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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-09-26 ポロの日記 2004年9月29日(波曜日)よく当たる占い その1
2004-09-25 ポロの日記 2004年9月29日(波曜日)よく当たる占い その2
2004-09-24 ポロの日記 2004年9月29日(波曜日)よく当たる占い その3
2004-09-23 ポロの日記 2004年9月20日(光曜日)頭のよくなる本 ビフォーアフター
2004-09-22 ポロの日記 2004年9月19日(風曜日)楽譜を買いに その1
2004-09-21 ポロの日記 2004年9月19日(風曜日)楽譜を買いに その2
2004-09-20 ポロの日記 2004年9月14日(熱曜日)ロボット変身キット
2004-09-19 ポロの日記 2004年9月13日(光曜日)お弁当を持って その1
2004-09-18 ポロの日記 2004年9月13日(光曜日)お弁当を持って その2
2004-09-17 ポロの日記 2004年9月12日(風曜日)ポロのお弁当 その1


2004-09-26 ポロの日記 2004年9月29日(波曜日)よく当たる占い その1

よく当たる占い その1


 ポロが裏神田の路地裏を歩いていると、占い師のおばさんから声をかけられました。

「ちょいとお待ち。おまえさん、ただの猫じゃないね」
「え、ポロのこと?」
「そうじゃ。今日は凶相がでておる。特別に見料は無料じゃ、ここへ座るがよい」
「おばさん、エラそうな物言いするんだねえ〜。こういう占い師はテレビでしか見たことないな」
「おばさんではない、ちゃんとエリーザベス京子という名前があるわい。それにエラそうなのは職業柄都合がよい」
「まあ、いいや、エリザベスさん占ってよ」
「エリーザベスじゃ!」

 ポロが小さなテーブルを隔ててエリーザベス京子さんと対面すると、ロウソクの炎の前に、大きな水晶の玉が用意されました。

「大きな水晶だねえ」
「ふふふ、これは水晶ではない。これこそオリハルコンの玉じゃ」
「わ、オリハルコンてホントにあったのか〜」
「わしの婆さまが若いころ、アトランティスの遺跡で見つけて持ち帰ってきたのじゃ。それ以来、未来のことは何でも分かるようになった」
「へえ、すごいなあ。アトランティスってホントにあったのか〜。それより早くポロの事を占ってよ」
「おお、もう見えてきよった」
「何が見えるの?」
「う〜ん。これはどこかの山里じゃ。貧相な中年の男とおまえさんが見える」
「あ、それってせんせいかも」
「わしの見立てでは、こやつは食い詰めた売れない作曲家というところだな」
「わ、ずばり! あ、でも、ちあうよちあうよ、売れないわけじゃないよ。みんなが買ってくれないだけだよ」
「同じことじゃ」
「そっかなあ〜」
「掘っ立て小屋が見える。隙間だらけじゃ。ここに住むつもりかのう。修理すればなんとかなるが、このままだと冬は越せんのう」
「それって、いつのこと?」
「今年の冬じゃ」
「え〜、せんせいって、もうすぐ食い詰めちゃうの?」
「そう。ぱったり仕事が途絶えて家族から見離されるという感じじゃな」
「え゛〜、そうなのか〜!」
「おう。麦畑を作っておる。へたくそじゃのう。これでは収穫は無理というものじゃ」
「ぎく!」
「どうした。何か思い当たることでもあるのかの」
「な、なんにもないよ、そんなの」

 ポロは、この占い師の副業がペテン師ではないことを確信しました。これはまぎれもなく猫の星の教科書にも出ている未確定のせんせいの未来のひとつです。(詳しく知りたい人は、ポロのお話の部屋の最初のほうにある「セロ弾きジョーンズ」を読んでね) それがこの冬、こんなに早くやってくるとは。ポロは、この事態を食い止めるためにはるばる猫の星からやってきたというのに。いったい今まで何をやってきたんだポロは。そう思うと、座っているのに膝がだんだんガクガクしてきました。
 こうしちゃいられない。ポロは最後の手段をとることにしました。

「おばさん、ちょっとだけ待ってて。すぐ戻るから」
「おばさんではない、エリーザベスじゃ」
「エリーザベスさん、ちょっと待っててね」

 ポロは少し離れた物陰に走り込み、腕時計型通信機のスイッチを入れました。


つづく

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2004-09-25 ポロの日記 2004年9月29日(波曜日)よく当たる占い その2

