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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-09-12 ポロの日記 2004年9月5日(風曜日)真夜中の語り部 その3
2004-09-11 ポロの日記 2004年9月5日(風曜日)真夜中の語り部 その4
2004-09-10 ポロの日記 2004年9月1日(波曜日)女議長のひみつ その1
2004-09-09 ポロの日記 2004年9月1日(波曜日)女議長のひみつ その2
2004-09-08 ポロの日記 2004年9月1日(波曜日)女議長のひみつ その3
2004-09-07 ポロの日記 2004年9月06日(光曜日)商店街へ行こう その1
2004-09-06 ポロの日記 2004年9月06日(光曜日)商店街へ行こう その2
2004-09-03 ポロの日記 2004年8月11日(波曜日)メロンプリンセス号の冒険 その1
2004-09-02 ポロの日記 2004年8月11日(波曜日)メロンプリンセス号の冒険 その2
2004-09-01 ポロの日記 2004年8月11日(波曜日)メロンプリンセス号の冒険 その3


2004-09-12 ポロの日記 2004年9月5日(風曜日)真夜中の語り部 その3

真夜中の語り部 その3


 3つ目のお話

風:そうだよ。ノアの洪水には、すごい話があるんだ。
ポロ:どんなの、どんなの?
たろ:す〜や、す〜や。
ポロ:あ、たろちゃんも寝ちゃった。タオルケットかけといてあげよう。
風:ポロ、その昔、地球には海がなかったんだ。砂漠もなかった。
ポロ:へえ〜、そーなのか。
風:ずっと昔のことだ。宇宙空間を、巨大な水のかたまりのような小惑星が太陽系に向かって突き進んでいた。表面近くは厚い氷に覆われていたが、内部では小さな地核の周りを対流する水が熱を発して、決して凍ることはなかった。水の対流は地核に含まれる大量の砂粒を巻き上げるので、水はいつも濁っていた。ポロ、南極や北極を離れて漂流する氷山を監視する船を知っているかい?
ポロ:あ、聞いたことあるよ。氷山が溶けてなくなるまで近くにいて、他の船が衝突しないようにしてるんでしょ。
風:そうそうそれだよ。宇宙にはね、こういう恒星から恒星へと渡り歩く危険な小惑星を監視する宇宙船もいるんだ。その星にも監視船が着いていた。そうこうするうちに氷惑星は太陽系にやって来た。そして第3惑星とニアミスすることが分かった。普通だったら、ここで氷惑星の軌道を変えるか破壊するかという手段をとるんだけど、その頃、地球には原始人しかいなくて文明の痕跡がなかったんだ。それで監視船は、むしろ地球と衝突させて氷惑星を消滅させて宇宙の安全を図ろうとしたわけだ。それで、地球にいるかも知れない各惑星の調査隊向けに警報を発しただけで、そのまま何もせずに監視を続けた。
ポロ:困ったもんだねえ。
風:それで、いよいよ氷惑星は地球との接触が近づいた。
ポロ:ノアって、いたの?
風:いたよ。でも地球人じゃなかった。金鉱脈やイリジウム鉱脈なんかを探しに来ていた何十という星の調査、発掘隊員たちだ。氷惑星接触の警報を受信したものの、彼らを運んできた宇宙船は母星を往復するシャトル便であることが多くて、今ある宇宙船だけでは全員を避難させることができなかった。それで彼らはみんなで協力して、残った宇宙船や機材を全てつなげて避難船を建造したというわけだ。宇宙人たちは人間型の生物ばかりではなかった。彼らが避難船に乗り込む様子を見ていた原始人たちには、さまざまな動物たちが乗り込むように見えたらしい。
ポロ:すごい! それが真実なのか〜。
風:そして、ついに接触の日が来た。接触と言っても衝突したわけじゃない。第一接触は日本のすぐ北西側だった。今のモンゴルと中国との国境付近にその中心点があったと考えられている。ロッシュの限界を超えて接近した氷惑星の表面の氷は重力の干渉で破壊され、中から砂混じりの温熱水が飛沫のように噴き出した。
ポロ:ごくり。
風:毎秒数十キロという猛烈な対気速度を持つ温熱水の先頭はたちまち蒸発して地球大気に広がっていった。しかし、その奥の熱流水の本体は大量の飛沫として西南西方向に向かって帯状に地表に注いだ。しかし、地球の自転の影響で、アラビア半島からアフリカに到達した頃には、ほとんど西向きになっていた。本流とは別に、第一接触時にバウンドした飛沫は、北アメリカ大陸南部に降り注いだ。これが第2接触だ。ところで、第一接触と第二接触の話を聞いて何かに気づかなかったか?
ポロ:コワいな〜と思った。
風:砂混じりの温熱水が降り注いだところは、すべて砂漠になったんだ。


