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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-08-27 ポロの日記 2004年8月18日(波曜日)流星2号 その1
2004-08-26 ポロの日記 2004年8月18日(波曜日)流星2号 その2
2004-08-25 ポロの日記 2004年8月18日(波曜日)流星2号 その3
2004-08-24 ポロの日記 2004年8月15日(風曜日)ポロ7号からのメール その1
2004-08-23 ポロの日記 2004年8月15日(風曜日)ポロ7号からのメール その2
2004-08-22 ポロの日記 2004年8月13日(電曜日)蝋管蓄音機製作記 その1
2004-08-21 ポロの日記 2004年8月13日(電曜日)蝋管蓄音機製作記 その2
2004-08-20 ポロの日記 2004年8月12日(草曜日)さよならポロ6号
2004-08-19 ポロの日記 2004年8月10日(熱曜日)タコ焼き大作戦 その1
2004-08-18 ポロの日記 2004年8月10日(熱曜日)タコ焼き大作戦 その2


2004-08-27 ポロの日記 2004年8月18日(波曜日)流星2号 その1

流星2号 その1


 暑い日が続いていましたが、ちょっと涼しくなったので、夜になってからポロは神田鍛冶町のダイソン工房へ行ってみました。

「ゴメンくださーい!」

 中から“どうぞ〜”って声をかけてくれたのは、ポロの予想どおりミタさんでした。

「わ〜、ミタさん。きっといると思ったんだ」
「そう。それはするどい」
「こんどはスクーターでも作ってるの?」
「そうだよ。無事だったケイバーリットを使って空飛ぶスクーターだ」
「すごいね〜」

 そこへ大尊さんがやってきました。

「おや、ポロさんではないですか。いらっしゃい」
「おじゃましまーす」
「流星号、うまく飛んだのに残念でしたね」
「でも、面白かったよ!」

 大尊さんはスクーターのハンドルを自由に傾けるためのボールジョイントを持ってきたのでした。

「よし、ぴーったりだ!」

 ミタさんが部品を取り付けると、ベニヤ製なのにホントにスクーターっぽくなりました。

「ポロちゃん、流星2号だ」
「すごいねえ、うまく飛ぶといいね」
「ほら、人間一人と猫一匹用なんだ。これがポロちゃんの席」

 運転席の足元に、小さなバスケットがとりつけてありました。

「わあ、ホントだ〜!」

 ミタさんが仕組みを説明してくれました。

「1号の時は、重力についてよく分かっていなかったから宇宙船を作るときの要領で設計してしまったんだ。でも、今度は地球上で使うことを考えた・・・・・・」

 流星2号は車輪の代わりに底面にケイバーリット・ブラインドが一面を覆っていました。重りのついた短い着陸脚がブラインドが地面に着くのを防いでいます。右足のペダルを踏むとブラインドが閉じて、下からの重力を遮断します。左足のペダルを踏むとブラインドが開いて重力の影響を受けるようになります。ハンドルを傾けると重心が移動して車体が傾いて進む方向を変えることができます。
 ミタさんは説明を続けます。

「・・・・着陸脚が乗員に対するカウンターウェイトになっていて、これはケイバーリットの影響を受けないから、もう上下逆に回転することもないよ」
「すごい!、ミタさんは現代のダイムラー・クライスラーだ」
「それを言うならゴットリープ・ダイムラーだよ、ポロちゃん」
「そっか〜、ハハハ」
「よし、試運転だ」

 流星2号は夜の路地裏に運び出されました。

「ポロちゃんは、ちょっと待っててね。安全を確認するから」

 そう言って流星2号にまたがると、ミタさんは徐々にブラインドを閉じていきました。流星2号はすぐに浮かび上がって、公園のばね付き木馬のようにふわふわと上下して気持ち良さそうでした。

「浮上成功だよ」

 ぱちぱちぱちぱちぱちぱち!

