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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

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2004-04-20 ポロの日記 2004年4月28日(光曜日) ポロの一日その2
2004-04-19 ポロの日記 2004年4月25日(風曜日) ペットロボット“ポロ”その1
2004-04-18 ポロの日記 2004年4月25日(風曜日) ペットロボット“ポロ”その2
2004-04-17 ポロの日記 2004年4月24日(岩曜日)さよならロケット号 その1
2004-04-16 ポロの日記 2004年4月24日(岩曜日)さよならロケット号 その2
2004-04-15 ポロの日記 2004年4月24日(岩曜日)さよならロケット号 その3
2004-04-14 お絵かき たろちゃん その2
2004-04-13 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その1
2004-04-12 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その2
2004-04-11 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その3


2004-04-20 ポロの日記 2004年4月28日(光曜日) ポロの一日その2

ポロの一日その2


15:00
 レッスンがなければ、せんせいと3時のお茶です。最近はレッスンが多くなったので、3時のお茶は機会が減りました。

15:15
 お茶が終わると音楽の勉強です。最初の目標はベートーヴェンの交響曲全曲の区別がつくようにすることでした。次は、ピアノソナタ全曲の区別がつくまで聴きこむこと。そして今は、バッハの平均律第1巻をバルトーク校訂版とヘンレ原典版の両方を交代に見ながら聴きこんでいます。そうするとバルトークが原典版から何を読み取っていたのかが分かってきます。すごいぞバルトーク! いつになるか分からないけど、バルトークも気づかなかった拍子とリズム分析を加えたせんせい校訂版の完成も楽しみです。
 音楽の勉強をしないときは取材にでかけることもあります。取材先は午前中の地図の時間に詳しく下調べしておきます。遠くへ行くときは、せんせいと奥さんに置き手紙を書きます。

「せんせい、奥さん、探さないでください。夕ごはんはいりません」

 せんせいも奥さんも「探さないでください」は、いらないよ、って言いますけど、クセでついつい書いてしまいます。

18:30
 せんせいのおうちの夕ご飯は時計のように正確です。この時刻に遅刻したら夕ご飯はないと思わなければなりません。ポロは、この時間帯に出かけているときは取材先から飛んで帰ってきます。「ごはんごはんごはんごはん〜!」

19:30
 せんせいは、たいていレッスンです。ポロはゴマのお兄ちゃんたちとテレビを見たり、ゲームをして遊びます。みんな、ポロをホントの兄弟みたいに可愛がってくれます。ポロは幸せです。

21:30
 ポロは今日の勉強の成果をまとめたり、取材のまとめをしたり、昼間に時間が足りなくてできなかったことをやります。お話を書いたり、本を読んだり、調べものをしたりと時間はいくらあっても足りません。せんせいは、もっと時間が足りないみたいです。読んだ人が「ああ、よかったなあ!」って思えるようなお話を書くには、もっともっと勉強しなければなりません。せんせいは「意味のない知識を増やすのは簡単だが、本当に必要なことが何であるのか見極めのは難しい」といつもポロに言います。それは、いざお話を書こうとしたときによく分かります。

01:00
 この頃になると眠くなるので歯を磨いて寝ます。お休みなさい。また明日。



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野村茎一作曲工房

先頭 表紙

shinさん、ツッコミアリガトございます。ホント言うとポロは、こんなにきちんと勉強できません。ど〜してもイモようかんの誘惑に負けてしまうからです。夜の猫集会にはときどき情報収集のために行きます。あいさつは人間語で言うと「よう、ブラザー!」みたいな感じです。 / ポロ ( 2004-05-05 18:36 )
作曲工房のニュース(?)速報ヘッドラインみたいでいいですねぇ、是非、レギュラーコンテンツとしてWebサイトの片隅に表示し続けて下さい(熱望)!っていうか、アレ?ポロさんは「夜の集会」にはお出かけにならないのですか? / shin ( 2004-05-04 20:10 )
おちゃめさん、せんせいのおうちの最大のふまんは猫のたからもののコタツがないことなんだよ! / ポロ ( 2004-05-03 20:04 )
♪ね〜こ〜はこ〜たつ〜でま〜るく〜なってないのか・・。(笑 / おちゃみ ( 2004-05-03 12:42 )

