himajin top
ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-08-11 ポロの日記 2004年8月6日(電曜日)夏休みの工作 その2
2004-08-10 ポロの日記 2004年8月6日(電曜日)夏休みの工作 その3
2004-08-09 ポロの日記 2004年8月4日(波曜日)ポロの求人広告 その1
2004-08-08 ポロの日記 2004年8月4日(波曜日)ポロの求人広告 その2
2004-08-07 ポロの日記 2004年8月3日(熱曜日)ポロ、カルチャーセンターの講師を務める その1
2004-08-06 ポロの日記 2004年8月3日(熱曜日)ポロ、カルチャーセンターの講師を務める その2
2004-08-02 ポロの日記 2004年8月1日(風曜日)夏のおでかけ その1
2004-08-01 ポロの日記 2004年8月1日(風曜日)夏のおでかけ その2
2004-07-27 ポロの日記 2004年7月25日(風曜日)テレビのひみつ その1
2004-07-26 ポロの日記 2004年7月25日(風曜日)テレビのひみつ その2


2004-08-11 ポロの日記 2004年8月6日(電曜日)夏休みの工作 その2

夏休みの工作 その2


「振馬さん、お願いします」
「はい、今日はどのようなご用でしょうか?」
「これを手に入れました」
「おお、ケイバーリットの6枚そろいですね。素晴らしい」
「ポロちゃん、こちらが振馬大尊(ふりま・だいそん)さんだよ」
「(うっひゃー、へんな名前)ポロと言います、よろしく。今日は割引券も持ってるんだよ」
「おお、お話ができるのですね。こちらこそよろしく」

 ダイソンさんは、ポロがしゃべっても大して驚きませんでした。
 ミタさんはダイソンさんと打ちあわせを始めました。ポロはそばで聞いていましたが、ケイバーリットは、気をつけないと宇宙へ行ってしまうこと、与圧室がないと生命に危険が及ぶことなどが分かりました。それで、あまり高くないところを浮上して進む現代版空飛ぶじゅうたんを作ることにしました。
 ダイソンさんとミタさんは、あっという間に設計図を書き上げ、ダイソンさんが工作機械を使って材料を切りだして行きました。
 明け方には硬式飛行じゅうたんが完成しました。

「アクリルのキャノピがカッコいいね〜」
「これは“流星号”にしようと思うんだ」
「わ、知ってるよ、その名前」

 流星号は、じゅうたんというよりも白木のイカダにアクリルのキャノピが乗ったような感じでした。キャノピの内側にはケイバーリット・ブラインドがあります。

「明るくなるとやっかいだから、今のうちに試験飛行をしよう」

 店の前の路地に流星号を出していると、新聞配達のお兄さんがソバを興味深そうに眺めながらとおりすぎました。なにしろ、木造の最新式飛行機械です。

「ダイソンさん、お世話になりました。試験飛行がてら、これで帰ります」
「じゃね〜、バイバイ、ダイソンさん!」
「お気をつけて」

 ポロたちが乗り込むと大変なことが分かりました。中は無重力だったのです。それでも、なんとか椅子に座ってシートベルトをしめるとカッコがつきました。
 ミタさんが真上のケイバーリットを開くと、遠くの星たちの引力を受けて流星号は風船のように上昇しました。同時に、ポロたちの重力を感じる方向もそちらの方向になって、頭に血が上りそうでした。椅子が全方向に向かって回転するようにしないと、かなりつらい乗り物です。

「重力で飛ぶっていうのは、こういうことだったのか」
「でも、とにかく離陸成功だよ! すごいよミタさん」
「ま、とりあえずやったね、ポロちゃん」

 それから、前のブラインドを開けると視界が開けて前進しはじめました

「でも、どうやって方向を変えるの?」
「う〜ん、それが問題だね」
「あ、簡単だよ、行きたい方向のブラインドを開ければいいだけだよ」
「お、コロンブスの卵!」

 実際には流星号は風に吹かれると勝手に回転したりして、そのたびに上下が分からなくなりました。向きが変わると、ブラインドを開ける方向も変えなければなりません。とにかく、地面に向いたブラインドだけはすぐに閉じないと墜落してしまいます。

「うわあ〜、ミタさん。忙しいね〜」
「うん、これは姿勢を制御するためのウェイトを積み込まなければならないね」
「でもさ、パイオニアってこういうことだよね」
「そうとも、この状況を楽しもう」
「わあ、ミタさん、前向きだなあ〜」

