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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

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2008-07-27 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 没原稿シリーズ1 スーパーヒロイン シオコ その1
2008-07-27 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 没原稿シリーズ1 スーパーヒロイン シオコ その2
2008-07-27 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 没原稿シリーズ1 スーパーヒロイン シオコ その3
2008-07-27 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 没原稿シリーズ1 スーパーヒロイン シオコ その4
2008-07-18 ポロプロジェクト2提供 お話の森 第15回 プンクトとブンダマン その1
2008-07-18 ポロプロジェクト2提供 お話の森 第15回 プンクトとブンダマン その2
2008-07-18 ポロプロジェクト2提供 お話の森 第15回 プンクトとブンダマン その3
2007-12-21 ポロプロジェクト2提供 お話の森 第14回 ハトシェプスト・ポロ、はじめてのクリスマス その1
2007-12-21 ポロプロジェクト2提供 お話の森 第14回 ハトシェプスト・ポロ、はじめてのクリスマス その2
2007-12-08 ポロ(ハトシェプスト)の女王宣言


2008-07-27 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 没原稿シリーズ1 スーパーヒロイン シオコ その1

 
 ポロ「キャプテン、このままじゃスーパー・ヒーローはどんどんすたれていっちゃうよ」
 
 20世紀後半には子どもたちの心をつかんで放さなかったスーパー・ヒーローも、21世紀も終わろうとする今では、かつての輝きを失っていました。子どもたちが好む物語では普通の主人公が勇気や仲間とのチームワークによって迫り来る問題や敵と立ち向かっていたのです。

キャプテン・レンジャー「なに言ってやがる。スーパー・ヒーローは不滅だぜ」
ポ「だって、滅亡寸前じゃないか〜」
レ「よく考えてみろ。お前だってアレキサンダー大王くらい知ってるだろう?」
ポ「うん、マケドニアの王で世界統一した人」
レ「そうだ。あいつこそスーパー・ヒーローだ。奴がいなくなってからマケドニアは小国のままだ」
ポ「ドーラで、王室付きの家庭教師だったアリス先生とテレス先生から習ったよ。大王が急死したあとは後継者たちが分裂して国は没落したんだ」
レ「なんだ、よく知ってるじゃないか」
ポ「知ってるだけだよ。知ってるだけじゃなくてホントに理解してたらポロは世界を統一してる」
レ「そうだな。オレも理解したいよ。アレキサンダーはイスラム圏の言葉で“イスカンダル”って言うんだぜ」
ポ「へえ・・・・。・・えっ、そうなんだ〜」
レ「ま、無駄な知識だがな。それにチンギス・ハーンも知ってるだろう?」
ポ「その人のことも習ったよ。モンゴルを統一したばかりか、広大なモンゴル帝国を築き上げた王だね」
レ「そうだ。ジンギスカン料理の考案者なんかじゃないぜ」
ポ「いまの余計・・」
レ「るせい。奴は人々の信頼を集める偉大な指導者だった。あいつのやることに、いちいちみんなが感心した。そして、みんなが心底従ったんだ。だからモンゴル外の制圧の時にもモンゴル軍はとてつもなく強かった」
ポ「すごいね。チンギス・ハーンを理解したらポロたち本物のスーパー・ヒーローだね」
レ「結局、世界の歴史はスーパーヒーローによって作られていくんだぜ」
ポ「どうしたらポロたち、ホントのスーパーヒーローになれるのかな」

ぴぴぴぴぴぴぴ。

レ「お、英雄興業プロダクションからメールだ」
ポ「新しい仕事?」
レ「いや、どうやら契約解除通知らしいぜ」
ポ「え゛〜〜〜〜! ポロたち何かドジったかな?」
レ「こないだのオレたちのショーの集客数が規定を下回っちまったらしい」
ポ「あれはギブリの新作アニメの公開日と重なったからだよ〜」
レ「そうか・・・。オレたち図られたんだ。つまり、体(てい)よく解雇されたってわけだ。誰か新しいヒーロー・スターでも見つかったかのかもな」
ポ「そう言えば、いままでギブリの新作公開日にショーはなかったね」
レ「くそう。次のショーにどんな奴が出てるのか見に行こうぜ」

 次の週末、ポロとレンジャーはコドモランドで開かれるスーパーヒーローショーに出かけました。

つづく

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2008-07-27 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 没原稿シリーズ1 スーパーヒロイン シオコ その2