 ポロと大尊さんが夜の路地に拍手の音を響かせました。
 ミタさんがハンドルを前に倒すと流星号も前に傾いて、ちょうどヘリコプターのように進み始めました。ハンドルの向きしだいで、360度どちらにでも進むことができました。


つづく

先頭 表紙

2004-08-26 ポロの日記 2004年8月18日(波曜日)流星2号 その2

流星2号 その2


「試運転は成功だ。さあポロちゃん、これで帰ろう。大尊さんお世話さまでした」
「じゃね、大尊さん。またね〜」
「はい。ミタさん、ポロさん、お気をつけて!」

 流星2号は深夜の神田鍛冶町を音もなく疾走しました。と、言いたいところだけど全然スピードが出ません。

「ミタさん、全速力だよ」
「うん、これで精いっぱいかもしれないなあ」
「え゛〜! 自転車より遅いよ」
「引力で進むなんて、こんなもんなんだよ」
「そっか。これなら安全かも」

 わんわんわんわんわん!

 そのとき、鎖からはずれたどこかの犬が、どこからか現れて流星2号を追いかけてきました。犬のほうが全然速くて、すぐに追いつきそうでした。

「わ、安全じゃないかも!」

 ポロはミタさんの背中に駆け登のぼりました。

「ははは、ポロちゃん大丈夫だよ」

 余裕たっぷりにそう言った途端、ミタさんのズボンの裾に犬が噛みつきました。

「わ、わ、わ、こら。やめろ!」

 質量があるとは言っても、流星2号は重力を受けずにふわふわと浮いているだけなので、犬に振り回されてしまいました。

「きゃあああああああ〜!」

 ポロもミタさんから振り落とされそうでした。
 仕方がないので、ポロは持っていたイモようかんを一個投げました。すると、犬は一目散にイモようかんを追いかけていき、ポロたちは難を逃れました。

「あ〜、どうなることかと思ったよ〜」
「ポロちゃん、ありがとう。あとでイモようかん買ってあげるからね」

 ミタさんは、犬が届かない高さまで流星2号を上昇させました。

「これで、大丈夫だ」
「でも、揺れが激しくなったかも」

 道路から30センチくらい浮いているときは5センチ幅で上下にふわふわしていましたが、1メートルのたかさでは30センチくらいの幅で上下しているのでした。

「ポロ、酔っちゃうかも!」

 結局、30センチの高さで行くことになりました。
 靖国通りを渡って秋葉原の電気街に入ると、ミタさんは、このあたりには詳しいんだよ、と言ってシャッターの閉まったお店を順番に説明してくれました。それから、御徒町(おかちまち)の手前で路地を左に折れて、本郷を目指すことにしました。東京大学の近くに出れば、ポロもトラックで通い慣れた道に出ます。
 本郷通りと平行して走る裏路地を進んでいくと、つきあたりに森がありました。どこかの鎮守の森に違いありません。だって、赤い鳥居があったからです。
 ミタさんは鳥居にむかう階段を流星2号でふわふわと登っていきました。

「すごいねえ、流星2号!」
「まっかせてくれよ」

 事件は、そこで待っていました。


つづく

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う〜ん、やはり下からの重力を遮るだけでは、推進力が足りなかったようですね〜。それにしても、ワンコが来るとは… / みた・そうや ( 2004-08-18 22:23 )

2004-08-25 ポロの日記 2004年8月18日(波曜日)流星2号 その3

流星2号 その3


「ミタさん、なんだかけむり臭くない?」
「そう言われれば、プリント基板がくすぶるような匂いだね」

 神社の境内、前方に何かがありました。

「ミタさん、小型UFOが不時着してる」
「ほ、本当だ。逃げよう!」
「ダイじょぶだよ。ポロ、ちょっと見てくる」

 ポロが近づくと、小さな子どもくらいの宇宙人が2人、途方に暮れていました。

「どしたの?」
「£≠∞仝!!」
「分かんないよ」

 リトルグレイ型宇宙人はヘルメットの翻訳機のスイッチを入れました。

「誰だ?」
「ポロだよ」
「この星の支配種族か?」
「違うけど、もしかして指導者に会わせろでしょ? いいよ、あの人だよ」

 ポロは、ミタさんに走り寄ってヒソヒソ話をしました。

「・・・ミタさん、あのね。ミタさんが地球連邦の総督っていうことになってるから、話を合わせてね」
「・・・え〜、そんなの困るよ」
「・・・ダイじょぶ。ポロ、宇宙人には慣れてるんだ」

