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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2005-05-14 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その3
2005-05-13 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その4
2005-05-12 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その5
2005-05-11 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その6
2005-05-10 ポロの日記 2005年5月10日(熱曜日)今日のお昼ごはん その1
2005-05-09 ポロの日記 2005年5月10日(熱曜日)今日のお昼ごはん その2
2005-05-08 ポロの日記 2005年5月8日(風曜日)100まん年ピクニック解決編 その1
2005-05-07 ポロの日記 2005年5月8日(風曜日)100まん年ピクニック解決編 その2
2005-05-06 ポロの日記 2005年5月8日(風曜日)100まん年ピクニック解決編 その3
2005-05-05 ポロの日記 2005年5月5日(草曜日)100まん年ピクニック その1


2005-05-14 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その3

ポロの再生記 その3


「みなさん。驚かれるのも無理はありません。みなさんが出発した地球は末期症状でした。資源は枯渇し、環境は汚れ、国や自治体は借金まみれ、ピアノの音は狂い、本当の音楽を理解する人はごくわずか。これがどうしてまともでありましょうか」

 またまた、ざわめきが広がりました。

「地球はその後も荒廃し、船外時間で今から1万1900年前、つまり、出発から100年後には全人類が滅びてしまいました。しかし、その危機を事前に察知した人類補完機構は、スピードくじで運の強い人を選別し、こうして何隻もの宇宙船にご招待して生き残った人々で地球の再生を計ることにしました」

 ポロは、それからの話はボーッとしてしまって、よく覚えていません。

 人類滅亡から1万1900年が経過した地球には、デブリ(宇宙ゴミ)を含めたすべての人工天体がなくなっていました。もちろん“第4越後ステーション”だって跡形もありませんでした。でもエターナル号は大型宇宙船なのに地球に着陸する能力を持っていました。それも1回だけ。もう2度と飛び立つことはできません。
 窓の外に近づいてきたのは地球とは似ても似つかぬ星でした。陸と海の区別がなくて、星全体が水色でツヤツヤ光っていました。雲もありませんでした。
 エターナル号が着陸したのは、ガラスのようなツルツルした不思議な地面でした。着陸しても、下船の指示はなかなかありませんでした。

 心配になったポロは猫の特質を生かして通気ダクトに入り込んで、会議室の天井裏から人類補完機構の人たちが話しているのを近くで聞いてしまいました。

「・・・これは、地球が高温にさらされて岩石がガラス化してしまったに違いない・・」
「・・・よほど大規模な核戦争があったのだろう・・・」
「・・・大気も失われている。雲ひとつないじゃないか・・」
「・・・何もないにしても原始惑星ならまだしも、これでは自然の回復は不可能だ・・・」
「・・・この計画は失敗だったのではないか・・・」
「・・・いや、しかし、これは誰にも予想できなかった・・・」
「・・・この船の酸素と食料はいつまでもつんだ・・・」

 ポロは、それを聞いて悲しくなりました。せんせいも奥さんもたろちゃんもお兄ちゃんたちも、それから工房に遊びに来てくれる人たちも、みんな1万年以上も前に死んでしまって、それどころか、最後に残ったポロたちも残された命はあとわずかです。

 そのとき、ポロはポケットのなかの“ビッグバン・スイッチ”を思いだしました。おもちゃだけど、なんだか頼れるような気がきてきました。
小さな本体の裏には使用法が書いてありました。

“光よあれ!と叫んでからボタンを押します。本当の危機の時だけ作動します”

 ポロが大きな声で「光よあれ!」と叫んでボタンを押すと、周囲は光で満ち、ポロは一瞬のうちに、まぶしさの中に呑み込まれていきました。


つづく

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2005-05-13 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その4

ポロの再生記 その4


 気がつくとポロは神でした。眼下には宇宙でも特別な星、原始地球がありました。まだ生命はなく、太陽も生まれたばかりで雲をまとった青白い星でした。ポロは、神さまになるのはイヤだなあと思っていると、聞き覚えがある声がしました。

