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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-12-21 ポロの日記 2004年12月25日(岩曜日)クリスマスイヴ2004 その3
2004-12-20 ポロの日記 2004年12月21日(熱曜日)作曲工房の午後 その1
2004-12-19 ポロの日記 2004年12月21日(熱曜日)作曲工房の午後 その2
2004-12-18 ポロの日記 2004年12月20日(光曜日)作曲工房のひみつ その1
2004-12-17 ポロの日記 2004年12月20日(光曜日)作曲工房のひみつ その2
2004-12-16 ポロの日記 2004年12月18日(岩曜日)マグロ救出作戦
2004-12-15 ポロの日記 2004年12月13日(光曜日)ライバル店出現 その1
2004-12-14 ポロの日記 2004年12月13日(光曜日)ライバル店出現 その2
2004-12-13 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その1
2004-12-12 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その2


2004-12-21 ポロの日記 2004年12月25日(岩曜日)クリスマスイヴ2004 その3

クリスマスイヴ2004 その3


 ドレッドノート号は大きな大陸の海岸線にそって、光の粉をまきつづけました。ポロは去年と同じように袋の中に入り込んで、後ろ足で粉をかきだしました。不思議なことに、いくら撒いても袋の中の粉は減りませんでした。
何時間も何時間も撒き続けたので、大陸を一周して、撒き始めた最初の海岸にもどってきました。どうして分かったかというと、海岸線がゆらゆらと光っていたからです。

「ポロどん、ご苦労じゃった。任務は成功じゃ。帰ろう」
「うん。ポロ、もうクタクタだよ」

 ドレッドノート号はTucana-3の離脱軌道に入りました。高度がどんどん上がります。ポロが振り返ると、そこには光の帯に縁取りされた大陸の姿が浮かび上がっていました。

「サンタさん、見て見て!」
「どれどれ」
「ほら、クリスマスツリーだよ」
「おう・・・・!」

 光のクリスマスツリーは、ゆらゆらと揺れたり光が波のように明滅して、幸せそうに笑っていました。
 ポロはジーンとして、涙がひと粒ポロリと落ちてしまいました。でも、サンタさんも涙をポロリとこぼしていました。

「いかんいかん。歳をとると涙もろくなっていかん」
「これを見たら誰だって感動するよ」
「そうじゃな。ストロマトライトは、いまにこの星をおいしい空気で満たすことじゃろう」
「へえ、そういう使命があるのか〜」
「生き物は必ず使命を持って生まれてくるものじゃ」
「ポロにも使命があるのかな〜」
「もちろん」
「ピアノ、ヘタだよ」
「そんなこと何の関係があると言うのじゃ」
「お話の部屋のヒット数もまだ6000だし」
「ははは。そんなこと気にしておるのか。人が何を言おうが事実は曲がらん。大統領が太陽は地球のまわりを回っていると言っても、そうにはならん」
「サンタさんて、ひょっとしてせんせい門下だっけ?」
「何を言っておる。事実は誰が話しても事実じゃ」
「ふ〜ん」
「ポロどんの書いた“お話”がほんものかどうかだけが問題なのじゃ」
「わ〜、ダメかも〜」
「作者がその価値を確信できんようでは、書かれたほうの“お話”は浮かばれん」
「そ、そうかも〜。ポロ、目が覚めたよ〜。サンタさん、アリガト!」
「はっはっは」

 Tucana-3が点のようになってクリスマスツリーが見えなくなるころ、サンタさんはドレッドノート号に地球への全速帰投を命じたのでした。


おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

ポロの掲示板はここ。
ポロのひみつの部屋

先頭 表紙

みわちゃん、アリガト! ポロもとっても好きかも。 / ポロ ( 2004-12-26 21:48 )
ほのぼの、かつスケールの大きさに感動しました。今までのお話で一番好きかも。 / みわちゃん ( 2004-12-26 15:09 )

