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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-08-08 ポロの日記 2004年8月4日(波曜日)ポロの求人広告 その2
2004-08-07 ポロの日記 2004年8月3日(熱曜日)ポロ、カルチャーセンターの講師を務める その1
2004-08-06 ポロの日記 2004年8月3日(熱曜日)ポロ、カルチャーセンターの講師を務める その2
2004-08-02 ポロの日記 2004年8月1日(風曜日)夏のおでかけ その1
2004-08-01 ポロの日記 2004年8月1日(風曜日)夏のおでかけ その2
2004-07-27 ポロの日記 2004年7月25日(風曜日)テレビのひみつ その1
2004-07-26 ポロの日記 2004年7月25日(風曜日)テレビのひみつ その2
2004-07-25 ポロの日記 2004年7月23日(電曜日)女神さまの逆襲 その1
2004-07-24 ポロの日記 2004年7月23日(電曜日)女神さまの逆襲 その2
2004-07-23 ポロの日記 2004年7月23日(電曜日)女神さまの逆襲 その3


2004-08-08 ポロの日記 2004年8月4日(波曜日)ポロの求人広告 その2

ポロの求人広告 その2


「こんなだよ」
「どう考えても陰謀だな、これは」
「ポロなんかを巻き込んだって、たいした陰謀になんかならないよ」
「それはそうだが、誰かが何かの利益を得るようなことがあるのかも知れない」
「ま〜さか」

 研修中のポロの成績は抜群でした。あたりまえですけど。
 研修を終えると、ポロは“ポロ7号”として、配属されました。やってみると、なかなか面白い仕事でした。だって、ポロ2号とかが書いたデタラメな書き込みを削除して、ポロのホントの書き込みに変えればいいからです。
 作曲工房のサイトをよく見直すと、オリジナルが削除されて、にせポロの書き込みにお置き替えられているところがたくさんありました。日が建つにつれて、サイトはどんどんオリジナルに修復されていきました。


 どこかの会議室 定例ポロ会議

議長「この資料によるとポロワールドの書き換えが進んでいないようですが、その原因は何です?」
A子「はい。ポロ・ロボットが何者かによって捕獲されてしまったため、今回はポロを募集して応募者を適性検査の上、雇っています。やはりロボットに比べると効率が悪いのかも知れません」
B子「効率が悪いというようなことではなさそうです。よく調べてみると、にせ文書がオリジナルに置き換えられるという逆行現象が確認されています」
議長「それはどういうことですか?」
C太「それは、ひょっとしてにせポロのなかに、にせのにせポロが混ざっているということではありませんか?」
議長「適性検査のデータはありますか?」
D作「はい、ここに」
議長「見せてください」
D作「はい、どうぞ」
議長「・・・・。んんん、これです。見つけました。ポロ7号は、にせのにせポロです! こんなものも見抜けないとは、なんと言うていたらく!」
D作「申し訳ありません。ただちにポロ7号を解雇いたします」


「せんせい」
「なんだい?」
「ポロ、クビになった」
「どうしてだい?」
「適性検査が間違っていたって」
「そうか」
「そうかって、せんせい。作曲工房のサイトがにせのポロに勝手に書き換えられちゃうかも知れないんだよ」
「誰が何を書き込もうが、真理は変わらない」
「せんせい、そんな悠長なこと言ってられないよ」
「いいじゃないか。にせポロ軍団が何をしようとしているのか見てみようじゃないか」
「いいのかなあ」


 その後、事実ではない記事や書き込みが次から次へとアップロードされてきましたが、不思議なことに、作曲工房サイトには何の変化も影響もありませんでした。
 でも、ひとつだけ例外がありました。それは、にせポロの文章が上手になってきて、ポロにもどれがホントに自分が書いた記事なのか区別がつかなくなってしまったという事でした。

おしまい


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先頭 表紙

ポロも『ポロのそっくりさん大会』に出てみたいよ〜! / にせポロ ( 2004-08-06 00:18 )
かつてチャップリン自身が『チャップリンのそっくりさん大会』に出場した事があるそうです。結果はなんと二位。チャップリンもそうですけど、審査員もエスプリが効いていますね(^^)。ところで、ポロプロジェクトの議長さん…なんだか気になりますね〜? / みた・そうや ( 2004-08-04 22:45 )

