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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-09-01 ポロの日記 2004年8月11日(波曜日)メロンプリンセス号の冒険 その3
2004-08-31 ポロの日記 2004年8月21日(岩曜日)楽しいランチ その1
2004-08-30 ポロの日記 2004年8月21日(岩曜日)楽しいランチ その2
2004-08-29 ポロの日記 2004年8月21日(岩曜日)楽しいランチ その3
2004-08-28 ポロの日記 2004年8月21日(岩曜日)楽しいランチ その4
2004-08-27 ポロの日記 2004年8月18日(波曜日)流星2号 その1
2004-08-26 ポロの日記 2004年8月18日(波曜日)流星2号 その2
2004-08-25 ポロの日記 2004年8月18日(波曜日)流星2号 その3
2004-08-24 ポロの日記 2004年8月15日(風曜日)ポロ7号からのメール その1
2004-08-23 ポロの日記 2004年8月15日(風曜日)ポロ7号からのメール その2


2004-09-01 ポロの日記 2004年8月11日(波曜日)メロンプリンセス号の冒険 その3

メロンプリンセス号の冒険 その3


ポ「ミタさん、どうしたの?」
ミ「・・・・・・・・」

 ミタさんは、何も言わずに涙を流し始めました。
 おじさんも絶句していました。たろちゃんも異変に気がつきました。遅れて、ポロもやっと気がつきました。
 プラグをコンセントに差し込んでもいないのに、電球式の走馬灯は光りながら回っていたのです。可愛らしい猫がニコニコしながらクルクルと走ります。

ミ「チビ太・・・」

 ミタさんがやっと声を出しました。
ポロは、やっと事態がのみこめました。猫のチビ太が走馬灯に姿を変えてミタさんのところに帰ってきたのでした。

お「はて、ここはどこですか?」

 急に我に返ったかのようにおじさんが言いました。

ポ「ここはね、あだち区とねりだよ」

 ポロは難しい漢字が読めるんだぞというように誇らしげに言いました。

お「わ、今度は猫がしゃべってるじゃないか。私は夢を見てるのか」
ポ「ポロって言うんだよ」
お「こんなところに来るつもりはなかったのに。私は鳩ケ谷に住んでいるんですよ」
た「あたしだって、こんなところに来るなんて夢にも思ってなかったもん」

 ポロは、たろちゃんに状況を説明しました。でも、たろちゃんは、すでに理解していました。

た「ミタさん、あたしたちそれいらないから、持って帰って」

 おじさんは、またバス停に向かって歩き始めました。ミタさんが追いかけて往復のバス代とお礼を手渡して、何度も何度もお礼を言っていました。

ポ「ミタさん、よかったね」
ミ「不思議なことがあるもんだね。こいつ、チビ太って言うんだよポロちゃん。もう20年くらい前になるんだけど、急にいなくなってそれきりだった」
ポ「がんばって帰ってきたんだね。エラいなあ」
た「あたし、びっくりしちゃった」
ミ「うんうん」

 ミタさんは、さっきたろちゃんがおじさんに渡した4000円よりもずっと多いお金をたろちゃんに握らせて、帰りにおいしいものでも食べて帰ってねと言ってくれました。
 それから、ポロとたろちゃんはミタさんと別れてメロプリ号で走り始めました。

た「意外な展開だったね、ポロ」
ポ「世界は不思議に満ちてるんだよ」
た「そうだね〜! とむりん、信じてくれるかなあ」
ポ「どうかな〜」
た「いいよ別に信じてくれなくても。だって信じてくれたってくれなくたって、チビ太が帰ってきた事実は変わらないもん」
ポ「わ〜、たろちゃんてせんせいの娘だなあ〜」
た「どうして?」
ポ「いいの。それより、メロンプリンセス号の最初の寄港地はハンバーガーショップだよ!」
た「うん、さっきのバス通りにあったよね」
ポ「たろちゃん、今日はビッグセットが食べられるよね」
た「もっちろんよ。ミタさんにかんぱーい!」

