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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2005-04-24 ポロの日記 2005年4月24日(風曜日)ポロ、アンデルセン公園に行く その1
2005-04-23 ポロの日記 2005年4月24日(風曜日)ポロ、アンデルセン公園に行く その2
2005-02-28 ポロの日記 2005年2月26日(岩曜日)お話のつくだ煮 その1
2005-02-27 ポロの日記 2005年2月26日(岩曜日)お話のつくだ煮 その2
2005-02-26 ポロの日記 2005年2月26日(岩曜日)お話のつくだ煮 その3
2005-02-25 ポロの日記 2005年2月26日(岩曜日)お話のつくだ煮 その4
2005-02-24 ポロの日記 2005年2月15日(熱曜日)夕焼け救助隊 その1
2005-02-23 ポロの日記 2005年2月15日(熱曜日)夕焼け救助隊 その2
2005-02-22 ポロの日記 2005年2月12日(岩曜日)初めてのセドナ その1
2005-02-21 ポロの日記 2005年2月12日(岩曜日)初めてのセドナ その2


2005-04-24 ポロの日記 2005年4月24日(風曜日)ポロ、アンデルセン公園に行く その1

ポロ、アンデルセン公園に行く その1


「たろちゃん、日曜日っていうのは退屈だねえ」
「あたし別に退屈じゃないけど」
「ちょっとくらい共感してくれてもいいじゃないか〜」
「だって退屈じゃないもん」
「せんせいは退屈はチャンスだって言ってたな。だから今はチャンスなんだな」
「ポロはチャンスだと思う?」
「ううん、退屈はつまんないかも」
「じゃ、チャンスなんかじゃないわよ」
「だってせんせいが言ってたもん」
「あんたホントにとむりんの弟子なの?」
「弟子だよ〜。それも高位の弟子なんだ。なんでもナナちゃんが1番でポロが2番だって」
「それって、ど〜〜いう順序なの? ポロ自身がチャンスだって思わないかぎり、退屈はチャンスじゃないよ」
「そっか・・!!」
「分かった?」
「そ〜だ! いつもせんせいが言ってるじゃないか。理解するまではただの言葉だって。でも、いったいどうして退屈はチャンスなんだ〜?」
「あたしだったら退屈だと何をしようかって考えるから、新しいことを思いついたりするけどね」
「何かを思いつけばいいんだな。それなら何か考えよう。そだ。たろちゃん」
「なに?」
「アンデルセン公園に連れてってよ」
「どこにあるのよ〜。デンマークまでなんて行けないからね」
「千葉県だよ」
「あたしにとっては千葉もデンマークもおんなじくらい遠いわよ」
「でも、行きたいよ〜」
「荒川遊園が限界ね」
「アンデルセン公園の方がカッコいいよ〜」
「うん、やっぱり連れていってあげる」
「わ〜い! 早く行こういこう!」
「ちょっと準備してからね」

 たろちゃんは小さなバスケットに何かを入れて準備していました。きっとお弁当に違いない。

「さあ、行くわよ」
「うん。あれ、でもタドタド駅は反対方向だよ」
「いいの、歩いていくから」
「わ、千葉県まで歩いていったら1時間くらいかかっちゃうよ」
「1時間でつくわけないでしょ。電車に乗ったって1時間以上よ」
「じゃあ、どうやって行くの?」
「いいからついてくればいいの。魔法で5分でつくから」