つづく

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ちなみに聖書によると洪水はノアが600歳の頃。ノアの寿命は950歳だったとか。アダムも930歳とか?そんなに長い間黄金やイリジウムを探していたのですね?(笑) / みた・そうや ( 2004-09-12 00:21 )

2004-09-11 ポロの日記 2004年9月5日(風曜日)真夜中の語り部 その4

真夜中の語り部 その4


ポロ:・・・・! す・ご・い! すご過ぎるよ。そうか、どうして砂漠にはあんなにたくさんの砂があるんだろうと思っていたけど、それで分かったぞ! ポロ、興奮して今夜は眠れないよ。
風:その頃、すでに氷惑星は地球のそばを通りすぎて離れようとしていた。でも地球の重力に後ろ髪を引かれるように水の帯を引っ張っていた。それがプツンと切れて地球に落ちてきたのが第三接触だ。このはじっこがオーストラリアにかかって、また砂漠ができた。大気中で蒸発した水は、すべて雨雲となって全地表を覆って大雨を降らせた。一時は高地を除いたほとんどの陸地が沈んでしまったほどだ。
ポロ:じゃさ、水はどこに引いたの?
風:極地方だよ。地球には海がなかったけれども、極地方は今と同じように厳寒の地だった。極地方は徐々に凍って、そこに降る雨や雪が氷の山脈を形成していくと、世界の水位はどんどん下がっていった。
ポロ:箱船の宇宙人たちはどうなったの?
風:アララト山の頂上付近で氷に閉じこめられてしまって、全員が絶望視されているよ。
ポロ:気の毒だなあ。
風:それに、彼らが鉱脈調査をしていた基地やポイントは、その多くが海底に沈んでしまったので地球での鉱脈探しはかなり縮小されてしまったんだ。一番大きかった巨嘴鳥座デルタ星人のアトランティス基地もその時に沈んだ。
ポロ:あ、その名前なら聞いたことあるよ。
風:これがノアの洪水のもとになった話だ。
ポロ:これって、ホントのことだよね。
風:そうだよ。これが真実だ。
ポロ:どうして、教科書に載ってないんだろう。
風:確固たる証拠がないからじゃないかな。
ポロ:でもさ、世界地図を見ればさ、砂漠の分布が確かに砂混じりの水が飛び散ったみたいに帯になってるよ。
風:そうだよね。それにさ、アララト山から箱船が掘り出されれば動かぬ証拠になるよ。
ポロ:どうして風のお兄ちゃんは、こういうことを知ってるの?
風:知りたいか?
ポロ:うん。

 風のお兄ちゃんはパジャマの上着を脱ぐと、頭や上半身にあるメンテナンスリッドを全部、一度にパカッと開けました。そこには複雑な機械が収められていました。

ポロ:あわわわわわ! お兄ちゃん、ロボットだったのか!
風:ソウダ。カウス・アウス・トラリス製ノ航法アシストロボット、θ24225型ダ。
センセイ ガ チチュウ カラ 掘リ出シテ 松戸博士ガ 直シテ クレタ。

 がちゃ。

 メンテナンスリッドが閉じられると、また普通のお兄ちゃんに戻りました。

風:驚いたか? もうすぐ裏神田教育省の歴史教科書編纂室に行って、当時のことを証言することになってるんだ。裏神田じゃ、教科書に載る日も近いよ。
ポロ:猫の星の教科書にも載せて欲しいな。
風:うん、今に載るよ。

 ポロは、お兄ちゃんに今夜のことは黙ってるよと約束したので黙ったままPCに打ち込みました。みなさんも黙っててください。約束だよ。


おしまい


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ちなみにノアの箱船・・・http://x51.org/x/04/04/2707.php / みた・そうや ( 2004-09-12 00:25 )

2004-09-10 ポロの日記 2004年9月1日(波曜日)女議長のひみつ その1

女議長のひみつ その1


 もうすぐ夏休みも終わる8月末の電曜日のことでした。
 ポロは、たろちゃんのショルダーバッグに入って一緒に大きなマルエツに買い物に行きました。

「あたしさあ、結婚したら絶対炊事当番制にするんだ」
「あれ、前は炊事当番制度はヒドイっていってたのに」
「それは今の話。あたしの友達で家族の食事のしたくしてる子なんていないよ」
「でもさ、できるなんて、たろちゃんすごいと思うな」
「あんなのいつもやってれば誰だってできるよ〜。でもね、できるようになっても面倒くさいもんは面倒くさいの」
「そっか〜」
「とにかく〜、あたしの結婚前は母ちゃんがご飯作ってくれて、結婚したらダンナさんが作ってくれるのが理想なの」
「わ、せんせいと奥さんじゃないか〜」
「だからあたしも目指すのよ、絶対」

