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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-12-08 ポロの日記 2004年12月5日(風曜日)公然のひみつ その2
2004-12-07 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その1
2004-12-06 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その2
2004-12-05 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その3
2004-12-04 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その4
2004-12-03 ポロの日記 2004年11月30日(熱曜日)弾丸列車京都へ その1
2004-12-02 ポロの日記 2004年11月30日(熱曜日)弾丸列車京都へ その2
2004-12-01 ポロの日記 2004年11月30日(熱曜日)弾丸列車京都へ その3
2004-11-30 ポロの日記 2004年11月30日(熱曜日)弾丸列車京都へ その4
2004-11-29 ポロの日記 2004年11月30日(熱曜日)弾丸列車京都へ その5


2004-12-08 ポロの日記 2004年12月5日(風曜日)公然のひみつ その2

公然のひみつ その2


ポ「それはね、原価とか仕入れ値みたいなもんだと思うな」
た「どういうこと?」
ポ「お店ってさ、仕入れる値段と売る値段が違うから儲かるんだよね。お店に行くと売値は書いてあるけど、仕入れ値は書いてないよ」
た「ホント、そういえば仕入れ値なんて知らないや」
ポ「小売業の人は誰もが仕入れ値を知ってるよね。人数にしたら人口の何割も。こんなにたくさんの人がいてもバレないことってあるんだ」
た「そうか。世界は卸値や原価を知ってる人と知らない人に分かれてるんだ!」
ポ「そだよ」
た「ほかにも公然のひみつってあるのかな」
ポ「あると思うな。ポロは世界は公然のひみつとそうじゃないことの2つで出来てると思うな」
た「公然のひみつのほうが多いかもね」
ポ「世の中には、それに全然気がつかない人と、気がつかないうちに公然のひみつをいっぱい抱えている人でできてるんだ」
た「あたし、全然気がつかない人かも!」
ポ「違うと思うな。たろちゃんは、自分自身がいっぱい抱えてる公然のひみつに気がついてないタイプだと思うな」
た「じゃ、公然のひみつがない人ってどういう人?」
ポ「せんせいだよ、せんせい。そういうセンスがないの。モーツァルトもそうだったんじゃないかなあ。だからポロは、せんせいは商売には向かないと思うな」
た「そっか。とむりんて、そんな気がするね」
ポ「安全パイとも言うな」
た「なにそれ?」
ポ「いいのいいの。ミタさんが教えてくれたの」
た「あの、ポロといっしょにへんな乗り物で空から降ってきた人?」
ポ「そうそう」
た「あたし、ほかの猫とも話してみよっと」
ポ「うん。きっと話してくれる猫がいると思うな」
た「去年くらいまでポロってペットだったのに、なんだか今はポロにいろいろ教えてもらってるね」
ポ「猫の1年はさ、人間よりも早いんだよ。だから、ポロ、いつのまにか成長しちゃったんだよ。せんせいにもいろいろ習ったし」
た「ふ〜ん。あたし、ポロに追い抜かれちゃったのか〜。へんな感じ〜」
ポ「ポロは、ポロだからさ、気にしないでよ、今までどおりだから」
た「うん、そういうことにしとくね」


おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

ポロの掲示板はここ。
ポロのひみつの部屋

先頭 表紙

ミタさん。今度ね「おまえがしゃべれるのは知ってるんだぜ」って言って話しかけてみてよ。もしかしたら観念してしゃべってくれるかも。 / ポロ ( 2004-12-09 14:51 )
そっかぁ…実家のネコどもも喋るのかなぁ?でも、赤ん坊の内にお母ちゃんが居なくなったから言葉を教えて貰ってないのかな? / みた・そうや ( 2004-12-05 17:22 )

2004-12-07 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その1

みんじん世界の逆襲 その1


 ポロは掲示板に「にんじん」と書こうとして、間違えて「みんじん」と書いてしまいました。すると、本当に「みんじん」という言葉が意味を持って、歴史は過去の全てを書き換えてしまったのです。



第1章

「あ、ポロ君」
「なんですか、部長」
「ベネズエラまでみんじんの買い付けに行って欲しいんだが」
「はい、行って参ります」
「とくに、今回の狙いは現地で“白髭”と呼ばれるものだ。買えるだけ買ってきてくれたまえ。ミタ君が同行する」
「はい!」