 ポロたちは、よく晴れた午後の空の下を緑の葉っぱを眺めながら歩いていきました。

「ねえ、たろちゃん」
「なあに?」
「緑がきれいだねえ」
「そうね。アンデルセン公園もきっときれいよ」
「あのさ、マルエツってそれぞれに名前がついてたの知ってる?」
「北町店とか?」
「そじゃなくてさ、イトーヨーカドーとかさ、ジャスコとかさ、名前があるらしいよ」
「やっと区別がついたの?」
「え゛〜〜! たろちゃん、前から知ってたの?」
「あたりまえじゃない。知ってるとかじゃなくて、区別がつかないなんて信じられないわよ」
「じゃさじゃさ、いつものマルエツは?」
「あれはマルエツよ」
「じゃさ、ゼンマイ駅に行ったときに行くマルエツは?」
「マルエツよ」
「じゃさ、まんなか病院に行くときにとおるマルエツは?」
「マルエツよ」
「じゃさ、“ド糸”ホームセンターに行くときに寄るマルエツは?」
「マルエツよ」
「ひみつのマルエツは?」
「マルエツよ」
「な〜んだ、たろちゃんだって区別ついてないじゃないか〜」
「だってポロが言ったの、ぜんぶホントのマルエツだもん」


つづく

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2005-04-23 ポロの日記 2005年4月24日(風曜日)ポロ、アンデルセン公園に行く その2

ポロ、アンデルセン公園に行く その2


「マルエツって日本のスーパーのシェア100パーセントだな」
「違うわよ。ポロが大きなマルエツって言ってるのがイトーヨーカ堂」
「あれはマルエツじゃないのか〜。どおりで、マルエツが束になってかかってもかなわない大きさだもんな〜」
「それでね、ポロがとっても大きなマルエツって言ってるのがイオンショッピングセンター。このへんの人はジャスコって呼んでるけど」
「あれがジャスコか〜。あそこはポロ、何度も遭難しかけたからな〜。とくにカフェテリアに行くと根っこが生えて遭難しやすいんだ」
「それから新しくできたタドタド駅のところのマルエツは“マルヤ”っていうの。となりの“ホントのタド駅”と“公園駅”のマルエツは“サミット”」
「ダメだ。やっぱりポロは覚えきれないかも。マルエツはマルエツだ〜」
「ほら、ついたわよ」
「なんだ、春日公園じゃないか〜」
「違うわよ、今日は特別にアンデルセン公園なの」
「だ、だましたな〜!」
「だましてなんかないよ。まあ、いいからベンチに座って」
「ここは、ぜったい春日公園だよ。ポロ、マルエツは区別つかないけど、公園の区別はばっちりだからね」

 たろちゃんはバスケットから何を出すのかと思ったらおまんじゅうを出しました。

「わ〜、バスケットにおまんじゅうなんて似合わないな〜」
「いいの。ちょっと見てて」

 たろちゃんは竹ようじで、おまんじゅうにまっすぐな切れ込みを入れました。

「ポロちゃん、この切れ込みの線の両側を押してみて」
「こ、こうかな・・・・。わ、あんこが出てきちゃったよ」
「餡・出る・線」
「・・・・。わ〜、つまんないつまんないさぶいよ〜〜〜〜!」
「そう。あたし一人で食べるからいいのよ、別に」
「わわわわわ。ははは。面白いよ、とっても面白い」
「ねえ、ポロちゃん。ここはどこ?」
「かすがこう・・・」
「え、そうだっけ?」
「ぷるぷるぷるぷる、ち、ちあうよちあうよ。ここはアンデルセン公園だよ」
「そう、よくできたわ〜。お茶も持ってきたわよ」

 それからしばらくの間、ポロたちは“どこでもアンデルセン公園”で楽しいティータイムを過ごしたのでした。


おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

ポロの掲示板はここ。
ポロのひみつの部屋

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ミタさん、たろちゃんはいつでも強引だよ〜! / ポロ ( 2005-04-27 23:58 )
あはは、たろちゃんも強引ですねー。でも気は持ちようで、この方法ならご近所の公園も新鮮ですね。 / ミタ・ソウヤ ( 2005-04-25 08:37 )
マチルダさん、たろちゃんに伝えとくよ〜! / ポロ ( 2005-04-24 21:02 )
たろちゃんに惚れました・・・。 / マチルダ ( 2005-04-24 20:08 )

