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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

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2004-04-23 ポロの日記 2004年4月30日(電曜日) 禁ヒケール法時代 その2
2004-04-22 ポロの日記 2004年4月30日(電曜日) 禁ヒケール法時代 その3
2004-04-21 ポロの日記 2004年4月28日(光曜日) ポロの一日その1
2004-04-20 ポロの日記 2004年4月28日(光曜日) ポロの一日その2
2004-04-19 ポロの日記 2004年4月25日(風曜日) ペットロボット“ポロ”その1
2004-04-18 ポロの日記 2004年4月25日(風曜日) ペットロボット“ポロ”その2
2004-04-17 ポロの日記 2004年4月24日(岩曜日)さよならロケット号 その1
2004-04-16 ポロの日記 2004年4月24日(岩曜日)さよならロケット号 その2
2004-04-15 ポロの日記 2004年4月24日(岩曜日)さよならロケット号 その3
2004-04-14 お絵かき たろちゃん その2


2004-04-23 ポロの日記 2004年4月30日(電曜日) 禁ヒケール法時代 その2

禁ヒケール法時代 その2


 ヒケールは猫の星の製薬会社「ドーラ・メディコ」が製造しています。猫の星では合法ですが、裏神田共和国では非合法薬物。そのため、猫の星はゴールデン・トライアングルと呼ばれて渡航が禁止されました。そうなると、裏神田で発行される新聞では密輸団の宇宙船と宇宙警察の戦いの記事が毎日のように紙面をにぎわせるようになりました。
 もうけ話をいつも探している一部の怪しい人々は、こんなうまい話を放っておくわけがありません。そんな彼らに目を付けられたのは、世界征服を目指しながらも資金難にあえぐ某秘密結社でした。この秘密結社は古いながらも恒星間旅行が可能なレトロフューチャーな軍用艦“轟天号”を所有していたからです。轟天号はヒケール密輸の主役として活躍することになり、その名を歴史に残すほどになります。
 その頃、第2次世界大戦末期に海底に沈んだ戦艦ヤマトを引き揚げて、宇宙船に改造する試みが始められました。表向きの理由は環境改善のための技術輸入でしたが、本当の目的はヒケールの密輸でした。新大和の波動エンジンはシュデンガンガー商会から調達したものでした。店主の松戸修士さんは、密輸に使われることを見抜けなかったと言って残念がっていました。波動エンジンを買いに来たエンジニアが、本当の目的を知らされていなかったので、悪意を見抜くセンサーが反応しなかったのでした。新大和も轟天号も、ヒケールの密輸でばく大な利益をあげました。

 ポロは恐ろしい夢を見ました。
 ポロが裏神田新聞の朝刊を見ると、一面トップに「今度はイモようかん禁止法成立」の文字が。

「うわ〜〜、大変だ〜〜!」

 記事を読み進むうちに、イモようかん禁止法は地球温暖化防止法の一環として制定されたことが分かってきました。温暖化ガスの排出削減だそうです。ひょっとして温暖化ガスってオ○ラのこと?
 イモようかん禁止法の発効とともに、密造イモようかんが次々と摘発されました。どうやら、人間というのは禁止されると、それが欲しくなる習性があるようでした。一説によると、禁止後のイモようかん製造量は、禁止前の27倍にものぼるということでした。それまでイモようかんを食べたことがなかった人まで、イモようかんを食べてそのおいしさに仰天しました。寒天でがっちりと固めてしまったイモようかんでさえ人気を呼びましたが、おイモの味をそのまま生かした自然なイモようかんは芸術的とまで言われ、目玉の飛び出るような高値がつきました。
 表向き、店先からイモようかんは姿を消しましたが、町中の至るところでイモようかんは手に入りました。ちょっと心得のある人ならば家で作って副業にし始めたからです。そんなある日、ポロがいつものようにリビングで幸せを噛みしめながらイモようかんを食べていると、裏神田警察署の刑事がやってきてポロに向かって言いました。

「イモようかん現行犯で逮捕する!」

 ポロは、そこで目が覚めました。まだ胸がドキドキしています。
 その日の午前中に、ポロは心配で心配で、近くの和菓子屋さんに偵察に行きました。店先にはイモようかんがお行儀よく整列していました。
 ・・・ああ、やっぱりホントにタダの夢だったんだ。
 ポロは3時のお茶に降りてきたせんせいにヒケールが禁止になったことを話しました。


