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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-04-13 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その1
2004-04-12 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その2
2004-04-11 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その3
2004-04-10 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その4
2004-04-09 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その5
2004-04-08 お絵かき たろちゃん その1
2004-04-07 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その1
2004-04-06 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その2
2004-04-05 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その3
2004-04-04 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その4


2004-04-13 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その1

女神さま降臨 その1


 せんせいはポロに、決して作曲中に部屋に入ってはいけないといいました。ポロは、そう言われるといろいろと想像がふくらんでしまいます。
 実は、せんせいは鶴の化身で、自分の羽を抜いてはその軸をペンにして楽譜を書いているのではないかとか、実は、ろうそくを立てて炎を見つめながら降霊術を行なって過去の大作曲家からいろいろとアイディアをもらっているのではないかとか、実は、せんせいはホントに紙一重の天才で、雄叫びをあげながら楽譜を書きまくっているのではないかとか、もう、ホントの事が知りたくてたまりません。もう、作曲中のせんせいを見てみたくて見てみたくて、いてもたってもいられなくなりました。
 それでとうとうポロが、せんせいの作曲の様子をのぞこうと部屋に忍び込むことにしました。たしか、補修用の壁紙が第4格納庫にあったはず。ポロは壁紙を身体を覆えるくらいの大きさに切って、忍者のようにカムフラージュしながら午前2時の仕事部屋に入り込みました。ドキドキするなあ。

 すると、すでにそこでは信じられないような光景が繰り広げられていました。ふわりと宙に浮かんだ女神様が、せんせいの耳元で何かをささやくと、せんせいはホイホイと楽譜を書きます。せんせいが楽譜を書き終わると、また女神様が耳元でささやきます。すると、せんせいは、またホイホイと楽譜を書くのです。
女神様がゆっくりとポロのほうを向いたので、ポロは思わず声をあげそうになりました。女神様は唇に右手の2の指を当てて、しーっというようなしぐさをしました。

「うぐ・・・・」

 叫びそうになったポロも、すんでのところでこらえました。
 それから1時間、せんせいは女神様のいいなりになってホイホイと楽譜を書き続けました。でも、せんせいがくたびれた様子なのを見てとった女神様は、ポロのほうを向いて「いい子にしてて偉かったわ」と小声で言うと、ポロに投げキッスをしてバイバイと手を振りながら消えていきました。

「あわわわわわ!」

 その声で、せんせいがポロに気づきました。

「ポロ、作曲中は入ってきちゃダメだって言ったじゃないか!」
「ポロ、女神さま見ちゃった・・・」
「何言ってるんだ」
「ポロ、見ちゃったもん・・・」
「どこで?」
「今、ここで・・・」
「なに寝ぼけてるんだ」
「ねぼけてないもん。せんせいの耳元でささやいてた」
「誰もささやいてなんかいなかったぞ」
「でも、女神さまがささやくと、せんせいはホイホイ楽譜を書いてたもん・・」
「ポロ、マタタビ酒の飲み過ぎじゃないのか?」
「そんなの、飲んだことないよ〜!」
「とにかく、女神様なんていなかった」
「え〜ん、ホントだもん!ホントだもん!」

 ポロは、悔しくて泣きながらせんせいの部屋を飛びだしました。でも、せんせいに見えていないのなら信じられるわけがないかも、と気がつきました。
 その時、シュデンガンガー商会で「誰でも心霊写真」という特殊フィルムを見かけたことを思いだしました。あれなら女神さまが写るかも知れません。ポロは女神さま降臨の証拠をつかもうと、キョロちゃんカメラを持ってシュデンガンガー商会に行くことにしました。

つづく

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mokoさん、レスが遅くなってゴメなさい。あまりに核心をついたつっこみだったので、ネタがばれそうでお返事できませんでした。これからもするどいつっこみを楽しみにしてるからね。 / ポロ ( 2004-04-09 12:42 )
「夕鶴」を思い出させるようなお話ですね♪‘女神様’が帰らないように、ポロさんも内緒にしてた方がいいのかなぁ? / moko ( 2004-04-07 16:35 )

