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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-07-24 ポロの日記 2004年7月23日(電曜日)女神さまの逆襲 その2
2004-07-23 ポロの日記 2004年7月23日(電曜日)女神さまの逆襲 その3
2004-07-22 ポロの日記 2004年7月22日(草曜日)デーモンセンサー その1
2004-07-21 ポロの日記 2004年7月22日(草曜日)デーモンセンサー その2
2004-07-20 ポロの日記 2004年7月22日(草曜日)デーモンセンサー その3
2004-07-19 ポロの日記 2004年7月17日(風曜日)ポロのクランベリーヒル・リサイタル その1
2004-07-18 ポロの日記 2004年7月17日(風曜日)ポロのクランベリーヒル・リサイタル その2
2004-07-17 ポロの日記 2004年7月17日(風曜日)ポロのクランベリーヒル・リサイタル その3
2004-07-16 ポロの日記 2004年7月17日(風曜日)ポロのクランベリーヒル・リサイタル その4
2004-07-11 ポロの日記 2004年7月11日(風曜日)つぐみの森で


2004-07-24 ポロの日記 2004年7月23日(電曜日)女神さまの逆襲 その2

女神さまの逆襲 その2


 女神さまは、普通のOLの姿になって神田の町に出ました。

女神「デザイン悪いわねえ。恥ずかしくってこんなゴーグルかけられないわよ」

 そういうと、神通力でステキなサングラスに変えてしまいました。

女神「これでいいわ」

 デーモンセンサーを通して見た風景に女神さまは驚きました。街ゆく人の半分くらいがデーモン族だったのです。ひとりふたりなら女神さまの力のほうが上ですが、これだけ多くなるとお手上げでした。

女神「どうしたものかしらね」

 女神さまはポロのところに戻りました。

「ポロちゃん」
「わ、誰かと思えば女神さま。カッコいいよ、そのサングラス」
「ちょっと変装してるのよ」
「どうだった? デーモン族をやっつけたの?」
「それがね、街ゆく人の半分がデーモン族になっちゃってるのよ。どうして今まで気がつかなかったのかしら。迂闊だったわ」
「ひゃあ、それは大変だね」
「こうなったら方法はひとつしかないわ」
「どういう方法?」
「デーモン族の総務部人事課に忍び込んで異動辞令を書き直すのよ」
「え゛〜〜〜!?」
「サンタクロースの人事異動みたいなものよ」
「そういえば、猫の星の歴史教科書にサンタクロースの人事異動の話がのってた」
「そうそうそれそれ」
「でも、どうやって書き直すの?」
「ポロちゃんが忍び込んで、ニセの辞令を大量に作って発送するのよ」
「え゛〜〜! ポロは、そんなことできないよ〜」
「あたしだとね、すぐに見破られちゃってセキュリティーラインを越えられないの。でも、ポロちゃんなら大丈夫。猫だから。まさか猫がコンピュータを操作できるとは思わないわ」
「で、できるかなあ?」
「できるわ。あたしがついてるもん」
「で、どこにあるの? デーモン族の総務部人事課」
「そうね。宇宙を4次元球だとすると、その地下よ」
「・・・・・・? ま、いいや。やってみるよ」

 ポロは女神さまといっしょにタキオン化すると、宇宙全体にひろがり、あまねく存在しました。そして、中性子星のすぐ近くの宇宙空間に実体化しました。

「うわ。なんだかまぶしいよ」
「銀河系から100億光年くらい離れたところにある銀河の中よ。あの小さな星は中性子星なの。まわりでかがやいている円板状の雲みたいなのがアクリエーション・ディスク(降着円盤)といってね、光っているのは中性子星に落ち込んでいる部分。ポロちゃんは、あの降着円盤に沿って中性子星に降りてもらうわ」
「や、やだよ〜! コワいよ〜!」
「4次元の地下に降りるにはそれしか方法がないのよ」
「やだよ〜、コワいよ〜!」

 ポロは女神さまに爪を立ててしがみつきました。

「じゃ、この飴あげるわ」

 ポロは、こんな時でも飴の誘惑に勝てずにポイと口に入れました。
 たちまち勇気が湧いてきて、何だかやれそうな気がしてきました。

「女神さま、なんだかやれそうな気がしてきたよ!」
「そう。エラいわ、ポロちゃん」
「この飴おいしいよ、なんて言う飴?」
「“ヤレール”っていうお薬なのよ」
「へえ、どこで買ったの?」
「デーモン族の夜店よ」
「・・・!!」