2004-04-19 ポロの日記 2004年4月25日(風曜日) ペットロボット“ポロ”その1

ペットロボット“ポロ”その1


 今日は、遠くから管理人1号さんというレトロなロボットみたいな名前のお客様が来ました。せんせいの古いお友達だそうです。
 せんせいとポロは最寄りのタドタド駅まで出迎えました。

1号「おう、久しぶり」
せ 「あ、また太ったんじゃないか?」
1号「のっけから、そういうことを言うもんじゃない」
ポロ「ポロでーす。管理人1号さん、はじめまして」
1号「あれ、いつの間にこんなもの買える身分になったんだ、ソニ○のア○ボよりよく出来てるな。毛皮もイイ感じだ。個人の識別は何人ぐらいできるんだ?」
せ 「本物だよ」
1号「そりゃ、本物のロボットだろうよ」
ポロ「ちがうよ、ポロは生きてる猫だよ」
1号「おお、リアルにしゃべるなあ。いったいいくらしたんだ」
ポロ「ちがうよちがうよ」
せ <ポロ、否定するな。そういうことにしておこう>
ポロ<で、でも・・>
せ 「これか、これは借金500万円てとこだ」
ポロ<せんせい、それは内緒だよ>
1号「これだけよくできてると、もう家族だな」
せ 「まあ、そんなところだ」

 管理人1号さんのお目当ては、いつでもポチヲ亭です。ポチヲ亭がなければ、せんせいのところなんか来るわけがありません。というわけでもないけど。

ポチ緒「いらっしゃいませ。あら、猫型のペットロボットもできたんですね」
せ 「ええ、まあ」
ポロ<ほ、本物だよ・・>
せ <そういうことにしておかないと、店に入れないんだぞ>
ポロ<そ、そっか。そういえば、ポロ、ポチヲ亭初めてだもんな>

 ポロは、ポチヲ亭をジロジロと眺め回しました。ちょっと照明のおさえられた画廊のような空間に、ホントに絵がいくつもあります。すってきじゃん!

1号「あ。水ね、水」
ポチ「はい、どうぞ」
1号「うまい。レストランは水がうまくなくちゃ」
ポチ「ありがとうございます」
ポロ<水ほめられたって、うれしくないよね、せんせい?>
せ 「いや、そうでもないぞ。基本として大事なことかも知れないよ」
ポロ<ふーん、そんなもんか>
1号「そのロボット猫、なんて呼んでるんだ?」
せ 「ポロっていうんだ」
1号「よし、ポロの性能テストだ。ポロ、質問に答えなさい」
ポロ「な、なあに、いきなり」
1号「お、かなり高度な受け答えができるな。では、平行線は交わらないと定義したのは誰だ?」
ポロ「そ、そんなの知らないよポロ。せんせい分かる?」
せ 「ユークリッド、あるいはエウクレイデスだと思うよ」
1号「こういうことはまだ学習させていないんだな」
せ 「まあ、ぼちぼち教えるよ」

つづく

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2004-04-18 ポロの日記 2004年4月25日(風曜日) ペットロボット“ポロ”その2

ペットロボット“ポロ”その2


1号「では次の質問だ。私は絵が好きだとする。ポロなら私の誕生日には絵や画集を贈るか?」
ポ 「贈らないよ」
1号「おお、正解だ。理由は?」
ポ 「ポロ、1号さんに誕生日プレゼントするほど仲良しじゃないから」
せ 「あっはっは。1号、一本取られたな」
1号「まいったな。プログラミングの限界か」
せ 「しかし、学習するよ。説明してやってくれないか」
1号「絵が好きな人というのは、好みがうるさい可能性が高い。好みの絵をプレゼントするためには綿密なリサーチが必要になるだろう。だから、プレゼントというのは贈る相手が本当に欲しいものが分かっている時を除けば、相手のよく知らない分野で、かつこちらは明るいというモノから選ぶのがいい」
ポ 「なんだ、そっか。よく分かったよ。ポロ、今度1号さんにイモようかんプレゼントする」

 それから、ポロたちは運ばれてきた料理を次々に平らげてポチヲ亭を出ました。
 店の前の駐車場で、ユードラのドアを開けるせんせいからポロを抱き上げた1号さんは「わ、これ本物の猫じゃないか!」と声を上げました。1号さんは、ポロをひざに乗せたままユードラに乗り込みました。

