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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-12-13 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その1
2004-12-12 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その2
2004-12-11 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その3
2004-12-10 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その4
2004-12-09 ポロの日記 2004年12月5日(風曜日)公然のひみつ その1
2004-12-08 ポロの日記 2004年12月5日(風曜日)公然のひみつ その2
2004-12-07 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その1
2004-12-06 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その2
2004-12-05 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その3
2004-12-04 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その4


2004-12-13 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その1

あじさい亭繁盛記 その1


 女神さまが始めた“あじさい亭”は、地下鉄神田淡路町の近くの路地を2回曲がったところにあります。
 酔っぱらっていないと入り口が見えないので、店には酔っ払いばかりが来ます。カウンター席が8席と四人掛けのテーブルが4つだけのこじんまりとしたお店です。
 今は、まだ開店前の仕込みの時間です。

ポ「女神さま、手伝いに来たよ」
め「あら、ポロちゃん、ありがとう。さっそくだけど、仕込みを手伝って」
ポ「うん、まかせて」

 ポロが調理場に入っていくと、もうせんせいが働いていました。

ポ「わ、せんせい何してんの?」
せ「ポ、ポロこそ、なんでここにいるんだ」
ポ「せんせい、女神さまが目当てかな〜?」
せ「な、なにを言っている。いつも作曲を手伝ってもらっているから恩返しだ」
ポ「まーたまた〜」

 せんせいは料理が趣味なので、たぶん好きで来ているのだとポロは思いました。
 そこへ店のカウンターから女神さまの声が聞えてきました。

め「ポロちゃん、さっそくで悪いんだけどゴマがないの。転送室に取りに行ってくれる〜?」
ポ「はーい!」

 ポロは転送室というプレートの書かれたドアを見つけて入っていきました。
 転送室では軍服を着た、見たことのない宇宙人たちが忙しそうに働いていました。

ポ「あの〜、女神さまがゴマを持ってくるようにって・・・」
宇宙人1「アイサー! 総員に告ぐ。次の作戦だ。名づけて“ゴマ取得オペレーション3”だ。注文係は直ちに三河屋へゴマを一袋注文せよ。続いて転送機オペレータはゴマの転送受け入れに備えよ」
宇宙人2「“ゴマ取得オペレーション3”注文送信完了」
宇宙人3「転送受け入れ準備ヨーソロ!」
宇宙人1「転送受け入れ準備完了を強制割り込みモードで三河屋へ送信せよ」
宇宙人2「送信。折り返し、三河屋からの受信確認を受け取りました。すぐに転送が開始されます」
宇宙人3「転送始まりました。3、2、1・・転送完了」
宇宙人2「“ゴマ取得オペレーション3”の完了を確認しました」
宇宙人1「どうぞ、ゴマをお持ちください!」
ポ「あ、あ、アリガトございます・・・」

 ポロはゴマの袋をかついで女神さまのところに戻りました。

ポ「はい、ゴマ。なんだか見たことのない宇宙人がいっぱいいたよ」
め「そうなの。なんだか遠くの銀河の兵隊さんたちなのよ。使って欲しいって言うから雇ったんだけど、よく働いてくれるのよ」
ポ「そういえば、軍服着てたし、命令系統が軍隊式だったな」
め「じゃあ、ポロちゃんゴマを煎ってちょうだい」
ポ「うん。これってIHヒーターなの?」
め「外見は似てるけど違うわ。これはね摩擦式のヒーターなの。土鍋もOKよ」
ポ「摩擦式って、どういうの?」
め「ちょっと待ってね」


つづく

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2004-12-12 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その2

あじさい亭繁盛記 その2

 そういうと、女神さまはヒーターの脇の小窓を開けて「始めてちょうだい」と言いました。すると、シューシューとなにかが擦れるような音がしてパネルが赤熱してきました。
 ポロが小窓を開けて中を覗くと、たくさんのアルマジロが自転車をこいでいました。アルマジロの自転車のチェーンは大きなフライホイールを回して、そのフライホイールがヒーターの鉄板に触れて摩擦熱が生じるのでした。

ポ「ねえ、女神さま。あのアルマジロって、春日公園の地下でポロのサイトのカウンターを回してた連中だよ」
め「あの子たちも使って欲しいって言ってきたのよ。回すのが得意だっていうから、あの仕事を頼んだの。よく働いてくれるわ」

