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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-07-17 ポロの日記 2004年7月17日(風曜日)ポロのクランベリーヒル・リサイタル その3
2004-07-16 ポロの日記 2004年7月17日(風曜日)ポロのクランベリーヒル・リサイタル その4
2004-07-11 ポロの日記 2004年7月11日(風曜日)つぐみの森で
2004-07-05 ポロの日記 2004年7月4日(風曜日)初演コンサートの夜 その1
2004-07-04 ポロの日記 2004年7月4日(風曜日)初演コンサートの夜 その2
2004-07-02 ポロの日記 2004年6月30日(波曜日)ポロの夢日記 その1
2004-07-01 ポロの日記 2004年6月30日(波曜日)ポロの夢日記 その2
2004-06-30 ポロの日記 2004年6月30日(波曜日)ポロの夢日記 その3
2004-06-14 ポロの日記 2004年6月8日(熱曜日) 黒船来航 その1
2004-06-13 ポロの日記 2004年6月8日(熱曜日) 黒船来航 その2


2004-07-17 ポロの日記 2004年7月17日(風曜日)ポロのクランベリーヒル・リサイタル その3

ポロのクランベリーヒル・リサイタル その3


 姿を見せてしまった野ネズミたちは大パニックになって、右往左往しているようでした。

「ぴゆぴゆ! ぴゆぴゆ!」

 ロケット号が「大丈夫、あのネコは君たちを食べないよ」(ポロの推測)と言って、野ネズミたちを安心させてくれました。
 ポロは大変な数の聴衆を前に演奏することに感激しました。ほどなくノストロモ号から降りてきた是輔(これすけ)さんが赤いバラの花束を持ってやってきました。

「ポロさん、おめでとうございます」
「わ、是輔さんアリガト!」

 開演時刻になったので、ポロは演奏を始めることにしました。ポロはがステージに立ってモーツァルトのように颯爽(さっそう)と礼をすると、さわさわという野ネズミたちの小さな拍手が聞えてきました。
 最初はリストの超絶技巧練習曲から第4番「マゼッパ」です。ポロは、用意したヒケールをこっそりと飲み込むと5つ数えました。

 1、2、3、4,5・・・ドかちゃかドかちゃかドかちゃかドかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん・・・・

 わ! 違うぞ、これはヒケールのキャンペーンソングじゃないか!

 ドかちゃかドかちゃかドかちゃかドかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん・・・・

 わあ、止まらないよ〜! ポロが弾きたいのはこの曲じゃないんだ〜!

 3分たって演奏が終わると、会場から野ネズミたちの感動のうねりが聴こえてきました。さわさわという野ネズミの拍手が鳴り止みません。
 ポロは、次のヒケールを用意しました。次はラヴェルの「夜のガスパール」から第3曲“スカルボ”のはずです。今度こそ、と5つ数えました。

 1、2、3、4,5・・・ドかちゃかドかちゃかドかちゃかドかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん・・・・

 あ〜、やっぱり販促用ヒケールでした。ところが、野ネズミたちは、アンコールに応えてくれたと思ったらしく、始まった途端に拍手の嵐が起こりました。

「ぴゆぴゆ、ぴゆぴゆ!」

 ロケット号も気に入ったらしく、興奮していました。

 ドかちゃかドかちゃかドかちゃかドかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん・・・・

 そう思ってよく聴くと、このキャンペーンソングも楽しくていい曲に思えてきました。

 ・・・わ〜、いい曲じゃないか〜! なんていい曲なんだ〜!・・・

 ポロは、さっきと打って変わってノリまくりの演奏になりました。ちらっと客席を見ると、是輔さんとロケット号が踊っていました。野ネズミたちもタバコの葉の陰から姿を表して熱狂しているようでした。演奏が終わると、1回目よりももっと大きな拍手が沸き起こりました。せんせいも松戸博士もいっぱい拍手してくれました。
 ポロは3曲目の「イスラメイ」をキャンセルして、名曲「たこたこ上がれ」を弾くことにしました。せんせいがステージ上がってきて、ポロと並んでピアノに向かいました。
 それはポロにとって最高の演奏でした。野ネズミたちはしんみりと聴き入っていました。


