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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

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2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その5
2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その6
2007-03-01 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第11回 ポロの一族
2007-02-28 ポロの日記 2007年2月28日(波曜日)なんか変だぞ
2007-02-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第10回 第3幸栄丸 その1
2007-02-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第10回 第3幸栄丸 その2
2007-02-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第10回 第3幸栄丸 その3
2007-02-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第10回 第3幸栄丸 その4
2007-01-31 ポロの日記 2007年1月31日(波曜日)ポロ、珍念さんに入門する その1
2007-01-31 ポロの日記 2007年1月31日(波曜日)ポロ、珍念さんに入門する その2


2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その5

エレクトラ先生さいごの授業 その5

エ「その後、ゲーリケという人が真空ポンプを発明して“マグデブルクの半球”と呼ばれる実験を行って、デカルトという人が存在を否定した真空の存在を証明しました」
ポ「すごい! 宇宙に行かなくてもそんなことが分かっちゃうんだ〜」
エ「そのためには、何が事実で何が事実ではないのかが分かる力が必要がです。論理の組み立てには事実以外は使ってはならないからです。ただし、これは一般論です。数学などでは仮想の要素が仮定として論理の組み立てに用いられることがあります」
ポ「奥が深いなあ」
エ「さらに時代が下って、地球の暦で19世紀末にはツィオルコフスキーという人が、真空中でもロケットエンジンを使えば作用反作用の力で前進できることを理論的に示しました。この人は軌道エレベータ理論にまで言及していますが、周囲が理解できなければ誰も支持しませんから、人々からは気にもとめられていませんでした」
ポ「知られていることと理解されていることは違うっていうことですか?」
エ「そのとおりよ、ポロちゃん。でも、一人だけ、これを重大なことだと感じた人がいました。それがロバート・ゴダードでした。この人はドーラにおけるゴーヒャ・キージェの立場に位置する人でした。ゴダードの月ロケット打ち上げ計画は、世間の嘲(あざけ)りの対象となりました。“真空中でも飛行できる”というゴダードの主張に対して、ニューヨーク・タイムズという一流新聞社でさえ、社説でゴダードは“高校で学ぶべき知識を持っていないようだ”と非難したほどです」
ポ「それは、きっとその時代の地球人の考えを代弁してるんだろうね」
エ「そのとおりです。おそらく人々は真空中ではロケットを推し進める物質、逆に言うとロケット噴射を受け止める空気や水のようなものがないから前には進めないと考えていたのかも知れません。これは人々がニュートンの“作用・反作用の法則”を実は理解していなかったということを示していると言えるでしょう。今でも、地球人の多くは地球が1自転すると一日であると信じている人が少なくありません」
ポ「やっぱり地球人はバカかも」
エ「つまり、地動説は厳密に言うと理解されているわけではないということです。地球は1年間に約366.25自転しています。1自転は23時間56分です。しかし、地球は一日におよそ角度で1度弱、公転軌道上を移動するので、太陽が空の同じ位置に戻るまでは4分余計にかかって24時間かかります。簡単なことですが、理解しようと思わない人にとってはどうでもよいことなので、真実は霧の中のままになってしまいがちです」
ポ「ポロは断言するね、地球人はバカだと思うな」
エ「また考えが変わったのね、ポロちゃん。ポロちゃんにはどこまで本当のことが分かるかしら。もう少し話を進めるわ」
ポ「ポロは、もう考えなんて変わらないよ。地球人はバカだよ」
エ「1969年、人類初めての月面着陸の前日にニューヨークタイムズは49年前のゴダード批判を行った社説について誤りを認めて謝罪し、1992年にはローマ教皇ヨハネ・パウロ2世がガリレオ裁判が誤りであったことを認めてガリレオに謝罪しました。謝りに気づいて謝罪するというのはとても素晴らしいことです」
ポ「遅すぎだと思うよ、ポロは」

つづく

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2007-06-04 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第12回 エレクトラ先生さいごの授業 その6