せ 「やっと気づいたか」
1号「どういうことなんだ」
ポ 「言ったじゃない、ポロ本物って」
せ 「猫の星から来たんだ。おぬしには知的地球外生命って言ったほうが分かりやすいな」
1号「信じるよ。なにしろ、目の前にいるからな」
ポ 「びっくりした?」
1号「びっくりしたよ。でも、どうして騒ぎにならない?」
せ 「うちの猫は宇宙人ですって、近所にふれまわってみれば分かるよ。誰も驚かないし気にもとめない」
ポ 「そだよ。ポロ、せんせいのホームページで普通にお話書いたりしてるけど、みんな普通にお返事くれるよ」
1号「あまりに突飛なことは、想像の外にあるから問題にならないということだな」
せ 「さあ、駅まで送るよ」
1号「ああ、ありがとう。それにしても驚いた。これは秘密なのか?」
せ 「別に秘密というわけではない。サイトでは公開している。でも、スーパーやレストランでは秘密にしたほうがいい。入れてくれないから」
1号「そうか。いやあ、この歳になって、こんなに強烈なSF体験をするとは思わなかった」
ポ 「じゃ、今日は楽しかった?」
1号「ああ、また会いに来るよ」

JR京浜とうへんぼく線のハムラビ駅のロータリーに降りた1号さんは、ポロたちにいつまでも手を振っていました。


おしまい


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mokoさん。もしもmokoさんが作曲工房に来るようなことがあったら、ポロがおこづかいをためてポチヲ亭でごちそうしちゃうからね。 / ポロ ( 2004-05-07 12:34 )
‘ポチヲ亭’の写真ありがとう♪イメージ通りの素敵なお店ですね〜いつかぜひ行ってみたいです♪贈り物のお話も、とても参考になりました! / moko ( 2004-05-03 07:03 )

2004-04-17 ポロの日記 2004年4月24日(岩曜日)さよならロケット号 その1

さよならロケット号 その1


「ねえ、せんせい」
「なんだい?」
「早起きしなくたって彗星を見る方法があるよ」
「どんな?」
「三河屋の是輔(これすけ)さんに頼んでノストロモ号に乗せてもらうの」
「ノストロモ号は地球には着陸できないだろう」
「そっか。シュデンガンガー商会のシャトルも予備の気球をポロとアンジュちゃんが使っちゃったし」
「彗星を見るなら早起きが一番だな」
「そだ! 松戸博士のリンゴ丸がある」
「博士はクランベリーヒルだぞ」
「ううん。こないだ、修士さんが博士が地球に来るって言ってたよ」

 ぴんぽーん!

「あ、せんせい、誰か来たよ」
「お、ウワサをすれば影。なんと松戸博士だ」

 博士は、いつもどおり意気揚々と工房のリビングに現れました。

松「おう、とむりん君、ポロ君、元気かね」
せ「ええ、お蔭さまで」
ポ「ポロも元気だよ」
松「今日は、お願いがあってきたのじゃ」
せ「またまた無理難題ですか?」
松「いや、そんなことはない。ロケット号を貸して欲しいのじゃ。聞くところによると、ロケット号は地球では役にたたないそうじゃないか」
せ「まあ、そのとおりです。カップボードの中で、ただのスポンジです」
ポ「さびしいけど、ポロ、ロケット号はクランベリーヒルにいたほうが幸せだと思うな」
せ「そうですね。ぜひ、博士のそばにおいてやってください。家族も賛成してくれるでしょう」
松「それはありがたい」
ポ「ところで、博士、ポロからもお願いがあるんだけど」
松「なんじゃね」
ポ「リンゴ丸で彗星を見に行きたいの」
松「そんなことか。お安い御用じゃ。善は急げ、さっそく行こう。実は地球に来るときにワシも楽しんできたのじゃ」

 ポロたちは、すぐに博士の愛車のリンゴ丸に乗り込みました。リンゴ丸は、せんせいの愛車でしたが、博士の実験の餌食(ゴメんね、博士!)になって宇宙船に改造されてしまったのでした。リンゴ丸は、ふつうのワンボックスワゴンの形をしています。サンタさんのドレッドノート号と同じように力のフィールドで1気圧の空間を保って、ディーンドライブというトンデモ・テクノロジーで飛行します。