つづく

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2004-04-22 ポロの日記 2004年4月30日(電曜日) 禁ヒケール法時代 その3

禁ヒケール法時代 その3


「ふうん、そうか」
「ふうんそうかなんて、ひとごとみたいに言わないでよ」
「ポロ」
「なあに?」
「モンブランの頂上にヘリコプターで運び上げてもらうのと、自分で登るのとの違いは?」
「え〜、せんせい! そんなに大きなケーキがあるの?」
「あ〜〜〜〜、悪かった。たとえが悪かった。ごめん。チョモランマにするよ」
「なあんだ。山のモンブランか。ポロの辞書じゃ、その意味はマル2だよ」
「で、意味の違いは?」
「えっとねえ。風景を見たいんだったら一緒。登山は自分の力を知ることができるっていうところかな」
「そうだ。ポロはどっちがいい?」
「両方いいな。自分でも登れるけど、お休みの日にはちょっとチョモランマの頂上へ行けちゃうのもいいな」
「でも、よくかんがえてごらん」
「なあに?」
「簡単に登れるようになったらわざわざ自力で登る人は激減するだろうね。それどころかチョモランマはたちまち荒らされてしまうだろう」
「そっか。やっぱりなかなか行けないところっていうのはあったほうがいいかも」
「山に登るためには多くの知識と技術、そして判断力が必要だ。山に行くということはそれらを得るということと同義だ」
「そうだね」
「ピアノも全く同じだ。簡単な曲でさえ、弾けるようになる頃には数えきれないくらい多くのことを学ぶ。山もピアノも人を鍛える」
「そだね」
「鍛えられた人は決して山を傷めない。おまけに山の魅力と怖さを一生忘れない」
「なーるほど。ピアノに鍛えてもらった人は、一生ピアノから離れないっていうことだね」
「カメラも同じだよ。全自動のコンパクトカメラを使っている人は、写真を極めようという気にならないかも知れないよ」
「うわ。分かるよわかる。カメラに鍛えてもらった人が写真の奥義を目指すんだね。世の中ってそういうことだったのか〜」

それからもピアノブームは、ますます白熱して、ヒケールの密輸が後を絶ちませんでした。それどころか、密輸団と警察は戦争状態に突入しました。それほどヒケール密売は儲かったのです。禁ヒケール法成立1年後、とうとう裏神田国会は、ヒケールを合法化することにしました。
ヒケールが裏神田のドラッグストアやコンビニの店頭に並ぶようになると、たちまちピアノブームは去りました。

「せんせい」
「なんだい?」
「せんせいの言ったとおりだったね」
「何が?」
「ピアノって練習することに意味があるんだね。ヒケールで弾けちゃっても、音楽のこともピアノのことも何も分かるようにならないもん」
「そうだね」
「山もそうだよ。自分で登る人だけがホントのすばらしさが分かるんだ」
「ポロ、ちょっと分かるようになったじゃないか」
「そう? うれしいな。お金もさ、拾ったってダメだよね。自分で稼ぎださないとお金のことが分からないもんね」
「たしかにそうだね」
「ポロさ、今度のヒケールの騒ぎで、人生の意味のすみっこを見たような気がするよ」
「そのくらいで人生論じてちゃ、まだまだだな」
「え゛〜、まだあるの?」
「あるぞ。ポロ、星を見にいこう。自分の双眼鏡もっておいで」
「うん、いくいく!」


おしまい


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2004-04-21 ポロの日記 2004年4月28日(光曜日) ポロの一日その1

ポロの一日その1

07:30
 ポロは当番がないので朝ご飯ぎりぎりに目を覚まします。
 ポロがダイニングに行くころには家中の掃除も終わって、キッチンでは当番のたろちゃんが奥さんと一緒に朝ご飯の支度をしています。
 朝ご飯を食べながら出撃前のブリーフィングがあります。みんながそれぞれ今日の予定を報告します。

