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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2005-01-01 永久おせち その5 ふた
2004-12-31 ポロの日記 2004年12月30日(電曜日)雪の大みそか その1
2004-12-30 ポロの日記 2004年12月31日(電曜日)雪の大みそか その2
2004-12-23 ポロの日記 2004年12月25日(岩曜日)クリスマスイヴ2004 その1
2004-12-22 ポロの日記 2004年12月25日(岩曜日)クリスマスイヴ2004 その2
2004-12-21 ポロの日記 2004年12月25日(岩曜日)クリスマスイヴ2004 その3
2004-12-20 ポロの日記 2004年12月21日(熱曜日)作曲工房の午後 その1
2004-12-19 ポロの日記 2004年12月21日(熱曜日)作曲工房の午後 その2
2004-12-18 ポロの日記 2004年12月20日(光曜日)作曲工房のひみつ その1
2004-12-17 ポロの日記 2004年12月20日(光曜日)作曲工房のひみつ その2


2005-01-01 永久おせち その5 ふた

ふたもステキでしょ。


先頭 表紙

2004-12-31 ポロの日記 2004年12月30日(電曜日)雪の大みそか その1

雪の大みそか その1


ポ「わあ、風にいちゃん雪だよ、雪!」
風「うん、かなり前から降っていたんだよ」
ポ「そっか〜、ポロは外を見なかったから気がつかなかったよ。すごいなあ、猛吹雪だね」
風「ちょっと風が吹いただけだよ。本物の吹雪はこんなもんじゃないよ」
ポ「そうなのか〜。雪国の人は大変だね〜」
せ「ポロ、コンビニまで買い物に行くんだがついてくるか?」
たろ「え〜、ポロ、買い物に行くの? あのさ、ポテチ買ってきてよ〜。紅白見ながら食べた〜い!」
ポ「だって、こんなに雪が降ってたら遭難しちゃうよ〜!」
た「だいじょうぶだよ〜、とむりんついてるし〜」
せ「さ、行くぞ」
ポ「わ、ポロの首根っこなんかつかまないでよ〜!」

 ポロは、せんせいのジャケットの外ポケットに放り込まれてしまいました。せんせいは、さっさと外に出ました。玄関を出ると、そこには北極みたいに真っ白な景色が広がっていました。

ポ「せんせい、寒いから内ポケットに入れてよ〜」
せ「これでいいか」

 ポロが外ポケットからつまみあげられた時、ビューと風が吹いてポロは寒さで震え上がりました。

ポ「せんせい、ホントに遭難しちゃうかも〜」
せ「しないよ。大丈夫だ」
ポ「だって、シロクマが出るかも」
せ「雪が降れば湧いて出るってもんじゃないだろう」
ポ「うれしくって、動物園から逃げ出すてくるよ〜、きっと」
せ「じゃ、ばったり出会うようなことがあったらシロクマと友達になろう」
ポ「だめだよ〜、あいつらはポロたちのことを見たら食べ物だとしか思わないよ〜」
せ「そうかな」
ポ「そだよ〜。せんせいはハンバーガーの包みを開けてから、食べちゃうのはかわいそうだからって、仲良くお話したことある〜?」
せ「そんなことはないよ」
ポ「でしょでしょ〜! シロクマだってそうだよ}
せ「どうしてシロクマにこだわるんだ」
ポ「シロクマは冬眠しないからだよ〜。ところでさ、せんせい。さっきより雪つもった?」

 ポロは、せんせいの内ポケットにもぐっていたので景色が見えませんでした。

せ「うん、そうだな1メートルくらいになったかな」
ポ「うわ〜〜〜! 大変だ、せんせい引き返そうよ!」
せ「冗談だよ。たった数分でそんなに積もるわけないじゃないか」
ポ「せんせい、ポロには冗談なんか通じないんだからね。プンスカブンスカ!」
せ「ははは、悪かった悪かった。でもね、雪はどんどん降ってきているよ」
ポ「せんせい、雪が降ってきたとき、ないと困るもの知ってる?」
せ「なんだろう」
ポ「“アナタワ粉”っていう粉だよ」