2004-08-07 ポロの日記 2004年8月3日(熱曜日)ポロ、カルチャーセンターの講師を務める その1

ポロ、カルチャーセンターの講師を務める その1


 ポロは裏神田カルチャーセンターから講師として招かれて、宇宙開拓史について講演することになりました。
 裏神田カルチャーセンターは誰にでも門戸を開放している社会教育機関で、講演料も無料ですが受講料も無料です。神田錦町の裏路地にある古いビルの地下にたくさんの教室が並んでいて、ポロは、その中の一室に入っていきました。
 教室には、すでに多くの受講生が詰めかけていて熱気に溢れていました。最前列ではぬらりひょんが、その後ろには絶滅したはずのドードー鳥が、その隣にはタドタド駅のそばの猫工場のミーちゃんもいました。全部で40人くらい。こんなに大勢の前で話すのは、ポロは初めてでした。

「みなさん初めまして。本日、宇宙開拓史についてお話させていただく、作曲家(助手)のポロです。バイエル79番まで弾けます。おっほん」

 ぱちぱちぱちぱち!

 ポロは、まばらな拍手を受けて深々と礼をしました。顔を上げると、コビト星人のテレビクルーに気づきました。いったいどこで放送されるのでしょか。ポロは、さっそく講義を始めました。

「地球に関わる最初の宇宙船は、わたくしの出身母星である猫の星“ドーラ”で建造された“オリンピア号”であります・・」

 ポロは快調に講義を進めていきました。

 オリンピア1号は、ドーラの伝説的な技師ゴーヒャ・キージェによって建造された氷の宇宙船であります。極寒の星ドーラに太陽をもたらすためにオリンピア号に乗って決死の航海に出たのは、トラパティウス、ミケロディー、タマリウスという3匹の勇敢な若者でありました。しかし、太陽のかけらをすくい取ってオリンピア号を帰還軌道に乗せることには成功したものの、彼ら自身は、ついにドーラに戻ることはなかったのであります。その後、オリンピア2号が地球に着陸したオリンピア号の船外作業船を発見しました。彼らが地球に無事に到着したことは、いまだに猫の名前が彼らに因んでトラ、ミケ、タマなどと名づけられていることからも分かるのであります。
 その後もオリンピア号は76年に1回ずつ、太陽に向けてやってきており、わたくし、ポロはオリンピア66号で地球にやってきたのであります。
 さて、NASA、アメリカ航空宇宙局は1969年にアポロ11号を打ち上げて人類を月に送り込みました。これが人類初の月到達と言われていますが、実際は違うのであります。
 1960年に、メビウス・ジェネレータとグラヴィトン・コンバータを搭載したサンタクロースのソリが、東京都板橋区の氷川神社の森に不時着しました。途方にくれるサンタクロースのために、修理に協力した一人の男性からもたらされた情報によって、天才科学者、別名マッドサイエンティストの松戸博士が、メビウス・エンジンを実用化しました。彼は遊園地から払い下げられたロケット型遊具を改造して、数年をかけて地球初の宇宙船「氷川丸」を建造しました。1968年、アポロ11号に先駆けて氷川丸は試験飛行で月に到達。そこで驚くべき光景を目撃したのであります。それは月の極地方で朽ち果てた人類初の月到達者でありました。後の調査によって、それは、月表面が真空であることを知らずにテレポーテーションを行なった猿飛佐助という超能力を持った忍者であることが分かりました。いまから数百年の昔のことでありました。


つづく

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2004-08-06 ポロの日記 2004年8月3日(熱曜日)ポロ、カルチャーセンターの講師を務める その2

