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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

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2007-06-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第13回 それ行けぽん吉! その1
2007-06-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第13回 それ行けぽん吉! その2
2007-06-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第13回 それ行けぽん吉! その3
2007-06-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第13回 それ行けぽん吉! その4
2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その1
2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その2
2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その3
2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その4
2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その5
2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その6


2007-06-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第13回 それ行けぽん吉! その1

 それ行けぽん吉! その1

 
 な〜ま〜ず〜のがっこうは〜、か〜わ〜の〜なか〜♪
 
 ナマズの学校の音楽室からナマズの子どもたちの元気な歌声が響いてきました。
 でも、ナマズの学校でも陰湿なイジメがあったのでした。

 ぽん吉が量子力学のテストでちょっといい点を取ったことがきっかけで、ヒゲ太郎がぽん吉につらくあたるようになりました。すると、クラスのボス的存在であったヒゲ太郎に同調する雰囲気に乗せられて、クラス全体がぽん吉いじめに加担するようになりました。
 ぽん吉はみんなから無視されたり、持ち物を隠されたり、大事な連絡を教えてもらえなくなったりしました。

 学校に行くのがつらくなって、眠れぬ夜を過ごしていると、そこに猫のお化けが現れました。

ぽん吉「きゃあ〜〜〜〜〜!」
化け猫「こわがらないでよ。コワい顔してないでしょ」

 よく見ると、恨めしそうな顔をした化け猫ではなくて、ちょっと半透明ではあるものの、ちょっとお間抜けな感じの猫でした。

透明猫「ポロって言うんだ。でも、ここにはいないよ。3次元ホログラフィーだから。ドーラ・オプティカル・ダイナギア社製の最新型で3次元投影してるんだ」
ぽん吉「ハイテク機器の宣伝?」
ポロ「ちがうよ〜」
ぽん吉「じゃあ、なんで、こんなところに出てきたんだ?」
ポロ「女神さまからの頼みだよ。いじめられてるんだろ?」
ぽん吉「い、いじめられてなんかないよ!」
ポロ「ほらほら、それがいじめられている者の特徴的な答えだ」
ぽん吉「何でも知ってるみたいなエラそうな口をきくなよ・・」
ポロ「しょうがないよ。そういう性格だからさ」
ぽん吉「ぼくはこんなキモチわるい幽霊なんかに用はないよ」
ポロ「でも、こっちにはあるんだ。なにしろ女神さまからの頼みだからね」
ぽん吉「そういう仕事してるの?」
ポロ「仕事か〜。夢は、大ピアニストか大作曲家か、はたまた文豪なんだけどさ。いまは偉大な居候っていうところかな」
ぽん吉「居候がなんの用なんだ?」
ポロ「居候だっていいじゃないか。ポロは好きで居候やってるんだから。それより、いじめの解決に手を貸すよ」
ぽん吉「余計なお世話だよ。他人に手を貸してもらったって根本的な解決にはならないんだ。これはぼくの問題なんだ」
ポロ「もちろんポロは何もできないよ。だってホログラフィーだもん」
ぽん吉「じゃあ、どうやって手を貸してくれるっていうんだ?」
ポロ「君を鍛える」
ぽん吉「・・・・・やだ」
ポロ「悪い事言わないからさ」
ぽん吉「・・・・・ぼくは命令されるのはイヤだ」
ポロ「命令なんかしないよ〜」
ぽん吉「・・・・・じゃあどうするんだ」
ポロ「まず、いじめる奴らを徹底的に観察するんだ」

つづく

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2007-06-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第13回 それ行けぽん吉! その2

 それ行けぽん吉! その2

ぽん吉「・・・・・」
ポロ「みんなが同じわけないだろ。首謀者。自分もいじめられるのが怖くて同調してるヤツ。そして面白がって同調してるヤツ」
ぽん吉「・・・・・」
ポロ「この際、首謀者は放っておく。臆病で同調してるヤツも後回し。ぽん吉のつらさに気づかずに、ふざけてるだけだっていうつもりでイジめるヤツを見抜くんだ」
ぽん吉「それで、どうするんだ?」
ポロ「いまのぽん吉くんに言ってもムダだよ。なにしろ、まだレベル低いからね」
ぽん吉「・・・・君もぼくをいじめにきたのか?」
ポロ「ひがむなよ〜。いいから観察するんだ。観察するっていうことはいろんな事がわかるようになるっていうことだ。それでレベルの上がらないヤツはいないよ」