 バス通りを走るメロンプリンセス号の前カゴを、少し涼しくなった風が気持ちよく吹き抜けていきました。


おしまい

 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

ポロの掲示板はこっち。
ポロのひみつの部屋

先頭 表紙

ミタさん、ハンバーガーごちそうさま! / ポロ ( 2004-08-25 22:47 )
でも、あとニャンコが7〜8匹、ワンコが2匹。…あ、他にも心当たりのあるワンコが5〜6匹にニワトリ…の走馬燈も有るのかも? / みた・そうや ( 2004-08-25 22:39 )
ポロちゃん、たろちゃん、遠い所追いかけてくれてありがとうね。無事に帰れたかな?知らないオジサンもありがとう! / みた・そうや ( 2004-08-25 22:37 )

2004-08-31 ポロの日記 2004年8月21日(岩曜日)楽しいランチ その1

楽しいランチ その1


 岩曜日の朝早く、作曲工房の玄関前にディーンドライブ特有の高周波を響かせて松戸博士のりんご丸がやってきました。
 りんご丸には、ロケット号のほかにマネキン人形が乗っていました。

ポ「わ〜い。博士、ロケット号、オハヨ! あのさ、あのマネキン人形はなあに?」
ロ「ぴゆぴゆ!」
松「おお、ポロどん。あれはコピーロボットじゃよ」

 ちょうど、おちゃめさんが愛媛ナンバーのダーリン号でやってきました。

お「お早うございます」
松「おお、おちゃめさん、お久しぶりじゃのう」

 そこへ、迎えに行くと言ったのに待ちきれないからと最強線で来てしまったミタさんが現れました。

ミ「みなさん、おはようございます」
松「おお、ミタさんじゃの? ワシが松戸じゃ。ポロどんから話は聞いておる」
ミ「初めまして。今日は大人の遠足ですね」
松「そうじゃ。ワシも楽しみでならんわい!」

 みんな、りんご丸に乗り込みました。目的地は射手座の方向で銀河系の中心部です。途中、いわき市にmokoさんを迎えに行きます。

 リンゴ丸の航法コンピュータのAKIが、シートベルトをしめてだとか、揺れることがあるだとか、いくつかの決まりきった注意事項を言いましたが、みんな話に夢中だったので誰も聞いていませんでした。
 仕方なくAKIは上昇を始めました。10分ほどでいわき市のmokoさんの家に到着しました。松戸博士が玄関のチャイムを押すと、mokoさんが出てきました。

松「初めまして。松戸ですじゃ。銀河ランチにお誘いに参りました」
mo「まあ、はじめまして。でも、あたし、今日仕事なんです」
松「そんなことじゃろうと思っていいものを用意してきたのじゃ。ささ、ちょっとこの鼻のところを押してくだされ」

 mokoさんがコピーロボットの鼻のボタンを押すと、ロボットはmokoさんと瓜二つになりました。

mo「まあ、なんなのこれ!」
松「これ、あなたの代役を果たすアンドロイドです。仕事も家事も全部あなたと同じようにやります。大丈夫、誰も気がつきませんて」
mo「そんなこと言われても・・・」

 不安がるmokoさんを松戸博士が半ば強引に押し切って、りんご丸に乗せてしまいました。でも、りんご丸にはおちゃめさんもいたので、mokoさんは安心したようでした。
 コピーmokoさんが、こちらを向いてウィンクすると、博士は「よろしくな」と言って負けずにウィンクしました。

 りんご丸の航法コンピュータのAKIがディーンドライブに喝を入れると、リンゴ丸は一瞬にしていわき市の上空10000キロに上昇しました。
 メインディスプレイの現在位置表示「いわき市上空」の文字と、小さくなった日本を見比べて、ポロは、これはいわき市上空とは言わないよなあと思いました。

松「mokoさん、心配はいらん。ポロからいろいろ話を聞いておったんで用意してきたんじゃ。あれはピアノのレっスンにも対応しておる。ちょっといい腕前のやつじゃ」
mo「本当に大丈夫ですか?」
ポ「ダイじょぶだよ、mokoさん!」
mo「まあ、ポロちゃん」
ポ「そだよ!」

 それから、そこにおちゃめさんとミタさんが加わって、リンゴ丸の中では賑やかなおしゃべりが始まりました。


つづく

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2004-08-30 ポロの日記 2004年8月21日(岩曜日)楽しいランチ その2