つづく

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2004-07-16 ポロの日記 2004年7月17日(風曜日)ポロのクランベリーヒル・リサイタル その4

ポロのクランベリーヒル・リサイタル その4


 演奏が終わるとしばらく静かでしたが、間もなく割れんばかりの大拍手がさわさわと沸き起こりました。
 ここでせんせいが、ポロに松戸博士とロケット号の連弾をポロに提案しました。

「え? 2人ともピアノ弾けるの?」
「うん、まあね」

 さっそくポロは2人をステージに招きました。ロケット号がプリモ、松戸博士がセコンドの椅子に座りました。ロケット号は念力で鍵盤を操作します。
 2人は、しんみりとしたとってもステキな曲を弾き始めました。

「せんせい、なんていう曲?」
「ザリガニ池の雨だよ」
「いい曲だね〜。誰が作ったの?」
「詳しいことは分からないが、ツトムというカエルらしい」
「へえ〜、天才だね。ポロ、ネコとしては負けていられないよ」

 それからポロは「つぐみの森で」を、ポロてき大記録のたった10回つっかえただけで弾ききりました。アンコールには大好きなバイエルの75番を弾きました。拍手の中、空を見上げるとクランベリーヒルの2つの月が並んで輝いていました。

「いやあ、ポロさん最高でしたよ」

 是輔さんはポロに握手すると、じゃ、まだ配達が残ってますんで、と言ってノストロモ号で宇宙に戻っていきました。
 森に戻っていく野ネズミたちに、ポロは手を振り続けました。野ネズミたちも何度も振り返りながら遠ざかっていきました。

「ねえ、せんせい」
「なんだい」
「まあ、ポロの予想としては、こういう時は次の日にね、野ネズミたちが木の実だとかさ、水晶だとかをさ、いっぱい持ってきてここに積み上げていくんだよね。感動てきだなあ」
「まあ、おとぎ話だとそういうこともあるけど、現実はどうかな。あまり期待しないで待っていようじゃないか」
「そんな、水をさすようなこといわないでよ」
「おとぎ話では主人公がこういうことを全く期待していないからプレゼントは感動的なんだ」
「そっか。しまった。予想しちゃいけなかったじゃないか〜」

 次の朝、特設ステージに行ってみると、ピアノが乾燥状態に戻って小さくなっていました。どこにも木の実や水晶はありませんでした。

「せんせいの言ったとおりだね、ゲンジツは」
「でも野ネズミたちは、きっと昨日のことは忘れないよ」
「だといいけど」
「ポロが忘れなければいいだけさ」
「さあ、帰ろう」

 せんせいは午後からレッスンなので、松戸博士がポロたちをリンゴ丸で地球まで送り届けてくれました。

 その3日後、松戸博士から連絡がメールが届きました。そこには、毎朝、猿雅荘の玄関前にドングリが何十個も届けられていると書いてありました。

「せんせい、ポロの勝ちだよ」
「ああ、いい話だね。私の負けだ。また、弾きに行かなくちゃ」
「うん、来年も弾くよ。ポロ、今度こそマジメにピアノを練習するぞ。音楽は人生の全てだ!」
「ああ、分かった分かった。今回は3日くらいは続きそうだね」
「あ、せんせい、信じてないでしょ。今度はホントだよ。今こそ確信したね。ポロはピアノを弾くために生まれてきたんだ」
「ああ、期待してるよ」
「あ、やっぱり信じてないでしょ」
「ま、ちょっとは期待してるよ」
「ホントなんだから」
「分かった分かった・・」

 ポロは本気なのに、せんせいはとうとう信じてくれませんでした。みなさんは信じてくれますよね。


おしまい


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来年はみんなを招待して下さいね。あ、もちろん野ねずみ君達も一緒に♪ / みた・そうや ( 2004-07-19 18:53 )

