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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-06-06 ポロの日記 2004年6月5日(岩曜日)クランベリーヒルの休暇 旅立ち編その1
2004-06-05 ポロの日記 2004年6月5日(岩曜日)クランベリーヒルの休暇 旅立ち編その2
2004-05-26 ポロの日記 2004年5月25日(熱曜日)ボンビーと一緒 その1
2004-05-25 ポロの日記 2004年5月25日(熱曜日)ボンビーと一緒 その2
2004-05-24 ポロの日記 2004年5月25日(熱曜日)ボンビーと一緒 その3
2004-05-23 ポロの日記 2004年5月21日(電曜日)ポロ・プロジェクトふたたび その1
2004-05-22 ポロの日記 2004年5月21日(電曜日)ポロ・プロジェクトふたたび その2
2004-05-21 ポロの日記 2004年5月21日(電曜日)ポロ・プロジェクトふたたび その3
2004-05-20 ポロの日記 2004年5月20日(草曜日) 飛行船を持っていない人のために
2004-05-19 ポロの日記 2004年5月17日(光曜日)ポロのすてきな飛行船 その1


2004-06-06 ポロの日記 2004年6月5日(岩曜日)クランベリーヒルの休暇 旅立ち編その1

クランベリーヒルの休暇 旅立ち編その1


 ポロは、せんせいにお休みをもらってクランベリーヒルに行くことにしました。松戸博士に連絡すると、迎えに来てくれました。
夜遅く、博士の自動車型宇宙船りんご丸は作曲工房の玄関先に降り立ちました。

「やあ、ポロどん。待たせたかな?」
「博士、こんばんは! 全然待たなかったよ」
「後ろの貨物室に飛行船を乗せてハーネスで固定するんじゃ。確かレッド・ツェッペリン号じゃったな」
「そだよ、鉛で飛ばないっていう意味。ヘリウムを抜いてあるからこんなにコンパクトだよ」
「さあ、乗った乗った。シートベルトを忘れんようにな」

 ポロは博士お手製の、ロケット号のための小さな座席に座ってシートベルトをしめました。

「ねえ、博士。お願いがあるんだけど」
「なんじゃな?」
「あのさ、スペースシャトルと同じ軌道と時間で宇宙に出られる?」
「もちろんじゃよ。AKI、聞いたか?」
「もちろん」

 ダッシュボードからりんご丸の航法コンピュータであるAKI9000の応答がありました。もちろんリンゴ社製です。

「では、スペースシャトルの初打ち上げ時のデータを元に、地球周回軌道に入ります。無理な姿勢になる場合もありますから気をつけてください」

 そういうと、りんご丸はディーンドライブで何十メートルかの高さに浮上して上を向いて静止しました。ポロと博士も座席に座ったまま真上を向く格好になりました。作曲工房なんて、ずっと下の方でした。

AKI「現在の高さが、スペースシャトルコロンビアの第1回打ち上げ時のコクピットの位置です」
ポ「へえ、高いんだねえ」
AKI「では、形だけですがマイナス10秒のカウントダウン後に上昇を開始します」
「わあ、ワクワクするなあ!」
AKI「10・・9・・8・・7・・6・・5・・4・・3・・2・・1・・0、リフトオフ」

 ヒューンという音とともに、りんご丸は上昇を始めました。

「音がないとつまらないよ」

 いきなり、スピーカーからごごごごごごごごごご〜!という音が聞えてきました。

「いいぞいいぞ〜!」

 加速度で背中が座席に押し付けられて、上昇していく感じがなんともステキです。

AKI「ロールを開始します」

 わあ、天井が下向きになっていきます。そう言えば、スペースシャトルって逆さまに飛んでたかも。外を見ると、もう地平線が丸く見えます。地平線に沿って大気がうっすらと青く光っているのが見えました。たった数分で加速が終わって無重力になりました。

AKI「高度230キロ、周回軌道に入りました」
「よし、AKI、ご苦労じゃった。ポロどん、どうかな?」
「うん、すごくよかったよ」
「よし、AKI、クランベリーヒルまで直行だ!」
AKI「ラジャー。ワープ8の許可を願います」
「許可する」

