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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-08-22 ポロの日記 2004年8月13日(電曜日)蝋管蓄音機製作記 その1
2004-08-21 ポロの日記 2004年8月13日(電曜日)蝋管蓄音機製作記 その2
2004-08-20 ポロの日記 2004年8月12日(草曜日)さよならポロ6号
2004-08-19 ポロの日記 2004年8月10日(熱曜日)タコ焼き大作戦 その1
2004-08-18 ポロの日記 2004年8月10日(熱曜日)タコ焼き大作戦 その2
2004-08-17 ポロの日記 2004年8月9日(光曜日)新たな陰謀 その1
2004-08-16 ポロの日記 2004年8月9日(光曜日)新たな陰謀 その2
2004-08-15 ポロの日記 2004年8月9日(光曜日)新たな陰謀 その3
2004-08-14 ポロの日記 2004年8月7日(岩曜日)決戦!ポロ会議 その1
2004-08-13 ポロの日記 2004年8月7日(岩曜日)決戦!ポロ会議 その2


2004-08-22 ポロの日記 2004年8月13日(電曜日)蝋管蓄音機製作記 その1

蝋管蓄音機製作記 その1


海「ポロ、ちょっと手伝え!」
ポ「なあに、お兄ちゃん?」

 野村家でただ一人体育会系のバスケットマン、海のお兄ちゃん(高1)は、せんせいの子どもたちの中で、ただ一人“シュデンガンガー系”でもあります。

海「蝋管蓄音機を作ってるんだ」
ポ「ポロが手伝えることあるの?」
海「部品を固定しておくためのクランプが足りないから、ポロ、言われたとおりに持ってろ」
ポ「はーい!」
海「もう基本的なところは組み立て終わっているから、後は、この針がアルミテープに溝を刻むためのアームの微妙な調整が・・・、えっと、ほら、これをこの角度で」
ポ「こう?」
海「そうだ。いや、そうじゃない」
ポ「こうかな?」
海「そ、そうだ。よし、固定するぞ・・・」
ポ「わ、手がすべった!」
海「なんだ、しっかり持ってろよ。やり直すぞ・・・」
ポ「ハ、ハ、ハックション!」
海「こいつ、わざとやってるんだろう!」
ポ「ち、ちあうよちあうよ、緊張するとクシャミが出ちゃうんだよ」
海「今度こそちゃんと持ってるんだぞ」
ポ「まっかせてよ!」
海「・・・・、よし、できた!」
ポ「わ〜い! よかったよかった。ところでこれなあに?」
海「これは蝋管蓄音機といって、エジソンが発明したオーディオの元祖だ」
ポ「へえ、エジソンて蒸気機関車作った人でしょ?」
海「それはスティーブンソンだよ」
ポ「スティーブンソンは“宝島”も書いてるね」
海「それは別人だよ」
ポ「そっか。どれが蝋管なの?」
海「これだよ」
ポ「え〜! 金属にしか見えないよ」
海「エジソンは蝋を使ったんだけど、これはシュレーディンガー商会のキットだから紙筒に厚手のアルミテープを密着させて代用してるんだ。こっちのほうが耐久性があるんだ」
ポ「わあ、海のお兄ちゃんもシュデンガンガー商会を知ってるの?」
海「知ってるよ。野村家は代々、あの店のお得意だ」
ポ「へえ。ポロも行くんだよ、ときどき」
海「うちじゃ、残りの兄妹2人は全然興味ないからなあ」
ポ「でさ、どういう仕組みなの?」
海「このスピーカ兼用マイクに向かって、しゃべったり歌ったりする」
ポ「わあ、糸電話みたいなマイクだなあ」
海「似たようなもんだよ。そうすると、この底の紙が震えて、その振動がこの針に伝わる」
ポ「わ、ただの縫い針だ」
海「そうだよ。この蝋管はねじ切りをしてある長いシャフトが通してあって、このハンドルを回すと回転しながら奥へ移動する。すると、針は長い軌跡を描いて溝を刻んでいくんだ」
ポ「その逆をやると音が聞えるんだね」
海「さっそく何か録音しよう。ポロ、何か歌え」
ポ「お兄ちゃんが歌ってよ」
海「よし」


つづく

先頭 表紙

ポロは耳そうじ! / ポロ ( 2004-08-15 08:37 )
私は太陽を見るとくしゃみが出ます… / みた・そうや ( 2004-08-13 12:38 )

2004-08-21 ポロの日記 2004年8月13日(電曜日)蝋管蓄音機製作記 その2

蝋管蓄音機製作記 その2


 お兄ちゃんは、ハンドルを回して歌い始めました。

“デイジ〜デイジ〜♪”

 ぱちぱちぱちぱち!