2004-07-11 ポロの日記 2004年7月11日(風曜日)つぐみの森で

つぐみの森で


「ねえ、アンジュちゃん」
「なあに、ポロちゃん」
「あのさ、もう一回“つぐみの森で”を弾いてよ」
「いいよ」

 ポ〜ンポロン♪ ポポポポポロ〜ンポロン♪

「んんんんん〜、いっいなあ〜〜〜」

 ポロンポロン〜♪

「そんなにいい?」
「サイコ〜だよ、サイコ〜」
「そう、ありがとう」

 ポロポロポン、ポロポロポン、ポロポロポロポ〜ン♪

「はい、おしまい」
「アリガト。ポロは幸せだよ、今、サイコーに幸せだなあ」
「そうね。いい感じかも」
「アンジュちゃんのおかげだよ」
「あたしも“つぐみの森で”は大好き」
「今度はポロが弾く」
「うん、聴かせて」

 ポ〜ン、えっと、ポン・・・それから、えっとポロ〜ンポン・・♪

「う、うまくいかない・・・」
「だいじょうぶ。“つぐみの森で”に聴こえるよ」
「へたくそに弾いてもいい曲だなあ」
「ポロちゃん、今日は、どうしちゃったの?」

 ポロポロリ〜ン♪

「たまには、ポロだって感傷的になるのさ・・・、あ、また間違えた・・」
「ポロちゃんのピアノ、下手ウマって言うか、なんて言うか、いい味だと思うよ」
「お世辞なんかいらないよ」
「下手ウマなんていう言葉じゃお世辞にならないでしょ。本当に、なんだか物悲しい感じが出てるのよ」
「うらぶれた感じでしょ。どうせポロは裏街道まっしぐらの人生さ」
「ふ〜ん。裏街道なんてカッコいいじゃない」
「そう言われてみると、裏街道を歩くのはもっとコワモテの人たちのような気がしてきた。ポロにはケモノ道がお似合いかも・・ポロポロリ〜ン♪」
「ポロちゃん、今日は本当にどうしちゃったの?」
「なんでもないよ・・・・。あのさ、アンジュちゃん、もう一回だけ“つぐみの森で”を弾いてくれる?」
「いいけど」
「わ、うれしいな」

 ポ〜ンポロン♪ ポポポポポロ〜ンポロン♪

「んんんんん〜、やっぱ、いっいなあ〜〜〜」

 ポロは、用事で出かけたせんせいに頼まれた留守番もしないで、とうとう一日中アンジュちゃんのピアノのそばで過ごしたのでした。


おしまい


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2004-07-05 ポロの日記 2004年7月4日(風曜日)初演コンサートの夜 その1

初演コンサートの夜 その1


 ポロは、奥さんとたろちゃんと3人でせんせいの新作初演コンサートに行きました。帰りに、ちょっと買い物をして帰る奥さんとタドタド駅前で別れて、たろちゃんとふたりで作曲工房に向かいました。

「たろちゃん、タドタド駅は暑いねえ」
「今夜は、どこも蒸し暑いわよ」
「芸術劇場はいい気持ちだったなあ」
「ポロったらクークー寝ちゃうんだもん」
「そ、それはないしょだよ、たろちゃん。せんせいに言っちゃダメだからね」
「ど〜しよ〜かなあ〜♪」
「わ、いじわるだ。たろちゃんは今日誕生日なのにいじわるだ〜」
「誕生日と何の関係があるのよ〜?」
「あ、そういえばアンジュちゃんも今日が誕生日だ。あ、アメリカも誕生日だ」
「何言ってんのよ」
「あ、見て見て、たろちゃん」
「なに?」
「お月さまが、お寺の屋根に腰かけてる」
「そう見えるだけよ」
「それがさ、そうじゃないんだよ。見つかるとコワイから静かにしててね。ダメだよ、お月さま刺激しちゃ」
「変なこと言わないでよ。月なんてすんごい遠いところで地球のまわりを回ってる岩のかたまりなんだから」
「ホントなんだよ。ホント」
「なによ。お月さまのおたんこなす〜!」
「わあ、だめだよ、聞えちゃうよ〜!」