 たちまちスターボウが現れて、ポロたちは外を見てもどこを飛んでいるのか分からなくなりました。


つづく

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2004-06-05 ポロの日記 2004年6月5日(岩曜日)クランベリーヒルの休暇 旅立ち編その2

クランベリーヒルの休暇 旅立ち編その2


「ポロどん、宇宙にはいろいろと行ったかね?」
「うん、行ったよ。こないだなんて、三河屋さんのノストロモ号で天の川まで行ってきた」
「ほう、銀河系外縁部まで行ったのじゃな。それは大したものだ」

 ポロは、海賊船ブラックパールに追われたことや、宇宙嵐やコスモドラゴンのことは黙っていました。

「天の川はきれいじゃったろう?」
「うん、プリオシン海岸に行って水に手を入れてみた」
「そうか。あそこも最近は観光地化が目立つようになった」
「昔はどうだったの?」
「プリオシン海岸駅なんぞは人の乗り降りがなくて、ほとんど開店休業状態じゃったな」
「へえ、今じゃ名物の最中やおまんじゅうを売ってるよ」
「わしも食べてみた。なかなかうまかったわい」
「ポロも好き!」

 2時間くらいすると、周囲に星空が戻りました。前のほうに明るく輝くクランベリーヒルの太陽クリューガー60が見えていました。オート・ティンテッド・シールドという博士の発明した濃さの変わる窓がその眩しさを防いでいます。

「クランベリーヒルのある惑星をわしらはP2などと呼んでおるが、開発業者が最初の分譲地に売れそうな今風の名前をつけたから、一般にはクランベリーヒルなどという安っぽい呼び名になってしまったのじゃ」
「ポロ、けっこう好きだけど」
「どこがいいのか、わしには分からん」
「でもさ、ロケット号っていうネーミングはすごくいいと思うな。ちょっと聞くと土佐犬の雷電号みたいだよね。そうじゃなければ競走馬か警察犬。なのにさ、呼ぶと“ぴゆぴゆ”とかいって、小さなアヒルのスポンジが出てくるの」
「あれは、ちゃんとした理由があるのじゃ」
「どんなのどんなの?」
「ルッコラという野菜を知っておるか?」
「あ、サラダにするやつ」
「そうじゃ。英語ではロケットというんじゃが、その栽培の名人なんじゃ、ロケット号は」
「そうだったのか〜」

 ポロは、初めてロケット号の名前の由来を知りました。ポロは、ずっと空を飛ぶロケットのことだと思っていました。
そうこうするうちに、りんご丸はP2の周回軌道に入りました。

AKI「降下軌道へ移行します。大気圏再突入に備えてください」
「よし、安全第一じゃ」
AKI「了解」

 高度が下がって大気が濃くなるにつれてりんご丸はガタガタと揺れましたが、数分で眼下にはクランベリーヒルのタバコの野原が広がっていました。りんご丸は静かに猿雅荘の玄関前に接地しました。

「AKI、いつもながら見事じゃ」
AKI「ありがとうございます、博士」
「アキちゃん、アリガト!」
AKI「どういたしまして、ポロちゃん」

 リンゴ丸から降りると、ロケット号が出迎えてくれました。

「ぴゆぴゆ!」
「わあ、動くロケット号だ! 元気そうだね」
「ぴゆぴゆ!」

 ポロの休暇は始まったばかりです。


おしまい


ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

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2004-05-26 ポロの日記 2004年5月25日(熱曜日)ボンビーと一緒 その1