 まだ、お昼を過ぎたばかりで食料品フロアはガラガラでした。ブラブラと売り場を歩いていると、いきなり誰かとぶつかりました。

「いった〜!」
「あら、ごめんなさい!」
「ううん、だいじょうぶ」

 それは背が高くてモデルのようなスタイルの、黒スーツを着たお姉さんでした。ぶつかった二人が離れようとすると、お姉さんのスーツのボタンが一つ、たろちゃんがタンクトップの上から重ね着している粗く編んだ、もうひとつのタンクトップに絡まってしまいました。
 お姉さんはがんばって外そうとしましたが、なかなか取れません。とうとうお姉さんは自分のボタンの糸を切って、やっと2人は離れることができました。

「お姉さん、ボタンまで取らせちゃってごめんなさい」
「いいのよ。お買い物?」
「はい」
「偉いわね」

 お姉さんは足早に去っていきました。
 ポロはバッグのすき間からお姉さんを見たとき、なんとなく知っている人のような気がしました。ボタンを外しているあいだもずっと考えていましたが、どうしても思いだすことができませんでした。
 すると、たろちゃんが落ちている財布を見つけました。

「ポロ、お財布が落ちてるよ」
「大変だ。警察に届けよう」
「さっきのお姉さんのだね、きっと」
「でも、お財布じゃないみたい。ほら、透明な窓にJRのスイカ定期が入ってる。ゼンマイ駅と新小岩駅間だよ」
「わっ!! わかった!」

 ポロは新小岩という地名でピンと来ました。

「ポロ、大きな声出さないでよ」
「たろちゃん。あの人議長だ。ポロプロジェクトの議長だ。思いだしたぞ。危機一髪だったな〜」
「なによ、議長って」
「あのね、ポロのこと探ってる組織のリーダーなんだ」
「あのさ、そういうの被害妄想っていうの。自分のことをテレビで流してるとかね、さぐられているとか思い込むのが症状よ」
「そう言えば、みかんちゃんのお家のテレビで、ポロのことニュースで言ってた」
「決まりね。ポロは被害妄想」
「そーだったのか〜。ポロは被害妄想だったのか〜。たろちゃん、人生ってつらいね〜」
「そんなに悲観しなくてもいいわよ。目が覚めれば直っちゃうわよ」
「そっか。なんだか急に元気が出てきたな」
「ねえ、ポロ、あたし、このカード入れを開けてないからね。でも、外からあのお姉さんの住所が読めちゃうの」
「どこ?」
「このすぐそばだと思う。たぶん、すぐそこの背の高いマンション」
「じゃさ、届けてあげようよ」
「そうしよっか」


つづく

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2004-09-09 ポロの日記 2004年9月1日(波曜日)女議長のひみつ その2

女議長のひみつ その2


 たろちゃんはレジを通ると大きなマルエツの正面玄関を出て、カード入れの住所にあるマンションに向かいました。そこはローシェンナ色の外壁の、細身でとても背の高いマンションでした。

「たろちゃん、買ったら高そうなマンションだねえ。きっと何千円もするね」
「何言ってんのよ。何千円で買えるわけないでしょ」
「そっか。ポロも最初は一兆円くらいかなって思ってたんだけどさ」
「高過ぎ!」
「ちょうどいいって難しいね〜」

 自動ドアかと思ったエントランスの大きなガラスドアは、前に立っても閉まったまま開きません。たろちゃんは外来者用のインターホンのテンキーで、住所の最後にあった1505という数字を押してみました。

「はい、どちら様でしょうか?」
「あの〜、カード入れを拾ったので届けにきました」
「まあ、さっきのお嬢さんね、すぐに行くわ」

 お姉さんは、すぐにエントランスまで降りてきました。

「まあ、ありがとう。助かったわ。お礼にお茶でもいかが? それとも急ぐのかしら?」
「いえ。じゃ、ちょっとだけ」

 たろちゃんは、ずうずうしくもお姉さんのお部屋にお呼ばれしていくことになりました。
 1505号室の表札には「佐藤和子」と書いてありました。ポロは、ステキなお姉さんにしては、あまりに当たりまえな名字と名前の組み合わせを見て、ちょっと不思議に思いました。

