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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-12-16 ポロの日記 2004年12月18日(岩曜日)マグロ救出作戦
2004-12-15 ポロの日記 2004年12月13日(光曜日)ライバル店出現 その1
2004-12-14 ポロの日記 2004年12月13日(光曜日)ライバル店出現 その2
2004-12-13 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その1
2004-12-12 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その2
2004-12-11 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その3
2004-12-10 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その4
2004-12-09 ポロの日記 2004年12月5日(風曜日)公然のひみつ その1
2004-12-08 ポロの日記 2004年12月5日(風曜日)公然のひみつ その2
2004-12-07 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その1


2004-12-16 ポロの日記 2004年12月18日(岩曜日)マグロ救出作戦

マグロ救出作戦


 ポロは昔のSF小説を音読していました。

「博士、コールドスリープの準備が整いました」
「ああ、少佐。ありがとう。今度目覚めたときには息子が私よりも年上だと思うと複雑だね」
「私は、すでに孫に追い抜かれています」
「そうか。宇宙船に勤務するというのは大変な人生だ」
「そのとおりです。さあ、行きましょう」

 それを聞いていた風(ふう)兄ちゃんが言いました。

風「ポロ、マグロは本当は地球の魚じゃないんだ」
ポ「へえ、そうだったのか〜、どおりで大きすぎると思ったよ」
風「マグロは、とても文明の進んだ星にいたんだ」
ポ「それが、どうして地球にいるの?」
風「マグロたちは近くの恒星が超新星爆発することを知って、移民することにしたんだよ。それで、大移民船団で遠い宇宙を目指した。たまたま地球の近くを通りかかった時に宇宙嵐に出会って、かなりの数の宇宙船が被災した。それで、多くのマグロ宇宙船は、自動的に地球に不時着したわけだ。そのまま宇宙船は地中に埋もれて、船内では数えきれないくらいのマグロたちがコールドスリープしたまま新天地への到着を待っているというわけだ」
ポ「もしかして、冷凍マグロってコールドスリープしてるマグロのことなの?」
風「そうだ。マグロ漁は海で行なうが、冷凍マグロ漁は違う。鉱山のように地中から宇宙船ごと掘り出すんだ。そして無抵抗のコールドスリープ中のマグロを捕獲するんだ」
ポ「・・・・・・!」
風「一部の宇宙船は海に落ちて、コールドスリープから覚めたマグロたちが海に戻ったりもした。それが繁殖して、今、海にいる」
ポ「・・・、ぜんぜん知らなかったよ・・・」
風「そうか。一部の人たちの間では有名な話だよ」
ポ「うん、マグロってほとんど冷凍されてるもんね。気がつくべきだったかも・・・」
風「ああ、そうだね」
ポ「ポロ、ショックで、もうマグロ食べられないよ」
風「東京湾岸にも多くのマグロが捕らえられて、倉庫で出荷を待っているんだ」
ポ「た、助けに行かなくちゃ!」
風「そうだ。でもね、マグロの会社も警備が厳重だから、やたらなことではマグロたちを助けることはできないよ」
ポ「そだね。でも、なんとか助けなくちゃ。ポロだって、将来コールドスリープでよその星に行くかも知れないでしょ。その途中で捕まって冷凍ねこの缶詰にされたくないよ」
風「そうだね。コールドスリープには“冷凍ねこ”っていう落とし穴があることに、多くのSF作家は気づいていない」
ポ「やっぱり助けに行かなくちゃ。最初さ、ホームページを立ち上げて冷凍マグロを救おうって世論に訴えようよ」
風「うん。それもいいかも知れないね。でもさ、マグロが大好物な人は反対するかも知れないよ」
ポ「それは大問題だな〜」

 そこへ奥さんがやってきました。

奥「あら、二人とも、まじめな顔して、何を話してるの?」
ポ「あのね、冷凍マグロってコールドスリープ中に捕まっちゃったって知ってた?」
奥「ポロちゃん、またかつがれたのね」
ポ「え゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜! これって、ウソなの〜〜〜〜〜!?」
風「ポロって、何度でもだまされるから楽しいなあ」
ポ「ぐあ〜〜〜! 許せん許せん、ぜ〜ったいに許さない」