 ポロはアルマジロ式摩擦ヒーターでゴマを煎りました。その間に女神さまはモツの煮込みを仕込んでいました。

ポ「おいしそうだねえ」
め「もちろんよ。さて、次はパップラ丼の仕込みよ」
ポ「あ、ポロも聞いたことがある。軽めとか重めとかある?」
め「うちは軽めだけよ。だから“パップラ丼軽め”っていうメニューなの。ポロちゃん、転送室に20人分頼んできてくれる?」
ポ「うん。行ってくる」
め「活きのいいのが届くから気をつけるのよ」
ポ「うん。そうするよ」

 ポロが転送室に入っていくと、宇宙人全員が次の命令を待つという感じでポロを注目しました。

ポ「あ、あの。パップラ丼20人前お願いします」
宇宙人1「了解。活きパップラ5匹。確かに承りました。では、危険ですので室外にてお待ちください」
ポ「う、うん」

 ポロは転送室から出て、ドアの小窓から中を見ていました。

指揮官 「聞いたか?」
宇宙人たち「おー!!」
指揮官 「お前たちは銀河の猛者(もさ)か〜?」
宇宙人たち「おー!!」
指揮官 「怖いものなど何もないか〜?」
宇宙人たち「おー!!」
指揮官 「それでこそ前たちは真の勇者だ〜!」
宇宙人たち「おー!!」
指揮官 「“活きパップラ取得オペレーション5”を敢行する。全員レベル7防護服を着用せよ」
宇宙人たち「アイサー!」

 宇宙人たちは中世の騎士の甲冑のような防護服に身を固めて持ち場に着きました。

指揮官 「三河屋パップラセクションに接続」
宇宙人2「パスワード送信。接続完了」
指揮官 「よし、活きパップラ5匹を発注せよ」
宇宙人2「発注しました。本当に活きパップラであるか確認申請が来ています」
指揮官 「確認を送信せよ」
宇宙人2「送信完了。まもなく転送が開始されます」
指揮官 「・・・・・・・・」
宇宙人2「トラブル発生。三河屋パップラ発送部門で負傷者が出ました。交代要員が到着するまでお待ちくださいとのことです」
宇宙人たち「ざわざわざわ」
指揮官 「うろたえるな!」
宇宙人たち「ア、アイサー!」


つづく
 

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2004-12-11 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その3

あじさい亭繁盛記 その3

 それを聞いて、ポロもドキドキしてきました。人は、こんなにまでしてパップラ丼軽めを食べたいのでしょか。

宇宙人2「転送が始まります」
宇宙人3「受け入れ態勢よし!」
指揮官 「よし、転送を受けよ」
宇宙人3「転送が始まりました」

 転送室内に緊張がみなぎりました。間もなく転送エリアにサボテンのようなサメのような、それでいてひまわりのようでもあり、16分音符のような不思議な生き物が現れました。転送完了とともに、そいつははじけ飛んで壁という壁にガツンガツンとぶつかりました。防護服を着た宇宙人たちにも衝突し、宇宙人ははじき飛ばされました。活きパップラ5匹全部が転送を完了する頃には、転送室ははじけ飛ぶ活きパップラで修羅場と化していました。
 宇宙人たちはパップラを部屋のすみに追いつめると、1匹ずつ上手にロープでからめとりました。
 パップラは、ボンレスハムのようにロープでぐるぐる巻きにされると、観念したのか、おとなしくなりました。

指揮官 「諸君。我々はパップラに勝利したぞ!」
宇宙人たち「お〜〜〜〜〜〜!!!!」

 宇宙人がひとり、ドアの小窓のところに来て言いました。

宇宙人4「活きパップラ、転送完了しました」

 ポロは、おそるおそる活きパップラを受け取ると、ロープを引っ張って女神さまのところに戻りました。

め「あら、ポロちゃん。ご苦労さま」
ポ「これって何なの?」
め「パップラのこと?」
ポ「そだよ」
め「これはM33銀河産なんだけど、植物の種よ」
ポ「え゛〜〜、動物じゃないの?」
め「そうよ、この店は殺生はしないの。ベジタリアンだけがお客さまよ」
ポ「そーだったのか〜」