 ポロは詳しい説明を聞くと、女神さまの作り出した力場(フィールド)に守られて降着円盤の内側に向かいました。

「ヤッホー! 女神さま聞こえる?」
「聞こえるわよ、ポロちゃん」
「まるでサーフィンみたいだよ、だんだん速くなってくる! ヒューヒュー!!」
「楽しそうね」
「サイコーだよ! 宇宙一の波だ!」


つづく

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四次元球体の底って…過去なのかな?って、女神様もデーモン族の夜店でお買い物ですか〜!(笑) / ミタ・ソウヤ ( 2004-07-24 07:58 )

2004-07-23 ポロの日記 2004年7月23日(電曜日)女神さまの逆襲 その3

女神さまの逆襲 その3


 ポロは中性子星に近づく途中で、超強力なX線が放射される領域に女神さまの言っていた隙間を見つました。

「あったよ〜! 女神さまの言ってた隙間だよ。じゃあ行ってくるね!」
「そこに入ったら、もう話はできないわ! あとは自分の判断でお願いよ〜!」
「うん!」

 ポロは空間の隙間にスルリと入り込みました。
すると、そこはデーモン族の役所の総務部人事課でした。

「まあ、かわいい猫ちゃん!」

 人事課のお姉さんがポロを見つけて抱き上げました。

「ごろにゃあごろにゃあ〜♪」

 ポロは、ふつうの猫のふりをして愛想をふりまきました。お姉さんはコピー用紙が入っていた段ボールの箱にポロを入れると、冷蔵庫からミルクを持ってきてくれました。

「ん、んまい!」
「あら、猫ちゃん何か言った?
「ん、んにゃあ!」

 ポロは必死にごまかしました。ちょうど昼休みになったらしく、課員たちが一斉に部屋からいなくなりました。お姉さんも「ちょっとの間いいこにしててね」と言って、お昼を食べに行きました。
 ポロは、すぐに近くの端末の前に座ると、キーボードを叩き始めました。

「ピアニスト、ポロの力を見よ! あ、いけない、このキーじゃなかった。あ、また間違えた」

 結局ポロは、ピアノと同じくらいの実力で50回しか打ち間違えないで辞令フォーマットにたどり着きました。あとは、いま地球に配属されているデーモン族の名簿から全員の名前をペーストして、新しい転勤先を記入すればおしまいです。

「転勤先はどうしようかな」

 考えても分からないので、名簿の後ろにある配属先を適当にコピーしてはペーストして、100万人分のニセ辞令を作成、すぐにメールにして送信しました。
 ここからの脱出方法は簡単。人事課の出口から出るだけです。

「うまくいったよ〜、女神さま!」

 女神さまは、降着円盤から少し離れた宇宙空間で待っていてくれました。

「エラいわ〜、ポロちゃん! 地球の英雄よ」

 ちゅっ!

 女神さまは、ポロのほっぺにキスしてくれました。

「ははは、なあに、ポロはただの英雄ですよ。バイエル79番ならまかせてください」

 ぽ〜っとなったポロは、思わずわけのわからないことを口走りました。

「さあ、帰るわよ」

 ポロと女神さまはタキオンになりました。




「せんせい」
「なんだい?」
「たいくつだね〜」
「いや、そうでもないぞ。問題は、どうしてこんな変な曲を書いてしまったかだ」
「そんなの、せんせいのせいじゃないか〜。それより、どうして日常っていうのは、こうも退屈なんだろう」
「英雄でもないかぎり波乱万丈とはいかないよ」
「いいな英雄。ポロが英雄だったらさ、地球の危機を救ってさ、すてきなお姫さまがほっぺにちゅっ!」
「なに夢みたいなこと言ってるんだ」
「だって、そんなこと一生なさそうだもん」
「しかし、どうしてこんな曲書いちまったんだ?」
「せんせい。そんなこと忘れてさ、なんか面白いことしようよ」
「よし、作曲しよう!」
「もう、ポロ、ついていけないよ〜」

 せんせいとポロが、全てをすっかり忘れてしまったのを見届けると、ポロが記憶のあるうちに書いたメモを持って女神さまはそっと帰っていきました。



ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

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わ、ログインしないでツッコミを入れたら、マークが違っちゃったけど下の書き込みはニセポロじゃないよ!(ポロプロジェクトのポロは本物っぽいから要注意) / ポロ ( 2004-07-24 09:46 )
ミタさん、そういうのをボカしておくのを“伏線の技術”っていうんだよ!(技術文書キットより)  こんどミタさんのおうちに女神さま(しっぽつきだけど)を派遣しときま〜す。 / ポロ ( 2004-07-24 08:47 )
デーモン族の異動先が気になります・・・単に地球の違う地域に異動しただけだったりして?(^^; / みた・そうや ( 2004-07-24 08:01 )

