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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-04-07 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その1
2004-04-06 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その2
2004-04-05 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その3
2004-04-04 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その4
2004-04-03 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その5
2004-04-02 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その6
2004-04-01 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その7
2004-03-31 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その8
2004-03-30 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その9
2004-03-29 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その10


2004-04-07 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その1

メダカ救出作戦 その1


「あ、ポロちゃん、こんなところで何してるの?」
「わ、アンジュちゃん。ポロね、トラック探してるの」
「どういうトラック?」
「えっとね、神田のほうにいくやつ」
「どうしたの?」
「ヨシコおばあちゃんのメダカが死んじゃったの。神田のお店に救難キットがあるはずだから買いに行くんだ。でもね、ポロは猫だから電車乗れないでしょ。だから、信号待ちしているトラックに飛び乗って行こうと思ったの」
「神田ならあたし行き方知ってるから連れていってあげるよ」
「ホント! わあ、アリガト」
「じゃ、お母さんにお出かけしてくるって言ってくるから」

 アンジュちゃんは、映画ハリーポッターに出てくるハーマイオニーそっくりのせんせい門下の女の子です。この春、中学生になります。
 10分後、ポロたちは最寄りのJR最強線タドタド駅の切符売り場にいました。

「ポロちゃん、タドタド駅じゃないでしょ、たどたどえき、あ、あたしも間違えちゃった」
「ほらね、やっぱりこの駅はタドタド駅って呼ばれたがってるんだよ」
「そうかもね。それで、どこに行けばいいの?」
「かんだだよ」
「駅も神田でいいの?」
「うん、たぶん」
「じゃ、ポロちゃんバッグに入って」

 ぴょん。するり。

「わあ、ポロちゃん、慣れてるね」
「うん、今日はぎょおおおなんて大声出さないからダイじょぶ」
「え〜、そんな声だすことあるの?」
「あ、いや、ないよ。一度もないから安心してね」

 タドタド駅のホームは空の高いところにあります。だいたいビルの7階くらい。ポロたちは一番線から電車に乗りました。最強線は名前のとおり、JR最強です。なんたってまるで空を飛ぶように走るからです。

「なんていうお店に行くの?」
「シュデンガンガー商会」
「へんな名前のお店ねえ。それも、そういう名前で呼ばれたがってるの?」
「そ、そうかも」
「何売ってるお店なの?」
「えっと、波動エンジンキットとか、炊き出し戦隊スイハンジャー変身キットとか、サンタクロース生け捕りキットとかだよ」
「へんなものばかり売ってるのね。おもちゃ屋さん?」
「そうじゃないけど、よく考えると、そうかも」

 ポロたちは、そのあと途中の駅で京浜とうへんぼく線という変な名前の電車に乗って神田に向かいました。そのあとで、どうして唐変木なんていう変な名前なのかが分かりました。

「あ、アンジュちゃん。神田駅だけど、停まらないよ」
「大変! 運転手さん忘れちゃったのかしら」
「分かった。だから京浜唐変木線で言うんだ。ダイじょぶ、次の駅で降りたって歩いていけるから」

 ポロたちは京浜唐変木線が快速運転をしていることを、東京駅のアナウンスで知りました。

「なあんだ、そういうことだったのか」
「あたしたちって、ふだん、電車なんて乗らないもんね」
「そだよ、そだよ。でも、これでひとつ物知りになった!」

 東京駅を出て駅舎を振りかえると、そこには赤レンガのステキな建物がありました。

「アンジュちゃん、見て見て。日本にもステキな駅があるね。タドタド駅も未来的でいいけど、ここのほうが、もうちょっとだけいいかも」
「確か、オランダのアムステルダム駅をお手本に建てられたって聞いたことがあるわ」
「へ〜、そうだったのか」


つづく

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2004-04-06 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その2