声「神さま・・・」

ポ「だあれ?」

声「あたしよ、忘れたのポロちゃん」

ポ「わ、女神さま」

め「今度はポロちゃんが神さまになったのね」

ポ「今度って、こんなこと何度もあったの?」

め「そう。ビッグバンスイッチを押したら神さまよ」

ポ「そうだったのか〜。でもポロ、神さまなんかになりたくないなあ」

め「なら、誰かに譲っちゃえばいいわ。前の神さまならポロちゃんの後ろにいるわよ」

ポ「わ、神さま」

神「いや、もと神じゃ」

ポ「ねえ、神さまってなんでもできるの?」

神「できるとも」

ポ「じゃあさ、ポロ、もと神さまに神さまを譲るからさ、あの地球をもう一度前と同じ姿にしてよ」

神「同じ進化の道を辿らせるのじゃな」

ポ「そ、そだよ!」

神「しかし、神の立場を譲ってしまうとポロ神さまの存在がなくなってしまうのう・・・おう、そうじゃ。いいことがある」

め「そうね、それがいいわ。ポロちゃん、じゃなくて神さま。また46億年後に会いましょう」


つづく

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2005-05-12 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その5

ポロの再生記 その5


 気がつくと、ポロは浅い海のなかでまどろんでいました。身体からぷくぷくと酸素の泡を出して気持ちよく昼寝していたのでした。来る日も来る日もポロは、昼寝ばかりしているストロマトライトなのでした。
ポロは、その日が何の日なのかなんて知る由もありませんでしたが、それは何億年もたったクリスマスイヴのことでした。
 空に何か光の点が現れました。それは、サンタクロースのドレッドノート号の先頭を走るルドルフの光る鼻でした。しかし、海の中から見ると、それがなんであるかよく分かりませんでした。(お話の部屋2004年12月23日“クリスマスイヴ2004”参照)
 ソリからは光の粉が降り注いで来ました。
それを浴びたポロたちは何だか楽しくなって笑い始めました。体中に力がみなぎってくるような感じでした。

 それからまた何億年かが過ぎました。
 ポロはフズリナであったり、アンモナイトであったり、鱗木であったり、ムカシトンボであったりしました。何百回、何千回、何万回と生まれ変わるうちに、地球もどんどん姿を変えていきました。
 ポロは、生命と地球、そいて時間との関係がおぼろげながらも分かってきました。時間が過ぎるから何かが変化するのではなくて、何かが変化するから時間がたつのでした。
 そしてポロは体温を獲得するまでになりました。
 そんなある日、ポロは神さまから呼ばれました。


つづく

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その6につっこめないのでここに。そうかー。だからドーラの命は地球と似ているのですね。でもそうなると地球の命の方が『親』なのに、ドーラの方が科学が進んでいる…う〜ん、地球も負けては居られませんね〜。(^^) / みた・そうや ( 2005-05-15 14:18 )

2005-05-11 ポロの日記 2005年5月15日(風曜日)ポロの再生記 その6

ポロの再生記 その6


神「ポロよ。お願いがあるのじゃ」
ポ「なあに? 神さま」
神「地球の将来のためにドーラにも生き物が必要なのじゃ。ドーラは寒くて生命の発生は不可能じゃ。だから、途中まで進化した生き物を送らねばならん。それをポロにお願いしたいのじゃ」
ポ「でも、ポロはせんせいが進化してくるのを待ってるんだ。どうしても会わなくちゃならないんだよ」
神「それなら大丈夫。ポロの子孫には優秀な技術者があらわれて宇宙船を建造するじゃろう」
ポ「ゴーヒャ・キージェだね!」
神「そうじゃ」
ポ「キージェはポロの子孫だったのか〜」
神「ははは。今回の太陽系の炭素系生命は全部ポロの子孫じゃ」
ポ「すごいね〜、ポロって」
神「そうじゃとも。では行ってくれるの?」
ポ「うん、行くよ」

 それから、また長い長い時間が流れました。

 そして、とうとう昨日の晩になりました。
 せんせいの仕事部屋に行くと、せんせいが作曲していました。もちろん、そばには女神さま。せんせいの耳元でフルートソナタのつづきを歌っていました。あれ、女神さま、前よりもっと薄着になったかも。あ゛〜〜〜! せんせいのクビに両腕をからめたりしてちょっとえっちじゃないか〜。わ゛〜〜、それからあんなこともこんなことも〜〜!