ポ「わあ、なんの歌なの?」
海「2001年宇宙の旅でHAL9000が歌ったんだ」

 お兄ちゃんはハンドルを逆回転させて蝋管を最初の場所まで戻すと、もう一度針を置いてハンドルを回しました。

“でいじーでいじー”

 糸電話スピーカーからは、蚊の羽音のようなかすかな歌声だったけど、ちゃんとお兄ちゃんの声が聞えてきました。

ポ「聞えるよ、成功だ。エジソンてすごいねえ」
海「発想っていうヤツだよ」
ポ「パズルを解いたり作曲したりするのと同じだね」
海「バスケだって発想がなければ、いい練習はできないし、いい試合もできないよ」
ポ「やっぱりそうなのか〜」
海「分かっちゃいるけど、どうすりゃいいかは分からない」
ポ「ポロもだよ〜!」

 それから、ポロたちは氷でいっぱいのグレープフルーツジュースの入ったコップを持って暑い暑いバルコニーに出ました。

海「冷たいものは暑いところで飲むに限るよ」
ポ「そだね、すっぱにがいけど、おいしい!」
海「今度はワイヤー録音機に挑戦だな」
ポ「それって未来の機械?」
海「違うよ」
ポ「え゛〜! だって、SF小説読んでると未来の世界で使われてるよ」
海「レトロフューチャーっていうんだ。ワイヤーレコーダはテープレコーダが実用化される前の録音機でさ、昔のSF作家が勝手に未来に持ち込んだだけだよ。現実があっという間にSFを追い越しちゃったんだ」
ポ「そーだったのか〜! じゃさ、テープレコーダも作れる?」
海「作れるよ。紙テープにさ、ホカホカカイロの中身の鉄粉を塗り付けてさ、磁気ヘッドの上を滑らせるだけ」
ポ「ホカホカカイロで出来ちゃうのか〜!」
海「いろんなものが本当はローテクなんだ」
ポ「そういうことを知ってるのと知らないのとじゃ大違いだね」
海「星新一の小説にあるだろ」
ポ「どんなの?」
海「UFOがやってきて中から宇宙人が降りてくる」
ポ「あ、分かった。その宇宙人から進んだ科学技術を教えてもらおうと思ったら何も知らなかったっていう話」
海「それだよ。だからさ、原理くらいは知ってたいだろ?」
ポ「うん、知りたい知りたい! なんかさ、海のお兄ちゃんてせんせいみたいだね」
海「とむりんなんかと比べないでくれよ。こっちはスポーツまでカバーしてるんだぞ」
ポ「そっか。せんせいスポーツ音痴だもんね」

 ポロたちは、それからもしばらくの間、暑い暑いバルコニーで、コップに残った氷をカリカリとかじっていたのでした。


おしまい


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先頭 表紙

ミタさん。ポロは、いまのところ分からないことだらけだけど、数年後には何でも分かっている予定で〜す! / ポロ ( 2004-08-15 08:39 )
私も身の回りの物は大体原理位は知ってるけど、作れるかと言われたらムリですね−。でも海ちゃん、星新一氏の小説とか、HAL9000の歌とかよく知ってますね〜。(^^) / みた・そうや ( 2004-08-13 12:44 )

2004-08-20 ポロの日記 2004年8月12日(草曜日)さよならポロ6号

さよならポロ6号


 きのう、ポロ6号からメールが届きました。


 拝啓 元祖ポロさま

 一緒にタコ焼きを食べたポロです。ポロ会議のときはクジで6号になったポロです。元祖ポロちゃんと知りあって、ポロという生き方を知りました。せんせいや松戸博士をはじめとするポロちゃんのまわりの人たち、あ、それから女神さままで、地球で一番に違いない人間模様の中で過ごすこと。世界が思ったよりも遥かに広いこと。ポロちゃんの行動力。どれも知らなかったことばかりで毎日が興奮の連続でした。だからずっとこういう日々が続けばいいなあと思っていました。でも、楽しいことは長くは続かないものです。ポロプロジェクトの女議長にポロちゃんとの関係が知れてしまったからです。ポロは、ポロをクビになってしまいました。7号もポロ会議に出ていたので一緒にクビです。
 ポロプロジェクトについては、詳しいことは何も分かりません。とくに議長の素性はプロジェクトの誰も知らないみたいです。
 今度は、ほかのホームページでサイトマスターの助手として、にせものじゃなくてポロちゃんみたいに元祖になって活躍しようと思います。では、お元気で。