2004-07-22 ポロの日記 2004年7月22日(草曜日)デーモンセンサー その1

デーモンセンサー その1


 ポロは、久しぶりにシュデンガンガー商会に出かけました。今日は店休日でしたが、松戸博士が新しい商品のテストをやっているはずだと教えてくれたからです。

「あ、これはポロ様いらっしゃい。兄からおいでになることは伺っておりました。ささ、どうぞ」
「おじゃましまーす!」
「こちらが兄の新作、デーモンセンサーでございます」
「コワい名前だねえ。何ができるの?」
「本体をベルトで身体に固定して、このゴーグルを装着すると、デーモン族が見えるのでございます」
「デーモン族なんているの?」
「はい、たしかに」
「どんな悪いことするの?」
「悪いことといいますか、たとえばガード下などで夜店を開いて1億円などを売っております」
「え゛〜、1億円を1億2千万円で売ってるとか?」
「いえいえ、そうではございません。5000円くらいでしょうか」
「なんだ、子ども銀行券か〜」
「本物でございます」
「それじゃ、商売にならないじゃないか〜!」
「はい、彼らにコスト感覚はございません。それは問題ではないのでございます」
「じゃあ、なにが問題なの?」
「はい。デーモン族は人間の不幸が喜びというか、エネルギーらしいのです」
「ポロ、1億円が5000円で買えたら幸せだけどなあ」
「たしかに、そんな気もいたします。ところがデーモン族の店では、ひとりが一生に一度だけしか買えないものがございまして、1億円の札束もそうなのです」
「ポロ、1億円だったら一度で十分だなあ」
「ではポロ様。お伺いしますが、1億円を持った人間が覚えるのはどんなことでしょうか」
「なんだろ? 1億円の重さかな」
「お金の使い方です」
「そっか」
「お金の使い方を覚えると、どんどんお金はなくなっていきます。1億円などと聞くと多そうですが、使い始めればあっという間です」
「そーなのか〜」
「お金が底をついた時、残るのは浪費癖だけです。以後、借金地獄が待っているというわけです」
「こ、コワい話だねえ」
「はい、これはほんの一例に過ぎません」
「でもさ、デーモン族を見つけてどうするの? デーモンみたいなコワい連中、退治できるの?」
「はい、ご心配なく。デーモン族はとても臆病なのです。自分がデーモン族であると見破られただけで怯えて死んでしまう者がいるほどです。だから自分から人間に危害を加えようなどとは思ってもいません。人間が自滅するのを待っているだけなのです」
「へえ、いじいじしたヤツだね」
「それがデーモン族というものです」
「全然コワくなくなってきたな、ポロ。あのさ、ポロがそのセンサーのテストやってあげるよ」
「さようでございますか。それは助かります」

 ポロは、さっそくデーモンセンサーを装着、006P電池をぱちんとつないで、ゴーグルをかぶりました。

「なんだか、昔のSF映画のようでございますよ」
「うひゃあ、ちょっとカッコ悪いかも」
「売り出すときには、もう少しデザインを工夫しなければ」
「ま、いいや。行ってくるね」

 ポロは夜の神田の町に飛びだしました。目指すはガード下や地下道です。中央線の線路下に行ってみました。すると、先が矢印のようになったしっぽの生えたおばあさんがガード下の路上にお店を広げていました。ポロは、ゴーグルをはずして野良猫のふりをして近づきました。

「おや、ニャンコちゃん、お散歩かい?」

 デーモン族のおばあさんはポロに声をかけました。ポロはしゃべれないふりをして、ゴロゴロいいながら並べられた商品を確かめました。


つづく

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2004-07-21 ポロの日記 2004年7月22日(草曜日)デーモンセンサー その2

デーモンセンサー その2


 あ゛〜、ホントに札束が置いてある。手書きのポップには「一億円(真札)/5000円」と書いてありました。修士さんの言ったとおりだなあ、なんて思っていると「お好み焼きの素/100円」「ホワイトソースの素/100円」なんかもありました。こんなのも人を不幸にするのでしょか。