 メダカ救出作戦 その2


 ポロたちは、大きなビルの前を通りかかりました。住所が書いてあります。

 “東京都千代田区丸ノ内1-5-1  新丸の内ビルディング”

「わ、正真正銘の丸ノ内だ! それに新丸ビル。ここか〜。ここだったのか〜。甲府の丸ノ内とずいぶん違うところだなあ」
「ポロちゃん、なに感慨にふけってるの?」
「う、うん、何でもないよ。ちょっと昔を思い出したの」

 それからポロたちは、猛ダッシュで、ホントはのんびりとシュデンガンガー商会のある神田淡路町に向かいました。

「ここだよ」
「古いお店ねえ。やってるのかしら」
「ホントは夜から。でもダイじょぶ。事情を話せば開けてくれるよ」

 とんとん! ごめんくださ〜い!

「はいはい、その声はポロさんですね」

 修士さんがすぐにお店のドアを開けてくれました。

「あ、修士さん、お休みのとこゴメなさい」
「いえいえ、きっとまた急用でございましょう。おやおや、こちらのステキなお嬢さんを紹介してください」
「あ、アンジュちゃんだよ。ポロよりぜんぜんピアノうまいんだから!」
「初めまして。どうぞよろしく」
「シュレーディンガー商会の松戸修士と言います。とむりんせんせいとポロさんには懇意にしていただいています。さ、どうぞお入りください」

 修士さんは桜の紅茶を用意してくれました。

「わあ、おいしい。あたし初めて」
「ポロもだな。いいにおいだと思うな」
「ありがとうございます。クランベリーヒルから先週、入荷したばかりでございます。桜のお茶には願ったことが何でも叶うという言い伝えがあります」
「わ、すごい。何を願っちゃおうかな」
「どうぞ、お好きなことを。ところで、ご用はどのようなことでございましょうか」
「あのさ、前にshinさんがスティクス川救難キットでポロを助けてくれたでしょ」
「はい、あんなに見事に救出なさるとは、shin様はただ者ではございません」
「それでね、今度はメダカなの。ヨシコおばあちゃんが可愛がってたメダカがみんな死んじゃったの。だからメダカ救援キットが欲しいんだけど」
「メダカでございますか。たしかメダカはスティクス川を渡らないはずです。少々お待ちください」

 修士さんはアンシブル(宇宙電話)でどこかと連絡をとっているみたいでした。

「お待たせいたしました。メダカをはじめとする水棲生物はスティクス川ではなく、別のところに行くようです。それは、まさに天の川ということでした。救難キットは用意してございませんが、天の川に入る前に追いつけば連れ戻せるはずでございます。天の川まで行かれますか?」
「行けるの? 行けるんなら行くしかないよ」
「便乗させてもらえる宇宙船を調べたのですが、間もなく地球のすぐわきを三河屋デリバリーサービスのノストロモ号が通りかかります。便乗許可も取ってあります」
「わ、是輔さんだ!」
「なんと、お知り合いですか」
「知りあいっていうわけじゃないんだけど、知ってるよ」

 修士さんは、シュデンガンガー商会の屋根裏に案内してくれました。そこには、しぼんではいるものの大きな風船のようなものがありました。

つづく

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2004-04-05 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その3

メダカ救出作戦 その3


「わ。なにこれ?」
「アドバルーンといいます。昔は、日曜日になると至るところで空に浮かんでいたものです。実はこれ、アドバルーンに見せかけた高層気球です。最近はアドバルーンが上がることがなくなってしまったので、全くカムフラージュにはなりませんが、とにかく高度2万メートルから超軽量シャトルを発射して高度300キロまで達することができます。一人乗りですがポロさんとハーマイオニーさんくらいなら大丈夫です。ノストロモ号は高度300キロの会合地点まで来てくれます」
「わあ、あたしも行ってもいいの? 一度宇宙に行ってみたかったの」
「うん、修士さん、ポロたち行くよ」
「詳しいことは、ノストロモ号に着いてから是輔さんに聞いてください。いろいろとお詳しいようですから」