2004-12-20 ポロの日記 2004年12月21日(熱曜日)作曲工房の午後 その1

作曲工房の午後 その1


「せんせい、お昼にしようよ」
「うん、そうだね」
「今日のお昼はなあに?」
「これだよ」
「うわ、ひやご飯じゃないか〜。とうとうポロたちは冷や飯(めし)を食べるほど落ちぶれたのか〜」
「そうでもないぞ。これを見ろ」
「わ! 塩いくらがこんなにたくさん。すごいすごい!」
「こういうものは、温かいごはんで食べるよりも、きちんと炊いてさました冷やご飯のほうがおいしいんだ。お寿司はわざわざご飯を冷ますだろう」
「そっか〜。ホントだ、んまいんまい。冷やご飯のファンになりそうだよ〜。このパリパリの海苔でくるめば最高だね〜。わあ、千枚漬けもあるじゃないか。ポロ、大好きだよ〜。」
「やわらいメンマもあるぞ」
「ねえ、せんせい。前から不思議に思ってたんだけどメンマってなあに?」
「ああ、これは中国産の竹の芽だよ」
「え゛〜〜〜〜〜! 竹って食べられるのか〜! それで謎が解けたぞ」
「どんな謎だい?」
「あのさ、梅は分かるんだけど、お寿司屋さんで松とか竹とか注文する人がいるんだ。そんなの材木屋さんに行けばいいのにって思ってたの」
「ぶっ!」
「せんせい、ご飯噴き出さないでよ」
「ごほっ、ごほ。ご飯食べてる時に笑わせないでくれ・・・」
「笑わせてないよ〜!」
「いいか、松は特上、竹は上、梅は並という意味だ」
「え〜〜〜〜〜! 材木のことじゃないの〜〜?」
「誰が寿司屋で材木を注文するんだ。並をくださいなんてヤボだから梅って言い換えているんだ」
「そ〜〜だったのか〜〜」
「せんせい、テレビつけてもいい? お昼のニュース」
「いいよ」

 ぶ〜ん

<では、次のニュースです。昨夜、練馬区のアパートで助けを求める声がするとの通報があり、練馬署員が駆けつけてみると、その部屋に住む30代の会社員の男性が後ろ手に縛られているのが見つかりました。男性は、武装した猫の集団がいきなり襲ってきてお尻にお灸をすえて立ち去ったと話しており、警察では自虐的な緊縛趣味のある男性が覚せい剤などの使用による幻覚を見たのではないかとみて、薬物反応などを調べています>

「へんなニュースだな」
「でも、その人の言うことホントかも」
「どうしてそう思うんだい?」
「いや、ちょっと、そんな気がしただけ」

<次のニュースです。昨日昼ごろ、やはり練馬区でUFOの目撃情報が相次いで警察に寄せられました。警察や天文台、気象庁では気象観測用の気球が、なんらかの理由で低空に降りてきて、折からの強い北風に乗って高速移動しているのを誤認したものではないかと話しています>

「だから戦闘降下するときは気をつけなくちゃ」
「何か言ったか?」
「ううん、なんでもないよ。もういいや、テレビ消すよ」
「ああ」

 ぷつん

 ぴんぽーん!

「あ、誰か来たよ」

 せんせいはインターホンに向かって、少々お待ちください、と言ってから一階の玄関に降りていきました。
 戻ってきたせんせいは、小さな包みを持っていました。

「せんせい、なあに?」
「なんだろう。贈り物らしいよ。三河屋デリバリーサービスと書いてあるな」

 せんせいが包みを開けると、中から手紙とクスリのカプセルが出てきました。

「あ、せんせい。それヒケールだよ」
「ヒケール・・・?」
「ほら、ポロが、せんせいに風邪薬と間違えて飲ませちゃったやつ」
「ああ、思いだした。テーブルでバラキレフのイスラメイ弾いちゃったクスリだな」
「そだよ! こないだぜ〜んぶ使っちゃったから、ポロが頼んどいたんだ」
「手紙を読んでみよう」


つづく

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2004-12-19 ポロの日記 2004年12月21日(熱曜日)作曲工房の午後 その2

作曲工房の午後 その2


 ・・・拝啓 とむりんせんせい殿
 いつも息子がお世話になっております。日頃のお礼としては、はなはだ足りないとは思いますが、我がドーラ王国が誇る先端企業ドーラ・メディコ製の「ヒケール」を贈らせていただきます。ふつつかな息子ではありますが、これからもなにとぞよろしゅうお願い申し上げまする。
 トトメス152世・・・