2004-04-12 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その2

女神さま降臨 その2


 深夜便のトラックに乗り込んだのは、もうすぐ夜が明けるという時刻でした。ポロは、閉店間際のシュデンガンガー商会にすべりこみました。

「おやおや、ポロさん。いつも大慌てでございますね」
「わー、間に合った! 修士さん、コバワ」
「今日は、どのようなご用でしょうか」
「あのね、誰でも心霊写真ていうフィルムが欲しいの」
「ああ、あれでございますか。ここだけの話ですが、あれは眉唾ものの商品です」
「えっ? どういうこと」
「普通のフィルムに微量のX線を照射して、ところどころにぼんやりと感光させてあるのです。それで普通に写真を撮ると、はい、心霊写真のできあがりというわけでございます」
「わー、シュデンガンガー商会はインチキ商品も売ってるのか!」
「これに関しては、お客様を騙(だま)そうとしているわけではございません。心霊の世界は大変危険でもあり、面白半分で関わると大変なことになります。それで、お客様を守りながら楽しんで頂ける商品ではないかと思っております」
「そういうことだったのか〜」
「また、なぜ、このような品物が必要なのですか?」
「それはね、かくかくしかじか・・・」
「さようでございますか。それでしたら、霊的な世界を科学的に研究している遠い親戚をご紹介いたしましょう。森羅研究所を主宰しています。例のスティクス川救難キットの原理を、兄の博士(ひろし)に伝えた人物です」
「わあ、ホント。アリガト!」

 ポロは、修士さんに書いてもらった地図を頼りに、森羅(しんら)研究所を目指しました。地図のはじっこにはJR鴬谷(うぐいすだに)の駅があって、右の方には<恐れ入谷の鬼子母神(きしもじん)>と書いてあります。う〜ん、なんだか聞いたことがあるな。<その手は桑名の焼きハマグリ>も知ってるな。でも、桑名ってどこだろ。
 神田から鴬谷くらいならポロでも歩けそうな気がしたので、ポロは地図と野生の勘でどんどん進んで行きました。途中で、猫集会をやっていたので、ポロは鬼子母神への行き方を訊ねました。そのうちの一匹が鬼子母神の近くの家で飼われていたことがあったということで、詳しく教えてくれました。修士さんは人の目線の地図でしたが、そのトラ猫は猫の目線で語ってくれたので、ポロはばっちりと場所を頭に叩き込みました。お礼を言うと、ポロはがまんができなくて4本足で走り始めました。修士さんの地図と方位が90度くらいズレていました。
 すっかり夜が明けて人通りも多くなってきたので、ポロは人ごみを避けて住宅の間を縫って走る猫専用けもの道をひた走りました。
 そして、ついに緑豊かな鬼子母神境内にたどり着きました。さすがポロの野生の勘! あとは鴬谷の駅を確かめれば地図が読めます。ポロは境内で昼寝をしている猫に訊ねました。

「ねえ、君。鴬谷の駅はどこ?」
「君はだれだい? みかけない顔だけど」
「うん、ちょっと遠くから来て、場所を探しているんだ」
「鴬谷なんて知らないなあ」
「え〜、でも、ここの近くに鴬谷があるはずなんだけど」
「君が探しているのは“恐れ入谷の鬼子母神”なんじゃないか?」
「そ、そだよそだよ」
「ここは雑司が谷の鬼子母神だよ」
「え゛〜!! 鬼子母神てふたつもあるの〜! だから修士さんは、わざわざ“恐れ入りやの”ってつけてくれたんだ〜」
「知らない猫も多いよ。ま、気を落とさないで」
「教えてくれてアリガト!」


つづく

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2004-04-11 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その3

女神さま降臨 その3


 ポロは、気を取り直して来た道を戻り始めましたが、なんだか急にクタクタになって、のんびり歩いて行きました。すると、目の前に見たことのある屋台が。ノボリには“元祖 今川焼き”の文字が。ポロは屋台に走りよりました。