2005-02-28 ポロの日記 2005年2月26日(岩曜日)お話のつくだ煮 その1

お話のつくだ煮 その1


 今日は2004年11月の後半から12月までのポロのお話の解説をしちゃいます。
ポロは10月の終わりごろから11月半ばまで疾風怒涛(しっぷうどとう)のスランプでした。どのくらいのどん底だったかと言うと「どん底夢日記」くらいです。
どん底っていうのは、なんだかやる気がなくなっちゃうときのことで、ダラダラすごしちゃいます。
 それでも空とか眺めていると、また元気になってくるので、お話を書き始めます。お話を書き始めると寝ずにがんばっちゃたりして、くたびれてまたどん底になっちゃいます。ポロには、ちょうどいいっていうことができません。
では、そんなポロの「お話のつくだ煮」のはじまりはじまり〜!

 「どん底夢日記」(2004.11.14-15アップ)は、ちょっとだけホントの夢日記です。自分の夢を、せんせいが楽譜の校訂をするみたいに手を加えてみました。ここで初めてアルマジロたちが登場します。アルマジロたちは、その後もお話に登場することになる重要なキャラクターとなりました。

 書くのが楽しかったのは「弾丸列車京都へ」(2004.11.29-12.3アップ)です。最新型の新幹線が蒸気機関車になっちゃった世界のお話です。もしポロが仕事をするんだったら、一所懸命に働くことができて、それが報われる仕事がいいなあと思います。ポロはこのお話を書きながら力いっぱい石炭をくべました。書いていてホントに腕が折れそうなくらいがんばりました。時速400キロになった時には、感激して「やった〜、やったぞ〜!」って画面に向かって大声で叫んじゃいました。
 一番好きだったのは、ポロとミタさんが、京都駅でススだらけになりながらも何事もなかったかのように敬礼して、のぞみ41号の乗務を次の人たちに引き継ぐシーンです。書いてるほうのポロは、ここで泣きそうでした。

 「みんじん世界の逆襲」(2004.12.4-7アップ)は、いっぱいアイディアを練って書いたお話です。アイディア帳は伏線でいっぱいになってしまって全部使い切れませんでした。ホントは古代エジプト展に忍び込んでミタさんミイラを盗み出す場面もあったのですが、それだけでひとつのお話になってしまいそうだったので別の機会にとっておくことにしました。一見すると別々の話が最後にぜんぶつながるようにするためには、お話の設計図みたいなものが必要です。ポロは、このお話を書いてソナタを書くっていうのはこういうことなのかなって思いました。こういうお話は最初から順番に書いていくわけではないので、とっても頭を使いました。くたびれた〜!

 「公然のひみつ」(2004.12.8-9アップ)は、読んだ人に「そうか、ホントは猫はしゃべるのか〜」と気づかせる目的で書きました。今、読み返すと、もっとうまくかけたかもって思います。

つづく

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2005-02-27 ポロの日記 2005年2月26日(岩曜日)お話のつくだ煮 その2

お話のつくだ煮 その2


 「あじさい亭繁盛記」(2004.12.10-13アップ)は、ちょっと好きな話です。shinさんが掲示板に書き込んでくれた「パップラドンカルメ」(知らない人はググってね)という言葉がきっかけで書こうと思いたちました。だからといって「パップラ丼軽め」を主題にしてしまうとお話の膨らみが足りなくなる気がしたので、もっとほかの視点から書くために、せんせい式のKJ法で発想をまとめる作業からやりました。過去の、一見無関係な情報を並べて、それをずっと眺め続けて関連性を見つけ出していきます。
 「パップラ丼」というメニューから「あじさい亭」。あじさい亭の食材調達は「三河屋」。それを注文する宇宙人1個中隊(新しいアイディア)。調理場には「アルマジロの摩擦式ヒーター」。女神さまがでてくるシーンがみんじん世界の逆襲にあったので、そことつなげること。場所は裏神田を思わせる神田淡路町。パップラの思いがけない正体。小道具の名前、たとば“レギュラス錦”“デネボラ正宗”(どちらも白鳥座の星の名前)。「おまえたちは銀河の猛者か〜!」っていうシーンは映画「エイリアン2」のスラコ号船内でのアポーン軍曹の言葉からアイディアをもらいました。
 そういう準備が整ってから一気にお話としてまとめていきます。ひとつだけのアイディアでお話を書き始めると薄っぺらになってしまうというのは、せんせいの教えです。