 ミタさんは宇宙人と話を始めました。そのうち、UFOの故障箇所が分かったらしくポロに教えてくれました。

「ポロちゃん、発音できそうもない難しい名前の星から来た宇宙人だよ」
「なんか言ってた?」
「アダムスキー型円盤は3つの反重力球というか、エンジンを持ってるんだけど、それが全部壊れて帰れないらしい」
「もしかして、ミタさん、ケイバーリットをプレゼントしちゃおっかなって考えてるでしょ」
「分かった?」
「ミタさんがいいんなら、ポロはいいよ。ポロたち歩いてだって帰れるし」
「さすがポロちゃん」
「ちがうよ、さすがミタさんだよ」

 ミタさんが流星2号から外したケイバーリットブラインドをUFOの下面に張りつけて、機内から操作できるマニピュレータに開閉ひもを掴ませると、修理が完了しました。
 宇宙人たちは感激して、ミタさんにお礼を言うと宇宙に帰っていきました。

「なんかいいことしたね、ミタさん」
「そうだね。さ、帰ろうか」

 ポロたちは「燃えるゴミは月・木曜日」と書かれた近所のゴミ集積所に流星2号を置いて歩き始めました。

「ポロちゃん、あの宇宙人たち機械オンチだったんだ。なんにも知らない様子だったよ」
「星新一さんの書いてることはホントだったんだねえ」
「お礼にこんなものをくれたよ」

 ミタさんが見せてくれたのは1枚のカードでした。

「これってさ、ひょっとしたらクレジットカードじゃない?」
「宇宙人に借金しても嬉しくないなあ」
「じゃさ、宇宙人のプリペイドカードかも」
「それなら嬉しいけど、どこで使おうか?」
「宝物だよ」
「そうだね」

 少しずつ白んできた空を見上げながら、ポロたちは文京区の路地裏を歩き続けました。


おしまい


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あ、やっぱり〜。今後のお話の伏線だろうとは思っていたけど…ってバラしちゃっていいの〜!?(笑) / みた・そうや ( 2004-08-20 07:38 )
ミタさん。伏線って言うヤツだよ、週末の。 / ポロ ( 2004-08-19 00:29 )
スクーターは残念だったけど、また作ればいいし(^^)。星新一も、宇宙人に会っていたのかも知れませんね。それにしても、何のカードだろう?名刺だったりして…?(笑) / みた・そうや ( 2004-08-18 22:27 )

2004-08-24 ポロの日記 2004年8月15日(風曜日)ポロ7号からのメール その1

ポロ7号からのメール その1



 ポロちゃんへ

 ポロ7号だよ。いきさつは6号からの情報で知ってると思うけど、お別れしなければならなくなった。これは置きみやげだ。ポロプロジェクトの会議録から抜き出した資料の一部だよ。きっと役に立つと思う。以下が、その内容だ。

 *-*-*-*-*-*

 ポロ・プロジェクト議長殿

 指示のありました「ポロのキャラクター分析」を終えたので報告します。
 当ポロ・プロジェクトのポロを除いても、オリジナルポロに複数のキャラクターを認め、分析の結果その存在を確認いたしました。

1.初代ポロ(ひらがなポロ)
 まずは初代ポロであります。
 初代ポロは、ひらがなを多用して表記していたため、ひらがなポロと呼ばせて頂きます。ひらがなポロは、ゆっくりとした語り口で掲示板に登場し、ほんわかムードで一気に人気を獲得いたしました。音楽コラムの代理も務めていましたが、現在のポロとは文体、語り口、ともに大きな隔たりがあります。