 それからポロのホログラフィーはユラリと揺れて消えました。

 次の日から、ぽん吉のクラスメート・ウォッチングが始まりました。毎日毎日一匹一匹をじっくりと観察しました。相変わらずイジメは続いていましたが、じっと観察していると、こちらが優位に立っているような気分でした。
 一週間後の夜、また枕元にポロが現れました。

ポロ「やあ、ぽん吉くん」
ぽん吉「あ、ポロちゃん」
ポロ「お、なれなれしくなったね。どうだった、この一週間は?」
ぽん吉「うん、いじめは続いてるけど、観察してるとこっちのほうが偉いような気がしてきたよ」
ポロ「でしょ。それでさ、ふざけてイジメやってるヤツは見つかった?」
ぽん吉「うん、5匹だね。それから、もうちょっと判断に時間がかかるのが2〜3匹」
ポロ「よし、その5匹のうち、だれかと2人きりになったときがチャンスだよ」
ぽん吉「どうして?」
ポロ「相手の目をじっと見つめて、思い詰めたような顔で言ってやるんだ」
ぽん吉「何て?」
ポロ「・・・・・遺書には、お前の名前だけ書いてやる・・・・・」
ぽん吉「ひゅうううう〜、コワ」
ポロ「これは大事なことなんだ。それを言うべき相手が誰だか確信するまでは言っちゃダメだよ。たぶん、そいつは、ほかの誰々だってイジめてるっていうはずだ」
ぽん吉「そうだね、きっと」
ポロ「その時に君の観察が役に立つだろう」
ぽん吉「どうして?」
ポロ「イジメに走るヤツには、それぞれ理由があるんだ。だから君はそういうヤツのこともきっと観察してるはずだよ。だから君の注意力に期待してるからね」
ぽん吉「よく分からないよ」
ポロ「ここから先を言っちゃうと、知識は持っても、君は“分かる”ようにはならないんだ。自分でたどりつくんだよ。じゃあね」

 ポロのホロフォグラフィー・イメージは、ふわっと消えました。

 つづく

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2007-06-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第13回 それ行けぽん吉! その3

 それ行けぽん吉! その3

 ぽん吉は、相変わらずイジメにあっていましたが、心は冷静でした。イジメの首謀者はクラスのボスのヒゲ太郎でした。でも、ヒゲ太郎の家の近くを通ったときにヒゲ太郎の両親がヒゲ太郎を叩いている音が聞こえてきました。ヒゲ太郎は親からつらい扱いを受けているのかも知れないと気づいたのでした。ヒゲ太郎は、弱いぽん吉をいじめることで自分の気持ちのバランスをとっているのかも知れませんでした。そう思うと、やさしい両親と暮らすぽん吉は、ヒゲ太郎が気の毒になってきて、ひとり静かに言いました。

「よし、許す」

 そんなある日、放課後の掃除中にナマ助がモップでぽん吉をつついて、からかってきました。ナマ助は、ぽん吉が「イジメ便乗派」と確信しているひとりでした。チャンスだと思ったぽん吉は、練習を重ねてきた一芝居を打つことにしました。ぽん吉は、なるべく静かに言いました。

ぽん吉「・・・イジめるのはやめろ。遺書にはお前の名前だけ書くつもりだ」

 びっくりしたナマ助は、あわてて言い返しました。

ナマ助「な、なに言ってんだ。ヒゲ太郎だっていじめてるじゃないか」
ぽん吉「ヒゲ太郎は、ぼくを憎んでる。あいつは面白半分でぼくをイジめてるんじゃないんだ。本気だ。だから、ぼくはヒゲ太郎のために敢えてイジメに耐えて、あいつの助けになろうと思ってるんだ。あいつが父ちゃんや母ちゃんから叩かれたりしてるの、お前だって知ってるだろ」
ナマ助「う・・・・」

ぽん吉「でもお前は違う。何の考えもなく、面白半分でヒゲ太郎の尻馬に乗ってるだけだ。だからお前は罪が重い。自分のしたことをよく考えてみろよ。ヒゲ太郎のどうしようもない気持ちから出たイジメは許す気にもなるし耐えられるけど、お前のふざけた気持ちは許せない。だから、遺書にはお前の名前だけ書く」
ナマ助「ま、待ってくれよ〜」