よく当たる占い その2


「オープンチャンネル・ドーラ。こちらアメン。近傍を航行中のドーラ・スターフリート艦は応答せよ」
「こちら、ドーラ・スターフリート第7艦隊所属、第3機械化工兵大隊所属巡洋艦“エレクトラ”のドレーク艦長です。地球から500万キロのところを航行中です」
「ドレーク艦長、ちょうどいいところを通りかかってくれた」
「アメン王子、お久しぶりです。ご命令をどうぞ」
「こちらの現在位置は分かるか」
「はい、ピンポイントで照準しています」
「ここから、北に10メートルのところにオリハルコン球があるのは分かるか」
「はい、分かります」
「そこに映っている景色がどこだか調べてくれ」
「はい。いま分かりました。北海道というところです。アメン王子の現在位置から1000キロ弱ほど北東方向になります。こちらもピンポイントで照準しました。森と原野と小さな小屋があります」
「よし、その小屋の補修作業を頼む。冬を安全に過ごしたい」
「分かりました。人工的な地熱融雪装置などは必要ですか?」
「ああ、地下にこっそり用意してくれ。それから、麦畑を作る予定だ。小屋の周囲の土を養分たっぷりのものと交換しておいて欲しい。ただし、表面上は手付かずの原野として残すんだ」
「了解。地下から作業を行ないます。ジェット・モグラを含めて、直ちに一個中隊を現場に送り込みます」
「よろしく頼んだぞ」
「了解」

 ポロはエリーザベスさんのところに戻りました。

「遅かったのう。もう次の場面が見えておる」
「今度はどんなの?」
「積もった雪の中で先ほどの食い詰めた中年男とお前さんが行き倒れておる。こりゃダメかも知れん」
「わ、それは大変だ。エリーザベスさん、またちょっと待っててね」

 ポロは、さっきの路地裏に戻りました。

「エレクトラ応答せよ」
「はい、エレクトラのドレークです」
「今、オリハルコン球が映し出している場所は特定できるか」
「はい、先ほどの小屋からあまり遠くないところです」
「そこで、この冬にせんせいが行き倒れるらしい。なんとかならないか?」
「それなら、温泉を掘削しておきましょう。通りがかったときに温まることができます」
「よろしく頼んだぞ」
「了解。ボーリング設備を降下させます」

 ポロは大急ぎでエリーザベスさんのところに戻りました。

「おや、不思議なこともあるものよ。この男、露天の天然温泉で暖をとっておる。運のいいことよ」
「でしょでしょ、あ〜よかった」
「しかし、小屋に戻っても食べ物がない。これでは飢え死にじゃ」

 ポロは、またまたさっきの裏路地に戻りました。

「ドレーク艦長。小屋には越冬に十分な食料を用意してくれ。あ、イモようかんを忘れるなよ」
「はい、イモようかんですね。保存期限の長いレトルトが中心になりますが、屋内用の水耕栽培設備を小屋に設置しますから、野菜類は常に新鮮なものが食べられると思います」
「助かる。では頼んだぞ」
「了解」

 ポロは、またエリーザベスさんのところに戻りました。


つづく

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2004-09-24 ポロの日記 2004年9月29日(波曜日)よく当たる占い その3

よく当たる占い その3


「不思議なこともあるものじゃ。この男、いつの間にか温かいスープを食べておる」
「でしょでしょ」
「でしょでしょって、お前さんが何かしたのか?」
「ぷるぷるぷる! ううん、ポロは何もしてないよ」
「こんなに占いがコロコロ変わるのは初めてじゃ」
「ポロも、こんなによく当たる占いは初めてだよ」
「なぜ、当たると分かるのじゃ? 普通は、何か都合の悪い結果が出ると、そんなのはウソだと言うものじゃが」
「や、野生の勘だよ。ポロの野生の勘」
「おまえさん、野良じゃなくて野生なのか?」
「イリオモテ山猫みたいに言わないでよ」
「話をするし、怪しい猫じゃの」
「怪しくなんかないよ。とっても役にたったよ、エリーザベスさんの占い」
「またいつでも来るがよい。今度はタダではないぞ」
「うん。葉っぱのお金を持ってくるよ」
「茶化すでない!」
「じゃあね、アリガト!」