 「ライバル店出現」(2004.12.14-15アップ)は、しおさんのサイト「エンターテイメントトークショー」の日記にあった“ラッキー酒場”がヒントです。あじさい亭と関係があるようでいて、ぜんぜん違う話にしなければポロ風ではないので、またまたアイディアを練りました。
 せんせい式KJ法によってひっぱり出した関連事項。「デーモン族の店」「ラーメン屋さんには必ずある“謎のテレビ”」(アイディアノートのメモから)→「そこには何の番組が一番面白いか」→「ずっと前に見たプロレスラーの舞台裏」→「そのタイトルは“ロード・オブ・ザ・リング”のリングにかけて“労働・オブ・ザ・リング”にする」
 書いているうちに、せんせいのピアノ曲「赤いスカートの踊り」(試聴室には入っていません)を思いだしたので、エピソードとして加えることにしました。
ポロは、番組に登場するフロドが“プロ”のレスラーであることを描きたいと思いました。それで、ちょっと好きな話になりました。

 「マグロ救出作戦」(2004.12.16アップ)は、ゲームの攻略本の「魔建ビルディング」という魔剣のだじゃれで作られた武器の説明の近くに「チルド・ツナ」という凍ったマグロで敵を叩くという武器が出ていて、そこに「不治の病にかかったマグロが治療可能な未来を信じて冷凍冬眠している姿」と書いてあったのがきっかけです。ポロは、冷凍マグロを「遠い星へコールドスリープして向かう途中の姿」に見立ててみました。

つづく

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2005-02-26 ポロの日記 2005年2月26日(岩曜日)お話のつくだ煮 その3

お話のつくだ煮 その3


 「作曲工房のひみつ」(2004.12.17-18アップ)は、そろそろ違った視点から物語を書かないとせんせいから指導が入りそうだったので(うそ。指導が入ってしまったので)、ずっと前からアイディアを練っていたお話です。せんせいの指導内容を要約すると「読み手は誰も想像もしていなかったのに、実は、これが読みたかったと思わせる話」ということです。せんせいも、この方針で曲を書くそうです。でも、言うは易しく行なうは難(かた)し。こういうことを心の片隅においてずっと毎日過ごしていると、あるとき急にアイディアのしっぽが見えてきたりします。リンゴなんて昔から何万回も落ちているのに、はじめてニュートンが重力に気づいたのと似ています。電話だって毎日鳴っているのに、ポロは急に面白い電話ばっかりかかってきたらどうだろうと思い立ったわけです。でも面白い電話の内容がなかなか思いつきません。それでも、そんな日がずっと続くうちにひとつずつエピソードを集めていったのが、このお話です。たぶん、成功したと思います。みなさんはどう思われましたか?

 「作曲工房の午後」(2004.12.19-20アップ)は「作曲工房のひみつ」で語りきれなかった部分を補うために書きました。両方あわせて、やっとひとつのお話になりました。こんなことではダメです。