「散らかっているけどどうぞ」

 エアコンのよく効いた部屋に入ると、メタリックな素材がところどころに使われたウルトラモダンなインテリアがたろちゃんとポロを迎えました。部屋はホントに散らかっていました。でも、それは掃除をしないからではなくて、散らばる書類によるものでした。
お姉さんは、書類をさっさとまとめてデスクに重ねました。

「ちょっと待っててね。嫌いなものある?」
「セロリ」
「じゃ、セロリ抜きにするわね」

 おねえさんは、奥のキッチンに行ってしまいました。
たろちゃんが、何気なく床を見ると、お姉さんが拾い忘れた書類が落ちていました。それはポロ・プロジェクトの会議録でした。

「(小声で)ねえ、ポロ。さっきさ、ポロプロジェクトって言った?」
「(小声で)言ったよ」
「ポロって、被害妄想じゃないかも」
「どうして?」
「ここにね、ポロプロジェクトの書類があるの」
「じゃ、やっぱり女議長だよ、あのお姉さん」
「あのさ、あのお姉さんて悪い人?」
「それが、よく分かんないの。でも、一応警戒したほうがいいと思うな」
「うん、分かった」

 間もなく、お姉さんはアイスクリームケーキと紅茶を持ってきてくれました。

「セロリ抜きよ」
「ありがとう」
「そう言えば、まだお名前を聞いてなかったわね」
「えっと、村野しおりって言います」

 たろちゃんは一応警戒して、とっさに思いついた名前を言いました。ほとんど本名というぎりぎりの偽名でした。ポロはバッグの中でハラハラしながら息をひそめていました。
 すると、たろちゃんは思いきって落ちていた書類を手渡しました。

「これが落ちてました。ポロって書いてあるけど、なんですか?」

・・・わ、たろちゃん。大胆すぎるよ、アブナすぎ!

「まあ、ありがとう。ところで、しおりちゃんはポロっていう猫を知ってる?」
「お友達がピアノを習ってる教室の猫がポロっていう名前だったと思うけど」
「まあ、その猫よ。何か知ってることあるかしら?」


つづく

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2004-09-08 ポロの日記 2004年9月1日(波曜日)女議長のひみつ その3

女議長のひみつ その3

 
 意外な展開になってきました。ポロは、目の前のアイスクリームケーキがどんな味なのかっていう問題と同じくらい、事の成り行きが気になりました。

「さあ、よく知りません」
「そう。ポロって言うのは特別な猫なの。あなたは信じないかも知れないけれど人と話ができるのよ」
「わあ、猫とお話できるなんて楽しいそうですね」
「そう思うでしょ。でもね、お話ができるだけじゃないのよ。普通の人よりもずっとすぐれているかも知れないの。私はね、ポロの背後関係を調べてるのよ。でも、情報が混乱していてどれが本当のことだか分からないの。まあ、あなたにこんなこと言っても仕方がないわね。何でもいいわ。分かったことがあったら教えてね」
「はい」

 たろちゃんは、おねえさんにアイスクリームケーキのお礼を言うとマンションを後にしました。

「ポロ。あのお姉さん怪しいわ。うちのこと調べてるみたい」
「うん、ところでさ、あのケーキおいしかった?」
「おいしかったよ。ポロ、あのお姉さんのことで何を知ってるの?」
「いろいろ知ってるけどさ、あのケーキ、どんなふうにおいしかったの?」
「お姉さんのこと、なんでもいいから教えて」
「えっとねえ、にせポロを使ってお話の部屋に勝手に書き込んだりするよ。でさでさ、あのケーキどんな味だったの?」
「セロリ抜きの味」
「セロリ味のケーキなんてないよ〜」
「ポロは、あのお姉さんとどこで会ったの?」
「えっとねえ。分かんないけど、たぶん新小岩の会議室。いいなあアイスクリームケーキ」
「しつこいなあ、ポロは。ケーキの話は後で」
「ポロは熱心な猫なんだよ」
「じゃあ、ケーキ買ってあげるから今は忘れて、質問に答えるの!」
「はーい! なんでも聞いていいよ」
「ポロプロジェクトっていったい何なの?」
「よく分かんない。でもね、にせポロの6号と一緒にタコ焼き作った」
「何なの、それ? 全然分からないんだけど」
「にせポロの7号ともお友達になったけど、すっごく難しいメールを最後にいなくなっちゃった」
「そう。よく分からないけどさ、議長さんはポロの価値を調べて、高そうだったらたとえばサーカスとかに売ったり、闇の研究機関に情報を提供したりしてるんじゃないかなあ」
「わ〜、ポロは捕まって売られちゃうのか。曲馬団(サーカスの古い言い方)の猫だ〜」
「ひとりで出かけるときは気をつけるのよ」
「はーい!」