 無事に仕込みが終わる頃には、接客係の人たちも出勤してきました。なんと、おちゃめさんと甘夏さんでした。

甘「おはようございまーす!」
お「おはよう、あら、ポロじゃない」
ポ「ポロも手伝いに来たんだ」
め「甘夏さん、おちゃめさん、今日もよろしくね」

 入れ替わりに、せんせいが作曲をするために帰っていきました。

せ「女神さま、じゃあ、またよろしく」
め「こちらこそ。どうもありがとうございました」

 夕方になって女神さまが入り口に「あじさい亭」というのれんをかけると営業開始です。

ポ「誰が来るのかな?」
め「誰が来るかなんて分からないわ。おいでになったお客様に対してベストを尽くすだけよ」

 少しすると引き戸が開いてお客様がやってきました。
 それは、しおさんとミタさんでした。それにshinさんもいました。


つづく

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2004-12-10 ポロの日記 2004年12月08日(波曜日)あじさい亭繁盛記 その4

あじさい亭繁盛記 その4


甘「いらっしゃいませ〜!」

 しおさんたちは常連ぽく、カウンターに席を取りました。

し「女将。久米仙ちょーだい!」
め「はい、かしこまりました」
ミ「ボクはレギュラス錦を冷やで」
め「あ、今日はデネボラ正宗になってしまうんですけど、いいですか?」
ミ「わ。珍しい。そのほうがいいですよ! ラッキーだな〜」
ポ「ねえ、女神さまデネボラなんとかってなあに?」
め「獅子座酒造組合が作ってる限定品なの。午前中にM66銀河から転送してもらったの」
S「あ゛〜〜! パップラ丼軽めがあるぢゃないですか〜。それください!」
め「まあ、最初からご飯物ですね」
S「子どもの頃から食べてみたかったんですよ」
ポ「ねえ、女神さま。ポロもお客さんになっていい?」
め「いいわよ」
ポ「わ〜い。ポロもパップラ丼軽めね〜」
め「はいはい」

 ポロはミタさんからデネボラ正宗を分けてもらって飲んでみました。てやんで〜! せんせいがこわくて酒が飲めるかってんだ〜! べらんめえ!

ポ「ひーっく。ポロがしんみに忠告したのに女神さまったら、とうとう“あじさい亭”にしちゃうんだから、も〜!」
め「どうしていけないのよ、ポロちゃん。あたし、あじさいが好きなのよ」
し「ままま。ポロちゃん、女神のおかみが言ってんだからいいじゃない」
ミ「名前じゃないっすよ。ね、味さいこうっス!」
し「みかんちゃんは、やっぱりピアニストになっちゃうんですかね〜、ど〜れすか?」
ポ「しおさん、まだせんせいの一番弟子の座を狙ってるの?」
し「あったり前れす。音楽こそわが人生! かんぱ〜い!」
め「ミタさん、しおさんのことちゃんとタクシーに乗せてあげてね」
ミ「女神さまの言いつけとあらば、このミタ、なんでもいたしますです〜」
め「あらあらミタさんまで。ポロちゃん、あなただけが頼りみたいだわ」
ポ「うん。ダイじょぶ。しおさんもミタさんもちゃんとタクシーに乗せるよ」
め「ねえ、ポロちゃん。みんじんって知ってる?」
ポ「なにそれ」
め「ううん。知らないんならいいのよ」
ポ「ねえ、ポロさ、今デジャヴ現象を感じてるんだけど」
S「僕は、初めてですよ、この風景」
ミ「う〜ん。実はボクも初めてじゃない気がしてるんですよ」
し「俺は毎日デジャヴだな。朝起きると、毎日同じだ〜」
め「実を言うとね、あたしも4回目なのよ」
ポ「へ〜、やっぱりそうか〜」
め「ポロちゃん、キーボードのNとMは隣同士だから打つときは慎重にね。そのたびに世界を元に戻すの大変なのよ」
ポ「何のことだかさっぱり分からないけど、そうするよ」