 ミタ主任は係長のポロを動物検疫所に連れて行き、ベネズエラ行きの貨物機に乗せる手はずを整えると言った。

「係長。貨物機なんぞに乗っていただくのは本当に心苦しいのですが・・・」
「いいんだよミタ君。猫にとっては、これも規則だ。それより、白髭みんじんについて、判るかぎり詳しく限り調べておいて欲しい。頼んだぞ」
「はい、係長」

 ミタは一礼して動物検疫所を去った。

 数日後、羽田第2空港を飛び立った貨物便のとなりには手長ザルがいたものの、なんのトラブルもなく、目的地のベネズエラに到着した。到着後の検疫が済むと、ミタが迎えに来た。

「やあ、ミタ君ありがとう」
「係長、お疲れではないですか」
「大丈夫だ。すぐに高地へ向かおう」

ポロとミタはレンタカーでベネズエラの山地に向かった。
山道を走ること20時間、クルマはひなびた村に到着した。

「ポロ係長、実はよからぬ噂を聞きました」
「どんなことだ。実は、さきほど給油したガソリンスタンドのレストランでなんですが、白髭っていうのは普通の“みんじん”のことではなくて、どうも違法な植物らしいんですよ」
「どういうことだ?」
「なんでも数年前に隕石が山奥の村に落下して、その隕石孔の周囲にあった“みんじん”が突然変異を起こしたらしいんです。引き抜くと大きな叫び声をあげて、その声を聞いたものは精神にダメージを受けるという噂です」
「それじゃ、まるでマンドラゴラじゃないか」
「まさにそうなんですが、効果は麻薬によく似ているとか」
「塩沢部長はそれを知っているのだろうか」
「どうしますか」
「我々は企業人だ。とにかく命令に従おう」

 はじめのうち、現地の人々は問題の“みんじん”について知らぬ存ぜぬという態度をとっていたが“本当のみんじん”と“神かけて本当のみんじん”という隠語を突き止めて、ついに村の“みんじんネゴシエイター”に会うことができた。

「お前たちは“神かけて本当のみんじん”が欲しいのか?」

 そうだと答えそうになったミタを制してポロが言った。

「我々は本当のことが知りたいだけだ」
「・・・・・・・・・・・」

 ネゴシエイターは、すべての白髭みんじん自生地への自由な立ち入りを許可した。ただし白髭みんじんの収穫は自分たちでやらなければならないという条件つきだった。

 白髭みんじんの自生地は砂漠の中にあった。UFOの墜落現場にも見える小規模なクレーターの周囲をぐるりと取り囲むように“神かけて本当のみんじん”である白髭みんじんが生えていた。
 ミタが、一株をそっと引き抜こうとすると、複雑に繁った白い根が土に絡まってなかなか抜けなかった。

「ミタ君、マンドラゴラだとまずい。やたら抜かないほうがいい」
「ええ、害のない程度に声を聞いてみたいものです」

 そう言うと、ミタは手に力を込めた。白髭みんじんは、あっけないほど簡単に抜け、周囲に黒板を掻きむしったような高周波の悲鳴が響き渡った。


つづく

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2004-12-06 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その2

みんじん世界の逆襲 その2


 ポロは、すぐに両耳を塞いだが、両手でみんじんを握っていたミタは遅れた。すると、ミタは大声で笑いながら地平線に向かって走り去った。
ポロは、すぐにクルマにもどって後を追ったが、車道からはずれて走り去ったミタを見つけることはできなかった。ミタは、そのまま行方知らずとなってしまった。ポロは白髭みんじんの収穫をあきらめて日本に戻った。