  
 <スーパーヒロイン シオコ・ショー>

レ「くっそう、やられたな。ショーを見に来てるのは子どもじゃないぜ。子どもを理由にしたオヤジたちだ」
ポ「どうして?」
レ「馬鹿野郎。猫だって、そのくらい見れば分かるだろう」

 特設ステージ上では、胸と腰を隠すわずかな布だけでできたコスチュームをまとった仮面のヒロインが敵役のアクション俳優たちと戦っていました。敵に後ろから羽交い締めされると、それを利用して目の前の敵を両足で蹴り上げました。そのたびに豊かな胸がぷるんぷるんと揺れ、歓声と大きな拍手が起こったのです。

ポ「うん、ポロにも分かったよ。ヒーロー興業もお色気路線に切り替えたっていうことだね」
レ「なあに、オレたちには本物の悪党どもと戦う仕事が残ってるさ」
ポ「でも、それって無給だから、なんかバイトさがさないとね」
レ「ああ、下水道清掃の仕事なら、オレたちスペシャリストだぜ」
ポ「夜は納豆工場だね」
レ「納豆菌は友達だぜ」

 ぴゅーわぴゅーわぴゅーわぴゅーわぴゅーわぴゅーわ!

 それから一週間後の深夜、熟睡していたポロたちの枕元で、通称「怪獣警報装置」がけたたましく鳴り響きました。

ポ「キャプテン、仕事だよ」
レ「・・・う、うん・・・」

 昨日まで夜勤続きで、2人は睡眠不足でした。

レ「ふ・・。スーパーヒーローが睡眠不足なんかに負けてちゃ怪獣や宇宙人には勝てないぜ。場所はどこだ?」
ポ「群馬県南部、“蟹の入江”の海岸線沿いを移動してるよ」

 地球温暖化による海面上昇は続き、今では海岸線は群馬県まで後退していました。

レ「よし、行くぞ」

 ポロたちは大きな声で「へんし〜〜〜〜ん!」と叫びながら、買い替えたまま、なかなか使う機会のなかったスーパーヒーローキットに着替えました。

 ポロたちの移動手段は電動スーパーカブの「サイクロン3号」です。ポロを前かごにポンと入れると、キャプテンはボリューム・グリップを回しました。

ひゅううううん。

 サイクロン3号は静かに走り始めました。タイヤもナノカーボン製の静音仕様でした。

ポ「エンジン音がないと迫力ないね」
レ「お前、真似しろ」
ポ「だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ〜!」

 ポロたちの住んでいる長野県から群馬県藤岡市までは曲がりくねった道を約50キロ走らなければなりません。サイクロン号の最高速度は30キロなので、2時間近くかかりました。

つづく
  

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2008-07-27 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 没原稿シリーズ1 スーパーヒロイン シオコ その3

  
 夜明けの藤岡市は半分水没していて、海面にはあちらこちらにビルの高層部分が突き出していました。
 
ポ「このへんのはずだけど」
レ「何もいないみたいだな」
ポ「誤報かな?」

 どばばばばばば〜〜〜ん!

 いきなり目の前の海面が盛り上がり、円盤型の黒い宇宙船が浮かび上がりました。

ポ「あ゛〜〜、ポロ、これ知ってるよ。ショッカー星人の攻撃型哨戒艇だ。弱ってる星ばかり狙って侵略してくるんだよ、ショッカー星人は」
レ「弱い所を突くってえのは、まあ常道だな」
ポ「ドーラ軍が太陽系の外縁部で侵入を防いでいるはずなのに」
レ「手ごわいのか?」
ポ「うん。ポロたちの装備じゃ太刀打ちできないかも」
レ「あいつの攻撃用兵装を覚えてるか?」
ポ「えっと、光子魚雷と粒子ビーム砲、それから近接防衛用のファランクスレーザー機銃だったと思うよ」
レ「くそう。ぜんぜん歯が立たないじゃないかよ」

 ぴーぴぴぴぴぴ!