 ポロは工房へ向かって歩き始めました。

「ドレーク艦長」
「はい」
「今の状況を」
「現在、本艦は地球周回軌道に向かって航行中、30分後に到達予定。しかし、すでに機械化工兵中隊は強襲揚陸艦で戦闘降下中であります」
「通常降下ではなく戦闘降下か。大気との摩擦で発光して目撃されそうだな」
「なるべく目立たぬよう指示を出してあります」
「作業計画は?」
「中隊指揮官の計画によると、ジェットモグラが行なう小屋前の平地の地表から深さ50センチ以下の部分の客土終了は明日未明、温泉のボーリングは最短で一日、水脈によっては数日かかるかもしれません。小屋の補修は今晩中に終わります」
「よろしく頼む」
「お任せください」
「以上だ」
「了解」

 ポロが工房に戻ると、せんせいはまだ起きていました。

「せんせい、今日は夜更かしだね」
「ああ、仕事の依頼があった。大仕事だ」
「え〜、仕事がなくなって食い詰めるんじゃないの?」
「何を縁起でもないことを言ってるんだ。もうバッチリだぞ。イモようかんだって買ってやる」
「そうだったのか〜」
「何がっかりしてるんだ。普通は喜ぶものだぞ」
「そうなんだけどさあ。あ、そだ」
「なんだ」
「あのさ、その仕事が終わったら北海道に行こうよ!」
「お金かかるじゃないか」
「あのさ、すっごくいいところ知ってるんだ。泊まるのタダだよ、おまけに天然温泉付き。露天だけど。それにさ、ひと冬泊まっても食事だってタダだよ」
「そんなうまい話があるものか」
「ホント、怪しい話じゃないんだよ」
「もう遅いから寝なさい」
「ホントだよ〜!」

 次の朝、テレビで“北海道で隕石落下か”というニュースをやっていました。あ〜あ、やっぱり見られちゃった。だから通常降下すればよかったのに。


おしまい



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エレクトラに緊急連絡、はやく逃げろ〜! / ポロ ( 2004-10-02 12:49 )
ありがとうポロさん、探していた艦隊の位置が特定できたよ。これまでわが艦隊が受けた借りは還させてもらうよ。フフフ。 / shinの生別れの兄 ( 2004-09-30 21:46 )
ミタさん。この温泉は、どこの旅行会社もまだ知らないよ。入りに行きたいね〜。 / ポロ ( 2004-09-29 22:07 )
せっかく準備したからちょっと勿体なかったけど、息抜きに行くのならば究極の秘湯ですね〜。 / みた・そうや ( 2004-09-29 21:23 )
あはは。ポロちゃんが色々とやったから、未来が良い方向に変わったのでしょうか?でも、よかった。(^^) / みた・そうや ( 2004-09-29 17:24 )

2004-09-23 ポロの日記 2004年9月20日(光曜日)頭のよくなる本 ビフォーアフター

頭のよくなる本 ビフォーアフター


「せんせい。ポロさ、きのう夜なべしてピーターさんの頭のよくなる本を読んだんだ」
「そうか、がんばったね」
「だからさ、頭がよくなったかどうか試してよ。でもさ、10桁のかけ算の暗算をしなさいとか、そういうのじゃなくてさ」
「よし。じゃあ質問だ」
「いいよ、とびきりの難問だよ」
「第1問。科学の限界についてひとつでいいから答えよ」
「・・・・・???」
「たくさんあるだろう?」
「そんなの分かんないよ〜。誰にも分かるもんか〜。そんなの知ってるの神さまだけだよ」
「それでは、ひとつひとつ検証してみるよ。ポロには分からないことかどうかよく考えてみるんだよ」
「のぞむところだ〜」
「最初は熱力学の法則を破ることだ。たとえば永久機関」
「あ、それ無理。・・・・・あ、もうあった。でもさ、それって科学の限界じゃない気がするな」
「では次だ。科学者であっても考えたり計算したり、あるいはさせたりするのに時間がかかる」
「うん」
「人の一生を超える量の計算」
「あのさ、代々弟子に受け継がれていけば?」
「それなら、人の種としての寿命を超える計算だ」
「そっか。時間の制約は科学の限界だね。うん、これならポロにも分かるな」
「まだあるぞ。今度は量的な問題だ。宇宙全体の重さ、大きさ以上のものを作ることはできない。それは科学ではなく技術の問題だが、実は科学でも扱う意味がない」
「あ。それって、一番小さい素粒子の直径を光が進む時間より短い時間は意味がないっていうのに似てるね」
「最高温度の話もしたことがあったね」
「そだ。最低温度はマイナス273.15度の0度ケルビンだけど、最高温度は無限ていうのは正しくないよね。えっと、確か、物質とエネルギーは等価だから、宇宙最小の素粒子ひとつを残して全てをエネルギーに変えて、その素粒子に注ぎ込めばそれが宇宙の最高温度になって、それ以上は無意味な温度だったよね」
「どうだい?」
「言われてみれば、分かるようなことばっかりだ。言われて分かることは言われなくても分かるっていうのが、せんせいの先生の教えだったよね。そのとおりだなあ」
「そうだね」
「ポロったら全然あたまよくなってなかった。ピーターさんにお金返してもらおう」
「何言ってるんだ。書物というのは読むことに対する代価を払うんだ。もう読んじゃっただろう。それに、きのうの本代はピーターさんの夕ご飯代だって言ってたじゃないか」
「あ。そだった。きのうの夕ご飯おいしかったかなあ、ピーターさん」
「だいじょうぶ、おいしかったに違いないよ」
「でも、やっぱりピーターさんに一言助言しておかなくちゃ。ちっとも頭はよくなりませんでしたって」
「あのさ、ポロ。今の2人の会話をもう一度、じっくりと読み返してごらん」
「どうして?」
「ポロ、ものすごく頭よくなってないか?」
「ポロ、自分のことはよく分かんないよ〜」