 流星号は墜落を避けるために高度を高くとって、上下左右にフラフラしながら作曲工房を目指しました。だんだん東の空が明るくなってきて、地上西側からみた流星号は黒いシルエットになっていることでしょう。


つづく

先頭 表紙

2004-08-10 ポロの日記 2004年8月6日(電曜日)夏休みの工作 その3

夏休みの工作 その3


「ミタさん、今、頭の上に見えてるのが荒川じゃないかなあ」
「うん、ブルーシートで席取りしてあるところを見ると、戸田橋花火大会の会場の近くらしいね」
「あ、もう足の下になったよ。ミタさん、下のブラインド閉じないと」
「ポロちゃん、左側のブラインド開けて! 南に流されてるよ」
「うわ、ホントだ!」

 どこかの公園の上空を通った時には、ラジオ体操をしている子どもたちが流星号に気づいて大騒ぎになりました。もちろん、流星号の中のポロたちも大騒ぎです。

「ねえ、ミタさん。あそこが作曲工房だよ」
「ああ、とうとう着いたね」
「でもさ、どうやって着陸するの?」
「微妙な操作は難しいな」
「あのさ、機体の回転が止まればなんとかなるよね」
「どうやって?」
「ポロたちが、中でネズミみたいに回ればどうかな」
「こんな、せまいところじゃ難しいよ」
「じゃ、ポロがやってみる」

 ポロは、機体の回転方向と逆にキャノピを走って見ましたが、ブラインドを踏むたびにルーバーが開いたり閉じたりして、かえって複雑な動きにしてしまいました。

「ポロちゃん、全部のブラインドを少しだけ開ければいいんじゃないか?」
「あ〜、そうかも!」

 ポロたちはブラインドのルーバーを微妙に調節しながら開けてみました。すると流星号は徐々に降下を始めました。

「わ、うまくいったよ、ミタさん」
「よし、このまま工房の前の道に着陸だ」

 ところが、空の高いところにいたポロたちは流星号の降下速度の見積もりを間違えていました。地上30メートルくらいになったときに、初めて降下速度の想像以上の速さに気づきました。

「わ、ミタさん、これじゃ道路に激突するかも」

 ミタさんは、すぐに道路側のルーバーを閉じましたが、ちょっと遅すぎました。

 ガラガラガッシャーン!

 流星号は、アスファルトの道路で一瞬にしてスクラップになってしまいました。でも、こわれた機体が衝撃を和らげてくれたので、ポロたちは幸運にも怪我ひとつしませんでした。

 物音に気づいて、せんせいが外に出てきました。

「うわ、どうしたんだ。あれ、ミタさんじゃないですか」
「あ、とむりんせんせい、お早うございます」
「せんせい、これ、流星号っていうんだよ。壊れちゃったけど」
「二人とも怪我は?」
「大丈夫です」
「ポロもダイじょぶだよ」

 ミタさんは、残がいから無事だったケイバーリット2枚を回収して、あとはせんせいがゴミの日に出すことになりました。

 みんなで朝ご飯を食べて、ポロはミタさんをタドタド駅まで送っていきました。

「ミタさん、面白かったね」
「この夏、一番エキサイティングな出来事ってとこかな」
「またなんか作ろうね」
「うん、きっと」

 1番線のホームにVVVFインバータの音を高らかに響かせて、JR最強線に乗り入れている新木場直通のりんかい線の車両がやってきました。ミタさんを乗せて走り始めた電車に、ポロはいつまでも手を振りました。

 その日の夕刊を、お約束のUFO目撃の記事が賑わせたのは言うまでもありません。


ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

先頭 表紙

ミタさん、また遊ぼうね! / ポロ ( 2004-08-06 22:44 )
う〜ん、残念!戸田橋花火大会を空の上の特等席から見ようと思ってたのに〜!でも、空中散歩楽しかったですね。(^^) / みた・そうや ( 2004-08-06 14:22 )

2004-08-09 ポロの日記 2004年8月4日(波曜日)ポロの求人広告 その1

ポロの求人広告 その1


「せんせい」
「なんだい?」
「きのう、ポロを募集してたから応募したら採用された」
「どういうことだい?」
「あのね、きのうネットの求人広告に“ポロ急募”って書いてあったの」
「どういうことなんだ?」
「“趣味と実益を兼ねたステキなお仕事です”の次に“簡単な適性テストの上採用いたします”って書いてあった」
「それで?」
「応募したら、すぐに適性テストのページが開いたから答えた」
「どんな問題だった?」
「こんなだった」