つづく

先頭 表紙

2004-12-30 ポロの日記 2004年12月31日(電曜日)雪の大みそか その2

雪の大みそか その2


せ「何に使うものなんだい?」
ポ「ポロも知らないよ。せんせいに聞こうと思ったのに、なんだ、知らないのか」
せ「聞いたことないよ」
ポ「だってさ、雪が降るのにアナタワ粉ないよ〜♪ っていう歌があるじゃないか〜」
せ「あっはっは。“あなたは来ない”か。そりゃ大事だ。ポロ、いいことに気がついたね。アナタワ粉がないと大変なことになるところだった。」
ポ「でしょでしょ。ポロえらい?」
せ「ああ、たいしたもんだ。でもね、今朝のニュースで日本中でアナタワ粉が品切れになっているって言ってたな」
ポ「大変じゃないか。じゃさ、シュデンガンガー商会なら売ってる?」
せ「売ってるだろうけど、年末年始はお休みだ」
ポ「せんせい、どうすればいいの? ポロたちアナタワ粉がないと遭難しちゃう?」
せ「そうだな。アナタワ粉がなくても強い人なら耐えられるかな。有史以来、数えきれないほどの人が耐え抜いてきたに違いない」
ポ「そうだったのか。じゃ、今夜はポロたち試練だね」
せ「本当のことをいうと、うちの家族には必要ないかも知れない」
ポ「な〜んだ、そうなのか。ちょっと安心したよ。でも、アナタワ粉って見てみたいな。お正月が終わったらシュデンガンガー商会に行ってみよう。それより、せんせい、今日、なに買うの?」
せ「牛乳とね、今夜のおやつだよ」
ポ「へえ。ポロね、今日はチョコレートがいいな。うんと高級なやつ。ワインで言ったらね、アウスレーゼ級のやつ」
せ「コンビニにあるかなあ、そんなの」
ポ「あるよ、チロルチョコ」
せ「そうか、あれはそんなに高級なのか」
ポ「うん、チョコの大吟醸ってとこだね」
せ「そうか」
ポ「ねえ、せんせいは夜、何のテレビ見るの?」
せ「見るひまないだろうな」
ポ「奥さんとたろちゃんは紅白歌合戦見るって。お兄ちゃんたちもきっと見るよ」
せ「ポロは?」
ポ「合戦で戦争のことだからね、平和主義者のポロは紅白軍に分かれての“歌戦争”なんて見ないよ」
せ「じゃ、何を見るんだ?」
ポ「ポロは格闘技だよ格闘技! 闘うねこだからね、ポロは」
せ「平和主義者じゃなかったのか?」
ポ「平和のために戦うんだよ。猫パ〜ンチ!」
せ「なんだか矛盾を感じるな」
ポ「ポロも、言ってからそんな気がしてきた」

 雪は、まだまだ降り続くのでした。


おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

ポロの掲示板はここ。
ポロのひみつの部屋

先頭 表紙

アナタワ粉が無いと、体質によっては、体内で糖質を分解して熱を作る効率がとても悪くなるそうです。その他、アナタワ粉はいろんな料理の隠し味にもいいらしいです。 / shin ( 2005-01-03 01:48 )
アナタワ粉を混ぜてかまくらを作ると、どんな寒さにも耐えられるとか?東北の方ではお汁粉に入れたり、きりたんぽ鍋に入れたりもするらしいですね〜。(笑) / みた・そうや ( 2005-01-02 21:31 )