奥「ポロちゃんはいつもどおりね」
ポ「うん、でも取材に行くかも」
奥「夕ご飯がいらない時は夕方の6時までに電話してね」
ポ「は〜い!」

08:00
ご 飯を食べ終わると、3人の子どもたちと奥さんは出撃です。せんせいは「登録商標 吉井本家」というレトロな火打ち石と火打ち金で奥さんに火切りをします。カチッカチッ! それで「おまいさん、気をつけていってきておくれ」なんて言ったら時代劇です。

火打ち石の伊勢公一商店へ

 せんせいが後片づけと食器洗いをします。食洗機だけど。

08:30
 せんせいとポロの新聞タイム。ポロは今日の情報を新聞からゲットします。せんせいがニュース解説をしてくれることもあります。週刊こどもニュースくらい分かりやすいです。

09:00
 せんせい、お仕事開始。ポロも勉強が始まります。
 1時間目は調べものです。お話を書いていると知らないことだらけです。分からないことはリストにして、それを順番に調べていきます。この作業は時間を決めておかないと、キリなく続いてしまいます。

10:00
 レッスンがないときは、煮詰まったせんせいがお茶のためにリビングに降りてきます。ポロのPCはリビングにあるので、いつもせんせいと一緒にお茶です。

10:15
 2時間目はポロの執筆時間です。アイディアがないときには地図を調べる時間にもなります。執筆時間はあっという間に過ぎていきます。

12:30
 お昼ご飯の時間です。せんせいがいろいろなランチを作ってくれます。最近では、かた焼きそばがヒットでした。食後にピアノの練習をすることもあります。

13:30
 せんせいは、お仕事開始。ポロは3時間目、古典の勉強です。江戸時代にまとめられた「群書類従」の中に収められた古いお話の中から選んだり、中国の漢詩を選んで音読しています。意味はさっぱり分からないけど、漢詩や文語体のリズムを身体で覚えてきました。夏目漱石や森鴎外にも古典のリズムからの影響を感じます。なんてことが書けるくらいにはなってきました。ときどきSFやファンタジーも音読します。そういう本は翻訳なので、リズムがでたらめだったりします。古典の教養って必要かも。

「群書類従」より「いさよひの日記」


つづく

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2004-04-20 ポロの日記 2004年4月28日(光曜日) ポロの一日その2

ポロの一日その2


15:00
 レッスンがなければ、せんせいと3時のお茶です。最近はレッスンが多くなったので、3時のお茶は機会が減りました。

15:15
 お茶が終わると音楽の勉強です。最初の目標はベートーヴェンの交響曲全曲の区別がつくようにすることでした。次は、ピアノソナタ全曲の区別がつくまで聴きこむこと。そして今は、バッハの平均律第1巻をバルトーク校訂版とヘンレ原典版の両方を交代に見ながら聴きこんでいます。そうするとバルトークが原典版から何を読み取っていたのかが分かってきます。すごいぞバルトーク! いつになるか分からないけど、バルトークも気づかなかった拍子とリズム分析を加えたせんせい校訂版の完成も楽しみです。
 音楽の勉強をしないときは取材にでかけることもあります。取材先は午前中の地図の時間に詳しく下調べしておきます。遠くへ行くときは、せんせいと奥さんに置き手紙を書きます。

「せんせい、奥さん、探さないでください。夕ごはんはいりません」

 せんせいも奥さんも「探さないでください」は、いらないよ、って言いますけど、クセでついつい書いてしまいます。

18:30
 せんせいのおうちの夕ご飯は時計のように正確です。この時刻に遅刻したら夕ご飯はないと思わなければなりません。ポロは、この時間帯に出かけているときは取材先から飛んで帰ってきます。「ごはんごはんごはんごはん〜!」

19:30
 せんせいは、たいていレッスンです。ポロはゴマのお兄ちゃんたちとテレビを見たり、ゲームをして遊びます。みんな、ポロをホントの兄弟みたいに可愛がってくれます。ポロは幸せです。

21:30
 ポロは今日の勉強の成果をまとめたり、取材のまとめをしたり、昼間に時間が足りなくてできなかったことをやります。お話を書いたり、本を読んだり、調べものをしたりと時間はいくらあっても足りません。せんせいは、もっと時間が足りないみたいです。読んだ人が「ああ、よかったなあ!」って思えるようなお話を書くには、もっともっと勉強しなければなりません。せんせいは「意味のない知識を増やすのは簡単だが、本当に必要なことが何であるのか見極めのは難しい」といつもポロに言います。それは、いざお話を書こうとしたときによく分かります。