 それからたろちゃんはケーキのオオハシさんのお店に寄ってザッハトルテを買ってくれました。


おしまい


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先頭 表紙

う〜ん、女議長さんをこれからどうするかが問題だ〜。 / ポロ ( 2004-09-11 00:17 )
んん!ついに接触ですね?これでプロジェクトのなぞに迫れそうですね〜。でも、女議長さんステキ。 / みた・そうや ( 2004-09-08 13:00 )

2004-09-07 ポロの日記 2004年9月06日(光曜日)商店街へ行こう その1

商店街へ行こう その1


「せんせい、どこに行くの?」
「本の注文だ」
「ネットで頼まないの?」
「頼まない」
「ポロも行ってもいい?」
「猫らしくしてるんだぞ」
「まっかせてよ」

 せんせいとポロは、ちょっと秋めいてきたお寺の脇の道を歩いて古いさびれた商店街へ向かいました。遠く南西の海上には台風がいて、晴れているのに風雲急を告げるような空でした。

「せんせい、どんな本を注文するの?」
「偉大な武道家について書かれた本だ」
「へえ。せんせい、今度は格闘技でも始めるの?」
「そうだ。技を磨いてポロを投げ飛ばす!」
「やだよ〜」
「そんなことするわけないじゃないか」
「あ〜、心配しちゃったよ。武道か」

 途中で小学校の脇を通りました。子どもの声で校内の連絡放送が聞えてきました。とても大きなボリュームです。

「せんせい、こんなに大きな音の必要ないよね」
「そのとおりだ。ちょうどよいということに気づかなければ、聞えないかもしれないという不安が先に立つ」
「世界は音に無頓着だな」
「小さなスピーカーを数多く用意すれば、運動会だってよく聞こえて、しかもうるさくないという環境を作れるものだ。街路灯も同じだ。眩しくて電力を食う水銀灯を高い所にところどころ付けるんだったら、人の背より少し高い所に下向きの弱い光を数多く設置したほうが明るくて眩しくない」
「ふーん。どっちが安上がりなんだろうね」
「それは分からない。やり方によってコストはいくらでも変わるものだ」

 目指す本屋さんに到着すると、ちょっと理知的な感じの初老の店主が店番をしていました。せんせいが、調べてきた書名、著者、出版社、出版年度、ISBNコードをメモした紙を渡すと、かしこまりましたと言って、なるべく早く取り寄せる手続きをしますと約束してくれました。
 ポロたちは暗い店内から外へ出ました。

「ねえ、せんせい。あのおじさん、背筋をピンと延ばして“かしこまりました”だって。カッコいいねえ。コンビニじゃ聞けないね、あんな言葉」
「誇りを持って書店経営している姿だ」
「ポロ、本屋さんになりたくなった」
「多くの人は、ポロの気づいたカッコよさに気づかない時代が来たんだ」
「どうしてだろうね」

 少し歩くと八百屋さんがありました。

「せんせい、こんなところに八百屋さんだよ」
「昔からのお店だよ」
「ポロさ、マルエツしか知らないから八百屋さんで買い物できないかも」
「そうか。スーパーでばかり買い物している人は個人商店での買い物が敷居が高くなっている可能性があるな」
「どうやって買ったらいいか分かんないよ」
「スーパーにも、もちろんあるが、個人商店には仕入れのこだわりがあるんだ」
「あ、せんせい。ブドウだよ。武道と同じ」
「おいしそうだな。買って帰ろうか。よし、個人商店買い物実習だ」

 せんせいが八百屋さんに入ると、ポロもうしろからついていきました。


つづく

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2004-09-06 ポロの日記 2004年9月06日(光曜日)商店街へ行こう その2

商店街へ行こう その2


「はいらっしゃい!」
「ぶどうをください」
「はい、どれにしましょう。これは今朝市場から仕入れたばかりで新鮮な種無し巨峰ですよ。今日のいち押しです」
「おいくらですか」
「はい、勉強して一房200円」
<・・・せんせい! 安いね!>
<しーっ、静かに>
「じゃあ、それをください」
「ありゃあたーした」