 そういうと、ポロは冷蔵庫に走っていって、風兄ちゃんの分のスイートポテトを食べちゃいました。

おしまい


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先頭 表紙

2004-12-15 ポロの日記 2004年12月13日(光曜日)ライバル店出現 その1

ライバル店出現 その1


 あじさい亭の近くに“ラッキー酒場”という居酒屋が開店したので、ポロは、こっそりと偵察に行きました。
 夜の8時頃に店の前に立つと、店から狒々(ひひ)が出てきて笑いながら走り去りました。それを見たポロは、この店がデーモン族の経営する店であることを直感しました。
 すぐにあじさい亭に戻って、そのことを女神さまに伝えました。

め「まあ、それは大変だわ」

 ちょうど店内にいた、しおさんとミタさんが「オレたちに任せろ」と言って、店を出ていきました。
 1時間たっても戻らないのでポロが様子を見に行きました。
 誰にも見つからないように、こっそりとラッキー酒場に入り込むと、店は思いのほか繁盛しているようでした。
 店の大型プロジェクターでは、プロレスラーの生活を描いたドキュメンタリーである「労働オブ・ザ・リング」が上映されていました。年末の特別編成番組でしょう。ほかの客は、飲んだりしゃべったりしていてプロジェクターには見向きもしていませんでしたが、しおさんとミタさんだけが熱心に見ていました。それで、ポロも、ついつい見入ってしまいました。
 主人公はフロドというプロレスラーです。一見華やかなプロレスラーの生活も、実はとても大変です。地方巡業が多く、開催地への移動のトラックの運転も会場の設営もレスラーたち自らがやらなければなりません。興業の準備を全て終えてヘトヘトになったころに、やっとリング上の仕事が始まります。
 フロドは、それでもこの一瞬のために全力を尽くします。フロドは悪役レスラーなので、正義役のレスラーに投げ飛ばされたりすると、パイプ椅子が並んだだけのまばらな客席からパラパラとおじいさんたちの拍手聞えてきます。それでもフロドは悪役らしくしたたかに戦います。
 ポロはパウル・クレーの「赤いスカートの踊り」という絵を思いだしました。
誰もいないガランとした倉庫のようなステージで、赤いスカートをはいたおじさんがあっちこっちで踊っています。ホントは一人なのですが、クレーが何人ものおじさんを描いて動きを表現したのに違いありません。まるで子どもの描いた絵みたいで、きれいなところも上手なところも見当たりません。へんな絵だなあと思っていると、絵を見せてくれたせんせいが言いました。

「ここには観客の拍手もなにもないんだ。あるのは、無心に踊る主人公の踊りが好きだという心だけかも知れない。褒められるために踊っているんじゃない。無心になれるほど好きだということだ、それがこんなに人を打つということを知っていたかい?」

それを聞いて、ポロは、急にその絵がすばらしい絵に思えてきました。ついでに、じ〜んと感動してきて、涙まで出てきました。

「せんせ〜、こんなにヘタッぴな絵なのに、なんていい絵なんだろうね。ポロは、感動しちゃったよ。え〜んえん」
「なにも泣かなくてもいいだろう」
「え〜んえん」

ポロは、大型プロジェクターに映るプロレスラーのフロドの姿を赤いスカートのおじさんと重ね合わせていました。
番組が終わると、しおさんとミタさんがポロに気がつきました。2人とも感動してちょっと目頭を熱くしていました。

し「あれ、ポロちゃんじゃないか」
ポ「うん、ポロも観てたよ。感動したねえ」
ミ「ホント、夢中で見ちゃたなあ」
し「さあ、かえろうか。お姉さ〜ん、おあいそ」
姉「お客さんたち、水しか飲んでませんよ」
し「そうか〜。それは気がつかなかった。じゃさ、これで勘弁してよ」


つづく

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2004-12-14 ポロの日記 2004年12月13日(光曜日)ライバル店出現 その2

ライバル店出現 その2


 しおさんは、財布から1000円札を出してテーブルに置きました。
 その時、小さな地震がありましたが、誰も気にとめませんでした。

姉「いえいえ、いただくわけにはいきません」
し「でもさ、オレの気が済まないから。ホント、感動しちゃったんだよ。映画館で金払っても、こんなに感動することは滅多にないね」