「なんだ、ポロのお父さんは王様なのか?」
「う、ううん。ち、ちあうよ。普通の会社員」
「そうか。それにしては、トトメス152世なんてすごい名前だな」
「古くから伝わる家系なんだよ」
「ところで、いつヒケールなんか使ったんだ?」
「うん、こないだの発表会のときにみんなに飲ませた」
「えっ? じゃ、みんながうまく弾けたのはヒケールのせいなのか?」
「そだよ、せんせい。自分の指導力を過信しちゃいけないよ」
「だけど、どうやって飲ませたんだ?」
「はちみつのど飴の袋に入れて」
「なんと・・・・・・」
「はい、こっちが本物のはちみつのど飴だよ。なめていいよ」
「ちょうど、のどがイガイガしていたところだ。それにしても、ヒケールのせいだったとは・・・」

 どかちゃかどかちゃかどかちゃかどかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、どかちゃかどかちゃかどかちゃかどかちゃか・・・・・

「せんせい、なにふざけてるの?」
「ふ、ふざけてるんじゃない。また勝手に指が動き出したんだ・・、くそ、止まらん」
「せんせい、ポロをだまそうったってそうはいかないよ。ポロがのど飴をなめてたしかめるから」

 どかちゃかどかちゃかどかちゃかどかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、どかちゃかどかちゃかどかちゃかどかちゃか・・・・・

「わ〜〜、ホントだ〜〜! のど飴じゃないぞ、ヒケールだ〜〜。それも販促用のキャンペーンソングじゃないか〜。このあいだ発表会でみんなにくばったのは何だったんだ〜〜」
「そりゃ、本物ののど飴だろうさ」
「そ、そ〜〜だったのか〜。みんな自力で弾いたんだね。うまいな〜」
「それより、こんなものを飲まされてキャンペーンソングを弾かなくてよかった」

 どかちゃかどかちゃかどかちゃかどかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、どかちゃかどかちゃかどかちゃかどかちゃか・・・・・

 それからしばらくの間、ポロたちはヒケールのキャンペーンソングのリズムでダイニングテーブルを叩き続けたのでした。
 みなさんもヒケールと武装した猫集団には気をつけましょう。


おしまい



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ポロのひみつの部屋

先頭 表紙

ミタさん。このままいけば、ポロはトトメス153世だな〜。 / ポロ ( 2004-12-22 11:14 )
それにしても、お父様の名前、初めてかな?やっぱり、ポロちゃんが心配なのですねー。(^^) / みた・そうや ( 2004-12-21 22:28 )
そうかー、お寿司の注文の「竹」、勘違いしてたのですね〜。私はってっきり、メンマとかシナチクの握りかと…(笑) / みた・そうや ( 2004-12-21 22:27 )

2004-12-18 ポロの日記 2004年12月20日(光曜日)作曲工房のひみつ その1

作曲工房のひみつ その1


 ここは作曲工房の秘密の地下オフィスです。第一秘書のポロは、絶え間なくかかってくる電話をさばく名人でした。

 ぷろろろろろ・・・・・、ぷろろろろろ・・・・・、ちゃ。

 必ず2回の呼びだし音で電話に出るのがプロです。早くても遅くてもいけません。

「はい、作曲工房でございます」
「あ、ポロさん? あのね、クランベリー書店組合だけど。ウラノメトリアの4巻から6巻までを100冊ずつ送ってくれる?」
「はい、かしこまりました。いつもの送り先でよろしいですね」
「うん、早めにね。じゃ、頼みますよ」
「ありがとうございました」

 相手がどんなになれなれしくても、作曲工房スタッフは丁寧に応対します。そこへ次の電話が鳴りました。

 ぷろろろろろ・・・・・、ぷろろろろろ・・・・・、ちゃ。

「はい、作曲工房でございます」
「あ、こちらアルマジロ派遣サービスですが」
「はい、いつもお世話になっております」
「先月の、アクセスカウンタ早回しサービスの代金がまだ振り込まれてないようなんですが」
「は、大変申し訳ありません。ただちに確認して、振り込みいたします」

 や、やば。そういえば、振り込みに行ったとき、途中の屋台でおでん食べてたら、すっかり振り込みのこと忘れて帰ってきちゃったんだ。すぐに行かなくちゃ。そこへまた電話です。