第2章

 どうやら、そいつは“みんじん”と呼ばれているらしかった。そいつを探しだして依頼主に居場所を知らせれば10万クレジットの報酬だ。
 “みんじん”は指名手配されている犯罪者だ。しかし、依頼者は警察とは関係ないらしい。今朝、メールで照会があった。すぐにOKしたが、とにかく本物の指名手配犯を探して欲しいという以来は、俺の探偵稼業で初めてのことだ。
 自己紹介が遅れたが、俺は猫の私立探偵ポロ。ポアロじゃないぜ、間違えないでくれ。ずっと昔、もう誰だか忘れちまったが、とにかく売れない作曲家の助手をしていたこともあった。だが、そんな稼業に見切りをつけて、隠密行動が得意で人から怪しまれない猫の特徴を生かして私立探偵を開業した。今回の依頼主もその能力に期待しているのだろう。
 俺に与えられた情報は、いくつかある。その中で一番俺の気を引いたのは“みんじん”が新進気鋭のピアニストである“王連寺みかん”のファンであるということだ。オレンジ・みかんか・・・。どうせ芸名だろうが,まったくもって“骨ボーン”とか“お魚フィッシュ”みたいな名前だぜ。俺はさっそく足立区にあるタイガージェット・シンフォニー・ホールで行われるコンサートへ向かった。上手に忍び込めば猫はタダだ。“みんじん”も、ここに来ている可能性は高い。
 ステージでは、まだ前座のプロレスの試合が行われていた。最近のクラシックコンサートも、ずいぶんくだけたものだ。
 俺は舞台袖に潜んで客席に目を凝らした。猫は人よりも夜目が利く。ターゲットはまだ会場には現れていないようだ。インド人レスラーが勝ち名乗りをあげて試合が終わり、プロレスのリングが撤収されると、ピアノが運ばれてきた。ピアノの客席側のリム(側板)には愛媛県のみかん生産者組合の広告がデカデカと書かれていた。世の中変わったものだ。準備が終わると会場はコンサート会場らしくなり、俺のすぐわきを黒縁メガネの王連路みかんがステージに向かって歩いていった。
 盛大な拍手とともに始まったのは謎の作曲家トーマス・リンドバーグ作曲のバラードだった。おお、この曲には聴き覚えがある。そうだ、このフレーズ、このテンポ。そうだそうだ、この和音は解決しないんだ。いやいや、こんなことに心を奪われていてはいけない。俺の仕事は“みんじん”を探すことだ。情報によると“みんじん”は、いつもグッと来るような女を両脇に連れているということだ。いた。2階席の中央だ。なんだか、気が弱そうで善良そうな男に見えるが、あいつに間違いない。俺は携帯から依頼主にメールした。返事が来るまでに数分というところだろう。その間、俺は王錬寺みかんの演奏に耳を傾けた。
 次の曲も、やはりトーマス・リンドバーグのピアノ・ソナタだった。身体がしびれるような名曲だ。“みんじん”と呼ばれる、その初老の男も身をよじらせて、もだえ聴いていた。まったくだ。たまらないぜ、トーマス・リンドバーグ。
 そこに予期せぬ出来事が起こった。なんと警察が張り込んでいたのだ。おれは、とっさに“みんじん”のところへ駆けつけ、やつを抜け道へと誘導していた。


つづく

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2004-12-05 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その3

みんじん世界の逆襲 その3


第3章

 テレビニュースの若い女性アナウンサーが、今、開催中の古代エジプト展からミイラが盗まれたと言っていた。ミイラなど盗んだところで金になるのだろうか。
私はモグリの獣医ポロ。正体が猫なので正規の免許をとれないから仕方ない。裏の世界では「ホワイト・ジャック」と呼ばれている。裏稼業の猫や犬たちがクランケだ。だが今日はヒマだ。もうすぐ診療も終わる時刻だ。今夜は、とうとう誰も患者が来なかった。
 そこへ、表玄関のドアが開いたような音がした。少したって診察室に入ってきたのは、全身包帯を巻いた男(?)だった。たいへんな重症患者かも知れない。

「おい、だいじょうぶか?」

 そう話しかけると、男はひとこと“みんじん”と呟いて崩れ落ちた。
 なんだ、これはエジプト展から盗まれたはずのミイラじゃないのか? 俺は男を診察室のベッドに寝かせた。
 みんじんなら聞き覚えがある。たしか、とらねこ物産の部長が密輸入しようとした麻薬の一種だ。その後、その部長は姿をくらましている。
 ふとテレビに目をやると、その元とらねこ物産部長の男を取り逃がしたとニュースが伝えていた。足立区のクリュセ・シンフォニーホールで行われた王錬寺みかんの演奏会に現れた“みんじん”こと塩沢志男は警察の包囲網をかいくぐって逃走したという。その際、なぞの猫が手引きしたとも言われているらしい。塩沢志男が警官隊との銃撃戦で傷を負った可能性もあると、アナウンサーは付け加えた。
 診察室に戻ると、玄関ドアを叩く音がした。誰だろう。まさかミイラ絡みではあるまい。

「開けてくれ!」
「もう診察時間は終わった。どんな用だ」
「けが人がいる。金ならいくらでも出す」
「ドアスコープからのぞくと、猫を連れた小柄な男がいた。男は肩から出血していた」