め「し〜〜! いい子にしててねポロちゃん」

 女神さまは、そんなふうに目配せしました。
 女神さまの帰り際にポロが、女神さまって少し変わった?って聞いたら、女神さまは「進化は完全に同じものが繰り返されるわけじゃないのよ、それに3日会わないだけで誰でも少しは変わるものよ」と言いました。
 ポロがあっけにとられていると「でも大丈夫。パップラ丼はいつまでも同じ味よ」と言ってふわっと消えてしまいました。

 そして朝。スランプレースに勝ったポロは46億年ぶりに道場のページを開いたのでした。


おしまい


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2005-05-10 ポロの日記 2005年5月10日(熱曜日)今日のお昼ごはん その1

今日のお昼ごはん その1


「ただいま」
「わ、せんせいお帰り、どこ行ってきたの?」
「銀行とかね、いろいろ用事を済ませてきた。ついでにお昼の買い物してきたから食べよう」
「わあ、今日はなあに?」
「今日はお蕎麦だよ」
「ポロは手打ちじゃなくちゃいやだなあ」
「ぜいたく言うんじゃない。一応、今日は生(なま)蕎麦だよ」
「そうか〜、それは楽しみだね〜」

 それからせんせいは、わざわざ東京消防庁で買ってきた防炎かっぽう着を着てお昼のしたくを始めました。
できあがるまで、ポロはテーブルで、読みかけの“サルでも分かる相対論”を読み始めました。

 ・・・・マイケルソンとモーリーは、極めて精密な実験を行なった結果、全ての方向からやってくる光の速度がすべて同じであるという結論に達しました・・・。

でも、サルには分かっても猫にはちょっと難しいかも・・・。

「さあできたぞ。食べよう」

 せんせいは、茹でたてのお蕎麦とおつゆ、それから薬味をテーブルに置きました。

ポ「いたーきま〜す!」

 ぞぞぞぞぞぞ!

ポ「ぶっ!」
せ「どうした、つっかえたか?」
ポ「・・・・ん・・・・、んまい! んますぎるよ、せんせい!」
せ「そうか、それはよかった」
ポ「よかったとか、そんな問題じゃないよ」
せ「じゃ、どんな問題なんだ」
ポ「これは電気羊市の蕎麦処“大上段”よりもおいしい!」
せ「だろ?」
ポ「だろって、せんせいどうしてこのお蕎麦知ってるの? いったいどこのお蕎麦なの」
せ「あ、パッケージはキッチンのダストボックスだ」

 ポロは、すぐにパッケージを持ってきてラベルで製造元を調べました。

ポ「えっと、長野のT製麺ていう有限会社だよ。無限会社ってあるのかな?」
せ「いや、ないよ。有限会社は小さな会社が多いね。まあ、個人企業みたいな感じだよ」
ポ「そうか、じゃあ、小さな会社でそこの社長さんだか、職人さんだかが気合い入れて作ってるんだね」

 ぞぞぞぞ〜!

ポ「んまい! やっぱ、んまい!」
せ「ああ。これだけのものだからね、相当な思い入れがあるだろうね」
ポ「でもさ、せんせい。これって、高かったでしょ?」
せ「いや、2人前で100円ちょっとだ」
ポ「ぶはっ! “大上段”のセイロなんて一枚1200円もするんだぞ〜、どういうことだ〜」
せ「価値と価格は必ずしも一致しないのは知っているだろう」
ポ「そだけどさ、ポロだったらこのお蕎麦にならお金払うよ〜」
せ「同じ売り場に、有名大手のなま蕎麦もあるんだが、そちらは高い」
ポ「せんせい、そっちは食べたことある?」
せ「あるよ。普通のなま蕎麦だ。以上でも以下でもない」
ポ「でもさ、せんせい。このお蕎麦は手打ちだって言われたら、ポロあっさり信じるよ」


つづく

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2005-05-09 ポロの日記 2005年5月10日(熱曜日)今日のお昼ごはん その2