松「昼間に街中からいきなり離陸すると自衛隊機にスクランブルをかけられる恐れがあるからの。山から雲の中へ飛び立つことにしよう」
ポ「なーるほど!」
松「というわけじゃ。リンゴ丸。分かったかの?」
り<了解。気象状況を確認中。現在、秩父山岳地方に層雲がかかっており、絶好の気象条件です。秩父まで地上走行します>
松「よし、頼んだぞ。出発じゃ」


つづく

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2004-04-16 ポロの日記 2004年4月24日(岩曜日)さよならロケット号 その2

さよならロケット号 その2


 リンゴ丸の航法コンピュータは、高速道路をひた走って1時間ちょっとで秩父の山道に入りました。未舗装の林道にさしかかったころ、周囲は霧につつまれました。

り<離陸します。シートベルトをおしめください>
松「よし、リンゴ丸。お客様を酔わせないようにな」
り<了解しました。もし、ご気分が悪くなられたときにはドーラ・メディコ製の酔い止め薬“ヨワーヌ”をご用意しています>
ポ「わあ、ドーラ・メディコっぽいネーミングだね」
り<ディーンドライブ起動。離陸します>

 リンゴ丸は木立の間を抜けて、空へと舞い上がりました。周囲は霧に包まれて何も見えません。数分でいきなり視界が開けました。雲の上に出たのです。

り「高度12000メートル、上昇中」
ポ「わあ、きれいだねえ。せんせい、遠くに海が見えるよ」
せ「海面が光っているね」

 あっと言う間に成層圏に達し、空は紺色になりました。明るい星々が見え始めました。星の数はどんどん増えて、とうとう地球が丸く見えてきました。

松「あれが、ブラッドフィールド彗星じゃ」
ポ「ホントだ。尾がある」
せ「思ったより小さいですね」
松「それは、望遠鏡で撮影した画像を見てイメージしていたからじゃろう。ここからでは、こんなもんじゃ。よし、リンゴ丸。ブラッドフィールド彗星に接近じゃ」
り「了解。地球周回軌道を離脱、ブラッドフィールド彗星に向かいます」

 リンゴ丸は、ぐんぐん加速してブラッドフィールド彗星に向かいました。すると、リニア彗星も見えてきました。

松「実は、さっきから見えておったのだが尾が短いから気がつきにくかったのじゃ。ほら、あそこにはニート彗星もおるぞ。これ以上太陽に近づくのは危険だから、今日はここまでじゃ」

 ポロたちは3つの彗星を同時に見るという幸運に恵まれました。彗星は発光クラゲのように妖しく輝いていました。

ポ「ね、せんせい。早起きしなくても彗星を見られたでしょ」
せ「ああ、本当だね。まったく素晴らしい」
松「もっと面白いものを見たいとは思わんかね」
ポ「どんなの?」
松「皆既日食じゃ」
せ「そうか。日食が起こるのを待たなくても、こちらが皆既帯に入ればいいわけか」
松「今の話のとおりじゃ。リンゴ丸」
り<はい、博士。聞いていました。皆既帯に向かいます>
ぽ「わくわくするなあ。ポロ、日食を見るの初めてだよ」


つづく

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2004-04-15 ポロの日記 2004年4月24日(岩曜日)さよならロケット号 その3

さよならロケット号 その3


 リンゴ丸は、地球に戻りながら、月をはさんで太陽と一直線になる位置を目指しました。
 皆既帯は地球からそれほど離れていないところにありました。月と太陽が重なった瞬間、コロナが輝き始めました。

ポ「うわ、すごい!」
せ「これはすごいですね、博士」
松「おお、そうとも。何度見てもいいもんじゃ」
せ「ということは、地球の影を使った日食というのも可能なわけですね」
松「そうじゃ。わしも何度か見たことがあるが、地球には大気があるから月とは違う日食じゃ。一番見事なのは太陽に近い水星の影による日食かのう。太陽は大きいし、コロナも大きく広がって見えるのじゃ」
せ「それは見ごたえがありそうですね」
ポ「わあ、ポロ見たいなあ」
松「今度、十分に時間があるときにのう。水星皆既帯は遠いばかりか、太陽からの放射が強くていろいろと準備が必要じゃ」
ポ「うん、楽しみに待ってるよ」