 俺は玄関ドアを開けた。

「助かったぜ」

 話しかけてきたのは猫のほうだった。猫を連れた男ではなく、男を連れた猫だった。

「驚かないでくれよ。あんただって猫じゃねえか」

 診察室のベッドにはミイラ男が寝ていたので、ソファーに男を寝かせると、俺は治療を始めた。
 猫が話しかけてきた。

「この男が誰かとかは聞かないでくれ」
「ここに来る患者はみな名乗らん」
「そういえば、あんたモグリだってな」
「これでも俺を必要とする連中もいるんだ」
「ああ、そのとおりだ」
「☆○△♂・・・・」

 ミイラが何か言った。

「なんだ、こいつ生きてるのか」
「ああ、自分で歩いてきたんだ」
「なんだって!」
「みんじんとか言って倒れた」
「包帯をとってみたか?」
「いや、まだだ」

 すると、怪我をした男が反応した。

「ミイラがみんじんと言った? 本当か?」
「ああ、本当だ」
「探偵さんよ、そいつの顔の包帯をとってくれないか」

 猫探偵は返事もせずにミイラ男の顔の包帯をはずしはじめた。

 怪我の治療が終わると、男はヨタヨタと立ち上がってミイラ男に近づいた。

「おお・・・・・」
「なんだ、ミイラに知りあいがいるのか?」

 猫探偵が聞いても男は絶句したまま立ち尽くしていた。


つづく

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2004-12-04 ポロの日記 2004年12月4日(岩曜日)みんじん世界の逆襲 その4

みんじん世界の逆襲 その4


第4章

「ミタ主任じゃないか・・・」

 そこへ、いきなり空気の中から、1匹の猫のクビをつまんだとびきりの美女が実体化した。

探偵「なんだいきなり」
女 「なんだいきなりはごあいさつね、ポロちゃん」
探偵「ポロちゃんだと? 気安く呼ばないでくれ。陽気のせいかへんなヤツが多くて困るぜ」
女神「今、説明するわ」

 女神はその場の困惑の雰囲気など気にも留めずに話し始めた。

 まあ、しおさん。怪我なんかしちゃって痛かったでしょ。たしかに、このミイラ男はトラネコ物産時代にあなたがベネズエラに派遣したまま失踪したミタ主任よ。マンドラゴラの悲鳴を聞いて記憶を失ってしまったの。その時、一緒に悲鳴を聞いたポロちゃんは三匹に分裂したの。探偵になったポロちゃんと、お医者さまになったポロちゃんと、それからコイツ。それぞれの分裂体は、そのことに気づいてないわ。とくにこのあたしがぶら下げてるコイツ。これはポロちゃんの中の悪い部分だけが独立しちゃったのよね。こっそりマンドラゴラを持ち帰って、塩沢部長をたぶらかして大もうけしたんだわ。でもね、マンドラゴラは世界を大きく変えてしまったわ。
 コンサート会場のピアノに広告を入れちゃったり、クラシックコンサートとプロレスを同時興行しちゃったりっていうのもそのひとつよ。プロレスはプロレスだから面白いの。とくに裏稼業がはびこったのはよくないわ。不当に儲ける人と逆の人が出てくるからよ。
 ま、いまから元にもどすから待ってて頂戴。

 あっけにとられていた猫探偵が言った。

「お前、何言ってるんだ?」

 そんな言葉におかまいなく、女神と名乗った女は何やら呪文を唱えた。すると急に目の前の世界が歪み始めた。

 ぼわ〜ん、ぼよよ〜〜〜ん。ぼよよよよよ〜〜〜ん。
 ○△▲◇〜〜◎▽■〜〜〜!!



 居酒屋“あじさい亭”。
 カウンター席ですっかりできあがっているしおさん、ミタさん、ポロの3人を女神さまが相手していました。

ポ「ポロは、しんみに忠告したのに女神さまったら、とうとう“あじさい亭”にしちゃうんだから、も〜!」
め「どうしていけないのよ、ポロちゃん。あたし、あじさいが好きなのよ」
し「ままま。ポロちゃん、女神のおかみが言ってんだからいいじゃない」
ミ「名前じゃないっすよ。ね、味さいこうっス!」
し「みかんちゃんは、やっぱりピアニストになっちゃうんですかね〜、ど〜れすか?」
ポ「しおさん、まだせんせいの一番弟子の座を狙ってるの?」
し「あったり前れす。音楽こそわが人生! かんぱ〜い!」
め「ミタさん、しおさんのことちゃんとタクシーに乗せてあげてね」
ミ「女神さまの言いつけとあらば、このミタ、なんでもいたしますです〜」
め「ポロちゃん、あなただけが頼りみたいだわ」
ポ「うん。ダイじょぶ。しおさんもミタさんもちゃんとタクシーに乗せるよ」
め「ねえ、ポロちゃん。みんじんって知ってる?」
ポ「なにそれ」
め「ううん。知らないんならいいのよ」