ポロ、カルチャーセンターの講師を務める その2


 メビウス・エンジンは、その後、世界征服をたくらむ、とある秘密結社に知られるところとなり、盗み出されたその技術情報によって、彼らの所有する水陸両用戦艦“轟天号”に搭載されたのでありました。しかし、資金不足のために、なかなか世界征服は進まず、今でもアルバイトとして轟天号を使った旅客輸送業を行なって機会をうかがっているようであります。
 その後、松戸博士は恒星間では効率の落ちるメビウス・ドライブに変わってディーン・ドライブの原理を発見しますが、完成は遅れたのでありました。なぜなら、全く理由の分からない波動エンジンが先に実用化されたからであります。波動エンジンは、博士がオーブンでパイを焼いているときに、部屋が散らかっていたために混入したダイオードやいくつかの金属片によって偶然現れた波動効果による推進装置で、きめ細かいコントロールには不向きなものの、遠距離を航行する宇宙船にはうってつけのものでありました。地球で最初にこれを装備したのが宇宙戦艦ヤマトでありました。そのキットは、近くのシュレーディンガー商会で入手することができます。
 さて、松戸博士はディーン・ドライブの研究を進め、ついに1989年にワゴン車型の宇宙船りんご丸を完成させたのでありました。処女航海でクリューガー60という恒星に向かった博士は、そこで地球型可住惑星p2を発見しました。研究資金の出資者の一人である、とある不動産業者のアイディアで、その惑星を整備してクランベリーヒルと名づけて売り出しました。博士は以後、研究資金には困らなくなりました。現在、博士は研究拠点をクランベリーヒルの猿雅荘に移しています。
 さて、この30年間の宇宙開発のテンポは極めて急速でありました。1947年にアメリカの実業家、ケネス・アーノルドがUFOを目撃したときには、異星人の進んだ科学に人類は太刀打ちできないかと思われておりました。しかし、今、アダムスキー型UFOをご覧ください。(ここで、ポロ、写真のフリップを提示)いかがでしょうか。いかにも旧式という感じであります。実際、旧式なのであります。彼らは未だにメビウス・ドライブを用いており、松戸博士のディーン・ドライブに比べると、性能は数段劣ると言わざるを得ません。
 NASAでは、宇宙探査機そのものの性能は素晴らしいものを作っていますが、未だに化学ロケットという線香花火の親戚のような推進原理に頼っています。これは、UFO以下であります。NASAが松戸博士の存在に気づけば地球の宇宙開発も激変するのでありましょうが、世の中には、自らの功績を発表することに興味がない人間もいるということを忘れてはなりません。
ご静聴、ありがとうございました。

 ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち!


おしまい


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NASAの前に、日本政府が気づかないのが悲しい所です…でも公になってしまうと、心ない人達の手で、せっかくのランベリーヒルの美しい自然が破壊されてしまうかも?世界が松戸博士を知るのは、地球の自然と共存する事が出来るようになってからでも、決して遅くはないと思います。 / みた・そうや ( 2004-08-03 12:47 )

2004-08-02 ポロの日記 2004年8月1日(風曜日)夏のおでかけ その1

夏のおでかけ その1


 風曜日の午後、せんせいが買い物に行くというので、ポロも一緒に連れていってもらいました。いつもの駐車場にクルマを停めて、ポロとせんせいは空を仰いで深呼吸しました。

「せんせい、空が高いね」
「ああ、1億円くらいかな」
「しょっぱ〜い! ジョークの道は険しんだよ、せんせい」
「じゃあ、ポロだったらなんて言うんだい?」
「わあ、手が届かないよ〜!」
「・・・・・。それってジョークか?」
「・・・ジョークの道は険しいって言ったでしょ!」

 人ごみに向かうので、ポロは、せんせいのショルダーバッグに入りました。

「せんせい、スリッパ買いに行くの?」
「ああ、そういえばそろそろ新しいものに取り換えようか」
「せんせい、今日は和菓子屋さんも行くよね」
「行く予定はないよ」
「予定はなくても行くよね」
「どうして予定がなくても行くんだ?」
「それが和菓子の道っていうもんだからだよ〜、やだなあ、せんせい」
「じゃ、気が向いたら」
「わ〜い。ぜったい気が向くよね」

 駅前から続く大通りの並木のけやきが青々として、ポロはなんだか幸せな気持ちになりました。さくら草どおりに入ると、小さな人だかりができていました。ほんの20人くらいの人だかりの中心にはピエロのような派手なコスチュームの大道芸人が何かやっていました。

「あ、せんせい。あの人テレビで見たことあるよ」
「ああ。ピーター・フランクルさんていう数学者だよ」
「え゛〜〜! どうして数学者の人が大道芸やってるの〜?」
「大道芸人でもあるからだよ」
「え゛〜〜! どうして大道芸人が数学者やってるの〜?」
「両方の才能があって、両方に誇りを感じているからだよ」
「あ゛〜〜! あれはジャグリングっていうんだ。すごいすごい! 本物だあ〜!」
「ああ、すごいね」
「あ、せんせい、見て見て。数学の本並べて売ってる!」
「たとえ有名人でも、こうやって、こまめに稼ぐような気持ちがなくちゃいけないんだなあ」
「ハイ、ソコノ フクワジュツ ノ ヒト」
「え? 私ですか?」
「ワタシヨリ オモシロイコト ヤラナイデ〜!」
「あ、失礼しました」

 ピーターさんに話しかけられて、せんせいは“おお、しまった!”というような大げさな身振りでおどけてみせると人だかりから離れました。周囲からどっと笑い声が沸きおこりました。