 ポロ適性テスト
・以下の問題に、あまり深く考えずに、思ったとおりに答えてください。

Q1 ヒマがあったら何をしますか?
A  イモようかんを食べる。

Q2 宇宙人はいると思いますか?
A  いる。もう何人も会った。

Q3 サンタクロースはいると思いますか?
A  たりめーのこんこんちき。おともだちだよ。

Q4 3次元は縦、横、高さの世界です。では4次元は?
A  最初は縦、横、高さ、低さかと思ったけど、ホントは縦、横、高さ、重さだと思う。

Q5 読書は好きですか? 好きと答えたばあい、お好きなジャンルは?
A  好き。毎日かかさず音読してる。好きなジャンルは日本の古典。

Q6 ピアノは弾けますか?
A  バイエル79番までならヒケールなしでも弾けちゃう。

Q7 座右の銘を教えてください。
A  棚からぼたもち

Q8 猫は好きですか? 猫になりたいと思ったことはありますか?
A   好き。この次も猫に生まれたい。

Q9 秘密は守れますか?
A  ポロにひみつはない。

Q8 では最後の質問です。次の3つの単語を使ってそれぞれ短い文章を書いてください。

 はからずも  やにわに  うってかわって

A ポロは距離をはからずも分かる。
A 家やにわに雨が降る。
A ポロは家屋敷をうってかわってしまった。


「こんな感じだった」
「よく採用されたな」
「7番目らしいよ、ポロ7号だって。ほかに6匹いるらしい」
「残りは人間だろう」
「じゃ、6人かも」
「採用の基準はどういうものなんだろう」
「うわさによると、前いたポロたちは一斉にいなくなっちゃったらしいんだ。だから誰でもいいから大急ぎで採用したんじゃないかなあ」
「事件でもあったのか?」
「そのへんは、よく分かんない」
「そうか」
「ポロの担当は木曜日らしいよ。さっそく明日から研修があるみたい」
「どんな内容なのか興味があるな」
「もうテキスト持ってるよ。これだよ」


 研修テキスト

1.はじめにポロ語を覚えましょう。

・オハヨございます
・コバワ
・アリガトございます
・コワい
・ポロてきに
・ダイじょぶ

2.ポロを取り巻く人脈を覚えましょう。

・せんせい 作曲家でポロの師匠。その割には、ポロはタメ口をきく。要注意。
・おちゃめ ホームページ管理の同僚。にせポロを見抜くとしたら、最も可能性の高い人物。要注意。
・ミタ・ソウヤ しばしばポロ関連ページに現れる謎の蘊蓄人。博識なので、にせポロを見抜く能力も高いと思われる。要注意。
・moko しばしばポロ関連ページに現れるピアノ愛好家。長期間に渡ってポロを知っているので、要注意。
・シロ ポロの弟子。現在ネット環境にないので現れる心配がないが、復帰してきたら要注意。
・他にも要注意人物あり。サイトで直接リサーチせよ。


つづく

先頭 表紙

2004-08-08 ポロの日記 2004年8月4日(波曜日)ポロの求人広告 その2

ポロの求人広告 その2


「こんなだよ」
「どう考えても陰謀だな、これは」
「ポロなんかを巻き込んだって、たいした陰謀になんかならないよ」
「それはそうだが、誰かが何かの利益を得るようなことがあるのかも知れない」
「ま〜さか」

 研修中のポロの成績は抜群でした。あたりまえですけど。
 研修を終えると、ポロは“ポロ7号”として、配属されました。やってみると、なかなか面白い仕事でした。だって、ポロ2号とかが書いたデタラメな書き込みを削除して、ポロのホントの書き込みに変えればいいからです。
 作曲工房のサイトをよく見直すと、オリジナルが削除されて、にせポロの書き込みにお置き替えられているところがたくさんありました。日が建つにつれて、サイトはどんどんオリジナルに修復されていきました。