 その日の夕方、まだ、少しだけ明るさの残る空を作曲工房に向かってリンゴ丸は降下していきました。

ポ「ただいま〜」
奥「あら、どこへ行ってたの?」
ポ「今ね、彗星と日食を見てきたの。松戸博士とせんせいも一緒だよ」
松「奥さん、お久しぶりです」
奥「まあ、博士いらっしゃい」
せ「実はね、ロケット号を博士のそばに置いてもらおうと思うんだよ」
奥「そうね。ここだとただのスポンジですものね。あたしも、どうにかしてロケット号をもう一度クランベリーヒルに戻せないものかと思っていたんですよ」

 それから、みんなで夕ご飯を食べて、家族全員とロケット号で記念写真を撮りました。それから、ひとりひとりが動かないロケット号をかわるがわる抱きしめて別れを惜しみました。
 夜の10時過ぎ、とうとう松戸博士はクランベリーヒルに帰る時刻になりました。

松「では、みなさん、ロケット号をおあずかりします。ぜひ、クランベリーヒルにも遊びに来てくだされ」

 ディーンドライブのひゅーんという音とともに、玄関先から夜空に向かって上昇するリンゴ丸を、ポロたちはいつまでも手を振って見送りました。


おしまい


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先頭 表紙

2004-04-14 お絵かき たろちゃん その2

お話とお話のインタールードに、お絵かき たろちゃん 第二弾です。
これは、去年、中学生になったばかりのころの絵です。実際の絵は、かなり濃く描きこんでありますが、PCで見るとスカスカした感じになっちゃってもったいないかも。


先頭 表紙

私のPCの画面だと、もしかしてコントラストが強すぎて折り目やシワが紙っぽく見えているのかも。金属球の真ん中に映っているのは、未来の画家さんなんですね。納得! / みわちゃん ( 2004-04-19 20:07 )
いやー、折り目やシワで布の柔らかさが十分出てますよー。球体への写り込みで『銀色の玉』って感じが出ています。 / みた・そうや ( 2004-04-15 07:33 )
みわちゃん、つっこみアリガトございます。実物の絵だと柔らかい布です。金属球のまんなかに、スケッチブックを広げて絵を描いているたろちゃんがいます。 / ポロ ( 2004-04-14 11:05 )
金属球(?)が見事ですね。その下にあるのは布なのか紙なのか(やっぱり布かな)が良く分からないのが惜しい感じですが、素敵です。 / みわちゃん ( 2004-04-12 10:01 )

2004-04-13 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その1

女神さま降臨 その1


 せんせいはポロに、決して作曲中に部屋に入ってはいけないといいました。ポロは、そう言われるといろいろと想像がふくらんでしまいます。
 実は、せんせいは鶴の化身で、自分の羽を抜いてはその軸をペンにして楽譜を書いているのではないかとか、実は、ろうそくを立てて炎を見つめながら降霊術を行なって過去の大作曲家からいろいろとアイディアをもらっているのではないかとか、実は、せんせいはホントに紙一重の天才で、雄叫びをあげながら楽譜を書きまくっているのではないかとか、もう、ホントの事が知りたくてたまりません。もう、作曲中のせんせいを見てみたくて見てみたくて、いてもたってもいられなくなりました。
 それでとうとうポロが、せんせいの作曲の様子をのぞこうと部屋に忍び込むことにしました。たしか、補修用の壁紙が第4格納庫にあったはず。ポロは壁紙を身体を覆えるくらいの大きさに切って、忍者のようにカムフラージュしながら午前2時の仕事部屋に入り込みました。ドキドキするなあ。

 すると、すでにそこでは信じられないような光景が繰り広げられていました。ふわりと宙に浮かんだ女神様が、せんせいの耳元で何かをささやくと、せんせいはホイホイと楽譜を書きます。せんせいが楽譜を書き終わると、また女神様が耳元でささやきます。すると、せんせいは、またホイホイと楽譜を書くのです。
女神様がゆっくりとポロのほうを向いたので、ポロは思わず声をあげそうになりました。女神様は唇に右手の2の指を当てて、しーっというようなしぐさをしました。

「うぐ・・・・」

 叫びそうになったポロも、すんでのところでこらえました。
 それから1時間、せんせいは女神様のいいなりになってホイホイと楽譜を書き続けました。でも、せんせいがくたびれた様子なのを見てとった女神様は、ポロのほうを向いて「いい子にしてて偉かったわ」と小声で言うと、ポロに投げキッスをしてバイバイと手を振りながら消えていきました。

