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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-10-17 ポロの日記 2004年10月15日(電曜日)笹目川自然遊歩道 その2
2004-10-16 ポロの日記 2004年10月14日(草曜日)ポロのNG集 第1回 その1
2004-10-15 ポロの日記 2004年10月14日(草曜日)ポロのNG集 第1回 その2
2004-10-14 ポロの日記 2004年10月13日(波曜日)ないしょのマルエツ その1
2004-10-13 ポロの日記 2004年10月13日(波曜日)ないしょのマルエツ その2
2004-10-07 ポロの日記 2004年10月06日(波曜日)賢者への道 その1
2004-10-06 ポロの日記 2004年10月06日(波曜日)賢者への道 その2
2004-09-27 ポロの日記 2004年9月21日(熱曜日)たろちゃんとランチ
2004-09-26 ポロの日記 2004年9月29日(波曜日)よく当たる占い その1
2004-09-25 ポロの日記 2004年9月29日(波曜日)よく当たる占い その2


2004-10-17 ポロの日記 2004年10月15日(電曜日)笹目川自然遊歩道 その2

笹目川自然遊歩道 その2


 手もとの小さなリールに巻き取られたり伸びたりするハイテクなリードを手にしたお兄さんが小型犬と一緒にすれ違いました。

ポ「なんていう犬だろう」
せ「ポチだな」
ポ「ちあうよ〜、犬の種類だよ〜」
せ「そうか。そう言えば血統書でもありそうな犬だったね」
ポ「血統書っていうのは失礼だな」
せ「そうか?」
ポ「人間には、たぶん血統書は許されないと思うよ」
せ「そう言われればそうだな。でも家系図っていうのはあるな」
ポ「そっか。血統書みたいなもんかも。でも、家系図で人の価値は決まらないよね」
せ「そうだね。現存するバッハの子孫に音楽家はひとりもいないそうだ」
ポ「徳川家康の子孫にも、いま殿様は一人もいないよね」
せ「たしかに。でも殿様そのものがいないな」
ポ「よし、やる気出たぞ〜。ポロはレストランで成功して、芥川賞とネビュラ賞とノーベル文学賞を受賞するも辞退して、最後は猫ボクシングのシーモンキー級銀河系チャンピオンを目指す!」
せ「なんだか目茶苦茶なビジョンだな」
ポ「いいんだ〜! それがポロの生きる道だ〜!」
せ「そろそろ肩から降りてくれよ」
ポ「わ、ゴメなさい」

 ポロは、ぴょんとレンガを敷き詰めた遊歩道に降りました。ほどなく、工房から2キロ地点に来ました。せんせいとポロは、そこで会社へ向かう奥さんと別れました。

ポ「行ってらっしゃーい!」
奥「気をつけて帰るのよ〜」
ポ「は〜い」

 それからせんせいとポロは六辻水辺公園という何キロも続く長い長い日本庭園風の遊歩道を歩いて家路につきました。歩きながら、ポロはせんせいと音楽コラムの内容となる会話を交わしました。まるで2人は哲学者のようでした。どうして奥さんの前ではいいカッコができないのかなあなんて思ったりもしましたが、そんなことはどうでもいいことなのでした。


おしまい

 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

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先頭 表紙

でもね、話し手のほうの哲学者は話がヘタで、取材する哲学者ポロは苦労したのでした。 / ポロ ( 2004-10-15 23:00 )
ほのぼのですね〜。帰りの道を行く二人の哲学者がカッコイイです。 / みた。そうや ( 2004-10-15 16:09 )

2004-10-16 ポロの日記 2004年10月14日(草曜日)ポロのNG集 第1回 その1

ポロのNG集 第1回 その1


 ポロが書いたお話は「お話の部屋」にアップしたものだけではありません。喝さい(?)を受けているお話の陰には、それに見合う数の没原稿が眠っています。どうして没になってしまったのか、それを知ってもらうために、ときどきNG作品を公開することにしました。第1回は、まだ印象が薄れないうちに新しいものをアップします。「賢者への道」の最初のアイディアです。せんせいからは、いくつかの点を指摘されました。その時にはよく分からなくて「せんせいのバーロー」と思っただけでしたが、書き直してみると、なるほどよくなかったところが見えてきました。ぜひ比べてみてください。皆さんはどう思いますか?
 せんせいの作曲のレッスンも、こんなふうに進んでいくのかも。