 どこかの会議室 定例ポロ会議

議長「この資料によるとポロワールドの書き換えが進んでいないようですが、その原因は何です?」
A子「はい。ポロ・ロボットが何者かによって捕獲されてしまったため、今回はポロを募集して応募者を適性検査の上、雇っています。やはりロボットに比べると効率が悪いのかも知れません」
B子「効率が悪いというようなことではなさそうです。よく調べてみると、にせ文書がオリジナルに置き換えられるという逆行現象が確認されています」
議長「それはどういうことですか?」
C太「それは、ひょっとしてにせポロのなかに、にせのにせポロが混ざっているということではありませんか?」
議長「適性検査のデータはありますか?」
D作「はい、ここに」
議長「見せてください」
D作「はい、どうぞ」
議長「・・・・。んんん、これです。見つけました。ポロ7号は、にせのにせポロです! こんなものも見抜けないとは、なんと言うていたらく!」
D作「申し訳ありません。ただちにポロ7号を解雇いたします」


「せんせい」
「なんだい?」
「ポロ、クビになった」
「どうしてだい?」
「適性検査が間違っていたって」
「そうか」
「そうかって、せんせい。作曲工房のサイトがにせのポロに勝手に書き換えられちゃうかも知れないんだよ」
「誰が何を書き込もうが、真理は変わらない」
「せんせい、そんな悠長なこと言ってられないよ」
「いいじゃないか。にせポロ軍団が何をしようとしているのか見てみようじゃないか」
「いいのかなあ」


 その後、事実ではない記事や書き込みが次から次へとアップロードされてきましたが、不思議なことに、作曲工房サイトには何の変化も影響もありませんでした。
 でも、ひとつだけ例外がありました。それは、にせポロの文章が上手になってきて、ポロにもどれがホントに自分が書いた記事なのか区別がつかなくなってしまったという事でした。

おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

先頭 表紙

ポロも『ポロのそっくりさん大会』に出てみたいよ〜! / にせポロ ( 2004-08-06 00:18 )
かつてチャップリン自身が『チャップリンのそっくりさん大会』に出場した事があるそうです。結果はなんと二位。チャップリンもそうですけど、審査員もエスプリが効いていますね(^^)。ところで、ポロプロジェクトの議長さん…なんだか気になりますね〜? / みた・そうや ( 2004-08-04 22:45 )

2004-08-07 ポロの日記 2004年8月3日(熱曜日)ポロ、カルチャーセンターの講師を務める その1

ポロ、カルチャーセンターの講師を務める その1


 ポロは裏神田カルチャーセンターから講師として招かれて、宇宙開拓史について講演することになりました。
 裏神田カルチャーセンターは誰にでも門戸を開放している社会教育機関で、講演料も無料ですが受講料も無料です。神田錦町の裏路地にある古いビルの地下にたくさんの教室が並んでいて、ポロは、その中の一室に入っていきました。
 教室には、すでに多くの受講生が詰めかけていて熱気に溢れていました。最前列ではぬらりひょんが、その後ろには絶滅したはずのドードー鳥が、その隣にはタドタド駅のそばの猫工場のミーちゃんもいました。全部で40人くらい。こんなに大勢の前で話すのは、ポロは初めてでした。

「みなさん初めまして。本日、宇宙開拓史についてお話させていただく、作曲家(助手)のポロです。バイエル79番まで弾けます。おっほん」

 ぱちぱちぱちぱち!

 ポロは、まばらな拍手を受けて深々と礼をしました。顔を上げると、コビト星人のテレビクルーに気づきました。いったいどこで放送されるのでしょか。ポロは、さっそく講義を始めました。