2.2代目ポロ(おはなしポロ)
 2代目ポロは、センセーショナルに「お話の部屋」に登場します。処女作は「月夜の出来事」でした。読者は、いきなり強烈なパンチを喰らった気がしたことでしょう。「バイエル58番なら弾けます」のような、ポロの性格を決定する言葉をいくつも吐くからであります。これで、一気に2代目ポロ、ここでは「お話ポロ」のキャラクターが出来上がりました。このキャラクターの登場は実に劇的な事件でした。以後、波動エンジンやクリスマスの話が立て続けにアップされ、現在のポロのイメージが動かぬものとなりました。

3.3代目ポロ(コラムポロ)
 その頃、コラムポロも現れます。これがいつからであるかは定かではありませんが、ほんわかした「ひらがなポロ」から「利発なポロ」へと変貌を遂げていきます。このポロの特徴は、せんせいのコラムよりも理路整然とした話の流れを持つことです。それが、ほとんどすべて会話体によって表現されており、おそらく読者は、せんせいのコラムよりもこちらを期待しているのではないかと思えるほどです。不確実な情報ですが、このポロは、せんせいが過去に子どもたちのために書いた膨大な「野村家テキスト」を渡されている可能性があります。せんせいと綿密な連絡もとっていることでしょう。コラムポロの明晰さゆえ、ポロ・プロジェクトがここに割り込むことが困難な状況です。


つづく

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2004-08-23 ポロの日記 2004年8月15日(風曜日)ポロ7号からのメール その2

ポロ7号からのメール その2


4.4代目ポロ(SFポロ)
 さらに、技術文書養成キットのあたりで、もう一人の「SFポロ」が現れます。ひょっとするとSFポロの処女作は「ロケット号の日記」あるいは「スリッパを買いに」あたりかも知れません。「ロケット号の日記」にはSF小道具と言われるようなものは一切出てきませんが、この翻訳様式は、まさにSFそのものです。お話ポロもSF小道具こそ使いますがファンタジー路線を崩しません。それに対してSFポロは、あくまでもセンス・オブ・ワンダーによってストーリーを進めます。またSFポロはアイザック・アシモフが記述しているチオチモリンなども知っていて、おまけに神田の街をあーっはははははなどとポロらしからぬ描写をしているところなどで区別がつきます。SFポロは、極めて頭脳明晰ですが、お話ポロの持っている情緒的な雰囲気には欠けるきらいがあります。「ロケット号の日記」という非常に優れた話が書けるのに、お話ポロの描く「サンタクロースの手伝いをして光の粉をまくポロ」や「ボンビーにとまどうポロ」などを描くことができません。しかし、これはどちらが優れているという問題ではなく、非常に優れたライターが2人もいるということであります。残念ながら、現在ポロ・プロジェクトはこの2人に対抗する力を持ちあわせておりません。発想力について、メンバーにせんせいのレッスンを受けさせる必要があります。

5.まとめ
 ここまで初代ひらがなポロ、利発なコラムポロ、情緒的なお話ポロ、頭脳明晰なSFポロの特徴について述べてきました。この4キャラクターが存在することは確かであります。そのうち、ひらがなポロは、現在は引退しております。また、現役ポロについても、このようなすぐれた書き手が3人も集まることは考えにくく、お話ポロのうち一人はせんせい自身であるという推測も成り立ちます。というようなわけで2人、もしくは3人のポロが現役ライターとして活躍していることは間違いありません。そのことは、一人では到底あり得ないような怒濤の更新や、ポロの正体が全く明かされないところからも伺えます。それについては、複数のポロがいるからこそ一人一人は正体を明かすことができないと考えるのが妥当であり、時折、更新順序や時刻などに連携ミスが生じていることも証左のひとつとなっています。そのことによって生じるフラストレーションを「ポロの求人広告」などの話に見てとることができます。
 以上、分析結果をご報告いたします。

E次郎

 *-*-*-*-*

 どうだい、君のことはここまで分析されてしまっているよ。気をつけた方がいい。
 でも、このE次郎はオリジナルポロたちの圧倒的な発想力に気づいているので、せんせい側に寝返る可能性もあると踏んでいるんだ。
 じゃ、ホントにお別れだ。サヨナラ。