 ショッカー艇の上部中央のドームから粒子ビーム砲が発射されました。その照準の先には小さな戦闘機がいました。

レ「なんだ、あれは」
ポ「ピンク色の味方らしいね」
レ「最近、ピンクは流行らないよな」

 戦闘機は見たことのないくさび形で、攻撃ビームをよけながらショッカー艇に近づいて行きました。

ポ「あぶない、近づいたらファランクスレーザーにやられちゃうよ」
レ「ファランクスは、ふつう自動で起動して攻撃するよな?」
ポ「うん、近づいてくるものならなんでも勝手に攻撃するよ」
レ「よし、アメン。できるだけたくさんの石をぶつけるんだ」

 ポロたちは海岸にコロがっている小石をゴムのパチンコでぽんぽんと飛ばしました。すると、ファランクスレーザーが自動攻撃を始めて、小石はジュバッ、ジュバッ、ジュバッと蒸発していきました。

 そのおかげでピンクの戦闘機はショッカー艇に充分近づくことができました。ファランクスレーザーは、より近い脅威である小石に対して防御しつづけていました。

レ「最新兵器なんてこんなもんだぜ。小石なんて痛くも痒くもないだろうに必死になって撃っていやがる」
ポ「ほら、ピンクの戦闘機がミサイルを発射したよ」
レ「当たれよ!」
ポ「それは、ポロたちしだいだよ。ショッカー艇のファランクスをビジー(忙しくて手が回らない)状態にしとかなくちゃ」
レ「まかせとけ」

つづく
  

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2008-07-27 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 没原稿シリーズ1 スーパーヒロイン シオコ その4

 

 どっごうああああをををををを〜〜〜〜〜〜〜んんんんんんんん!!!!

 ミサイルは着弾寸前に撃ち落とされてしまいましたが、ショッカー星人は、ちょっとだけ間に合いませんでした。その爆発は、あまりに近すぎたのです。ポロたちの活躍でショッカー星人の攻撃型哨戒艇は再び海に沈んでいきました。

 ぶくぶくぶくぶくぶくぶく・・・・

ポ「やったー!」
レ「ああ」

 ショッカー艇が沈んだのを確かめると、ピンクの戦闘機が海岸に垂直着陸しました。キャノピを空けて降りてきたのは、あのシオコでした。

 ビキニの水着のような戦闘服で、ポロたちに近づいてくると、覆面を取って「あ・り・が・と!」と言って、くるりと振り向いてまた戦闘機に乗って飛び立っていってしまいました。

 ピンクの戦闘機が空のかなたへ点となって消えてしまうと、キャプテン・レンジャーがつぶやきました。

レ「すっごい美人だったな・・・・・・」
ポ「猫のポロでもそう思ったよ」

 それから、ポロは時計を見て言いました。

ポ「ねえ、キャプテン。急がないと納豆工場に遅刻しちゃうよ」
レ「ああ、そうだな・・・・」
 
 帰路を急ぐサイクロン3号の前かごでポロが言いました。

ポ「あのさ、ポロたちスーパーヒーローだよね」
レ「たりめーだろ。オレたちがいなきゃ、シオコだってショッカー星人には勝てなかったぜ」
ポ「ポロたち、ずっとスーパーヒーローでいようね」
レ「安心しろ。運命だからな」

 雲間からのぞきはじめた朝日がサイクロン号を後ろから照らし始めた頃、ポロたちは長い坂道を登り終えて、ほんの百年前には高原だった広々とした草原を納豆工場めざして鼻歌まじりに走っていたのでした。

Fine

 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

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<ポロ・プロジェクト2>のメールアドレス

composer2002あっとexcite.co.jp
※あっとを@に変えてください。


「ポロの道場」も訪ねるがよかろう。命令じゃ。

ポロの道場
  

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2008-07-18 ポロプロジェクト2提供 お話の森 第15回 プンクトとブンダマン その1

<<ドーラ王立小学校 5年アステローペ組>>

 ブンダマンは王立小学校の、いわゆる“お荷物”だった。
 もう5年生になるのに、いまだに同級生の顔すら覚えられないのだった。
 
 登校すると、その日もブンダマンは行と列のマトリックスを確認して、すっかり変わり果ててしまった自分の机を確かめてから席につき、怯えたように周囲を見渡していた。

・・・また一日でこんなに古びちゃったのか・・・

 机はおろか、壁の掲示物も色あせていた。

「ブンダマン、わらわじゃ。ハトシェプストじゃ。分かるか?」
「ああ、ハトちゃんか。すっかりお姉さんになっちゃったね。見違えちゃって分からなかったよ」
「一日でそんなに大人びることはなかろう。何を言っておるのじゃ」
「う・・、うん、そうだね」
「まあ、よい。わらわを覚えていただけでも許してつかわす」

 1時間目は図工の時間だった。
 美術の担当はオキーフ先生。

「はい、みなさん。今日はリンゴの絵を描きます。世界は神さまの創造物です。リンゴを描くということは、神さまの行いを描くということです。神さまの行いを描くにあたって誤りがあってはなりません」