「ポロ、声が大きいよ」
「でも、せんせい大ウケしてたからいいじゃないか〜」
「それとこれとは違うよ」
「それよりさ、せんせい」
「なんだい?」
「コビト星人のテレビクルーがさ、ピーターさんの芸をこっそり取材してたよ」
「なんだ、コビト星人て?」
「ホントの名前は知らないんだけどさ、テレビの中に入ってきてご当地ニュースを流す宇宙人なの」
「そんなのがいるのか?」
「うん、ポロも最近知ったの。みかんちゃんちのテレビの中にいた」
「どんな番組やるんだい?」
「ポロのニュースとか、町内の天気予報とか。あ、そだ。ポロのタバコ野原のリサイタルの録画を流してた」
「じゃ、今日のピーターさんの番組はどこで放送されるんだろうね」
「ポロの考えじゃ、ピーターさんちだね」
「いいテレビ局だなあ」
「でも、どうやって経営しているんだ。スポンサーはついているのか?」
「うん。いろんなマルエツがスポンサーやってるよ」
「マルエツは宇宙人と通じているのか」


つづく

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2004-08-01 ポロの日記 2004年8月1日(風曜日)夏のおでかけ その2

 夏のおでかけ その2


 それから、せんせいは楽器屋さんで楽譜を買うと、ポロの入っているショルダーバッグにガサゴソとうるさいポリ袋ごと放り込みました。

「わ、せんせい、狭いよ!」
「ちょっとぐらい我慢しろ」
「何の楽譜?」
「ベートーヴェンのピアノコンチェルト第4番だ」
「なんで、そんな楽譜買うの?」
「4番だけ、どこかへ行っちゃったんだ」
「いい曲?」
「いい曲だ。中学生の時に初めて聴いたんだが、第3楽章の冒頭部分はバルトークかと思ったくらいビックリしたもんだ」
「ふ〜ん、ポロも聴いてみたくなった」

 お店を出ると、だんだん日も傾いてきて、涼しくなってきました。
 日曜日の夕方だというのに、いつもに比べると人通りは少ない感じでした。やっぱり夏は出歩く人が減るのだなあと思いました。

「ねえ、せんせい。空がきれいだよ」
「きれいだね。吸い込まれそうだ」
「こんな空の下でさ、よ〜っく冷えた水ようかんを食べたくない?」
「別に」
「・・・・・・・じと」
「ウソだよ、ちょっとからかっただけ。ほら、そこの和菓子屋さんに行こう」
「わ〜!」

 せんせいは奥さんの分も買いました。
 ショルダーバッグの中に水ようかんの箱も入ってきましたが、不思議なことに少しも狭くなった感じがしませんでした。おまけに、空の色も木々の葉の色も、もっともっときれいに見えました。

「せんせい、なんだか幸せだねえ〜。ポロは、幸せってなんだか分かっちゃうような気がするな〜、今日は」
「そうか。それはよかったね」

 せんせいが愛車ユードラのエンジンをかけると、エンジン音はミケランジェリの弾くドビュッシーのように聴こえてきました。せんせいの運転は、まるでミヒャエル・シューマッハが恋人を乗せて公道を走るときは、きっとこうに違いないと思わせるような絹のなめらかさでした。

「せんせい。今日のユードラは、まるでロールスロイスみたいだよ」
「水ようかんひとつで、実に安上がりだね」
「ああ、せんせいがポロの専属運転手に見えてきた」
「はい、どちらまで参りますか?」
「うん。城までやってくれ」
「うわっ、社長じゃなくて王様か」

 それから、せんせいとポロは工房に帰り着くまで、どちらが何を言っても笑い転げていたのでした。


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2004-07-27 ポロの日記 2004年7月25日(風曜日)テレビのひみつ その1

テレビのひみつ その1


 せんせい門下で小学6年生のみかんちゃんがお家で留守番をするというので、さびしくないようにポロが遊びに行きました。

「ごめんくださ〜い!」

 奥の方からみかんちゃんの弾くドビュッシーが聴こえてきました。返事がないので、ポロは勝手に上がり込んでピアノの部屋へ行きました。すると、いきなりフォルテになったのでポロはびっくりして飛び上がりました。それに気がついたみかんちゃんがピアノを弾く手を止めました。

「あ、ポロ!」
「あ゛〜、びっくりした。みかんちゃん、遊びに来たよ」
「ちょっと待っとってね」

 ふたたび光のような速さで、ドビュッシーの続きをノーミスで弾ききるみかんちゃんの迫力にポロは圧倒されていました。

 ぱちぱちぱちぱちぱちぱち!