「おや、おまえさん、背中に何をしょってるんだい?」

 ポロは、それを聞いて、そそくさとその葉を逃げ出しました。
次に向かったのは、小さな公園です。公園と言ってもベンチがあるだけの小さな広場でした。そこにも矢印のしっぽのおじいさんがお店を広げていました。

 ごろごろにゃ〜ん。

 ポロが近づいていくと、たいくつそうなデーモン族のおじいさんはニコニコしながらポロを迎えてくれました。
 売られている商品を見て、ポロはびっくりしました。ポップにはこう書かれていました。

“飲めば誰でもピアノが弾ける、その名も「ヒケール」”

 大変だ〜。ヒケールは人を不幸にするのかも!
よく見ると、絵が描けるようになる“カケール”やお話が書ける“ホラフケール”も売っていました。
 ポロは、もうテストは十分だと思ったのでシュデンガンガー商会に戻りました。

「た、ただいま〜!」
「おお、いかがでしたか?」
「いたよ、いた。デーモン族は矢印しっぽが生えてるからすぐに分かったよ」
「そうでございますか。しっぽが見えるのですね」
「1億円売ってたよ。5000円だった」
「ほ〜、やはり安いですね」
「それから、ヒケールも売ってた。やっぱりあれはデーモン族にそそのかされた研究者が開発したんだね」
「そうですか」
「あとね。よく分からないんだけど、どういうわけか“お好み焼きの素”や“ホワイトソースの素”っていうの売ってた。あれは、だれも不幸にならないと思うけど」
「いえ、それらを使ってお好み焼きやホワイトソースを作った人は、自分で作る技術を失なうからではないでしょうか」
「そっか。そういうことか」
「今のポロさまのお話を伺うと、デーモン族がかなり深く人間社会に浸透してきていることがわかりました。人がさまざまな技術を失う方向に進んでいる分野はデーモン族が進出しているということかも知れません」
「そっか。なんだか分かってきた。せんせいも、前にそんなようなこと言ってた」
「さようでございますか。さすがとむりんせんせいでございますね」
「ポロ、一度帰るよ。このデーモンセンサーはすごいって松戸博士に伝えといてね」

 ポロは、せんせいと話すために作曲工房に向かいました。

 ポロが作曲工房に戻ったのは夜中の3時でした。せんせいの仕事部屋の明かりがついていたので、入っていきました。
 すると、せんせいは女神さまから助言を受けながら作曲しているところでした。

女神「あ〜ら、ポロちゃん、息を切らせてどうしたの?」
とむ「ポロ、こんな夜中に何か大変なことでもあったのか?」
ポロ「せんせい、女神さま、そうなんだよ。お好み焼きの素やヒケールを売ってるんだ」
とむ「それがどうかしたのか?」
ポロ「矢印のしっぽが生えててね。ホワイトソースを作れなくしちゃうんだ」
女神「矢印のしっぽって、デーモン族のことかしら?」
ポロ「そだよそだよ。女神さま知ってるの?」
とむ「なんのことやら、さっぱり分からん」


つづく

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2004-07-20 ポロの日記 2004年7月22日(草曜日)デーモンセンサー その3