今日のお昼ごはん その2


せ「ちょっとした小ワザがあるんだ。こういうナマ蕎麦は入荷したらその日が“買い”の日なんだ。賞味期限ぎりぎりで食べるより、さらにおいしい。今日は、まさに入荷したてだったんだ」
ポ「そっか」
せ「薬味も使ってごらん」
ポ「わ、このワサビ、なんだか色が薄いじゃないか〜」
せ「生ワサビだよ」
ポ「わ、せんせい。そういうぜいたくするから工房は貧乏なんだよ〜。ぷんすかぷんすか!」
せ「まあ、いいから食べてごらん」
ポ「わ゛〜〜!! んまい! このワサビはなんておいしいんだ〜。ポロ、このワサビとお醤油があれば、いくらでもご飯食べられちゃうよ! せんせい、高かったでしょ」
せ「いや、高くないよ。色が薄いのはワサビのせいじゃないんだ。わさびの中心部の黄色いところだけをおろしたんだよ。安い生ワサビはごつごつしていて、結局中心部を使うことになるから都合がいいんだ」
ポ「ふ〜ん、そういうワザがあるのか」
せ「まだ2/3は残っているからね。夕ご飯のときも食べられるよ」
ポ「わ、せんせい、この薬味のネギもいい匂いがして、すごくおいしいよ!」
せ「よく気がついたね。和風エシャレットを一束買ってきて、その中の小さな1本を刻んで長ねぎに混ぜたんだ」
ポ「そっか〜。タマネギ型じゃないほうのエシャレットだね〜。刻みネギにちょっと混ぜるとこんなに香り立つのか〜。今日はせんせいの小さなワザの積み重ねでこんなにおいしくなったわけか〜」
せ「それより何より、小さな製麺所の心意気かな」
ポ「そだね〜。ところで、せんせい。今日いったいいくら使っちゃったの? 明日もお昼食べられるだけお金、残してある?」
せ「ああ、大丈夫だ。今日は2人分で345円だよ」
ポ「え゛〜〜〜〜〜、ひとり170円ちょっとじゃないか〜! 安すぎるね〜。売値でそれなら、いったい作ってる人たちはいくらで卸してるんだ〜!」
せ「私ももう少し払いたいと思うよ。製麺所にもワサビ農家にもエシャレット農家にもね」
ポ「そういう人たちが、正当な対価を得られるようになるといいね〜」
せ「対価を支払うのは消費者だからね。まず、我々が認識を改めないとね」
ポ「ポロ、もうあらためちゃったよ」


おしまい


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先頭 表紙

2005-05-08 ポロの日記 2005年5月8日(風曜日)100まん年ピクニック解決編 その1

100まん年ピクニック解決編 その1


ピクニックから帰った晩、ポロは夢を見ました。

 ポロは、ぜんまい商店街の福引で一等賞を当てて観光宇宙旅行に来ていました。ここ数年やっと表世界でも宇宙旅行が一般的になってきたのです。今日は大洗宇宙基地から、イバラ危険宇宙観公社の第一はまなす丸に乗って宇宙へ出たところでした。ポロは小さな円窓にかじりついて外に広がる宇宙に目をこらしていました。
 ポロの前には、ぜんまい商店街の魚政のおやじさんもいました。

魚政の政二郎「おお、さすが宇宙だね〜。お月さまがあんなに大きく見えるよ」

 たった数百キロ近づいただけなのでまさかと思いましたが、ホントにお月さまが大きく見えました。

ポ「わ、M31もあんなにおっきいよ」
政「お、あれが有名なアンドロイドの大星雲ていうやつか。長生きはするもんだねえ」

 でも、よく見ると、それらはどれも観光客を当て込んだ歓楽街のネオンでした。

<居酒屋 満月>
<パブ・アンドロメダ>

 まもなく高度500キロの折り返し点というところで、船体に大きな衝撃がありました。反対側の窓の席に座っていた商店街の八百八(やおはち)のおカミさんが叫びました。

おカミ「まあ、事故だわよ! あの宇宙船にぶつかったんだわ〜」

 すぐに船内放送が流れました。

船長「皆様にお知らせいたします。ただいま、本船とほかの観光宇宙船が接触事故を起こしました。相手の船はナガサ危険宇宙観光公社のグラバー2号の模様です。グラバー2号も本船の被害もごく軽微で、安全上問題はありませんからご安心ください。

 ぼかん!

 そのとき、いきなりグラバー2号が爆発しました。

乗客たち「きゃあ〜!」

 バラバラバラ、カンカンカン!

 グラバー2号の破片が第一はまなす丸に降り注いで音を立てました。

 ぷしゅー!

 へんな音に気づいて音のするほうをみると、第一はまなす丸の壁に外がわから金属製のフォークがささっていました。きっとグラバー号でお昼を食べていた乗客が使っていたものでしょう。

おカミ「まあ、大変。穴が空いて空気が抜けちゃうわ! 船頭さんなんとかしてよ」
魚政「船頭じゃないよ、船長さんだよ」

 魚政さんは座席の下に用意されたファーストエイドキットから傷テープを出すと、ささったフォークを押し戻して、空いた小穴に貼りつけました。

 すると再び船内放送がありました。

船長「皆さん、落ち着いてください。私は東京大学を一番の成績で卒業したから大丈夫です」

 ぱちぱちぱちぱち!