 でも、すっかり元どおりに戻ったこの世界で、ポロは作曲工房の掲示板に知らず知らずのうちに“みんじん”と書き込んでしまったのでした。すると“みんじん”という言葉は意味を持ち始め、すっかり過去を書き換え始めたのでした。

おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

先頭 表紙

「ぱっぷら丼軽め」やっぱり“ぱっぷら丼”は軽く一杯がおいしいよね。食べたことがない人は“あじさい亭”でどうぞ。 / ポロ ( 2004-12-05 11:04 )
パップラドンカルメっていうかぁ、羅生門みたいな感じぃ?(死語な言い回しでゴメンナサイ) / shin ( 2004-12-04 23:28 )
そうして、物語は繰り返し、私はまたミイラに…(笑) / みた・そうや ( 2004-12-04 21:29 )

2004-12-03 ポロの日記 2004年11月30日(熱曜日)弾丸列車京都へ その1

弾丸列車京都へ その1


 ここは第2次世界大戦とか、そういうコワい事が起こらなかったパラレルワールドです。でも、どういうわけか憲法とか法律とかは今と同じです。
 ポロは小さいころの夢を叶えて国鉄に入社、地方路線の下積みの後、ついに東海道弾丸列車(新幹線の戦前の言いかただよ)の機関助手になりました。
 今日の乗務は午前6時20分東京駅発広島行きのC7000「のぞみ41号」で、ポロの乗務区間は京都までです。今日はベテランのミタ機関士といっしょです。
 早朝の新橋操車場でC7014機関車の点検をします。

 かんかんか〜ん!

 -この音の最後のカ〜〜〜ンって伸びるところがいいんだよな〜。

 機関助手のポロとミタ機関士は、そんなことを考えながら動輪を動かすクランクやリンクの連結部分のボルトをハンマーで叩きまくりました。ボイラーの温度が上がり、規定の蒸気圧に達するまではかなり時間がかかり、点検にはもってこいの時間です。

「異状なし!」

 ポロたちのC7014は石炭と水を満載、15両の客車を連結されて東京駅の16番ホームに入線します。
 機関車から漏れでる真っ白い蒸気がホームにたなびきます。ホームには駅弁売りの人たちからお弁当を買い求める人の姿がありました。その中に、京都に向かうせんせい一行がいましたが、ポロたちはそんなことは知りませんでした。
 ポロたちは運転台にあるディスプレイで今日の運行関連情報を確認しました。全区間の天候、予想レール温度、乗車率によって刻々と変化する全車両重量、他の列車の運行状況などがミタ運転士の操作で、つぎつぎと現れます。C7014に搭載されたコンピュータは国鉄最新のもので、アメリカが戦闘機用に使わせて欲しいと言ってきましたが、国鉄の島ヒデオ総裁が「ダメでござる」と言って断りました。さすがはポロたちのシマちゃんです。

 ぴぴぴぴぴぴぴぴ!

 ホームに発車を知らせる電子音が鳴り響きました。ポロは、釜に石炭をひとすくいして投入しました。

 ぴりぴりぴりぴりぴり〜〜〜!

 車掌の吹くホイッスルがホームに響き渡り、ディスプレイに全ドア閉鎖を示すグリーンサインがともりました。

「行くぞ、ポロちゃん」
「うん、いいよ」

 ミタ運転士は発車の汽笛を高らかに鳴らすと、蒸気をシリンダーに送り込みます。3軸の巨大な動輪が空転を始めたところへ砂箱からレール上に砂が撒かれます。
 ガシッと砂を噛んだ動輪がレールを捉えると連結器が順々に悲鳴をあげ、のぞみ41号は動き始めました。いかに早く動輪の空転を止めるかが運転士の腕の見せどころですが、今日は最短という感じでした。

「ミタさん、んまい!」
「参ったか、ポロちゃん」
「まいったよ〜」
「品川までは、このままの圧で行く」
「了解!」

 最初の数キロで運転士は機関車の調子を確かめます。時速74キロ。動輪重心が偏心しているので蒸気機関車は速度が上がると揺れが始まります。C7000型は、このあたりに揺れの始まるポイントがあるのですが、ミタさんは機関車を揺らさずに走らせる名人でした。
 のぞみ41号は定刻に品川駅に到着しました。

つづく

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2004-12-02 ポロの日記 2004年11月30日(熱曜日)弾丸列車京都へ その2