 敬具 ポロ6号


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えぇ〜!?せっかくポロちゃんとたこ焼き作ったり、仲良くなった6号ちゃんが…寂しくなるなぁ…また遊びに来てね〜! / みた・そうや ( 2004-08-12 12:57 )

2004-08-19 ポロの日記 2004年8月10日(熱曜日)タコ焼き大作戦 その1

タコ焼き大作戦 その1


 ポロは、どうしてもタコ焼きが食べたくなったのに、たよりの、たろちゃん(中2)がさいたま市のおばあちゃんのお家に泊まりに行っていて今日はいません。

「ねえ、せんせい」
「なんだい?」
「おいしいタコ焼き食べたくない?」
「お、いいねえ」
「せんせいタコ焼き作れる?」
「作れるけど、今日の夜までに今日中にどうしても書き上げたい曲があるんだ」
「ポロ、タコ焼きが食べたいよ〜!」
「買ってくればいいじゃないか」
「そ、それはポロの主義が許さないよ」
「じゃあ、作ればいいじゃないか。ポロにもできるよ」
「・・・・・。じゃ、やってみる」

 ポロは、今日が非番のポロプロジェクトのポロ6号にタコ焼き作りを持ちかけました。

ポロ6「よし、やろう!」

 ポロたちは世界一おいしいタコ焼き作りを誓って「タコ焼き大作戦」と名づけて意気軒高でした。

ポロ「まずはレシピを探すんだ」
ポロ6「タコ焼き屋さんの屋根裏に隠れて、作るところを見学するっていうのはどうだい?」
ポロ「すごい、そうしよう!」

 ポロたちは、さっそく近くの国道で信号待ちをしていたホロ付きトラックに飛び乗ると、となり町の繁華街に出かけました。

ポロ「わ、タコ焼き屋さんがあったよ」

 ポロたちは店の裏口から忍び込んで、物置にあった点検口から天井裏にのぼりました。こういうとき猫は便利です。人間だったら犯罪だけど、猫ならダイじょぶ。
 お兄さんが調合済みのタコ焼き粉を大きなゴミバケツのようなところに入れると、刻みネギや刻みショウガ、水を入れて電気ドリルみたいなミキサーでぐわんぐわんとかき混ぜました。それをタコ焼き実演をしている店頭に運んで別のお兄さんがタコを入れて焼き始めました。

ポロ「こういうフランチャイズなお店は、タコ焼き作りがシステム化されていて参考にならないかも」
ポロ6「ポロもそう思うな」

 次は個人で営業している小さなタコ焼き屋さんにしました。
 ねじり鉢巻きの、タコみたいなおじさんが営む評判の店です。
 おじさんは、タコ焼き鉄板のくぼみに、搾り出し袋からトロトロのタコ焼きの生地を目にもとまらぬ早さで注いで行きます。それがおわると機関銃のような速さでタコの切り身をババババババと乗せていきます。頃あいを見計らって、またまた目にも止まらぬ早さでクルクルとタコ焼きを回転させていきます。あ〜ら不思議。タコ焼きは真ん丸になって、あとは焼け色がつくのを待つばかり。

ポロ6「超名人だね。ポロたちも10年くらい修業すればできるかも」
ポロ「でもさ、今日食べたいよね」

 ポロたちは、とにかくタコ焼きを作ってみることにしました。また信号待ちのトラックに乗って国道を逆戻りして工房に戻ると、キッチンのパントリーや冷蔵庫で材料の確認をしました。

ポロ「あ゛〜! 小麦粉じゃなくてタコ焼き粉っていうのがある」
ポロ6「ポロたちの美学に反するけど、この際使おう」
ポロ「ネギはOK」
ポロ6「でもタコがないよ」
ポロ「冷凍庫に紋甲イカがあったよね。タコもイカも似てるからさ、それでいいよ」
ポロ6「ポロたちの美学には反するけど、ま、この際ガマンしよう」
ポロ「えっと、タマゴもカツオ粉もあるよ。揚げ玉がないかも」
ポロ6「スープ用のクルトンがあるぞ。ポロたちの美学には反するけど、ま、この際仕方がない」

 ポロたちはステンレスボウルに粉を入れて、レシピどおりに混ぜていきました。

ポロ6「わ、ダマだらけになっちゃったよ」
ポロ「ハンドミキサーでかき混ぜてみよう」


つづく

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2004-08-18 ポロの日記 2004年8月10日(熱曜日)タコ焼き大作戦 その2

タコ焼き大作戦 その2


 ポロは電動のハンドミキサーを用意して、見よう見まねでボウルに2つの反転する攪拌羽を生地に突っ込みました。

 ぶあうぶあうべちゃべちゃべちゃべちゃ!