 船内から一斉に拍手が沸きおこりました。


つづく

先頭 表紙

2005-05-07 ポロの日記 2005年5月8日(風曜日)100まん年ピクニック解決編 その2

100まん年ピクニック解決編 その2


「念のために、乗船前のご説明どおりに宇宙服をご着用ください」

 客席ごとに設けられた天井のドアから宇宙服が出てきました。たしかに説明は受けましたが、誰も真面目に聞いていなかったので、着かたが分かりませんでした。となりに座っている東山寝具店のご隠居が老眼なので、魚政さんが大きな声で説明書を読み始めました。

・・・・どれどれ、えーと。大池屋の宇宙服をご利用いただきありがとうございました。弊社ではポテトチップの鮮度を保つためのパッケージの気密技術をもとに、大変使いやすい宇宙服の開発に成功いたしました。以下の説明をよくお読みになって楽しい宇宙旅行をどうぞ。
ご注意:
・宇宙旅行以外の用途にはご使用にならないでください。
・気密用ジェリーパッキンは必ず弊社指定のものをご使用ください。それ以外のものをご使用になった場合の安全の保証はいたしかねます。
・・・・なんだか、もう読むのが面倒くさくなってきたなあ、まず、着てみましょうや。

 ところが宇宙服は完全に閉じていて、どこを開けるかも分かりません。気密ファスナーのようなものがあったので、力いっぱい引っ張ってみました。

 びりびり〜!

「あ、破けちゃったよ、参ったなあ」

 そのときでした。ガクンという衝撃とともに、はまなす号が急速に落下しはじめました。

乗客「きゃ〜!」

 無重力だった船内に重力が戻り始めました。
 身動きできなくなる前に、ポロは魚政さんと一緒に操縦室に向かいました。
 操縦席では、まだ若い船長が青くなって操縦桿を握ってふるえていました。

船長「ダメだ、どうすればいいか分からない!」
魚政「あんた東大でてんだろ。なんとかしろや」
ポロ「とにかく降下を食い止めないと。今、どのあたりなの? 地上まで何分ぐらい?」
船長「今、ホームラン圏を通過して来々圏に入るところです。地上までなんて持たないよ。さいたま圏を過ぎたら、あとは地獄の熱圏だ」
ポロ「そうか、スペースシャトルが燃えながら降りてくるのは熱圏のせいだったのか〜。ホントだったんだ。風にいちゃんの勝ちじゃないか」
船長「いったいどうすればいいんだ!」
魚政「ちょっと、どいてみな!」

 政二郎さんは船長さんをどかすと、操縦席に座って、こんなのオートマチックじゃねえかと言いながら船体を逆向きにして船尾から降下するようにしました。


つづく

先頭 表紙

2005-05-06 ポロの日記 2005年5月8日(風曜日)100まん年ピクニック解決編 その3

100まん年ピクニック解決編 その3


魚政「おい、猫の兄ちゃん。全部のエンジンを最大出力で噴射するから、いっせーのせっていう合図で、その赤いボタン4つ押してみてくれ」
ポロ「うん、やろう!」
魚政「いっせーのせ!」

 ポロはタイミングを合わせて緊急用のエンジン噴射ボタンを押しました。

 ゴ〜〜〜〜〜〜〜〜!

 エンジンは無事噴射しましたが、もう第一はまなす丸のスピードが速すぎて降下速度はほとんど落ちませんでした。第一はまなす丸は、徐々に炎に包まれ始めました。
 それにつれて、どんどん船内の温度が上がってきました。

ポロ「うわ〜! 助けて〜熱いよ〜! 死む〜死む〜!」

 ぽんぽん、ぽぽん、ぽんぽぽん・・・・

 そしてやっと、そこにあの神田丸の力強いエンジン音が聞こえてきたのでした。

ポロ「ふ〜、助かった・・・・」

 書庫のベッドでポロは汗びっしょりになって目を覚ましました。

 朝ご飯を食べながら、ポロは風にいちゃんに言いました。

ポ「風にいちゃん」
風「なんだポロ?」
ポ「あのさ、熱圏てホントにあるんだね。ポロ、焼け死ぬところだったよ」
風「なに言ってるんだ。別に熱くなんかないだろ?」
ポ「だって、風にいちゃんが2000度だって言ったじゃないか」
風「そうだよ。2000度あるけど、熱くないんだ」
ポ「またまたそんなデタラメ言って、風にいちゃんは、どこまでポロをダマせば気がすむっていうんだ〜! 兄ちゃんなんかキライだ〜!」