 その声に気がついたらしく、ごろりん!とお月さまはお寺の屋根を転がって道路に降りてくると、こっちを向いてジロリと睨んでからポロたちを追いかけてきました。

「きゃあ〜、ポロ、何よ。あれ! 追いかけてくる!」
「だから言ったじゃないか〜! はやく逃げるんだ〜たろちゃん!」


つづく

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2004-07-04 ポロの日記 2004年7月4日(風曜日)初演コンサートの夜 その2

初演コンサートの夜 その2


 ごろりんごろりん、ごろごろりん。

 お月さまは道幅いっぱいに転がってきます。こんなシーンをインディ=ジョーンズの映画で見たことあるかも。

「たろちゃん、お月さまは犬に弱いんだ」
「じゃ、犬をけしかけてよ、ポロ」
「ぽ、ポロも犬に弱いんだ」
「じゃ、どうすればいいのよ〜! あたしも犬はダメよ」
「つかまると、おへそ盗られちゃうんだよ〜!」
「きゃあ、おへそはあたしのチャームポイントなんだからあ!」

 くたびれてきて、もう走れないかと思ったとき、目の前にポロの天敵のゴロがいました。ゴロは近所のお店のどう猛な番犬(ホントは小さな豆柴)です。 どうして、鎖から離れてるんだ〜! 

「わ、たろちゃん、前門のオオカミ、後門のトラだよ」
「あたしも、犬は苦手だけど、ゴロのほうが、まだ怖くないわ!」

 そう言うと、たろちゃんはゴロに向かって突進しました。その迫力にゴロはびっくりして吠えるのも忘れて立ちすくんでいました。なにしろ、後ろには大きなお月さまが。
すると、いきなり周囲が静かになりました。周りを見渡すと、お月さまの姿がありません。

「はあ、はあ。あ、お月さまが空に戻ってるよ、ポロ」
「はあ、はあ。あのさ、はあ、はあ。ポロが思うには、お月さまにもカラータイマーがあるんだと思うな、はあ、はあ」
「ゴロの威力よ。はあ、はあ」

 わんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわわん!

 今度は正気に戻ったゴロが、ポロたちを追いかけてきました。
 ポロとたろちゃんは、またまた一目散ににげだしました。へろへろになりながらも、なんとか作曲工房の玄関ドアをくぐりぬけ、無事に帰り着きました。

「あら、あなたたち遅かったわね。どこに寄り道してたのよ」

 先に帰っていた奥さんが、不審そうに言いました。

「ちょっとね、月がきれいだったから回り道しちゃったのよ。はあ、はあ」
「ポロは、したくなかったんだけど、はあ、はあ、ゴロまで追いかけてきたから、はあ、はあ」
「まあ、いいわ。早くお風呂入って」
「そ、そうするよ。たろちゃん、ポロ1階で入るから」
「あ、ありがと。じゃ、あたし2階ね」
「せんせいは、ちゃんと帰ってくるかなあ?」
「あたし、とむりんは、お月さまに向かってなんか言っちゃうと思うな」
「追いかけられると余分な脂肪が落ちていいかも」
「そうね」

 それからしばらくして、せんせいも息を切らせて汗びっしょりで帰ってきました。


おしまい


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ははは〜! / ポロ ( 2004-07-08 11:14 )
「道幅いっぱい」で収まってしまうお月さまって一体・・・ / shin ( 2004-07-06 22:49 )
と、tomlinせんせいまで〜!?一体何を言ったのでしょう? / みた・そうや ( 2004-07-06 15:41 )

2004-07-02 ポロの日記 2004年6月30日(波曜日)ポロの夢日記 その1

ポロの夢日記 その1



・水草月1FH日(画架曜日)

 停電したので電気の缶詰を開けたらカミナリさまが出てきて、ポロのおへそをワシづかみにして逃げていきました。あわてて追いかけて外に飛びだすと上空から小型の乗用雲が降りてきて、カミナリさまはそれに乗って積乱雲めがけて飛んでいきました。ポロは大急ぎで飛行船レッド・ツェッペリン号の出発準備をしましたが、ヘリウムの充填を終えるころには積乱雲はどこかへ去って、ぽかぽかとお日さまが照っているばかりでした。