ポロ「うわ! 生地が周りじゅうに飛び散っちゃったよ」
ポロ6「キッチンがドロドロだ」

ポロたちは、ぞうきんを持ってきて小一時間かけてキッチンをきれいにしました。

ポロ「このくらいのことじゃメゲないのがポロだ」
ポロ6「そだ!」

 窓の外は夏の日が傾いて、タコ焼き作りを決心してから7時間がたとうとしていました。
 いよいよタコ焼き鉄板をガスレンジに乗せました。作曲工房のガスレンジは業務用の1万何千キロカロリーもあるバーナーです。

ポロ「ねえ、火をつけてよ」
ポロ6「ポロは、こんなのコワいからやだよ」
ポロ「だいたい、猫は火に弱いんだ」
ポロ6「じゃ、オーブンならどうだろう」
ポロ「この業務用のオーブンは、もっとコワいかも」
ポロ6「じゃ、電子レンジでチンしよう」
ポロ「なんだか、どんどんポロたちの美学から離れていくような気がするな」
ポロ6「電子レンジだと丸く作れないかも」
ポロ「この際、形にはこだわらないというはどうだろう?」
ポロ6「それは、決定的にタコ焼きの美学から離れるな。でも・・・」
2匹「この際ガマンしよう!」

 ポロたちは、グラタン皿に少なくなってしまったタコ焼きの生地を入れて、電子レンジに入れようとしました。ところが、あと少しのところで手が届きませんでした。

ポロ6「ポロが肩車するから、なんとか入れるんだ」
ポロ「よし!」
ポロ6「いいかい、立ち上がるよ」
ポロ「うわ、グラグラさせないで!」

 ガラガラべっちゃ〜ん!

2匹「うわ〜〜!」

 ポロたちは2匹とも頭から生地をかぶって、ドロドロのべちょべちょになってしまいました。

ポロ6「この生地が乾いたら、毛皮がガビガビになって手に負えないぞ」
ポロ「お風呂に入ろう。1階のお風呂はいつでも入れるんだ」

 バスルームに行くと、ヨシコおばあちゃんがポロたちに気がついてやってきました。

おば「あらまあ! ドロドロのポロちゃんが二人も!」
ポロ「かくかくしかじか」
おば「それは大変だったわねえ」

 ポロたちがお風呂から出ると、おばあちゃんが1階のダイニングに呼んでくれました。

おば「急だからこんなのしかないけど、食べる?」

 電子レンジから、おばあちゃんが取りだしたのは「冷凍タコ焼き」でした。ポロたちは、タコ焼きソースとマヨネーズをかけて熱々のタコ焼きをハフハフとほお張りました。

ポロ「んまい!!」
ポロ6「んまい! 世界一だね」
おば「それはよかったわ。おかわりあるわよ」
ポロ「いただきます!」
ポロ6「ポロも!」

 結局、ポロたちは冷凍タコ焼きを全部食べちゃってから気がつきました。

ポロ6「あ゛〜、せんせいの分も食べちゃった!」
ポロ「せんせいにはナイショだよ」
ポロ6「うちの議長にもナイショにしてね」
ポロ「もちろん黙ってるよ」

 夜になってポロは日記に書きました。

-- 今日、ポロはポロ6号と一緒に世界一のタコ焼きを目指す「タコ焼き大作戦」を実行しました。そして、本当に世界一おいしいタコ焼きを食べました。


おしまい


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先頭 表紙

2004-08-17 ポロの日記 2004年8月9日(光曜日)新たな陰謀 その1

新たな陰謀 その1


「ねえ、せんせい」
「なんだい?」
「北大路魯山人は、納豆を448回もかき混ぜたんだって」
「きたおうじなんちゃらって誰だ?」
「わ、せんせいじゃないな! にせもの覚悟しろ」

 ポロは用意してあった水鉄砲でせんせいを狙い撃ちしました。

ピュー!