デーモンセンサー その3


 ポロは、もう一度順序だてて今日の出来事を話しました。でも、女神さまの反応はポロがびっくりするような内容でした。

女神「ポロちゃん、あたしはずっと昔からデーモン族を知っているわよ。悪いことなんて何もしてないわ」
ポロ「ぎょえ〜〜〜! 女神さま、何言ってんのさ、あいつらに騙されて不幸になる人がいっぱいいるんだよ」
女神「騙してるかしら?」
ポロ「え?」
女神「デーモン族は嘘をついているかしら?」
ポロ「??????」
女神「1億円は本当の1億円だし、お好み焼きの素も本物のはずよ」
ポロ「そういえば、ダマしているわけじゃないかも」
女神「ローマ帝国の滅亡のきっかけを作ったのはデーモン族かも知れないわ。でも、デーモン族がいなくてもローマ帝国の人々は滅びたに違いないの」
とむ「どういうことなんだ?」
ポロ「あのね、修士さんの話によると、5000円で1億円の札束を買った人はお金の使い方だけを覚えて破産しちゃうらしいんだ。ホワイトソースの素を使う人は、自分でホワイトソースが作れなくなっちゃうし。だから、ポロはデーモン族は悪いやつらだと思うんだよ。でも、女神さまは悪くないって」
とむ「そうか。それなら悪くない」
ポロ「え゛〜〜、せんせいまで。あ、女神さまの色香に迷ったな〜」
とむ「もちろん、当然だ。迷いまくりに決まってる。だが、それを差し引いても悪くない」
ポロ「どーしてだ〜?」
とむ「では、無人島に5人の人が流れ着いたとする。そこにヤシの木が一本あって4つのヤシの実がなっていたとする。どうする?」
ポロ「5人で分けるよ」
とむ「では、それがとても大きな無人島で、一人で歩いているときに4つのやしの実を見つけた。ポロはどうする?」
ポロ「ヤシの実ジュースを飲んじゃうかも」
とむ「何億年もかかって蓄積された化石燃料を人類はたった100年で使い切ろうとしているが、どう思う?」
ポロ「そうか。未来の人にも権利があるのに、見てないから使っちゃうんだね」
とむ「人類は英知を持っているかと思えば、デーモン族とやらにそそのかされなくても十分な愚かさも持ちあわせている」
ポロ「そうか、デーモン族は人類の習性を利用しているのか」
女神「お店を出しているのは歳をとったデーモン族よ。若くて力のあるデーモン族は化学企業の研究者にいろいろな化学物質の製法を教えたり、軍事産業により強力な兵器のアイディアを伝えているわ。でも、それらはすべて本物よ。核兵器だって本物。一度も騙したことはないわ」
ポロ「ふーん、結局は人間の問題だという気もしてきな、ポロてきに」
女神「じゃ、そろそろあたし帰るわ。とむりんせんせい、がんばってね〜、傑作期待してるわ〜!」

 そう言って女神さまがふりかったとき、目の前の女神さまのすてきなヒップから伸びる、見えない矢印しっぽの先がポロに当たったような気がしました。

「あ゛〜〜〜〜! 女神さまはデーモ・・・・・」

 でも、ポロはそこで全てを忘れなければなりませんでした。


おしまい(続編あります)


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

先頭 表紙

2004-07-19 ポロの日記 2004年7月17日(風曜日)ポロのクランベリーヒル・リサイタル その1

ポロのクランベリーヒル・リサイタル その1


 ポロの“クランベリーヒル・リサイタル”も近づいてきた電曜日、せんせいのグランド・ピアノを真空乾燥するために門前仲町ディラック商会の移動真空チェンバー車が作曲工房にやってきました。

「学士(がくじ)さん、お久しぶり!」
「これはポロ様。お元気そうで何よりです」
「グランドピアノの真空乾燥ってホントだったんだね〜!」
「さようでございます。今回は、あちらで湯もどしではなく、特殊な溶剤を使っていただきます。一定時間後に揮発性を持つようになる溶剤でして、調合しだいでご希望の日時に乾燥状態に逆戻りいたします」
「へえ〜、すっごいねえ。それなら持って帰ってこられるね」

 作曲工房に横付けされた真空チェンバー車から長いダクトが延ばされて、三階のピアノ室の窓へと接続されました。ピアノ室では、せんせいのピアノのうちの一台が樹脂製の大きな袋のようなものに覆われていました。袋とダクトがつながってスイッチが入ると、ピアノはみるみる小さく軽くなっていきました。

「では、リサイタルの成功をお祈りしております」
「アリガト、学士さん!」

 真空専門ディラック商会とペイントされた、焼き立てパンの巡回販売車のようなトラックは外環自動車道に向けて走り去りました。

 その晩、松戸博士がリンゴ丸でポロを迎えに来てくれました。

「ポロどん、準備はいいかの?」
「わ、博士! すぐに出発なの?」
「そうじゃ。さあ、行こう!」

 ポロは、小さくなったグランドピアノとレッド・ツェッペリン号を積み込むとリンゴ丸に乗り込みました。

 クランベリーヒルに到着したのは、明けて岩曜日の深夜でした。朝になって朝食を済ませると、ロケット号がタバコ野原のコンサート会場に案内してくれました。そこには6帖ほどの広さの、フタを取った箱を横倒しにしたような開放型の特設ステージが用意されていました。ポロは、まるで模型のようなグランドピアノをステージに置くと、溶剤を光曜日の朝に揮発するように調合して上からかけました。
しゅわーっと音がして、どんどんピアノが大きくなりました。

「カッコいいなあ〜!」
「ぴゆぴゆ!」

 ポロたちは、元の大きさに戻ってぴかぴか光るグランドピアノをしばらく眺めていました。それから、ポロはヒケールがなくても弾ける「つぐみの森で」を50回しかつっかえすに弾きました。