 曲が終わるとポロは力いっぱい拍手しました。みかんちゃんはピアノの前に立って、両手で見えないドレスをつまむ動作をして、腰をちょっと下げて礼をしました。

「ポロも、みかんちゃんみたいにカッコよく弾いてみたいなあ」
「弾けるよ。ポロもなんか弾いてみて」

 ポロは、タバコ野原のリサイタルを思いだして“つぐみの森で”を弾きました。予定の10回をちょっとオーバーして35回つっかえたところで弾ききりました。

「・・・・・・・」
「どうだった、みかんちゃん?」
「・・・・。ん〜〜、今にうまくなるよ。せんせい、ついとるし」

 ポロたちは、みかんちゃんが作ってくれた“ぎゅうにゅうと混ぜるだけ”というデザートを食べながらテレビを見ていました。ところが、どのチャンネルも同じ番組しか映りませんでした。

「またや」
「いつもこうなの?」
「留守番してるときはね」

<大きなマルエツ提供のニュースの時間です。今日、午前10時頃、猫のポロは留守番をしているみかんちゃんのところに遊びに行きました。ピアノでつぐみの森で”を弾きましたが、35回つっかえた模様です>

「え゛〜〜〜〜! ど〜〜いうこと!!!」
「そうなんよ。みかんのことも言うよ、このニュース」
「なんか変だよ、ぜったい変だよ」

 ニュースが終わると、近所のマルエツ提供のアニメ「ぶち猫ジョーンズの冒険」が始まりました。

「あ゛〜! 赤ずきんちゃん気をつけてだ〜!」
「ああ、これなら再放送や。みかん、けっこう気に入っとる」

 そんなことを言いながらも、ポロたちは熱中してみてしまいました。物語は、ジョーンズが停車場で人買いの一人に向かってアカンベーをしたところでto be continuedとなりました。

「あ〜、いいところなのにな」
「いいところで終わるから、みんな次も見るんや」
「そだね」

 続いて天気予報でした。

<ふつうのマルエツ提供の天気予報の時間です。タドタド市りんご町の天気は晴れですが、間もなく通り雨が降るでしょう。その後、天気は回復して再び晴れるでしょう。天気予報をお伝えしました>

「通り雨やて。洗濯物とりこむから、ポロ手伝って」
「うん」

 ポロたちが洗濯物をベランダから部屋の中に入れたとたん、ザーッと雨が降ってきました。

「わ、ホントに雨が降ってきた!」
「とってもよく当たるんや、この天気予報」


つづく

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2004-07-26 ポロの日記 2004年7月25日(風曜日)テレビのひみつ その2

テレビのひみつ その2


 またテレビの前に戻ると、今度は遠くのマルエツ提供の「ピアノのおけいこ」の時間でした。いつの間にか雨も上がったようでした。

<みなさん、ごきげんよう。ピアノのおけいこの時間です。今日はテキスト20ページの“いもむしの踊り”をおけいこしましょう・・・・>

「わ、せんせいの曲だよ、みかんちゃん」
「こないだはバーレスクやった」

 お昼前は3分間クッキングの時間でした。今日はホットケーキでした。あんまりおいしそうだったので、ポロはよだれがたれそうでした。
番組が終わってお昼になると、みかんちゃんがテーブルの上にホットプレートを用意しながら言いました。

「ポロ、ホットケーキ食べる?」
「た、食べる食べる!」

 ポロは感激して心臓が止まるかと思いました。キラリーン! ポロの瞳には10個の星が輝きました。
 みかんちゃんは手際よく粉を混ぜてホットケーキを焼いてくれました。そこにバターを塗って、カナダ森林組合のマークが入ったメープルシロップをたっぷりかけてくれました。一緒においしい紅茶も用意されました。

「ん・・・・・・、んまい!! みかんちゃんは天才だ〜!」
「粉混ぜて焼くだけだもん、ポロにだってできるよ」

 午後の番組は、どこかのマルエツ提供の特別番組<ポロのクランベリーヒル・リサイタル>でした。

「わ゛〜〜! ポロのリサイタルだ〜〜!」

 テレビの中ではポロがヒケールのキャンペーンソングを快調に弾いていました。会場の野ネズミたちも乗りまくっています。

「ポロ、すごいやんか! みかんなんかより、ずっとうまいよ」
「ふふふ。実は、ポロはただの天才ピアニストだったのさ」

 急に気持ちが大きくなったポロは、いつものセリフを言いました。
その時でした。テレビのうしろから、小人が出て何かを拾うと、またテレビに入っていったような気がしました。