「わ、やめろ! バチバチバチバチバチバチ!」

 せんせいは、あちこちから火花を散らしてショートして動かなくなってしまいました。

「わ〜。大変だ〜、せんせいがロボットにすり替えられてる!」

 すぐに、どこからかポロ7号がやってきました。ポロ7号は、せんせいロボットの首のところのネジを外して中のチップを調べ始めました。それはカルタゴ電子製の高密度集積型のチップでした。

7号「これは10億光年も離れたところにある一角獣座銀河団のはずれの銀河にあるフェニキア星のハイテクメーカーのものだよ」
ポロ「そんなに遠くの星がせんせいを狙ってるの?」
7号「間違いないよ。本物のせんせいは、きっと今ごろフェニキア星に向かう宇宙船の中だ」
ポロ「じゃ、是輔さんに頼んでノストロモ号で追跡だ〜」
7号「ノストロモ号は銀河系から出る能力はないよ」
ポロ「じゃ、どうすればいいんだ〜」
7号「君の星にならあるだろ?」
ポロ「え?」
7号「君なら巡洋艦に追跡命令を下せるはずだ、アメン王子」

 そういうと、ポロ7号はアンシブル通信端末をポロに差し出しました。しばらく迷ったものの、ポロは決心してアンシブル端末に向かっていいました。

ポロ「オープンチャンネル・ドーラ、D49225なんちゃらかんちゃら・・・」

 すぐに応答がありました。

声 「こちらドーラ航空宇宙軍スターフリート所属巡洋艦<プレイオガ>。現在、地球軌道近傍を航行中」
ポロ「こちらアメン王子。スキピオ中佐の乗艦か?」
通信士「アメン王子であられますか? プレイオガ通信士官のブルーンスであります。スキピオ艦長に代わります」
スキピオ「アメン王子。艦長のスキピオであります。命令をどうぞ」
ポロ「重要人物がフェニキア星の陰謀に巻き込まれた。至急救出しなければならない」
スキピオ「了解。アメン王子の位置を特定しました。そのまま動かないでください。転送します」
ポロ「よし、たのむ」

7号「王子、カッコいいよ。サイトの更新とかは任せて。じゃあ、せんせいを頼んだよ」
ポロ「うん、ちょっと行ってくるね」

 作曲工房のリビングに転送の光シャフトが現れて、ポロとせんせいのロボットを連れ去りました。

 ポロが実体化したのは、巡洋艦プレイオガの転送室でした。

転送士官「アメン王子実体化!」
ポロ「ごくろう」
転送士官「ブリッジで艦長がお待ちです」
ポロ「ありがとう」

--ピーポー!
--アメン王子、ブリッジへ入室!

 当直士官が笛を吹いて、規定どおりの言葉を大声でいいました。

艦長「アメン王子、お久しぶりです」
ポロ「迷惑をかけるがよろしく頼む」
艦長「は、現在、ロボットのチップの解析を急いでおります。本艦は、ただちにフェニキア星に向かいます。途中でフェニキア艦に追いつけるはずです」
ポロ「どうしても、とむりんせんせいを奪い返すんだ」
艦長「英雄ジョーンズゆかりのとむりんせんせいを救出に迎えるとは、なんという幸運。全力を尽くします」


つづく

先頭 表紙

2004-08-16 ポロの日記 2004年8月9日(光曜日)新たな陰謀 その2

新たな陰謀 その2


ポロ「三次元恒星図を」
艦長「副長、三次元恒星図を用意」
副長「はっ!」
艦長「これが、QR542213銀河です。地球からは暗黒星雲の陰になっていて知られていません。フェニキア星の宇宙船に関する資料も多くありませんが、高性能な割には弱点も多いようです」
ポロ「あのロボットも水をかけたらショートして故障した」
艦長「問題は距離です。この距離になると敵船もワープを繰り返しながら進むしかないはずですが、ワープポイント以外での捕捉は不可能です。彼らのワープ距離を割り出せれば先回りできますが、それが非常に困難です」
ポロ「しかし、やらなければならない」
艦長「イエス、サー!」

 乗組員たちにミッションが説明されると、猫の星の歴史上有名なジョーンズにかかわる任務であることから艦内の志気は上がりました。
 ポロは、しばらくのあいだ最前線となるソナー室へ出向きました。ソナー担当員は宇宙空間を飛び交う電磁波を音波に変換して、その音から全てを割り出すという特殊な才能を必要とするため、個性の強い猫であることが多く、この船に乗っているソラブジ伍長も、そういう一人でした。