楽しいランチ その2


 数分後、AKIが「ただ今よりディープスペース・ワープ、亜空間に突入します」とアナウンスしましたが、みんな話に夢中で誰も聞いていませんでした。
ここで、ロケット号から朝ご飯が配られました。ロケット号特製サンドイッチと新鮮なクランベリーのジュースでした。一口食べたポロが「んまい!」というと、ミタさんもおちゃめさんも「んまい!」とマネをしました。それを聞いてmokoさんが笑いころげました。
 1時間後、りんご丸は銀河系の中心にほど近い、射手座Aから5000光年ほど離れた宇宙空間に実体化しました。
 あいかわらず賑やかなおしゃべりが続く車内(りんご丸はワゴン車を改造した型宇宙船)で、松戸博士が呼びかけました。

松「あ〜、諸君。宴たけなわのところ申し訳ないが、ここでロケット号から今日のランチについてレクチャーがあるから聞いてくだされ」

 ロケット号はリンゴ丸のダッシュボードに立つと元気に言いました。

ロ「ぴゆぴゆ!」

 以下、ポロの翻訳です。

ロ「みなさん大事なお話です」

 ピューピュー!(ノリノリのミタさんの口笛、ポロ注)

ロ「これから宇宙ランチの注意事項をお話します。宇宙には大きくわけて2種類の炭素系生物がいます。それはL型アミノ酸でできている生物と、D型アミノ酸でできている生物です。地球人はL型です。自分とは違う型のアミノ酸を食べることはできません。だから銀河連邦に加盟している星星では、この両方の料理を用意することが義務づけられています。最低限、L型アミノ酸のメニューを選ぶことだけは守ってください。L型アミノ酸を表す宇宙共通の表示は△です。D型は◆です。そのほかにも、星ごとの文明度、習慣、宗教、アレルギーなどとてもたくさんの要素があって、複雑ですが詳しいことは分かりません。まずいと思ったら食べないでください。以上です」

 ロケット号の話が終わると、またおしゃべりが始まりました。

ミ「まるでロシアン・ルーレットだね」
松「全くじゃ。何が起こるか楽しみじゃの」
お「ちょっと心配かも。ポロ、先に味見してね」
ポ「わ、おちゃめさん、ずるいよ!」

 そうこうしているうちにりんご丸は目的の星、ミネルヴァ星の極軌道に入りました。ほかにもいくつもの人工的なプラットフォームが軌道上にありました。その数は100万個くらい。リンゴ丸は、それにうまくまぎれて飛行を続けました。
AKIが詳細な表面地図を作成すると、ディスプレイに銀河連邦本部が置かれていると思われる都市の市街図を表示しました。

松「よし、AKI。ここでは我々はUFOじゃ。ステルスモードでこっそり、銀河連邦本部の近くに着陸じゃ」

 AKIは都市なのに生命反応のない小さな森を選んで着陸しました。

ミ「UFOは鎮守の森に着陸するって決まってるのさ。ね、ポロちゃん」
ポ「だから、こないだのUFOも神社にいたんだね〜」

 AKIが大気組成を調べて呼吸可能であることが分かったので、ドアが開いて全員が初めての異星に降り立ちました。

松「AKI」
A「はい、博士」
松「木陰に隠れておれ。誰にも見つからんようにな」
A「心得ております、博士」

 リンゴ丸は、お利口さんで留守番ができそうでした。

 猫とアヒル型のスポンジと4人の地球人という奇妙な一行はミネルヴァの首都と思われる街に繰り出しましたが、あまりにいろいろなエイリアンが歩いているので、ぜんぜん目立つことはありませんでした。


つづく

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2004-08-29 ポロの日記 2004年8月21日(岩曜日)楽しいランチ その3

楽しいランチ その3


ポ「ねえ博士。エイリアンだらけだね」
松「わしらもエイリアンじゃ」
ミ「ちょっと怖いですね」
お「向こうもそう思ってるかもね」
ロ「ぴゆぴゆ!」
mo「もう帰りましょうよ」
ポ「ダイじょぶ、ポロがついてるから」

 ポロが言ってもmokoさんは、ぜんぜん信じてくれていないようでした。
 ポロたちはレストランを探して歩きました。するとミタさんが何かを見つけて指さしました。その指の先にはケイバーリットを張り付けた、見覚えのあるUFOがいました。