「あわわわわわ!」

 その声で、せんせいがポロに気づきました。

「ポロ、作曲中は入ってきちゃダメだって言ったじゃないか!」
「ポロ、女神さま見ちゃった・・・」
「何言ってるんだ」
「ポロ、見ちゃったもん・・・」
「どこで?」
「今、ここで・・・」
「なに寝ぼけてるんだ」
「ねぼけてないもん。せんせいの耳元でささやいてた」
「誰もささやいてなんかいなかったぞ」
「でも、女神さまがささやくと、せんせいはホイホイ楽譜を書いてたもん・・」
「ポロ、マタタビ酒の飲み過ぎじゃないのか?」
「そんなの、飲んだことないよ〜!」
「とにかく、女神様なんていなかった」
「え〜ん、ホントだもん!ホントだもん!」

 ポロは、悔しくて泣きながらせんせいの部屋を飛びだしました。でも、せんせいに見えていないのなら信じられるわけがないかも、と気がつきました。
 その時、シュデンガンガー商会で「誰でも心霊写真」という特殊フィルムを見かけたことを思いだしました。あれなら女神さまが写るかも知れません。ポロは女神さま降臨の証拠をつかもうと、キョロちゃんカメラを持ってシュデンガンガー商会に行くことにしました。

つづく

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mokoさん、レスが遅くなってゴメなさい。あまりに核心をついたつっこみだったので、ネタがばれそうでお返事できませんでした。これからもするどいつっこみを楽しみにしてるからね。 / ポロ ( 2004-04-09 12:42 )
「夕鶴」を思い出させるようなお話ですね♪‘女神様’が帰らないように、ポロさんも内緒にしてた方がいいのかなぁ? / moko ( 2004-04-07 16:35 )

2004-04-12 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その2

女神さま降臨 その2


 深夜便のトラックに乗り込んだのは、もうすぐ夜が明けるという時刻でした。ポロは、閉店間際のシュデンガンガー商会にすべりこみました。

「おやおや、ポロさん。いつも大慌てでございますね」
「わー、間に合った! 修士さん、コバワ」
「今日は、どのようなご用でしょうか」
「あのね、誰でも心霊写真ていうフィルムが欲しいの」
「ああ、あれでございますか。ここだけの話ですが、あれは眉唾ものの商品です」
「えっ? どういうこと」
「普通のフィルムに微量のX線を照射して、ところどころにぼんやりと感光させてあるのです。それで普通に写真を撮ると、はい、心霊写真のできあがりというわけでございます」
「わー、シュデンガンガー商会はインチキ商品も売ってるのか!」
「これに関しては、お客様を騙(だま)そうとしているわけではございません。心霊の世界は大変危険でもあり、面白半分で関わると大変なことになります。それで、お客様を守りながら楽しんで頂ける商品ではないかと思っております」
「そういうことだったのか〜」
「また、なぜ、このような品物が必要なのですか?」
「それはね、かくかくしかじか・・・」
「さようでございますか。それでしたら、霊的な世界を科学的に研究している遠い親戚をご紹介いたしましょう。森羅研究所を主宰しています。例のスティクス川救難キットの原理を、兄の博士(ひろし)に伝えた人物です」
「わあ、ホント。アリガト!」

 ポロは、修士さんに書いてもらった地図を頼りに、森羅(しんら)研究所を目指しました。地図のはじっこにはJR鴬谷(うぐいすだに)の駅があって、右の方には<恐れ入谷の鬼子母神(きしもじん)>と書いてあります。う〜ん、なんだか聞いたことがあるな。<その手は桑名の焼きハマグリ>も知ってるな。でも、桑名ってどこだろ。
 神田から鴬谷くらいならポロでも歩けそうな気がしたので、ポロは地図と野生の勘でどんどん進んで行きました。途中で、猫集会をやっていたので、ポロは鬼子母神への行き方を訊ねました。そのうちの一匹が鬼子母神の近くの家で飼われていたことがあったということで、詳しく教えてくれました。修士さんは人の目線の地図でしたが、そのトラ猫は猫の目線で語ってくれたので、ポロはばっちりと場所を頭に叩き込みました。お礼を言うと、ポロはがまんができなくて4本足で走り始めました。修士さんの地図と方位が90度くらいズレていました。
 すっかり夜が明けて人通りも多くなってきたので、ポロは人ごみを避けて住宅の間を縫って走る猫専用けもの道をひた走りました。
 そして、ついに緑豊かな鬼子母神境内にたどり着きました。さすがポロの野生の勘! あとは鴬谷の駅を確かめれば地図が読めます。ポロは境内で昼寝をしている猫に訊ねました。