ポロ「何か分かったことはあるか?」
ソラブジ「アメン王子、ソラブジ伍長です。まだ何も。どうぞ、このレシーバーを」

 ポロもヘッドフォンのようなレシーバーを受け取りました。宇宙はノイズで満ちています。

ポロ「この鳴き声のような音は?」
ソラ「宇宙クジラです。それも、若いオスです。恒星風のノイズにフィルタをかけてみます」
ポロ「とてもはっきり聞こえる。これが宇宙クジラか」

 そこへ、錆びたドアの蝶番がきしむような怪しげな音が聞こえてきました。

ポロ「これはなんだ?」
ソラ「これは、ソーラーセイルの音です。あ、これはお尋ね者の海賊船ブラックパールです。間違いありません。ここで会ったが百年目、やっつけますか?」
ポロ「残念だが時間がない。またの機会にしよう」
ソラ「運の強いやつめ」

 探索範囲内にフェニキア艦は見当たらず、プレイオガは第1回目のワープを行ないました。
 すでに銀河系を離脱し、宇宙は静寂に満ちていました。

ポロ「驚くほど静かだな」
ソラ「感度を上げます」

 すると、星々のノイズの代わりに銀河のノイズが聞こえてきました。

ポロ「このサラサラとした音は?」
ソラ「これは、銀河間を埋めつくすエーテル海流の音です」
ポロ「まるでイーノを聴いているようだ」
ソラ「自分も、ブライアン・イーノはこれを参考にしたのではないかと思っております」

 第2回目のワープではミラージュと呼ばれる実体のないノイズが空間全体に反響していました。そして、ついに第3回目のワープでフェニキア艦のワープ突入時のダイブ音をキャッチしました。それがあまりに微妙な音だったので、ポロはソラブジ伍長の耳に驚きました。
 スキピオ艦長は消失時に発生したエネルギーを精密測定して、直ちにフェニキア艦の実体化ポイントを予測、プレイオガを急行させました。

 プレイオガが実体化したのは、銀河系から2億光年も離れたポエニ空域と呼ばれる空間でした。ソナー・レシーバーからは、ほとんど何のノイズも聞こえませんでした。そこへ、洗面器の水をひっくり返したような音が聞こえました。

ソラ「ビンゴ! アメン王子、敵艦がすぐ近くに実体化しました」
ポロ「艦長、フェニキア艦が実体化」
艦長「こちらの、レーダーでも確認しました。物理攻撃は避けて、CDSで行きます。精密照準完了」
ポロ「よし、攻撃だ」


つづく

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2004-08-15 ポロの日記 2004年8月9日(光曜日)新たな陰謀 その3

新たな陰謀 その3


 CDSというのはコンピュータ・デストロイ・システムの略です。松戸博士の発明でしたが、その技術情報が流出して銀河系標準としてあちらこちらで採用されています。この技術を盗み出したのがブラック・パールであると言われていて、彼らからの流出情報は海賊版と呼ばれています。
 CDS攻撃を受けた敵艦は、たちまちコントロールを失って固まってしまいました。
ポロは、艦長の制止も聞かずに敵艦への突入部隊の先頭に立ってフェニキア艦に乗り込みました。
 船に乗り込んできたドーラ軍の精鋭たちと対峙したフェニキア艦のハンニバル艦長は、あっさりと降伏しました。

ポロ「艦長か?」
ハンニバル「フェニキア軍巡洋艦<エレファント>のハンニバル大佐だ」
ポロ「聞いたことがある」
ハンニバル艦長「あなたがドーラのアメン王子か」
ポロ「そうだ」
ハンニバル「一度、お会いしたいと思っていた」
ポロ「それは光栄だ。とむりんせんせいを返してもらおうか」
ハンニバル「隔離室で眠っておられる」

 ポロは突入部隊の指揮官に命じてせんせいをプレイオガに転送させました。

ポロ「なぜ、とむりんせんせいを誘拐したのだ?」
ハンニバル「我々の星には作曲家が不足している。人気投票でとむりん氏に決まった」
ポロ「もし、今後銀河系から略取が行われたときにはドーラ軍が黙ってはいないということを忘れないでほしいものだ」

ポロ「転送室」
転送室「はい」
ポロ「撤収だ」
転送室「転送します」

 プレイオガに戻ると、ポロは技術将校たちにCDS攻撃で航行不能になったフェニキア艦へ修理用のチップ類を転送させ、ついでにせんせいのCDを1枚おまけにつけました。

--ピーポー!
--アメン王子、ブリッジへ入室!