エレクトラ先生さいごの授業 その6

エ「いいえ、遅すぎることはありませんよ、ポロちゃん。15世紀の地球にはレオナルドという人がいました。レオナルドは“事実から学べ”と言いました。そして、事実を知るために画家という職業を選びました。創造者たる神の行い全てを知る方法は厳密な観察による事実の把握であり、それは絵に描かれて初めて自分自身がどれだけ正確に事実を捉えたかが分かるからです」
ポ「・・・・ちょっとすごいな」
児童3「すごいのはエレクトラ先生だと思います。あたし、いま感動してます」
エ「ありがとう」
児童2「ぼくも! エレクトラ先生は、どうしてエレクトラ先生になれたんですか?」
エ「それはね、とむりんせんせいのおかげです」
ポ「とむりんせんせいって誰ですか?」
エ「地球の音楽家です。私はせんせいのもとで学びました」
ポ「え゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!! エレクトラ先生は地球に留学してたのか!」
エ「そうです。私の師と仰ぐのはとむりんせんせいしかいないと確信したからです」
ポ「ポロは地球人を見直したよ。ホント見直した。ポロはおっきくなったら地球に留学するよ、ぜったい決めた」
エ「ドーラでは当たり前になっている音楽の“ドレドレ感”も、地球では、まだまだ理解されていません」
ポ「意味ないじゃん!」
エ「でも、いままでお話したように、地球人は着実に真実にたどりつこうとしています。未来は決して暗くないと思いますよ」
ポ「そうかなあ」
エ「確かに不安な点はあります。それは、地球人が地球を汚してしまう習性のようなものがあって、その重大さに気づいていないことです。その星の文明度は水のきれいさをどれだけ守れているかで表されます。それで言うと、地球は最低点に近いのです」
ポ「やっぱり・・」
エ「地球のような星では、だれより先に真実にたどりついた人たちは多くが無名です。ずっと後になって人々が真実に追いつくと、誰が正しかったのかを理解します」
ポ「ポロが地球に行って、真実を人々に知らしめるよ、ぜったいやる。やってみせるよ!」
エ「そう思ってくれるのはうれしいわ。でも、それはポロちゃんの思い込みかもしれないわ。大切なのは真実を見極めることよ」
ポ「ふふふ。ポロならダイじょぶさ」

 こうしてエレクトラ先生さいごの授業が終わりました。


※これはとむりんせんせいの実際のレッスンを元に時系列順に並べ直したものです。事実確認のためにはウィキペディアを参考にさせていただきました。内容に誤りが合った場合、その責はすべて、私“エレクトラ”が負うものです。とむりんせんせい、ポロ師範、およびウィキペディア関係者各位に深く感謝いたします。

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2007-03-01 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第11回 ポロの一族

 
 ポロの一族

むかし、たくさんのポロがいた。
ポロは書物を読み
嘘をつかず
みなりを気にせず
修業のために飯を喰わなかった
うしろ指をさされると修業した
恥ずかしい心が生じると修業した
ポロは銭をためるかわりに修業した
つらいと言うかわりに修業した
恩を感じると胸の中にたたんでおいて
あとでその人のために修業した
いくらでも修業した
やがて歳をとるともともと白かった毛並みが本当に真っ白になって雪と区別がつかなくなった
しわが深く眉毛はながく
そして声がまだ遠くまで聞こえた
ポロは心を鍛えるために自分の心臓をふいごにした
そして種族の重いひき臼をしずかに回した
やがてポロは全てを悟ると次々に死んだ
悟りの境地は誰にも伝えることができず到達したものだけがそれを得た
ポロが次々と死ぬと到達しようとする者が少なくなった
ポロは死んで天の星となったが悟らぬ者には区別がつかなかった
そして最後のポロが地上に残った
悟ろうとする者たちがわずかにその道場に集ったが
悟りの境地は果てしなく遠かった


※ この作品は、タイトルを萩尾望都「ポーの一族」、内容は中野重治作「豪傑」を下敷きにしています。

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2007-02-28 ポロの日記 2007年2月28日(波曜日)なんか変だぞ

 なんか変だぞ


 朝、せんせいの奥さんが起きてきて窓の外を見て言いました。

奥「あら? 水が引いてるわ」

 夕べ、ポロの知らないうちに大雨でも降ったのでしょか?