「地球に関わる最初の宇宙船は、わたくしの出身母星である猫の星“ドーラ”で建造された“オリンピア号”であります・・」

 ポロは快調に講義を進めていきました。

 オリンピア1号は、ドーラの伝説的な技師ゴーヒャ・キージェによって建造された氷の宇宙船であります。極寒の星ドーラに太陽をもたらすためにオリンピア号に乗って決死の航海に出たのは、トラパティウス、ミケロディー、タマリウスという3匹の勇敢な若者でありました。しかし、太陽のかけらをすくい取ってオリンピア号を帰還軌道に乗せることには成功したものの、彼ら自身は、ついにドーラに戻ることはなかったのであります。その後、オリンピア2号が地球に着陸したオリンピア号の船外作業船を発見しました。彼らが地球に無事に到着したことは、いまだに猫の名前が彼らに因んでトラ、ミケ、タマなどと名づけられていることからも分かるのであります。
 その後もオリンピア号は76年に1回ずつ、太陽に向けてやってきており、わたくし、ポロはオリンピア66号で地球にやってきたのであります。
 さて、NASA、アメリカ航空宇宙局は1969年にアポロ11号を打ち上げて人類を月に送り込みました。これが人類初の月到達と言われていますが、実際は違うのであります。
 1960年に、メビウス・ジェネレータとグラヴィトン・コンバータを搭載したサンタクロースのソリが、東京都板橋区の氷川神社の森に不時着しました。途方にくれるサンタクロースのために、修理に協力した一人の男性からもたらされた情報によって、天才科学者、別名マッドサイエンティストの松戸博士が、メビウス・エンジンを実用化しました。彼は遊園地から払い下げられたロケット型遊具を改造して、数年をかけて地球初の宇宙船「氷川丸」を建造しました。1968年、アポロ11号に先駆けて氷川丸は試験飛行で月に到達。そこで驚くべき光景を目撃したのであります。それは月の極地方で朽ち果てた人類初の月到達者でありました。後の調査によって、それは、月表面が真空であることを知らずにテレポーテーションを行なった猿飛佐助という超能力を持った忍者であることが分かりました。いまから数百年の昔のことでありました。


つづく

先頭 表紙

2004-08-06 ポロの日記 2004年8月3日(熱曜日)ポロ、カルチャーセンターの講師を務める その2

ポロ、カルチャーセンターの講師を務める その2


 メビウス・エンジンは、その後、世界征服をたくらむ、とある秘密結社に知られるところとなり、盗み出されたその技術情報によって、彼らの所有する水陸両用戦艦“轟天号”に搭載されたのでありました。しかし、資金不足のために、なかなか世界征服は進まず、今でもアルバイトとして轟天号を使った旅客輸送業を行なって機会をうかがっているようであります。
 その後、松戸博士は恒星間では効率の落ちるメビウス・ドライブに変わってディーン・ドライブの原理を発見しますが、完成は遅れたのでありました。なぜなら、全く理由の分からない波動エンジンが先に実用化されたからであります。波動エンジンは、博士がオーブンでパイを焼いているときに、部屋が散らかっていたために混入したダイオードやいくつかの金属片によって偶然現れた波動効果による推進装置で、きめ細かいコントロールには不向きなものの、遠距離を航行する宇宙船にはうってつけのものでありました。地球で最初にこれを装備したのが宇宙戦艦ヤマトでありました。そのキットは、近くのシュレーディンガー商会で入手することができます。
 さて、松戸博士はディーン・ドライブの研究を進め、ついに1989年にワゴン車型の宇宙船りんご丸を完成させたのでありました。処女航海でクリューガー60という恒星に向かった博士は、そこで地球型可住惑星p2を発見しました。研究資金の出資者の一人である、とある不動産業者のアイディアで、その惑星を整備してクランベリーヒルと名づけて売り出しました。博士は以後、研究資金には困らなくなりました。現在、博士は研究拠点をクランベリーヒルの猿雅荘に移しています。
 さて、この30年間の宇宙開発のテンポは極めて急速でありました。1947年にアメリカの実業家、ケネス・アーノルドがUFOを目撃したときには、異星人の進んだ科学に人類は太刀打ちできないかと思われておりました。しかし、今、アダムスキー型UFOをご覧ください。(ここで、ポロ、写真のフリップを提示)いかがでしょうか。いかにも旧式という感じであります。実際、旧式なのであります。彼らは未だにメビウス・ドライブを用いており、松戸博士のディーン・ドライブに比べると、性能は数段劣ると言わざるを得ません。
 NASAでは、宇宙探査機そのものの性能は素晴らしいものを作っていますが、未だに化学ロケットという線香花火の親戚のような推進原理に頼っています。これは、UFO以下であります。NASAが松戸博士の存在に気づけば地球の宇宙開発も激変するのでありましょうが、世の中には、自らの功績を発表することに興味がない人間もいるということを忘れてはなりません。
ご静聴、ありがとうございました。

 ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち!


おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

先頭 表紙

NASAの前に、日本政府が気づかないのが悲しい所です…でも公になってしまうと、心ない人達の手で、せっかくのランベリーヒルの美しい自然が破壊されてしまうかも?世界が松戸博士を知るのは、地球の自然と共存する事が出来るようになってからでも、決して遅くはないと思います。 / みた・そうや ( 2004-08-03 12:47 )

2004-08-02 ポロの日記 2004年8月1日(風曜日)夏のおでかけ その1

夏のおでかけ その1


 風曜日の午後、せんせいが買い物に行くというので、ポロも一緒に連れていってもらいました。いつもの駐車場にクルマを停めて、ポロとせんせいは空を仰いで深呼吸しました。

「せんせい、空が高いね」
「ああ、1億円くらいかな」
「しょっぱ〜い! ジョークの道は険しんだよ、せんせい」
「じゃあ、ポロだったらなんて言うんだい?」
「わあ、手が届かないよ〜!」
「・・・・・。それってジョークか?」
「・・・ジョークの道は険しいって言ったでしょ!」

 人ごみに向かうので、ポロは、せんせいのショルダーバッグに入りました。

「せんせい、スリッパ買いに行くの?」
「ああ、そういえばそろそろ新しいものに取り換えようか」
「せんせい、今日は和菓子屋さんも行くよね」
「行く予定はないよ」
「予定はなくても行くよね」
「どうして予定がなくても行くんだ?」
「それが和菓子の道っていうもんだからだよ〜、やだなあ、せんせい」
「じゃ、気が向いたら」
「わ〜い。ぜったい気が向くよね」

 駅前から続く大通りの並木のけやきが青々として、ポロはなんだか幸せな気持ちになりました。さくら草どおりに入ると、小さな人だかりができていました。ほんの20人くらいの人だかりの中心にはピエロのような派手なコスチュームの大道芸人が何かやっていました。

「あ、せんせい。あの人テレビで見たことあるよ」
「ああ。ピーター・フランクルさんていう数学者だよ」
「え゛〜〜! どうして数学者の人が大道芸やってるの〜?」
「大道芸人でもあるからだよ」
「え゛〜〜! どうして大道芸人が数学者やってるの〜?」
「両方の才能があって、両方に誇りを感じているからだよ」
「あ゛〜〜! あれはジャグリングっていうんだ。すごいすごい! 本物だあ〜!」
「ああ、すごいね」
「あ、せんせい、見て見て。数学の本並べて売ってる!」
「たとえ有名人でも、こうやって、こまめに稼ぐような気持ちがなくちゃいけないんだなあ」
「ハイ、ソコノ フクワジュツ ノ ヒト」
「え? 私ですか?」
「ワタシヨリ オモシロイコト ヤラナイデ〜!」
「あ、失礼しました」

 ピーターさんに話しかけられて、せんせいは“おお、しまった!”というような大げさな身振りでおどけてみせると人だかりから離れました。周囲からどっと笑い声が沸きおこりました。

「ポロ、声が大きいよ」
「でも、せんせい大ウケしてたからいいじゃないか〜」
「それとこれとは違うよ」
「それよりさ、せんせい」
「なんだい?」
「コビト星人のテレビクルーがさ、ピーターさんの芸をこっそり取材してたよ」
「なんだ、コビト星人て?」
「ホントの名前は知らないんだけどさ、テレビの中に入ってきてご当地ニュースを流す宇宙人なの」
「そんなのがいるのか?」
「うん、ポロも最近知ったの。みかんちゃんちのテレビの中にいた」
「どんな番組やるんだい?」
「ポロのニュースとか、町内の天気予報とか。あ、そだ。ポロのタバコ野原のリサイタルの録画を流してた」
「じゃ、今日のピーターさんの番組はどこで放送されるんだろうね」
「ポロの考えじゃ、ピーターさんちだね」
「いいテレビ局だなあ」
「でも、どうやって経営しているんだ。スポンサーはついているのか?」
「うん。いろんなマルエツがスポンサーやってるよ」
「マルエツは宇宙人と通じているのか」


つづく

先頭 表紙

2004-08-01 ポロの日記 2004年8月1日(風曜日)夏のおでかけ その2

 夏のおでかけ その2


 それから、せんせいは楽器屋さんで楽譜を買うと、ポロの入っているショルダーバッグにガサゴソとうるさいポリ袋ごと放り込みました。

「わ、せんせい、狭いよ!」
「ちょっとぐらい我慢しろ」
「何の楽譜?」
「ベートーヴェンのピアノコンチェルト第4番だ」
「なんで、そんな楽譜買うの?」
「4番だけ、どこかへ行っちゃったんだ」
「いい曲?」
「いい曲だ。中学生の時に初めて聴いたんだが、第3楽章の冒頭部分はバルトークかと思ったくらいビックリしたもんだ」
「ふ〜ん、ポロも聴いてみたくなった」