せんせいは、ぶどうを一房入れた袋を下げて歩き始めました。

「せんせい、おいしそうだねえ」
「ああ、冷蔵庫で冷やして食べよう」
「ポロのほっぺが落っこちたらせんせいのせいだよ」
「じゃ、食べさせない」
「じょーだんだよ〜。ポロさ、みかんの酸っぱさは苦手なんだけど、ぶどうはちょうどいいな〜」
「柑橘類の酸味はクエン酸が主だが、ブドウには酒石酸が入っていたような気がするな」
「へえ〜、そんな違いがあるのか」
「もう35年ものの知識だからあやふやだ。間違っているかも知れない。興味があったら調べて、ついでに教えてくれるとありがたい」
「先生って理科少年だったの?」
「ちょっとだけ」
「だからシュデンガンガー商会を知ってるんだね」
「よく行ったものだ」

 その時、ポロたちの頭上高く、雲間を何機ものUFOが音もなく通りすぎていくところでした。

「せんせい、見て。UFOの編隊だよ」
「おお、これだけ揃うと見ごたえがあるな。昨日の地震の調査に来たんだな」
「え〜っ! 宇宙人て地球の地震なんかに興味あるの?」
「地球人だって月震計を月に設置して月の地震を調べているよ」
「そうなのか〜、それは知らなかったな〜。あれ、今度はコビト星人のテレビ中継用UFOが、さっきのUFO船団をビデオに撮ってる」
「おお、あの小さい円盤か」
「そだよ。でも、どうして町の人は誰も空のUFOに気がつかないんだろう」
「普通、人は地平線近くの空しか見ないんだよ。首を上に向ける習慣は意外なことにないんだ。気がつかない理由はもう一つありそうだ」
「なあに?」
「それは、人々が書店主の誇りやカッコよさに気づかないのと同じだ」
「そっか〜。ポロたちお得だねえ」
「我々だって、気づいていないことだらけだという事を忘れてはいけないよ」
「そっか。何でも気づいてるのは神さまだけかも」
「さあ、早く帰ってブドウを冷やそう」
「うん、そうしよそうしよ」

 盛りを過ぎたオシロイ花の群れの脇を、ポロたちは工房へ急いだのでした。


おしまい


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そっか、猫らしくしなきゃいけないってことは、ポロさんってやっぱり猫らしくないんだね…(しみじみ) / shin ( 2004-09-07 23:40 )
ミタさん。いつもコメント、ホントにアリガトございます。ポロたち、カッコよくなろうね。 / ポロ ( 2004-09-07 09:46 )
本当の格好良さを持つ人は少なくなしましたね。空かぁ…余り見ていないなぁ。東京も、昔はもっと空が高かったような気がします… / みた・そうや ( 2004-09-07 09:33 )

2004-09-03 ポロの日記 2004年8月11日(波曜日)メロンプリンセス号の冒険 その1

メロンプリンセス号の冒険 その1


 今年も旧盆が近づいてきました。
 ポロは師匠の技術文書キットのお墓のそうじをしてから、京浜唐変木線のゼンマイ駅前通り商店街まででかけました。この季節だけ走馬灯を売るお店があるのです。
 ありました。今年もお店の中で走馬灯(まわり灯籠)がぐるぐる回っています。その中にポロは猫の走馬灯を見つけました。ポロのからだに電気がビビビッと流れたみたいに、ポロはそれが気に入ってしまいました。欲しくて欲しくてたまらなくなりました。値段を見ると4000円。よんせんえん・・・。ああ、ポロにはとても買えません。
 ポロは、すぐに作曲工房にとんで帰りました。

「ねねねねねねねねね、せんせせんせせんせせんせせんせせんせせんせ!」
「なにをそんなに慌ててるんだ」
「あのさあのさあのさあのさあのさあのさあのさあのさあのさ」
「だから何だって言うんだ」
「えっとさえっとさえっとさえっとさえっとさえっとさ」
「はやく言ったらどうだ?」
「そそそそそそーまとーが、ほっし〜|」
「なんだ、たったそれだけのことを言うのに、こんなに時間がかかったのか」
「ほっし〜、ほっし〜、ほっし〜、ほっし〜、すっごくほっし〜の!」
「どうせ買ってもすぐ飽きるよ」
「ち、ちがうのちがうの!」
「なんだか様子が変だな。そんなに欲しいのか?」
「うんうんうんうんうんうんうんうんうん!」

 せんせいは手が離せない仕事をしていたので、たろちゃんがお金を渡されて一緒に買いに行ってくれることになりました。ポロは、たろちゃんの自転車の前カゴに乗って、もういちどゼンマイ駅前商店街に向かいました。