「ねえ、君。鴬谷の駅はどこ?」
「君はだれだい? みかけない顔だけど」
「うん、ちょっと遠くから来て、場所を探しているんだ」
「鴬谷なんて知らないなあ」
「え〜、でも、ここの近くに鴬谷があるはずなんだけど」
「君が探しているのは“恐れ入谷の鬼子母神”なんじゃないか?」
「そ、そだよそだよ」
「ここは雑司が谷の鬼子母神だよ」
「え゛〜!! 鬼子母神てふたつもあるの〜! だから修士さんは、わざわざ“恐れ入りやの”ってつけてくれたんだ〜」
「知らない猫も多いよ。ま、気を落とさないで」
「教えてくれてアリガト!」


つづく

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2004-04-11 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その3

女神さま降臨 その3


 ポロは、気を取り直して来た道を戻り始めましたが、なんだか急にクタクタになって、のんびり歩いて行きました。すると、目の前に見たことのある屋台が。ノボリには“元祖 今川焼き”の文字が。ポロは屋台に走りよりました。

「おじさ〜ん。今川焼きちょうだい」
「よ。おまえさんは、たしか今川橋の猫」
「わ、覚えていてくれたの?」
「忘れませんよ。あの時は確か12個もたいらげた」
「そうだよ。おいしかったなあ」
「はい、できたて。毎度ありがとうございます」
「うわ〜。巌流さんの今川焼きを、また食べらるなんてうれしいなあ」
「どうして名前を?」
「だって、自転車に書いてあるよ。それに、実は哲学さんから聞いたの」
「松戸哲学をご存知で」
「そだよ」
「あっしのことを悪く言っていたんじゃないですか?」
「そんなことないよ。それに、人の言葉は事実かどうか分からないから、巌流さんのことはポロが判断するよ。せんせいの教えなんだ」
「おまえさま、ポロさんていうんですか」
「そだよ。猫の星のドーラから来たんだ」
「それで、話せるわけも分かった」
「ポロには、この今川焼きがものすごく厳選された材料でできてるってことが分かるよ」
「ほう、それはうれしい話。では、どんなことが分かるか、この松戸巌流におしえてくださらぬか?」
「そだね。材料の小豆も小麦も、ほかで食べたことがないっていうこと。哲学さんから聞いたんだけど、よその星で品種改良したって。まさかクランベリーヒル?」
「ど、どーしてそれを?」
「クランベリーヒルの匂いってやつかな。とっても真剣な味だと思うな、ポロてきに」
「厳しくて優しい星だった」
「ところで、こうしちゃいられないんだ。ポロね、恐れ入りやの鬼子母神に行かなきゃならないの」
「気をつけて行っておくんなさい。今日はモニター料ということで、お代は要りません」
「わあ、アリガト!」
「いや、とても参考になりました。近ごろは誰もが自分の舌さえ信じなくなってる。テレビや雑誌がウマいと言ったものだけがウマいんだ。食べてみてウマいと思わなくても、それは自分たちが分からないだけだと思ってる。だから、そういう店に行列作って並んだりする」
「分かるよ、ポロ、すごく分かる。でも、巌流さんの今川焼きは一流だよ。こんど、せんせい連れてくるからね。きっとおいしいって言うよ」
「ぜひ、そうしてください。せんせいさんによろしく。じゃ、気をつけて」
「うん」

 巌流さんの今川焼きのおかげで元気を取り戻したポロは、また走る気持ちを取り戻しました。
 入谷鬼子母神に着いたのはお昼を過ぎていました。鬼子母神のホントの名前は真源寺というお寺でした。雑司が谷の鬼子母神と違ってほとんど緑はありません。ビルに囲まれた町中のお寺です。ここからは修士さんの書いてくれた地図だけが頼りです。鬼子母神近くの住宅街の中を歩いていると、すぐに森羅研究所の看板を見つけました。建物はフェッセンデン商会くらいオンボロでした。


つづく

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