 ナマ助は予想だにしていなかったぽん吉の言葉にうろたえていました。
 ぽん吉は黙ってその場を立ち去りました。

 その夜、ナマ助はなかなか寝つけませんでした。ぽん吉が、本人にも気づかなかったナマ助の実の姿を見事に言い当てたのです。ナマ助は、自分のことが醜くみえてきました。

 「ああ、ぼくはなんてバカだったんだろう。ぽん吉が死んじゃう前に、ぼくが気がついたことを伝えて謝らなくちゃ」

つづく

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2007-06-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第13回 それ行けぽん吉! その4

 それ行けぽん吉! その4

 翌朝、ぽん吉が学校に行こうと外へ出ると、ナマ助が目を真っ赤にして待っていました。

ナマ助「ぽん吉くん・・・」
ぽん吉「いいんだよ、分かってくれれば・・・。分かってくれてうれしいよ。ぼくこそ、遺書に書くなんておどかしてゴメン」
ナマ助「でも、ぽん吉くんが、ぼくのことをそう思うのは当然だよ・・・」

 その数日後、ぽん吉の枕元にポロのホログラフィーが現れました。

ポロ「どうだい、進展はあったかい?」
ぽん吉「ああ、ポロちゃん。ホントにありがとう。あれから何人かの尻馬連中に遺書に書くって言ったら、一人残らず自分のやったことに気づいたんだ」
ポロ「それはスゴイね。普通は何人がの分からず屋がいるんだけどね」
ぽん吉「同調するヤツが減ってきたら、ヒゲ太郎のヤツ、なんだか感じが変わってきたんだ」
ポロ「みんながヒゲ太郎を見る時の表情に気づいたのかな?」
ぽん吉「うん。そうだと思うよ。いまはイジメにくい雰囲気っていうのかな。ヒゲ太郎がぼくをイジめても、はやしたてるヤツがいなくなっちゃったら、アイツやりにくいんだと思うよ。でも、アイツは家でつらい目にあってるのかと思うと気の毒だよ」
ポロ「ポロ、今度はヒゲ太郎の枕元に行くよ」
ぽん吉「うん、ぜひそうして。それからさ、学校には、ほかにもイジメがあるんだ。でも、ポロちゃんが解決策を教えてくれたから何とかなりそうな気がする」
ポロ「あのさ。イジメっていうのは無限にパターンがあるんだ。だから同じ方法で解決できるとは限らないんだ」
ぽん吉「そうなのか。でも、観察するのは同じだよね」
ポロ「そうだよ。観察することで解決策にたどりつかなくちゃならないんだ」
ぽん吉「ポロちゃん、ぼくは本当に感謝してるよ」
ポロ「それを女神さまに伝えておくよ」
ぽん吉「そうか、女神さまっているんだね。どんな人なの? あ、人じゃないか」
ポロ「あはは、裏神田の路地で小料理屋やってるよ。“あじさい亭”っていうんだ」
ぽん吉「味最低?」
ポロ「あははははは、ポロも反対したんだよ、あじさいてい。マズそうだよね」
ぽん吉「ぼくはポロちゃんにどうやってお礼すればいいか分からないよ」
ポロ「あはは。お礼なんていいよ。ま、ちょっと君のしっぽを味見させてもらおかな・・・なんちて、ウソだよウソ。じゃあね〜」

 こうして、ポロはスーパー・ヒーローとしての仕事を終えたのでした。

 おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

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Il Gatto Dello Sport(ポロ・プロジェクト)のメールアドレス

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2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その1

エレクトラ先生さいごの授業 その1

 ポロがドーラ王立小学校6年生の3学期に、遠くの星へ転勤してしまうエレクトラ先生の最後の授業がありました。
 エレクトラ先生は、トラ柄の美しい毛並みの雌猫でした。ポロはアメン王子と呼ばれていましたが、ここでは分かりやすいようにポロで出てきます。