 お店を出ると、だんだん日も傾いてきて、涼しくなってきました。
 日曜日の夕方だというのに、いつもに比べると人通りは少ない感じでした。やっぱり夏は出歩く人が減るのだなあと思いました。

「ねえ、せんせい。空がきれいだよ」
「きれいだね。吸い込まれそうだ」
「こんな空の下でさ、よ〜っく冷えた水ようかんを食べたくない?」
「別に」
「・・・・・・・じと」
「ウソだよ、ちょっとからかっただけ。ほら、そこの和菓子屋さんに行こう」
「わ〜!」

 せんせいは奥さんの分も買いました。
 ショルダーバッグの中に水ようかんの箱も入ってきましたが、不思議なことに少しも狭くなった感じがしませんでした。おまけに、空の色も木々の葉の色も、もっともっときれいに見えました。

「せんせい、なんだか幸せだねえ〜。ポロは、幸せってなんだか分かっちゃうような気がするな〜、今日は」
「そうか。それはよかったね」

 せんせいが愛車ユードラのエンジンをかけると、エンジン音はミケランジェリの弾くドビュッシーのように聴こえてきました。せんせいの運転は、まるでミヒャエル・シューマッハが恋人を乗せて公道を走るときは、きっとこうに違いないと思わせるような絹のなめらかさでした。

「せんせい。今日のユードラは、まるでロールスロイスみたいだよ」
「水ようかんひとつで、実に安上がりだね」
「ああ、せんせいがポロの専属運転手に見えてきた」
「はい、どちらまで参りますか?」
「うん。城までやってくれ」
「うわっ、社長じゃなくて王様か」

 それから、せんせいとポロは工房に帰り着くまで、どちらが何を言っても笑い転げていたのでした。


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

先頭 表紙

2004-07-27 ポロの日記 2004年7月25日(風曜日)テレビのひみつ その1

テレビのひみつ その1


 せんせい門下で小学6年生のみかんちゃんがお家で留守番をするというので、さびしくないようにポロが遊びに行きました。

「ごめんくださ〜い!」

 奥の方からみかんちゃんの弾くドビュッシーが聴こえてきました。返事がないので、ポロは勝手に上がり込んでピアノの部屋へ行きました。すると、いきなりフォルテになったのでポロはびっくりして飛び上がりました。それに気がついたみかんちゃんがピアノを弾く手を止めました。

「あ、ポロ!」
「あ゛〜、びっくりした。みかんちゃん、遊びに来たよ」
「ちょっと待っとってね」

 ふたたび光のような速さで、ドビュッシーの続きをノーミスで弾ききるみかんちゃんの迫力にポロは圧倒されていました。

 ぱちぱちぱちぱちぱちぱち!

 曲が終わるとポロは力いっぱい拍手しました。みかんちゃんはピアノの前に立って、両手で見えないドレスをつまむ動作をして、腰をちょっと下げて礼をしました。

「ポロも、みかんちゃんみたいにカッコよく弾いてみたいなあ」
「弾けるよ。ポロもなんか弾いてみて」

 ポロは、タバコ野原のリサイタルを思いだして“つぐみの森で”を弾きました。予定の10回をちょっとオーバーして35回つっかえたところで弾ききりました。

「・・・・・・・」
「どうだった、みかんちゃん?」
「・・・・。ん〜〜、今にうまくなるよ。せんせい、ついとるし」

 ポロたちは、みかんちゃんが作ってくれた“ぎゅうにゅうと混ぜるだけ”というデザートを食べながらテレビを見ていました。ところが、どのチャンネルも同じ番組しか映りませんでした。

「またや」
「いつもこうなの?」
「留守番してるときはね」

<大きなマルエツ提供のニュースの時間です。今日、午前10時頃、猫のポロは留守番をしているみかんちゃんのところに遊びに行きました。ピアノでつぐみの森で”を弾きましたが、35回つっかえた模様です>

「え゛〜〜〜〜! ど〜〜いうこと!!!」
「そうなんよ。みかんのことも言うよ、このニュース」
「なんか変だよ、ぜったい変だよ」

 ニュースが終わると、近所のマルエツ提供のアニメ「ぶち猫ジョーンズの冒険」が始まりました。

「あ゛〜! 赤ずきんちゃん気をつけてだ〜!」
「ああ、これなら再放送や。みかん、けっこう気に入っとる」

 そんなことを言いながらも、ポロたちは熱中してみてしまいました。物語は、ジョーンズが停車場で人買いの一人に向かってアカンベーをしたところでto be continuedとなりました。