01:00
 この頃になると眠くなるので歯を磨いて寝ます。お休みなさい。また明日。



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shinさん、ツッコミアリガトございます。ホント言うとポロは、こんなにきちんと勉強できません。ど〜してもイモようかんの誘惑に負けてしまうからです。夜の猫集会にはときどき情報収集のために行きます。あいさつは人間語で言うと「よう、ブラザー!」みたいな感じです。 / ポロ ( 2004-05-05 18:36 )
作曲工房のニュース(?)速報ヘッドラインみたいでいいですねぇ、是非、レギュラーコンテンツとしてWebサイトの片隅に表示し続けて下さい(熱望)!っていうか、アレ?ポロさんは「夜の集会」にはお出かけにならないのですか? / shin ( 2004-05-04 20:10 )
おちゃめさん、せんせいのおうちの最大のふまんは猫のたからもののコタツがないことなんだよ! / ポロ ( 2004-05-03 20:04 )
♪ね〜こ〜はこ〜たつ〜でま〜るく〜なってないのか・・。(笑 / おちゃみ ( 2004-05-03 12:42 )

2004-04-19 ポロの日記 2004年4月25日(風曜日) ペットロボット“ポロ”その1

ペットロボット“ポロ”その1


 今日は、遠くから管理人1号さんというレトロなロボットみたいな名前のお客様が来ました。せんせいの古いお友達だそうです。
 せんせいとポロは最寄りのタドタド駅まで出迎えました。

1号「おう、久しぶり」
せ 「あ、また太ったんじゃないか?」
1号「のっけから、そういうことを言うもんじゃない」
ポロ「ポロでーす。管理人1号さん、はじめまして」
1号「あれ、いつの間にこんなもの買える身分になったんだ、ソニ○のア○ボよりよく出来てるな。毛皮もイイ感じだ。個人の識別は何人ぐらいできるんだ?」
せ 「本物だよ」
1号「そりゃ、本物のロボットだろうよ」
ポロ「ちがうよ、ポロは生きてる猫だよ」
1号「おお、リアルにしゃべるなあ。いったいいくらしたんだ」
ポロ「ちがうよちがうよ」
せ <ポロ、否定するな。そういうことにしておこう>
ポロ<で、でも・・>
せ 「これか、これは借金500万円てとこだ」
ポロ<せんせい、それは内緒だよ>
1号「これだけよくできてると、もう家族だな」
せ 「まあ、そんなところだ」

 管理人1号さんのお目当ては、いつでもポチヲ亭です。ポチヲ亭がなければ、せんせいのところなんか来るわけがありません。というわけでもないけど。

ポチ緒「いらっしゃいませ。あら、猫型のペットロボットもできたんですね」
せ 「ええ、まあ」
ポロ<ほ、本物だよ・・>
せ <そういうことにしておかないと、店に入れないんだぞ>
ポロ<そ、そっか。そういえば、ポロ、ポチヲ亭初めてだもんな>

 ポロは、ポチヲ亭をジロジロと眺め回しました。ちょっと照明のおさえられた画廊のような空間に、ホントに絵がいくつもあります。すってきじゃん!

1号「あ。水ね、水」
ポチ「はい、どうぞ」
1号「うまい。レストランは水がうまくなくちゃ」
ポチ「ありがとうございます」
ポロ<水ほめられたって、うれしくないよね、せんせい?>
せ 「いや、そうでもないぞ。基本として大事なことかも知れないよ」
ポロ<ふーん、そんなもんか>
1号「そのロボット猫、なんて呼んでるんだ?」
せ 「ポロっていうんだ」
1号「よし、ポロの性能テストだ。ポロ、質問に答えなさい」
ポロ「な、なあに、いきなり」
1号「お、かなり高度な受け答えができるな。では、平行線は交わらないと定義したのは誰だ?」
ポロ「そ、そんなの知らないよポロ。せんせい分かる?」
せ 「ユークリッド、あるいはエウクレイデスだと思うよ」
1号「こういうことはまだ学習させていないんだな」
せ 「まあ、ぼちぼち教えるよ」