「ぴゆぴゆ・・」

 ロケット号は、ちょっと心配そうに拍手してくれました。
 それからポロたちは、博士が印刷してくれたコンサート案内パンフレットを空から付近一帯にまくためにレッド・ツェッペリン号にヘリウムを充填しました。パンフレットは一週間で自然に分解して土にかえるエコペーパーに植物色素で印刷してあります。パンフレットは、ぜんぶ図と絵だけで描かれていて誰にでも分かるようになっています。日時はクランベリーヒルの月の位置で示されていました。

つづく

先頭 表紙

ピアノって、乾燥すると小さくなるのですね?心配そうに拍手するロケット号が可愛いです。リサイタル…どんな人達が集まるのでしょう?楽しみ♪ / みた・そうや ( 2004-07-18 19:07 )

2004-07-18 ポロの日記 2004年7月17日(風曜日)ポロのクランベリーヒル・リサイタル その2

ポロのクランベリーヒル・リサイタル その2


 ポロとロケット号と3000枚のパンフレットを積んだレッド・ツェッペリン号は、正午近くのクランベリーヒルの空にどっこいしょという感じで浮かび上がりました。重くて高度がとれないので、人口密度は低いものの、近所の森やオンディー沼のまわりにもどんどんパンフレットをまきました。一番の目的地はオラクルベリーです。ところが、町並みが見えてきたころにロケット号がパンフレットの残りがほとんどないことに気づきました。

「ぴゆぴゆ!」
「わ、しまった。景気よくまきすぎた!」

 仕方がないので、ポロたちはビルの店“マイクロソフト”に残った一枚を貼らせてもらって、ソフトクリームを食べてタバコの野原に戻りました。こうして岩曜日は過ぎていきました。
 その晩遅く、レッスンを終えたせんせいを松戸博士がクランベリーヒルに運んできました。

「せんせい!」
「やあ、ポロ。準備はできたかい?」
「ぴゆぴゆ!」
「あ、ロケット号も元気でやってるようだね」
「ぴ〜ゆぴゆ!」

 夜遅いのに、ポロとせんせいはそんなことをぜんぜん気にしないで月明かりのタバコ野原でリハーサルを始めました。ヒケールを使わない曲は、本気で練習しないと心配です。ポロは、とくいの「たこたこ上がれ」をせんせいと何度も連弾しました。もう、ばっちり。これはダイじょぶです。問題は「つぐみの森で」です。ポロは、何度も何度もくりかえし練習しました。
 その時、遠くのタバコの葉の陰で一匹の野ネズミピアノの音に耳を傾けていたことにポロは全然気がつきませんでした。野ネズミは、ネコのポロがこわくてじっと隠れていたのです。

 夜が明けてコンサート当日の風曜日になりました。ポロは、夕べの寝不足がたたってなかなか起きることができませんでした。ロケット号が起こしてくれたとき、もう、陽は傾いて、開演一時間前の午後5時でした。

「わ、たいへんだ! コンサートが始まっちゃう!」

 ポロは、毛並みを整えて蝶ネクタイをするとタバコ野原の特設ステージに向かいました。客席には松戸博士とロケット号とせんせいだけがいました。ま、開演まであと30分あるさ。開演10分前、まだ誰も来ません。ポロはだんだん心配になってきました。やっぱり人の住んでいない森にパンフレットをまいたのが失敗だったかも。
 開演直前、上空にカミナリのような音が響きました。なんと、それは三河屋デリバリーサービスのノストロモ号でした。ノストロモ号は、排気が演奏会場に流れ込まないように遠くの丘の斜面に着陸しました。それでもタバコ野原には強い風が吹き荒れました。大きなタバコの葉がめくれあがるほどでした。すると、どうでしょう。タバコの葉の陰には数えきれないくらいの野ネズミがコンサートを聴きにきていたのです。


つづく

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野ねずみ君達、ポロさんが怖かったのですね?なんだか可愛い子達ですね。(^^) / みた・そうや ( 2004-07-18 19:11 )

2004-07-17 ポロの日記 2004年7月17日(風曜日)ポロのクランベリーヒル・リサイタル その3

ポロのクランベリーヒル・リサイタル その3


 姿を見せてしまった野ネズミたちは大パニックになって、右往左往しているようでした。

「ぴゆぴゆ! ぴゆぴゆ!」

 ロケット号が「大丈夫、あのネコは君たちを食べないよ」(ポロの推測)と言って、野ネズミたちを安心させてくれました。
 ポロは大変な数の聴衆を前に演奏することに感激しました。ほどなくノストロモ号から降りてきた是輔(これすけ)さんが赤いバラの花束を持ってやってきました。