ポ「きのう、水が出たの?」
奥「きのうじゃないわ。ずっと前からよ。そろそろ高台に避難しないとって話してたじゃないの。ポロちゃん、どうかしたの?」

 そこにせんせいが来て言いました。

せ「いや、きのう雨は降らなかったし、ここしばらくは水浸しになったことはないよ」
奥「そんなことはないわ。昨日の夜、引っ越しのこと相談したばかりじゃないの」

 続いて風にいちゃんが起きてきてバルコニーから空を見上げて深呼吸すると言いました。

風「あれ? リングがないぞ」
ポ「あはは。リングがあるのは土星とか天王星とかだよ」
風「それじゃなくて、静止衛星軌道をリボンみたいな薄い構造体でつないだリングだよ」
ポ「もしかして、軌道エレベータがスポークみたいに何百ぽんもあるやつ?」
風「そうに決まってるだろ。あれがなかったら地上のエネルギー供給はどうなるんだよ」
ポ「あのさ、風にいちゃんは夢を見てるんだと思うな。そんなのの実現は100年さきだよ」
ポ「ポロこそ変だぞ。リングがないのをおかしいと思わないなんて。ちょっとテレビのニュースを見てみよう」

 それから起きてきた海にいちゃんも変なことを言いました。

海「ボンビーがいないけど、出てっちゃったのか?」
ポ「ううん、ずっと前にいなくなったままだけど、きのうあたり、また来たの?」
海「なに言ってんだ。ボンビーはずっとうちにいて、キング・ボンビーにまで育てたじゃないか」
ポ「ぷるぷるぷる。ボンビーなんていないよ。そんなのがいたら作曲工房は破産だよ」
海「もともと破産してるみたいなもんじゃないか」

 奥さんは、家族の言葉を聞いて「みんな変なことを言うわね」と言いました。せんせいは「別に世界が変わってしまったとは思わないよ」と言いました。

 学校に出かけたはずのたろちゃんも、すぐに戻ってきて変なことを言いました。

た「どこでもドアがないのよ」
ポ「あはは、そんなのドラえもんの世界の作り話に決まってるじゃないか〜」
た「なに言ってんのよ。ATS(ラピッド・トランスポーテーション・システム)のことをみんながそう言ってるだけよ。とにかく、入り口がなくなってるの」

 たろちゃんは、ルクセンブルクにある美術学校にATSで瞬間移動して通学してるんだそうです。でも、ポロの記憶では、たろちゃんは近所の高校に通ってるはず。
 ポロは、だんだん事情がのみ込めてきました。みんなで相談してポロをダマそうとしてるのです。
 ふふふ。ポロはいつもみんなにダマされてるので、もう、こんな簡単な手には引っかからないもんねえ。
 
 午後になって、ポロはいつものように3時のお茶のためにイモようかんを買いに生きました。
 ところが、どこにもイモようかん屋さんがありませんでした。

おしまい

 注:ホントにホントの話だよ。


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2007-02-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第10回 第3幸栄丸 その1

 第3幸栄丸 外伝 その1

 地球温暖化は今に始まったことではなく、はるか昔から地球は二酸化炭素や温暖化ガスを出し続けてきました。動物の呼気、草食動物のゲップ、山火事、それに恐竜のオナラの成分にも温暖化ガスは含まれていました。
 それで余分な二酸化炭素をドライアイスにして、遠く太陽系の外縁部を公転させるというアイディアが南米コロンビアの古代プレコ人によって実用化されました。今でもコロンビアの首都、ボコタの黄金博物館に当時の二酸化炭素運搬船の模型が「黄金ジェット」という名前で展示されています。
 この二酸化炭素投棄システムは非常によくできていましたが、プレコ文明の崩壊とともに失われてしまいました。
 これは、プレコ文明の遺跡から発掘された粘土板に記された物語の一部を元に加筆復元された物語です。可能な限り原典に忠実に復元作業を行っておりますが、それゆえ、逆に現代の物語ではないかと思われてしまうような記述も出てまいります。それらは全く作為的になされたものではないことをご了承ください。
 この研究が20世紀以降の地球文明の工業化による急激な温暖化の抑制対策のヒントとなれば幸いです。