ボンビーと一緒 その1


「せんせい、家(うち)の中にこんなのがいた」

がさごそわさわさ

「なんだ、それ」
「ただの茶色い毛糸のかたまりに見えるけど、じつは貧乏神」
「本当か?」
「ぼんびーぼんびー!」
「ね、ホントでしょ。せんせいが貧乏だったのはコイツのせいだったんだよ
「そうか。しかし、貴重だな。初めて見たよ」
「ぼんびーぼんび〜♪」
「ねえ、せんせい、ポロ捨ててくるよ。捨て猫ならぬ、捨てボンビー」
「ちょっと待て」
「え、まさか居候させるなんて言わないよね」
「いや、ここで引き受けようじゃないか」
「え゛〜〜!! せんせい、正気?」
「ああ、たぶん」
「ぼんび〜」
「ポロは反対だよ、ぜったい反対! せんせいの酔狂につきあうなんてヤだよ〜!」
「よく考えてみるんだ。もし、ここで貧乏神を捨てたらどうなる?」
「えっと・・・貧乏神は、どこかほかのおうちに住み着いてめでたしめでたし」
「どこかの家に不幸が舞い込んでめでたいか?」
「そう言われてみると、めでたくないかも・・」
「そうだろ?」
「うん、そうかも」
「いま、ここで大地震が起こって我が家は家とわずかしかない蓄えを全て失ったとする。しかし、家族は全員無事だった。どのくらい不幸だ?」
「なんだか全然不幸じゃないような気がするな。家族の命が助かったんなら、信じられないくらい幸運かも」
「よし、仮に貧乏神のせいで破産したとしても家族は残る。いまの大地震と同じ状況だ。信じられないくらい幸運だろ」
「何言ってんだかわかんないけど、なんだかそんな気がしてきた。問題は奥さんと子どもたちだな」
「ぼんびーぼんびー♪」

晩ご飯の席で、せんせいは家族に貧乏神のボンビーのことを話しました。驚いたことに、全員があっさりとボンビーを受け入れました。ポロはボンビーを拒(こば)もうとした自分の修業の足りなさを今さらながら感じました。中でも海のお兄ちゃんはボンビーがとても気に入ってお風呂に入れてあげました。
お風呂から出たボンビーは、真っ白いふわふわの毛に包まれた、かわいらしいオサルのような姿に変身しました。茶色く汚れていたのは、誰もボンビーの世話をする人がいなかったからなのでした。

ぴ「わあ、ボンビーって可愛いじゃん!」
海「だろ?」
風「ポロよりぜんぜん可愛いな」
ポ「ぐさ、グサグサ・・・」

 しかし、野村家は早くも翌日からボンビーの威力を見せつけられることになりました。
 せんせいは“ウチはヨソで思われているほど裕福ではないし、むしろ貧乏だから貧乏神など大した影響はない”と言っていましたが、それでもたちまち経済事情が悪化しました。


つづく

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2004-05-25 ポロの日記 2004年5月25日(熱曜日)ボンビーと一緒 その2

ボンビーと一緒 その2


 風と海のお兄ちゃんは新聞配達のアルバイトを始めました。せんせいは作曲の仕事がぱったりとなくなって、レッスンが終わるとコンビニで働きました。
 中学生のたろちゃんは、まだアルバイトができないので炊事当番を一手に引き受けることになりました。

ポ「ねえ、たろちゃん。最近お米のごはん食べてないね」
ぴ「お米ってね、けっこう高いの。パンも高いよ」
ぼ「ぼんび〜♪」
ポ「なにが安いの?」
ぴ「特売のパスタと乾めんかなあ。めっちゃ安いかもね」
ポ「今日の夕ご飯はなあに?」
ぴ「スパゲティー」
ポ「煮干しとパン粉で何作るの?」
ぼ「ぼんび〜♪」
ぴ「あのさ、アンチョビーも煮干しも似たようなもんじゃない。だからさ、スパゲティー・アッレ・アンチューゲ風っていうやつ」
ポ「すごいかも。でもさ、なんだか生臭い気がするなポロてきに」
ぴ「あれ、そうだね。これじゃみいやん(海のお兄ちゃん)が文句言うな、きっと」
ポ「あのさ、カレーパウダーまぶしたら」
ぴ「いいじゃん。ポロ、いい事言うね」
ポ「だってさ、ポロ、エスコフィエの再来って言われてるんだ」
ぴ「だれに?」
ポ「だ、誰だろ。誰か言ってくれ〜!」
ぼ「ぼんび〜♪」
ぴ「ぼんびーが言ってるよ、ポロ」
ポ「あんまりうれしくないかも・・」