ポ「あ゛〜〜〜〜〜!」
ミ「ポロちゃん、あれって、あの時のだよね」
松「どうしたのじゃ」

 松戸博士もケイバーリットを見つけました。

松「おお、なぜこの星にケイバーリットがあるのじゃ」
ポ「あれはね、ミタさんがシュデンガンガー商会で買ったやつだよ、博士。それでね、それを故障したUFOの修理に使ったの」
ミ「そうなんですよ。文京区の白山通りの近くの小さな神社の境内で」
松「???・・・。何を言っておるんじゃ、おぬしらは」
ミ「とにかく、あそこへ行ってみましょう。レストランみたいだし」

 ポロたちがお店に入っていくとカウンターの奥から一人のリトルグレイ型エイリアンが走り出てきました。

エ「£≠∴!」

 博士が全言語翻訳機のスイッチを入れました。

エ「おお、地球総督閣下! その節は大変お世話になりました。おかげさまで無事ここに戻ることができました」
ミ「またお会いできるとは、奇遇ですね」
エ「ご一行は、地球連邦政府の要人の方々でしょうか」
ミ「そう、よろしくね」
エ「誠心誠意、務めさせていただきます」

 エイリアンはミタさんの前でそう言いました。松戸博士は、やっと事情を察してエイリアンに話しかけました。

松「今日は地球を代表して、この星に視察にきたのじゃ。お昼を食べたいのじゃが、用意してくださらんか」
エ「ようこそ、当店をお選びいただき光栄です」
松「ところで、このカードは使えるかの?」
エ「もちろんでございます。お、これはプラチナカードの上のイリジウムカードではないですか! 見るのは初めてです。さすが、高位の方は違いますね」
松「足りるといいのだが」
エ「ご心配でしたらすぐに残高を確認いたします」

 エイリアンはレジでカードを照会すると、すぐに戻ってきました。

エ「驚きました。私どもの機械では表示できないのでクレジット会社に照会したところ、このカードには4億グランの残高があります。私どもの店でしたら何万年もお食事していただけます」
ポ「そういえば、カレレンさんが4億グランて言ってたっけ」

 席に案内されてメニューを見ると、本日のランチが12ピコグランでした。

ミ「ここの単位はピコグランなのか〜。そりゃ使い切れないや」
ポ「どのくらいなの? 高いの?」
松「その逆じゃ。今日、わしらがいくら食べてもカードの残高は全く減らないに等しい」
ミ「そういうことだよポロちゃん。松戸博士ご一行様は地球で一番の金持ちかも知れないよ」

 そんなわけで、ポロたちはL型アミノ酸のメニューを片っ端から注文して飲めや歌えやの大宴会を始めてしまいました。

松「さあさ遠慮はいりませんぞ、みなさん!」
ポ「材料は何だか分かんないけど、すっごくおいしい!」
お「本当。地球の5つ星レストランみたい」
mo「本当ね〜」
ロ「ぴゆぴゆ!」
ミ「う〜ん、最高だ〜!」

 一行はテーブルにお皿を積み重ねていきました。


つづく

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2004-08-28 ポロの日記 2004年8月21日(岩曜日)楽しいランチ その4

楽しいランチ その4


松「わはは。あんたあんたたちも好きなだけ食べなされ!」

 お店にやってきたお客にも松戸博士は何でも振る舞ったために、宴会の輪はどんどん大きくなりました。
 気がつくと、コビト星人のテレビ局も取材に来ていました。
 さっそくお店のテレビのスイッチを入れると、ドキュメンタリー番組が始まりました。文京区の神社の境内に不時着するアダムスキー型円盤の映像に続いて、自分の星に帰れなくなってしまって途方に暮れるレストランのマスター夫婦が映し出されました。そこにやって来たのが流星2号でした。地球連邦のミタ総督(!?)が偶然通りかかって、ポロ補佐官とともに円盤の修理をしました。ミネルヴァ人の夫婦はお礼を言って、地球を後にしました。

ポ「ミタさん、感動的なドキュメンタリーだね〜」
mo「ほんと、いいことしたわねえ!」
ミ「う〜ん、いいことをしたなあ」

 みんな、お腹がいっぱいになったので帰ることにしました。博士がカードで支払いを済ませなしたが、1グランも減っていませんでした。
 帰り際にミタさんがマスターに訊ねました。