エ「地球には、ぶち猫ジョーンズ以外にもすばらしい生涯を送った人たちがいました。そう、猫ではなくて人だったのです」
ポロ「え〜! 人間て惑星にはびこるガン細胞みたいなものだって先生いったよ〜」
エ「そのとおりです。たしかに自らの宿主とも言える惑星を破滅に追いやって、自分たちもいずれは絶滅してしまうことでしょう。しかし、そうではない人もいたのです」
ポ「へえ、そうだったのか」
エ「そういう人たちは、たいてい無名でした。もちろん名前はあります。しかし、人々の注意を引くことがなかったということです」
ポ「地球の暦で紀元前と呼ばれる時代、ドーラで言えばほんの10公転ほど前のことですが地球では2000公転以上前のことになります。自転数で言えば730000自転以上前です」
他の児童1「先生! 地球人は目が回らないんですか?」
エ「ええ、大丈夫よ。地球人たちはずっと地球は公転どころか自転さえしていないと思っていたほどです」
児童2「鈍感だなあ」
エ「あなたたちだって地球に暮らしていたら地球人と同じように感じたかも知れませんよ。地球は大きいし、地球の古代人たちは地表は平面でどこまでも続いていると考えていました。地球には液体の水の海があって、海面も平面であると考えられていました。これは、小さなドーラに住んでいるあなたたちには想像しにくいことかも知れませんね」
児童2「ふーん、そうか〜」
エ「ドーラは地球に比べれば太陽系のずっと外側を公転していますから、太陽のまわりを回る惑星の運動を直接観察することができます。ちょっと想像力をたくましくすれば空に内惑星の軌道を思い描くことだって難しくありません。しかし、地球ではそうではありませんでした。太陽が地球のまわりを回っていると思っていたのです。これを天動説と言います」
ポ「へえ・・・」
エ「まさかと思うかも知れませんが、天動説が信じられていた時代に、それに異を唱えると罪になりました」
ポ「せんせい。地球人はバカだと思います」
エ「いいえ、そう思うのは後知恵というものよ。本当のことが分かるまでは誰もが霧の中にいるものです」
ポ「先生、ポロたちも霧の中にいますか?」
エ「そのとおりです。私たちもまだ霧の中にいるといってよいでしょう」
ポ「そうだったのか〜、くやしいなあ。ポロは霧から抜け出してやるぞ」
エ「ええ、ぜひそうなってくださいね。では、話をもとに戻します。地球の2000公転以上前のことです。地球のインドという地方に住む名も知られぬ人が“宇宙の根本原理”と“人間の根本原理”とがずれていることに気づきました。分かりやすく言うと、“真実”と“人間の思い込み”と言えばよいでしょうか。これがずれていると、人はいろいろなことが自分の思いどおりにならないと思うことでしょう」

つづく

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2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その2

エレクトラ先生さいごの授業 その2

ポ「どういうことですか〜?」
エ「では、ポロちゃんが、このドーラ小学校に入学する前に、この学校についていろいろと想像してすごく楽しいところだと思っていたとします。ところが、入学してみると思っていたところと違っていて、勉強は難しいし、友達との関係も複雑だったりします」
ポ「ポロは、そんなことなかったよ!」
エ「たとえばの話です。本当のことが分かれば期待との差にがっかりすることもなくなることでしょう。高性能のパソコンがあればすごいCGが作れるのになあ、とか、お金持ちになれば絶対幸せになれるのに、なんていうのも思い込みかも知れません」
児童3「あたし、その意味が分かりました、先生。すごいことだと思います」
ポ「ポ、ポロだって分かったもん」
エ「偉いわ。ドーラでは皆さんもよく知っているゴーヒャ・キージェが“事実は間違えない”という有名な警句を残しています。私たちは他人から学ぶのではなく事実から学ばなければなりません」
ポ「は〜い!」
エ「ところが、それが意外にも難しいのです。先ほどもお話しましたが、地球では地面が平らであることは観察的事実なのです。あるいは太陽が地球のまわりを回っているように見えることも観察的事実なのです」
児童3「どうして地球人は太陽のまわりを回っているって分かったんですか?」
エ「やはり紀元前のサモスという地方にいたアリスタルコスという人は、視点を宇宙に移して太陽系を見直したのです。彼は太陽中心説を唱えました」
ポ「どうしてそんなことができたの?」
エ「地球にはドーラよりもずっと大きな“お月さま”と呼ばれる衛星があります。衛星は満ち欠けを繰り返しますが、太陽-お月さま-地球の作る角度が直角になるときに“半月”になることから、太陽はとても月よりもとても遠いところにあると観察的に気づいたのです。そんなに遠いところにある星(太陽)が地球のまわりを回るのは変だと気づいたのでしょう」
児童2「す、すごい!」
エ「アレクサンドリアというところにいた、アリスタルコスよりも少し歳下のエラトステネスという人は、アレキサンドリアと、それよりずっと南にあるシエネという町では夏至の時に太陽の高さが違って見えることから、地球は球形であり、同時に太陽の高度を測れば地球の大きさも求めることができると考えたの」
ポ「すごすぎる!」
エ「そして、エラトステネスは地球の全周は46250キロメートルであると計算しました。実際は、およそ40000キロメートルですから、正確な計測器のなかった当時としては驚くほど見事な数字でした。このとき、すでに地球には太陽系の姿をおぼろげながらも把握していた人がいたことになります」
児童1「地球人もすごいじゃん」
エ「ところが、これをすごいと思えるのは、これを理解できる人たちだけです。残念ながら、この考えは広まることなく、つぎの時代を迎えます」
ポ「どういう時代?」
エ「誰もが納得しやすい天動説の時代です」
ポ「やっぱり地球人はバカだと思います」