「おじさ〜ん。今川焼きちょうだい」
「よ。おまえさんは、たしか今川橋の猫」
「わ、覚えていてくれたの?」
「忘れませんよ。あの時は確か12個もたいらげた」
「そうだよ。おいしかったなあ」
「はい、できたて。毎度ありがとうございます」
「うわ〜。巌流さんの今川焼きを、また食べらるなんてうれしいなあ」
「どうして名前を?」
「だって、自転車に書いてあるよ。それに、実は哲学さんから聞いたの」
「松戸哲学をご存知で」
「そだよ」
「あっしのことを悪く言っていたんじゃないですか?」
「そんなことないよ。それに、人の言葉は事実かどうか分からないから、巌流さんのことはポロが判断するよ。せんせいの教えなんだ」
「おまえさま、ポロさんていうんですか」
「そだよ。猫の星のドーラから来たんだ」
「それで、話せるわけも分かった」
「ポロには、この今川焼きがものすごく厳選された材料でできてるってことが分かるよ」
「ほう、それはうれしい話。では、どんなことが分かるか、この松戸巌流におしえてくださらぬか?」
「そだね。材料の小豆も小麦も、ほかで食べたことがないっていうこと。哲学さんから聞いたんだけど、よその星で品種改良したって。まさかクランベリーヒル?」
「ど、どーしてそれを?」
「クランベリーヒルの匂いってやつかな。とっても真剣な味だと思うな、ポロてきに」
「厳しくて優しい星だった」
「ところで、こうしちゃいられないんだ。ポロね、恐れ入りやの鬼子母神に行かなきゃならないの」
「気をつけて行っておくんなさい。今日はモニター料ということで、お代は要りません」
「わあ、アリガト!」
「いや、とても参考になりました。近ごろは誰もが自分の舌さえ信じなくなってる。テレビや雑誌がウマいと言ったものだけがウマいんだ。食べてみてウマいと思わなくても、それは自分たちが分からないだけだと思ってる。だから、そういう店に行列作って並んだりする」
「分かるよ、ポロ、すごく分かる。でも、巌流さんの今川焼きは一流だよ。こんど、せんせい連れてくるからね。きっとおいしいって言うよ」
「ぜひ、そうしてください。せんせいさんによろしく。じゃ、気をつけて」
「うん」

 巌流さんの今川焼きのおかげで元気を取り戻したポロは、また走る気持ちを取り戻しました。
 入谷鬼子母神に着いたのはお昼を過ぎていました。鬼子母神のホントの名前は真源寺というお寺でした。雑司が谷の鬼子母神と違ってほとんど緑はありません。ビルに囲まれた町中のお寺です。ここからは修士さんの書いてくれた地図だけが頼りです。鬼子母神近くの住宅街の中を歩いていると、すぐに森羅研究所の看板を見つけました。建物はフェッセンデン商会くらいオンボロでした。


つづく

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2004-04-10 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その4

女神さま降臨 その4


とんとん! 

「ごめんくださーい!」

少し間をおいて、ドアが開いて痩せたおじさんが現れました。

「いらっしゃい。おや、誰もいないぞ」
「下を見てよ。ここだよ、ここ」
「おや、しゃべる猫かね」
「ポロといいます。松戸修士さんから聞いてきました」
「おう、それはそれは。さ、さ、入って」
「おじゃましまーす」

おじさんの名前は森羅万象。松戸一族の遠戚だそうです。ポロは事情を説明しました。

「かくかくしかじか、どーのこーの」
「なるほど。まさに私のクライアントにふさわしい方だ、あなたは」
「で、写真は撮れる? ポロ、キョロちゃんのカメラを持ってきたんだけど」
「ちょっと待ってください。説明しますから」
「うん」
「たとえば蜂は、紫外線を見ることができます。犬やコウモリは超音波を聴くことができます」
「うん、聞いたことがあるな。犬笛は超音波だよね」
「そのとおりです。おそらく、あなたは猫なので人よりも広い波長、そして弱い光を見ることができたのでしょう」
「そっか。だからせんせいには見えなかったんだ」
「裸眼では人間には無理かも知れません」
「それで、それが写るフィルムはあるの?」
「あります。普通に売られているフィルムのどれでも写ります」
「なあんだ。それじゃ、わざわざ心霊写真用なんて買う必要ないじゃないか〜」
「写る、と言っただけです。そこに被写体がなければ写りません。UFOだって、飛んでいなければ写りません」
「ねえ、万象さんてUFOの研究もしてるの?」
「はい。ここではUFO写真の鑑定依頼もしばしばです」
「わあ、写真見てみたいなあ」
「そうですか。それじゃあ、一番新しいものをどうぞ」

