を調べました。

ポ「えっと、長野のT製麺ていう有限会社だよ。無限会社ってあるのかな?」
せ「いや、ないよ。有限会社は小さな会社が多いね。まあ、個人企業みたいな感じだよ」
ポ「そうか、じゃあ、小さな会社でそこの社長さんだか、職人さんだかが気合い入れて作ってるんだね」

 ぞぞぞぞ〜!

ポ「んまい! やっぱ、んまい!」
せ「ああ。これだけのものだからね、相当な思い入れがあるだろうね」
ポ「でもさ、せんせい。これって、高かったでしょ?」
せ「いや、2人前で100円ちょっとだ」
ポ「ぶはっ! “大上段”のセイロなんて一枚1200円もするんだぞ〜、どういうことだ〜」
せ「価値と価格は必ずしも一致しないのは知っているだろう」
ポ「そだけどさ、ポロだったらこのお蕎麦にならお金払うよ〜」
せ「同じ売り場に、有名大手のなま蕎麦もあるんだが、そちらは高い」
ポ「せんせい、そっちは食べたことある?」
せ「あるよ。普通のなま蕎麦だ。以上でも以下でもない」
ポ「でもさ、せんせい。このお蕎麦は手打ちだって言われたら、ポロあっさり信じるよ」


つづく

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