 ポロ7号


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2004-08-22 ポロの日記 2004年8月13日(電曜日)蝋管蓄音機製作記 その1

蝋管蓄音機製作記 その1


海「ポロ、ちょっと手伝え!」
ポ「なあに、お兄ちゃん?」

 野村家でただ一人体育会系のバスケットマン、海のお兄ちゃん(高1)は、せんせいの子どもたちの中で、ただ一人“シュデンガンガー系”でもあります。

海「蝋管蓄音機を作ってるんだ」
ポ「ポロが手伝えることあるの?」
海「部品を固定しておくためのクランプが足りないから、ポロ、言われたとおりに持ってろ」
ポ「はーい!」
海「もう基本的なところは組み立て終わっているから、後は、この針がアルミテープに溝を刻むためのアームの微妙な調整が・・・、えっと、ほら、これをこの角度で」
ポ「こう?」
海「そうだ。いや、そうじゃない」
ポ「こうかな?」
海「そ、そうだ。よし、固定するぞ・・・」
ポ「わ、手がすべった!」
海「なんだ、しっかり持ってろよ。やり直すぞ・・・」
ポ「ハ、ハ、ハックション!」
海「こいつ、わざとやってるんだろう!」
ポ「ち、ちあうよちあうよ、緊張するとクシャミが出ちゃうんだよ」
海「今度こそちゃんと持ってるんだぞ」
ポ「まっかせてよ!」
海「・・・・、よし、できた!」
ポ「わ〜い! よかったよかった。ところでこれなあに?」
海「これは蝋管蓄音機といって、エジソンが発明したオーディオの元祖だ」
ポ「へえ、エジソンて蒸気機関車作った人でしょ?」
海「それはスティーブンソンだよ」
ポ「スティーブンソンは“宝島”も書いてるね」
海「それは別人だよ」
ポ「そっか。どれが蝋管なの?」
海「これだよ」
ポ「え〜! 金属にしか見えないよ」
海「エジソンは蝋を使ったんだけど、これはシュレーディンガー商会のキットだから紙筒に厚手のアルミテープを密着させて代用してるんだ。こっちのほうが耐久性があるんだ」
ポ「わあ、海のお兄ちゃんもシュデンガンガー商会を知ってるの?」
海「知ってるよ。野村家は代々、あの店のお得意だ」
ポ「へえ。ポロも行くんだよ、ときどき」
海「うちじゃ、残りの兄妹2人は全然興味ないからなあ」
ポ「でさ、どういう仕組みなの?」
海「このスピーカ兼用マイクに向かって、しゃべったり歌ったりする」
ポ「わあ、糸電話みたいなマイクだなあ」
海「似たようなもんだよ。そうすると、この底の紙が震えて、その振動がこの針に伝わる」
ポ「わ、ただの縫い針だ」
海「そうだよ。この蝋管はねじ切りをしてある長いシャフトが通してあって、このハンドルを回すと回転しながら奥へ移動する。すると、針は長い軌跡を描いて溝を刻んでいくんだ」
ポ「その逆をやると音が聞えるんだね」
海「さっそく何か録音しよう。ポロ、何か歌え」
ポ「お兄ちゃんが歌ってよ」
海「よし」


つづく

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ポロは耳そうじ! / ポロ ( 2004-08-15 08:37 )
私は太陽を見るとくしゃみが出ます… / みた・そうや ( 2004-08-13 12:38 )

2004-08-21 ポロの日記 2004年8月13日(電曜日)蝋管蓄音機製作記 その2

蝋管蓄音機製作記 その2


 お兄ちゃんは、ハンドルを回して歌い始めました。

“デイジ〜デイジ〜♪”

 ぱちぱちぱちぱち!