 みなさんは、どう思いますか?


おしまい

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shinさん、あのね、数学クイズの本だよ。ホントのこと言うと、ポロ、全然分かんなかった。「√を10個以上重ねれば、より正解に近づきます」なんていう解説が並んでいます。 / ポロ ( 2004-09-21 01:32 )
その本、まだ手にとったことが無いのですが、どうやら「鈴の付いた鉢巻を頭に着けて、その頭を前後左右に振ると・・・」というような内容ではないみたいですね(失礼しました) / shin ( 2004-09-20 20:14 )

2004-09-22 ポロの日記 2004年9月19日(風曜日)楽譜を買いに その1

楽譜を買いに その1


「ポロ。楽譜を買いに行くけど、一緒に来るかい?」
「うん、行く行く」

 今日の夕方、暑い日中を避けて、せんせいと楽譜を買いに行くことになりました。

「ねえ、ユードラで行くの?」
「そうだよ」
「でもさ、こないだの浅間山の噴火でユードラは“火山灰1号”になっちゃったよ」
「フロントスクリーンだけきれいにしていけば大丈夫」
「あ、でもさ、やっぱり見栄の問題とかないの?」
「ノープロブレム」

 せんせいは火山灰1号に乗り込むと、ほとんどカラのバッテリーにムチ打ってエンジンをかけました。

 きゅるるるる、きゅるるるるる、きゅる、ぶおんぶおん!

 火山灰1号は作曲工房の駐車場からなんとか出発することができました。

「ねえ、せんせい。汚れててカッコ悪いよ」
「走行距離だけなら3000キロの新車じゃないか。文句あるか」
「あるよ〜、新車っていうのは新しいクルマのことだよ〜。走行距離が短いのはせんせいが乗らないだけじゃないか〜」
「いや、地球の環境に配慮してるって言って欲しいなあ」
「あ、せんせい。見て見て」
「どこをだい?」
「あれあれ。あそこに火山灰2号がいるよ」
「お、火山灰みんなでかぶればコワくない」
「そういう問題じゃないよ〜」

 となりの電気羊市の公共駐車場に着くころには、お日さまも建物の陰に隠れるほど低くなっていました。ポロは、せんせいのバッグに滑り込んで、ふちに前脚をかけると首を外に出しました。

「せんせい。夕方っていいね。なんだかステキだな」
「逢魔時(おうまがとき)って言うんだぞ」
「あ、知ってるよ。それに、向こうから来る人の顔がよく見えないから“誰そ彼”で“たそがれ”になったんだよ」
「おお。どんどん物知りになるなあ、ポロは」

 ケヤキ並木に着く頃には空の色がイイ感じに群青色になってきました。

「あ、せんせい。今日もピーターさんが大道芸やってる」
「そうだね」
「でもさ、見物人が一人もいないよ」

 ポロはピーターさんが夕ご飯を食べられないんじゃないかと心配になりました。でも、せんせいは、すたすたとピーターさんの前を通りすぎてしまいました。
 ポロたちは、いつもの楽譜屋さんに入っていきました。