「みかんちゃん、今、小人が出てこなかった?」
「見とらん」

 ポロのリサイタルが終わると、みかんちゃんはテレビのスイッチを切りました。みかんちゃんは、またピアノの前に行きました。でも、その時、ポロは見ました。テレビのうしろから、本番を終えたばかりという感じで小人たちがゾロゾロと出てきて、押し入れの奥に消えていったのです。
ポロは急に思いついてベランダに出て、空を見上げました。

 少したつと、案の定、小人星人のテレビ局員が乗っていると思われる小型UFOが飛び立ちました。ポロはバイバーイ!と手を振りましたが、何の返事もありませんでした。


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ミタさん。ポロのパソコンにもコビト星人が住み込んでいて、お話を書いてくれます。 / ポロ ( 2004-07-30 23:27 )
せんせいが、みかんちゃんは見えないドレスの裾をつまんだりしないしないって言いました。だって、したんだもん。 / ポロ ( 2004-07-30 23:25 )
子人さん、パソコンの中にも居ますよね。暑いと大変なのか、時々ダウンします。 / みた・そうや ( 2004-07-30 12:47 )
「またや」「いつもこうなの?」「留守番してるときはね」 みかんて、ホントにこんな子なんよな〜。そのまま受け入れる、ゆーかぁー。ポロもみかんのこと、よーく解っとんやな〜。 / みかんのかーちゃん ( 2004-07-29 15:02 )

2004-07-25 ポロの日記 2004年7月23日(電曜日)女神さまの逆襲 その1

女神さまの逆襲 その1


「ポロ、きのう変な曲書いちゃったよ」
「せんせい、自分で書いといて何言ってるの」
「いやあ、あんまり変な曲なんで、どうしてこんなの書いたのかわからないんだよ」

 そこへ女神さまがいつもと違う感じで現れました。ちょっと緊迫した様子です。

「わ、女神さまじゃないか〜」
「ポロちゃん、何か変わったことはなかった?」
「何もないよ。せんせいが変な曲書いちゃったみたいだけど、いつものことだよ」
「それよ、それだわ。ポロちゃん何か覚えてない?」
「う〜ん、何も覚えてないけど」

 すると、女神さまはいきなりポロのほっぺを平手でパシパシたたきました。

「いたたたた! 女神さま痛いよ。それは女王様のすることだよ」
「変なこと知ってるわね、何か思い出したかしら?」
「そ、そ〜いえば夕べ女神さまが来て・・・・」
「それで?」
「女神さまは矢印しっぽだった」
「それよ! あたしのにせ者だわ」

 女神さまは、今度はせんせいのほっぺをパシパシ平手打ちしました。

「いてててて! 女神さま何をするんですか」
「とむりんせんせい、何か思いださなくて?」
「そう言えば、きのう来た女神さまはデーモン族の味方をするような言い方をしていたような・・」

 それを聞いて、ポロはいろいろなことを思い出しました。

「そだ! あのね、女神さま」
「なに、ポロちゃん?」
「ポロはきのう、デーモン族と人間の区別がつくデーモンセンサーでデーモン族の夜店を見つけて行ってきたの」
「それで?」
「うん、1億円の札束を5000円で売ってた」
「そうだったの。デーモン族のやり口よ。なんとかしなくちゃならないわ」
「どうするの?」
「これでも、あたし神さまよ、まかせてちょうだい。あなたたちはくれぐれもデーモン族に近づかないでね」
「神さまって、何でもできるんでしょ」
「まあ、たいていのことはね。でも相手も同じような力を持っている場合は、そうもいかないことがあるけど。じゃあね」

 女神さまは急いでいたので、ポロたちの記憶を消すのを忘れていました。おまけに、今まで忘れさせた記憶もパシパシって思いださせてくれたのでした。

「せんせい。ポロいろんなこと思いだしたよ。ポロは神さまの気持ちになったこともあるんだ」
「どんなだった?」
「銀河と素粒子を同時に見ている気分。そして、悲しみに満ちている感じ」
「神さまって悲しい気持ちなのか」
「ひょっとしたらあきらめかも知れないし、孤独かも知れないな」
「忘れないうちに、それを書き留めておくんだ」
「うん、そうするよ」