 次は「クリスマスイヴ2004」(2004.12.21-23アップ)です。ポロのお話ではサンタさんは重要人物です。去年(2003年)のクリスマスのお話は、ポロてきにけっ作だったと思います。だから、それに引きずられてアイディアが二番煎じにならないために毎日毎日ウンウンうなってしまいました。
 「よく、いろんなお話が書けますね〜」っていうお便りをもらいますが、それは、ポロが毎日ウンウンうなっているからです。ポロも前は、ものを考え続けることができませんでした。お話を書いている期間中でも、本当に考えるのは書いているときだけでした。でも今は違います。朝起きてから夜寝るまで(夢の中でも)、ずっと頭の片隅にお話のことが常駐している部分ができたので、何を見ても何を聞いても、それがお話と関連するかどうか考えるようになりました。これは、せんせいがピアノや作曲が上達するための基本的な姿勢だと言っていることと同じじゃないかと思います。ピアノの練習をしようと思ってピアノに向かうときには、すでにどのように弾けばよいかというイメージがなくてはならないっていうやつです。言いかえると、ピアノに向かうときには、すでに練習の80パーセントは終わっているということです。だから、ポロがパソコンに向かうときには、もう何を書けばいいのか分かっています(かなりウソかも。分からないことだらけ)。
 で、そのパソコンに向かう前のアイディアに苦しんだのがこのお話です。きっかけは、どうしてサンタさんはタダでプレゼントを配っているのかということでした。普通のアイディアなら、お金持ちの酔狂というところで落ち着くかもしれませんが、ポロの語り部だましいは、もっと違う視点を探し求めていました。そして、とうとう“生命を見守る使命”を持つサンタさん像に思いいたったのでした。
これは、ちょっと好きな話になりました。

つづく

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2005-02-25 ポロの日記 2005年2月26日(岩曜日)お話のつくだ煮 その4

お話のつくだ煮 その4


 「雪の大みそか」は、ポロの大好きなお出かけシリーズです。2004年1月の「スリッパを買いに」から始まったお出かけシリーズは、ホントの日記ふうに書けるので、書いていていい気持ちです。「大きなマルエツに行く」(同2月)「ポロ、銀行へ行く」「おちゃめさんと散歩」「春宵一刻値千金」(3月)「夏のおでかけ」(8月)「商店街へ行こう」「楽譜を買いに」(9月)「ないしょのマルエツ」(10月)「とっても大きなマルエツ」(11月)と、こんなにたくさん書いてしまいました。
ポロが地球にやってきて最初に行ったスーパーがマルエツだったので、スーパーならなんでもマルエツという名前で呼んでいます(ホントに)。首都圏以外の人はマルエツを知らないかも知れないので、なんのことだろうと思うことでしょう。マルエツ発祥の地が埼玉県蕨市(お話では「ぜんまい市」としても出てきます)なので、マルエツは重要なお店です。
 「雪の大みそか」は「アナタワ粉」シリーズの前触れとして書きました。その後、裏神田でも禁制品となっている「アナタワ粉」にまつわるお話をいくつか書きましたが、直すところだけのような気がしてひとつもアップしていないので、エピソードが浮いてしまっています。いつかアップするかも知れないので、種明かしはしないでおきます。

 それから内緒だけど、ホントは12月にアップしようと思って長編の大作も書いていました。宇宙が危機に瀕するというものすごいお話です。でも、危機に立ち向かった松戸博士とロケット号がどうしても助からないのでアップできませんでした。いつか、お話の部屋を閉じるような時が来たらアップするかも知れません。

 これからもポロのお話をよろしくね〜!

おしまい

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そうか〜。だからロケット号も宇宙と一体化して居たんだぁ(「ポロ、山里に暮らす」参照)…その大作を読みたい!でも、その時はお話の部屋が閉じるとき…なんてのはもっと悲しすぎます… / みた・そうや ( 2005-02-27 11:29 )

2005-02-24 ポロの日記 2005年2月15日(熱曜日)夕焼け救助隊 その1

夕焼け救助隊 その1


「ねえ、たろちゃん」
「なあに?」
「夕焼けがきれいだよ。すっごいきれい」
「そう」
「写真にとろうよ」
「写真に撮っても目で見たように写らないよ」
「そうか。でもさ、あの夕焼けもったいないよ〜」
「じゃあ、絵に描けばいい」
「わ〜、たろちゃんが描いてくれるの?」
「違うよ、ポロが描くの」
「ぽ、ポロ描けないよ〜!」
「でも、ポロが夕焼けを残したいんでしょ。だったらポロが描かなくちゃだめなの」
「そんなの無理だよ〜」
「あたしはね、ウダウダ言う猫はきらいなの」