「せんせい、今日は何を買うの?」
「ドビュッシーだよ」
「ドビュッシーなんていっぱい持ってるじゃないか〜」
「校訂者が違うだけで、それは別の楽譜だと考えたほうがいい。レッスンのために必要な教授資料だ」
「そうなのか〜。せんせいも誰かの楽譜を校訂してみたい?」
「平均律かな。それより、誰にも校訂を許さないような完ぺきな楽譜を書いてみたいよ」
「ふ〜ん」

 せんせいは、いつもの和菓子屋さんの前に来ても歩みを止めませんでした。

「せんせい。そろそろ栗のお菓子の季節だよ」
「ポロ。今、我が家は節約キャンペーンの真っ最中じゃないか」
「そうだけどさ」
「一日家族で270円。ひとり50円ずつ。ポロは20円だ」
「それってさ、電気とか、ついクセで出しっぱなしで使っちゃう水道とか給湯器の話でしょ」
「どれも根っこは一緒さ」
「じゃさ、ポロは270円の和菓子をいま節約したから約二週間分達成だな」


つづく

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2004-09-21 ポロの日記 2004年9月19日(風曜日)楽譜を買いに その2

楽譜を買いに その2


 ポロたちは、またピーターさんの前を通りかかりました。

「ねえ、せんせい。やっぱりピーターさんのところにお客さんがひとりもいないよ」
「もうそろそろ店じまいの時間だからね」
「ピーターさんは、今日は夕ご飯抜きだと思うな」
「そんなことないよ」
「ぜったいそうだ」
「今日の夕ご飯の分の蓄えくらいあるよ」
「じゃ、明日の朝ご飯抜きだよ、きっと。あのさ、ピーターさんの本買おうよ。あそこに並べて売ってるよ。ねえ、和菓子のかわりだよ」

 せんせいはピーターさんの前に立ちました。

「コンニチハ。イラッシャイ」
 ・・・わ、日本語上手!
「初めまして。ピーターさんのお薦めの本を一冊いただきたいのですが」
 ・・・ね、せんせい。あの“頭のよくなる本”ていうのがいいよ
「・・しずかに・・・」
「ナニカ、オッシャイマシタカ?」
「いえ」
「コレナド イカガデスカ?」

 ピーターさんは、ポロの言った“頭のよくなる本”を手に取って薦めてくれました。

「では、それを」
「オナマエ ヲ オシエテクダサイ」

 ・・・・ポロだよ、ポロ!
「・・・しずかに!・・」
「ナンテ オッシャイマシタ?」
「あ、野村茎一と言います」
 ・・・・ポロだってば、ポロ!
「ソノ バッグガ ナニカ イッテイマス」
「あ、ラジオですよ、ラジオ」
「ラジオガ ナカカラ バッグヲ ケッテ イマス」
「あ、気にしないでください。元気なラジオなんです」
「ア、オモイダシマシタ。アナタ、イツカノ腹話術ノ ヒト」
「うわあ、覚えていてくれましたか」

 ピーターさんは、ピーター・フランクルという名前の上にせんせいの名前を書きましたが、ポロの名前は書いてくれませんでした。

 駐車場に戻った頃には、空はすっかり暗くなっていました。

「あ〜あ、ポロの名前も書いて欲しかったなあ」
「あんなところで、頼めないよ」
「でもさ、これでピーターさん、夕ご飯食べられるよね」
「だから、そのくらいの蓄えはあるよ」
「だって、せんせいなんて貯金ないじゃないか〜」
「それとは別。ピーターさんは数学者だから、お金の管理はバッチリだよ、きっと」
「そっか。せんせいも数学の勉強すればいいんだよ」
「そうだね。数学には興味があるけれども、もう時間がない」
「また、それだ〜。ダイじょぶ。せんせいは長生きするよ、ポロが保証しちゃう」
「それは、なんの保証にもならないっていうことじゃないのか?」
「そんなことないよ。ポロの野生の勘は本物さ」