ミ「このあいだ頂いたカードは、どのようなものですか?」
マ「ああ、あれはIFF(敵味方識別装置)カードです」
ミ「え?」
マ「あのカードを持っていれば、ミネルヴァのスペースガードシステムに撃ち落とされることなく着陸できます」
ミ「じゃ、あれがないと・・・」
マ「はい、撃ち落とされます」
ミ「も、持ってきてよかった〜」
マ「銀河連邦に未加盟でしたからお持ちではないだろうと思って、修理のお礼に差し上げたのです」
ポ「うわ〜、そうだったのか〜。まあ、とにかくめでたしめでたし」

 ポロたちがリンゴ丸に戻ると、エイリアンの人だかりができていました。エイリアンたちはカメラをリンゴ丸に向けて、さかんに撮影していました。もっと近づくと、リンゴ丸のAKIが取材を受けていました。ここに集まっていたのは新聞社とテレビ局、通信社の記者たちだったのです。
 ポロたちに気づくと、記者の集団はインタビュー攻勢をかけてきました。ポロたちはそこで小一時間いろいろな質問に答えてからやっと解放されました。

 地球に戻った翌日、ミネルヴァ・ポスト新聞社からアンシブル(即時通話)で見ネルヴァ・ポストの第1面のファクシミリが送られてきました。
 見出しには「銀河連邦未加盟の地球総督が非公式訪問」とあり、その下の写真にはリンゴ丸をバックに、全員が大きく写っていました。

ポ「ほら、せんせい。きのうのポロたちのことがミネルヴァ新聞の一面に出てるんだよ」
せ「どれどれ。大きなあつかいだね。何十年かたって本当に地球のどこかの政府が銀河連邦とコンタクトを取ったときに、この事を知ったらびっくりするだろうなあ」
ポ「そだね。楽しみだなあ」

 一週間後、mokoさんから「今日レッスンで、先週のピアノは素晴らしかったわ、とせんせいに褒められてしまいました」というメールが届きました。mokoさんの代わりにレッスンに行ったコピーロボットがピアノの名手なのはホントのようでした。


おしまい


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危なかった〜。識別カード!サイフとは別のカード入れに入れておいたから、忘れる所でした〜。途中で気が付いて取りに戻ってよかった…(^^; / みた・そうや ( 2004-08-25 12:02 )

2004-08-27 ポロの日記 2004年8月18日(波曜日)流星2号 その1

流星2号 その1


 暑い日が続いていましたが、ちょっと涼しくなったので、夜になってからポロは神田鍛冶町のダイソン工房へ行ってみました。

「ゴメンくださーい!」

 中から“どうぞ〜”って声をかけてくれたのは、ポロの予想どおりミタさんでした。

「わ〜、ミタさん。きっといると思ったんだ」
「そう。それはするどい」
「こんどはスクーターでも作ってるの?」
「そうだよ。無事だったケイバーリットを使って空飛ぶスクーターだ」
「すごいね〜」

 そこへ大尊さんがやってきました。

「おや、ポロさんではないですか。いらっしゃい」
「おじゃましまーす」
「流星号、うまく飛んだのに残念でしたね」
「でも、面白かったよ!」

 大尊さんはスクーターのハンドルを自由に傾けるためのボールジョイントを持ってきたのでした。

「よし、ぴーったりだ!」

 ミタさんが部品を取り付けると、ベニヤ製なのにホントにスクーターっぽくなりました。

「ポロちゃん、流星2号だ」
「すごいねえ、うまく飛ぶといいね」
「ほら、人間一人と猫一匹用なんだ。これがポロちゃんの席」

 運転席の足元に、小さなバスケットがとりつけてありました。

「わあ、ホントだ〜!」

 ミタさんが仕組みを説明してくれました。

「1号の時は、重力についてよく分かっていなかったから宇宙船を作るときの要領で設計してしまったんだ。でも、今度は地球上で使うことを考えた・・・・・・」

 流星2号は車輪の代わりに底面にケイバーリット・ブラインドが一面を覆っていました。重りのついた短い着陸脚がブラインドが地面に着くのを防いでいます。右足のペダルを踏むとブラインドが閉じて、下からの重力を遮断します。左足のペダルを踏むとブラインドが開いて重力の影響を受けるようになります。ハンドルを傾けると重心が移動して車体が傾いて進む方向を変えることができます。
 ミタさんは説明を続けます。

「・・・・着陸脚が乗員に対するカウンターウェイトになっていて、これはケイバーリットの影響を受けないから、もう上下逆に回転することもないよ」
「すごい!、ミタさんは現代のダイムラー・クライスラーだ」
「それを言うならゴットリープ・ダイムラーだよ、ポロちゃん」
「そっか〜、ハハハ」
「よし、試運転だ」

 流星2号は夜の路地裏に運び出されました。

「ポロちゃんは、ちょっと待っててね。安全を確認するから」

 そう言って流星2号にまたがると、ミタさんは徐々にブラインドを閉じていきました。流星2号はすぐに浮かび上がって、公園のばね付き木馬のようにふわふわと上下して気持ち良さそうでした。

「浮上成功だよ」

 ぱちぱちぱちぱちぱちぱち!