 すると、ミタさんも1000円札を出して言いました。

ミ「そうですね〜。これじゃ安いくらいだ。はい、僕も」
ポ「うん。ポロも1200円持ってるから、これ置いてくよ。これじゃ安すぎるんだけどさ、ポロてき感動としては」

 しおさんとミタさんも、負けじともう一枚の1000円札を出しました。今度は、少し大きな地震がありましたが、すぐに揺れが収まったので誰も騒ぎませんでした。

し「ホントだよなあ。今年一番の感動だった」
ミ「いや、僕なんか、今まで生きてきた中で一番感動しましたね」
ポ「ポ、ポロも〜!」
姉「お客さん、お礼はテレビ局に言ってください。うちは、ホントにいいんです」

 結局、しおさんとミタさんは、財布の中身を全部空にして、お札と小銭をテーブルに積み上げました。全部で4万円くらいありました。

姉「おかみさん、助けてください!」
女将「どうしたの、まきちゃん?」

 女将さんが、やって来ようとすると、今度はホントに大きな地震が起こりました。店内のお客たちは我さきにと、外へ飛びだしました。
 ポロたちも、大急ぎで外へ出ました。ところが、地震が起きているのはラッキー酒場だけでした。店はグラグラと揺れ続け、とうとうぐしゃりと崩れてしまいました。

 ポロたちは、びっくりしてあじさい亭に戻りました。
 みんなにラッキー酒場の出来事を話すと、女神さまが言いました。

め「そこは、間違いなくデーモン族の店だったんだわ。しおさんたちの善意が店を破壊しちゃったのよ」
ポ「どういうこと?」
め「デーモン族の店で売ってるのはなに?」
ポ「えっと、本物の1億円の札束が5000円。それから、苦労しないでできるお好み焼きの素とか」
め「そうよ。デーモン族は人々に楽や得をさせることが目的なのよ」
ポ「そういえば、そーだった!」
め「でも、ポロちゃんたちは“労働オブ・ザ・リング”って番組を見て、苦労などものともしない主人公の姿に感激して、それどころか水しか飲まなかったのにお金を払ったでしょ。それがデーモン族には最大の打撃だったに違いないわ」
し「でも、ホントにオレ感動しちゃって」
ミ「僕もですよ」
め「あなたたちは、これからもおそらくデーモン族にとりいる隙を与えることはないでしょうね。ステキな人たち」

 そういって、女神さまは、しおさんとミタさんのほっぺにキスしました。

ポ「ねえ、ポロはポロは?」
め「はい、ポロちゃんもチュッ!」

 それから、しおさんとミタさんが祝杯だと言って飲み始めたのは言うまでもありません。ポロも、りんごジュースで朝まで一緒にわいわい楽しく過ごしました。


おしまい

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ミタさん、女神さまバンザーイ! shinさん、Daemonて、だえもんだえもんだーえもんだあえもんどらえもん、どらえもん。ドラえもんのことかなあ。 / ポロ ( 2004-12-16 22:38 )
どうやら、この「デーモン」のスペルはdemonではなくて、daemonらしい・・・ / shin ( 2004-12-16 00:15 )
おお!女神様からのプレゼントだ〜! / みた・そうや ( 2004-12-14 22:06 )

2004-12-13 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その1

あじさい亭繁盛記 その1


 女神さまが始めた“あじさい亭”は、地下鉄神田淡路町の近くの路地を2回曲がったところにあります。
 酔っぱらっていないと入り口が見えないので、店には酔っ払いばかりが来ます。カウンター席が8席と四人掛けのテーブルが4つだけのこじんまりとしたお店です。
 今は、まだ開店前の仕込みの時間です。

ポ「女神さま、手伝いに来たよ」
め「あら、ポロちゃん、ありがとう。さっそくだけど、仕込みを手伝って」
ポ「うん、まかせて」

 ポロが調理場に入っていくと、もうせんせいが働いていました。

ポ「わ、せんせい何してんの?」
せ「ポ、ポロこそ、なんでここにいるんだ」
ポ「せんせい、女神さまが目当てかな〜?」
せ「な、なにを言っている。いつも作曲を手伝ってもらっているから恩返しだ」
ポ「まーたまた〜」