 プレコ文明研究委員会


 (1)二酸化炭素フィルター付き足踏みポンプ

ポロ「キャプテンレンジャー、早く二酸化炭素を集めちゃおよ。そうしないと日が暮れちゃう」
レンジャー「そうだな。よし、やるか」

 ポロとキャプテンは、鋳物製のお釜のようなポンプのペダルを両足でせっせと踏みました。ペダルを踏むと空気が吸い込まれて、その中から二酸化炭素だけが漉しとられて圧縮されます。100回踏むとだいたい1グラムくらいのドライアイスができます。ポロたちのほかにも何千人もの人や猫やアルマジロが働いていました。
 ここで働いている人たちには太りすぎなんてありえませんでした。それで、何千年かあとに、シェイプアップ・ステッパーなどの健康運動器具が売り出されたりすることになるのですが、ポロたちはそんなことを知るよしもありませんでした。

つづく

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2007-02-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第10回 第3幸栄丸 その2

 第3幸栄丸 外伝 その2

 (2)二酸化炭素運搬船第3幸栄丸出航準備

是輔「液体メタンがたりないようですぜ」
司令官「うむ。牛の糞の発酵を急がせよう」
是「酸素の液化も急いでくだせえ」
司「それは、間に合うから安心したまえ」

 是輔がパイロットを務める第3幸栄丸は、100隻以上あるプレコ王国の宇宙船のひとつでした。
 ドライアイス運搬船は、鉄と銅、そして柔らかい性質を利用して金と水銀、気密を保つための天然ゴムでできていました。燃料は家畜の糞から作られるメタンとドライアイスを作る時の副産物である酸素でした。まだメタンハイドレート(海底にある結晶化したメタンと水分子)が発見される前だったのでバイオ燃料だけで飛んでいました。遠い将来、バイオ燃料が脚光を浴びるなどとは、是輔たちには知るよしもありませんでした。
 

 (3)海面冷却技術

ぽん吉「船長、そろそろ高温海面領域に到着です」
船長「よし、漕ぎ方やめ。ドライアイスを浮かべるんだ」
船員たち「へい!」

 プレコ王国の神官たちは太平洋の海面温度の変化が作物の豊作・不作に影響を与えることに気づいていました。そのために、海面温度が上がると作りためたドライアイスの一部を海に浮かべて海面温度を調節していました。プレコ文明が滅びると海面温度が上下したために陸地では嵐が荒れ狂ったり日照りになったりしました。それで海面温度の上下は後にエルニーニョとかラニーニャと呼ばれて恐れられるようになりました。しかし、ぽん吉たちには知るよしもありませんでした。


 (4)第3幸栄丸発進

是「こちら第3幸栄丸。発進を許可願います」

 是輔はテレパシーで管制塔に呼びかけました。

管制官「こちら管制塔。第3幸栄丸、発進を許可します。よい旅を」
是「じゃあ、ちょっくら行ってきやす」

 どどどどどどどどどど〜〜〜〜!

 第3幸栄丸は、自らの生み出す推力に加えて、地球が自転する角速度を利用してプレコの空に舞い上がっていきました。ずっと将来、多くの宇宙基地が赤道近くに作られるようになるとは是輔たちには知るよしもありませんでした。

つづく

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2007-02-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第10回 第3幸栄丸 その3

 第3幸栄丸 その3

 (5)木星第5衛星“アマルテア放送局”

アナ「ヘイ、宇宙のトラック野郎たち! 元気でやってるか?」
是「もち!」
アナ「おう、今、なんだか返事があったような気がするぜ。いいか、お前ら絶対に周波数変えるなよ。ライバルのタイタン南銀座放送局なんかに合わせやがったらタダじゃおかねえぞ」

 第3幸栄丸は電波の受信設備を持ちませんでしたが、是輔のテレパシー能力はアマルテア放送局の名物アナウンサーの精神波を捉えるには充分でした。

アナ「よ〜し、今日もお話の時間だ。今回はSF未来活劇だ。楽しみにしてろよ」

 間もなく女性アナウンサーの声で朗読が始まりました。

 * * * * * * *

 ものの数分でラジェンドラは影との接触に成功した。それは、やはりドーラ2の脱出ポッドだった。脱出ポッドと接舷後、ドッキング。がっちりとつながった共通規格のドッキングポートから出てきたのは、正真正銘のドーラの王位継承権第1位アメン王子だった。

「アメン王子、ご無事で。お怪我はありませんか!」
「ありがとう、かすり傷だ。君の名前は?」
「ドーラ防衛軍宇宙航空隊、第3哨戒機甲師団、第3哨戒部隊所属タブタ2等空士であります!」