2004-12-23 ポロの日記 2004年12月25日(岩曜日)クリスマスイヴ2004 その1

クリスマスイヴ2004 その1

 今日はクリスマスイヴなので、ポロはサンタさんのお手伝いをする日です。夜明け前に、作曲工房前にサンタさん専用ソリのドレッドノート号がやってきました。

「やあ、ポロどん。メリークリスマス! 今年もお手伝いを頼むよ」
「サンタさん、待ってたよ!」

 ポロを乗せると、ドレッドノート号はフワリと空に舞い上がりました。

「サンタさん、今年もNORADがサンタさんを追跡するって」
「抜かりはないぞよ。デコイを飛ばしてある。デコイというのは囮(おとり)のことじゃ」
「へえ、すごいんだねえ」

 ドレッドノート号は加速しながら、どんどん高く昇っていきました。そして、ついに地球を離れ始めました。

「あれ、サンタさん、どこへ行くの?」
「おお、説明するのを忘れておった。ちょっと遠いところじゃ。巨嘴鳥座の方向にある原始惑星じゃ」
「地球でプレゼント配りするんじゃないの?」
「今年はとくべつじゃ。ワシが、その昔に命の種を植え付けた星があるのじゃ。そこには、今、やっと命が根づこうとしておる。今夜のワシ達の働きしだいで、その星に生命が育つかどうかが決まるのじゃ」
「へえ、すごいね!」
「生命というものは実に危ういものじゃ。ひとつでも成育条件が欠ければすぐに死に絶えてしまう」
「そーなのか〜」
「まずは、太陽となる恒星のスペクトル型が大事じゃな。紫外線ばかり降り注ぐようでは生命は育たん」
「地球のお日さまはごうかくだったんだね〜」
「そうじゃ。それから大きさと明るさ、重さじゃ」
「そんなのが関係あるの? まぶしかったら遠くに離れたところにちょうどいい場所があるよ」
「そういう問題ではないのじゃ。質量が大きくて高温の星は寿命が短いので生命が進化する前に燃え尽きてしまうのじゃ」
「うわ〜、そんなことがあるのか〜。お日さまは優等生なんだね〜」
「そうじゃ。宇宙では目立たん存在じゃが、本当に大切な存在なんじゃ」
「お母さんみたいだね」
「いいことを言うの。目立たない普通のお母さんと同じじゃ」
「ポロ、お日さまのファンになっちゃったよ」
「太陽が条件に合っておるだけはだめじゃ。さっきも話に出てきたが、恒星までの距離がまさにぴったりでなくてはならん。少しでも狂うと水は液体ではなくなってしまうのじゃ。それだけではない。軌道離心率と言うてな、一年を通じて太陽までの距離が大きく変化してはならんのじゃ」
「そんな条件に合う星は、もう奇跡だね」
「まったくそのとおりじゃ」
「地球って、すごいんだね」
「そうじゃ。あの大きな月も命には欠かせない」
「どうして?」
「潮間帯と言ってな、潮の満ち引きが作り出す潮位差のあるところで生命が誕生するからじゃ」
「わあ、お月さまも大事だったのか〜」
「そうじゃ。お、見えてきたぞい」
「あ、あのオレンジ色の星だね」
「G3型。お日さまよりも少し若い星じゃ」
「惑星はどこ?」
「そろそろ見えるはすじゃが」
「あ、ホントだ、見えてきた。三日月型になってる」
「サンタはいつでも夜の側から接近するものじゃからな」

 ポロたちは目指す惑星にぐんぐん近づいていきました。その星の夜の側は暗い紺色で、少しも模様が見えませんでした。トナカイ型ロボットのルドルフを先頭にした8頭だてのソリのドレッドノート号は、こんな最果ての宇宙でもシャンシャンシャンシャンというお約束のスレーベルの音を鳴らしながら、降下軌道をまっしぐらに突き進みました。


つづく

先頭 表紙

2004-12-22 ポロの日記 2004年12月25日(岩曜日)クリスマスイヴ2004 その2

クリスマスイヴ2004 その2


「ねえ、サンタさん」
「なんじゃ」
「この星の名前はなんて言うの?」
「このミッションでは“Tucana-3”と呼ばれているが、愛称はないよ。この星に育つ住民達がつけるじゃろう」
「そっか〜。ポロが何かつけちゃおうと思ったけど、やめとくよ」
「ははは。それがいい」