 それを聞いてブンダマンは緊張した。誤りがあってはならない・・・・。うまくかけなかったら天罰が下るに違いないと思った。

 よく見て描きましょう、というオキーフ先生の指示に従ってブンダマンはリンゴをよく見た。見つめているわずか数十秒のあいだにもリンゴからは水分が蒸発してしなびていくのが分かった。1分もたつと、とても最初のリンゴと同じものには見えなくなってしまった。どうしてよいか分からなくなったブンダマンはオキーフ先生を探して目で追った。
 案の上、オキーフ先生はいなかった。でも、よく見ると、オキーフ先生の服よりもずいぶん色あせてヨレヨレだったけれども、似た服を着た女性がいた。ちょっと老けたけど、なんだか似てるからあれがオキーフ先生に違いない。ハト姫のいたところには、王女の風格を備えた大人びた姫がいた。ハトちゃん、ホントにお姫さまらしくなったなあ。
 ふと、リンゴに目をやると、リンゴはますます姿を変えていた。こんなに変化が激しくてはとても絵を描くことなどできない。
 2時間目が終わって絵を提出する時が来ても、ブンダマンは画用紙に何も描くことができなかった。画用紙は2時間の間に黄色く日焼けしていた。

「ブンダマン君。どうして描かないの? 見えたものを描くだけでいいのよ。上手じゃなくてもいいの。君が見たとおりに描けばいいの」

 ブンダマンは、心に熱いなにか、不安とか悔しさとか迷いとかが一気に込み上げてきてどうしたらよいか分からなくなった。

 わあああああああああああ!

 叫びながら、ブンダマンは学校を飛びだした。家に帰ろうとしたが、道がよくわからなくなっていた。数時間の間に草は成長し、風は砂粒を移動させ、鳥や虫たちは木の実を食べて、その数を変えてしまっていた。それでも、方向を確かめながらなんとか家にたどりつくと、ペンキが色あせたドアを開けて中に入った。
 知らない女性がいたが、多分、今朝から少しだけ老いた母に違いないと思った。

つづく

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2008-07-18 ポロプロジェクト2提供 お話の森 第15回 プンクトとブンダマン その2

<<ブンダマンの家>>

「あら、どうしたの?」

 その声は間違いなく母だった。

「かあさん!」

 母親は何も言わずに抱きしめてくれた。

・・・明日にでも担任のアステローペ先生に相談しましょう。

 母親はそう思ったのだった。


<<ドーラ防衛軍 情報局本部 エントランス>>

「ハトじゃ。通せ」
「これは姫さま。ご機嫌うるわしゅう存じます。しかし、ここは大人だけが入れるところです。いかに姫さまといえども、入構を許可するわけにはいきません」
「だまれ。プンクトは、わらわよりも年下なのにここにおるであろう。すぐに通せ。さもないとわらわが即位した後に、お前は路頭に迷うことになるぞ」
「は・・、ははは〜、かしこまりました」
「父上にはナイショにな」
「こ、心得ております」

<<情報局 画像分析室>>

「プンクト」
「君は誰だっけ?」

 ハトシェプストは百面相のようにいろいろな顔をしてみせた。

「あ、ハト姫さま。これは失礼いたしました」

 プンクトは、ようやく思い出したように言った。
 彼は見えるもの全てを記憶してしまうために、1匹の猫でさえ一瞬一瞬の全ての表情を別々に捉えるので、過去に見た同じ表情が表れないと誰だかすぐには分からないのだった。