 せんせいは料理が趣味なので、たぶん好きで来ているのだとポロは思いました。
 そこへ店のカウンターから女神さまの声が聞えてきました。

め「ポロちゃん、さっそくで悪いんだけどゴマがないの。転送室に取りに行ってくれる〜?」
ポ「はーい!」

 ポロは転送室というプレートの書かれたドアを見つけて入っていきました。
 転送室では軍服を着た、見たことのない宇宙人たちが忙しそうに働いていました。

ポ「あの〜、女神さまがゴマを持ってくるようにって・・・」
宇宙人1「アイサー! 総員に告ぐ。次の作戦だ。名づけて“ゴマ取得オペレーション3”だ。注文係は直ちに三河屋へゴマを一袋注文せよ。続いて転送機オペレータはゴマの転送受け入れに備えよ」
宇宙人2「“ゴマ取得オペレーション3”注文送信完了」
宇宙人3「転送受け入れ準備ヨーソロ!」
宇宙人1「転送受け入れ準備完了を強制割り込みモードで三河屋へ送信せよ」
宇宙人2「送信。折り返し、三河屋からの受信確認を受け取りました。すぐに転送が開始されます」
宇宙人3「転送始まりました。3、2、1・・転送完了」
宇宙人2「“ゴマ取得オペレーション3”の完了を確認しました」
宇宙人1「どうぞ、ゴマをお持ちください!」
ポ「あ、あ、アリガトございます・・・」

 ポロはゴマの袋をかついで女神さまのところに戻りました。

ポ「はい、ゴマ。なんだか見たことのない宇宙人がいっぱいいたよ」
め「そうなの。なんだか遠くの銀河の兵隊さんたちなのよ。使って欲しいって言うから雇ったんだけど、よく働いてくれるのよ」
ポ「そういえば、軍服着てたし、命令系統が軍隊式だったな」
め「じゃあ、ポロちゃんゴマを煎ってちょうだい」
ポ「うん。これってIHヒーターなの?」
め「外見は似てるけど違うわ。これはね摩擦式のヒーターなの。土鍋もOKよ」
ポ「摩擦式って、どういうの?」
め「ちょっと待ってね」


つづく

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2004-12-12 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その2

あじさい亭繁盛記 その2

 そういうと、女神さまはヒーターの脇の小窓を開けて「始めてちょうだい」と言いました。すると、シューシューとなにかが擦れるような音がしてパネルが赤熱してきました。
 ポロが小窓を開けて中を覗くと、たくさんのアルマジロが自転車をこいでいました。アルマジロの自転車のチェーンは大きなフライホイールを回して、そのフライホイールがヒーターの鉄板に触れて摩擦熱が生じるのでした。

ポ「ねえ、女神さま。あのアルマジロって、春日公園の地下でポロのサイトのカウンターを回してた連中だよ」
め「あの子たちも使って欲しいって言ってきたのよ。回すのが得意だっていうから、あの仕事を頼んだの。よく働いてくれるわ」

 ポロはアルマジロ式摩擦ヒーターでゴマを煎りました。その間に女神さまはモツの煮込みを仕込んでいました。

ポ「おいしそうだねえ」
め「もちろんよ。さて、次はパップラ丼の仕込みよ」
ポ「あ、ポロも聞いたことがある。軽めとか重めとかある?」
め「うちは軽めだけよ。だから“パップラ丼軽め”っていうメニューなの。ポロちゃん、転送室に20人分頼んできてくれる?」
ポ「うん。行ってくる」
め「活きのいいのが届くから気をつけるのよ」
ポ「うん。そうするよ」