 ポロは、そのまま工房を飛びだすと、泣きながらあじさい亭に行きました。

ポロ「え〜んえん!」
女神さま「どうしたのポロちゃん」

 女神さまは、まだ店の仕込みが始まる前だったので、ポロをひざに乗せてやさしくなでてくれました。

ポ「え〜んえん!」
め「そうだったの。ねえ、ポロちゃん、あたしのハートなんて50000度もあるのにポロちゃんヤケドしないでしょ。それと同じなのよ」
ポ「え〜んえん!」

 ポロは、もうどうでもよかったんだけど、女神さまのひざの上にいたかったので、もう少し泣いていることにしたのでした。みなさんは、ちゃんと熱圏のことを調べてください。


おしまい

 
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先頭 表紙

ミタさん、いいでしょ! / ポロ ( 2005-05-08 23:29 )
そうかぁ…女神様のハートは熱いのですね(笑)。いいなぁ、女神様のひざ枕! / みた・そうや ( 2005-05-08 20:57 )

2005-05-05 ポロの日記 2005年5月5日(草曜日)100まん年ピクニック その1

100まん年ピクニック その1


奥「連休、どこにも行かなかったからお弁当持って秋ケ瀬公園でも行きましょうよ」
ポ「わ〜、うれしいな、行こういこう!」
風「別にいいけど」
せ「早くフルートソナタ書かなくちゃ」
奥「どうせ、ウンウンうなってるだけでしょ。さあ、おむすび作るから手伝って」

 今日は海にいちゃんとたろちゃんがいないので、せんせいと奥さん、風にいちゃんとポロで、おとなりの電気羊市を流れる荒川河川敷にある秋ケ瀬公園に行くことになりました。ずっと前に、せんせいと一緒にお弁当を持って行ったことがあります。

せ「エンジンかかるかなあ」

 せんせいの放りっぱなしの愛車(?)ユードラは、ほこりにまみれて眠っていました。

 きゅるる・・・きゅるるる・・・・ぶりりりりりりり・・ぶおん!

ポ「わ、かかった! これで行けるね」
せ「さあ、乗って」
ポ「せんせい、運転のしかた覚えてる?」
せ「うん、まあ何とかね」
ポ「せんせい、クルマは左側通行だよ。思いだした?」
せ「ああ、いま思いだしたよ」

 ユードラは文句を言うでもなく、ちゃんと道路を走り始めました。

ポ「せんせい、フェラーリみたいな高級外車じゃなくてよかったね。国産車はジョーブだなあ」
せ「3年で3000キロしか走ってないクルマだ。10万キロはラクラク走るっていうから、このぶんだと100年は持つな」
風「とむりん、ちょっと意味が違うよ」
ポ「あはは、100年乗ってギネスブック入りするんだ〜」

 連休中だと言うのに、道路はすいていてガラガラでした。

ポ「連休なのにすいてるねえ」
風「みんな行楽地とかへ出かけてるんじゃないのかな」
ポ「そっか。どこも行かないポロたちが正解だね」

 快適に走ってきたので、ユードラはたちまち秋ケ瀬公園の駐車場に到着しました。それでも、さすがに公園駐車場はクルマでいっぱいでした。
ポロたちはあまり人のいない、はずれの林のなかの静かな木陰にレジャーシートを広げてお弁当を食べ始めました。

奥「ここは人が少なくていいわね」
せ「暑くないし、木がいっぱいあって実にいい気持ちだ」
風「こんなところに家が建ってたら、休日の昼ご飯はいつもテラスだね」
奥「いいわねえ。あなた、がんばってもう一軒建ててよ」
せ「ぶっ! げほげほげほ。今の家のローンだって払い終わるかどうか分からないのに、無理言っちゃいけないよ」
奥「そうかしら。ヒット曲書けばいいのよ」
せ「クラシック系の現代音楽ではヒットしてやっと温泉旅行っていうところだよ」
奥「じゃあ、それでいいわ。早くヒット曲書いて温泉行きましょうよ」
せ「毎日がんばってるんだが、どういうのがヒットするのか全然わからない。だから自分の好きな曲を書くしかないんだ」
奥「あら、泳げたいやき君みたいの書けばいいのよ」
せ「それは奇跡を待つしかないよ」
奥「な〜んだ、そうなの」
風「そうだよ、かあちゃん、ヒット曲なんてそう簡単に書けるもんじゃないよ」
ポ「ポロてきには、せんせいの曲は全部大ヒットなんだけどなあ」
風「ポロにヒットしても儲からないじゃないか」
ポ「そっか〜」

 それから、ポロたちはお弁当を全部たいらげると、ゴロリと空を仰いで寝転がりました。


つづく

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