※結末がカットしてあるのは、ヘタクソで恥ずかしいからに決まってるじゃないか〜。


実録 賢者への道・没原稿

「ねえ、たろちゃん」
「なあに、ポロ?」
「あのさあのさ、今度からポロは天才をやめて賢者になることにしたんだ」
「賢者ってどういう人?」
「あのさ、貧乏でも平気でさ、えっとさ、とにかくカッコいいんだよ」
「????」
「だからさ、お金持ちになってもダイじょぶなんだ」
「あ〜、思いだした。国語の時間に習ったよ。たしか“アメユキとてきてけんじゃ”って言うの。確か宮沢賢治の詩だと思ったな。あの人は確かにカッコいいわね」
「そうか〜。宮沢賢治は賢者だったのか〜。よし、手がかりはつかんだぞ」

 ポロは書庫へ行って宮沢賢治に関する文献を調べました。
ありました。

「雨ニモマケズ、風ニモマケズ・・・。これだ。これが賢者の心得だ」

 ポロは、これをさっそく座右の銘にすることにしました。これから実行しなければならないことを箇条書きにして守ることにしました。

1.雨が降っても傘をさしたりしない。賢者は雨に勝つ。
2.風が吹いても桶屋を儲けさせない。賢者は風に勝つ。
3.雪が降ってもコタツに入らない。賢者は雪に勝つ。
4.夏、どんなに暑くてもエアコンは使わない。賢者は暑さに勝つ。
5.丈夫が一番。賢者はすべての怪我と病気に勝つ。
6.何も欲しがらない。賢者はおなかが減っても平気だ。
7.決して怒らない。賢者は心が広い。
8.いつも静かに笑う。だから賢者は一日中面白いことを考えていなければならないが、決して大声で笑ってはいけない。
9.一日に玄米4合を食べる。ポロにはちょっと多いけど、賢者はいっぱい食べる。
10.味噌と少しの野菜を食べる。賢者はしょっぱいものが好きで、野菜が嫌いだ。
11.あらゆることで自分を勘定に入れない。だから賢者は台所当番などのシフトに入ってはならない。
12.よく見聞きし分かる。賢者は、うわさ話でもゴシップ話でも、ちょっと小耳に鋏めばすぐにピンと来るほど目ざとい。
13.決して忘れない。賢者は人のうわさも47日以上覚えている。
14.賢者は野原の松の林に土地を持っている。賢者は広大な土地を買うだけのお金を持っている。
15.茅葺きの小屋に住む。賢者は、茅葺き職人を雇えるほどのお金持ちだ。


つづく

先頭 表紙

宮沢賢治って、やたら健康そうな賢者ですね。(笑) / みた・そうや ( 2004-10-15 07:37 )

2004-10-15 ポロの日記 2004年10月14日(草曜日)ポロのNG集 第1回 その2

ポロのNG集 第1回 その2


 だ、ダメかも。ポロは、松林を買って茅葺きの家を建てられるほど大富豪になれないような気がするな。

「ねえ、たろちゃん。ほかに賢者っていないの?」
「あたしは知らないなあ。海にいちゃんに聞いてみたら?」
「そうしよう」

 ポロは、さっそく海のお兄ちゃんのところに行きました。

「あのさあのさ。ポロ、賢者になりたんだけど」
「ああ、なれるよ。すぐはなれないけどね」
「やっぱり」
「最初は僧侶からスタートするのがいいよ」
「ホント!? お坊さんになればいいの?」
「お坊さんとは言わないよ、普通」
「それから、魔法使いとかになってさ」
「え〜〜! 魔法使いになるほうが賢者より難しそうだな」
「難しいのは忍者だよ」
「ううん、ポロ、忍者なんてなれなくていいんだ」
「じゃ、来いよ」
「え? 賢者になれる?」
「だから順序があるんだってば」