つづく

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2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その3

エレクトラ先生さいごの授業 その3

エ「そんなことはありません。太陽系の姿を捉えるという点ではドーラは有利な条件が整っていましたが、ドーラでも同じようなことはありました。たとえば音楽です。音楽の真の姿は地球人から教えられました」
ポ「でも、地球人自身はまだ気がついてないって聞いてます。だからやっぱり地球人はバカだと思います」
エ「そうね。どこの星にも賢い人もいればそうでない人もいます。だから地球人はみんなバカだと決めつけることはできません」
ポ「でも、やっぱりバカだと思うな・・・・」
エ「これは、その後のヨーロッパという地域でのお話です。当時はカトリック教会が人々から絶大な信頼を勝ち得ていました。その教典である聖書には天動説そのものが書かれていたわけではありませんが、分かりやすい天動説が信じられていました。最初に述べたように、これに異を唱えると異端とされました。異端というのは仲間ではないものを排除しようとする心理のことです。これを“村の論理”と呼ぶ地球人学者もいます。地球の日本という地方では多数派に従わなかったり、単に気にくわないという理由で仲間はずれにすることを“村八分”と言うからです。これは地球人全般に見られる傾向で、その理由を、人間が野生であった時代に集団で身を守ったことに由来するのではないかなどという説を唱える学者もいます。それに気づかぬ人々も多く、地球では子どもから大人の社会にいたるまで、実に隅々まで“イジメの構造”が支配しています」
ポ「先生、ポロは絶対地球人はバカだと思います」
エ「視点が固定してしまうことこそ馬鹿げたことですよ、ポロちゃん」
ポ「だって、そうなんだもん・・・」
エ「さて、天動説に対抗する考え方を地動説と言いますが、地動説が全て正しいわけではありません。今では地球では誰もが地動説を信じていますが、地動説を理解している人はわずかです」
ポ「やっぱり地球人はバ」
エ「ポロちゃん、少し静かにしていてね」
ポ「だってバカだもん!」
エ「アリスタルコスから地球が1800公転もした後の時代、コペルニクスという人が、初めて地動説を理論化しました。それは地球の暦で1543年に出版された「天体の回転について」という書物に記されています。でも、コペルニクスは惑星軌道を真円であると仮定したために、これは正しい地動説ではありませんでした」
ポ「やっぱり地球人は」
エ「ポロちゃん、お黙りなさい」
ポ「・・・・・」
エ「中立の立場をとっていたティコ・ブラーエという天文学者は、どちらの説が正しいのか観測的に実証しようと思い立ちました。それで助手のケプラーとともに、望遠鏡が発明される前の当時としては最も正確な惑星の位置測定が行いました」
児童3「結果はどうだったのですか?」
エ「そのどちらでもありませんでした。ただし、細かく分けた要素ひとつひとつについて正誤を調べて多数決で考えると、天動説のほうがわずかに合致する数が多かったのです。それで、ティコ・ブラーエは“今のところ、天動説のほうに分がある”という結論に達しています」
ポ「(やっぱりバカだ)」

つづく

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2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その4