 アンジュちゃんとポロは小型シャトルに乗り込むと、修士さんに言われたとおりにリフトオフ前チェックリストを読み上げました。そのあいだに、気球にヘリウムが注入されていきます。

「えっと、生命維持装置機能はグリーン点灯、酸素量ダイじょぶ、RI電力供給装置ダイじょぶ・・・・・、全部ダイじょぶだよ、修士さん」
「こちらもヘリウム注入完了です。お気をつけて」
「アリガト!」
「修士さん、行ってきます!」
「ポロさん、ハーマイオニーさん、帰ったらイモようかん用意しておきます。お茶にしましょう」
「わーい、アリガト! 夕方までには帰るからね」

 シャトルをぶら下げた赤い気球は、ふわりふわりと空に昇っていきました。

「ポロちゃん、ワクワクするね。ポロちゃんていつもこんな冒険してるの?」
「そりゃあもう、こんなのいつもだよ。こないだなんか、ポロが巡洋艦スラコ号で白鳥座61番星に向かっていたらブラックパールっていう海賊船に出会ったんだ。光子魚雷の撃ち合いで、とうとうやっつけたんだ。海賊で一番強いんだよ、ブラックパールが。でも、もう安心、いなくなったから。それからね、猛烈なコズミックストーム、えっとね、宇宙嵐だな。それに出会って命からがら助かったこともあるよ。そのときの嵐はF7といってね、最大級だったんだよ。そんなのに出会うのは1おく万年に一度って言われてる。助かったのはポロが宇宙で最初っていうくらいすごいんだ。それにね、コスモドラゴンとばったり出あったこともあるんだよ。こいつは凶悪でね、宇宙船なんかエサだとしか思ってないの。ポロたちだってさ、イモようかん見たら食べ物だとしか思わないでしょ。それと同じ」
「すごいのねえ、ポロちゃん。そんなすごいことできるんならピアノなんか下手でもいいわよ」
「がびーん、その話はべつだよ、べつ」
「あ、空の色が濃くなってるよ、ポロちゃん」
「わ、ホントだ。高度計を見て見よう。あ、もう19000メートルだ。シャトルの切り離し準備をしなくちゃ」

 ・・・お知らせします。本船は間もなく気球を離れて自立航行に入ります。気球離脱時には大きな加速度がかかります。正しい着座姿勢をとって衝撃に備えてください・・・

「なんだか緊張するね」
「アンジュちゃん、ダイじょぶ。ポロがついてるから」

 ・・・離脱10秒前、9・8・7・6・5・4・3・2・1・パージ!

 ごごごごごごごごごごごごごごご〜!

「うわ、う、宇宙行き絶叫マシンみたいだ!」
「あたし、こういうのなら平気だわ! 面白〜い!」
「ぽ、ぽ、ポロだってへっちゃらさ」

つづく

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2004-04-04 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その4

メダカ救出作戦 その4


「ポロちゃん、ポロちゃん、大丈夫?」
「ん、ん〜、ポロどうしたんだろ?」
「ポロちゃん、気絶しちゃったのよ」
「ち、ちあうよちあうよ(滝汗)、あんまり気持ちがいいんで一眠りしちゃったんだよ」
「ならいいけど。ほら、もうすぐノストロモ号との待ち合わせ場所よ」
「え、どこ? ハチ公前?」
「ポロちゃん、なに言ってんのよ、ちゃんと目を覚まして」

 ・・・お知らせします。本船は間もなくノストロモ号との会合地点に到着します。到着後、自動的にノストロモ号に収容されます・・・

 シャトルの船外モニタにノストロモ号の巨大な船体が映し出されました。

「うわあ、こんなに大きいのか」
「映画みたいね、ポロちゃん!」

 ノストロモ号の船腹のハッチが開いて、ポロたちの小さなシャトルは吸い込まれていきました。再びハッチが閉じて格納庫に空気が満たされると、シャトルから出ることができました。