 海兄ちゃんはテレビの前に座るとゲーム機のスイッチを入れました。

「ち、ちあうよちあうよ。ゲームの賢者じゃなくて、ホントの賢者になりたいんだよ」
「なんだ、そんなの分からないよ」

 ポロは風のお兄ちゃんが帰ってくるのを待って、早速たずねました。

「ねえねえ、風にいちゃん」
「なんだ、ポロ?」
「あのさ、ポロ、賢者になりたいんだ。ゲームの賢者じゃないよ、本物だよ。お兄ちゃん、賢者のこと何か知ってる?」
「う〜ん。たしか、イエスが生まれる前に東方の三賢者っていう人が来たっていう話が有名だなあ」
「それはちょっと昔すぎるなあ」
「じゃあ、O.ヘンリーという人の小説に“賢者の贈り物”っていう小説があるよ」
「あ、ポロ知ってる。そういえば音読したことがあったな。時計の鎖と櫛を贈るんだけど、行き違いで、その時すでに、お互いに不必要なものだったっていう話」
「ああ、それだよ」
「賢者ってなかなか複雑なんだねえ」

・・・以下略・・・


おしまい


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先頭 表紙

ミタさん。やっぱりこれからは賢者の時代だよね。 / ポロ ( 2004-10-15 22:46 )
魔法使い、僧侶…忍者…ウィザードリィ?ドラクエでも賢者は強いのです。よし、私も賢者になろう!(笑) / みた・そうや ( 2004-10-15 07:40 )

2004-10-14 ポロの日記 2004年10月13日(波曜日)ないしょのマルエツ その1

ないしょのマルエツ その1


 ずっとぐずついた天気が続いていますが、今日も朝から雨だったので、せんせいが愛車のユードラで奥さんを会社まで送ることになりました。

ポ「ポロも行くよ〜!」

 台風22号の強い雨でユードラは少しきれいになっていました。

ポ「せんせい、出発進行!」

 暖機運転を終えたユードラは雨の街を走り始めました。FM番組はロベルト・シューマンの交響曲を流しています。

ポ「せんせい、これ何番?」
せ「第3番の“ライン”だね」
ポ「ラインか〜。ポロね、こんどお話に出てくる宇宙船の名前を“ローレライ”にしようと思ってるんだ」
せ「そうか」

 工房から少し走ると、クルマの多い通りに出ます。せんせいは、交通量の多い国道298号線をさけて、いつものけもの道に進路をとりました。

ポ「いちゅうともこ!」
ポ「いちゅうぶーか!」
せ「ポロ、何を言ってるんだ?」
ポ「道路に書いてある」
奥「あ、それは遠くの文字から読むのよ。子供注意とカーブ注意」
ポ「じゃ、“れま止”もホントは止まれなんだな」
奥「トラックだって見る側によっては右から左に社名が書いてあったりするから気をつけるのよ」
ポ「わ、言ってるそばから“ぎょうさんこますかぶ〜”っていうトラックが来た!」
奥「(株)増子産業よ」
ポ「そ〜か〜、やっと長年の謎が解けたぞ。今日は勉強になるなあ」
せ「ポロの音楽コラムを読んでくれている人には、絶対この姿は見せられないな」
ポ「せんせい、それは想像力の欠如だよ。ポロはこういう猫なのさ〜。真実は曲げられない」
奥「ダッシュボードの上は何かの時に危ないから、ちゃんと座席に戻ったほうがいいわ、ポロちゃん」
ポ「だって、ポロ、小さいから外が見えないんだもん」
奥「じゃあ、あたしの膝の上に来てもいいから」
ポ「わーい!」