 高度100メートルくらいまで降下すると、先頭のルドルフがライトで真っ暗な惑星表面を照らしました。
そこは海でした。

「わ、海だよ。海」
「そうじゃ。この海ができるまでが大変じゃった」
「サンタさんが作ったの?」
「そうではない。全ての創造主は神さまじゃよ。大変じゃったと言ったのは時間がかかったということじゃ」
「ふ〜ん。ポロ急に不思議に思ったんだけど、サンタさんて何する人なの?」
「あっはっは。それに気づきおったか」
「だって、クリスマスプレゼントを配るだけなんて、よく考えてみればただの酔狂じゃないか〜」
「ワシらの仕事は、神さまのもとで働いている火の鳥に仕えることじゃ」
「え〜、火の鳥? ポロ、女神さまと一緒にタキオン化したときに合体したことあるかも〜」
「それは得難い体験をしたのう」
「過去と未来が全部一緒に見えたような気がしたな」
「そうじゃろう。火の鳥は宇宙の始まりから神さまにも分からないずっと未来に至るまでの全宇宙の生命をつかさどっておるのじゃ」
「どういうこと?」
「地球の生命の始まりは知っておるか?」
「えっと。せんせいが地球外から彗星で運ばれてきたかも知れないって」
「そんなようなものじゃ」
「ふーん、ホントにそうだったのか〜」
「では、その地球外から運ばれてきた生命の起源はどうなんじゃ?」
「わ、分かんないよ〜」
「その始まりが火の鳥なのじゃ」
「じゃあ、サンタさんは火の鳥の手下なの?」
「手下という言い方が適当かどうかは別として、ワシらは手足として働いておる」
「へえ、これで長年の疑問が解けたよ」
「ワシらは生命の養育係なのじゃ」
「じゃあ、地球がサンタさんの受け持ちだったんだね」
「そうじゃ。その地球の生命も成熟してしてきたのでな、今年は部下に任せたのじゃ」
「ポロたち、ここで何をすればいいの?」
「去年手伝ってもらったのと同じじゃよ」
「わ〜、また光の粉を撒くんだね〜」
「そうじゃ」
「でも、どこに撒くの?」
「もう少し行ったところにある大陸の海岸線でシアノバクテリアがストロマトライトに育っているはずじゃ。彼らにより強い生命力を与えるために光の粉を撒くのじゃ」
「ねえ、ストロマトライトもポロたちみたいに笑う?」
「ああ、笑うとも。そりゃもう、うれしそうに笑うよ」
「そうかー、笑うのか〜」
「よし、ポロどん、ここじゃ。さあ、後ろの袋から思いきり粉を撒くんじゃ」
「うん、やるよ」

 ポロは、ぱんぱんにふくらんだ布袋の口ひもを解くと、100メートルの高さから粉を撒き始めました。
 薄ぼんやりと輝く光のつぶつぶが滝のように、ドレッドノート号から落ちていきました。粉がストロマトライトにかかると、そこが金色に光りました。光は、波のようにゆらゆらと揺れて、シアノバクテリアが本当に笑っているかのようでした。

「サンタさん、みんな笑ってるよ」
「ああ、喜んどるの」
「いつか宇宙人になるかな?」
「ああ、いつかはなるじゃろう」


つづく

先頭 表紙

2004-12-21 ポロの日記 2004年12月25日(岩曜日)クリスマスイヴ2004 その3

クリスマスイヴ2004 その3


 ドレッドノート号は大きな大陸の海岸線にそって、光の粉をまきつづけました。ポロは去年と同じように袋の中に入り込んで、後ろ足で粉をかきだしました。不思議なことに、いくら撒いても袋の中の粉は減りませんでした。
何時間も何時間も撒き続けたので、大陸を一周して、撒き始めた最初の海岸にもどってきました。どうして分かったかというと、海岸線がゆらゆらと光っていたからです。