「はい、作曲工房でございます」
「こちらは、ノーヘル賞選考委員会です。せんせいが今年の受賞者に選ばれましたのでお知らせします」
「アリガトございます。せっかく選んでいただきましたが、せんせいからは全ての受賞をお断りするようにと、きつく言われておりますので受賞は辞退させていただきます」
「ちょっと待ってください。権威あるノーヘル賞ですよ」
「はい、受賞したらノーヘル賞受賞者になってしまいます」
「それのどこがいけないというのですか」
「せんせいは変人だからでございます」

 がちゃ。今度は、となりの電話が鳴りました。

「あ、ホームラン軒?」
「はい、まいどありゃーたっす」
「武者小路だけど、ラーメン3つね。大至急!」
「はい、ただいま!」

 ポロは、アルバイトで近所のホームラン軒の電話番もやっています。すぐに、ホームラン軒に注文内容を伝えました。

 次の電話です。

「あ、玄海さん?」
「へい、さようで!」
「イマギイレだけど、竹を3人前ね」
「へい、かしこまりやした!」

 威勢よく返事をするように言われていますが、せっかくお寿司屋さんに注文するのに、竹だの松を注文する人の気が知れません。ポロは玄界寿司のバイトもやっているので、すぐに、竹の注文を店に伝えました。
 すぐに次の電話が鳴りました。


つづく

先頭 表紙

2004-12-17 ポロの日記 2004年12月20日(光曜日)作曲工房のひみつ その2

作曲工房のひみつ その2

「はい、作曲工房でございます」
「よく聞くんだ」
「はい、何でございましょう」
「松戸博士を誘拐した。もし、命を助けたければ100万クレジットを用意しろ」
「あ、犯人さん。松戸博士はおとなしくしてる?」
「ああ、おとなしいもんだぜ」
「わ、犯人さん、気をつけて! 松戸博士がおとなしい時は何かやってるときなんだ」
「何言ってるんだ。ガタガタ言いやがると博士の命は、ぐおっ、ごあ〜〜〜!」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「犯人さん、ダイじょぶ?」
「ふぉっふぉっふぉ。ポロどんかね」
「わ、博士。犯人は?」
「おとなしくしてるよ。これからどうやって懲らしめてやるか考えとるところじゃ」
「博士、あんまりいじめちゃダメだよ」
「ああ、危害は加えないよ。ただ、目が覚めたとき、浦島太郎になっておるかも知れんがの。ふぉっふぉっふぉ!」

 松戸博士を誘拐するなんて、命知らずもいいところだな、全く。あ、また電話だ。

「中村さんかね」
「こちらは作曲工房でございますが」
「そんなはずはない。私が番号間違いをするはずがない」
「自信がおありのようですが、違います」
「ウソをつくな。子猫のミーちゃんをいただいた。返して欲しければ10万円用意しろ!」

 今日は誘拐が多いな。でも、こういう電話ならポロは得意です。すぐにアンシブル通信機のチャンネルをオープンして電話に接続しました。あと5秒でも接続を切らなければ犯人の位置が特定できます。

「分かりました。では10万円をどこにお持ちすればよろしいですか」
「追って連絡する。警察に知らせたらミーちゃんの命はないと思え」

 すぐにアンシブル通信機に連絡が入りました。

<オープンチャンネル・ドーラ。こちらドーラ・スターフリート第3機動部隊のフリゲート艦“リンダラハ”。艦長のカトーです。アメン王子、お久しぶりです>
<カトー艦長、アメンだ。先ほどの通話の発信元は確定できたか?>
<はい。強襲部隊が転送室で待機しています。救出作戦は15分もあれば完了すると思われます。敵は丸腰です>
<よし、きつーくお灸をすえてやってくれ>
<アイサー>

 その後、ドーラ防衛軍の強襲部隊はミーちゃんを確保、犯人の男を縛り上げて、お尻にお灸をすえて帰隊したという報告が入りました。
 わ、また電話です。

「ホームラン軒?」
「はい、まいど〜!」
「武者小路だけど、ラーメンまだ?」
「あ、はい、たったいま出たとこです!」


おしまい


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先頭 表紙

わあ、さすがミタさん。読みが深い! / ポロ ( 2004-12-21 01:36 )
ミーちゃんが無事で良かった…ひょっとすると女神様が仔猫を助けようとして、作曲工房に間違え電話を掛けさせたのかも?(^^) / みた・そうや ( 2004-12-20 21:30 )