ポ「わあ、なんの歌なの?」
海「2001年宇宙の旅でHAL9000が歌ったんだ」

 お兄ちゃんはハンドルを逆回転させて蝋管を最初の場所まで戻すと、もう一度針を置いてハンドルを回しました。

“でいじーでいじー”

 糸電話スピーカーからは、蚊の羽音のようなかすかな歌声だったけど、ちゃんとお兄ちゃんの声が聞えてきました。

ポ「聞えるよ、成功だ。エジソンてすごいねえ」
海「発想っていうヤツだよ」
ポ「パズルを解いたり作曲したりするのと同じだね」
海「バスケだって発想がなければ、いい練習はできないし、いい試合もできないよ」
ポ「やっぱりそうなのか〜」
海「分かっちゃいるけど、どうすりゃいいかは分からない」
ポ「ポロもだよ〜!」

 それから、ポロたちは氷でいっぱいのグレープフルーツジュースの入ったコップを持って暑い暑いバルコニーに出ました。

海「冷たいものは暑いところで飲むに限るよ」
ポ「そだね、すっぱにがいけど、おいしい!」
海「今度はワイヤー録音機に挑戦だな」
ポ「それって未来の機械?」
海「違うよ」
ポ「え゛〜! だって、SF小説読んでると未来の世界で使われてるよ」
海「レトロフューチャーっていうんだ。ワイヤーレコーダはテープレコーダが実用化される前の録音機でさ、昔のSF作家が勝手に未来に持ち込んだだけだよ。現実があっという間にSFを追い越しちゃったんだ」
ポ「そーだったのか〜! じゃさ、テープレコーダも作れる?」
海「作れるよ。紙テープにさ、ホカホカカイロの中身の鉄粉を塗り付けてさ、磁気ヘッドの上を滑らせるだけ」
ポ「ホカホカカイロで出来ちゃうのか〜!」
海「いろんなものが本当はローテクなんだ」
ポ「そういうことを知ってるのと知らないのとじゃ大違いだね」
海「星新一の小説にあるだろ」
ポ「どんなの?」
海「UFOがやってきて中から宇宙人が降りてくる」
ポ「あ、分かった。その宇宙人から進んだ科学技術を教えてもらおうと思ったら何も知らなかったっていう話」
海「それだよ。だからさ、原理くらいは知ってたいだろ?」
ポ「うん、知りたい知りたい! なんかさ、海のお兄ちゃんてせんせいみたいだね」
海「とむりんなんかと比べないでくれよ。こっちはスポーツまでカバーしてるんだぞ」
ポ「そっか。せんせいスポーツ音痴だもんね」

 ポロたちは、それからもしばらくの間、暑い暑いバルコニーで、コップに残った氷をカリカリとかじっていたのでした。


おしまい


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ミタさん。ポロは、いまのところ分からないことだらけだけど、数年後には何でも分かっている予定で〜す! / ポロ ( 2004-08-15 08:39 )
私も身の回りの物は大体原理位は知ってるけど、作れるかと言われたらムリですね−。でも海ちゃん、星新一氏の小説とか、HAL9000の歌とかよく知ってますね〜。(^^) / みた・そうや ( 2004-08-13 12:44 )

2004-08-20 ポロの日記 2004年8月12日(草曜日)さよならポロ6号

さよならポロ6号


 きのう、ポロ6号からメールが届きました。


 拝啓 元祖ポロさま

 一緒にタコ焼きを食べたポロです。ポロ会議のときはクジで6号になったポロです。元祖ポロちゃんと知りあって、ポロという生き方を知りました。せんせいや松戸博士をはじめとするポロちゃんのまわりの人たち、あ、それから女神さままで、地球で一番に違いない人間模様の中で過ごすこと。世界が思ったよりも遥かに広いこと。ポロちゃんの行動力。どれも知らなかったことばかりで毎日が興奮の連続でした。だからずっとこういう日々が続けばいいなあと思っていました。でも、楽しいことは長くは続かないものです。ポロプロジェクトの女議長にポロちゃんとの関係が知れてしまったからです。ポロは、ポロをクビになってしまいました。7号もポロ会議に出ていたので一緒にクビです。
 ポロプロジェクトについては、詳しいことは何も分かりません。とくに議長の素性はプロジェクトの誰も知らないみたいです。
 今度は、ほかのホームページでサイトマスターの助手として、にせものじゃなくてポロちゃんみたいに元祖になって活躍しようと思います。では、お元気で。