 ポロと大尊さんが夜の路地に拍手の音を響かせました。
 ミタさんがハンドルを前に倒すと流星号も前に傾いて、ちょうどヘリコプターのように進み始めました。ハンドルの向きしだいで、360度どちらにでも進むことができました。


つづく

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2004-08-26 ポロの日記 2004年8月18日(波曜日)流星2号 その2

流星2号 その2


「試運転は成功だ。さあポロちゃん、これで帰ろう。大尊さんお世話さまでした」
「じゃね、大尊さん。またね〜」
「はい。ミタさん、ポロさん、お気をつけて!」

 流星2号は深夜の神田鍛冶町を音もなく疾走しました。と、言いたいところだけど全然スピードが出ません。

「ミタさん、全速力だよ」
「うん、これで精いっぱいかもしれないなあ」
「え゛〜! 自転車より遅いよ」
「引力で進むなんて、こんなもんなんだよ」
「そっか。これなら安全かも」

 わんわんわんわんわん!

 そのとき、鎖からはずれたどこかの犬が、どこからか現れて流星2号を追いかけてきました。犬のほうが全然速くて、すぐに追いつきそうでした。

「わ、安全じゃないかも!」

 ポロはミタさんの背中に駆け登のぼりました。

「ははは、ポロちゃん大丈夫だよ」

 余裕たっぷりにそう言った途端、ミタさんのズボンの裾に犬が噛みつきました。

「わ、わ、わ、こら。やめろ!」

 質量があるとは言っても、流星2号は重力を受けずにふわふわと浮いているだけなので、犬に振り回されてしまいました。

「きゃあああああああ〜!」

 ポロもミタさんから振り落とされそうでした。
 仕方がないので、ポロは持っていたイモようかんを一個投げました。すると、犬は一目散にイモようかんを追いかけていき、ポロたちは難を逃れました。

「あ〜、どうなることかと思ったよ〜」
「ポロちゃん、ありがとう。あとでイモようかん買ってあげるからね」

 ミタさんは、犬が届かない高さまで流星2号を上昇させました。

「これで、大丈夫だ」
「でも、揺れが激しくなったかも」

 道路から30センチくらい浮いているときは5センチ幅で上下にふわふわしていましたが、1メートルのたかさでは30センチくらいの幅で上下しているのでした。

「ポロ、酔っちゃうかも!」

 結局、30センチの高さで行くことになりました。
 靖国通りを渡って秋葉原の電気街に入ると、ミタさんは、このあたりには詳しいんだよ、と言ってシャッターの閉まったお店を順番に説明してくれました。それから、御徒町(おかちまち)の手前で路地を左に折れて、本郷を目指すことにしました。東京大学の近くに出れば、ポロもトラックで通い慣れた道に出ます。
 本郷通りと平行して走る裏路地を進んでいくと、つきあたりに森がありました。どこかの鎮守の森に違いありません。だって、赤い鳥居があったからです。
 ミタさんは鳥居にむかう階段を流星2号でふわふわと登っていきました。

「すごいねえ、流星2号!」
「まっかせてくれよ」

 事件は、そこで待っていました。


つづく

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う〜ん、やはり下からの重力を遮るだけでは、推進力が足りなかったようですね〜。それにしても、ワンコが来るとは… / みた・そうや ( 2004-08-18 22:23 )