「ポロが欲しい走馬灯ってどういうの?」
「見ただけでビビビッてポロの身体に電気が流れた!」
「へえ〜。ときどきすっごく欲しいものってあるよね。ポロはそれが走馬灯だったんだ」
「そ」
「どんな模様なの?」
「猫だよ」
「珍しいね、猫なんて」
「でしょ。それよりさ、売れちゃうと困るからもっと急いでよ」
「こんな暑い日に急いだら汗かいちゃうから、ヤよ」
「ねえ急いでよ〜。売れちゃったら困るよ」
「猫の走馬灯なんて売れないから大丈夫」
「じゃさ、もし売れちゃったら買った人追いかけてくれる?」
「うん、地の果てまで追いかけちゃうから安心して」

 お店につくと、猫の走馬灯がありませんでした。たろちゃんがお店の人に聞いてくれました。

「あ、たったいま売れちゃったのよ」

 ポロとたろちゃんは、大急ぎでお店の外に飛びだしました。ポロたちと入れ違いでおおきな包みを持った男の人が店から出ていったのを思いだしたからです。

「いたよ! たろちゃん、あのおじさんだ!」

 300メートルくらい離れたところを走馬灯を買っていったおじさんがゼンマイ駅に向かって歩いていました。ポロとたろちゃんは自転車で追いかけました。ところが駅前ロータリーに近づくと、おじさんは走り始めました。発車時刻の迫ったバスにぎりぎり間に合ったのです。

「待ってよ〜!」

 ポロたちが到着するまえに、バスは出発してしまいました。


つづく

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2004-09-02 ポロの日記 2004年8月11日(波曜日)メロンプリンセス号の冒険 その2

メロンプリンセス号の冒険 その2


「たろちゃん約束だよ。バスを追いかけて!」
「追いつかないよ、きっと」
「たろちゃんならダイじょぶ」

 たろちゃんは、しぶしぶ走り始めました。
バスは、いきなりJRをまたぐ大きな陸橋を登り始めました。たろちゃんも必死に後を追います。

「たろちゃん、この自転車の名前は何て言うの?」
「名前なんかないよ」
「じゃ、ポロがつけてあげるよ。これは地球防衛軍の強襲揚陸艦スワン154号だよ」
「やだよ〜、そんな変な名前!」
「じゃ、どんなのがいいの?」
「リンゴ丸みたいにフルーツの名前がいいな」
「じゃさ、ピーチ号みたいな?」
「そうそう。あ、メロンプリンセス号にしよう」
「た、たろちゃん。それってネーミングセンスがなさすぎるよ」
「あたしの自転車よ、文句ある?」

 たろちゃんの迫力に負けて、とうとうポロは“メロンプリンセス号”の前カゴに乗っていることになってしまいました。

「前途に暗雲が立ちこめてるっていう感じだな〜」

 ポロはひとりつぶやきました。

 バスが停留所にとまるたびにメロプリ号は距離を詰めますが、追いつく前に発車してしまいます。おじさんは、まだ降りません。
道路がちょうど具合よく混んでいて、もう20分もつかず離れずバスを追いかけていました。

「ポロ、あの橋を渡ったら東京だよ」
「そだね。おじさん、まだ降りないね」
「北区だよ。来たくなかった。帰宅しよう、なんちゃって」
「たろちゃん、真夏なのにさむいよ」
「ポロ、何か言った? このまま帰ってもいいんだから」
「な、何も言ってないよ、ホント、な〜んにも言ってない」

 ゼンマイ駅から10キロくらい走ったでしょか。真夏のお日さまはポロとたろちゃんを容赦なく焦がしました。バスとは、相変わらず近づいたり遠ざかったりを繰り返していました。

「ポロちゃん、のどが乾いてきたね」
「でもさ、飲み物買ってるとバスを見失っちゃうよ」

 電柱に地名表示がありました。

「たろちゃん。ここは、あしたちくしゃじんていうところだよ」
「あだちく とねり(足立区舎人)って読むのよ」
「あ、あのおじさんがバスを降りた!」

 メロプリ号は、おじさんを追って住宅街に入りました。すると、向こうから見覚えのある人が歩いて来ました。

「わ! たろちゃん、ミタさんだ」
「誰だっけ?」
「ほら、ポロと一緒に流星号で工房の前に墜落した人」
「ああ思いだした。一緒に朝ご飯食べた人か〜!」
「こんなところで会うなんて」

 ポロはミタさんに叫びました。

「ミタさ〜ん、そのおじさんを止めて!」

 ミタさんは、おじさんに声をかけてくれました。
 そして、ポロたちがおいつきました。走馬灯おじさんは、ポロたちが猫の走馬灯が欲しくて、ゼンマイ駅からずっと追いかけてきたことを知ると、とても驚きました。