つづく

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2004-04-18 ポロの日記 2004年4月25日(風曜日) ペットロボット“ポロ”その2

ペットロボット“ポロ”その2


1号「では次の質問だ。私は絵が好きだとする。ポロなら私の誕生日には絵や画集を贈るか?」
ポ 「贈らないよ」
1号「おお、正解だ。理由は?」
ポ 「ポロ、1号さんに誕生日プレゼントするほど仲良しじゃないから」
せ 「あっはっは。1号、一本取られたな」
1号「まいったな。プログラミングの限界か」
せ 「しかし、学習するよ。説明してやってくれないか」
1号「絵が好きな人というのは、好みがうるさい可能性が高い。好みの絵をプレゼントするためには綿密なリサーチが必要になるだろう。だから、プレゼントというのは贈る相手が本当に欲しいものが分かっている時を除けば、相手のよく知らない分野で、かつこちらは明るいというモノから選ぶのがいい」
ポ 「なんだ、そっか。よく分かったよ。ポロ、今度1号さんにイモようかんプレゼントする」

 それから、ポロたちは運ばれてきた料理を次々に平らげてポチヲ亭を出ました。
 店の前の駐車場で、ユードラのドアを開けるせんせいからポロを抱き上げた1号さんは「わ、これ本物の猫じゃないか!」と声を上げました。1号さんは、ポロをひざに乗せたままユードラに乗り込みました。

せ 「やっと気づいたか」
1号「どういうことなんだ」
ポ 「言ったじゃない、ポロ本物って」
せ 「猫の星から来たんだ。おぬしには知的地球外生命って言ったほうが分かりやすいな」
1号「信じるよ。なにしろ、目の前にいるからな」
ポ 「びっくりした?」
1号「びっくりしたよ。でも、どうして騒ぎにならない?」
せ 「うちの猫は宇宙人ですって、近所にふれまわってみれば分かるよ。誰も驚かないし気にもとめない」
ポ 「そだよ。ポロ、せんせいのホームページで普通にお話書いたりしてるけど、みんな普通にお返事くれるよ」
1号「あまりに突飛なことは、想像の外にあるから問題にならないということだな」
せ 「さあ、駅まで送るよ」
1号「ああ、ありがとう。それにしても驚いた。これは秘密なのか?」
せ 「別に秘密というわけではない。サイトでは公開している。でも、スーパーやレストランでは秘密にしたほうがいい。入れてくれないから」
1号「そうか。いやあ、この歳になって、こんなに強烈なSF体験をするとは思わなかった」
ポ 「じゃ、今日は楽しかった?」
1号「ああ、また会いに来るよ」

JR京浜とうへんぼく線のハムラビ駅のロータリーに降りた1号さんは、ポロたちにいつまでも手を振っていました。


おしまい


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先頭 表紙

mokoさん。もしもmokoさんが作曲工房に来るようなことがあったら、ポロがおこづかいをためてポチヲ亭でごちそうしちゃうからね。 / ポロ ( 2004-05-07 12:34 )
‘ポチヲ亭’の写真ありがとう♪イメージ通りの素敵なお店ですね〜いつかぜひ行ってみたいです♪贈り物のお話も、とても参考になりました! / moko ( 2004-05-03 07:03 )

2004-04-17 ポロの日記 2004年4月24日(岩曜日)さよならロケット号 その1

さよならロケット号 その1


「ねえ、せんせい」
「なんだい?」
「早起きしなくたって彗星を見る方法があるよ」
「どんな?」
「三河屋の是輔(これすけ)さんに頼んでノストロモ号に乗せてもらうの」
「ノストロモ号は地球には着陸できないだろう」
「そっか。シュデンガンガー商会のシャトルも予備の気球をポロとアンジュちゃんが使っちゃったし」
「彗星を見るなら早起きが一番だな」
「そだ! 松戸博士のリンゴ丸がある」
「博士はクランベリーヒルだぞ」
「ううん。こないだ、修士さんが博士が地球に来るって言ってたよ」

 ぴんぽーん!