「ポロさん、おめでとうございます」
「わ、是輔さんアリガト!」

 開演時刻になったので、ポロは演奏を始めることにしました。ポロはがステージに立ってモーツァルトのように颯爽(さっそう)と礼をすると、さわさわという野ネズミたちの小さな拍手が聞えてきました。
 最初はリストの超絶技巧練習曲から第4番「マゼッパ」です。ポロは、用意したヒケールをこっそりと飲み込むと5つ数えました。

 1、2、3、4,5・・・ドかちゃかドかちゃかドかちゃかドかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん・・・・

 わ! 違うぞ、これはヒケールのキャンペーンソングじゃないか!

 ドかちゃかドかちゃかドかちゃかドかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん・・・・

 わあ、止まらないよ〜! ポロが弾きたいのはこの曲じゃないんだ〜!

 3分たって演奏が終わると、会場から野ネズミたちの感動のうねりが聴こえてきました。さわさわという野ネズミの拍手が鳴り止みません。
 ポロは、次のヒケールを用意しました。次はラヴェルの「夜のガスパール」から第3曲“スカルボ”のはずです。今度こそ、と5つ数えました。

 1、2、3、4,5・・・ドかちゃかドかちゃかドかちゃかドかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん・・・・

 あ〜、やっぱり販促用ヒケールでした。ところが、野ネズミたちは、アンコールに応えてくれたと思ったらしく、始まった途端に拍手の嵐が起こりました。

「ぴゆぴゆ、ぴゆぴゆ!」

 ロケット号も気に入ったらしく、興奮していました。

 ドかちゃかドかちゃかドかちゃかドかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん・・・・

 そう思ってよく聴くと、このキャンペーンソングも楽しくていい曲に思えてきました。

 ・・・わ〜、いい曲じゃないか〜! なんていい曲なんだ〜!・・・

 ポロは、さっきと打って変わってノリまくりの演奏になりました。ちらっと客席を見ると、是輔さんとロケット号が踊っていました。野ネズミたちもタバコの葉の陰から姿を表して熱狂しているようでした。演奏が終わると、1回目よりももっと大きな拍手が沸き起こりました。せんせいも松戸博士もいっぱい拍手してくれました。
 ポロは3曲目の「イスラメイ」をキャンセルして、名曲「たこたこ上がれ」を弾くことにしました。せんせいがステージ上がってきて、ポロと並んでピアノに向かいました。
 それはポロにとって最高の演奏でした。野ネズミたちはしんみりと聴き入っていました。


つづく

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2004-07-16 ポロの日記 2004年7月17日(風曜日)ポロのクランベリーヒル・リサイタル その4

ポロのクランベリーヒル・リサイタル その4


 演奏が終わるとしばらく静かでしたが、間もなく割れんばかりの大拍手がさわさわと沸き起こりました。
 ここでせんせいが、ポロに松戸博士とロケット号の連弾をポロに提案しました。

「え? 2人ともピアノ弾けるの?」
「うん、まあね」

 さっそくポロは2人をステージに招きました。ロケット号がプリモ、松戸博士がセコンドの椅子に座りました。ロケット号は念力で鍵盤を操作します。
 2人は、しんみりとしたとってもステキな曲を弾き始めました。

「せんせい、なんていう曲?」
「ザリガニ池の雨だよ」
「いい曲だね〜。誰が作ったの?」
「詳しいことは分からないが、ツトムというカエルらしい」
「へえ〜、天才だね。ポロ、ネコとしては負けていられないよ」

 それからポロは「つぐみの森で」を、ポロてき大記録のたった10回つっかえただけで弾ききりました。アンコールには大好きなバイエルの75番を弾きました。拍手の中、空を見上げるとクランベリーヒルの2つの月が並んで輝いていました。

「いやあ、ポロさん最高でしたよ」

 是輔さんはポロに握手すると、じゃ、まだ配達が残ってますんで、と言ってノストロモ号で宇宙に戻っていきました。
 森に戻っていく野ネズミたちに、ポロは手を振り続けました。野ネズミたちも何度も振り返りながら遠ざかっていきました。