 敬具 ポロ6号


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えぇ〜!?せっかくポロちゃんとたこ焼き作ったり、仲良くなった6号ちゃんが…寂しくなるなぁ…また遊びに来てね〜! / みた・そうや ( 2004-08-12 12:57 )

2004-08-19 ポロの日記 2004年8月10日(熱曜日)タコ焼き大作戦 その1

タコ焼き大作戦 その1


 ポロは、どうしてもタコ焼きが食べたくなったのに、たよりの、たろちゃん(中2)がさいたま市のおばあちゃんのお家に泊まりに行っていて今日はいません。

「ねえ、せんせい」
「なんだい?」
「おいしいタコ焼き食べたくない?」
「お、いいねえ」
「せんせいタコ焼き作れる?」
「作れるけど、今日の夜までに今日中にどうしても書き上げたい曲があるんだ」
「ポロ、タコ焼きが食べたいよ〜!」
「買ってくればいいじゃないか」
「そ、それはポロの主義が許さないよ」
「じゃあ、作ればいいじゃないか。ポロにもできるよ」
「・・・・・。じゃ、やってみる」

 ポロは、今日が非番のポロプロジェクトのポロ6号にタコ焼き作りを持ちかけました。

ポロ6「よし、やろう!」

 ポロたちは世界一おいしいタコ焼き作りを誓って「タコ焼き大作戦」と名づけて意気軒高でした。

ポロ「まずはレシピを探すんだ」
ポロ6「タコ焼き屋さんの屋根裏に隠れて、作るところを見学するっていうのはどうだい?」
ポロ「すごい、そうしよう!」

 ポロたちは、さっそく近くの国道で信号待ちをしていたホロ付きトラックに飛び乗ると、となり町の繁華街に出かけました。

ポロ「わ、タコ焼き屋さんがあったよ」

 ポロたちは店の裏口から忍び込んで、物置にあった点検口から天井裏にのぼりました。こういうとき猫は便利です。人間だったら犯罪だけど、猫ならダイじょぶ。
 お兄さんが調合済みのタコ焼き粉を大きなゴミバケツのようなところに入れると、刻みネギや刻みショウガ、水を入れて電気ドリルみたいなミキサーでぐわんぐわんとかき混ぜました。それをタコ焼き実演をしている店頭に運んで別のお兄さんがタコを入れて焼き始めました。

ポロ「こういうフランチャイズなお店は、タコ焼き作りがシステム化されていて参考にならないかも」
ポロ6「ポロもそう思うな」

 次は個人で営業している小さなタコ焼き屋さんにしました。
 ねじり鉢巻きの、タコみたいなおじさんが営む評判の店です。
 おじさんは、タコ焼き鉄板のくぼみに、搾り出し袋からトロトロのタコ焼きの生地を目にもとまらぬ早さで注いで行きます。それがおわると機関銃のような速さでタコの切り身をババババババと乗せていきます。頃あいを見計らって、またまた目にも止まらぬ早さでクルクルとタコ焼きを回転させていきます。あ〜ら不思議。タコ焼きは真ん丸になって、あとは焼け色がつくのを待つばかり。

ポロ6「超名人だね。ポロたちも10年くらい修業すればできるかも」
ポロ「でもさ、今日食べたいよね」

 ポロたちは、とにかくタコ焼きを作ってみることにしました。また信号待ちのトラックに乗って国道を逆戻りして工房に戻ると、キッチンのパントリーや冷蔵庫で材料の確認をしました。

ポロ「あ゛〜! 小麦粉じゃなくてタコ焼き粉っていうのがある」
ポロ6「ポロたちの美学に反するけど、この際使おう」
ポロ「ネギはOK」
ポロ6「でもタコがないよ」
ポロ「冷凍庫に紋甲イカがあったよね。タコもイカも似てるからさ、それでいいよ」
ポロ6「ポロたちの美学には反するけど、ま、この際ガマンしよう」
ポロ「えっと、タマゴもカツオ粉もあるよ。揚げ玉がないかも」
ポロ6「スープ用のクルトンがあるぞ。ポロたちの美学には反するけど、ま、この際仕方がない」