 ポロが転送室に入っていくと、宇宙人全員が次の命令を待つという感じでポロを注目しました。

ポ「あ、あの。パップラ丼20人前お願いします」
宇宙人1「了解。活きパップラ5匹。確かに承りました。では、危険ですので室外にてお待ちください」
ポ「う、うん」

 ポロは転送室から出て、ドアの小窓から中を見ていました。

指揮官 「聞いたか?」
宇宙人たち「おー!!」
指揮官 「お前たちは銀河の猛者(もさ)か〜?」
宇宙人たち「おー!!」
指揮官 「怖いものなど何もないか〜?」
宇宙人たち「おー!!」
指揮官 「それでこそ前たちは真の勇者だ〜!」
宇宙人たち「おー!!」
指揮官 「“活きパップラ取得オペレーション5”を敢行する。全員レベル7防護服を着用せよ」
宇宙人たち「アイサー!」

 宇宙人たちは中世の騎士の甲冑のような防護服に身を固めて持ち場に着きました。

指揮官 「三河屋パップラセクションに接続」
宇宙人2「パスワード送信。接続完了」
指揮官 「よし、活きパップラ5匹を発注せよ」
宇宙人2「発注しました。本当に活きパップラであるか確認申請が来ています」
指揮官 「確認を送信せよ」
宇宙人2「送信完了。まもなく転送が開始されます」
指揮官 「・・・・・・・・」
宇宙人2「トラブル発生。三河屋パップラ発送部門で負傷者が出ました。交代要員が到着するまでお待ちくださいとのことです」
宇宙人たち「ざわざわざわ」
指揮官 「うろたえるな!」
宇宙人たち「ア、アイサー!」


つづく
 

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2004-12-11 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その3

あじさい亭繁盛記 その3

 それを聞いて、ポロもドキドキしてきました。人は、こんなにまでしてパップラ丼軽めを食べたいのでしょか。

宇宙人2「転送が始まります」
宇宙人3「受け入れ態勢よし!」
指揮官 「よし、転送を受けよ」
宇宙人3「転送が始まりました」

 転送室内に緊張がみなぎりました。間もなく転送エリアにサボテンのようなサメのような、それでいてひまわりのようでもあり、16分音符のような不思議な生き物が現れました。転送完了とともに、そいつははじけ飛んで壁という壁にガツンガツンとぶつかりました。防護服を着た宇宙人たちにも衝突し、宇宙人ははじき飛ばされました。活きパップラ5匹全部が転送を完了する頃には、転送室ははじけ飛ぶ活きパップラで修羅場と化していました。
 宇宙人たちはパップラを部屋のすみに追いつめると、1匹ずつ上手にロープでからめとりました。
 パップラは、ボンレスハムのようにロープでぐるぐる巻きにされると、観念したのか、おとなしくなりました。

指揮官 「諸君。我々はパップラに勝利したぞ!」
宇宙人たち「お〜〜〜〜〜〜!!!!」

 宇宙人がひとり、ドアの小窓のところに来て言いました。

宇宙人4「活きパップラ、転送完了しました」

 ポロは、おそるおそる活きパップラを受け取ると、ロープを引っ張って女神さまのところに戻りました。

め「あら、ポロちゃん。ご苦労さま」
ポ「これって何なの?」
め「パップラのこと?」
ポ「そだよ」
め「これはM33銀河産なんだけど、植物の種よ」
ポ「え゛〜〜、動物じゃないの?」
め「そうよ、この店は殺生はしないの。ベジタリアンだけがお客さまよ」
ポ「そーだったのか〜」