 ユードラは奥さんの会社がある電気羊市を快調に進んでいきました。

奥「雨はいつまで続くのかしらね」
ポ「猫集会でいつも会う長老猫の玄(げん)さんがね、晴れても長くは続かないって」
奥「天気予報をする猫がいるの?」
ポ「玄さんはね、環境リテラシーの専門家なんだ」
奥「環境リテラシーってなに?」
ポ「あのさ、お料理って目で見たり匂いの様子で火を止めたり、混ぜたりする具合を決めるよね。お医者さんもさ、患者さんの様子、たとえば熱のサインだとか脈拍のサインを観察してどうすればいいか考えるよね。だからさ、環境のサインを読み取って判断するのが環境リテラシーなの」
奥「まあ、なんだかすごいのね」
ポ「猫は本も読まないしテレビも見ないけど、情報は全部五感から事実として入ってくるんだよ。全部の猫じゃないけど」

 ポロは、人のことをさも自分のことのように得意げに話しました。

つづく

先頭 表紙

2004-10-13 ポロの日記 2004年10月13日(波曜日)ないしょのマルエツ その2

ないしょのマルエツ その2


 ユードラはJR最強線弁慶駅を過ぎて、奥さんの勤めるテクニカル・イラストレーションの会社に近づきました。

奥「あ、とむさん。帰りに会社の近くのマルエツで買い物していってね。買い物バッグが後ろの座席にあるから。じゃ、夕ご飯、今日もお願いね」
せ「ああ、やっておくよ」
ポ「せんせい、ここにもマルエツがあるの?」
せ「あるよ」
ポ「ホントのマルエツ?」
せ「そうだよ」

 奥さんを会社の前で降ろすと、せんせいは広い道路から離れてユードラを狭い路地に向けました。

ポ「せんせい。マルエツに行くんじゃないの?」
せ「この先にある」
ポ「え〜! だってクルマがすれ違えないくらいの路地だよ」

 目指すマルエツは住宅街の路地に面してひっそりとたたずんでいました。

ポ「わあ、こんなところにお店を隠してるんだね」
せ「別に隠しているわけじゃないだろう」
ポ「せんせい、ここは“ないしょのマルエツ”だね」
せ「たしかに地元の人しか来ないだろうね。でも、もともとマルエツは地域密着型だ」

 ポロは、いつもの保冷バッグに隠れてせんせいと一緒にお店に入りました。入り口でお姉さんがせんせいに10まんえん貯まる貯金箱をくれました。

ポ「わあ、気前がいいな、ないしょのマルエツ。毎日来てたら家の中が貯金箱でいっぱいになっちゃうね、せんせい。どうやってお金を貯めたらいいか分からなくなっちゃうよ」
せ「今日は何かのセールなんだろう」

 お店に入ると、あちらこちらに割引の表示がありました。

ポ「あ、ホントだ。運がいいなあ。今日はセールの日だよ。せんせい、お店のものを全部買えば何百まんえんもお得だよ〜」
せ「そういう問題じゃないだろう」
ポ「そっかなあ」
せ「ポロ、今日の昼は何を食べたい?」
ポ「えっとね〜、かた焼きそばっていうのを食べてみたいなあ、ポロ。せんせい作れる?」
せ「すぐ作れるのを売ってるよ」
ポ「かた焼きそばのキットがあるのか〜」
せ「キットとは言わないけどね」
ポ「わ、マルエツブランドだ。好きな人がいるんだね〜。ワクワクするなあ」

 せんせいは、ポロのためにかた焼きそばキットを買ってくれました。それから野菜やお肉を買って、またユードラに戻りました。帰りの車内では、せんせいから音楽コラムのもとになるお話を取材して、朝のドライブは終わりました。


おしまい


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先頭 表紙

mokoさん。かた焼きそばキット、おいしかったよ〜! / ポロ ( 2004-10-13 23:27 )
ポロさん、朝のドライブ、楽しそうでしたね♪かた焼きそばのキット、そういえばありますね〜私の勤めてる店にも、以前は置いてあったのですが、最近はアイテムも替わって、無くなってしまいました〜でも、結構売れてましたよ♪ / moko ( 2004-10-13 19:31 )