「まあ、よい。お前に分析してほしいものがあるのじゃ」
「どれでしょうか」
 
 ハトシェプストは、ブンダマンが幼稚園の時に描いた絵を見せた。

「こ、これは・・・・・。いったい誰が描いたのですか?」
「やはりそうか。どのように凄いのか説明せよ」
「はい、これは非常に精密なチューリップの一部です」
「どこがチューリップなのじゃ?」
「全体像を捉えるにはあまりに膨大で、一部だけが描かれています。もし、姫が地球を描くように言われたら、丸い全体像を描くことでしょう」
「うむ」
「しかし、地球の地表に降り立ってしまったらその風景を描き始めるはずです。地球全体を描くにはどのくらいの時間がかかるでしょうか?」
「分からんくらいたくさんじゃ」
「そうです。おまけに地球には四季があります。描いているうちに時はすぎ、木々は芽吹き春になり、緑は生い茂って夏となり、秋には木々が秋色になって、冬には雪が降り始めます。どうやって一枚の絵に収めることができるでしょうか」
「・・・・、というとブンダマンは、チューリップの葉脈や気孔などが見えるばかりか、その生長や開閉までが見えて全体像を描けなかったというのか・・・・」
「ブンダマンというのですか、この天才は・・」
「そうじゃ。だが、なぜお前にはこれがチューリップだと分かったのじゃ?」
「それは、この絵が非常に正確に描かれているからです」
「どのように正確なのじゃ?」
「細胞の形だけを見ても驚くほど正確ですが、描いている間の、ほんのわずかな葉がしおれていく様子までをも読み取ることができます。彼が本を読んだら、たとえ一晩で読み終えたとしても、読み始めと読み終わりのころでは紙質が劣化する様子を捉えることでしょう」
「こやつの能力は画像分析室に必要か?」
「彼は、ぼくに欠けているもう半分の能力を持っている。彼がいればドーラ情報局は宇宙最強の分析能力を手に入れることができるでしょう」
「そうか。リクルートしよう」

つづく

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2008-07-18 ポロプロジェクト2提供 お話の森 第15回 プンクトとブンダマン その3

<<ドーラ宮殿 国王執務室>>

 ぺんぺんぺん!

「な、何をするのじゃ、おやぢ殿!」
「え〜い、お仕置きじゃ。勝手に情報局に入りおって。お尻ぺんぺんじゃ」

 ぺんぺんぺん!

「痛いではないか! 虐待で訴えてやる!」
「ほう、ここは王国じゃ。わしに訴えるというのか、懲りておらんようだな」

 ぺんぺんぺん!

「あの衛兵が漏らしたのだな」
「そんなわけあるまい。ハトが情報局に入ったことを知るのに苦労はしない。ブンダマンとかいう子どもを見つけてきたのはお前であることくらい誰にも分かるというものよ」
「す、凄いだろう、あいつは?」
「うむ。手柄じゃ。だが、情報局への無許可入構は許せん。国というのは、そういう小さな穴から崩れていったりするものじゃ。だから今のうちにお前を教育しておく」

 ぺんぺんぺん!

 ハトシェプストは、将来、何かあったら絶対誰でもお尻ぺんぺんしてやろうと心に誓ったのだった。



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2007-12-21 ポロプロジェクト2提供 お話の森 第14回 ハトシェプスト・ポロ、はじめてのクリスマス その1

 ハトシェプスト・ポロ、はじめてのクリスマス その1



たろ「ポロ、メリークリスマス! はいプレゼント」
ポロ「わらわはキリシタンではない」
た「いいの。日本のクリスマスは経済行為だから」
ポ「くだらん、まったく興味などないわ」
た「でも、買っちゃったからこれ受け取ってよ」
ポ「なんじゃ。ドーラ王女に向かってぬいぐるみか?」
た「ワトソン君人形。シャーロック・ホームズごっこができるわよ」
ポ「いらん! いらんといったらいらん!」
た「でもさ、ワトソン君は決して嘘をつかないし、間違ったことも言わないよ」
ポ「うう・・・・・」
た「ポロ好みでしょ?」
ポ「地球人の馬鹿どもを相手にするよりはマシじゃ!」
た「あ、それからね。この家にはサンタ・クロースが来るから。ポロは毎年いろいろ手伝わされるみたいよ。がんばってね」
ポ「サンタ・クロースなどいるわけがない」
た「いるんだってば。ほら」
サンタ「メリー・クリスマス! たろちゃん。今年もポロを借りていきますぞ」
た「わあ、いらっしゃい。どうぞ!」
サ「ポロどん。お・・・・、おぬし、ハトシェプストではないか。アメンはどうしたのじゃ?」
ポ「ふふふ。そんなことだろうと思っておったぞ。アシャドマン」
た「サンタさんと知りあいだったの、ポロ?」
ポ「まあ、そんなところじゃ」
サ「さあ、地球人の夢をこわさんうちに行きますぞ、ポロ姫」