 ポロたちはステンレスボウルに粉を入れて、レシピどおりに混ぜていきました。

ポロ6「わ、ダマだらけになっちゃったよ」
ポロ「ハンドミキサーでかき混ぜてみよう」


つづく

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2004-08-18 ポロの日記 2004年8月10日(熱曜日)タコ焼き大作戦 その2

タコ焼き大作戦 その2


 ポロは電動のハンドミキサーを用意して、見よう見まねでボウルに2つの反転する攪拌羽を生地に突っ込みました。

 ぶあうぶあうべちゃべちゃべちゃべちゃ!

ポロ「うわ! 生地が周りじゅうに飛び散っちゃったよ」
ポロ6「キッチンがドロドロだ」

ポロたちは、ぞうきんを持ってきて小一時間かけてキッチンをきれいにしました。

ポロ「このくらいのことじゃメゲないのがポロだ」
ポロ6「そだ!」

 窓の外は夏の日が傾いて、タコ焼き作りを決心してから7時間がたとうとしていました。
 いよいよタコ焼き鉄板をガスレンジに乗せました。作曲工房のガスレンジは業務用の1万何千キロカロリーもあるバーナーです。

ポロ「ねえ、火をつけてよ」
ポロ6「ポロは、こんなのコワいからやだよ」
ポロ「だいたい、猫は火に弱いんだ」
ポロ6「じゃ、オーブンならどうだろう」
ポロ「この業務用のオーブンは、もっとコワいかも」
ポロ6「じゃ、電子レンジでチンしよう」
ポロ「なんだか、どんどんポロたちの美学から離れていくような気がするな」
ポロ6「電子レンジだと丸く作れないかも」
ポロ「この際、形にはこだわらないというはどうだろう?」
ポロ6「それは、決定的にタコ焼きの美学から離れるな。でも・・・」
2匹「この際ガマンしよう!」

 ポロたちは、グラタン皿に少なくなってしまったタコ焼きの生地を入れて、電子レンジに入れようとしました。ところが、あと少しのところで手が届きませんでした。

ポロ6「ポロが肩車するから、なんとか入れるんだ」
ポロ「よし!」
ポロ6「いいかい、立ち上がるよ」
ポロ「うわ、グラグラさせないで!」

 ガラガラべっちゃ〜ん!

2匹「うわ〜〜!」

 ポロたちは2匹とも頭から生地をかぶって、ドロドロのべちょべちょになってしまいました。

ポロ6「この生地が乾いたら、毛皮がガビガビになって手に負えないぞ」
ポロ「お風呂に入ろう。1階のお風呂はいつでも入れるんだ」

 バスルームに行くと、ヨシコおばあちゃんがポロたちに気がついてやってきました。

おば「あらまあ! ドロドロのポロちゃんが二人も!」
ポロ「かくかくしかじか」
おば「それは大変だったわねえ」

 ポロたちがお風呂から出ると、おばあちゃんが1階のダイニングに呼んでくれました。

おば「急だからこんなのしかないけど、食べる?」

 電子レンジから、おばあちゃんが取りだしたのは「冷凍タコ焼き」でした。ポロたちは、タコ焼きソースとマヨネーズをかけて熱々のタコ焼きをハフハフとほお張りました。

ポロ「んまい!!」
ポロ6「んまい! 世界一だね」
おば「それはよかったわ。おかわりあるわよ」
ポロ「いただきます!」
ポロ6「ポロも!」

 結局、ポロたちは冷凍タコ焼きを全部食べちゃってから気がつきました。

ポロ6「あ゛〜、せんせいの分も食べちゃった!」
ポロ「せんせいにはナイショだよ」
ポロ6「うちの議長にもナイショにしてね」
ポロ「もちろん黙ってるよ」

 夜になってポロは日記に書きました。

-- 今日、ポロはポロ6号と一緒に世界一のタコ焼きを目指す「タコ焼き大作戦」を実行しました。そして、本当に世界一おいしいタコ焼きを食べました。


おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

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