2004-10-07 ポロの日記 2004年10月06日(波曜日)賢者への道 その1

賢者への道 その1


「ポロ、起きておきて!」
「むにゃむにゃ。・・・コイル温度上昇、ジェネレータ起動!」
「なに、寝ぼけてんのよ、ポロ」
「わ、たろちゃん」
「ポロ、久しぶりに晴れたから朝の散歩に行こうよ」
「ん〜、ポロは夜型なんだ。デカルトの生まれ変わりって言われてる・・・」
「それって誰よ?」
「早起きしたのが原因で死んじゃった人だよ」
「あ、分かった。“我重い。ゆえに割れあり”とか言って床(ゆか)板を割っちゃった人でしょ」
「そうだったかも」

 冷たい風で目を覚ますと、いつのまにかポロは、たろちゃんがペダルを踏むメロンプリンセス号の前カゴに入れられていました。

「わ〜、たろちゃん、ここはどこ〜!」
「おはようポロ!」
「わ〜、ポロの許しもなく勝手に自転車に乗せないでよ〜」
「久しぶりのいい天気だからさ、学校に行く前に笹目川の遊歩道までお散歩よ」

 たろちゃんの自転車メロプリ号は、ほどなく笹目川の自然遊歩道につきました。ポロたちは自転車を降りて歩き始めました。空は快晴。朝陽を浴びた顔に、涼しい秋風もやってきました。

「目、さめた?」
「あと一週間くらいかかるかも〜。ふあ〜」
「ほら、見てよ。いい気持ちよ」
「ああ、ここってずっと前にラフレシアが咲いてたところだ」
「何言ってんのよ」
「あ、ちがった。モウセンゴケだった。でも、それもちがうかも」
「すっかり秋だね〜」
「うん」
「ポロ、なんか話題ないの?」
「えっと、えっと。あ、そういえば、ポロ、賢者になることにした」
「何よ、それ。また、とむりんに何か焚(た)きつけられたの?」
「ちあうよ。ポロがホントにそう思ったんだよ」
「ポロがなりたいのってどういう賢者?」
「あのね。カッコいいんだ」
「どういうふうにカッコいいの?」
「とにかくカッコいいんだよ」
「カッコいいから憧れてるの?」
「そじゃないけどさ。貧乏の時でもお金持ちになってからも生活変わらないんだ」
「あ、その話分かった。ずっと前にとむりんがさ、今、自分はワープロを持っていないけれどワープロさえあれば小説家になれると思っている人は、ワープロを手に入れても小説家になれない、とか言ってた」
「あ。それも同じかも」
「チャンスさえあれば有名になれるとか思ってる人の多くもチャンスが来てもモノにできるかどうか分からないとも言ってた」
「あ、それも同じかも」
「あたしね、絵を描いててね、先生に言われる前に描けるところは全部描いちゃうの。あとで注意されてから、あ、そのとおりだなんて思うのくやしいから」
「がび〜ん!」
「どうしたのよ」
「たろちゃんは、もう賢者だったのか!」
「そんなことないよ、賢者はもっとすごいんだから。モンスターとか出てきてもやっつけちゃうしさ、未来の事は分かっちゃうしさ」
「それはゲームの賢者だよ〜。ポロはくやしいよ〜、もうぜったい賢者になってやる」
「あんた、とむりんの弟子なんだから頑張んなさいよ」
「うん。世界最初の猫賢者だぞ〜」
「ポロ、見て。川に鳥が泳いでる」
「鴨かも〜」
「へんな駄洒落」
「普通にしゃべったんだよ〜」
「わ、頭の上になんて飛び乗らないでよ!」
「だって、犬が散歩してるんだもん」