「ポロどん、ご苦労じゃった。任務は成功じゃ。帰ろう」
「うん。ポロ、もうクタクタだよ」

 ドレッドノート号はTucana-3の離脱軌道に入りました。高度がどんどん上がります。ポロが振り返ると、そこには光の帯に縁取りされた大陸の姿が浮かび上がっていました。

「サンタさん、見て見て!」
「どれどれ」
「ほら、クリスマスツリーだよ」
「おう・・・・!」

 光のクリスマスツリーは、ゆらゆらと揺れたり光が波のように明滅して、幸せそうに笑っていました。
 ポロはジーンとして、涙がひと粒ポロリと落ちてしまいました。でも、サンタさんも涙をポロリとこぼしていました。

「いかんいかん。歳をとると涙もろくなっていかん」
「これを見たら誰だって感動するよ」
「そうじゃな。ストロマトライトは、いまにこの星をおいしい空気で満たすことじゃろう」
「へえ、そういう使命があるのか〜」
「生き物は必ず使命を持って生まれてくるものじゃ」
「ポロにも使命があるのかな〜」
「もちろん」
「ピアノ、ヘタだよ」
「そんなこと何の関係があると言うのじゃ」
「お話の部屋のヒット数もまだ6000だし」
「ははは。そんなこと気にしておるのか。人が何を言おうが事実は曲がらん。大統領が太陽は地球のまわりを回っていると言っても、そうにはならん」
「サンタさんて、ひょっとしてせんせい門下だっけ?」
「何を言っておる。事実は誰が話しても事実じゃ」
「ふ〜ん」
「ポロどんの書いた“お話”がほんものかどうかだけが問題なのじゃ」
「わ〜、ダメかも〜」
「作者がその価値を確信できんようでは、書かれたほうの“お話”は浮かばれん」
「そ、そうかも〜。ポロ、目が覚めたよ〜。サンタさん、アリガト!」
「はっはっは」

 Tucana-3が点のようになってクリスマスツリーが見えなくなるころ、サンタさんはドレッドノート号に地球への全速帰投を命じたのでした。


おしまい


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ポロのひみつの部屋

先頭 表紙

みわちゃん、アリガト! ポロもとっても好きかも。 / ポロ ( 2004-12-26 21:48 )
ほのぼの、かつスケールの大きさに感動しました。今までのお話で一番好きかも。 / みわちゃん ( 2004-12-26 15:09 )

2004-12-20 ポロの日記 2004年12月21日(熱曜日)作曲工房の午後 その1

作曲工房の午後 その1


「せんせい、お昼にしようよ」
「うん、そうだね」
「今日のお昼はなあに?」
「これだよ」
「うわ、ひやご飯じゃないか〜。とうとうポロたちは冷や飯(めし)を食べるほど落ちぶれたのか〜」
「そうでもないぞ。これを見ろ」
「わ! 塩いくらがこんなにたくさん。すごいすごい!」
「こういうものは、温かいごはんで食べるよりも、きちんと炊いてさました冷やご飯のほうがおいしいんだ。お寿司はわざわざご飯を冷ますだろう」
「そっか〜。ホントだ、んまいんまい。冷やご飯のファンになりそうだよ〜。このパリパリの海苔でくるめば最高だね〜。わあ、千枚漬けもあるじゃないか。ポロ、大好きだよ〜。」
「やわらいメンマもあるぞ」
「ねえ、せんせい。前から不思議に思ってたんだけどメンマってなあに?」
「ああ、これは中国産の竹の芽だよ」
「え゛〜〜〜〜〜! 竹って食べられるのか〜! それで謎が解けたぞ」
「どんな謎だい?」
「あのさ、梅は分かるんだけど、お寿司屋さんで松とか竹とか注文する人がいるんだ。そんなの材木屋さんに行けばいいのにって思ってたの」
「ぶっ!」
「せんせい、ご飯噴き出さないでよ」
「ごほっ、ごほ。ご飯食べてる時に笑わせないでくれ・・・」
「笑わせてないよ〜!」
「いいか、松は特上、竹は上、梅は並という意味だ」
「え〜〜〜〜〜! 材木のことじゃないの〜〜?」
「誰が寿司屋で材木を注文するんだ。並をくださいなんてヤボだから梅って言い換えているんだ」
「そ〜〜だったのか〜〜」
「せんせい、テレビつけてもいい? お昼のニュース」
「いいよ」