 作曲工房に戻ってから、ポロはピーターさんのサインの上のところに達筆で“ポロ”と書き加えたのは言うまでもありません。


おしまい


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先頭 表紙

せっかくポロさんのサインもおねだりしたのに、特攻服着て夜の集会にお出かけ中とのことで、もらえませんでした〜(涙) / shin ( 2004-09-27 00:11 )
shinさん、ポロのサインもおねだりしてね〜! / ポロ ( 2004-09-20 12:09 )
mokoさん、くやしいからポロが書いたんだよ〜。 / ポロ ( 2004-09-20 12:08 )
本に、書いた方のサインがあると、とっても宝物ですね。よし、今度せんせいのところに行ったら、ウラノメトリアにサインをおねだりしてみよっと。あ、でも、レッスン室に入ったが最後、特訓が始まっちゃって帰してもらえないかも… / shin ( 2004-09-20 10:52 )
あら?ポロさんのお名前も書いてありますよ〜せんせいが書いてくれたのかしら?その本の感想、聞かせてくださいね♪ / moko ( 2004-09-20 07:38 )

2004-09-20 ポロの日記 2004年9月14日(熱曜日)ロボット変身キット

ロボット変身キット


 ついにポロもロボット変身キットを手に入れました。

--その1----------

「ねえ、せんせい。実はポロ、ロボットなんだ」

 がしゃ、がしゃがしゃ・・・・がしゃ、がしゃ。

「あれ、ひっかかっちゃったぞ。えっと、このフタはどうやって開くんだったっけな」
「なんだ、練習不足か?」
「せ、せ、せんせいなんかきらいだ〜!」


--その2----------

 ポロは猛練習を積んで上手に変身できるようになったので、今度はナマズのポン吉くんのところで試すことにしました。

「ポン吉くん」
「なあに、ポロ?」
「実はポロ、ロボットだったんだ」

 がしゃん!

「じゃあ、もう僕に悪さできないんだね」
「え、どうして?」
「君は、もうロボット工学3原則によって行動が規制されているんだ」
「??????」
「そんなことも分からないんじゃ、にせ者だな!」
「わ〜、どうしてバレたんだ〜」


--その3---------

「ねえねえたろちゃん。ポロさ、ホントはロボットだったんだ」

 がしゃん! 
 がしゃん!

「ほら、あたしの方が変身が早かった〜。あたしの勝ち〜」
「わ、なんでたろちゃんもロボット変身キット持ってるの?」
「風にいちゃんから借りて練習したのよ〜♪」
「ぐ、ぐれてやる、ぐれてやる〜」


--その4---------

 ポロは宿敵の豆柴ゴロを脅かしてやろうと、ゴロの小屋の前へ行きました。

「ゴロ、これでどうだ!」

 がしゃん!

「わわわわわわわわんわんわんわんわんわん!」
「きゃあ〜、ぜんぜん驚かないじゃないか〜!」

 ポロは一目散で逃げ出しました。


--その5----------

 あ、TackMさんが遊びに来てる。チャンス! 脅かしてやれ。

「TackMさん。実はねポロ、ロボットだったんだ」

 がしゃん!
 
 ばたっ!

 ポロがロボットに変身すると、びっくりしたTackMさんが床に倒れてしまいました。TackMさんは苦しみもがいて、おまけに顔からはみるみる血の気が失せていきました。

「きゃあ、大変だ〜。ポロが驚かしたせいだ〜! せんせい、救急車だよ、救急車!」
「驚いた?」

 TackMさんは、にやにや笑いながら何事もなかったかのように立ち上がりました。

「僕もね、死体変身キットを買って練習したんだよ」
「ホントに心配しちゃったじゃないか。TackMさんのばかばかばかばかばか〜」
「最初にだまそうとしたのはポロちゃんじゃないか〜」
「びえ〜〜〜〜〜」

 ポロは、泣きながら部屋の外に走りでました。


--その6----------

 ポロはロボット変身キットなんかいらないやと思ったので、ネットオークションに出品しました。何日か後、競り落とした人からメールが届きました。アドレスを見たらミタ・ソウヤさんでした。


おしまい


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先頭 表紙

shinさん、そーだったのか〜! / ポロ ( 2004-09-19 00:37 )
(3円の差で落札できなかったなんて、恥ずかしくて言えやしない・・・) / shin ( 2004-09-16 00:48 )
ミタさん、がんばってみんなを驚かせてね。 / ポロ ( 2004-09-15 10:32 )
いやー、この前のお話を見たら欲しくなっちゃって。(笑) / みた・そうや ( 2004-09-15 06:45 )