 こうして“あじさい亭の”夜は更けていくのでした。


おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

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ポロの掲示板はここ。
ポロのひみつの部屋

先頭 表紙

ふふふ。ポロが4回キータッチのミスをしただけさ。みんなで“味最低”じゃなくて“あじさい亭”に行ってパップラ丼軽めを食べよう! / ポロ ( 2004-12-09 14:48 )
まさか、4回も「みんじん」で世界が変わっていたとは・・・。そっちのほうに驚きました。 / ねこ5号 ( 2004-12-08 01:23 )
そうかぁ…デジャブかぁ…なんか聞いた事があるセリフだと思ったら… / みた・そうや ( 2004-12-07 09:04 )
パップラ丼の裏ではスゴイ事が起きているらしい… ちなみに「軽め」の場合は、ねぎダク、汁ダクダクくらいが丁度いいらしいです。「♪噂ぁによればぁ、パァ〜ップラ丼軽めというものはぁ〜…」 / shin ( 2004-12-07 02:13 )

2004-12-09 ポロの日記 2004年12月5日(風曜日)公然のひみつ その1

公然のひみつ その1


たろ「ポロ」
ポロ「なあに、たろちゃん」
た「しゃべる猫がいるの、うちだけだろうね」
ポ「うれしい?」
た「もちろん」
ポ「そう。よかった」
た「だれだって猫と話してみたいと思うよ」
ポ「実はね、地球の猫の9割はしゃべるんだ」
た「うっそ〜!」
ポ「ホントだよ。6000年前に猫の星からやってきたオリンピア1号の乗組員の血を引いた猫はしゃべれるんだ」※注:お話の部屋のさいしょのほうの「猫の星、冬の星」を見てね。
た「だって、そんなの見たことないよ」
ポ「ポロがしゃべってるところだって、作曲工房関係者以外は誰も見たことないよ」
た「やっぱり信じられないよ」
ポ「猫の星の血を引いているのに、人を警戒してぜんぜんしゃべらない猫もいるよ。でも、大抵は一緒に暮らしている家族とはしゃべるんだ」
た「じゃあ、どうしてみんなそのことを黙ってるの?」
ポ「たろちゃんはどうして黙ってるの?」
た「それは、ポロは特別だから」
ポ「みんなそう思ってるよ」
た「そっか〜」
ポ「バレたらテレビに出られるかも知れないけど、売ってくれ〜、とか誘拐されちゃうとかあるかも知れないし」
た「ふ〜ん、なるほど〜。じゃあ、猫がしゃべるのを知らない人は地球産の純血ねこを飼っているか、ねこが警戒してしゃべってくれないかのどっちかなんだね」
ポ「そだよ」
た「世界には猫としゃべってる人とそうじゃない人がいるんだね」
ポ「うん。猫としゃべってる人にとっては公然のひみつっていうやつだよ」
た「そんなことがあったのか〜。楽しいね。公然のひみつ。でも、どうしてバレないんだろう」


つづく

先頭 表紙

2004-12-08 ポロの日記 2004年12月5日(風曜日)公然のひみつ その2

公然のひみつ その2


ポ「それはね、原価とか仕入れ値みたいなもんだと思うな」
た「どういうこと?」
ポ「お店ってさ、仕入れる値段と売る値段が違うから儲かるんだよね。お店に行くと売値は書いてあるけど、仕入れ値は書いてないよ」
た「ホント、そういえば仕入れ値なんて知らないや」
ポ「小売業の人は誰もが仕入れ値を知ってるよね。人数にしたら人口の何割も。こんなにたくさんの人がいてもバレないことってあるんだ」
た「そうか。世界は卸値や原価を知ってる人と知らない人に分かれてるんだ!」
ポ「そだよ」
た「ほかにも公然のひみつってあるのかな」
ポ「あると思うな。ポロは世界は公然のひみつとそうじゃないことの2つで出来てると思うな」
た「公然のひみつのほうが多いかもね」
ポ「世の中には、それに全然気がつかない人と、気がつかないうちに公然のひみつをいっぱい抱えている人でできてるんだ」
た「あたし、全然気がつかない人かも!」
ポ「違うと思うな。たろちゃんは、自分自身がいっぱい抱えてる公然のひみつに気がついてないタイプだと思うな」
た「じゃ、公然のひみつがない人ってどういう人?」
ポ「せんせいだよ、せんせい。そういうセンスがないの。モーツァルトもそうだったんじゃないかなあ。だからポロは、せんせいは商売には向かないと思うな」
た「そっか。とむりんて、そんな気がするね」
ポ「安全パイとも言うな」
た「なにそれ?」
ポ「いいのいいの。ミタさんが教えてくれたの」
た「あの、ポロといっしょにへんな乗り物で空から降ってきた人?」
ポ「そうそう」
た「あたし、ほかの猫とも話してみよっと」
ポ「うん。きっと話してくれる猫がいると思うな」
た「去年くらいまでポロってペットだったのに、なんだか今はポロにいろいろ教えてもらってるね」
ポ「猫の1年はさ、人間よりも早いんだよ。だから、ポロ、いつのまにか成長しちゃったんだよ。せんせいにもいろいろ習ったし」
た「ふ〜ん。あたし、ポロに追い抜かれちゃったのか〜。へんな感じ〜」
ポ「ポロは、ポロだからさ、気にしないでよ、今までどおりだから」
た「うん、そういうことにしとくね」