2004-12-16 ポロの日記 2004年12月18日(岩曜日)マグロ救出作戦

マグロ救出作戦


 ポロは昔のSF小説を音読していました。

「博士、コールドスリープの準備が整いました」
「ああ、少佐。ありがとう。今度目覚めたときには息子が私よりも年上だと思うと複雑だね」
「私は、すでに孫に追い抜かれています」
「そうか。宇宙船に勤務するというのは大変な人生だ」
「そのとおりです。さあ、行きましょう」

 それを聞いていた風(ふう)兄ちゃんが言いました。

風「ポロ、マグロは本当は地球の魚じゃないんだ」
ポ「へえ、そうだったのか〜、どおりで大きすぎると思ったよ」
風「マグロは、とても文明の進んだ星にいたんだ」
ポ「それが、どうして地球にいるの?」
風「マグロたちは近くの恒星が超新星爆発することを知って、移民することにしたんだよ。それで、大移民船団で遠い宇宙を目指した。たまたま地球の近くを通りかかった時に宇宙嵐に出会って、かなりの数の宇宙船が被災した。それで、多くのマグロ宇宙船は、自動的に地球に不時着したわけだ。そのまま宇宙船は地中に埋もれて、船内では数えきれないくらいのマグロたちがコールドスリープしたまま新天地への到着を待っているというわけだ」
ポ「もしかして、冷凍マグロってコールドスリープしてるマグロのことなの?」
風「そうだ。マグロ漁は海で行なうが、冷凍マグロ漁は違う。鉱山のように地中から宇宙船ごと掘り出すんだ。そして無抵抗のコールドスリープ中のマグロを捕獲するんだ」
ポ「・・・・・・!」
風「一部の宇宙船は海に落ちて、コールドスリープから覚めたマグロたちが海に戻ったりもした。それが繁殖して、今、海にいる」
ポ「・・・、ぜんぜん知らなかったよ・・・」
風「そうか。一部の人たちの間では有名な話だよ」
ポ「うん、マグロってほとんど冷凍されてるもんね。気がつくべきだったかも・・・」
風「ああ、そうだね」
ポ「ポロ、ショックで、もうマグロ食べられないよ」
風「東京湾岸にも多くのマグロが捕らえられて、倉庫で出荷を待っているんだ」
ポ「た、助けに行かなくちゃ!」
風「そうだ。でもね、マグロの会社も警備が厳重だから、やたらなことではマグロたちを助けることはできないよ」
ポ「そだね。でも、なんとか助けなくちゃ。ポロだって、将来コールドスリープでよその星に行くかも知れないでしょ。その途中で捕まって冷凍ねこの缶詰にされたくないよ」
風「そうだね。コールドスリープには“冷凍ねこ”っていう落とし穴があることに、多くのSF作家は気づいていない」
ポ「やっぱり助けに行かなくちゃ。最初さ、ホームページを立ち上げて冷凍マグロを救おうって世論に訴えようよ」
風「うん。それもいいかも知れないね。でもさ、マグロが大好物な人は反対するかも知れないよ」
ポ「それは大問題だな〜」

 そこへ奥さんがやってきました。

奥「あら、二人とも、まじめな顔して、何を話してるの?」
ポ「あのね、冷凍マグロってコールドスリープ中に捕まっちゃったって知ってた?」
奥「ポロちゃん、またかつがれたのね」
ポ「え゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜! これって、ウソなの〜〜〜〜〜!?」
風「ポロって、何度でもだまされるから楽しいなあ」
ポ「ぐあ〜〜〜! 許せん許せん、ぜ〜ったいに許さない」

 そういうと、ポロは冷蔵庫に走っていって、風兄ちゃんの分のスイートポテトを食べちゃいました。

おしまい


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2004-12-15 ポロの日記 2004年12月13日(光曜日)ライバル店出現 その1

ライバル店出現 その1


 あじさい亭の近くに“ラッキー酒場”という居酒屋が開店したので、ポロは、こっそりと偵察に行きました。
 夜の8時頃に店の前に立つと、店から狒々(ひひ)が出てきて笑いながら走り去りました。それを見たポロは、この店がデーモン族の経営する店であることを直感しました。
 すぐにあじさい亭に戻って、そのことを女神さまに伝えました。