万象さんが持ってきてくれた写真は、なんだか見覚えがありました。それは、神田淡路町の町並みに向けて降下するシュデンガンガー商会の小型シャトルでした。夕陽をバックにしたシルエットなので見えないけど、ホントなら船体の丸い窓からポロとアンジュちゃんが石英ガラスに顔をぺったりとくっつけて外を見ているはずでした。

「す、すごいね。これがUFOか・・・」
「この写真からは、合成やCGなどのトリックが見いだせません。本当に飛んでいるとしか思えない信頼性の高い写真です」
「ぽ、ポロも本物だと思うな」

ポロは、すぐに話題を元に戻しました。

「それで、ポロは、いったいどうすればいいの?」
「そのキョロちゃんカメラで女神様を普通に撮影してください。感度の高いものがいいでしょう。研究用に写真を分けていただけるのなら、この超高感度フィルムを差し上げます」

万象さんが渡してくれたのは、イルフォード・デルタ3200というモノクロフィルムでした。

「ぜんぜん知らないメーカーだね。なんだかカッコいい〜!」
「写真が趣味という方なら、きっと知っていますよ」

ポロは、お礼を言うと、森羅研究所をあとにしました。

作曲工房に戻ったのは、夕方でした。早速、今夜からせんせいの仕事部屋で張り込みです。ポロは、夕ご飯を食べ終えると、夜中に備えて仮眠をとることにしました。

「ぐーすやらぴー」

 目が覚めると、外から小鳥たちの声が聞えてきました。

「わあ、朝になってる!」

ポロとしたことが寝過ごしてしまったのでした。ま、まずい。夕べは写真が撮れなかっただけじゃなくて、ポロつうしんも書いてないや。
 カメラを確かめると、きのう入れたはずの超高感度フィルムが入っていませんでした。代わりに、ぼんやりと光る紙切れが一枚。

-ポロちゃん。おイタしちゃダメよ。


つづく

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2004-04-09 ポロの日記 2004年4月1日(草曜日) 女神さま降臨 その5

女神さま降臨 その5


 そのメモは読み終わったとたんに、ふわ〜と消えてしまいました。うわ。女神さまには何でもお見とおしなんだ。ポロは、相手がどう考えても格上だということに気がつきました。どうしたらいいんだろ。
 ポロは、もういちど森羅研究所に向かいました。

「万象さん、大変!」
「どうしました」
「かくかくしかじか、これこれしかじか」
「なるほど、分かりました。せんせいのところにお見えになる女神様は、そんじょそこらのありふれた低級霊とは事情が違います」
「そ、そーなのか〜、エラーい女神さまなんだね」
「そのとおりです。この件からは手を引いたほうがいいでしょう。危険な霊ではありませんが、力が違いすぎます。それに、せんせいは幸運な方といっていい。何か間違いがあって女神様が来なくなっては大損失です」
「そっか。そうするよ」

 その晩、ポロがお話を書いていると、例によって超特大サイズのスランプがやってきました。どう考えても筋が先に進みません。ところが、急にアイディアが湧いてきて、ポロはどんどんお話を書き進めていきました。あんまりスイスイ進むので変だなあと思っていると、ポロの耳元で誰かがお話をささやいているのでした。