 できあがった“とつぜんインド風スパゲティー・アッレ・アンチューゲ風たろぴ風”は、評価のむずかしい複雑な味でしたが、みんな一生懸命働いてお腹が空いていたので、文句を言わずに食べました。ボンビーは遠慮を知らないので、おかわりしました。

 ポロは、もう何週間もイモようかんを食べていませんでした。それで夜寝ると、必ず夢にイモようかんが出てきました。ポロは夢のイモようかんで我慢しなければなりませんでした。たろちゃんは、そんなポロのためにイモようかんの絵を描いてくれました。それはそれはおいしそうなイモようかんでした。でも、よけい食べたくなってしまうのでした。
 せんせいは、ピアノ以外の売れるものはみんな売ってしまいました。ほかの家族も、みんなアルバイトや勉強が忙しくてテレビを見る時間もゲームをする時間もないので、それらはみんな売ってしまいました。
 せんせいのお家は、すっきりとしたシンプルな生活になりました。家族もだらけたところがなくなって、みんなピンとしたイイ感じでした。
 ある日曜日の朝、朝食の席でせんせいが言いました。

せんせいの演説の要旨:
 みんな、よく頑張ってくれた。最初、ボンビーのせいで経済事情が悪化したとき、や、これは失敗したかなと思った。しかし、今の我が家の状態を見て欲しい。経済状況がぎりぎりであるということを除けば、モノは減り、実に快適だ。減ってみて分かったが、それらは本来不必要なものばかりだった。衣食住に最低限必要なものと勉強のための一群、家族のアルバム、これだけで人は十分やっていけるということだ。
 アルバイトは辛かったと思うが、おまえ達の人間的な成長を見ると、これも必要なことだったのではないかと思う。今回の経験によって将来社会に出るときの心構えが全く違うものになったであろうことは想像に難くない。たろぴも家事全般、実によくやってくれた。
 ここでみんなに感謝したい。こういう家族と暮らせるとは、私は実にしあわせ者だ。そして、誰より感謝しなければならないのはボンビーだ。ボンビーは我々から、澱(おり)のようにたまった怠惰な気持ちや濁りを取り除いてくれた。それから、ボンビーを連れてきたポロも功労者の一人だ。


つづく

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2004-05-24 ポロの日記 2004年5月25日(熱曜日)ボンビーと一緒 その3

ボンビーと一緒 その3


 演説が終わると、奥さんがやりくりしてやっと買ったショートケーキをみんなに配りました。ポロには、なんとイモようかんでした。
 みんな貧乏になる以前はショートケーキなんて目もくれなかったのに、おいしいね〜って言いながら食べました。ポロも、こんなにおいしいイモようかんを食べたのは初めてでした。せんせいの話を聞くまでは、ちょっとボンビーが憎たらしかったけれど、今ではイモようかんをこんなにおいしくしてくれたボンビーに感謝する気持ちが生まれていました。ボンビーもショートケーキをおいしそうに食べていました。

ぼ「ぼんびー!」

 次の日の朝、家の中の様子がなんだかいつもと違いました。

風「なんだか今日、いつもと違わなくない?」
海「やっぱ、そう思う?」
ぴ「え〜、気がついてた? あたしも朝起きたときからなんだか違うなあって思ったんだけど」

 ポロはダイニングテーブルの上のメモ用紙を見つけました。
 そこには、可愛らしい肉球の手形がひとつ、朱肉で押されていました。

ポ「あ゛〜〜! 見て見て、ボンビーの置き手紙かも!」

 せんせいも奥さんもやってきました。

風「ボンビーの手形に間違いないね」
奥「本当にどこかへ行っちゃったのかしら?」
せ「これだけ家の空気が変わっていると、そんな気がするね」

 そのとき、電話が鳴りました。それは、せんせいへの作曲の依頼でした。話し終わると受話器を置いてせんせいが言いました。

せ「ボンビーは去った」
風「なんだか、よかったっていう感じもしないね」
海「そうだな、新聞配達も楽しかったし。なんか緊張感があって生活に張りがあったよな」
ぴ「ぬいぐみみたいで可愛かったよね」
奥「よそのお家に行っちゃったのかしら。心配ね」