つづく

先頭 表紙

2004-10-06 ポロの日記 2004年10月06日(波曜日)賢者への道 その2

賢者への道 その2


 やさしそうなおばさんが小さなコリーのような犬を連れてすれ違いました。

「あら、ごめんなさいね」
「いえ、だいじょうぶです。ほら、ポロ、もう降りてよ」

 ポロはピョンと遊歩道に飛び降りて、歩き始めました。

「あそこのあずま屋で引き返すわよ」
「うん。ポロさ、今くらい“言われて気づくことは言われなくても気づく”っていう言葉の意味が分かったことはないな」
「なんだか下手な英訳ソフトみたいな言い方だけど、あたしたちにはそれしかないよね」
「なんだ。たろちゃんは、とっくに理解してたのか〜。そうかな〜とは思ってたけど、やっぱりゲージツカだったんだ」
「そんなことないけどさ、誰かに習うっていうのは自分に出来ることを前もって全部できるかどうかっていうことでしょ」
「が、がびがび〜ん!」
「どうしたのよ」
「そんなこと言われなくても分かってなくちゃいけないことなのに、ポロは今はじめて気がついたよ〜。前から知ってた気がするのに言葉にできなかったよ〜」
「だって、それができなかったら、いったい教える側はどうするのよ。言われなくても分かるようなこと教えるんだったら、そんな人、誰に習ったって一緒じゃない」
「うわ、ポロに厳しい追い討ちだ〜。賢者への道のりは険しいぞ。やっぱりポロは天才が分相応かも」
「天才だって同じよ。それに、天才は、なろうと思ってなれるもんじゃないでしょ。天才に生まれついちゃうんだから」
「そだ。ポロはもともと天才だったんだ。ははは。な〜んだ、思いだしたぞ。ポロはもともと天才じゃないか〜」
「ほら、変なこと言ってないで帰るわよ。朝ご飯おいしいから〜」
「わ、たろちゃん走らないでよ〜」
「自転車置いたところまで競走」
「わ〜待ってよ〜!」

 たろちゃんは、どんどん走って行ってしまいました。ポロも久しぶりに力いっぱい走りました。
 それからメロプリ号に乗って工房に戻ると、ポロは朝ご飯を2杯もおかわりしたのでした。


おしまい


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2004-09-27 ポロの日記 2004年9月21日(熱曜日)たろちゃんとランチ

たろちゃんとランチ


「ポロ、お昼なに食べる?」
「あれ、たろちゃんお休みなの?」
「うん、体育祭の代休」
「せんせいは?」
「とむりん、どっか出かけちゃったよ」
「何でも作ってくれる?」
「作れるものならね」
「あのさあ、ポロ、すっごく食べたいものがあるんだ」
「なによ?」
「笑わない?」
「可笑しけりゃ笑うわよ。笑おうと思って笑うんじゃないもん」
「じゃ、よそうかな」
「笑われたと思わないでウケたと思えばいいじゃん」
「そっか。そだね。あのさ、お子様ランチのはじっこについてくるオレンジ色のスパゲティあるじゃない」
「あ、あるある。ケチャップ味の」
「そうそう、それだよ。あれだけで一人前食べたいな」
「ポロ、いいこと言うね。そういえば、小さかった頃、あれだけいっぱい食べたかったな」
「でしょでしょ。ポロさ、あれが食べたくてスパゲティナポリタンとか頼んでもさ、違うんだよ。あれはナポリタンじゃないんだよ」
「そういえば、なんにも入ってないわよね。刻んだタマネギとかさ、肉とかさ」
「そ〜なんだよ。ケチャップだけだと思うな。スパゲティのかけそばだよね」
「よし、かけスパゲティにしよう!」
「わ〜い! ポロの人生の夢がやっと叶うぞ〜」
「ちょっと大げさじゃないの」
「うれしいんだよ〜」

 さっそくたろちゃんは大きめのお鍋にお湯を沸かし始めました。塩はちょっと多め。ポロはスパゲティーの量を2人前、計量穴を通して計りました。
 たろちゃんはフライパンにオリーブオイルを少し、それからトマトケチャップをどぼどぼと入れて、火をつけてかき混ぜました。そこにゆで上がったスパゲティーを入れてからめると、もうできあがりです。
 たろちゃんは味見をすると、なんか違うと言って、お砂糖を少しまぶしました。もう一度味見をすると、これこれと言ってフライパンを火からおろしました。
たろちゃんが手早くお気に入りのパスタ皿に盛りつけると、ポロたちはダイニングの大きなテーブルのはじっこに向かいあいました。