 そういうと、たろちゃんはポロを抱き上げて、さっさと工房の屋上に上がっていきました。
 大きな太陽電池パネルの裏が見える屋上の北西側に座って、たろちゃんはスケッチブックを広げてポロに鉛筆を渡しました。

「さあ、描いてみて」
「だって、この鉛筆オレンジ色じゃないよ」
「色なんて小さなことなの。よく見れば夕焼け空には線だってないはずよ」
「うわ、それを線で描くのか。こんなことやらせるなんてイジメだ〜」

 ゴツン !

「わあ、ゲンコツでぶった! ホントのイジメだ〜!」
「あたしはね、本気で怒ってるの。見て。夕焼けはどんどん消えちゃうの。待ってなんかくれないんだから」
「わ〜、大変だ〜!」
「ポロは、あの夕焼けを残したいんでしょ。ポロは夕焼け救助隊なのよ。夕焼けの命がかかってるんだから」
「描くよ、描くよ〜」

 ポロが線を引くと、たろちゃんがスケッチブックを取り上げて、そこに別の線を描き込みました。

「ポロ、あんた、あの夕焼けを残したんだったら、自分の思い込みじゃなくて、あの夕焼けを描きなさい!」
「わ〜、無理だよ〜」
「無理じゃないわ。心をカラにして、あの夕焼けだけを取り込むの。心に思い込みがあると、それを描いちゃうわよ」
「あ〜、ピアノの子ども弾きみたいなものかなあ」
「そう、それ」

 夕焼けは、どんどん暗くなってきました。

「焦らなくてもいいわ。あの夕焼けの本当の姿を見るのよ」
「うん」

 ポロは夕焼けを描いては本物の空と見比べて、自分がどういうふうに間違って見ていたかを確かめていきました。


つづく

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2005-02-23 ポロの日記 2005年2月15日(熱曜日)夕焼け救助隊 その2

夕焼け救助隊 その2


「そう。そんな感じ」
「うん、だんだん見えてきた。でも、絵がヘタだよ〜」
「そんなことはいいの」
「夕焼けってこんなだったんだね〜、ポロ、何も見てなかったかも」
「そう、それに気づくのが大事なの」

 そうこうしているうちに、とうとう夕焼けは消えてしまいました。

「たろちゃん、間に合わなかったよ」
「そうでもないよ」
「どうして?」
「ポロは、ちゃんと夕焼けを見てあげたじゃない」
「どういうこと?」
「もし、写真に撮ってたら、それでもう安心しちゃって、こんなに一生懸命夕焼けなんか見なかったはずよ。見るのは写真だけ。それもちょこっと」
「そっか〜。絵を描くってそういうことか」
「そう。ピアノ弾くのも一緒でしょ? 聴いてるだけより練習するほうがずっと深くその曲と付きあうんじゃないの?」
「そ、そだ〜!」
「絵を描くっていいでしょ。ポロは今日の夕焼けを一生忘れないはずだよ」
「うん、そうかも。こんなにちゃんと夕焼けを見たのは初めてだよ。もう心に深く刻み込まれたな」
「でしょ?」
「ポロ、絵の練習することにした」
「その決意が変わらないといいけどね。ピアノだって絵だって、続けるのは大変なんだから」
「う・・、そう言われると自信がないかも」
「あのね、それって生き方なの。生き方にしないと続かないの」
「ポロは、そうやって生きるって決めた!」
「決めてもね、それはただの言葉」
「ちがわいちがわい、もう決めた!」
「じゃあ、がんばってね」