め「まあ、それは大変だわ」

 ちょうど店内にいた、しおさんとミタさんが「オレたちに任せろ」と言って、店を出ていきました。
 1時間たっても戻らないのでポロが様子を見に行きました。
 誰にも見つからないように、こっそりとラッキー酒場に入り込むと、店は思いのほか繁盛しているようでした。
 店の大型プロジェクターでは、プロレスラーの生活を描いたドキュメンタリーである「労働オブ・ザ・リング」が上映されていました。年末の特別編成番組でしょう。ほかの客は、飲んだりしゃべったりしていてプロジェクターには見向きもしていませんでしたが、しおさんとミタさんだけが熱心に見ていました。それで、ポロも、ついつい見入ってしまいました。
 主人公はフロドというプロレスラーです。一見華やかなプロレスラーの生活も、実はとても大変です。地方巡業が多く、開催地への移動のトラックの運転も会場の設営もレスラーたち自らがやらなければなりません。興業の準備を全て終えてヘトヘトになったころに、やっとリング上の仕事が始まります。
 フロドは、それでもこの一瞬のために全力を尽くします。フロドは悪役レスラーなので、正義役のレスラーに投げ飛ばされたりすると、パイプ椅子が並んだだけのまばらな客席からパラパラとおじいさんたちの拍手聞えてきます。それでもフロドは悪役らしくしたたかに戦います。
 ポロはパウル・クレーの「赤いスカートの踊り」という絵を思いだしました。
誰もいないガランとした倉庫のようなステージで、赤いスカートをはいたおじさんがあっちこっちで踊っています。ホントは一人なのですが、クレーが何人ものおじさんを描いて動きを表現したのに違いありません。まるで子どもの描いた絵みたいで、きれいなところも上手なところも見当たりません。へんな絵だなあと思っていると、絵を見せてくれたせんせいが言いました。

「ここには観客の拍手もなにもないんだ。あるのは、無心に踊る主人公の踊りが好きだという心だけかも知れない。褒められるために踊っているんじゃない。無心になれるほど好きだということだ、それがこんなに人を打つということを知っていたかい?」

それを聞いて、ポロは、急にその絵がすばらしい絵に思えてきました。ついでに、じ〜んと感動してきて、涙まで出てきました。

「せんせ〜、こんなにヘタッぴな絵なのに、なんていい絵なんだろうね。ポロは、感動しちゃったよ。え〜んえん」
「なにも泣かなくてもいいだろう」
「え〜んえん」

ポロは、大型プロジェクターに映るプロレスラーのフロドの姿を赤いスカートのおじさんと重ね合わせていました。
番組が終わると、しおさんとミタさんがポロに気がつきました。2人とも感動してちょっと目頭を熱くしていました。

し「あれ、ポロちゃんじゃないか」
ポ「うん、ポロも観てたよ。感動したねえ」
ミ「ホント、夢中で見ちゃたなあ」
し「さあ、かえろうか。お姉さ〜ん、おあいそ」
姉「お客さんたち、水しか飲んでませんよ」
し「そうか〜。それは気がつかなかった。じゃさ、これで勘弁してよ」


つづく

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2004-12-14 ポロの日記 2004年12月13日(光曜日)ライバル店出現 その2

ライバル店出現 その2


 しおさんは、財布から1000円札を出してテーブルに置きました。
 その時、小さな地震がありましたが、誰も気にとめませんでした。

姉「いえいえ、いただくわけにはいきません」
し「でもさ、オレの気が済まないから。ホント、感動しちゃったんだよ。映画館で金払っても、こんなに感動することは滅多にないね」

 すると、ミタさんも1000円札を出して言いました。

ミ「そうですね〜。これじゃ安いくらいだ。はい、僕も」
ポ「うん。ポロも1200円持ってるから、これ置いてくよ。これじゃ安すぎるんだけどさ、ポロてき感動としては」

 しおさんとミタさんも、負けじともう一枚の1000円札を出しました。今度は、少し大きな地震がありましたが、すぐに揺れが収まったので誰も騒ぎませんでした。

し「ホントだよなあ。今年一番の感動だった」
ミ「いや、僕なんか、今まで生きてきた中で一番感動しましたね」
ポ「ポ、ポロも〜!」
姉「お客さん、お礼はテレビ局に言ってください。うちは、ホントにいいんです」