 ・・・△*∞£○〜♪

「わ、女神さま!」
「あら、気を散らしちゃダ・メ・よ! 可愛いポロちゃん〜♪」

 女神様は、お色気たっぷりのしぐさでポロをなでました。ポロは猫の習性で、たちまちゴロゴロいってしまうのでした。

「ねえ女神さま。もしかして、ポロの書いたお話も、全部女神さまが教えてくれてたの?」
「そ〜よ〜、ポロちゃん♪」
「せんせいは、女神さまに全然気がついてないのに、どうしてポロには女神さまが分かるの?」
「せんせいだって気がついてるわ。でもね、書き終わると忘れちゃうの。あたしが忘れさせちゃうから。ポロちゃんも忘れちゃうわよ、きっと〜♪」
「ポロは忘れないよ、ぜったい!」
「そ〜、えらいわ。自信は大切よ〜♪」

 そう言うと、女神さまはどこかへ行ってしまいました。

 朝、目が覚めてパソコンを立ち上げると、お話がひとつ完成していました。わあ、いつ書き上げたんだろう。そっか、きのうか。日付を見て、そう思いました。ポロは書き上げた気もするし、書き上げなかった気もしましたが、読んだらとても面白かったので、やっぱりポロは天才だなあと自画自賛しました。でも、いくらなんでも女神さまなんて科学的じゃないなあ、こんなの誰も信じないよなあ、なんて思ったりもしましたが、ま、お話だからたまにはいいや、と開き直りました。
 そこへ、せんせいがやってきました。

「ポロ。きのうの夜、見たんだ」
「なにを?」
「用事があって、ポロのところに来たら、ポロが何かに取り憑かれていた」
「なに言ってんの、せんせい。ねぼけないでよ」
「本当だ。この目で見た。間違いない」
「やだなあ、せんせい。トンデモ本の読み過ぎだよ」
「うーん、見えていない本人に話しても無駄かも知れないな。たしか、松戸博士の遠い親戚に新羅研究所というのを主宰している超常現象研究家がいたはずだ。訪ねてみよう。そうしたら、写真の撮り方を習ってポロに証拠を見せてやるからな。待っていろよ」

 そう言うとせんせいは、すごい勢いで出かけて行きました。せんせいも物好きだなあ。女神さまなんているわけないよね、皆さん。


 おしまい



野村茎一作曲工房

先頭 表紙

2004-04-08 お絵かき たろちゃん その1

 たろちゃんは、ポロとマルエツに行ったりマルチェロと一緒にテレビを見るだけじゃなくて、お絵かきもします。
今日からときどきたろちゃんの絵を紹介しようと思いますが、ポロのスキャナは小さくて、たろちゃんのスケッチブックの半分しか取りこめません。だから、どれも一部分だけです。
 最初は中1(12歳〜13歳)のスケッチブックから「銅の花瓶」(ポロが勝手につけた題名)です。銅に見えたら合格、ステンレスやチタン・イリジウム合金に見えたら、たろちゃん失格です。ホントは、花瓶の右下にクルミが3個あります。


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房


先頭 表紙

みわちゃん、つっこみアリガトございます。ポロは、たろちゃんの絵っていいなあと思います。これからもときどき紹介します。また見てください。 / ポロ ( 2004-04-02 10:38 )
生真面目なデッサンですねー。中学生でこれだけ描けるって、凄いと思います。 / みわちゃん ( 2004-04-01 19:03 )

2004-04-07 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その1

メダカ救出作戦 その1


「あ、ポロちゃん、こんなところで何してるの?」
「わ、アンジュちゃん。ポロね、トラック探してるの」
「どういうトラック?」
「えっとね、神田のほうにいくやつ」
「どうしたの?」
「ヨシコおばあちゃんのメダカが死んじゃったの。神田のお店に救難キットがあるはずだから買いに行くんだ。でもね、ポロは猫だから電車乗れないでしょ。だから、信号待ちしているトラックに飛び乗って行こうと思ったの」
「神田ならあたし行き方知ってるから連れていってあげるよ」
「ホント! わあ、アリガト」
「じゃ、お母さんにお出かけしてくるって言ってくるから」

 アンジュちゃんは、映画ハリーポッターに出てくるハーマイオニーそっくりのせんせい門下の女の子です。この春、中学生になります。
 10分後、ポロたちは最寄りのJR最強線タドタド駅の切符売り場にいました。