 無事に仕込みが終わる頃には、接客係の人たちも出勤してきました。なんと、おちゃめさんと甘夏さんでした。

甘「おはようございまーす!」
お「おはよう、あら、ポロじゃない」
ポ「ポロも手伝いに来たんだ」
め「甘夏さん、おちゃめさん、今日もよろしくね」

 入れ替わりに、せんせいが作曲をするために帰っていきました。

せ「女神さま、じゃあ、またよろしく」
め「こちらこそ。どうもありがとうございました」

 夕方になって女神さまが入り口に「あじさい亭」というのれんをかけると営業開始です。

ポ「誰が来るのかな?」
め「誰が来るかなんて分からないわ。おいでになったお客様に対してベストを尽くすだけよ」

 少しすると引き戸が開いてお客様がやってきました。
 それは、しおさんとミタさんでした。それにshinさんもいました。


つづく

先頭 表紙

2004-12-10 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その4

あじさい亭繁盛記 その4


甘「いらっしゃいませ〜!」

 しおさんたちは常連ぽく、カウンターに席を取りました。

し「女将。久米仙ちょーだい!」
め「はい、かしこまりました」
ミ「ボクはレギュラス錦を冷やで」
め「あ、今日はデネボラ正宗になってしまうんですけど、いいですか?」
ミ「わ。珍しい。そのほうがいいですよ! ラッキーだな〜」
ポ「ねえ、女神さまデネボラなんとかってなあに?」
め「獅子座酒造組合が作ってる限定品なの。午前中にM66銀河から転送してもらったの」
S「あ゛〜〜! パップラ丼軽めがあるぢゃないですか〜。それください!」
め「まあ、最初からご飯物ですね」
S「子どもの頃から食べてみたかったんですよ」
ポ「ねえ、女神さま。ポロもお客さんになっていい?」
め「いいわよ」
ポ「わ〜い。ポロもパップラ丼軽めね〜」
め「はいはい」

 ポロはミタさんからデネボラ正宗を分けてもらって飲んでみました。てやんで〜! せんせいがこわくて酒が飲めるかってんだ〜! べらんめえ!

ポ「ひーっく。ポロがしんみに忠告したのに女神さまったら、とうとう“あじさい亭”にしちゃうんだから、も〜!」
め「どうしていけないのよ、ポロちゃん。あたし、あじさいが好きなのよ」
し「ままま。ポロちゃん、女神のおかみが言ってんだからいいじゃない」
ミ「名前じゃないっすよ。ね、味さいこうっス!」
し「みかんちゃんは、やっぱりピアニストになっちゃうんですかね〜、ど〜れすか?」
ポ「しおさん、まだせんせいの一番弟子の座を狙ってるの?」
し「あったり前れす。音楽こそわが人生! かんぱ〜い!」
め「ミタさん、しおさんのことちゃんとタクシーに乗せてあげてね」
ミ「女神さまの言いつけとあらば、このミタ、なんでもいたしますです〜」
め「あらあらミタさんまで。ポロちゃん、あなただけが頼りみたいだわ」
ポ「うん。ダイじょぶ。しおさんもミタさんもちゃんとタクシーに乗せるよ」
め「ねえ、ポロちゃん。みんじんって知ってる?」
ポ「なにそれ」
め「ううん。知らないんならいいのよ」
ポ「ねえ、ポロさ、今デジャヴ現象を感じてるんだけど」
S「僕は、初めてですよ、この風景」
ミ「う〜ん。実はボクも初めてじゃない気がしてるんですよ」
し「俺は毎日デジャヴだな。朝起きると、毎日同じだ〜」
め「実を言うとね、あたしも4回目なのよ」
ポ「へ〜、やっぱりそうか〜」
め「ポロちゃん、キーボードのNとMは隣同士だから打つときは慎重にね。そのたびに世界を元に戻すの大変なのよ」
ポ「何のことだかさっぱり分からないけど、そうするよ」

 こうして“あじさい亭の”夜は更けていくのでした。


おしまい


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ポロのひみつの部屋

先頭 表紙

ふふふ。ポロが4回キータッチのミスをしただけさ。みんなで“味最低”じゃなくて“あじさい亭”に行ってパップラ丼軽めを食べよう! / ポロ ( 2004-12-09 14:48 )
まさか、4回も「みんじん」で世界が変わっていたとは・・・。そっちのほうに驚きました。 / ねこ5号 ( 2004-12-08 01:23 )
そうかぁ…デジャブかぁ…なんか聞いた事があるセリフだと思ったら… / みた・そうや ( 2004-12-07 09:04 )
パップラ丼の裏ではスゴイ事が起きているらしい… ちなみに「軽め」の場合は、ねぎダク、汁ダクダクくらいが丁度いいらしいです。「♪噂ぁによればぁ、パァ〜ップラ丼軽めというものはぁ〜…」 / shin ( 2004-12-07 02:13 )