 その頃、女神さまはシュデンガンガー商会の店内にいました。

修士「はい、いらっしゃいませ。申し訳ございませんが、ただいま準備中でございます。明後日の夜には開店いたしますので、また起こしくださいませ」
女神「そんな悠長なこと言っていられないのよ」

 女神さまが修士さんの近くによって耳元で何かささやくと、修士さんはたちまち女神さまのいいなりになってしまいました。

修士「はいはい。こちらがデーモンセンサーでございます。どうぞお使いください」
女神「ありがと。あたしにもデーモン族の見分けはつくのよ。でもね、楽なほうが仕事がはかどるわ。じゃ、お借りするわ」
修士「吉報をお待ちしております」


つづく

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2004-07-24 ポロの日記 2004年7月23日(電曜日)女神さまの逆襲 その2

女神さまの逆襲 その2


 女神さまは、普通のOLの姿になって神田の町に出ました。

女神「デザイン悪いわねえ。恥ずかしくってこんなゴーグルかけられないわよ」

 そういうと、神通力でステキなサングラスに変えてしまいました。

女神「これでいいわ」

 デーモンセンサーを通して見た風景に女神さまは驚きました。街ゆく人の半分くらいがデーモン族だったのです。ひとりふたりなら女神さまの力のほうが上ですが、これだけ多くなるとお手上げでした。

女神「どうしたものかしらね」

 女神さまはポロのところに戻りました。

「ポロちゃん」
「わ、誰かと思えば女神さま。カッコいいよ、そのサングラス」
「ちょっと変装してるのよ」
「どうだった? デーモン族をやっつけたの?」
「それがね、街ゆく人の半分がデーモン族になっちゃってるのよ。どうして今まで気がつかなかったのかしら。迂闊だったわ」
「ひゃあ、それは大変だね」
「こうなったら方法はひとつしかないわ」
「どういう方法?」
「デーモン族の総務部人事課に忍び込んで異動辞令を書き直すのよ」
「え゛〜〜〜!?」
「サンタクロースの人事異動みたいなものよ」
「そういえば、猫の星の歴史教科書にサンタクロースの人事異動の話がのってた」
「そうそうそれそれ」
「でも、どうやって書き直すの?」
「ポロちゃんが忍び込んで、ニセの辞令を大量に作って発送するのよ」
「え゛〜〜! ポロは、そんなことできないよ〜」
「あたしだとね、すぐに見破られちゃってセキュリティーラインを越えられないの。でも、ポロちゃんなら大丈夫。猫だから。まさか猫がコンピュータを操作できるとは思わないわ」
「で、できるかなあ?」
「できるわ。あたしがついてるもん」
「で、どこにあるの? デーモン族の総務部人事課」
「そうね。宇宙を4次元球だとすると、その地下よ」
「・・・・・・? ま、いいや。やってみるよ」

 ポロは女神さまといっしょにタキオン化すると、宇宙全体にひろがり、あまねく存在しました。そして、中性子星のすぐ近くの宇宙空間に実体化しました。

「うわ。なんだかまぶしいよ」
「銀河系から100億光年くらい離れたところにある銀河の中よ。あの小さな星は中性子星なの。まわりでかがやいている円板状の雲みたいなのがアクリエーション・ディスク(降着円盤)といってね、光っているのは中性子星に落ち込んでいる部分。ポロちゃんは、あの降着円盤に沿って中性子星に降りてもらうわ」
「や、やだよ〜! コワいよ〜!」
「4次元の地下に降りるにはそれしか方法がないのよ」
「やだよ〜、コワいよ〜!」

 ポロは女神さまに爪を立ててしがみつきました。

「じゃ、この飴あげるわ」

 ポロは、こんな時でも飴の誘惑に勝てずにポイと口に入れました。
 たちまち勇気が湧いてきて、何だかやれそうな気がしてきました。

「女神さま、なんだかやれそうな気がしてきたよ!」
「そう。エラいわ、ポロちゃん」
「この飴おいしいよ、なんて言う飴?」
「“ヤレール”っていうお薬なのよ」
「へえ、どこで買ったの?」
「デーモン族の夜店よ」
「・・・!!」

 ポロは詳しい説明を聞くと、女神さまの作り出した力場(フィールド)に守られて降着円盤の内側に向かいました。

「ヤッホー! 女神さま聞こえる?」
「聞こえるわよ、ポロちゃん」
「まるでサーフィンみたいだよ、だんだん速くなってくる! ヒューヒュー!!」
「楽しそうね」
「サイコーだよ! 宇宙一の波だ!」