・水草月21H日(竜骨曜日)

 夜中に近所の公園に散歩に出かけたら、お月さまが桜の木の枝に腰かけてもの思いにふけっていました。

「お月さま、どうしたの?」

 ポロが声をかけると、お月さまは凶悪な表情に変わって言いました。

「おまえが来るのを待っていたんだ!」
「きゃあ〜!」

 ポロは一目散に逃げ出しましたが、お月さまの速いこと速いこと、ポロはあっというまに捕まってしまいました。お月さまはポロのお腹のあたりを探っていましたが、おへそがないことが分かるとポロをポイっと放しました。

「おまえには用などない。あっち行け!」

 それからは、公園の桜の枝でもの想いにふけるお月さまを見ても決して声をかけないことにしました。



・霧月12H日(いるか曜日)

 久しぶりにナマズのポン吉くんのところに遊びに行きました。ポロが味見しちゃったシッポの先もちゃんと元に戻っていました。
「やあ、ポン吉くん」
「あ、ポロじゃないか。やっと直ったんだからもうぼくのこと食べないでよ」
「うん。がまんするよ」
「それより見てよ、ほら」
「わ、ポン吉くん、おへそがあるじゃないか」
「空から降ってきたんだ。お腹にくっつけたらぴったりフィットさ。たぶんカミナリさまの落とし物だよ。カッコいいでしょ」
「いいないいな。ポロさ、おへそ盗られちゃったんだ」
「あげないよ!」
「いいだろ、ちょっとくらい」
「何がちょっとさ、ひとつしかないんだよ、ぼくのおへそ」
「ナマズは、おへそなんかいらないよ!」
「わ、何をするの、ポロ〜」

 ポロがポン吉くんのおへそをつかんだ途端、ビリビリと全身が感電してしびれてしまいました。

「だから、カミナリさまの落とし物だって言っただろ」
「わ〜! ポン吉くんが電気ナマズになっちゃった」


つづく

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曜日・・・16進なのですね / みた・そうや ( 2004-06-30 14:39 )

2004-07-01 ポロの日記 2004年6月30日(波曜日)ポロの夢日記 その2

ポロの夢日記 その2


・枯れ葉月 03H日(南の冠曜日)

 せんせいと、山奥の温泉に行きました。

「奥さんも来ればよかったのにね」
「タヌキが出るからコワいって言ってたな」
「あれ、せんせい、おへそがないよ。そっか〜、せんせいも盗られちゃったのか〜」
「おへそくらい、なくたっていいだろ」
「ポロもないよ。缶詰から出てきたカミナリさまにとられちゃった」
「そうか」
「ポン吉くんはナマズなのに、おへそがあるんだよ」
「ふーん」
「せんせいは、おへそ欲しくないの?」
「べつに」
「ポロは欲しいな、おへそ」
「手に入れる方法が分かればなんとかなるけど、おへそなんていったいどこにあるんだ?」
「マルエツに売ってないかなあ」
「売ってないだろうな」
「そう・・・・」

 ポロは急に悲しくなって、涙がひと粒ポロリと落ちてしまいました。



・ススキ月 1BH日 (巨嘴鳥曜日)

 ポロとせんせいは、望遠鏡で月を見ていました。

「せんせい、見てよ見てよ」
「どうした?」
「お月さまって、おへそだらけだよ」
「クレーターだろ?」
「よく見てよ、あれ絶対おへそだよ」
「う〜ん、そう言われてみればそんなふうにも見えるなあ」
「お月さまはね、ときどき地上に降りてきてはおへそを奪って逃げていくんだ」
「そうなのか」
「おへそをコレクションしてるんだよ」
「そうだったのか」
「ポロね、春日公園でお月さまに襲われたことがあるんだ。でもね、おへそがないからあっち行けって」
「ははは、おへそがないといいこともあるんだな」
「そういう問題じゃないよ」