「ちわーす。初めまして。是輔(これすけ)って言います」
「是輔さん、ハジメまして。とむりんせんせいの助手のポロです!」
「やや、それは奇遇ですね。とむりんせんせいやロケットの兄さんたちはお元気ですか?」
「せんせいは元気だけど、ロケット号はただのスポンジに戻っちゃったみたい」
「そりゃ残念ですね。いい兄貴だったのに。ところで、こちらのすてきなお嬢さんは?」
「はじめまして。アンジュといいます。とむりんせんせいにピアノを習ってます、よろしくお願いします」
「こちらこそ。こんなにすてきなお嬢さんとお会いするんだったらタキシードに着替えてくるんだった」
「それでね、是輔さん」
「はい、どんなご用で」
「ヨシコおばあちゃんのメダカが死んじゃったんだけど、間に合えば助けたいんだ」
「メダカ! そりゃ大変だ」
「どうしてなの?」
「メダカの魂は天の川に戻るんですよ。一番近い川岸まで3万光年ありやしてね。で、いつごろ昇天なさったんで」
「えっと、分かるよ、多分8時間くらい前だと思うよ」
「それなら、まだそれほど遠くへは行っていないでしょう。追いかけてみやしょう」
「わ、アリガトございます!」
「じゃ、コントロールルームへ」

 ノストロモ号の操縦席は最高にカッコよくて、ポロもアンジュちゃんもワクワクしました。

「じゃあ、ちょいと加速しますから気をつけてくださいよ」

 ごごごごごごごごごごごごごごごごごごごご!

 ノストロモ号のメインエンジンがうなりをあげると、ポロたちはGシートに押しつけられてぺっちゃんこになるかと思いました。


つづく

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2004-04-03 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その5

メダカ救出作戦 その5


是「大丈夫ですか? こいつ客船と違ってワイルドな味付けでしてね」
ポ「ううん、カッコいいよ」
是「宇宙は初めてですか」
ポ「ポロは2度目だよ。サンタさんのドレッドノート号に乗せてもらったの」
是「そりゃすごい! 伝説の宇宙船だ」
ア「是輔さん、宇宙は危なくないの?」
是「今まで、砂つぶくらいの小さな流れ星に当たって船倉に穴が開いたことが1回だけありやすがね、あとはクルマより安全ですよ」
ア「それを聞いて安心ね、ポロちゃん」
ポ「そだね」
是「おや、何だろう?」
ポ「どしたの?」
是「レーダーのノイズかなあ。同じ距離を置いてついてくる光点があるでしょ。ほらここ」
ポロ「ついてくるっていうより、近づいてるみたい」
是「まずい!」
ポ「どうしたの?」
是「海賊船だ。それも、これは異様な速さからみて、たぶん伝説のブラックパールだ」
ア「えっ、でもポロちゃんがブラックパールをやっつけたって言ってたじゃない」
ポ「えっと、えっと、海賊のやつ、また新しい船を作ったんだよ」
是「どうして、この広い宇宙で、たった一隻しかないブラックパールと出会っちまうんだ。あいつらから逃げおおせた船はありやせんぜ、ポロさん。覚悟してください」
ポ「光子魚雷Mk.125とか積んでないの?」
是「軍用艦じゃあるまいし、そんなもの・・・・、あれ。なんだこのコントロールパネルは。こんなもの今朝はなかったぞ」
ポ「どうしたの?」
是「これは、たぶんMk.125の火器管制コンピュータ端末ですぜ。ポロさん、今日、桜のお茶飲みませんでしたか?」
ポ「そういえば、飲んだよ」
是「まさか、ブラックパールに出会うように祈ったりしませんでしたか?」
ア「あ、ポロちゃん、お茶飲んだあとでブラックパールと光子魚雷撃ちあったって自慢してたじゃない!」
ポ「そ、そ、それは・・・」
是「それでわかりやした。こりゃ海賊も魚雷も、どっちも本物だ。Mk.125ぶっぱなせるだけぶっぱなして、全速力で逃げやしょう。つかまっててくださいよ」
ポ「わー、是輔さん、お願い。頑張ってね、ポロ、もうホラ話なんかしないから」