 ぶ〜ん

<では、次のニュースです。昨夜、練馬区のアパートで助けを求める声がするとの通報があり、練馬署員が駆けつけてみると、その部屋に住む30代の会社員の男性が後ろ手に縛られているのが見つかりました。男性は、武装した猫の集団がいきなり襲ってきてお尻にお灸をすえて立ち去ったと話しており、警察では自虐的な緊縛趣味のある男性が覚せい剤などの使用による幻覚を見たのではないかとみて、薬物反応などを調べています>

「へんなニュースだな」
「でも、その人の言うことホントかも」
「どうしてそう思うんだい?」
「いや、ちょっと、そんな気がしただけ」

<次のニュースです。昨日昼ごろ、やはり練馬区でUFOの目撃情報が相次いで警察に寄せられました。警察や天文台、気象庁では気象観測用の気球が、なんらかの理由で低空に降りてきて、折からの強い北風に乗って高速移動しているのを誤認したものではないかと話しています>

「だから戦闘降下するときは気をつけなくちゃ」
「何か言ったか?」
「ううん、なんでもないよ。もういいや、テレビ消すよ」
「ああ」

 ぷつん

 ぴんぽーん!

「あ、誰か来たよ」

 せんせいはインターホンに向かって、少々お待ちください、と言ってから一階の玄関に降りていきました。
 戻ってきたせんせいは、小さな包みを持っていました。

「せんせい、なあに?」
「なんだろう。贈り物らしいよ。三河屋デリバリーサービスと書いてあるな」

 せんせいが包みを開けると、中から手紙とクスリのカプセルが出てきました。

「あ、せんせい。それヒケールだよ」
「ヒケール・・・?」
「ほら、ポロが、せんせいに風邪薬と間違えて飲ませちゃったやつ」
「ああ、思いだした。テーブルでバラキレフのイスラメイ弾いちゃったクスリだな」
「そだよ! こないだぜ〜んぶ使っちゃったから、ポロが頼んどいたんだ」
「手紙を読んでみよう」


つづく

先頭 表紙

2004-12-19 ポロの日記 2004年12月21日(熱曜日)作曲工房の午後 その2

作曲工房の午後 その2


 ・・・拝啓 とむりんせんせい殿
 いつも息子がお世話になっております。日頃のお礼としては、はなはだ足りないとは思いますが、我がドーラ王国が誇る先端企業ドーラ・メディコ製の「ヒケール」を贈らせていただきます。ふつつかな息子ではありますが、これからもなにとぞよろしゅうお願い申し上げまする。
 トトメス152世・・・

「なんだ、ポロのお父さんは王様なのか?」
「う、ううん。ち、ちあうよ。普通の会社員」
「そうか。それにしては、トトメス152世なんてすごい名前だな」
「古くから伝わる家系なんだよ」
「ところで、いつヒケールなんか使ったんだ?」
「うん、こないだの発表会のときにみんなに飲ませた」
「えっ? じゃ、みんながうまく弾けたのはヒケールのせいなのか?」
「そだよ、せんせい。自分の指導力を過信しちゃいけないよ」
「だけど、どうやって飲ませたんだ?」
「はちみつのど飴の袋に入れて」
「なんと・・・・・・」
「はい、こっちが本物のはちみつのど飴だよ。なめていいよ」
「ちょうど、のどがイガイガしていたところだ。それにしても、ヒケールのせいだったとは・・・」

 どかちゃかどかちゃかどかちゃかどかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、どかちゃかどかちゃかどかちゃかどかちゃか・・・・・

「せんせい、なにふざけてるの?」
「ふ、ふざけてるんじゃない。また勝手に指が動き出したんだ・・、くそ、止まらん」
「せんせい、ポロをだまそうったってそうはいかないよ。ポロがのど飴をなめてたしかめるから」

 どかちゃかどかちゃかどかちゃかどかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、どかちゃかどかちゃかどかちゃかどかちゃか・・・・・

「わ〜〜、ホントだ〜〜! のど飴じゃないぞ、ヒケールだ〜〜。それも販促用のキャンペーンソングじゃないか〜。このあいだ発表会でみんなにくばったのは何だったんだ〜〜」
「そりゃ、本物ののど飴だろうさ」
「そ、そ〜〜だったのか〜。みんな自力で弾いたんだね。うまいな〜」
「それより、こんなものを飲まされてキャンペーンソングを弾かなくてよかった」

 どかちゃかどかちゃかどかちゃかどかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、どかちゃかどかちゃかどかちゃかどかちゃか・・・・・

 それからしばらくの間、ポロたちはヒケールのキャンペーンソングのリズムでダイニングテーブルを叩き続けたのでした。
 みなさんもヒケールと武装した猫集団には気をつけましょう。


おしまい



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先頭 表紙

ミタさん。このままいけば、ポロはトトメス153世だな〜。 / ポロ ( 2004-12-22 11:14 )
それにしても、お父様の名前、初めてかな?やっぱり、ポロちゃんが心配なのですねー。(^^) / みた・そうや ( 2004-12-21 22:28 )
そうかー、お寿司の注文の「竹」、勘違いしてたのですね〜。私はってっきり、メンマとかシナチクの握りかと…(笑) / みた・そうや ( 2004-12-21 22:27 )

2004-12-18 ポロの日記 2004年12月20日(光曜日)作曲工房のひみつ その1

作曲工房のひみつ その1


 ここは作曲工房の秘密の地下オフィスです。第一秘書のポロは、絶え間なくかかってくる電話をさばく名人でした。

 ぷろろろろろ・・・・・、ぷろろろろろ・・・・・、ちゃ。

 必ず2回の呼びだし音で電話に出るのがプロです。早くても遅くてもいけません。

「はい、作曲工房でございます」
「あ、ポロさん? あのね、クランベリー書店組合だけど。ウラノメトリアの4巻から6巻までを100冊ずつ送ってくれる?」
「はい、かしこまりました。いつもの送り先でよろしいですね」
「うん、早めにね。じゃ、頼みますよ」
「ありがとうございました」

 相手がどんなになれなれしくても、作曲工房スタッフは丁寧に応対します。そこへ次の電話が鳴りました。

 ぷろろろろろ・・・・・、ぷろろろろろ・・・・・、ちゃ。

「はい、作曲工房でございます」
「あ、こちらアルマジロ派遣サービスですが」
「はい、いつもお世話になっております」
「先月の、アクセスカウンタ早回しサービスの代金がまだ振り込まれてないようなんですが」
「は、大変申し訳ありません。ただちに確認して、振り込みいたします」

 や、やば。そういえば、振り込みに行ったとき、途中の屋台でおでん食べてたら、すっかり振り込みのこと忘れて帰ってきちゃったんだ。すぐに行かなくちゃ。そこへまた電話です。

「はい、作曲工房でございます」
「こちらは、ノーヘル賞選考委員会です。せんせいが今年の受賞者に選ばれましたのでお知らせします」
「アリガトございます。せっかく選んでいただきましたが、せんせいからは全ての受賞をお断りするようにと、きつく言われておりますので受賞は辞退させていただきます」
「ちょっと待ってください。権威あるノーヘル賞ですよ」
「はい、受賞したらノーヘル賞受賞者になってしまいます」
「それのどこがいけないというのですか」
「せんせいは変人だからでございます」