 結局、しおさんとミタさんは、財布の中身を全部空にして、お札と小銭をテーブルに積み上げました。全部で4万円くらいありました。

姉「おかみさん、助けてください!」
女将「どうしたの、まきちゃん?」

 女将さんが、やって来ようとすると、今度はホントに大きな地震が起こりました。店内のお客たちは我さきにと、外へ飛びだしました。
 ポロたちも、大急ぎで外へ出ました。ところが、地震が起きているのはラッキー酒場だけでした。店はグラグラと揺れ続け、とうとうぐしゃりと崩れてしまいました。

 ポロたちは、びっくりしてあじさい亭に戻りました。
 みんなにラッキー酒場の出来事を話すと、女神さまが言いました。

め「そこは、間違いなくデーモン族の店だったんだわ。しおさんたちの善意が店を破壊しちゃったのよ」
ポ「どういうこと?」
め「デーモン族の店で売ってるのはなに?」
ポ「えっと、本物の1億円の札束が5000円。それから、苦労しないでできるお好み焼きの素とか」
め「そうよ。デーモン族は人々に楽や得をさせることが目的なのよ」
ポ「そういえば、そーだった!」
め「でも、ポロちゃんたちは“労働オブ・ザ・リング”って番組を見て、苦労などものともしない主人公の姿に感激して、それどころか水しか飲まなかったのにお金を払ったでしょ。それがデーモン族には最大の打撃だったに違いないわ」
し「でも、ホントにオレ感動しちゃって」
ミ「僕もですよ」
め「あなたたちは、これからもおそらくデーモン族にとりいる隙を与えることはないでしょうね。ステキな人たち」

 そういって、女神さまは、しおさんとミタさんのほっぺにキスしました。

ポ「ねえ、ポロはポロは?」
め「はい、ポロちゃんもチュッ!」

 それから、しおさんとミタさんが祝杯だと言って飲み始めたのは言うまでもありません。ポロも、りんごジュースで朝まで一緒にわいわい楽しく過ごしました。


おしまい

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ポロの掲示板はここ。
ポロのひみつの部屋

先頭 表紙

ミタさん、女神さまバンザーイ! shinさん、Daemonて、だえもんだえもんだーえもんだあえもんどらえもん、どらえもん。ドラえもんのことかなあ。 / ポロ ( 2004-12-16 22:38 )
どうやら、この「デーモン」のスペルはdemonではなくて、daemonらしい・・・ / shin ( 2004-12-16 00:15 )
おお!女神様からのプレゼントだ〜! / みた・そうや ( 2004-12-14 22:06 )

2004-12-13 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その1

あじさい亭繁盛記 その1


 女神さまが始めた“あじさい亭”は、地下鉄神田淡路町の近くの路地を2回曲がったところにあります。
 酔っぱらっていないと入り口が見えないので、店には酔っ払いばかりが来ます。カウンター席が8席と四人掛けのテーブルが4つだけのこじんまりとしたお店です。
 今は、まだ開店前の仕込みの時間です。

ポ「女神さま、手伝いに来たよ」
め「あら、ポロちゃん、ありがとう。さっそくだけど、仕込みを手伝って」
ポ「うん、まかせて」

 ポロが調理場に入っていくと、もうせんせいが働いていました。

ポ「わ、せんせい何してんの?」
せ「ポ、ポロこそ、なんでここにいるんだ」
ポ「せんせい、女神さまが目当てかな〜?」
せ「な、なにを言っている。いつも作曲を手伝ってもらっているから恩返しだ」
ポ「まーたまた〜」

 せんせいは料理が趣味なので、たぶん好きで来ているのだとポロは思いました。
 そこへ店のカウンターから女神さまの声が聞えてきました。

め「ポロちゃん、さっそくで悪いんだけどゴマがないの。転送室に取りに行ってくれる〜?」
ポ「はーい!」

 ポロは転送室というプレートの書かれたドアを見つけて入っていきました。
 転送室では軍服を着た、見たことのない宇宙人たちが忙しそうに働いていました。

ポ「あの〜、女神さまがゴマを持ってくるようにって・・・」
宇宙人1「アイサー! 総員に告ぐ。次の作戦だ。名づけて“ゴマ取得オペレーション3”だ。注文係は直ちに三河屋へゴマを一袋注文せよ。続いて転送機オペレータはゴマの転送受け入れに備えよ」
宇宙人2「“ゴマ取得オペレーション3”注文送信完了」
宇宙人3「転送受け入れ準備ヨーソロ!」
宇宙人1「転送受け入れ準備完了を強制割り込みモードで三河屋へ送信せよ」
宇宙人2「送信。折り返し、三河屋からの受信確認を受け取りました。すぐに転送が開始されます」
宇宙人3「転送始まりました。3、2、1・・転送完了」
宇宙人2「“ゴマ取得オペレーション3”の完了を確認しました」
宇宙人1「どうぞ、ゴマをお持ちください!」
ポ「あ、あ、アリガトございます・・・」