2004-08-25 ポロの日記 2004年8月18日(波曜日)流星2号 その3

流星2号 その3


「ミタさん、なんだかけむり臭くない?」
「そう言われれば、プリント基板がくすぶるような匂いだね」

 神社の境内、前方に何かがありました。

「ミタさん、小型UFOが不時着してる」
「ほ、本当だ。逃げよう!」
「ダイじょぶだよ。ポロ、ちょっと見てくる」

 ポロが近づくと、小さな子どもくらいの宇宙人が2人、途方に暮れていました。

「どしたの?」
「£≠∞仝!!」
「分かんないよ」

 リトルグレイ型宇宙人はヘルメットの翻訳機のスイッチを入れました。

「誰だ?」
「ポロだよ」
「この星の支配種族か?」
「違うけど、もしかして指導者に会わせろでしょ? いいよ、あの人だよ」

 ポロは、ミタさんに走り寄ってヒソヒソ話をしました。

「・・・ミタさん、あのね。ミタさんが地球連邦の総督っていうことになってるから、話を合わせてね」
「・・・え〜、そんなの困るよ」
「・・・ダイじょぶ。ポロ、宇宙人には慣れてるんだ」

 ミタさんは宇宙人と話を始めました。そのうち、UFOの故障箇所が分かったらしくポロに教えてくれました。

「ポロちゃん、発音できそうもない難しい名前の星から来た宇宙人だよ」
「なんか言ってた?」
「アダムスキー型円盤は3つの反重力球というか、エンジンを持ってるんだけど、それが全部壊れて帰れないらしい」
「もしかして、ミタさん、ケイバーリットをプレゼントしちゃおっかなって考えてるでしょ」
「分かった?」
「ミタさんがいいんなら、ポロはいいよ。ポロたち歩いてだって帰れるし」
「さすがポロちゃん」
「ちがうよ、さすがミタさんだよ」

 ミタさんが流星2号から外したケイバーリットブラインドをUFOの下面に張りつけて、機内から操作できるマニピュレータに開閉ひもを掴ませると、修理が完了しました。
 宇宙人たちは感激して、ミタさんにお礼を言うと宇宙に帰っていきました。

「なんかいいことしたね、ミタさん」
「そうだね。さ、帰ろうか」

 ポロたちは「燃えるゴミは月・木曜日」と書かれた近所のゴミ集積所に流星2号を置いて歩き始めました。

「ポロちゃん、あの宇宙人たち機械オンチだったんだ。なんにも知らない様子だったよ」
「星新一さんの書いてることはホントだったんだねえ」
「お礼にこんなものをくれたよ」

 ミタさんが見せてくれたのは1枚のカードでした。

「これってさ、ひょっとしたらクレジットカードじゃない?」
「宇宙人に借金しても嬉しくないなあ」
「じゃさ、宇宙人のプリペイドカードかも」
「それなら嬉しいけど、どこで使おうか?」
「宝物だよ」
「そうだね」

 少しずつ白んできた空を見上げながら、ポロたちは文京区の路地裏を歩き続けました。


おしまい


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先頭 表紙

あ、やっぱり〜。今後のお話の伏線だろうとは思っていたけど…ってバラしちゃっていいの〜!?(笑) / みた・そうや ( 2004-08-20 07:38 )
ミタさん。伏線って言うヤツだよ、週末の。 / ポロ ( 2004-08-19 00:29 )
スクーターは残念だったけど、また作ればいいし(^^)。星新一も、宇宙人に会っていたのかも知れませんね。それにしても、何のカードだろう?名刺だったりして…?(笑) / みた・そうや ( 2004-08-18 22:27 )

2004-08-24 ポロの日記 2004年8月15日(風曜日)ポロ7号からのメール その1

ポロ7号からのメール その1



 ポロちゃんへ

 ポロ7号だよ。いきさつは6号からの情報で知ってると思うけど、お別れしなければならなくなった。これは置きみやげだ。ポロプロジェクトの会議録から抜き出した資料の一部だよ。きっと役に立つと思う。以下が、その内容だ。

 *-*-*-*-*-*

 ポロ・プロジェクト議長殿

 指示のありました「ポロのキャラクター分析」を終えたので報告します。
 当ポロ・プロジェクトのポロを除いても、オリジナルポロに複数のキャラクターを認め、分析の結果その存在を確認いたしました。

1.初代ポロ(ひらがなポロ)
 まずは初代ポロであります。
 初代ポロは、ひらがなを多用して表記していたため、ひらがなポロと呼ばせて頂きます。ひらがなポロは、ゆっくりとした語り口で掲示板に登場し、ほんわかムードで一気に人気を獲得いたしました。音楽コラムの代理も務めていましたが、現在のポロとは文体、語り口、ともに大きな隔たりがあります。