 そういう間もなく、ブラックパールから停船信号が送られてきました。

<ノストロモのくそったれども、さっさと停船しろ。そうすれば命だけは助けてやる>

 是輔さんは、すぐに返信をしましたが、翻訳機の設定が営業用のままだったのでホントの気持ちは伝わらなかったかも。

<ご自分のお尻でもお舐めになったらいかがでしょうか>

「てめえのケツでも舐めてろってんだ、ブラックパールの海賊ども。三河屋の是輔さんを甘く見てもらっちゃ困るぜ。ポロさん、アンジュさん、ちょっときついですが死ぬよりはマシだと思ってください」

 是輔さんは、ありったけの光子魚雷を一気にブラックパールめがけて発射すると、四菱製ハイパーダイン3型アフターバーナを全開にしました。

 どびゅ〜〜〜〜〜〜〜ん!

ポ「うわ〜〜〜〜〜〜〜!」
ア「きゃ〜〜〜〜〜〜〜!」
是「うお〜〜〜〜〜〜〜!」

 あまりの加速度に全員がのびちゃって、目が覚めたのはノストロモ号がぜんぜん知らない恒星系の近くに到達したときでした。

つづく

先頭 表紙

2004-04-02 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その6

メダカ救出作戦 その6


是「ぽ、ポロさん、アンジュさん、大丈夫でやすか?」
ポ「う〜ん、気持ち悪い!」
ア「あたしも」
是「でも、なんとかやつらをまいたみたいですぜ。ざまーみろってもんです」
ポ「ここどこ?」
是「ちょっと待ってくださいよ、えっと、ここは。一応銀河円盤のどこかってことは分かるんですが、えっと、おや?」
ポ「どしたの?」
是「一難去ってまた一難ってやつですぜ」
ポ「ブラックパールが追いついてきたの?」
是「もっと悪い。コズミックストームだ。宇宙嵐ってやつですぜ。それもとびきりでかい。こんなの見たことありませんぜ」
ア「是輔さん、もしかしてF7っていう・・・・」
是「ど、どうしてそんな専門的なこと知ってるんでやすか。そのとおり」
ア「だって、ポロちゃんが言ってたから」
是「たはっ。これも桜のお茶のせいですか。たまんねーな、こりゃ」
ポ「ご、ゴメなさい」
是「いいですよいいですよ。こうなったらなんでも来いだ。とにかく何とかしやしょう」
ア「どうして宇宙嵐は怖いの?」
是「ヤツに接触すると宇宙船なんか粉々でさあ。おまけに、あいつらいきなりワープするんですよ」
ア「どういうこと?」
是「逃げようと思って反対方向に進み始めると、いつの間にか正面にいたりするのが宇宙嵐なんでさ。だからスピード出してると方向を変える間もなく突っ込んじまう。かといってゆっくり進んでいると追いつかれちまう。えらいやっかいなヤツってえわけです。おまけに今目の前にいるヤツは、一番でかくて一番動きを予測しにくいタイプってわけだ」
ポ「是輔さん、がんばってね」
是「まかしてください。腕がなるぜ!」