「ポロちゃん、タドタド駅じゃないでしょ、たどたどえき、あ、あたしも間違えちゃった」
「ほらね、やっぱりこの駅はタドタド駅って呼ばれたがってるんだよ」
「そうかもね。それで、どこに行けばいいの?」
「かんだだよ」
「駅も神田でいいの?」
「うん、たぶん」
「じゃ、ポロちゃんバッグに入って」

 ぴょん。するり。

「わあ、ポロちゃん、慣れてるね」
「うん、今日はぎょおおおなんて大声出さないからダイじょぶ」
「え〜、そんな声だすことあるの?」
「あ、いや、ないよ。一度もないから安心してね」

 タドタド駅のホームは空の高いところにあります。だいたいビルの7階くらい。ポロたちは一番線から電車に乗りました。最強線は名前のとおり、JR最強です。なんたってまるで空を飛ぶように走るからです。

「なんていうお店に行くの?」
「シュデンガンガー商会」
「へんな名前のお店ねえ。それも、そういう名前で呼ばれたがってるの?」
「そ、そうかも」
「何売ってるお店なの?」
「えっと、波動エンジンキットとか、炊き出し戦隊スイハンジャー変身キットとか、サンタクロース生け捕りキットとかだよ」
「へんなものばかり売ってるのね。おもちゃ屋さん?」
「そうじゃないけど、よく考えると、そうかも」

 ポロたちは、そのあと途中の駅で京浜とうへんぼく線という変な名前の電車に乗って神田に向かいました。そのあとで、どうして唐変木なんていう変な名前なのかが分かりました。

「あ、アンジュちゃん。神田駅だけど、停まらないよ」
「大変! 運転手さん忘れちゃったのかしら」
「分かった。だから京浜唐変木線で言うんだ。ダイじょぶ、次の駅で降りたって歩いていけるから」

 ポロたちは京浜唐変木線が快速運転をしていることを、東京駅のアナウンスで知りました。

「なあんだ、そういうことだったのか」
「あたしたちって、ふだん、電車なんて乗らないもんね」
「そだよ、そだよ。でも、これでひとつ物知りになった!」

 東京駅を出て駅舎を振りかえると、そこには赤レンガのステキな建物がありました。

「アンジュちゃん、見て見て。日本にもステキな駅があるね。タドタド駅も未来的でいいけど、ここのほうが、もうちょっとだけいいかも」
「確か、オランダのアムステルダム駅をお手本に建てられたって聞いたことがあるわ」
「へ〜、そうだったのか」


つづく

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2004-04-06 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その2

 メダカ救出作戦 その2


 ポロたちは、大きなビルの前を通りかかりました。住所が書いてあります。

 “東京都千代田区丸ノ内1-5-1  新丸の内ビルディング”

「わ、正真正銘の丸ノ内だ! それに新丸ビル。ここか〜。ここだったのか〜。甲府の丸ノ内とずいぶん違うところだなあ」
「ポロちゃん、なに感慨にふけってるの?」
「う、うん、何でもないよ。ちょっと昔を思い出したの」

 それからポロたちは、猛ダッシュで、ホントはのんびりとシュデンガンガー商会のある神田淡路町に向かいました。

「ここだよ」
「古いお店ねえ。やってるのかしら」
「ホントは夜から。でもダイじょぶ。事情を話せば開けてくれるよ」

 とんとん! ごめんくださ〜い!

「はいはい、その声はポロさんですね」

 修士さんがすぐにお店のドアを開けてくれました。

「あ、修士さん、お休みのとこゴメなさい」
「いえいえ、きっとまた急用でございましょう。おやおや、こちらのステキなお嬢さんを紹介してください」
「あ、アンジュちゃんだよ。ポロよりぜんぜんピアノうまいんだから!」
「初めまして。どうぞよろしく」
「シュレーディンガー商会の松戸修士と言います。とむりんせんせいとポロさんには懇意にしていただいています。さ、どうぞお入りください」