 タブタは雲の上の存在である第1王子を目の前に緊張した。

 * * * * * * *

是「カックいいなあ〜!」

 * * * * * * *

タブタが主操縦席を王子に譲ろうとすると、王子は「この船では君が正パイロットだ」と言って副操縦席についた。

「愛称は?」
「はっ?」
「この船の愛称だよ」
「はっ、ラジェンドラであります」
「いい名前だ。よし、ラジェンドラ発進を発進させたまえ」
「アイアイサー!」

(2005-09-27 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第5回「空飛ぶタブタ」より)

 * * * * * * *

 是輔には、遠い将来、自分の子孫が宇宙船パイロットになってアマルテア放送局のファンになるなどとは知るよしもありませんでした。

つづく

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2007-02-12 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第10回 第3幸栄丸 その4

 第3幸栄丸 その4
 
 (6)ドライアイス投棄

 やがて第3幸栄丸は海王星軌道を越えた太陽系外縁部に到達しました。

「よし、船倉ドアのロックを解除。これが済んだら帰れるぜ。どっこいしょ」

 そうつぶやくと是輔はドライアイスの大きな塊を宇宙空間に放ちました。ところが、ちょっとした力の加減で、このドライアイスは予定の軌道速度に達せず、徐々に太陽に向けて落下しはじめました。のちにC/2006 P1という符号があたえられてマックノート彗星という名前で呼ばれ、地球から雄大な尾を曳く姿が目撃されることになりますが、是輔には知るよしもありませんでした。


 (7)地球帰還

 第3幸栄丸が地球に近づくと、地上の管制官とテレパシーで交信して着陸許可を求めました。

管制官「第3幸栄丸。今回は進路をハチドリに設定して着陸してください。第3幸栄丸の10分前に第14幸栄丸がサル進路で着陸する予定です」
是「了解しやした」

 是輔はナスカにある地上目標であるハチドリに進路を定めて着陸態勢に入りました。これらの地上目標が、将来「ナスカの地上絵」として有名になるとは、是輔には知るよしもありませんでした。

 (7)黄金ジェット発見

 それから何千年もが過ぎました。
 コロンビアの古い遺跡から発掘された第3幸栄丸の模型を考古学者たちは魚であると結論づけました。一部の超考古学マニアたちが古代のジェット機であると主張したために、よりインパクトの強い「黄金ジェット」の名で知られるようになりましたが、真相に誰も気づかないなど、古代プレコ人には知るよしもありませんでした。




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2007-01-31 ポロの日記 2007年1月31日(波曜日)ポロ、珍念さんに入門する その1

 ポロ、珍念さんに入門する その1

 せんせいに弟子入りしてたった1年もたってないけど、珍念さんは何だかスゴそうだと感じていました。そして、ついにポロはおとうと弟子の珍念さんに弟子入りすることにしました。どうしてかっていうと、珍念さんを見ていたら、何かを学ぶというのは時間をかければよいというものではないことが分かったからです。本当に大事なことが何かを見抜く力があれば、真実にたどりつくのはあっという間かも。珍念さんは、そんな力の持ち主に思えたからでした。

ポロ「珍念さん」
珍念「これはポロ兄さま、どのようなご用でございましょうか」
ポ「今日からポロ、珍念さんに弟子入りしちゃうから」
珍「兄弟子さまに、そのように仰(おっしゃ)られても拙僧は戸惑うばかりでございます」
ポ「じゃ、勝手に弟子入りするからいいよ」
珍「勝手とおっしゃいましても・・・」
ポ「迷惑はかけないからさ」
珍「ではどうぞ、お好きなようになさってください。しかし、拙僧、まだまだ弟子などとれるほど悟ってはおりませぬ」
ポ「いいよ、ポロ勝手についてまわって勉強しちゃうから」
珍「いやあ、しかし、拙僧これから買い物に参ります。日用品の買い物ですから何も参考にならないかと・・・・」
ポ「うわあ、勉強になりそうだよ〜!」
珍「そうでございますか」