 ポロは、ぼんびーが寝ていた段ボールの小さな箱ベッドを、ボンビーがいつ戻ってきてもいいようにポリ袋でつつんで押し入れにしまいました。


おしまい



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mokoさん、貧乏神っていいヤツでしょ。ポロね、このお話が気に入ってます。 / ポロ ( 2004-06-03 21:39 )
今の日本に欠けてる物を教えられたような気がします。物質的には恵まれてるのでしょうけどね〜大切な物は何かを見直したいですね♪ / moko ( 2004-06-03 20:48 )

2004-05-23 ポロの日記 2004年5月21日(電曜日)ポロ・プロジェクトふたたび その1

ポロ・プロジェクトふたたび その1


 ポロとせんせいが作曲工房のリビングで10時のお茶を飲みながら話していたら、そこへ、ポロがやってきました。

ポ「やあ、せんせい」

 そう言ったところで、ポロはポロに気づいて、あわてて部屋を出ていきました。

せ「なんだ、今のは。ポロみたいだったぞ」
ポ「え〜、せんせい何ねぼけてんの〜、ポロはここにいるよ〜」

 ポロはとぼけて見せました。

せ「そうだな。ここのところ作曲で忙しくてあまり眠ってないから、とうとう幻覚を見たのかも知れないな」

 せんせいは、お茶を飲み終わると仕事部屋へ行ってしまいました。ポロは、すぐに先ほどのポロを追いました。次の工房当番になっているお話ポロ2号でした。お話ポロ2号はじ〜んと来る話、例えば「ロケット号の日記」などを担当しています。ポロ2号は、ドアの陰に隠れていました。

「だめじゃないか、出てくるときはちゃんと確認しなくちゃ」
「ごめんよ〜、ポロはおっちょこちょいな猫なんだよ〜」
「じゃ、交代だよ」
「うん、じゃあね」

 ポロはコラムポロと交代しました。ちょっと失敗しちゃったので今度は気をつけなくちゃだな。明日のお昼前にはお話ポロ3号と交代です。お話ポロ3号は、ちょっと理屈っぽいお話を書きます。たとえばシュデンガンガー商会関連のお話です。さっき交代したコラムポロは一番頭がよくて、ほかのポロから一目置かれています。お話ポロ1号は熱を出して有給休暇をとっているということでした。お話ポロ1号は「スリッパを買いに」のような切れのよい短編を書くポロです。ほかにレスポロもいます。「ポロの秘密の部屋」にせんせいとのショートショートを書いたり、レッスン掲示板にレスしたりします。

 その日の夜、ポロのところに女神さまが来ました。

め「あ〜ら、ポロちゃん。昨日とは違うポロちゃんなのね」
ポ「ポ、ポロはポロだよ、やだな女神さま」
め「あ〜ら、あたしをごまかそうったってダメよ、ポロちゃん」
ポ「ポ、ポロはポロだよ」

 ところが女神さまが魔法をかけると、ポロは女神さまのいいなりになってしまうのでした。

め「ポロちゃ〜ん、オリジナルはどこにいるの?」
ポ「えっと、新小岩だと思うな」
め「そう。例のビルの地下室ね」
ポ「そだよ」

 ポロが、はっと我に返ると誰もいませんでした。

つづく

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2004-05-22 ポロの日記 2004年5月21日(電曜日)ポロ・プロジェクトふたたび その2

ポロ・プロジェクトふたたび その2


<新小岩の貸しビル地下>

 ポロは、イモようかんをあげるからおいでと言ったおじさんに誘拐されて、ビルの地下に閉じこめられていました。

ポ「ああ、神さま。もうイモようかんなんかにつられたりしませんから、ポロを助けてください。だいいち、猫に向かってふつうの人が“イモようかんをあげるよ”なんて言うわけがありません。ポロがバカでした〜!」