おしまい


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ポロのひみつの部屋

先頭 表紙

ミタさん。今度ね「おまえがしゃべれるのは知ってるんだぜ」って言って話しかけてみてよ。もしかしたら観念してしゃべってくれるかも。 / ポロ ( 2004-12-09 14:51 )
そっかぁ…実家のネコどもも喋るのかなぁ?でも、赤ん坊の内にお母ちゃんが居なくなったから言葉を教えて貰ってないのかな? / みた・そうや ( 2004-12-05 17:22 )

2004-12-07 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その1

みんじん世界の逆襲 その1


 ポロは掲示板に「にんじん」と書こうとして、間違えて「みんじん」と書いてしまいました。すると、本当に「みんじん」という言葉が意味を持って、歴史は過去の全てを書き換えてしまったのです。



第1章

「あ、ポロ君」
「なんですか、部長」
「ベネズエラまでみんじんの買い付けに行って欲しいんだが」
「はい、行って参ります」
「とくに、今回の狙いは現地で“白髭”と呼ばれるものだ。買えるだけ買ってきてくれたまえ。ミタ君が同行する」
「はい!」

 ミタ主任は係長のポロを動物検疫所に連れて行き、ベネズエラ行きの貨物機に乗せる手はずを整えると言った。

「係長。貨物機なんぞに乗っていただくのは本当に心苦しいのですが・・・」
「いいんだよミタ君。猫にとっては、これも規則だ。それより、白髭みんじんについて、判るかぎり詳しく限り調べておいて欲しい。頼んだぞ」
「はい、係長」

 ミタは一礼して動物検疫所を去った。

 数日後、羽田第2空港を飛び立った貨物便のとなりには手長ザルがいたものの、なんのトラブルもなく、目的地のベネズエラに到着した。到着後の検疫が済むと、ミタが迎えに来た。

「やあ、ミタ君ありがとう」
「係長、お疲れではないですか」
「大丈夫だ。すぐに高地へ向かおう」

ポロとミタはレンタカーでベネズエラの山地に向かった。
山道を走ること20時間、クルマはひなびた村に到着した。

「ポロ係長、実はよからぬ噂を聞きました」
「どんなことだ。実は、さきほど給油したガソリンスタンドのレストランでなんですが、白髭っていうのは普通の“みんじん”のことではなくて、どうも違法な植物らしいんですよ」
「どういうことだ?」
「なんでも数年前に隕石が山奥の村に落下して、その隕石孔の周囲にあった“みんじん”が突然変異を起こしたらしいんです。引き抜くと大きな叫び声をあげて、その声を聞いたものは精神にダメージを受けるという噂です」
「それじゃ、まるでマンドラゴラじゃないか」
「まさにそうなんですが、効果は麻薬によく似ているとか」
「塩沢部長はそれを知っているのだろうか」
「どうしますか」
「我々は企業人だ。とにかく命令に従おう」

 はじめのうち、現地の人々は問題の“みんじん”について知らぬ存ぜぬという態度をとっていたが“本当のみんじん”と“神かけて本当のみんじん”という隠語を突き止めて、ついに村の“みんじんネゴシエイター”に会うことができた。