つづく

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四次元球体の底って…過去なのかな?って、女神様もデーモン族の夜店でお買い物ですか〜!(笑) / ミタ・ソウヤ ( 2004-07-24 07:58 )

2004-07-23 ポロの日記 2004年7月23日(電曜日)女神さまの逆襲 その3

女神さまの逆襲 その3


 ポロは中性子星に近づく途中で、超強力なX線が放射される領域に女神さまの言っていた隙間を見つました。

「あったよ〜! 女神さまの言ってた隙間だよ。じゃあ行ってくるね!」
「そこに入ったら、もう話はできないわ! あとは自分の判断でお願いよ〜!」
「うん!」

 ポロは空間の隙間にスルリと入り込みました。
すると、そこはデーモン族の役所の総務部人事課でした。

「まあ、かわいい猫ちゃん!」

 人事課のお姉さんがポロを見つけて抱き上げました。

「ごろにゃあごろにゃあ〜♪」

 ポロは、ふつうの猫のふりをして愛想をふりまきました。お姉さんはコピー用紙が入っていた段ボールの箱にポロを入れると、冷蔵庫からミルクを持ってきてくれました。

「ん、んまい!」
「あら、猫ちゃん何か言った?
「ん、んにゃあ!」

 ポロは必死にごまかしました。ちょうど昼休みになったらしく、課員たちが一斉に部屋からいなくなりました。お姉さんも「ちょっとの間いいこにしててね」と言って、お昼を食べに行きました。
 ポロは、すぐに近くの端末の前に座ると、キーボードを叩き始めました。

「ピアニスト、ポロの力を見よ! あ、いけない、このキーじゃなかった。あ、また間違えた」

 結局ポロは、ピアノと同じくらいの実力で50回しか打ち間違えないで辞令フォーマットにたどり着きました。あとは、いま地球に配属されているデーモン族の名簿から全員の名前をペーストして、新しい転勤先を記入すればおしまいです。

「転勤先はどうしようかな」

 考えても分からないので、名簿の後ろにある配属先を適当にコピーしてはペーストして、100万人分のニセ辞令を作成、すぐにメールにして送信しました。
 ここからの脱出方法は簡単。人事課の出口から出るだけです。

「うまくいったよ〜、女神さま!」

 女神さまは、降着円盤から少し離れた宇宙空間で待っていてくれました。

「エラいわ〜、ポロちゃん! 地球の英雄よ」

 ちゅっ!

 女神さまは、ポロのほっぺにキスしてくれました。

「ははは、なあに、ポロはただの英雄ですよ。バイエル79番ならまかせてください」

 ぽ〜っとなったポロは、思わずわけのわからないことを口走りました。

「さあ、帰るわよ」

 ポロと女神さまはタキオンになりました。




「せんせい」
「なんだい?」
「たいくつだね〜」
「いや、そうでもないぞ。問題は、どうしてこんな変な曲を書いてしまったかだ」
「そんなの、せんせいのせいじゃないか〜。それより、どうして日常っていうのは、こうも退屈なんだろう」
「英雄でもないかぎり波乱万丈とはいかないよ」
「いいな英雄。ポロが英雄だったらさ、地球の危機を救ってさ、すてきなお姫さまがほっぺにちゅっ!」
「なに夢みたいなこと言ってるんだ」
「だって、そんなこと一生なさそうだもん」
「しかし、どうしてこんな曲書いちまったんだ?」
「せんせい。そんなこと忘れてさ、なんか面白いことしようよ」
「よし、作曲しよう!」
「もう、ポロ、ついていけないよ〜」

 せんせいとポロが、全てをすっかり忘れてしまったのを見届けると、ポロが記憶のあるうちに書いたメモを持って女神さまはそっと帰っていきました。



ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

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わ、ログインしないでツッコミを入れたら、マークが違っちゃったけど下の書き込みはニセポロじゃないよ!(ポロプロジェクトのポロは本物っぽいから要注意) / ポロ ( 2004-07-24 09:46 )
ミタさん、そういうのをボカしておくのを“伏線の技術”っていうんだよ!(技術文書キットより)  こんどミタさんのおうちに女神さま(しっぽつきだけど)を派遣しときま〜す。 / ポロ ( 2004-07-24 08:47 )
デーモン族の異動先が気になります・・・単に地球の違う地域に異動しただけだったりして?(^^; / みた・そうや ( 2004-07-24 08:01 )

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