「あ、せんせい、誰か来たよ」
「お、ウワサをすれば影。なんと松戸博士だ」

 博士は、いつもどおり意気揚々と工房のリビングに現れました。

松「おう、とむりん君、ポロ君、元気かね」
せ「ええ、お蔭さまで」
ポ「ポロも元気だよ」
松「今日は、お願いがあってきたのじゃ」
せ「またまた無理難題ですか?」
松「いや、そんなことはない。ロケット号を貸して欲しいのじゃ。聞くところによると、ロケット号は地球では役にたたないそうじゃないか」
せ「まあ、そのとおりです。カップボードの中で、ただのスポンジです」
ポ「さびしいけど、ポロ、ロケット号はクランベリーヒルにいたほうが幸せだと思うな」
せ「そうですね。ぜひ、博士のそばにおいてやってください。家族も賛成してくれるでしょう」
松「それはありがたい」
ポ「ところで、博士、ポロからもお願いがあるんだけど」
松「なんじゃね」
ポ「リンゴ丸で彗星を見に行きたいの」
松「そんなことか。お安い御用じゃ。善は急げ、さっそく行こう。実は地球に来るときにワシも楽しんできたのじゃ」

 ポロたちは、すぐに博士の愛車のリンゴ丸に乗り込みました。リンゴ丸は、せんせいの愛車でしたが、博士の実験の餌食(ゴメんね、博士!)になって宇宙船に改造されてしまったのでした。リンゴ丸は、ふつうのワンボックスワゴンの形をしています。サンタさんのドレッドノート号と同じように力のフィールドで1気圧の空間を保って、ディーンドライブというトンデモ・テクノロジーで飛行します。

松「昼間に街中からいきなり離陸すると自衛隊機にスクランブルをかけられる恐れがあるからの。山から雲の中へ飛び立つことにしよう」
ポ「なーるほど!」
松「というわけじゃ。リンゴ丸。分かったかの?」
り<了解。気象状況を確認中。現在、秩父山岳地方に層雲がかかっており、絶好の気象条件です。秩父まで地上走行します>
松「よし、頼んだぞ。出発じゃ」


つづく

先頭 表紙

2004-04-16 ポロの日記 2004年4月24日(岩曜日)さよならロケット号 その2

さよならロケット号 その2


 リンゴ丸の航法コンピュータは、高速道路をひた走って1時間ちょっとで秩父の山道に入りました。未舗装の林道にさしかかったころ、周囲は霧につつまれました。

り<離陸します。シートベルトをおしめください>
松「よし、リンゴ丸。お客様を酔わせないようにな」
り<了解しました。もし、ご気分が悪くなられたときにはドーラ・メディコ製の酔い止め薬“ヨワーヌ”をご用意しています>
ポ「わあ、ドーラ・メディコっぽいネーミングだね」
り<ディーンドライブ起動。離陸します>

 リンゴ丸は木立の間を抜けて、空へと舞い上がりました。周囲は霧に包まれて何も見えません。数分でいきなり視界が開けました。雲の上に出たのです。

り「高度12000メートル、上昇中」
ポ「わあ、きれいだねえ。せんせい、遠くに海が見えるよ」
せ「海面が光っているね」

 あっと言う間に成層圏に達し、空は紺色になりました。明るい星々が見え始めました。星の数はどんどん増えて、とうとう地球が丸く見えてきました。

松「あれが、ブラッドフィールド彗星じゃ」
ポ「ホントだ。尾がある」
せ「思ったより小さいですね」
松「それは、望遠鏡で撮影した画像を見てイメージしていたからじゃろう。ここからでは、こんなもんじゃ。よし、リンゴ丸。ブラッドフィールド彗星に接近じゃ」
り「了解。地球周回軌道を離脱、ブラッドフィールド彗星に向かいます」

 リンゴ丸は、ぐんぐん加速してブラッドフィールド彗星に向かいました。すると、リニア彗星も見えてきました。

松「実は、さっきから見えておったのだが尾が短いから気がつきにくかったのじゃ。ほら、あそこにはニート彗星もおるぞ。これ以上太陽に近づくのは危険だから、今日はここまでじゃ」