 それからノストロモ号は是輔さんの勘を頼りにジグザグに飛び回って、船内は大揺れに揺れました。ポロは、船酔いしてゲロゲロになってしまいました。

「うわ〜、死ぬ〜! 気持ち悪くて死にそうだ〜!」
「ポロさん、弱音吐かないで頑張ってください、もう少しだ。アンジュさんだってけなげに耐えてるじゃありませんか」

 横を見ると、アンジュちゃんはまた気絶していました。ポロだって気絶しちゃえば楽なのに。あ、是輔さんは気絶しないでね。
 宇宙嵐は、まるでノストロモ号の動きを知っているかのように、行く手に立ちふさがりました。宇宙嵐をよけきれなくて、嵐のはじっこでもに船体が近づこうものならノストロモ号はグルグルと回転してしまうほどでした。

「わ〜! スクリューコースターだ〜!」
「ポロさん、スクリューコースターがタダですぜ。得したと思わなくちゃ! ほいさ、どっこいしょ」

 是輔さんは、どこまでも前向きです。
 それでも、小1時間ほどで宇宙嵐の魔の手から逃れることができました。

是「ふ〜、なんとかやりすごしましたぜ」
ポ「すごい、すごいよ、是輔さん。銀河系いちの宇宙船乗りだ!」
是「いやあ、まいったなあ。隠してたのにバレちまった。はっはっはっは!」

 そのとき、船内に緊急警報が鳴り響きました。
 モニタを確認した是輔さんは真顔で言いました。

是「ポロさん、これでお終いでしょうね」
ポ「どしたの?」
是「コスモドラゴンですぜ。勘弁してくださいよ」
ポ「お、おしまいだよ。もう、ホラ話はそれでおしまい」
是「あいつは、宇宙船とエサの区別がつないんでさ。36計逃げるが勝ち」

 お腹をすかせたコスモドラゴンはノストロモ号を見つけると、さっそく、うれしそうに追いかけてきました。

つづく

先頭 表紙

ゑ゛!?(笑) / ミタ・ソウヤ ( 2004-04-03 11:07 )
ミタさん、つっこみアリガト。このあと、いよいよミタさん登場です! / ポロ ( 2004-04-03 10:52 )
ポロさん…ホラ話、後悔先に立たずってやつですね〜(笑)でも、お茶を飲んだ時に、何か願い事しなかったのですか?(^^) / ミタ・ソウヤ ( 2004-04-03 09:37 )

2004-04-01 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その7

メダカ救出作戦 その7


是「なんて速いんだ、ヤツは」
ポ「何か弱点はないの?」
是「ヤツに出あった宇宙船は、みんな食われちまうんでデータが残らないんですよ」
ポ「じゃ、ポロたちが助かったら歴史上最初ってこと?」
是「そうかも知れやせんね。ま、やってみなきゃ分かりません」
ポ「そういえばさ、地球にコスモドラゴンて来たことがないよね」
是「あれ、たしかアンギ○スっていうのが来たと思うけど」
ポ「それってさ、特撮怪獣映画だよ」
是「そ、そでしたね」
ポ「だからさ、どっかの惑星に逃げ込むってどう?」
是「それ、それっすよ。真空中に住んでるから、あいつは多分大気に弱いんだ。大気のある惑星なら大丈夫かも知れない」
ポ「ポロがレーダーで探すから待ってて。あ、もう見つかった。ここから10億キロぐらい先だよ」
是「よし、行きやしょう!」

 ポロたちが降り立った惑星は、メタンの大気に硫酸の霧がたなびく、あまり居心地のよい星ではありませんでした。でも、そのおかげでコスモドラゴンはどこかに行ってしまいました。

是「さあ、コスモドラゴンもいなくなったし、これ以上長居すると今度はノストロモ号が錆びちまいます」

ポロは、チタン・イリジウム合金の船体が錆びるわけないと思いましたが、とにかく出発には賛成でした。

ポ「ねえ、是輔さん、メダカたちはどこ?」
是「そうですねえ、今どこにいるかがよく分からないんでなんとも言えやせんが、太陽系から銀河系外縁部に向かっていることだけは確かでさあ」

 是輔さんは、銀河系立体恒星図と現在の周囲の星々の同定作業を繰り返して、ついにノストロモ号の銀緯・銀経を求めました。航法コンピュータにデータを入れると是輔さんは元気よく言いました。

「行きますぜ!」

 ごごごごごごごごごごごごご!