2004-12-09 ポロの日記 2004年12月5日(風曜日)公然のひみつ その1

公然のひみつ その1


たろ「ポロ」
ポロ「なあに、たろちゃん」
た「しゃべる猫がいるの、うちだけだろうね」
ポ「うれしい?」
た「もちろん」
ポ「そう。よかった」
た「だれだって猫と話してみたいと思うよ」
ポ「実はね、地球の猫の9割はしゃべるんだ」
た「うっそ〜!」
ポ「ホントだよ。6000年前に猫の星からやってきたオリンピア1号の乗組員の血を引いた猫はしゃべれるんだ」※注:お話の部屋のさいしょのほうの「猫の星、冬の星」を見てね。
た「だって、そんなの見たことないよ」
ポ「ポロがしゃべってるところだって、作曲工房関係者以外は誰も見たことないよ」
た「やっぱり信じられないよ」
ポ「猫の星の血を引いているのに、人を警戒してぜんぜんしゃべらない猫もいるよ。でも、大抵は一緒に暮らしている家族とはしゃべるんだ」
た「じゃあ、どうしてみんなそのことを黙ってるの?」
ポ「たろちゃんはどうして黙ってるの?」
た「それは、ポロは特別だから」
ポ「みんなそう思ってるよ」
た「そっか〜」
ポ「バレたらテレビに出られるかも知れないけど、売ってくれ〜、とか誘拐されちゃうとかあるかも知れないし」
た「ふ〜ん、なるほど〜。じゃあ、猫がしゃべるのを知らない人は地球産の純血ねこを飼っているか、ねこが警戒してしゃべってくれないかのどっちかなんだね」
ポ「そだよ」
た「世界には猫としゃべってる人とそうじゃない人がいるんだね」
ポ「うん。猫としゃべってる人にとっては公然のひみつっていうやつだよ」
た「そんなことがあったのか〜。楽しいね。公然のひみつ。でも、どうしてバレないんだろう」


つづく

先頭 表紙

2004-12-08 ポロの日記 2004年12月5日(風曜日)公然のひみつ その2

公然のひみつ その2


ポ「それはね、原価とか仕入れ値みたいなもんだと思うな」
た「どういうこと?」
ポ「お店ってさ、仕入れる値段と売る値段が違うから儲かるんだよね。お店に行くと売値は書いてあるけど、仕入れ値は書いてないよ」
た「ホント、そういえば仕入れ値なんて知らないや」
ポ「小売業の人は誰もが仕入れ値を知ってるよね。人数にしたら人口の何割も。こんなにたくさんの人がいてもバレないことってあるんだ」
た「そうか。世界は卸値や原価を知ってる人と知らない人に分かれてるんだ!」
ポ「そだよ」
た「ほかにも公然のひみつってあるのかな」
ポ「あると思うな。ポロは世界は公然のひみつとそうじゃないことの2つで出来てると思うな」
た「公然のひみつのほうが多いかもね」
ポ「世の中には、それに全然気がつかない人と、気がつかないうちに公然のひみつをいっぱい抱えている人でできてるんだ」
た「あたし、全然気がつかない人かも!」
ポ「違うと思うな。たろちゃんは、自分自身がいっぱい抱えてる公然のひみつに気がついてないタイプだと思うな」
た「じゃ、公然のひみつがない人ってどういう人?」
ポ「せんせいだよ、せんせい。そういうセンスがないの。モーツァルトもそうだったんじゃないかなあ。だからポロは、せんせいは商売には向かないと思うな」
た「そっか。とむりんて、そんな気がするね」
ポ「安全パイとも言うな」
た「なにそれ?」
ポ「いいのいいの。ミタさんが教えてくれたの」
た「あの、ポロといっしょにへんな乗り物で空から降ってきた人?」
ポ「そうそう」
た「あたし、ほかの猫とも話してみよっと」
ポ「うん。きっと話してくれる猫がいると思うな」
た「去年くらいまでポロってペットだったのに、なんだか今はポロにいろいろ教えてもらってるね」
ポ「猫の1年はさ、人間よりも早いんだよ。だから、ポロ、いつのまにか成長しちゃったんだよ。せんせいにもいろいろ習ったし」
た「ふ〜ん。あたし、ポロに追い抜かれちゃったのか〜。へんな感じ〜」
ポ「ポロは、ポロだからさ、気にしないでよ、今までどおりだから」
た「うん、そういうことにしとくね」