「いっただきま〜す!」

 2人は夢中で食べ始めました。

「ん、ん、ん、ん、んんんん、んま〜い! んますぎる!!」
「ホント、ずっとこれ食べたかったのよね、かけスパ。どうして気がつかなかったんだろう」
「やっぱり発想の問題だと思うな」
「ポロ、お手柄!」
「でもさ、栄養かたよってそうだよね」
「そういうのはとむりんに任せとけばいいよ。あたしたちは食べたいものを食べるだけ」
「そだ、それが人生だ〜!」
「いちいち大げさだねえ、ポロは」
「たろちゃんは、かけスパのレストランを開けると思うな」
「誰が食べに来るのよ」
「ポロたちみたいな人がきっといるよ」
「かけスパだけじゃダメだと思うな」
「じゃさ、トッピングで工夫しよう。ドライバジルとか粉チーズとかペッパーソースとかさ」
「やってみようか」
「わ。バジリコ、んまい!」
「粉チーズも!」
「きゃあ〜、ポロは幸せだ〜!」
「あはは、ポロの口のまわりケチャップ色だよ〜」
「いいの! そんなこといいんだってば〜!」

 この日、ポロとたろちゃんは人生で一番楽しいランチタイムを過ごしました。


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先頭 表紙

mokoさん。たろちゃんの作り方は、ただの思いつきだから味は保証できないかも。でも、ポロてきにはおいしいかったんだな〜。 / ポロ ( 2004-10-06 00:57 )
‘スパゲッティのかけそば’!なるほど〜結構、スーパーのお弁当にも入ってますよ♪なるほど〜そうやって作るのですね!今度私も作ってみようかな? / moko ( 2004-10-02 18:01 )

2004-09-26 ポロの日記 2004年9月29日(波曜日)よく当たる占い その1

よく当たる占い その1


 ポロが裏神田の路地裏を歩いていると、占い師のおばさんから声をかけられました。

「ちょいとお待ち。おまえさん、ただの猫じゃないね」
「え、ポロのこと?」
「そうじゃ。今日は凶相がでておる。特別に見料は無料じゃ、ここへ座るがよい」
「おばさん、エラそうな物言いするんだねえ〜。こういう占い師はテレビでしか見たことないな」
「おばさんではない、ちゃんとエリーザベス京子という名前があるわい。それにエラそうなのは職業柄都合がよい」
「まあ、いいや、エリザベスさん占ってよ」
「エリーザベスじゃ!」

 ポロが小さなテーブルを隔ててエリーザベス京子さんと対面すると、ロウソクの炎の前に、大きな水晶の玉が用意されました。

「大きな水晶だねえ」
「ふふふ、これは水晶ではない。これこそオリハルコンの玉じゃ」
「わ、オリハルコンてホントにあったのか〜」
「わしの婆さまが若いころ、アトランティスの遺跡で見つけて持ち帰ってきたのじゃ。それ以来、未来のことは何でも分かるようになった」
「へえ、すごいなあ。アトランティスってホントにあったのか〜。それより早くポロの事を占ってよ」
「おお、もう見えてきよった」
「何が見えるの?」
「う〜ん。これはどこかの山里じゃ。貧相な中年の男とおまえさんが見える」
「あ、それってせんせいかも」
「わしの見立てでは、こやつは食い詰めた売れない作曲家というところだな」
「わ、ずばり! あ、でも、ちあうよちあうよ、売れないわけじゃないよ。みんなが買ってくれないだけだよ」
「同じことじゃ」
「そっかなあ〜」
「掘っ立て小屋が見える。隙間だらけじゃ。ここに住むつもりかのう。修理すればなんとかなるが、このままだと冬は越せんのう」
「それって、いつのこと?」
「今年の冬じゃ」
「え〜、せんせいって、もうすぐ食い詰めちゃうの?」
「そう。ぱったり仕事が途絶えて家族から見離されるという感じじゃな」
「え゛〜、そうなのか〜!」
「おう。麦畑を作っておる。へたくそじゃのう。これでは収穫は無理というものじゃ」
「ぎく!」
「どうした。何か思い当たることでもあるのかの」
「な、なんにもないよ、そんなの」