ポロ「スキピオ艦長。帰還しよう」
艦長「了解、ワープデータを再計算しろ。帰還する」

--ピーポー!
--アメン王子、ブリッジから退室!

 猫用の小さな医務室で、せんせいはぐっすりと眠っていました。

ポロ「せんせいの具合は?」
医官「薬物で眠らされていますが、危険な物質は検出されていませんから、目が覚めれば問題ないでしょう」

 地球を周回する極軌道に入るとすぐに、まもなく夜明けを迎える日本が真下にやってきました。
 せんせいを精密照準で作曲工房の寝室のベッドに転送しから、乗組員たちに別れを告げてポロも工房のリビングに転送を命じました。

艦長「アメン王子、お元気で」
ポロ「ありがとう」

* * * *

 夜が明けると、せんせいは奥さんに起こされていつもの朝が始まりました。何事もなかったかのように工房は掃除され、キッチンでは朝食が用意され、みんな出かけて行きました。
 朝食の後片づけを終えたせんせいとポロは、ダイニングテーブルでコーヒーデミタスを前に向かい合っていました。

「せんせい」
「なんだい?」
「北大路魯山人は納豆を448回もかき混ぜたんだって」
「よく知ってるね。彼は納豆をかき混ぜる回数による味の違いまで感じ取るほどの食通だったということだ」
「せんせい」
「なんだい?」
「本物だね」
「ああ、魯山人は本物だよ」
「そうじゃなくてさ。ううん、そうだね」
「なに、うれしそうにしてるんだ」
「なんだかうれしんだよ、ポロ」

 今日の最初のレッスンが始まるまで、あと少し時間がありました。


おしまい


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先頭 表紙

2004-08-14 ポロの日記 2004年8月7日(岩曜日)決戦!ポロ会議 その1

決戦!ポロ会議 その1


ポロ「みんな集まったね」
ポロ「きょうこそ、にせポロをあばいてやろうと思って来たんだ」
ポロ「どうしてポロの真似なんかするんだ」
ポロ「ちょっと待って。それはポロのセリフだよ」
ポロ「ちょっと待った。真理の法廷に誓って本物は、このポロだけだよ」
ポロ「何を言ってるんだ。ポロだけが本物だよ」
ポロ「ちょっと待った。誰が誰だかこんがらがっちゃうから、このクジを引いて名前をつけようよ」
ポロ「よし、そうしよう」
ポロ「あ、ポロ2号だ」
ポロ「ポロは5号だ」
ポロ「4号!」
ポロ「1号」
ポロ「3号になった」
ポロ「6号だぞ」
ポロ「じゃ、ポロは残りの7号だね」
ポロ7「次のクジは議長選出だけど、意義ある?」
ポロ3「意義なし」
のこり「意義なし」
ポロ5「ポロが議長だよ。いいかい?」
みんな「いいよ」
ポロ5「じゃあね、誰が本当のポロなのか明らかにするために順番に知ってることを言いあおう。ポロ1号からだよ」
ポロ1「ポロが知ってることはね、せんせいのハンカチはペーズリー柄」
ポロ2「そんなのジョーシキだよ。せんせいはネクタイもペーズリーだし、サイフもペーズリーだよ」
ポロ3「なに言ってんだ。せんせいは傘だってペーズリーだよ」
ポロ4「それどころかパンツだってペーズリーだよ」
ポロ5「せんせいはペーズリー柄が大好きなんだから、そんなの何言ったって当たっちゃうよ。こんなんじゃ誰が本当のポロだか分かんないよ」
ポロ6「・・・・」
ポロ5「あ、ポロ6号、なにメモしてるんだい。え〜! “せんせいはパンツまでペーズリー柄”だって。お前、にせポロだなあ」
ポロ6「違うよ、本物だよ」
ポロ7「そうだ、ポロ6号は本物だ」
ポロ2「わー、変だ変だ! 本物のポロは自分以外は全部にせポロだと思ってるはずだ」
ポロ3「7号! お前も、にせポロだな」
ポロ5「あれ!? 女神さま」