 がちゃ。今度は、となりの電話が鳴りました。

「あ、ホームラン軒?」
「はい、まいどありゃーたっす」
「武者小路だけど、ラーメン3つね。大至急!」
「はい、ただいま!」

 ポロは、アルバイトで近所のホームラン軒の電話番もやっています。すぐに、ホームラン軒に注文内容を伝えました。

 次の電話です。

「あ、玄海さん?」
「へい、さようで!」
「イマギイレだけど、竹を3人前ね」
「へい、かしこまりやした!」

 威勢よく返事をするように言われていますが、せっかくお寿司屋さんに注文するのに、竹だの松を注文する人の気が知れません。ポロは玄界寿司のバイトもやっているので、すぐに、竹の注文を店に伝えました。
 すぐに次の電話が鳴りました。


つづく

先頭 表紙

2004-12-17 ポロの日記 2004年12月20日(光曜日)作曲工房のひみつ その2

作曲工房のひみつ その2

「はい、作曲工房でございます」
「よく聞くんだ」
「はい、何でございましょう」
「松戸博士を誘拐した。もし、命を助けたければ100万クレジットを用意しろ」
「あ、犯人さん。松戸博士はおとなしくしてる?」
「ああ、おとなしいもんだぜ」
「わ、犯人さん、気をつけて! 松戸博士がおとなしい時は何かやってるときなんだ」
「何言ってるんだ。ガタガタ言いやがると博士の命は、ぐおっ、ごあ〜〜〜!」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「犯人さん、ダイじょぶ?」
「ふぉっふぉっふぉ。ポロどんかね」
「わ、博士。犯人は?」
「おとなしくしてるよ。これからどうやって懲らしめてやるか考えとるところじゃ」
「博士、あんまりいじめちゃダメだよ」
「ああ、危害は加えないよ。ただ、目が覚めたとき、浦島太郎になっておるかも知れんがの。ふぉっふぉっふぉ!」

 松戸博士を誘拐するなんて、命知らずもいいところだな、全く。あ、また電話だ。

「中村さんかね」
「こちらは作曲工房でございますが」
「そんなはずはない。私が番号間違いをするはずがない」
「自信がおありのようですが、違います」
「ウソをつくな。子猫のミーちゃんをいただいた。返して欲しければ10万円用意しろ!」

 今日は誘拐が多いな。でも、こういう電話ならポロは得意です。すぐにアンシブル通信機のチャンネルをオープンして電話に接続しました。あと5秒でも接続を切らなければ犯人の位置が特定できます。

「分かりました。では10万円をどこにお持ちすればよろしいですか」
「追って連絡する。警察に知らせたらミーちゃんの命はないと思え」

 すぐにアンシブル通信機に連絡が入りました。

<オープンチャンネル・ドーラ。こちらドーラ・スターフリート第3機動部隊のフリゲート艦“リンダラハ”。艦長のカトーです。アメン王子、お久しぶりです>
<カトー艦長、アメンだ。先ほどの通話の発信元は確定できたか?>
<はい。強襲部隊が転送室で待機しています。救出作戦は15分もあれば完了すると思われます。敵は丸腰です>
<よし、きつーくお灸をすえてやってくれ>
<アイサー>

 その後、ドーラ防衛軍の強襲部隊はミーちゃんを確保、犯人の男を縛り上げて、お尻にお灸をすえて帰隊したという報告が入りました。
 わ、また電話です。

「ホームラン軒?」
「はい、まいど〜!」
「武者小路だけど、ラーメンまだ?」
「あ、はい、たったいま出たとこです!」


おしまい


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野村茎一作曲工房

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先頭 表紙

わあ、さすがミタさん。読みが深い! / ポロ ( 2004-12-21 01:36 )
ミーちゃんが無事で良かった…ひょっとすると女神様が仔猫を助けようとして、作曲工房に間違え電話を掛けさせたのかも?(^^) / みた・そうや ( 2004-12-20 21:30 )

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