「あ〜、いいところなのにな」
「いいところで終わるから、みんな次も見るんや」
「そだね」

 続いて天気予報でした。

<ふつうのマルエツ提供の天気予報の時間です。タドタド市りんご町の天気は晴れですが、間もなく通り雨が降るでしょう。その後、天気は回復して再び晴れるでしょう。天気予報をお伝えしました>

「通り雨やて。洗濯物とりこむから、ポロ手伝って」
「うん」

 ポロたちが洗濯物をベランダから部屋の中に入れたとたん、ザーッと雨が降ってきました。

「わ、ホントに雨が降ってきた!」
「とってもよく当たるんや、この天気予報」


つづく

先頭 表紙

2004-07-26 ポロの日記 2004年7月25日(風曜日)テレビのひみつ その2

テレビのひみつ その2


 またテレビの前に戻ると、今度は遠くのマルエツ提供の「ピアノのおけいこ」の時間でした。いつの間にか雨も上がったようでした。

<みなさん、ごきげんよう。ピアノのおけいこの時間です。今日はテキスト20ページの“いもむしの踊り”をおけいこしましょう・・・・>

「わ、せんせいの曲だよ、みかんちゃん」
「こないだはバーレスクやった」

 お昼前は3分間クッキングの時間でした。今日はホットケーキでした。あんまりおいしそうだったので、ポロはよだれがたれそうでした。
番組が終わってお昼になると、みかんちゃんがテーブルの上にホットプレートを用意しながら言いました。

「ポロ、ホットケーキ食べる?」
「た、食べる食べる!」

 ポロは感激して心臓が止まるかと思いました。キラリーン! ポロの瞳には10個の星が輝きました。
 みかんちゃんは手際よく粉を混ぜてホットケーキを焼いてくれました。そこにバターを塗って、カナダ森林組合のマークが入ったメープルシロップをたっぷりかけてくれました。一緒においしい紅茶も用意されました。

「ん・・・・・・、んまい!! みかんちゃんは天才だ〜!」
「粉混ぜて焼くだけだもん、ポロにだってできるよ」

 午後の番組は、どこかのマルエツ提供の特別番組<ポロのクランベリーヒル・リサイタル>でした。

「わ゛〜〜! ポロのリサイタルだ〜〜!」

 テレビの中ではポロがヒケールのキャンペーンソングを快調に弾いていました。会場の野ネズミたちも乗りまくっています。

「ポロ、すごいやんか! みかんなんかより、ずっとうまいよ」
「ふふふ。実は、ポロはただの天才ピアニストだったのさ」

 急に気持ちが大きくなったポロは、いつものセリフを言いました。
その時でした。テレビのうしろから、小人が出て何かを拾うと、またテレビに入っていったような気がしました。

「みかんちゃん、今、小人が出てこなかった?」
「見とらん」

 ポロのリサイタルが終わると、みかんちゃんはテレビのスイッチを切りました。みかんちゃんは、またピアノの前に行きました。でも、その時、ポロは見ました。テレビのうしろから、本番を終えたばかりという感じで小人たちがゾロゾロと出てきて、押し入れの奥に消えていったのです。
ポロは急に思いついてベランダに出て、空を見上げました。

 少したつと、案の定、小人星人のテレビ局員が乗っていると思われる小型UFOが飛び立ちました。ポロはバイバーイ!と手を振りましたが、何の返事もありませんでした。


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

先頭 表紙

ミタさん。ポロのパソコンにもコビト星人が住み込んでいて、お話を書いてくれます。 / ポロ ( 2004-07-30 23:27 )
せんせいが、みかんちゃんは見えないドレスの裾をつまんだりしないしないって言いました。だって、したんだもん。 / ポロ ( 2004-07-30 23:25 )
子人さん、パソコンの中にも居ますよね。暑いと大変なのか、時々ダウンします。 / みた・そうや ( 2004-07-30 12:47 )
「またや」「いつもこうなの?」「留守番してるときはね」 みかんて、ホントにこんな子なんよな〜。そのまま受け入れる、ゆーかぁー。ポロもみかんのこと、よーく解っとんやな〜。 / みかんのかーちゃん ( 2004-07-29 15:02 )

[次の10件を表示] (総目次)