 部屋の片隅に女神さまが現れました。
 ポロたちは、みんな一斉に振り向きました。

女神「あ〜ら、ポロちゃんたち。これだけ集まると壮観ね」
ポロ4「女神さまなら、本物が分かるでしょ」
女神「ええ、分かるわよ。この中の5人(5匹)が本物で、2人が本物以上よ。
ポロ3「わ〜、どういうことだ〜?」
女神「ごめんなさいね〜、ポロちゃんが、こんなに増えちゃったのは私のせいでもあるのよ」
みんな「え゛〜〜〜!」
女神「ポロちゃんと一緒にタキオン状態から再実体化したときに、微妙に時間がずれたのね。それが4回あったから、その都度、新しいポロちゃんが追加されちゃって5人に増えたというわけ」
ポロ1「それじゃ、どうするんだ〜」
女神「簡単よ。一度、その5人のポロちゃんとタキオン化して、もういちど最収束して実体化すればいいの。全員のアインザッツが揃えば、一人に戻るわ」

 女神さまは、1号から5号までを抱えてタキオン化すると、あっという間に再実体化しました。


つづく

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2004-08-13 ポロの日記 2004年8月7日(岩曜日)決戦!ポロ会議 その2

決戦!ポロ会議 その2


ポロ「あ〜! 一人になった。やっぱり、ポロが本物だったんだ!」
女神「そうね、きっとみんな、そう思っているわ」
ポロ「じゃ、この6号と7号がにせポロっていうわけだ。観念しろ!」
女神「ポロちゃん、事情はそう簡単じゃないのよ」
ポロ「え〜、だってにせ者じゃないか〜」
女神「ポロちゃん、最近どんなお話を書いたの? コラムは?」
ポロ「えっと、えっと、いろいろ書いてるよ。たぶん」
女神「はっきりしないわねえ・・・」
ポロ「えっとえっと」
女神「ポロちゃん、コラムやお話を読んで、なんとなく自分が書いたような気がしてるだけじゃないかしら?」
ポロ「ドキ! そ、そ〜かも・・・」
女神「あらためて紹介するわ。こちらがポロちゃんのサボりの穴を埋めてくれてるコラムポロのポロちゃんよ」
6号「コラム、面白いでしょ」
ポロ「し、しぇ〜!」
女神「そして、こちらがお話を書いてくれてるお話ポロのポロちゃんよ」
7号「ども! 今までに書いた話の中じゃ“女神さまの逆襲”が気に入ってるんだ、ポロ。本物の女神さまに会えてうれしいな」
女神「それは光栄だわ」
ポロ「し、しぇ〜!」
女神「ポロちゃん。よ〜く思いだしてね。ポロちゃんが地球に来た目的は何?」
ポロ「そういえば、せんせいが誰にも知られずに麦畑で麦になっちゃうのを食い止めるんだった。今、思いだしたよ。たしか“セロ弾きジョーンズ”に書いてあった」
女神「それで、ポロちゃん。その目的は達成できそう?」
ポロ「う〜ん、よく分かんない。できるかも知れないし、できないかも知れない」
女神「それを心配して組織されたのがポロプロジェクトらしいのよ」
ポロ「え゛〜〜〜! ポロプロジェクトができたのはポロのせいだったのか〜!」
女神「そうよ。ポロちゃん、しっかりしてよね」
ポロ「じゃ、ポロは、にせポロにお礼を言わなくちゃいけないくらいなんだね」
女神「だから、このポロちゃんたちを本物以上って言ったのよ」
ポロ「そっか、働きから見たらポロが“にせポロ”だったのか〜」
6号「最近、ポロたちのプロジェクト以外にも、もっと大がかりなことを企んでいる集団もあるみたいだから気をつけてね」
7号「そのグループは目的もよく分からないんだけど、もう活動を始めているらしいんだ。気をつけたほうがいいよ」
ポロ「え゛〜! ホント〜!」
6号「ポロたちは、そのグループのポロも捕まえたんだけど、あまり出来のよくないロボットでさ、防水性能が悪くて水鉄砲で撃ったら回路がショートして壊れちゃったんだ」
ポロ「じゃ、ポロも水鉄砲用意しとくよ」
7号「ところでさ、ポロたちが会って話したこと、うちの議長にはナイショだよ」
ポロ「うん、分かった」
6号「じゃさ、がんばってね、オリジナル」
ポロ「うん、アリガト。ポロもがんばるから。目的はせんせいの理解者を一人でも多くすることだ」
女神「そ〜よ〜、ポロちゃん。がんばってね〜」

 こうして、ポロプロジェクトの謎の女議長も知らない「ひみつのポロ会議」は終わったのでした。


おしまい

 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。
野村茎一作曲工房

ポロの掲示板はここだよ。
ポロのひみつの部屋

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