 修士さんは桜の紅茶を用意してくれました。

「わあ、おいしい。あたし初めて」
「ポロもだな。いいにおいだと思うな」
「ありがとうございます。クランベリーヒルから先週、入荷したばかりでございます。桜のお茶には願ったことが何でも叶うという言い伝えがあります」
「わ、すごい。何を願っちゃおうかな」
「どうぞ、お好きなことを。ところで、ご用はどのようなことでございましょうか」
「あのさ、前にshinさんがスティクス川救難キットでポロを助けてくれたでしょ」
「はい、あんなに見事に救出なさるとは、shin様はただ者ではございません」
「それでね、今度はメダカなの。ヨシコおばあちゃんが可愛がってたメダカがみんな死んじゃったの。だからメダカ救援キットが欲しいんだけど」
「メダカでございますか。たしかメダカはスティクス川を渡らないはずです。少々お待ちください」

 修士さんはアンシブル(宇宙電話)でどこかと連絡をとっているみたいでした。

「お待たせいたしました。メダカをはじめとする水棲生物はスティクス川ではなく、別のところに行くようです。それは、まさに天の川ということでした。救難キットは用意してございませんが、天の川に入る前に追いつけば連れ戻せるはずでございます。天の川まで行かれますか?」
「行けるの? 行けるんなら行くしかないよ」
「便乗させてもらえる宇宙船を調べたのですが、間もなく地球のすぐわきを三河屋デリバリーサービスのノストロモ号が通りかかります。便乗許可も取ってあります」
「わ、是輔さんだ!」
「なんと、お知り合いですか」
「知りあいっていうわけじゃないんだけど、知ってるよ」

 修士さんは、シュデンガンガー商会の屋根裏に案内してくれました。そこには、しぼんではいるものの大きな風船のようなものがありました。

つづく

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2004-04-05 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その3

メダカ救出作戦 その3


「わ。なにこれ?」
「アドバルーンといいます。昔は、日曜日になると至るところで空に浮かんでいたものです。実はこれ、アドバルーンに見せかけた高層気球です。最近はアドバルーンが上がることがなくなってしまったので、全くカムフラージュにはなりませんが、とにかく高度2万メートルから超軽量シャトルを発射して高度300キロまで達することができます。一人乗りですがポロさんとハーマイオニーさんくらいなら大丈夫です。ノストロモ号は高度300キロの会合地点まで来てくれます」
「わあ、あたしも行ってもいいの? 一度宇宙に行ってみたかったの」
「うん、修士さん、ポロたち行くよ」
「詳しいことは、ノストロモ号に着いてから是輔さんに聞いてください。いろいろとお詳しいようですから」

 アンジュちゃんとポロは小型シャトルに乗り込むと、修士さんに言われたとおりにリフトオフ前チェックリストを読み上げました。そのあいだに、気球にヘリウムが注入されていきます。

「えっと、生命維持装置機能はグリーン点灯、酸素量ダイじょぶ、RI電力供給装置ダイじょぶ・・・・・、全部ダイじょぶだよ、修士さん」
「こちらもヘリウム注入完了です。お気をつけて」
「アリガト!」
「修士さん、行ってきます!」
「ポロさん、ハーマイオニーさん、帰ったらイモようかん用意しておきます。お茶にしましょう」
「わーい、アリガト! 夕方までには帰るからね」

 シャトルをぶら下げた赤い気球は、ふわりふわりと空に昇っていきました。

「ポロちゃん、ワクワクするね。ポロちゃんていつもこんな冒険してるの?」
「そりゃあもう、こんなのいつもだよ。こないだなんか、ポロが巡洋艦スラコ号で白鳥座61番星に向かっていたらブラックパールっていう海賊船に出会ったんだ。光子魚雷の撃ち合いで、とうとうやっつけたんだ。海賊で一番強いんだよ、ブラックパールが。でも、もう安心、いなくなったから。それからね、猛烈なコズミックストーム、えっとね、宇宙嵐だな。それに出会って命からがら助かったこともあるよ。そのときの嵐はF7といってね、最大級だったんだよ。そんなのに出会うのは1おく万年に一度って言われてる。助かったのはポロが宇宙で最初っていうくらいすごいんだ。それにね、コスモドラゴンとばったり出あったこともあるんだよ。こいつは凶悪でね、宇宙船なんかエサだとしか思ってないの。ポロたちだってさ、イモようかん見たら食べ物だとしか思わないでしょ。それと同じ」
「すごいのねえ、ポロちゃん。そんなすごいことできるんならピアノなんか下手でもいいわよ」
「がびーん、その話はべつだよ、べつ」
「あ、空の色が濃くなってるよ、ポロちゃん」
「わ、ホントだ。高度計を見て見よう。あ、もう19000メートルだ。シャトルの切り離し準備をしなくちゃ」