2004-09-19 ポロの日記 2004年9月13日(光曜日)お弁当を持って その1

お弁当を持って その1


 お昼過ぎ、ポロがお話のアップを済ませてホッと一息ついてついていると、せんせいもリビングにやってきました。

「せんせい、お疲れ。ポロね、今、お話をアップしたところだよ」
「そうか。私も音楽コラムをアップしたところだ」
「あのさ、せんせい。今日ポロのお昼ご飯いらないよ。奥さんがお弁当つくってくれたの」
「それでだったのか」
「なにが?」
「私にもお弁当がある」
「え〜〜! ホント? じゃさじゃさ、一緒にどっかに行って食べようよ」
「天気はいいし、たまにはそうしようか」
「わーい!」

 せんせいは愛車ユードラに積もった埃を払うと、エンジンかかるといいなあ、なんて言いながらキーを差し込んで回しました。

 ぶりりりり、ぶりりりり、ぶおんぶおん!

 ユードラは、ちょっとすねて見せてから目を覚ましました。

「エンジンかかってよかったね〜」
「まったくだ。さあ、行こう」
「どこ行くの?」
「そうだな。秋ケ瀬公園がいいかな」
「わ〜い。そうしようそうしよう」

 秋ケ瀬公園は荒川の河川敷の自然をそのまま残した森と広場の公園です。大きさは南北に何キロもあって、園内には県花サクラソウの自生地もあります。
 ユードラは地元の人しか使わない裏道を快調に走って秋ケ瀬公園を目指しました。ポロは助手席の背もたれのてっぺんに乗っかって、ヘッドレストをつかんでまわりの景色を眺めていました。

「せんせい、今日は世界がまぶしく光ってるね」
「うん、天気がいいからね」
「秋っていいねえ」
「そうだね」
「でもさ、せんせいって全部の季節が好きなんでしょ」
「そうだよ。四季折々、おまけにどんな天気でも最高だ」
「お得だね〜」

 秋ケ瀬橋の手前の分岐を折れて、ユードラは秋ケ瀬公園へと入っていきました。

「ねえねえ、お弁当どこで食べるの?」
「もう少し行くと、森に囲まれた小さな広場があるんだ。今日は平日だし、穴場だと思うよ」

 せんせいはユードラを公園内にいくつもある駐車場のひとつに停めて、レジャーシートやウーロン茶のペットボトルを小振りのトートバッグに入れると、肩から提げて歩き始めました。ポロも4本足で、せんせいの前になったり後ろになったりしながら歩いていきました。
 少し歩くと本当に森に囲まれた誰もいない小さな広場に出ました。

「ここだよ」
「せんせい、ばっちりだよ!」

 せんせいはレジャーシートを広げて、ポロたちの臨時の基地を設営しました。
 ポロは、汚れてしまった肉球をおしぼりで拭いて、お弁当を開けました。


つづく

先頭 表紙

2004-09-18 ポロの日記 2004年9月13日(光曜日)お弁当を持って その2

お弁当を持って その2


「じゃじゃじゃーん! わあ、おいしそう!」
「うん、おいしそうだ」
「このイカリングさ、ポロのリクエストなんだよ。このソースをさ、ピュッとかけてたべると、んまいんだなあ!」
「ソースは、たっぷりだろ」
「そそ。そ〜なんだよ」
「このスパゲティもいけるぞ」
「それね、お弁当用の冷凍ひとくちナポリタンだよ」
「冷凍なのか」
「それでね、これは無塩せきハムっていうんだよ」
「いろいろ覚えたな」

 ポロたちは、あっという間にお弁当を食べ終わってしまいました。

「んまかったなあ。明日もお弁当がいいな〜。奥さん作ってくれるかなあ」
「頼めば作ってくれるよ」

 せんせいがレジャーシートにゴロリと仰向けになったので、ポロもそうしました。

「わー、猫背が伸びる〜」

 すると、どこからかラッパの音が聞えてきました。

「あ、せんせい、誰かがトランペットを吹いてるよ」
「うん、なかなか練習場所がないから、こういうところで吹いているんだろうね」
「キグチコヘイさんかなあ」
「そればっかりだなあ」
「だって、風のお兄ちゃんもコヘイさんのファンなんだよ。ラッパが大好きで大好きで、死んでも口から離さなかったんだ」
「軍務に忠実だったんだ」
「だからさ、そこは関係ないの。ポロたちのコヘイさんは、とにかくラッパが好きだったんだ。何かを好きになるのは才能だよ、せんせい」
「そうだね」
「だから、コヘイさんは風にいちゃんとポロの英雄なんだ」