 すると、誰かの声がしました。

誰か「そ〜よ〜、ポロちゃん。気をつけなくちゃダメよ」

 それは女神さまの声でした。

ポ「わ、女神さま、どこ?」
め「ここよ、ポロちゃん」

 女神さまドアも開けずに、いつのまにか地下室の真ん中に立っていました。

ポ「わ、どうやって入ったの?」
め「あたしは、何でもできるのよ〜、ポロちゃん」
ポ「不思議だなあ」
め「それじゃ、ちょっとだけヒントを教えてあげるわ」
ポ「わあ、教えて教えて」
め「ポロちゃん、タキオンて知ってる?」
ポ「きいたことあるよ、光より速い粒子じゃなかったっけ?」
め「さすがポロちゃんね。本当はタキオンじゃないんだけど、分かりやすくするためにタキオンてことにさせといてね。あたしは自分をタキオン化できるのよ。無限の速さで移動するってどういうことだか分かる?」
ポ「えっと、えっと・・・・どこへでも瞬時に行ける」
め「そう、その“どこへでも”っていうところがミソよ。つまり、同時に宇宙の全てにあまねく存在してしまうの」
ポ「それって、神さま・・・」
め「や〜ね〜、ポロちゃん。あたし、これでも神さまよ〜」
ポ「そ、そだったね」
め「だから、どこか一点に収束すればそこに現れるわけ」
ポ「・・・・・!」
め「分かったでしょ。神さまのシステム」
ポ「す、すごい! どうして今まで気がつかなかったんだろう」
め「神さまのことは分かりにくいのよ」
ポ「でも、どうして教えてくれたの?」
め「それはね、今からポロちゃんを作曲工房へ連れて帰るからよ。ポロちゃんもタキオン化しなければならないの。ちょっとしたショックがあるから、前もって心構えをしておいてもらわなきゃならないのよ」
ポ「どんなショック? ポロ、ノストロモ号の加速に耐えたよ」
め「ポロちゃん、あたしにウソついちゃダメ。気絶しちゃったでしょ」
ポ「そ、そだった!」
め「そういうのとは違うショックよ。たとえば、あたしたちと同時に神さまがタキオン化していたとするとポロちゃんは神さまと完全に重なって、一時的だけど一体化しちゃうの。たいていの人はショックでアウトね」
ポ「神さまを体験しちゃうわけ?」
め「まあ、そんなようなこと。宗教的な修業の最終目標はそれよ」
ポ「ポロ、ちょっと怖いかも」
め「大丈夫よ、少なくとも神さまとは鉢合わせしないようにするから」
ポ「神さまたちも鉢合わせするんでしょ」
め「するわよ、しょっちゅう一体化しちゃうわ。だから一神教も多神教も同時に成立して矛盾しないの」
ポ「ほえ〜!」
め「じゃ、ポロちゃん、いろんなことが一気にポロちゃんの中に流れ込んでくるけど、雑音だと思っていればいいわ」
ポ「ポロ、やっぱりコワイよ〜」
め「男の子はガタガタ言わないの」


つづく

先頭 表紙

ふむぅ…まあ、宗教については「真実はあなたの中に…」と言うことで。でも、私は多神教の方がすき。 / みた・そうや ( 2004-06-01 10:31 )