「ねえ、せんせい」
「なんだい」
「まあ、ポロの予想としては、こういう時は次の日にね、野ネズミたちが木の実だとかさ、水晶だとかをさ、いっぱい持ってきてここに積み上げていくんだよね。感動てきだなあ」
「まあ、おとぎ話だとそういうこともあるけど、現実はどうかな。あまり期待しないで待っていようじゃないか」
「そんな、水をさすようなこといわないでよ」
「おとぎ話では主人公がこういうことを全く期待していないからプレゼントは感動的なんだ」
「そっか。しまった。予想しちゃいけなかったじゃないか〜」

 次の朝、特設ステージに行ってみると、ピアノが乾燥状態に戻って小さくなっていました。どこにも木の実や水晶はありませんでした。

「せんせいの言ったとおりだね、ゲンジツは」
「でも野ネズミたちは、きっと昨日のことは忘れないよ」
「だといいけど」
「ポロが忘れなければいいだけさ」
「さあ、帰ろう」

 せんせいは午後からレッスンなので、松戸博士がポロたちをリンゴ丸で地球まで送り届けてくれました。

 その3日後、松戸博士から連絡がメールが届きました。そこには、毎朝、猿雅荘の玄関前にドングリが何十個も届けられていると書いてありました。

「せんせい、ポロの勝ちだよ」
「ああ、いい話だね。私の負けだ。また、弾きに行かなくちゃ」
「うん、来年も弾くよ。ポロ、今度こそマジメにピアノを練習するぞ。音楽は人生の全てだ!」
「ああ、分かった分かった。今回は3日くらいは続きそうだね」
「あ、せんせい、信じてないでしょ。今度はホントだよ。今こそ確信したね。ポロはピアノを弾くために生まれてきたんだ」
「ああ、期待してるよ」
「あ、やっぱり信じてないでしょ」
「ま、ちょっとは期待してるよ」
「ホントなんだから」
「分かった分かった・・」

 ポロは本気なのに、せんせいはとうとう信じてくれませんでした。みなさんは信じてくれますよね。


おしまい


ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

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来年はみんなを招待して下さいね。あ、もちろん野ねずみ君達も一緒に♪ / みた・そうや ( 2004-07-19 18:53 )

2004-07-11 ポロの日記 2004年7月11日(風曜日)つぐみの森で

つぐみの森で


「ねえ、アンジュちゃん」
「なあに、ポロちゃん」
「あのさ、もう一回“つぐみの森で”を弾いてよ」
「いいよ」

 ポ〜ンポロン♪ ポポポポポロ〜ンポロン♪

「んんんんん〜、いっいなあ〜〜〜」

 ポロンポロン〜♪

「そんなにいい?」
「サイコ〜だよ、サイコ〜」
「そう、ありがとう」

 ポロポロポン、ポロポロポン、ポロポロポロポ〜ン♪

「はい、おしまい」
「アリガト。ポロは幸せだよ、今、サイコーに幸せだなあ」
「そうね。いい感じかも」
「アンジュちゃんのおかげだよ」
「あたしも“つぐみの森で”は大好き」
「今度はポロが弾く」
「うん、聴かせて」

 ポ〜ン、えっと、ポン・・・それから、えっとポロ〜ンポン・・♪

「う、うまくいかない・・・」
「だいじょうぶ。“つぐみの森で”に聴こえるよ」
「へたくそに弾いてもいい曲だなあ」
「ポロちゃん、今日は、どうしちゃったの?」

 ポロポロリ〜ン♪

「たまには、ポロだって感傷的になるのさ・・・、あ、また間違えた・・」
「ポロちゃんのピアノ、下手ウマって言うか、なんて言うか、いい味だと思うよ」
「お世辞なんかいらないよ」
「下手ウマなんていう言葉じゃお世辞にならないでしょ。本当に、なんだか物悲しい感じが出てるのよ」
「うらぶれた感じでしょ。どうせポロは裏街道まっしぐらの人生さ」
「ふ〜ん。裏街道なんてカッコいいじゃない」
「そう言われてみると、裏街道を歩くのはもっとコワモテの人たちのような気がしてきた。ポロにはケモノ道がお似合いかも・・ポロポロリ〜ン♪」
「ポロちゃん、今日は本当にどうしちゃったの?」
「なんでもないよ・・・・。あのさ、アンジュちゃん、もう一回だけ“つぐみの森で”を弾いてくれる?」
「いいけど」
「わ、うれしいな」

 ポ〜ンポロン♪ ポポポポポロ〜ンポロン♪

「んんんんん〜、やっぱ、いっいなあ〜〜〜」

 ポロは、用事で出かけたせんせいに頼まれた留守番もしないで、とうとう一日中アンジュちゃんのピアノのそばで過ごしたのでした。


おしまい


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