エレクトラ先生さいごの授業 その4

エ「ティコ亡き後、ケプラーは天動説か地動説かではなく、観測結果こそ事実であると考えて、観測結果から太陽系の姿を導き出そうとしました。その結果、惑星は太陽のまわりを楕円軌道を描いて公転しているという結論に達します。まさにゴーヒャ・キージェの言うとおり“事実は間違えない”のでした」
ポ「(ちょ、ちょっと賢いかも・・)」
エ「ケプラーは惑星の運動に関する3つの法則を導き出しましたが、これが実際の惑星の運動を実によく説明したので、天文学者たちはケプラーの地動説を支持するようになります」
ポ「(ふ〜ん)」
エ「ケプラーと近い同時代に生きたガリレオ・ガリレイという人は長く大学で天動説を教えていましたが、後に地動説支持に回って異端と見なされ、宗教裁判にかけられてしまいます。そこで自説を撤回するのですが、それは以前にジョルダーノ・ブルーノという人が異端の罪で火刑になっていたからかも知れません」
ポ「(こわ〜)」
エ「ジョルダーノ・ブルーノという人は地動説を撤回しなかったから火刑に処されたと思われがちですが、ブルーノの宇宙観は地動説などという狭い範囲のものではありませんでした。彼がたどりついたのは現在の地球でもドーラでも信じられている“無限宇宙論”でした。宇宙は均質で一様に無限に広がっているという考え方です。太陽系外惑星の存在はもちろん、地球外の生命についても存在を信じていました。地球の暦で1924年にエドウィン・ハッブルという人が天の川銀河の外にも無数の銀河が存在することを発見するまでは、一般には広まらなかった考え方です」
ポ「先生、地球人も少しはすごいと思います」
エ「よかったわ、ポロちゃん」
ポ「はい!」
エ「それでも、当時の地球人は空気には重さがないと漠然と思い込んでいました。ガリレオの弟子でもあったトリチェリという人は、10メートル以上深い井戸から吸い上げポンプで水を汲み上げられないことから、水の代わりに水銀を使って実験を行い、その現象を確かめました。その結果、吸い上げポンプと見なした上部が閉じたガラス管の中では、水銀面は76センチの高さまでしか上がらないことが分かりました。その上にできる空間を“トリチェリの真空”と言います」
ポ「(・・・・)」
エ「それを知ったブレーズ・パスカルと言う人は、それが気圧計であることに気づき、それを高い山の上まで運ばせました」
ポ「(・・・・)」
エ「果たして水銀柱は低くなりました。山の上では積み重なる空気の層が薄くなるので気圧が低いのです。では、ずっと上空、宇宙ではどうなるのでしょうか?」
ポ「(・・・・ごくり)」
エ「そうです。宇宙は真空であると推論できます」
ポ「せんせい、地球人は頭がいいと思います!」
エ「まあ、すいぶんと考えが変わったのね」
ポ「“ポロの原理”と“宇宙の原理”が一致してきたんだと思います」
エ「そうね。でもまだまだそう思うのは早いかも知れないわ。それほど事実っていうのは分かりにくいのよ」
ポ「はい!」

つづく

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2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その5