弾丸列車京都へ その2


「ポロちゃん、今日は新横浜を通過したらすぐに蒸気タービンに切り替えるよ」
「うん、まかせて」

 ポロは、蒸気圧を高めるために燃焼室内に石炭を射出するためのレールガン式給炭装置の稼働準備をしました。
 短い停車時間が過ぎて、ミタさんは発車の汽笛を鳴らしました。ボイラーの温度が上がっていたので発車にはますます微妙な操作が必要でしたが、ミタさんは軽々と機関車C7014を転がしました。
 蒸気シリンダー方式で安定して走れるのは最新のC7000型をもってしても時速160キロまでです。そこから先は蒸気タービンで走ります。蒸気タービンを動かすためには燃焼室を高温にする必要があります。ポロがレールガンのスイッチを入れると、石炭がどんどん燃焼室内に射出されます。でも、その石炭はベルトコンベアにポロがスコップで乗せていかなくてはなりません。

 ザクッ、ザクッ。

 ポロは石炭車からスコップで石炭をすくっては、どんどんコンベアに乗せます。石炭はどんどん燃焼室に送り込まれて徐々に温度が上がります。

「時速120キロ。圧力16キロ」
「了解、ミタさん。酸素噴射開始」

 鉄道の世界では圧力はパスカルではなくて、いまだにキロで言い表します。酸素を燃焼室内にほんの少し噴射するだけで温度は格段に上がります。

「圧力上昇18キロ。時速140キロ」
「あと少しだね」

 C7000型は昔の蒸気機関車だったら耐えられない圧力でも平気です。

<ただいま蒸気タービン運転に切り替えるために速度を上げており、大きく揺れることがありますのでご注意ください>

 車内アナウンスをモニターするスピーカーから注意が呼びかけられると、ポロたちの機関士だましいに火がつきました。

「ミタさん、ガンガンいくよ。急激に圧が上がるから気をつけてね」
「ああ、頼んだよポロちゃん」

 ポロは腕が折れるかと思うほどスコップを動かして、石炭をバンバン運びました。同時に酸素を供給するバルブを少しずつ緩めて、一度にたくさんの石炭が高温で燃えるようにしました。

「新横浜通過。圧力19キロ、速度も158キロだ。ポロちゃん、あと一息!」
「うん!」

 ポロは頑張りすぎて身体がフラフラしてきましたが、それでも、石炭を射出用コンベアに乗せ続けました。

「行くぞ!」

 次の瞬間、動輪にクランクを接続している流体クラッチが切られ、偏心していた動輪が真円運動を始めました。そして、ミタ機関士の操作で蒸気タービンが始動しました。

 ひゅんひゅんひゅーんひゅーんひゅ〜〜〜〜〜〜ん!

 蒸気タービンが高周波の金切り声とともに回転数を上げていきます。まるで、後ろから誰かに押されているかのような感覚で速度があがります。
 タービンの音は、しまいにはただのキ〜ンという響きになりました。

「蒸気タービンへの切り替え完了。異状なし!」
「やったね、ミタさん」
「速度220キロ、260キロ・・、280キロ・・・、300キロ・・・・、320キロ・・・・・、340キロ・・・・・・、よし、360キロだ。巡航最高速度を維持」


つづく

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2004-12-01 ポロの日記 2004年11月30日(熱曜日)弾丸列車京都へ その3

弾丸列車京都へ その3


 この速度になると、機関車前方80メートルより手前の様子は人の動体視力では見えなくなります。その景色はジェットパイロットだって見たことがない別世界でした。そんなわけで有視界運転から計器運転へと切り替わります。
 この速度では石炭の消費量はハンパではなく、運転士のミタさんもスコップを持って給炭作業にかかります。
窓の外には在来線の東海道線が平行して走っていましたが、在来線はすべて車輪式のリニアモーター化されているもののたかだか160キロ運転なので、速度差で200キロも上回るのぞみ41号から見れば止まっているかのようでした。
 熱海を過ぎるとすぐに新丹那トンネルです。自動的に客室用の吸気ダクトが閉じてトンネル内の煙に備えます。

「新丹那トンネル進入。トンネル内異状なし」

 ミタさんが指さし確認します。

 トンネル内で、対向するひかりC3000型204号とすれ違いました。相対速度660キロ。風圧で一瞬車体がヨーイングしましたが、すぐに安定姿勢に戻りました。
 機関車のキャビン内は、いろいろな騒音が混ざり合って機械工場のようでした。トンネルを抜けるとぱっと明るくなって、静かになりました。