おじさん「そんなに欲しいのなら、差し上げますよ」
たろちゃん「ちゃんとお金もらってきたから払います」
お「実は、とても不思議なことがあるんですよ。私は、別に走馬灯が欲しいわけじゃなかった。でも、これを見た途端にどうしても欲しくなって買ってしまったのです。でも、今考えると、どうしてこんなものが欲しかったのか分からない」
ミ「そんな不思議な走馬灯なら、ぜひ見せてください」

 おじさんが包みから走馬灯を出すと、それを見たミタさんは絶句してしまいました。


つづく

先頭 表紙

2004-09-01 ポロの日記 2004年8月11日(波曜日)メロンプリンセス号の冒険 その3

メロンプリンセス号の冒険 その3


ポ「ミタさん、どうしたの?」
ミ「・・・・・・・・」

 ミタさんは、何も言わずに涙を流し始めました。
 おじさんも絶句していました。たろちゃんも異変に気がつきました。遅れて、ポロもやっと気がつきました。
 プラグをコンセントに差し込んでもいないのに、電球式の走馬灯は光りながら回っていたのです。可愛らしい猫がニコニコしながらクルクルと走ります。

ミ「チビ太・・・」

 ミタさんがやっと声を出しました。
ポロは、やっと事態がのみこめました。猫のチビ太が走馬灯に姿を変えてミタさんのところに帰ってきたのでした。

お「はて、ここはどこですか?」

 急に我に返ったかのようにおじさんが言いました。

ポ「ここはね、あだち区とねりだよ」

 ポロは難しい漢字が読めるんだぞというように誇らしげに言いました。

お「わ、今度は猫がしゃべってるじゃないか。私は夢を見てるのか」
ポ「ポロって言うんだよ」
お「こんなところに来るつもりはなかったのに。私は鳩ケ谷に住んでいるんですよ」
た「あたしだって、こんなところに来るなんて夢にも思ってなかったもん」

 ポロは、たろちゃんに状況を説明しました。でも、たろちゃんは、すでに理解していました。

た「ミタさん、あたしたちそれいらないから、持って帰って」

 おじさんは、またバス停に向かって歩き始めました。ミタさんが追いかけて往復のバス代とお礼を手渡して、何度も何度もお礼を言っていました。

ポ「ミタさん、よかったね」
ミ「不思議なことがあるもんだね。こいつ、チビ太って言うんだよポロちゃん。もう20年くらい前になるんだけど、急にいなくなってそれきりだった」
ポ「がんばって帰ってきたんだね。エラいなあ」
た「あたし、びっくりしちゃった」
ミ「うんうん」

 ミタさんは、さっきたろちゃんがおじさんに渡した4000円よりもずっと多いお金をたろちゃんに握らせて、帰りにおいしいものでも食べて帰ってねと言ってくれました。
 それから、ポロとたろちゃんはミタさんと別れてメロプリ号で走り始めました。

た「意外な展開だったね、ポロ」
ポ「世界は不思議に満ちてるんだよ」
た「そうだね〜! とむりん、信じてくれるかなあ」
ポ「どうかな〜」
た「いいよ別に信じてくれなくても。だって信じてくれたってくれなくたって、チビ太が帰ってきた事実は変わらないもん」
ポ「わ〜、たろちゃんてせんせいの娘だなあ〜」
た「どうして?」
ポ「いいの。それより、メロンプリンセス号の最初の寄港地はハンバーガーショップだよ!」
た「うん、さっきのバス通りにあったよね」
ポ「たろちゃん、今日はビッグセットが食べられるよね」
た「もっちろんよ。ミタさんにかんぱーい!」

 バス通りを走るメロンプリンセス号の前カゴを、少し涼しくなった風が気持ちよく吹き抜けていきました。


おしまい

 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

ポロの掲示板はこっち。
ポロのひみつの部屋

先頭 表紙

ミタさん、ハンバーガーごちそうさま! / ポロ ( 2004-08-25 22:47 )
でも、あとニャンコが7〜8匹、ワンコが2匹。…あ、他にも心当たりのあるワンコが5〜6匹にニワトリ…の走馬燈も有るのかも? / みた・そうや ( 2004-08-25 22:39 )
ポロちゃん、たろちゃん、遠い所追いかけてくれてありがとうね。無事に帰れたかな?知らないオジサンもありがとう! / みた・そうや ( 2004-08-25 22:37 )

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