エレクトラ先生さいごの授業 その5

エ「その後、ゲーリケという人が真空ポンプを発明して“マグデブルクの半球”と呼ばれる実験を行って、デカルトという人が存在を否定した真空の存在を証明しました」
ポ「すごい! 宇宙に行かなくてもそんなことが分かっちゃうんだ〜」
エ「そのためには、何が事実で何が事実ではないのかが分かる力が必要がです。論理の組み立てには事実以外は使ってはならないからです。ただし、これは一般論です。数学などでは仮想の要素が仮定として論理の組み立てに用いられることがあります」
ポ「奥が深いなあ」
エ「さらに時代が下って、地球の暦で19世紀末にはツィオルコフスキーという人が、真空中でもロケットエンジンを使えば作用反作用の力で前進できることを理論的に示しました。この人は軌道エレベータ理論にまで言及していますが、周囲が理解できなければ誰も支持しませんから、人々からは気にもとめられていませんでした」
ポ「知られていることと理解されていることは違うっていうことですか?」
エ「そのとおりよ、ポロちゃん。でも、一人だけ、これを重大なことだと感じた人がいました。それがロバート・ゴダードでした。この人はドーラにおけるゴーヒャ・キージェの立場に位置する人でした。ゴダードの月ロケット打ち上げ計画は、世間の嘲(あざけ)りの対象となりました。“真空中でも飛行できる”というゴダードの主張に対して、ニューヨーク・タイムズという一流新聞社でさえ、社説でゴダードは“高校で学ぶべき知識を持っていないようだ”と非難したほどです」
ポ「それは、きっとその時代の地球人の考えを代弁してるんだろうね」
エ「そのとおりです。おそらく人々は真空中ではロケットを推し進める物質、逆に言うとロケット噴射を受け止める空気や水のようなものがないから前には進めないと考えていたのかも知れません。これは人々がニュートンの“作用・反作用の法則”を実は理解していなかったということを示していると言えるでしょう。今でも、地球人の多くは地球が1自転すると一日であると信じている人が少なくありません」
ポ「やっぱり地球人はバカかも」
エ「つまり、地動説は厳密に言うと理解されているわけではないということです。地球は1年間に約366.25自転しています。1自転は23時間56分です。しかし、地球は一日におよそ角度で1度弱、公転軌道上を移動するので、太陽が空の同じ位置に戻るまでは4分余計にかかって24時間かかります。簡単なことですが、理解しようと思わない人にとってはどうでもよいことなので、真実は霧の中のままになってしまいがちです」
ポ「ポロは断言するね、地球人はバカだと思うな」
エ「また考えが変わったのね、ポロちゃん。ポロちゃんにはどこまで本当のことが分かるかしら。もう少し話を進めるわ」
ポ「ポロは、もう考えなんて変わらないよ。地球人はバカだよ」
エ「1969年、人類初めての月面着陸の前日にニューヨークタイムズは49年前のゴダード批判を行った社説について誤りを認めて謝罪し、1992年にはローマ教皇ヨハネ・パウロ2世がガリレオ裁判が誤りであったことを認めてガリレオに謝罪しました。謝りに気づいて謝罪するというのはとても素晴らしいことです」
ポ「遅すぎだと思うよ、ポロは」

つづく

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2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その6

エレクトラ先生さいごの授業 その6

エ「いいえ、遅すぎることはありませんよ、ポロちゃん。15世紀の地球にはレオナルドという人がいました。レオナルドは“事実から学べ”と言いました。そして、事実を知るために画家という職業を選びました。創造者たる神の行い全てを知る方法は厳密な観察による事実の把握であり、それは絵に描かれて初めて自分自身がどれだけ正確に事実を捉えたかが分かるからです」
ポ「・・・・ちょっとすごいな」
児童3「すごいのはエレクトラ先生だと思います。あたし、いま感動してます」
エ「ありがとう」
児童2「ぼくも! エレクトラ先生は、どうしてエレクトラ先生になれたんですか?」
エ「それはね、とむりんせんせいのおかげです」
ポ「とむりんせんせいって誰ですか?」
エ「地球の音楽家です。私はせんせいのもとで学びました」
ポ「え゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!! エレクトラ先生は地球に留学してたのか!」
エ「そうです。私の師と仰ぐのはとむりんせんせいしかいないと確信したからです」
ポ「ポロは地球人を見直したよ。ホント見直した。ポロはおっきくなったら地球に留学するよ、ぜったい決めた」
エ「ドーラでは当たり前になっている音楽の“ドレドレ感”も、地球では、まだまだ理解されていません」
ポ「意味ないじゃん!」
エ「でも、いままでお話したように、地球人は着実に真実にたどりつこうとしています。未来は決して暗くないと思いますよ」
ポ「そうかなあ」
エ「確かに不安な点はあります。それは、地球人が地球を汚してしまう習性のようなものがあって、その重大さに気づいていないことです。その星の文明度は水のきれいさをどれだけ守れているかで表されます。それで言うと、地球は最低点に近いのです」
ポ「やっぱり・・」
エ「地球のような星では、だれより先に真実にたどりついた人たちは多くが無名です。ずっと後になって人々が真実に追いつくと、誰が正しかったのかを理解します」
ポ「ポロが地球に行って、真実を人々に知らしめるよ、ぜったいやる。やってみせるよ!」
エ「そう思ってくれるのはうれしいわ。でも、それはポロちゃんの思い込みかもしれないわ。大切なのは真実を見極めることよ」
ポ「ふふふ。ポロならダイじょぶさ」

 こうしてエレクトラ先生さいごの授業が終わりました。


※これはとむりんせんせいの実際のレッスンを元に時系列順に並べ直したものです。事実確認のためにはウィキペディアを参考にさせていただきました。内容に誤りが合った場合、その責はすべて、私“エレクトラ”が負うものです。とむりんせんせい、ポロ師範、およびウィキペディア関係者各位に深く感謝いたします。

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