「三島駅を定刻に通過!」
「了解」

 機関車のキャビンは一応開閉できる窓はあるものの、客室と違って密閉させているわけではないので、ポロもミタさんも煤(すす)だらけでした。

「やあ、ポロちゃん灰色ねこになっちゃったよ」
「ミタさんだって、まるで宇宙人だよ」
「ははは、そうか」

 右側には、大きく富士山が見えました。

「何度見てもきれいだねえ」
「ポロちゃんは、登ったことあるかい?」
「ないよ。一度登ってみたいな」

 次の瞬間、キャビンに警報が鳴り響きました。
 ミタさんは、すぐに警告内容を確かめました。

「25キロ先に未確認の障害物だ。ポロちゃん、緊急停止するから塩沢車掌長に伝えて」
「了解」

 ポロはインターフォンで、車掌室の塩沢車掌長に障害物があることと緊急停車をすることを伝えました。

 <乗客の皆さまにお知らせいたします。ただいま、線路上に障害物が確認されましたので、安全のために緊急停車いたします。座席にお座りになって、念のために手すりなどにおつかまりください>

 C7000型が時速360キロから安全に停車するためには約10キロの距離が必要です。今はギリギリでした。

「タービン停止」
「停止確認」
「エアブレーキ展開」
「エアブレーキ展開確認!」
「電磁ブレーキ作動」
「電磁ブレーキ作動確認!」

 速度がガクッと落ち、前にのめりそうになりました。

「時速270キロ・・・、250キロ・・・・、230キロ・・・、目標まであと4キロ」
「間に合うかなあ・・」
「間に合わせるよ。見ててくれ」
「うん」
「時速200キロ・・・・、180キロ・・・・、160キロ、クランク接続」

 がっしゃん!


つづく

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2004-11-30 ポロの日記 2004年11月30日(熱曜日)弾丸列車京都へ その4

弾丸列車京都へ その4


 いくら流体クラッチといっても、つながった途端、大きなショックがありました。せんせいは飲もうとしていたお茶をこぼしてしまいましたが、ポロはもちろんそんなことは知りませんでした。

「時速120キロ」

 クランクロッドが動輪に接続されれば、摩擦を使った物理ブレーキであるディスクブレーキが威力を発揮します。のぞみ41号は新富士駅の手前数キロのところに停車しました。ポロとミタさんが線路に降りてみると、すぐ目の前に牛模様の大きな牛が座り込んでいました。

「参ったな。こいつか」
「牛っぽい牛だね〜」

 そこへ塩沢車掌長もやってきました。

「牛かあ。食っちまおう」
「そうはいきませんよ」

 ミタさんがスコップで牛のお尻をたたくと、牛はのんびりと立ち上がって、線路から出ていきました。ポロたちは近くの作業車両の出入り口まで牛を誘導して、軌道から外へ追いだすと、ふたたび機関車のキャビンに戻りました。

「いったい、どうやって入り込んだんだろう」

 ポロが窓から空を見上げると、牛をつり下げて運んでいる小型UFOが見えました。

「ミタさん、あれかも知れないよ。何かのトラブルで運ぶのに失敗したのかも」
「なるほど、迷惑な話だ」

 運転指令室に報告を済ませて車掌室に発車することを伝えると、ポロは再び燃焼室の温度を上げ始めました。

「ポロちゃん、走りながら圧を上げていこう」
「うん。じゃ、すぐに発車できる圧にするから」

 ポロは緊急発車モードを選択。少量の石炭に酸素噴射を行なって大急ぎで圧力を立ち上げました。

「いいぞポロちゃん、名人級だよ。もうすぐ発車できる」
「ざっと、こんなもんだよ」

 客席では、せんせいたちが列車の遅れに文句を言っているようでしたが、ポロたちはもちろん、そんなこと知りませんでした。

 シリンダーがクランクロッドを押し出すと、動輪が砂を噛んで、きしみ音とともにのぞみ41号は進み始めました。連結器に牽引荷重が伝わるたびにガチャガチャと大きな音がします。
 ポロは、石炭を直接釜に投げ入れ始めました。機関助手の腕の見せどころです。

「ねえ、ミタさん。定時運行に戻しちゃおうよ」
「今からだと相当厳しいんじゃないかなあ」
「ポロたち、最高のチームじゃないか〜」
「よし、ポロちゃん。だいぶくたびれてると思うけど、蒸気圧を規定定格最高値まで上げられるかい?」
「ふっふっふ。そのために日本国有鉄道はポロを雇ったのさ」
「分かった。やろう」