2004-05-21 ポロの日記 2004年5月21日(電曜日)ポロ・プロジェクトふたたび その3

ポロ・プロジェクトふたたび その3


 そういうと、女神さまはポロを抱き上げて何かを念じました。ポロたちは眩しい光に包まれたと思うとあっという間に宇宙にいました。星だと思ったのは銀河でした。銀河はホントに泡構造に分布していて、ポロは宇宙全体と原子ひとつひとつを同時に見ていました。ポロは女神さまと重なっていて、女神さまはポロでした。そこへもうひとつ重なってきました。鳥です。あ、ポロは今、火の鳥になりました。ちょうど火の鳥がタキオン化してポロたちと一体になったのです。ポロは宇宙の過去と未来まで全部知っています。なあんだ、宇宙ってこういうものだったのか〜。女神さまと火の鳥は何度も一体化したことがあるらしく共通の思念を持っていました。創造主たる神さまとも一体化したことがあるので、ポロは神さまのことも手に取るように分かりました。ポロは宇宙で最も偉大な存在のひとつとなりました。すると、いきなりポロが宇宙の一点に向けて収束を始めました。視界がズームアップしていきます。地球に戻ったらポロには人類救済の使命があることを強く感じました。


<作曲工房のリビング>

ポ「あ、女神さま。昼間から来るなんて珍しいね」
め「そ〜よ〜、ポロちゃんに会いたくて来たのよ〜」
ポ「うれしいなあ」
め「ポロちゃん、最近新小岩に行ったかしら?」
ポ「ううん、行ってないよ。どして?」
め「(ちゃんと忘れたかどうか)ちょっと聞いてみたかっただけよ。じゃあね〜」
ポ「え、もう帰っちゃうの?」
め「また来るわ〜♪」

 女神さまは、いつのまにかサンタさんのような大きな袋をかかえていました。袋はもごもごと動いていて、なんだかにゃあにゃあ言っているような気がしました。


<どこかの会議室>

女議長「完全に失敗です。あの邪魔者が何者であるか至急調査しなさい」
E次郎「超自然的存在であるとしか思えませんが」
女議長「寝ぼけるのもいい加減になさい。迷信ではなく、私は合理的な理由を求めているのです」
F美 「お言葉ですが、監禁していた地下室のたった一ヶ所しかない出入り口は開閉された形跡がありませんでした」
女議長「一流のマジシャンは、それを物理的になんら矛盾なくやってのけています。私たちが答えに行き着いていないから魔法のように見えるだけです」
E次郎「分かりました。さらに検討します」
女議長「紛失したポロ型ロボットを追加発注しておくように」
B子 「はい、ただちに」
女議長「次の会議までに答えを用意するように。では解散します」


おしまい


ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

先頭 表紙

ミタさん、いつもつっこみアリガト! ポロ・プロジェクトは、謎だからいいんだなあ。「チオチモリンを買いに」は、このお話の伏線のつもりだったんだけど、とうとう神さまが因果律を超えるというお話になりませんでした。次に期待してね。 / ポロ ( 2004-06-02 12:26 )
に、しても!なぞのプロジェクトが気になる〜! / みた・そうや ( 2004-06-01 10:42 )
なぜ、女神様が扉を開けて脱出させないのかなと思ったら…ポロさんに宇宙(神との一体化)を体験させたかった…?いつか時が来たときの為に… / みた・そうや ( 2004-06-01 10:40 )

2004-05-20 ポロの日記 2004年5月20日(草曜日) 飛行船を持っていない人のために

飛行船を持っていない人のために


 ポロには飛行船があるけれど、中には持っていない人もいるかも知れません。(なに言ってんだ、ポロ。自家用飛行船持ってる人なんてほとんどいないよ!)
 そんな人のために、せんせいが教えてくれたステキな地図を紹介します。なんと、縮尺にもよりますが、日本中の航空写真地図を見ることができちゃいます。
 これで、あなたも飛行船オーナー! シュデンガンガー商会やフェッセンデン商会の場所を探したり、来たことがある人なら作曲工房を空から探検できます。