 ポロを乗せてサンタ専用ソリのドレッド・ノート号は空高く舞い上がっていきました。

ポ「その袋の中身は向精神薬か?」
サ「そうじゃ。厳しい現実に直面しておる人々には必要なものじゃ」
ポ「何を言っておる。ラップランド・メディコ(サンタの国の製薬会社)の販促活動の一環だろうが。依存症が増えれば顧客も増える」
サ「誤解じゃ。これはサンタランドが無償で提供する一日だけの楽園なのじゃ」
ポ「わらわは認めん」
サ「じゃが、厳しい現実にくじけそうな人を助けておるのは事実じゃ」
ポ「わらわは認めん」
サ「見解の相違があるかもしれんが理解してくれ、ハト」
ポ「いや、認めん」


つづく

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2007-12-21 ポロプロジェクト2提供 お話の森 第14回 ハトシェプスト・ポロ、はじめてのクリスマス その2

 ハトシェプスト・ポロ、はじめてのクリスマス その2




ドレッドノート号「幸せの銀の粉、散布高度に達しました」

サ「たのむ、ハト」
ポ「ダメじゃ。こんなもの、こうしてくれるわ!」
サ「うわ、やめろ!」
ポ「むぎゅう・・、なんの・・・負けるか」
サ「わしこそ・・・むむむ・・・」

ド号「警告します。船内であばれないでください。飛行姿勢が乱れて危険です」

ポ「うるさい! だまれ。どったんばったんどったんばったんどったんばったんどったんばったんどったんばったんどったんばったんどったんばったん!」
サ「なんのこれしき! どったんばったんどったんばったんどったんばったんどったんばったんどったんばったん!」

ぱん!

 とうとう、銀の粉の入った袋が破裂してしまいました。ドレッドノート号の与圧キャビンは、もうもうと舞い散る銀の粉で満たされました。

サ「まずいぞ。息を止めろ」
ポ「もう、止めておる」

 ドレッドノート号の緊急換気システムが作動して、銀の粉を船外に排出しましたが2人には遅すぎました。

サ「あ〜っはっはっはっはっは! あ〜っはっはっはっはっは! あ〜っはっはっはっはっは! ポロどん、楽しいのう!」
ポ「か〜っかっかっかっかっか! か〜っかっかっかっかっか! か〜っかっかっかっかっか! 楽しいのうアシャドマン! しかし、お主はワルじゃ! か〜っかっかっかっかっか!」
サ「何を言うか。ワシは善行を積んでおるだけじゃ! あ〜っはっはっはっはっは!」

 船外に漏れでた銀の粉は徐々に地上に降り注ぎ、2007年のクリスマスも人々は笑顔で過ごしたのでした。


おしまい


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2007-12-08 ポロ(ハトシェプスト)の女王宣言

告 : ページが開いたら、まずうやうやしく一礼せよ 

 ポロ(ハトシェプスト王女)の御触書(おふれがき)であるぞ

2007年12月8日(岩曜日)

 ポロ(ハトシェプスト)の女王宣言

 ドーラの民、および、わらわの治世で暮らしたいと願う賢い地球の民よ、よく聞くがよい。
 わらわがドーラの女王に即位した暁には、ドーラを素晴らしい星にしてみせる。
 収穫の季節になると全ての作物が豊かに実り、あちらこちらの泉からは一年中おいしく澄んだ水が湧き出ていて、いつでも民の喉をうるおす。子供たちには自然の摂理を教え、野生動物にも負けないような賢さを身につけさせる。
 ドーラにそれ以外の何が必要であろうか。
 ドーラ宮廷内にも愚かな家臣が、他の星との競争に負けないように工業化を推し進めるべきなどと進言しておるようだが、競争とはなんじゃ? 作物が豊かに実って、おいしい水があるドーラが、それを理解しない他の星の愚かな文明と何を競えばよいのじゃ。民が自然の摂理を理解しておるのなら、科学も真の意味で理解されることじゃろう。自然(宇宙)の摂理を理解しておらん馬鹿者だらけの地球のような星だけで自然破壊や人為的な原因による温暖化が発生するのじゃ。
 真の科学は真理を知ることじゃ。だから本当の意味における科学は、いくら進歩してもためにはなっても害にはならぬものじゃ。民の上に立つ者なら誰もが心の底から理解しておると思っておった。
 地球にくるまではのう・・・・。
 驚いたものじゃ。銀河系に広く伝わる「愚かな民は愚かな王を担ぎ出す」という古い諺は本当であった。このままでは地球は遅かれ早かれ滅びるであろう。
 いずれ、わらわはドーラに戻って王位をこの手に収めるつもりじゃ。兄じゃのアメン王子には所詮無理な話であった。ドーラ国民になりたくば、まずは悔い改めるがよい。

 よいか、心しておけ。時は近いぞ。


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