・桜桃月 1DH日(アンドロメダ曜日)

 ポロはベートーヴェンの伝記を読んでいました。

「せんせい、ベートーヴェンておへそがなかったかも」
「どうしてそんなこと分かるんだ?」
「だってさ、死ぬ前にカミナリさまに向かってコブシを振り上げたって」
「それなら有名な逸話だよ」
「それってさ、オレのおへそを返せ〜っていうベートーヴェンの叫びだったんだよ」
「まさか」
「じゃさ、今の話以上の合理的な理由を200字以内で述べよ。マルも文字数に含めるものとする」
「入学試験みたいだな」
「まじめに答えてよ〜!」



・きつね月 1F日(ポンプ曜日)

 ポロは春日公園にお月さま用のワナをしかけることにしました。お月さまをつかまえたらポロとせんせいの分のおへそを無理やりもらっちゃうつもりでした。
プラスチック粘土で作った実物大のおへそ模型の上に大きなザルを逆さまに伏せて、つっかえ棒で斜めに持ち上げます。つっかえ棒にはヒモを結んで、その端を持ったポロが物陰から様子をうかがっていました。
 その日の夜、誰かがポロの肩をトントンと叩きました。振り返ると、それは薄笑いを浮かべたお月さまでした。ポロは一目散に逃げ出しました。


つづく

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2004-06-30 ポロの日記 2004年6月30日(波曜日)ポロの夢日記 その3

ポロの夢日記 その3


・氷月 2EH日(みずへび曜日)

 タウンページで「義臍専門・ネーブル商会」の広告を見つけました。ポロは全財産の1200えんを持って東武練馬にあるその店に出かけました。

「ごめんくださーい」
「はい、どのようなおへそがお入り用でしょうか」
「どんなのがあるんですか?」
「これが普通のおへそです。そして、こちらはゴマ付きのリアルなもの。ちょっと大きめのゆったりサイズもございます。こちらは、ゴマ20パーセント増量タイプ。金粉入りもございます。こちらはカシスのフレーバータイプ。夜になると発光するナイト2000も人気商品でございます。さらに、こちらはスティーブ・マックィーンのおへそのコピーモデルです」
「へえ、ポロ、スチーブなんちゃらのおへそが気に入ったな。でも、それだとお金足りないから、お金ためたらまた来るね」
「はい、お待ち申し上げております」



・蜜月30H日 らしんばん曜日

 ポロは、おへそを無くした悲しみを分け合おうと思って、もとからおへそのないロケット号に会いに行きました。

「やあ、ロケット号」
「ぴゆぴゆ!」(見て見て!)
「何をだい?」

 ロケット号は自分のお腹を指さしました。そこには、例のスチーブ・なんちゃらのおへそがありました。それを見たポロは、思わず叫びました。

「お、お前なんか友だちじゃないや!」



・つらら月0BH日(ぎょしゃ曜日)

 ポロは何かに応募して賞金を稼いでおへその資金にしようと思い立ちました。すぐに「公募ジャーナル」を買ってきて、ポロにも応募できそうなものを探しました。

“おへそモデル募集”

 これはダメだな。

“おへそでお茶を沸かせる人募集”

 これもダメだな。

“国際おへそコンテスト出場者募集”

 これもダメじゃないか。

“猫のCMモデル急募”

 あ、ポロ、カッコいいし、これならぴったりかも。ところが応募資格のところに「要おへそ」と書いてありました。

 なんだ、おへそがなくちゃ何にもできないじゃないか〜。そう思って、もう一度「公募ジャーナル」の表紙をよく見ると「特集:おへそで稼ぐ」と書いてありました。



・スミレ月07H日帆曜日

「ねえ、おちゃめさん。おへそある?」
「やあねえ、変なこと聞かないでよ」
「ねえ、教えてよ」
「どうしてポロにそんなこと教えなくちゃならないのよ」
「だって、知りたいんだもん」
「あたしはそんなこと言いたくないわ」
「び、びえ〜〜、びえ〜〜!」
「やあね、そんなことで泣かないでよ」