「お前たちは“神かけて本当のみんじん”が欲しいのか?」

 そうだと答えそうになったミタを制してポロが言った。

「我々は本当のことが知りたいだけだ」
「・・・・・・・・・・・」

 ネゴシエイターは、すべての白髭みんじん自生地への自由な立ち入りを許可した。ただし白髭みんじんの収穫は自分たちでやらなければならないという条件つきだった。

 白髭みんじんの自生地は砂漠の中にあった。UFOの墜落現場にも見える小規模なクレーターの周囲をぐるりと取り囲むように“神かけて本当のみんじん”である白髭みんじんが生えていた。
 ミタが、一株をそっと引き抜こうとすると、複雑に繁った白い根が土に絡まってなかなか抜けなかった。

「ミタ君、マンドラゴラだとまずい。やたら抜かないほうがいい」
「ええ、害のない程度に声を聞いてみたいものです」

 そう言うと、ミタは手に力を込めた。白髭みんじんは、あっけないほど簡単に抜け、周囲に黒板を掻きむしったような高周波の悲鳴が響き渡った。


つづく

先頭 表紙

2004-12-06 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その2

みんじん世界の逆襲 その2


 ポロは、すぐに両耳を塞いだが、両手でみんじんを握っていたミタは遅れた。すると、ミタは大声で笑いながら地平線に向かって走り去った。
ポロは、すぐにクルマにもどって後を追ったが、車道からはずれて走り去ったミタを見つけることはできなかった。ミタは、そのまま行方知らずとなってしまった。ポロは白髭みんじんの収穫をあきらめて日本に戻った。


第2章

 どうやら、そいつは“みんじん”と呼ばれているらしかった。そいつを探しだして依頼主に居場所を知らせれば10万クレジットの報酬だ。
 “みんじん”は指名手配されている犯罪者だ。しかし、依頼者は警察とは関係ないらしい。今朝、メールで照会があった。すぐにOKしたが、とにかく本物の指名手配犯を探して欲しいという以来は、俺の探偵稼業で初めてのことだ。
 自己紹介が遅れたが、俺は猫の私立探偵ポロ。ポアロじゃないぜ、間違えないでくれ。ずっと昔、もう誰だか忘れちまったが、とにかく売れない作曲家の助手をしていたこともあった。だが、そんな稼業に見切りをつけて、隠密行動が得意で人から怪しまれない猫の特徴を生かして私立探偵を開業した。今回の依頼主もその能力に期待しているのだろう。
 俺に与えられた情報は、いくつかある。その中で一番俺の気を引いたのは“みんじん”が新進気鋭のピアニストである“王連寺みかん”のファンであるということだ。オレンジ・みかんか・・・。どうせ芸名だろうが,まったくもって“骨ボーン”とか“お魚フィッシュ”みたいな名前だぜ。俺はさっそく足立区にあるタイガージェット・シンフォニー・ホールで行われるコンサートへ向かった。上手に忍び込めば猫はタダだ。“みんじん”も、ここに来ている可能性は高い。
 ステージでは、まだ前座のプロレスの試合が行われていた。最近のクラシックコンサートも、ずいぶんくだけたものだ。
 俺は舞台袖に潜んで客席に目を凝らした。猫は人よりも夜目が利く。ターゲットはまだ会場には現れていないようだ。インド人レスラーが勝ち名乗りをあげて試合が終わり、プロレスのリングが撤収されると、ピアノが運ばれてきた。ピアノの客席側のリム(側板)には愛媛県のみかん生産者組合の広告がデカデカと書かれていた。世の中変わったものだ。準備が終わると会場はコンサート会場らしくなり、俺のすぐわきを黒縁メガネの王連路みかんがステージに向かって歩いていった。
 盛大な拍手とともに始まったのは謎の作曲家トーマス・リンドバーグ作曲のバラードだった。おお、この曲には聴き覚えがある。そうだ、このフレーズ、このテンポ。そうだそうだ、この和音は解決しないんだ。いやいや、こんなことに心を奪われていてはいけない。俺の仕事は“みんじん”を探すことだ。情報によると“みんじん”は、いつもグッと来るような女を両脇に連れているということだ。いた。2階席の中央だ。なんだか、気が弱そうで善良そうな男に見えるが、あいつに間違いない。俺は携帯から依頼主にメールした。返事が来るまでに数分というところだろう。その間、俺は王錬寺みかんの演奏に耳を傾けた。
 次の曲も、やはりトーマス・リンドバーグのピアノ・ソナタだった。身体がしびれるような名曲だ。“みんじん”と呼ばれる、その初老の男も身をよじらせて、もだえ聴いていた。まったくだ。たまらないぜ、トーマス・リンドバーグ。
 そこに予期せぬ出来事が起こった。なんと警察が張り込んでいたのだ。おれは、とっさに“みんじん”のところへ駆けつけ、やつを抜け道へと誘導していた。