 のぞみ41号は数分でシリンダー運転最高速度の160キロに達し、蒸気タービンを始動しました。

「よーし、巡航最高速度の360キロだ」
「今までで最短の到達時間だね」
「よし、じゃあいよいよ法定最高速度を目指すぞ」
「うん」

 スコップを持つポロの腕は、もう棒のようになっていましたが、なんだか気力が充実していてやれそうな気がしていました。


つづく

先頭 表紙

2004-11-29 ポロの日記 2004年11月30日(熱曜日)弾丸列車京都へ その5

弾丸列車京都へ その5


 速度計がジリジリと上がってきます。

「370キロ・・・、380キロ・・・」

 石炭を運ぶ腕がしびれてきました。鉄棒の懸垂の最後の一回のような感じでした。ミタ機関士も汗だくになって石炭を射出装置のコンベアに運びました。

「やっぱりそうか」

 そう言って現れたのは塩沢車掌長でした。

「昔、漁師だったんだぜ。力仕事なら任せてくれ」

 そういうと車掌長は、ポロとミタさんの2人分よりもたくさんの石炭を直接釜に放り込み始めました。

「わあ! 車掌長すごいよ!」
「あはははは〜。爽快だ〜!」
「よし、法定最高速度の400キロだ。このまま頑張ろう」
「400キロって、どのくらい速いんだ?」
「あのね、10分で67キロも走っちゃうんだよ。F1より速いかも」
「残念ながら長時間の巡航はできません。車軸温度が限界点を超えないうちだけです」
「そうなのか。いろいろと難しいんだな〜」
「でもね、ミタさんは上手に速度を調節して車軸温度を上げないようにして速く走られる名人なんだ」
「そうか。それはすごいな」

 ミタ運転士は計器とにらめっこしながら高速運転を維持しました。

「車掌長。このまま行けば京都駅で定時運行に戻れます」
「そうか。よし、ちょっとアナウンスしてこよう」

 車掌長は客車に戻っていきました。

「ミタさん、ポロ、もう腕が動かないよ」
「頑張ってくれたね。もう大丈夫。現在の圧力で京都までたどり着けるよ」
「乗客は何をしてるのかなあ?」
「みんな楽しくやってるさ」

 その頃、14号車のせんせいはミタさんの言葉どおり、2人の美女に囲まれて楽しくやっていましたが、もちろんポロはそんなこと知りませんでした。

 間もなくのぞみ41号は京都駅停車のための減速区間に入りました。蒸気タービンは回転数を下げ、流体クラッチがクランクロッドと動輪を接続しました。蒸気シリンダー運転に戻ったC7014はシュシュッポッポ、シュシュッポッポと昔ながらの蒸気機関車のように走りました。
 京都駅の規定位置にピタリとのぞみ41号を止めると、ホームでは交代の機関士と機関助手が待っていました。
 シリンダーから漏れる蒸気の舞う中、乗務の引き継ぎが行われました。

「途中、障害物によって緊急停車するも現在定時運行中。全て異状なし」
「ご苦労様でした。ここからは乗務を引き継ぎます」

 ポロとミタ機関士は敬礼して交代すると、高らかに汽笛を鳴らして発車するのぞみ41号をその姿が見えなくなるまで見送りました。

 その間、ポロたちの脇をあくびをしながら通りすぎたのがせんせいだったなんて、もちろんポロは知りませんでした。

「ポロちゃん、さあ行こう。次の乗務は東京行きのぞみ72号だ。それまで少し休めるぞ」
「ポロ、腕がぱんぱんだよ。今の乗務、面白かったね〜」
「そうだね。なんたって最高のチームだもんな」
「うん、そうとも。ところでポロさ、生八つ橋食べたいな。mokoさんのキオスクに寄っていこうよ」
「出発進行!」


おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

ポロの掲示板はここ。
ポロのひみつの部屋

先頭 表紙

ポロは「多少のYen」かと思ったよ。何するにもお金かかるからな〜。 / ポロ ( 2004-12-03 23:42 )
何かの縁じゃなくって多生の縁だった・・・ / みた・そうや ( 2004-12-03 07:47 )
やはり機関車には情緒がありますね。大変だけど(笑)。別の世界では、こんな可能性もありますね〜。でも、袖擦り合うも何かの縁と言いますが、別の世界で縁が有る人達と、どこかですれ違っているのかも知れませんね。 / みた・そうや ( 2004-12-02 09:39 )

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