2.2代目ポロ(おはなしポロ)
 2代目ポロは、センセーショナルに「お話の部屋」に登場します。処女作は「月夜の出来事」でした。読者は、いきなり強烈なパンチを喰らった気がしたことでしょう。「バイエル58番なら弾けます」のような、ポロの性格を決定する言葉をいくつも吐くからであります。これで、一気に2代目ポロ、ここでは「お話ポロ」のキャラクターが出来上がりました。このキャラクターの登場は実に劇的な事件でした。以後、波動エンジンやクリスマスの話が立て続けにアップされ、現在のポロのイメージが動かぬものとなりました。

3.3代目ポロ(コラムポロ)
 その頃、コラムポロも現れます。これがいつからであるかは定かではありませんが、ほんわかした「ひらがなポロ」から「利発なポロ」へと変貌を遂げていきます。このポロの特徴は、せんせいのコラムよりも理路整然とした話の流れを持つことです。それが、ほとんどすべて会話体によって表現されており、おそらく読者は、せんせいのコラムよりもこちらを期待しているのではないかと思えるほどです。不確実な情報ですが、このポロは、せんせいが過去に子どもたちのために書いた膨大な「野村家テキスト」を渡されている可能性があります。せんせいと綿密な連絡もとっていることでしょう。コラムポロの明晰さゆえ、ポロ・プロジェクトがここに割り込むことが困難な状況です。


つづく

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2004-08-23 ポロの日記 2004年8月15日(風曜日)ポロ7号からのメール その2

ポロ7号からのメール その2


4.4代目ポロ(SFポロ)
 さらに、技術文書養成キットのあたりで、もう一人の「SFポロ」が現れます。ひょっとするとSFポロの処女作は「ロケット号の日記」あるいは「スリッパを買いに」あたりかも知れません。「ロケット号の日記」にはSF小道具と言われるようなものは一切出てきませんが、この翻訳様式は、まさにSFそのものです。お話ポロもSF小道具こそ使いますがファンタジー路線を崩しません。それに対してSFポロは、あくまでもセンス・オブ・ワンダーによってストーリーを進めます。またSFポロはアイザック・アシモフが記述しているチオチモリンなども知っていて、おまけに神田の街をあーっはははははなどとポロらしからぬ描写をしているところなどで区別がつきます。SFポロは、極めて頭脳明晰ですが、お話ポロの持っている情緒的な雰囲気には欠けるきらいがあります。「ロケット号の日記」という非常に優れた話が書けるのに、お話ポロの描く「サンタクロースの手伝いをして光の粉をまくポロ」や「ボンビーにとまどうポロ」などを描くことができません。しかし、これはどちらが優れているという問題ではなく、非常に優れたライターが2人もいるということであります。残念ながら、現在ポロ・プロジェクトはこの2人に対抗する力を持ちあわせておりません。発想力について、メンバーにせんせいのレッスンを受けさせる必要があります。

5.まとめ
 ここまで初代ひらがなポロ、利発なコラムポロ、情緒的なお話ポロ、頭脳明晰なSFポロの特徴について述べてきました。この4キャラクターが存在することは確かであります。そのうち、ひらがなポロは、現在は引退しております。また、現役ポロについても、このようなすぐれた書き手が3人も集まることは考えにくく、お話ポロのうち一人はせんせい自身であるという推測も成り立ちます。というようなわけで2人、もしくは3人のポロが現役ライターとして活躍していることは間違いありません。そのことは、一人では到底あり得ないような怒濤の更新や、ポロの正体が全く明かされないところからも伺えます。それについては、複数のポロがいるからこそ一人一人は正体を明かすことができないと考えるのが妥当であり、時折、更新順序や時刻などに連携ミスが生じていることも証左のひとつとなっています。そのことによって生じるフラストレーションを「ポロの求人広告」などの話に見てとることができます。
 以上、分析結果をご報告いたします。

E次郎

 *-*-*-*-*

 どうだい、君のことはここまで分析されてしまっているよ。気をつけた方がいい。
 でも、このE次郎はオリジナルポロたちの圧倒的な発想力に気づいているので、せんせい側に寝返る可能性もあると踏んでいるんだ。
 じゃ、ホントにお別れだ。サヨナラ。

 ポロ7号


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