 ・・・お知らせします。本船は間もなく気球を離れて自立航行に入ります。気球離脱時には大きな加速度がかかります。正しい着座姿勢をとって衝撃に備えてください・・・

「なんだか緊張するね」
「アンジュちゃん、ダイじょぶ。ポロがついてるから」

 ・・・離脱10秒前、9・8・7・6・5・4・3・2・1・パージ!

 ごごごごごごごごごごごごごごご〜!

「うわ、う、宇宙行き絶叫マシンみたいだ!」
「あたし、こういうのなら平気だわ! 面白〜い!」
「ぽ、ぽ、ポロだってへっちゃらさ」

つづく

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2004-04-04 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その4

メダカ救出作戦 その4


「ポロちゃん、ポロちゃん、大丈夫?」
「ん、ん〜、ポロどうしたんだろ?」
「ポロちゃん、気絶しちゃったのよ」
「ち、ちあうよちあうよ(滝汗)、あんまり気持ちがいいんで一眠りしちゃったんだよ」
「ならいいけど。ほら、もうすぐノストロモ号との待ち合わせ場所よ」
「え、どこ? ハチ公前?」
「ポロちゃん、なに言ってんのよ、ちゃんと目を覚まして」

 ・・・お知らせします。本船は間もなくノストロモ号との会合地点に到着します。到着後、自動的にノストロモ号に収容されます・・・

 シャトルの船外モニタにノストロモ号の巨大な船体が映し出されました。

「うわあ、こんなに大きいのか」
「映画みたいね、ポロちゃん!」

 ノストロモ号の船腹のハッチが開いて、ポロたちの小さなシャトルは吸い込まれていきました。再びハッチが閉じて格納庫に空気が満たされると、シャトルから出ることができました。

「ちわーす。初めまして。是輔(これすけ)って言います」
「是輔さん、ハジメまして。とむりんせんせいの助手のポロです!」
「やや、それは奇遇ですね。とむりんせんせいやロケットの兄さんたちはお元気ですか?」
「せんせいは元気だけど、ロケット号はただのスポンジに戻っちゃったみたい」
「そりゃ残念ですね。いい兄貴だったのに。ところで、こちらのすてきなお嬢さんは?」
「はじめまして。アンジュといいます。とむりんせんせいにピアノを習ってます、よろしくお願いします」
「こちらこそ。こんなにすてきなお嬢さんとお会いするんだったらタキシードに着替えてくるんだった」
「それでね、是輔さん」
「はい、どんなご用で」
「ヨシコおばあちゃんのメダカが死んじゃったんだけど、間に合えば助けたいんだ」
「メダカ! そりゃ大変だ」
「どうしてなの?」
「メダカの魂は天の川に戻るんですよ。一番近い川岸まで3万光年ありやしてね。で、いつごろ昇天なさったんで」
「えっと、分かるよ、多分8時間くらい前だと思うよ」
「それなら、まだそれほど遠くへは行っていないでしょう。追いかけてみやしょう」
「わ、アリガトございます!」
「じゃ、コントロールルームへ」

 ノストロモ号の操縦席は最高にカッコよくて、ポロもアンジュちゃんもワクワクしました。

「じゃあ、ちょいと加速しますから気をつけてくださいよ」

 ごごごごごごごごごごごごごごごごごごごご!

 ノストロモ号のメインエンジンがうなりをあげると、ポロたちはGシートに押しつけられてぺっちゃんこになるかと思いました。


つづく

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