 ポロたちは気がつきませんでしたが、空には、とっくに星たちがまたたき始めていたのでした。


おしまい


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ポロのひみつの部屋

先頭 表紙

ミタさん。たろちゃんはね、ゲンコツでたたいたんだよ。微笑ましくなんかないよ〜! / ポロ ( 2005-02-25 23:52 )
夕日を一生懸命に見つめるポロちゃんとたろちゃん。微笑ましいです。(^^) / みた・そうや ( 2005-02-24 18:03 )

2005-02-22 ポロの日記 2005年2月12日(岩曜日)初めてのセドナ その1

初めてのセドナ その1


「こちら三河屋デリバリーサービスのノストロモ号。セドナ管制局どうぞ」
「ぴゅい〜〜ざ〜〜ぴゅわお〜」
「セドナ管制局、応答願います。こちら三河屋デリバリーサービス所属ノストロモ号の是輔(これすけ)です。軌道進入、および着陸のための誘導ビーコンをお願いします」
「ぴゅい〜〜ざ〜〜ぴゅわお〜」

 パップラ丼の出前のためにセドナに到着した是輔さんが、いくら呼びかけてもセドナ管制局からの応答はありませんでした。

「ぴゅい〜〜ざ〜〜ぴゅわお〜」

 まるで大昔の無線のようにピンクノイズとホワイトノイズが混ざり合って聞こえてくるばかりでした。

「・・・是輔君かね・・」

 それは聞き覚えのあるホリテッカン博士の声でした。

「へい是輔です」
「ああ、そうじゃ。よく来てくれた。ここには誘導ビーコンなどないが、有視界着陸など君なら朝飯前じゃろう」
「へい、もちでさあ」

 御徒町(おかちまち)生まれの是輔さんは威勢よく答えました。

「赤道軌道を飛んで、この無線の発信元をたどって着陸してくれたまえ」
「合点承知!」

 どんな未開の惑星にも配達することが使命の、三河屋デリバリーサービスぴかいちパイロットのプライドにかけて是輔さんはノストロモ号を手動有視界飛行に切り替えました。
 モニターには凍てついた赤い惑星セドナの映像が映し出され、ありとあらゆるセンサーがピコピコと音をたて始めました。そして、ホリテッカン博士からもよく見えるように全ての船外照明をオンにしました。
 満艦飾となったノストロモ号は西回りの赤道周回軌道を徐々に高度を下げていきました。
 あとセドナを3分の1周すれば博士の無線機の近くに着陸できます。弱い電波ですが、ノストロモ号のレーダーは、それをしっかりと捉えていました。

「おお、是輔君。地平線に上がってくる派手な光が君の船じゃな。よく見えるぞ」
「そうでやすか。こっちからも無線の発信位置がよく分かりますよ。他の惑星と違って先生以外、だれも通信してませんから」
「ははは。そうか」
「誰もいないんですか?」
「いや、そんなことはない。文明も進んでおる。ここはそういうところなのじゃ」
「そうすか。もうすぐ着陸しやす」

 それから間もなく、着陸直前のノストロモ号のブラッドベリエアリサーチ社製の離着陸用ブースタが、セドナにひとときの夏をもたらしました。凍りついたメタンがとけ、小さな池ができました。ノストロモ号は、その中央に着水しました。ブースタが停止するとメタンは再び凍り始め、ノストロモ号のランディングギアはすっかりメタンの氷に閉じこめられてしまいました。
 是輔さんは、船外照明を標識灯を残して消灯し、極寒冷地用の宇宙服を来て外に出ました。外ではホリテッカン先生が是輔さんを待っていました。