 ポロはゴマの袋をかついで女神さまのところに戻りました。

ポ「はい、ゴマ。なんだか見たことのない宇宙人がいっぱいいたよ」
め「そうなの。なんだか遠くの銀河の兵隊さんたちなのよ。使って欲しいって言うから雇ったんだけど、よく働いてくれるのよ」
ポ「そういえば、軍服着てたし、命令系統が軍隊式だったな」
め「じゃあ、ポロちゃんゴマを煎ってちょうだい」
ポ「うん。これってIHヒーターなの?」
め「外見は似てるけど違うわ。これはね摩擦式のヒーターなの。土鍋もOKよ」
ポ「摩擦式って、どういうの?」
め「ちょっと待ってね」


つづく

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2004-12-12 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その2

あじさい亭繁盛記 その2

 そういうと、女神さまはヒーターの脇の小窓を開けて「始めてちょうだい」と言いました。すると、シューシューとなにかが擦れるような音がしてパネルが赤熱してきました。
 ポロが小窓を開けて中を覗くと、たくさんのアルマジロが自転車をこいでいました。アルマジロの自転車のチェーンは大きなフライホイールを回して、そのフライホイールがヒーターの鉄板に触れて摩擦熱が生じるのでした。

ポ「ねえ、女神さま。あのアルマジロって、春日公園の地下でポロのサイトのカウンターを回してた連中だよ」
め「あの子たちも使って欲しいって言ってきたのよ。回すのが得意だっていうから、あの仕事を頼んだの。よく働いてくれるわ」

 ポロはアルマジロ式摩擦ヒーターでゴマを煎りました。その間に女神さまはモツの煮込みを仕込んでいました。

ポ「おいしそうだねえ」
め「もちろんよ。さて、次はパップラ丼の仕込みよ」
ポ「あ、ポロも聞いたことがある。軽めとか重めとかある?」
め「うちは軽めだけよ。だから“パップラ丼軽め”っていうメニューなの。ポロちゃん、転送室に20人分頼んできてくれる?」
ポ「うん。行ってくる」
め「活きのいいのが届くから気をつけるのよ」
ポ「うん。そうするよ」

 ポロが転送室に入っていくと、宇宙人全員が次の命令を待つという感じでポロを注目しました。

ポ「あ、あの。パップラ丼20人前お願いします」
宇宙人1「了解。活きパップラ5匹。確かに承りました。では、危険ですので室外にてお待ちください」
ポ「う、うん」

 ポロは転送室から出て、ドアの小窓から中を見ていました。

指揮官 「聞いたか?」
宇宙人たち「おー!!」
指揮官 「お前たちは銀河の猛者(もさ)か〜?」
宇宙人たち「おー!!」
指揮官 「怖いものなど何もないか〜?」
宇宙人たち「おー!!」
指揮官 「それでこそ前たちは真の勇者だ〜!」
宇宙人たち「おー!!」
指揮官 「“活きパップラ取得オペレーション5”を敢行する。全員レベル7防護服を着用せよ」
宇宙人たち「アイサー!」

 宇宙人たちは中世の騎士の甲冑のような防護服に身を固めて持ち場に着きました。

指揮官 「三河屋パップラセクションに接続」
宇宙人2「パスワード送信。接続完了」
指揮官 「よし、活きパップラ5匹を発注せよ」
宇宙人2「発注しました。本当に活きパップラであるか確認申請が来ています」
指揮官 「確認を送信せよ」
宇宙人2「送信完了。まもなく転送が開始されます」
指揮官 「・・・・・・・・」
宇宙人2「トラブル発生。三河屋パップラ発送部門で負傷者が出ました。交代要員が到着するまでお待ちくださいとのことです」
宇宙人たち「ざわざわざわ」
指揮官 「うろたえるな!」
宇宙人たち「ア、アイサー!」


つづく
 

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