つづく

先頭 表紙

2004-12-05 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その3

みんじん世界の逆襲 その3


第3章

 テレビニュースの若い女性アナウンサーが、今、開催中の古代エジプト展からミイラが盗まれたと言っていた。ミイラなど盗んだところで金になるのだろうか。
私はモグリの獣医ポロ。正体が猫なので正規の免許をとれないから仕方ない。裏の世界では「ホワイト・ジャック」と呼ばれている。裏稼業の猫や犬たちがクランケだ。だが今日はヒマだ。もうすぐ診療も終わる時刻だ。今夜は、とうとう誰も患者が来なかった。
 そこへ、表玄関のドアが開いたような音がした。少したって診察室に入ってきたのは、全身包帯を巻いた男(?)だった。たいへんな重症患者かも知れない。

「おい、だいじょうぶか?」

 そう話しかけると、男はひとこと“みんじん”と呟いて崩れ落ちた。
 なんだ、これはエジプト展から盗まれたはずのミイラじゃないのか? 俺は男を診察室のベッドに寝かせた。
 みんじんなら聞き覚えがある。たしか、とらねこ物産の部長が密輸入しようとした麻薬の一種だ。その後、その部長は姿をくらましている。
 ふとテレビに目をやると、その元とらねこ物産部長の男を取り逃がしたとニュースが伝えていた。足立区のクリュセ・シンフォニーホールで行われた王錬寺みかんの演奏会に現れた“みんじん”こと塩沢志男は警察の包囲網をかいくぐって逃走したという。その際、なぞの猫が手引きしたとも言われているらしい。塩沢志男が警官隊との銃撃戦で傷を負った可能性もあると、アナウンサーは付け加えた。
 診察室に戻ると、玄関ドアを叩く音がした。誰だろう。まさかミイラ絡みではあるまい。

「開けてくれ!」
「もう診察時間は終わった。どんな用だ」
「けが人がいる。金ならいくらでも出す」
「ドアスコープからのぞくと、猫を連れた小柄な男がいた。男は肩から出血していた」

 俺は玄関ドアを開けた。

「助かったぜ」

 話しかけてきたのは猫のほうだった。猫を連れた男ではなく、男を連れた猫だった。

「驚かないでくれよ。あんただって猫じゃねえか」

 診察室のベッドにはミイラ男が寝ていたので、ソファーに男を寝かせると、俺は治療を始めた。
 猫が話しかけてきた。

「この男が誰かとかは聞かないでくれ」
「ここに来る患者はみな名乗らん」
「そういえば、あんたモグリだってな」
「これでも俺を必要とする連中もいるんだ」
「ああ、そのとおりだ」
「☆○△♂・・・・」

 ミイラが何か言った。

「なんだ、こいつ生きてるのか」
「ああ、自分で歩いてきたんだ」
「なんだって!」
「みんじんとか言って倒れた」
「包帯をとってみたか?」
「いや、まだだ」

 すると、怪我をした男が反応した。

「ミイラがみんじんと言った? 本当か?」
「ああ、本当だ」
「探偵さんよ、そいつの顔の包帯をとってくれないか」

 猫探偵は返事もせずにミイラ男の顔の包帯をはずしはじめた。

 怪我の治療が終わると、男はヨタヨタと立ち上がってミイラ男に近づいた。

「おお・・・・・」
「なんだ、ミイラに知りあいがいるのか?」

 猫探偵が聞いても男は絶句したまま立ち尽くしていた。


つづく

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2004-12-04 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その4