 ポロたちは3つの彗星を同時に見るという幸運に恵まれました。彗星は発光クラゲのように妖しく輝いていました。

ポ「ね、せんせい。早起きしなくても彗星を見られたでしょ」
せ「ああ、本当だね。まったく素晴らしい」
松「もっと面白いものを見たいとは思わんかね」
ポ「どんなの?」
松「皆既日食じゃ」
せ「そうか。日食が起こるのを待たなくても、こちらが皆既帯に入ればいいわけか」
松「今の話のとおりじゃ。リンゴ丸」
り<はい、博士。聞いていました。皆既帯に向かいます>
ぽ「わくわくするなあ。ポロ、日食を見るの初めてだよ」


つづく

先頭 表紙

2004-04-15 ポロの日記 2004年4月24日(岩曜日)さよならロケット号 その3

さよならロケット号 その3


 リンゴ丸は、地球に戻りながら、月をはさんで太陽と一直線になる位置を目指しました。
 皆既帯は地球からそれほど離れていないところにありました。月と太陽が重なった瞬間、コロナが輝き始めました。

ポ「うわ、すごい!」
せ「これはすごいですね、博士」
松「おお、そうとも。何度見てもいいもんじゃ」
せ「ということは、地球の影を使った日食というのも可能なわけですね」
松「そうじゃ。わしも何度か見たことがあるが、地球には大気があるから月とは違う日食じゃ。一番見事なのは太陽に近い水星の影による日食かのう。太陽は大きいし、コロナも大きく広がって見えるのじゃ」
せ「それは見ごたえがありそうですね」
ポ「わあ、ポロ見たいなあ」
松「今度、十分に時間があるときにのう。水星皆既帯は遠いばかりか、太陽からの放射が強くていろいろと準備が必要じゃ」
ポ「うん、楽しみに待ってるよ」

 その日の夕方、まだ、少しだけ明るさの残る空を作曲工房に向かってリンゴ丸は降下していきました。

ポ「ただいま〜」
奥「あら、どこへ行ってたの?」
ポ「今ね、彗星と日食を見てきたの。松戸博士とせんせいも一緒だよ」
松「奥さん、お久しぶりです」
奥「まあ、博士いらっしゃい」
せ「実はね、ロケット号を博士のそばに置いてもらおうと思うんだよ」
奥「そうね。ここだとただのスポンジですものね。あたしも、どうにかしてロケット号をもう一度クランベリーヒルに戻せないものかと思っていたんですよ」

 それから、みんなで夕ご飯を食べて、家族全員とロケット号で記念写真を撮りました。それから、ひとりひとりが動かないロケット号をかわるがわる抱きしめて別れを惜しみました。
 夜の10時過ぎ、とうとう松戸博士はクランベリーヒルに帰る時刻になりました。

松「では、みなさん、ロケット号をおあずかりします。ぜひ、クランベリーヒルにも遊びに来てくだされ」

 ディーンドライブのひゅーんという音とともに、玄関先から夜空に向かって上昇するリンゴ丸を、ポロたちはいつまでも手を振って見送りました。


おしまい


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先頭 表紙

2004-04-14 お絵かき たろちゃん その2

お話とお話のインタールードに、お絵かき たろちゃん 第二弾です。
これは、去年、中学生になったばかりのころの絵です。実際の絵は、かなり濃く描きこんでありますが、PCで見るとスカスカした感じになっちゃってもったいないかも。


先頭 表紙

私のPCの画面だと、もしかしてコントラストが強すぎて折り目やシワが紙っぽく見えているのかも。金属球の真ん中に映っているのは、未来の画家さんなんですね。納得! / みわちゃん ( 2004-04-19 20:07 )
いやー、折り目やシワで布の柔らかさが十分出てますよー。球体への写り込みで『銀色の玉』って感じが出ています。 / みた・そうや ( 2004-04-15 07:33 )
みわちゃん、つっこみアリガトございます。実物の絵だと柔らかい布です。金属球のまんなかに、スケッチブックを広げて絵を描いているたろちゃんがいます。 / ポロ ( 2004-04-14 11:05 )
金属球(?)が見事ですね。その下にあるのは布なのか紙なのか(やっぱり布かな)が良く分からないのが惜しい感じですが、素敵です。 / みわちゃん ( 2004-04-12 10:01 )

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