ポロのおせっかい

 この地図は「いくことガイド」と言います。地名から直接目的地を見ることもできますが、ポロのおすすめは次のような使い方です。この地図には1/16000000とか1/8000000という人工衛星や三河屋さんのノストロモ号から見下ろしたような縮尺の地図があります。これを開いて、見たい場所をクリックします。すると、そこが中央に来ますから、1/800000とか1/160000に縮尺をだんだん変えていって、飛行船の高度が下がっていく感じを体験します。1/20000まで来たら「航空写真非表示」というところをクリックすると、あーら感動! 街並みが写真で現れる〜。1/8000にすると、もっと高度が下がって1/4000では一軒一軒のおうちの形まではっきりと分かります。でも、富士山の頂上や華厳の滝を見たいなと思っても、人が住んでいないところは航空写真がなかったりします。
 神田淡路町に合わせれば、ポロとアンジュちゃんがシュデンガンガー商会のシャトルで降下するときに見た景色を体験できちゃいます。新小岩駅に合わせれば(パ)チンコ・ジャンボだってすぐに見つかります。
 もう本当に自家用飛行船を持った気分だ〜!(ぽ、ポロはホントに持ってるよ、持ってるからね)

ポロのしんみな忠告!
 もし、あなたがポロのような地図中毒(地図依存症)かも知れないときにはアクセスしないほうがいいと思います。面白くって抜け出せなくなるかも知れません(ポロは重症患者)。この忠告にも関わらず、あなたが飛行船から降りられなくなったとしてもポロは一切せきにんを負いませんからね。では、覚悟を決めてGO!

いくとこガイド


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2004-05-19 ポロの日記 2004年5月17日(光曜日)ポロのすてきな飛行船 その1

ポロのすてきな飛行船 その1


 4月に松戸博士がロケット号を迎えに来たとき、ポロと博士は飛行船「レッド・ツェッペリン号」を作りました。これは、その記録です。

 ポロは、空飛ぶクルマのリンゴ丸がうらやましくて仕方ありませんでした。すると、博士はシュデンガンガー商会のラジコン飛行船キットなら“ポロどんを乗せて飛べるぢゃろう”というので、早速それをもとに、ポロのすてきな飛行船を作ることになりました。

「ねえ、博士。キットのバッテリーだとどのくらいの時間飛べるの?」
「そうじゃな。1時間くらいかのう」
「あのさ、もっとずっと長く飛べるようにならないかなあ」
「どのくらい飛べればいいんじゃ?」
「えっとねえ。沖縄とか北海道とか行けるくらい!」
「それは、またずいぶんと欲張った性能じゃな」
「だって、松戸博士が作るんだからそのくらいじゃなくちゃ!」
「ぶおっほっほ! よし。やってみよう」
「わ〜、ホント! うれしいなあ」
「長く飛ぶことが課題じゃ。そのためには3つの方法がある」
「どんな?」
「一つ目はバッテリーをたくさん積むこと。しかし、これはもっとも発想に乏しい方法じゃ。飛行船も限りなく大きくなる。とむりん君などは、こういう乏しい発想に対しては厳しいはずじゃ」
「うんうん、そうだよ。ピアノなんか発想なしで楽譜どおり弾いていっちゃダメなんだよ」
「2番目は、コンパクトでありながら高エネルギーなパワープラントを積む方法じゃ。原子力潜水艦は、この方法をとっている」
「模型の飛行船に原子炉は積めないよ、博士」
「じゃが、ラジオアイソトープを使ったRI電池ならば可能じゃ」
「そ、そーなの?」
「ところが、放射線の問題や事故があれば環境への影響もあるから、英知ある科学者は避けるものじゃ」
「ふーん。3つめの方法は?」
「太陽電池と燃料電池を組み合わせて使う。自然エネルギーで、しかも無尽蔵じゃ」
「へえ!」
「太陽電池だけだと昼間しか使えない。燃料電池だけだと水素と酸素を大量に貯蔵しなければならない。ところがそれを組み合わせれば、昼間のうちに水素と酸素を作っておいて、夜、それを使えばいい。おまけに、最終生成物である“純水”は再び電気分解に使うことができる」
「すごい! 究極のパワープラントだね」


つづく

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そうか〜、先日各地の実況で乗ってた飛行船はそれだったのですね。空気電池、熱電池なんかも有望ですね。http://www.discovery.panasonic.co.jp/electricity/lab/lab10bat/l100502.html / みた・そうや ( 2004-05-28 12:36 )

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