みんじん世界の逆襲 その4


第4章

「ミタ主任じゃないか・・・」

 そこへ、いきなり空気の中から、1匹の猫のクビをつまんだとびきりの美女が実体化した。

探偵「なんだいきなり」
女 「なんだいきなりはごあいさつね、ポロちゃん」
探偵「ポロちゃんだと? 気安く呼ばないでくれ。陽気のせいかへんなヤツが多くて困るぜ」
女神「今、説明するわ」

 女神はその場の困惑の雰囲気など気にも留めずに話し始めた。

 まあ、しおさん。怪我なんかしちゃって痛かったでしょ。たしかに、このミイラ男はトラネコ物産時代にあなたがベネズエラに派遣したまま失踪したミタ主任よ。マンドラゴラの悲鳴を聞いて記憶を失ってしまったの。その時、一緒に悲鳴を聞いたポロちゃんは三匹に分裂したの。探偵になったポロちゃんと、お医者さまになったポロちゃんと、それからコイツ。それぞれの分裂体は、そのことに気づいてないわ。とくにこのあたしがぶら下げてるコイツ。これはポロちゃんの中の悪い部分だけが独立しちゃったのよね。こっそりマンドラゴラを持ち帰って、塩沢部長をたぶらかして大もうけしたんだわ。でもね、マンドラゴラは世界を大きく変えてしまったわ。
 コンサート会場のピアノに広告を入れちゃったり、クラシックコンサートとプロレスを同時興行しちゃったりっていうのもそのひとつよ。プロレスはプロレスだから面白いの。とくに裏稼業がはびこったのはよくないわ。不当に儲ける人と逆の人が出てくるからよ。
 ま、いまから元にもどすから待ってて頂戴。

 あっけにとられていた猫探偵が言った。

「お前、何言ってるんだ?」

 そんな言葉におかまいなく、女神と名乗った女は何やら呪文を唱えた。すると急に目の前の世界が歪み始めた。

 ぼわ〜ん、ぼよよ〜〜〜ん。ぼよよよよよ〜〜〜ん。
 ○△▲◇〜〜◎▽■〜〜〜!!



 居酒屋“あじさい亭”。
 カウンター席ですっかりできあがっているしおさん、ミタさん、ポロの3人を女神さまが相手していました。

ポ「ポロは、しんみに忠告したのに女神さまったら、とうとう“あじさい亭”にしちゃうんだから、も〜!」
め「どうしていけないのよ、ポロちゃん。あたし、あじさいが好きなのよ」
し「ままま。ポロちゃん、女神のおかみが言ってんだからいいじゃない」
ミ「名前じゃないっすよ。ね、味さいこうっス!」
し「みかんちゃんは、やっぱりピアニストになっちゃうんですかね〜、ど〜れすか?」
ポ「しおさん、まだせんせいの一番弟子の座を狙ってるの?」
し「あったり前れす。音楽こそわが人生! かんぱ〜い!」
め「ミタさん、しおさんのことちゃんとタクシーに乗せてあげてね」
ミ「女神さまの言いつけとあらば、このミタ、なんでもいたしますです〜」
め「ポロちゃん、あなただけが頼りみたいだわ」
ポ「うん。ダイじょぶ。しおさんもミタさんもちゃんとタクシーに乗せるよ」
め「ねえ、ポロちゃん。みんじんって知ってる?」
ポ「なにそれ」
め「ううん。知らないんならいいのよ」

 でも、すっかり元どおりに戻ったこの世界で、ポロは作曲工房の掲示板に知らず知らずのうちに“みんじん”と書き込んでしまったのでした。すると“みんじん”という言葉は意味を持ち始め、すっかり過去を書き換え始めたのでした。

おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

先頭 表紙

「ぱっぷら丼軽め」やっぱり“ぱっぷら丼”は軽く一杯がおいしいよね。食べたことがない人は“あじさい亭”でどうぞ。 / ポロ ( 2004-12-05 11:04 )
パップラドンカルメっていうかぁ、羅生門みたいな感じぃ?(死語な言い回しでゴメンナサイ) / shin ( 2004-12-04 23:28 )
そうして、物語は繰り返し、私はまたミイラに…(笑) / みた・そうや ( 2004-12-04 21:29 )

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