 秋ケ瀬公園のコヘイさんは、バルブのポジションを変えながら倍音を順番に吹いていきました。いつまでもいつまでも倍音ばかり吹いていました。

「なんか、曲らしいのを吹いてくれないかな、秋ケ瀬コヘイさん。競馬の時のファンファーレとかさ」
「きちんと基礎練習をしているなんて、なかなかいいじゃないか」
「ピアノの練習と一緒だね。あ〜空が青いよ、せんせい」
「よし、あと20分したら帰るぞ」
「は〜い」

 ポロは空を眺めて、森の空気を吸って、トランペットの基礎練習を聞いて、すっかりリフレッシュしたのでした。


おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

ポロの掲示板はここ。
ポロのひみつの部屋

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mokoさん、つっこみアリガト! 今日は、お弁当じゃなかったの。でも、せんせいがおいしい焼きそば作ってくれた。 / ポロ ( 2004-09-14 23:30 )
momoも「お弁当用ナポリタン」、好きですよ♪基礎練習って、聴いてる人にとってはつまらないでしょうね〜演奏してる本人もそう感じる時がありますものね^_^;大学時代、あちこちから色々な楽器の基礎練習の音が聴こえたのを思い出しました〜 / moko ( 2004-09-14 21:18 )

2004-09-17 ポロの日記 2004年9月12日(風曜日)ポロのお弁当 その1

ポロのお弁当 その1


「ポロちゃん、お買い物に行くけど一緒に行く?」
「うん、行く行く!」

 ポロは日曜日の午後に奥さんと生協というマルエツに行きました。奥さんの自転車はキャベツ丸二世号(キャベツ丸II)と言います。一世号を風のお兄ちゃんが保育園時代に命名したので、買い替えてもそのまま二世号になりました。お兄ちゃんたちは略して“キャベ・ツー”と言っています。キャベツ丸IIは、灯をつけてもペダルが重くならないハブ内蔵の発電機や、とても効き味のよい特別な後輪ブレーキを装備していてちょっと高級です。特別高価な自転車というわけではないけれど、せんせいと奥さんが、まいにち貯金箱に“使ったつもり貯金”をしてお金をためて買ったそうです。
 ポロはキャベツIIの前カゴに乗って、よく晴れた景色の中を気持ちよい風を受けながら生協に向かいました。
 生協は“いつものマルエツ”よりも大きくて“大きなマルエツ”よりも小さなお店です。ポロは、奥さんが肩から下げた保冷買い物バッグに入りました。


ポ「今日は、何を買うの?」
奥「明日から5日分のお弁当のおかずよ」
ポ「いいなあ、お弁当」
奥「そう。じゃ、ポロちゃんの分も作ってあげようかしら」
ポ「え、ホント! うれしいなあ。そしたらさ、ポロ、どっかに出かけて食べるんだ。どこがいいかなあ。春日公園にしよっかな。でも、あそこはお月さまが出るしなあ」
奥「どこでもいいわ。好きなところで食べて」

 奥さんは、とっても色の悪いハムを手に取りました。

ポ「わ、奥さん、それ傷んでるよ」
奥「違うのよ。これは“無塩せきハム”っていうの」
ポ「うわあ、どうしてそんなにまずそうなものを買う人がいるの?」
奥「これはね、亜硝酸塩のような発色剤として使われる塩類が使われていないの」
ポ「亜硝酸なんちゃらって身体に悪いの?」
奥「そう考えている人もいるわ。あたしはよく分からないけど、子どもたちには安全なものを食べさせたいと思ってるの」
ポ「わ、そんな大事なことなのか。急においしそうに見えてきた。ハムの会社はどうして全部無塩せきハムにしないんだろう」
奥「ピンク色でおいしそうなほうが売れるからよ」
ポ「だって、身体に悪いかも知れないんでしょ」
奥「そうだけど、気にしない人にとっては、それは問題じゃないの」
ポ「え゛〜〜! どういうこと?」
奥「たとえばね、タバコは身体に悪いわよ。あたしはタバコを吸うことには賛成じゃないわ。でもね、それで寿命が縮むことを何とも思わなければ、タバコは身体に悪いということはどうでもいいことよ」
ポ「ポロには分かんないよ〜」


つづく

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