おしまい


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ポロのひみつの部屋

先頭 表紙

ミタさん。今度ね「おまえがしゃべれるのは知ってるんだぜ」って言って話しかけてみてよ。もしかしたら観念してしゃべってくれるかも。 / ポロ ( 2004-12-09 14:51 )
そっかぁ…実家のネコどもも喋るのかなぁ?でも、赤ん坊の内にお母ちゃんが居なくなったから言葉を教えて貰ってないのかな? / みた・そうや ( 2004-12-05 17:22 )

2004-12-07 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その1

みんじん世界の逆襲 その1


 ポロは掲示板に「にんじん」と書こうとして、間違えて「みんじん」と書いてしまいました。すると、本当に「みんじん」という言葉が意味を持って、歴史は過去の全てを書き換えてしまったのです。



第1章

「あ、ポロ君」
「なんですか、部長」
「ベネズエラまでみんじんの買い付けに行って欲しいんだが」
「はい、行って参ります」
「とくに、今回の狙いは現地で“白髭”と呼ばれるものだ。買えるだけ買ってきてくれたまえ。ミタ君が同行する」
「はい!」

 ミタ主任は係長のポロを動物検疫所に連れて行き、ベネズエラ行きの貨物機に乗せる手はずを整えると言った。

「係長。貨物機なんぞに乗っていただくのは本当に心苦しいのですが・・・」
「いいんだよミタ君。猫にとっては、これも規則だ。それより、白髭みんじんについて、判るかぎり詳しく限り調べておいて欲しい。頼んだぞ」
「はい、係長」

 ミタは一礼して動物検疫所を去った。

 数日後、羽田第2空港を飛び立った貨物便のとなりには手長ザルがいたものの、なんのトラブルもなく、目的地のベネズエラに到着した。到着後の検疫が済むと、ミタが迎えに来た。

「やあ、ミタ君ありがとう」
「係長、お疲れではないですか」
「大丈夫だ。すぐに高地へ向かおう」

ポロとミタはレンタカーでベネズエラの山地に向かった。
山道を走ること20時間、クルマはひなびた村に到着した。

「ポロ係長、実はよからぬ噂を聞きました」
「どんなことだ。実は、さきほど給油したガソリンスタンドのレストランでなんですが、白髭っていうのは普通の“みんじん”のことではなくて、どうも違法な植物らしいんですよ」
「どういうことだ?」
「なんでも数年前に隕石が山奥の村に落下して、その隕石孔の周囲にあった“みんじん”が突然変異を起こしたらしいんです。引き抜くと大きな叫び声をあげて、その声を聞いたものは精神にダメージを受けるという噂です」
「それじゃ、まるでマンドラゴラじゃないか」
「まさにそうなんですが、効果は麻薬によく似ているとか」
「塩沢部長はそれを知っているのだろうか」
「どうしますか」
「我々は企業人だ。とにかく命令に従おう」

 はじめのうち、現地の人々は問題の“みんじん”について知らぬ存ぜぬという態度をとっていたが“本当のみんじん”と“神かけて本当のみんじん”という隠語を突き止めて、ついに村の“みんじんネゴシエイター”に会うことができた。

「お前たちは“神かけて本当のみんじん”が欲しいのか?」

 そうだと答えそうになったミタを制してポロが言った。

「我々は本当のことが知りたいだけだ」
「・・・・・・・・・・・」

 ネゴシエイターは、すべての白髭みんじん自生地への自由な立ち入りを許可した。ただし白髭みんじんの収穫は自分たちでやらなければならないという条件つきだった。

 白髭みんじんの自生地は砂漠の中にあった。UFOの墜落現場にも見える小規模なクレーターの周囲をぐるりと取り囲むように“神かけて本当のみんじん”である白髭みんじんが生えていた。
 ミタが、一株をそっと引き抜こうとすると、複雑に繁った白い根が土に絡まってなかなか抜けなかった。

「ミタ君、マンドラゴラだとまずい。やたら抜かないほうがいい」
「ええ、害のない程度に声を聞いてみたいものです」

 そう言うと、ミタは手に力を込めた。白髭みんじんは、あっけないほど簡単に抜け、周囲に黒板を掻きむしったような高周波の悲鳴が響き渡った。


つづく

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