ポロが泣いても、おちゃめさんはおへそのことを教えてくれませんでした。


おしまい


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ミタさん。おちゃめさんもおへそ盗られちゃったからに決まってるよ。 / ポロ ( 2004-06-30 18:36 )
おちゃめさん・・・なぜそこまで隠そうとするのでしょうか?今朝方鳴っていた雷・・・ひょっとして、おちゃめさんが雷の缶詰を・・・ / みた・そうや ( 2004-06-30 14:41 )

2004-06-14 ポロの日記 2004年6月8日(熱曜日) 黒船来航 その1

黒船来航 その1


 威厳のある、という形容詞がぴったりの4隻からなる大型UFO船団が地球に向かって飛行していました。それらの船は銀河連邦が派遣した調査船団でした。
ところが、途中で宇宙嵐に遭遇して4隻とも推進装置とコントロールの一部に被害を受けてしまいました。
 そこを通りがかったのが是輔さんの乗る三河屋のデリバリーシップ、ノストロモ号でした。

是輔  「こちら地球船籍のノストロモ号、聞こえますか?」
UFO旗艦「こちらは、銀河連邦所属サスケハナ号艦長のカレレン。宇宙嵐に遭遇、被害を受けて航行に支障を来している」
是輔  「私は是輔といいます。すぐ近くにあるクリューガー60までなら飛べますか?」
カレレン「なんとかなりそうだが、クリューガー60には宇宙船の修理ができるよう基地があるのか?」
是輔  「基地はないっすけどね、修理くらいならなんとか」
カレレン「我々の認識では未開惑星だが急を要する事態だ。了解した。そちらへ向かう」
是輔  「第2惑星のP2に向かってください。先導します。先に着陸して誘導ビーコンを発信しますから、それに従ってください」


 猿雅荘でポロたちが朝ご飯を食べていると、アンシブルが着信しました。ロケット号がすぐに応対しました。

ロケット「ぴゆぴゆ?」
是輔  「あ、ロケットの兄さん。是輔です。これからちょっと、お客さんを船ごと連れて行きますんで、松戸博士によろしくお伝えください。大型4隻でさ」

 これだけでしたが、松戸博士には通じました。

松戸博士「地球圏のものではない船の修理じゃな」

 ほどなく、轟音とともにタバコ野原にノストロモ号が舞い降りてきました。誘導ビーコンが発射されると、続いて空に巨大なUFOが現れました。さしわたし数キロメートルに及ぶと思われる黒い宇宙船が4隻。順々に広々としたクランベリーヒルの丘の斜面に降りてきました。あまり大きいので4隻目は、はるかかなたに見えました。

ロケット「ぴゆぴゆ〜!」
松戸博士「黒船来航か。こりゃ、壮観だわい」
ポロ  「こ、コワいよ〜」
松戸博士「なあに、大丈夫じゃ。是輔くんが連れてきた客人だからのう」

 博士を先頭に、ポロたちは外へ出ました。

是輔  「博士、突然すみません。どっかの星の船なんですけど、宇宙嵐にやられちゃったみたいで・・」
松戸博士「修理が必要なのじゃろう?」
是輔  「たぶん、そういうことになると思います」

 すると、惑星表面用バギーに乗った宇宙人が4人、ノストロモ号の近くまでやってきました。ひとりの宇宙人が歩み寄って是輔さんと松戸博士の前に立つと、ていねいに礼をしました。ポロは、高貴な人か高位の人だろうと思いました。

カレレン「初めまして。銀河連邦航空宇宙軍のカレレン提督です。旗艦サスケハナ号に乗艦しています」
是輔  「こりゃ、どうも。あっしがノストロモ号の是輔です」
カレレン「見事な誘導、痛み入ります」
松戸博士「わしは松戸博士じゃ。よろしく、カレレンさん」
カレレン「技術者の方ですね」
松戸博士「まあ、そんなようなもんじゃ」
カレレン「宇宙嵐の被害は思いのほか大きく、自力での修理は不可能という報告を受けています」
松戸博士「修理ならお任せくだされ。さっそく故障箇所を見せてくださらぬか」