「ちわ〜す! 三河屋です。お届ものを持ってまいりやした〜」
「いやあ、遠いところごくろうじゃった」
「へい、ご注文のパップラ丼50食セットでやす」
「おお、これを楽しみにしておった。ところで、例のものはもってきてくれたかの?」
「あ、風船ですね。3度ケルビンに耐えるZ型風船を、ちょうど1000個お持ちしやした」
「いやあ、ありがとう。これで助かる」
「この風船をいったい何につかうんでやすか?」
「君のまわりには君を歓迎するためにセドナの人々が集まっているのだが、分かるかね?」
「や、さっぱり」
「じゃろ? ワシにも分からんのじゃ。ちょっと待っとってくれ」


つづく

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2005-02-21 ポロの日記 2005年2月12日(岩曜日)初めてのセドナ その2

初めてのセドナ その2


 ホリテッカン博士は目を閉じて何かを念じているようでした。すると是輔さんの持ってきた未使用のしぼんだ風船がひとつ、勝手に膨らみ始めました。完全に膨らむとそれは勝手にしっぽを結んで是輔さんの前に浮かびました。

「セドナの王じゃ」

 風船はゆっくりと揺れました。

「ど、どういうことですか?」
「この星の住民はガス状生命なんじゃ。こうでもしないと、誰がどこにいるのかさっぱり分からんかったというわけじゃ」

 状況を把握した是輔さんは、風船に向かってうやうやしく礼をしました。
 王の風船が再び揺れると、いっせいに残りの風船も膨らみ始めました。ホリテッカン博士と是輔さんのまわりには、たちまち1000個の風船の輪ができました。

「うわ、一気に賑やかになりやしたねえ、先生」
「是輔君、極寒用のマーカーペンはあるかね?」
「へい、船外用マーカーならこれです」
「誰が誰だか区別がつかんから、風船にひとつひとつ顔を描いてくれんか。二人でやれば500個で済む」

 2人は風船に“へのへのもへじ”を描き始めました。王の風船には王冠も描き入れました。最初のころは丁寧でしたが、だんだん乱暴になっていって最後のころにはでたらめな顔になってしまいました。

「みんな、へんてこな顔になっちまいましたね」
「むしろ、区別がついてよいじゃろう。さあ、ワシの宿舎で休んでいくといい」

 博士と是輔さんは風船たちと別れて、近くのドーム型の極地惑星用シェルターに入りました。
 博士は緑茶をいれると、届けてもらったパップラ丼のひとつを是輔さんに薦めました。

「ごちになりやす」
「ここの食事は霞(かすみ)なんじゃ。まるで仙人じゃ。それがどういうわけだか栄養満点らしくての。ワシは地球にいたときよりも健康なくらいなんじゃが、やはりパップラ丼は忘れられん」
「そうですよ。あじさい亭のパップラ丼は太陽系一ですからね。ところで、先生はこんなところでどんなお仕事をなさってるんで?」
「セドナ大学での講義を頼まれたのだが、来てみたらワシが学ぶことばかりじゃった。これは、おそらく、むしろワシをここで学ばせて真実を地球に持ち帰るという計画のようじゃな」
「大学なんてあるんでやすか?」
「建物はない。学生が集まったところが大学じゃ」
「ここで先生は、いったい何を学べるってんですか?」
「すべてじゃ。ここには真実がある。地球人は間違っておったかも知れんと思っておる」
「そりゃ、穏やかじゃありやせんね」
「そうなのじゃ」

 ホリテッカン博士は是輔さんに話し始めました。

 ・・・この星にある人工物はワシが持ち込んだ、このシェルターだけじゃ。
ワシらは、その星に文明が発達しているかどうかは人工物の有無で判断する。まず、それが間違っておった。ここには極めて高度な文明が存在しておるのじゃ。しかし、地球人が考える文明の証などどこにもない。是輔君、文明とは何だと思うかね。ワシは、ここに来てやっと理解した。知性がどこまで真理に近づけるかの度合いを言うのじゃよ。この星には人工物がない。それはなぜかというと、人工物はこの星を永続させないからじゃ。ワシが学び終えたら、このシェルターも早いうちに撤収しなければならん。この星の自然に悪影響があるかも知れんからな。


つづく

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