 珍念さんは背筋をぴんと伸ばしたまま、美しい歩き姿で出かけました。ポロはその袈裟姿にちょっと惚れてしまいました。

ポ「珍念さん、カッコいい〜!」
珍「ひやかさないでください」
ポ「ホントだよ〜! ポロ、猫背なおそっと!」
珍「ポロ兄はせっかく猫なのでございますから、猫らしく自然に振る舞うのが一番かと存じます」
ポ「そうか〜。でも。袈裟が欲しいなあ。どこで売ってるの?」
珍「猫用の袈裟は存じておりません」
ポ「よし、ポロが縫うぞ」
珍「・・・・・・。何ごとも修業でございます」

 珍念さんは近所のマルエツにやってきました。

ポ「へえ、お坊さんもマルエツに行くのか〜」
珍「まさか、お山のタヌキ商店で買い物をするなどと思っておいででは?」
ポ「そ、そのとおり。ホントにそう思ってたよ。ポロ、タヌキ商店の場所教えてもらおうかと思ってたもん」

 猫はマルエツに入れないので、ポロは珍念さんの手提げ袋に隠れました。
 珍念さんは、食料品の賞味期限を調べて一番古いものを選んでは買い進めていきました。

つづく

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2007-01-31 ポロの日記 2007年1月31日(波曜日)ポロ、珍念さんに入門する その2

 ポロ、珍念さんに入門する その2

ポ「どうして、古いのなんか買うの? ポロだったら新しいのから買うけどな」
珍「毎日毎日、日本では300万人分相当に及ぶ食品が賞味期限内に販売しきれずに廃棄処分されているとせんせいから伺いました。なるほど、新しいもののほうがよいような気がしますが、拙僧は今日の食材を求めに参ったのでございます。賞味期限内であれば古くて充分。期限切れであっても、食べられるかどうかくらい判断できるつもりでございます」
ポ「す、すごい! ポロもそうするよ」
珍「はい、そうなさってください。せんせいも、そのようになさっておられます。無益な賞味期限信仰などによって食べ物が無駄にされなければ世界で300万人の人々が餓えから救われる事になります」
ポ「そうだね、日本の食べ物の多くが輸入品だもんね。これは世界に影響する問題だよ。ポロは珍念さんに弟子入りしてよかったなあ」
珍「ワタクシではなく、せんせいの教えでございます」
ポ「うん。ポロも、その話きいたけどさ、実感したのは珍念さんのおかげだよ」
珍「あに弟子なのでございますから、そのようなことはおっしゃらずに・・・」
ポ「こ、これがポロの実力さ」

 珍念さんはマルエツを出ると、近くの春日公園に行ってベンチに座りました。

珍「さあさ、ポロ兄さまもどうぞおかけください」
ポ「でもさ、ここって時々お月さまが出てわるさをするんだよ」
珍「ああ、妖怪“満月もどき”でございますね」
ポ「あれは妖怪だったのか〜。ポロ、もともと雷さまにおへそ取られちゃったから平気だったけど、おへそを狙って襲ってくるんだよ」
珍「大丈夫。もしあやつが出て参りましたら拙僧が退治いたしましょう」
ポ「すごい、珍念さんは法力もあるのか〜」
珍「いえいえそうではございませぬ。あやつは殺虫剤でイチコロでございます」
ポ「なんだ、虫みたいなやつだったのか〜」
珍「虫とは言っても昆虫という意味の虫ではございませぬ。虫を3つ書く蟲でございます」
ポ「わあ、ポロ、それ蟲師っていうアニメで見たよ」
珍「さようでございましたか」
ポ「でも、殺虫剤でイチコロとはびっくりだなあ」
珍「殺虫剤と聞くと“虫専用”という感じがいたしますが、実際には命を根こそぎにしてしまいます。当然のことながら人だって死に至ることがあります」
ポ「そ、そういえばそうだった〜」
珍「それを警告したのがレイチェル・カーソン女史の“沈黙の春”でございます」
ポ「ポロもせんせいにすすめられてちょっとだけ読んだよ」
珍「というわけで、拙僧も化学系殺虫剤は緊急時だけ使い、いつもはホウ酸ダンゴや曼珠沙華の根の抽出液などを使います。今までに何十匹も退治しております」
ポ「わはは。お月さまがホウ酸ダンゴに弱いなんて笑っちゃうなあ。ちっともコワくなくなってきたぞ〜!」
珍「まずは敵を知ることです。事実の確認と把握こそが基本でございます」
ポ「分かってるけど、ポロ、ちっとも分かってないんだよ〜」
珍「・・・・・・・」

つづく

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