 ポロは怖くて宇宙人のそばに近づけませんでした。だってカレレンさんの黒い背中には小さな翼があって、おまけに矢印しっぽが生えていたからです。


つづく

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2004-06-13 ポロの日記 2004年6月8日(熱曜日) 黒船来航 その2

黒船来航 その2


カレレン「失礼ですが博士、このような未開惑星に私たちの宇宙船を修理できる設備と技術があるとは思えないのですが・・」
松戸博士「はははは。森と湖ばかりの星では、そう思われてしまうのも無理はないのう。ノストロモ号の動きを追っておったろう。あんたたちの船の数倍もすぐれておったのが分かったはずじゃ」
カレレン「たしかに、そのような動きはしていました。しかし、私たちの調査では、この星は未開の原始惑星のはず」
松戸「じゃが、10年ほど前から地球の植民星じゃ」
カレレン「地球も未開文明の惑星のはず」
松戸博士「あんたたちが調査したのはいつのことじゃ?」
カレレン「地球の公転周期で100年ほど前」
松戸博士「はっはっは。確かに、その頃は未開じゃった。人類は100年であんたたちを追い抜いた」
カレレン「そんなばかな」
松戸博士「事実じゃ。あんたたちは、母星を出てから100年くらい経っておるということじゃな」
カレレン「まさしく、そのとおり」
松戸博士「地球では、それは、あんたたちの宇宙船がドンガメのように遅いことを意味しておる」
カレレン「まさか。サスケハナ号は宇宙最速の宇宙船だ」
松戸博士「是輔君」
是輔  「はい、なんでしょう博士」
松戸博士「提督をノストロモ号に乗せて地球をちょいと往復してきてくれんかの?」
是輔  「ワープ8ですね」
松戸博士「そうじゃ」
是輔  「おやすいご用です」
松戸博士「カレレンさん、あんたのサスケハナ号だと、地球まで6年かかるんじゃないだろうか」
カレレン「そうです」
松戸博士「じゃあ、ちょっとノストロモ号に乗って、わしらの技術水準を体験してみてはいかがじゃろか。部下の技術将校も連れていくといい」
カレレン「私は船団を離れるわけにはいかない。技術将校3名を行かせよう」

 ノストロモ号は、宇宙人のエンジニア3人を乗せて空に消えました。

松戸博士「さあロケット号。ノストロモ号が帰ってくるまでに波動エンジンを焼き上げるんじゃ」
ロケット「ぴゆぴゆ!」
松戸博士「ポロどんも手伝っておくれ」
ポロ  「うん、いいよ。ポロも波動エンジンキットを組み立てたことあるよ」
松戸博士「そうじゃったな」

 それからポロとロケット号は、小麦粉をこねたりダイオードを揃えたりして波動エンジンを4基作りました。松戸博士はサスケハナ号の故障箇所を調べて、猿雅荘のキッチンに戻ってきました。

松戸博士「どうじゃな、できたか?」
ポロ  「できたよ。とってもおいしそうだよ!」
松戸博士「おう、こんがり焼けていい出来上がりじゃ」
ポロ  「サスケハナ号はどうだった?」
松戸博士「美術的には、なかなか美しい船じゃったが、いかんせん旧式のポンコツだ。冷凍睡眠航法は時間の無駄というものじゃ」
ポロ  「ほかの船は?」
松戸博士「全部フレガット級という銀河連邦では最新最高の船らしい。残りはミシシッピ号、プリマス号、サラトガ号とか言っておった」
ポロ  「でもさ、ちょっとカッコいいよね、大きいし」
松戸博士「さまざまな装置の小型化に失敗した悪い例じゃ。小型化に失敗すると資源も無駄にするものじゃ」

 ほどなくノストロモ号が戻ってきました。技術将校たちは興奮した様子でカレレン提督に報告しました。
 カレレン提督が猿雅荘に来て言いました。


つづく

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