 ポロは、この占い師の副業がペテン師ではないことを確信しました。これはまぎれもなく猫の星の教科書にも出ている未確定のせんせいの未来のひとつです。(詳しく知りたい人は、ポロのお話の部屋の最初のほうにある「セロ弾きジョーンズ」を読んでね) それがこの冬、こんなに早くやってくるとは。ポロは、この事態を食い止めるためにはるばる猫の星からやってきたというのに。いったい今まで何をやってきたんだポロは。そう思うと、座っているのに膝がだんだんガクガクしてきました。
 こうしちゃいられない。ポロは最後の手段をとることにしました。

「おばさん、ちょっとだけ待ってて。すぐ戻るから」
「おばさんではない、エリーザベスじゃ」
「エリーザベスさん、ちょっと待っててね」

 ポロは少し離れた物陰に走り込み、腕時計型通信機のスイッチを入れました。


つづく

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2004-09-25 ポロの日記 2004年9月29日(波曜日)よく当たる占い その2

よく当たる占い その2


「オープンチャンネル・ドーラ。こちらアメン。近傍を航行中のドーラ・スターフリート艦は応答せよ」
「こちら、ドーラ・スターフリート第7艦隊所属、第3機械化工兵大隊所属巡洋艦“エレクトラ”のドレーク艦長です。地球から500万キロのところを航行中です」
「ドレーク艦長、ちょうどいいところを通りかかってくれた」
「アメン王子、お久しぶりです。ご命令をどうぞ」
「こちらの現在位置は分かるか」
「はい、ピンポイントで照準しています」
「ここから、北に10メートルのところにオリハルコン球があるのは分かるか」
「はい、分かります」
「そこに映っている景色がどこだか調べてくれ」
「はい。いま分かりました。北海道というところです。アメン王子の現在位置から1000キロ弱ほど北東方向になります。こちらもピンポイントで照準しました。森と原野と小さな小屋があります」
「よし、その小屋の補修作業を頼む。冬を安全に過ごしたい」
「分かりました。人工的な地熱融雪装置などは必要ですか?」
「ああ、地下にこっそり用意してくれ。それから、麦畑を作る予定だ。小屋の周囲の土を養分たっぷりのものと交換しておいて欲しい。ただし、表面上は手付かずの原野として残すんだ」
「了解。地下から作業を行ないます。ジェット・モグラを含めて、直ちに一個中隊を現場に送り込みます」
「よろしく頼んだぞ」
「了解」

 ポロはエリーザベスさんのところに戻りました。

「遅かったのう。もう次の場面が見えておる」
「今度はどんなの?」
「積もった雪の中で先ほどの食い詰めた中年男とお前さんが行き倒れておる。こりゃダメかも知れん」
「わ、それは大変だ。エリーザベスさん、またちょっと待っててね」

 ポロは、さっきの路地裏に戻りました。

「エレクトラ応答せよ」
「はい、エレクトラのドレークです」
「今、オリハルコン球が映し出している場所は特定できるか」
「はい、先ほどの小屋からあまり遠くないところです」
「そこで、この冬にせんせいが行き倒れるらしい。なんとかならないか?」
「それなら、温泉を掘削しておきましょう。通りがかったときに温まることができます」
「よろしく頼んだぞ」
「了解。ボーリング設備を降下させます」

 ポロは大急ぎでエリーザベスさんのところに戻りました。

「おや、不思議なこともあるものよ。この男、露天の天然温泉で暖をとっておる。運のいいことよ」
「でしょでしょ、あ〜よかった」
「しかし、小屋に戻っても食べ物がない。これでは飢え死にじゃ」

 ポロは、またまたさっきの裏路地に戻りました。

「ドレーク艦長。小屋には越冬に十分な食料を用意してくれ。あ、イモようかんを忘れるなよ」
「はい、イモようかんですね。保存期限の長いレトルトが中心になりますが、屋内用の水耕栽培設備を小屋に設置しますから、野菜類は常に新鮮なものが食べられると思います」
「助かる。では頼んだぞ」
「了解」

 ポロは、またエリーザベスさんのところに戻りました。


つづく

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