 名も知らぬ惑星のメタンの大気を押しのけてノストロモ号が上昇していきます。航法コンピュータが女の人の声で高度や対気速度を読み上げていきます。
 アンジュちゃんも目を覚ましました。

ア「ここ、どこ?」
是「あっしたちが、人類最初に到達した名もなき惑星ってとこです」
ポ「アンジュちゃん、ダイじょぶ? いま、ポロたちメダカのところに向かうためにこの惑星から飛び立つところなんだ」
ア「名前がないなんてかわいそうなお星さま」
ポ「そっか。じゃさ、ポロの好きなイモようかんとアンジュちゃんの名前を合わせて、ここは惑星“イモージュ”ってことにしよう!」
ア「名前のいわれは変だけど、なんだかステキな名前ねえ」
是「あっしも気に入りやしたぜ」

 ノストロモ号は天の川を目ざして、それからしばらく航海を続けました。


つづく

先頭 表紙

2004-03-31 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その8

メダカ救出作戦 その8


ポ「ねえ、是輔さんは天の川に行ったことあるの?」
是「ありやすよ。お届ものにも行きやす。銀河ステーションの助役さんが、夜食用のお弁当をよく注文なさいます」
ア「銀河ステーションて、銀河鉄道の夜に出てくる駅?」
是「そうでやす。宮沢賢治さんは、取材で全線お乗りになられたとか・・」
ポ「ぎょえ〜。あれは実話をもとにしているのか」
是「今、太陽系からまっすぐ天の川へ向かうとプリオシン海岸の近くへ出やすからね。メダカはそこを目指していることでしょう。あっしらもそこへ向かってるところです」
ア「わあ、プリオシン海岸だって。たしか物語では水晶のように透明な水だったよね、ポロちゃん」
ポ「アンジュちゃんも読んだの? 銀河鉄道」
ア「うん。なんだか怖いけどステキなお話だった」
是「今、その舞台の実物をお見せしますよ」
ア「楽しみねえ、ポロちゃん」
ポ「うん。ところでさあ、是輔さん」
是「なんでござんしょ」
ポ「メダカたちは、天の川へ行くとどうなるの?」
是「それはもう、きれいなところですからね、喜んで泳ぎ回ることでしょう」
ポ「え〜。喜んじゃうの?」
是「間違いありやせん」
ポ「じゃあ、メダカたちはヨシコおばあちゃんの水槽に戻りたくないかなあ」
是「さあ、どうでしょう。あっしはメダカじゃないんでちょっと分かりやせん」
ア「メダカの気持ちが分かればいいのにねえ」
是「あ、思い出した。そう言えば積み荷に“メダカ・リンガル”があったはずだ。ちょっと届け先を調べてみよう」

 是輔さんは貨物庫から小さな包みをひとつ持ってきました。

是「えっと、日本の人だ。ミタ・ソウヤさんて人ですぜ」
ポ「わ! ミタさんだ!」
是「お知り合いですか?」
ポ「うん、ちょっとね。何でも知ってる蘊蓄(うんちく)大魔王みたいな人。な〜るほど、こういうもので蘊蓄を集めていたのか」
是「でも、メダカの気持ちまで知りたがるとは、ちょっとアブナイ気もします。ま、連絡を取って許しがもらえれば使わせてもらえるかも知れませんぜ」
ポ「ミタさんならきっといいって言うよ」

 ポロが是輔さんからアンシブル(宇宙電話)を借りてミタさんにお願いすると、ミタさんは、すぐにメダカ・リンガルの使用をこころよくOKしてくれました。

ポ「よし、これでメダカに直接話を聞けるぞ」

 天の川が目の前に迫ってきたころ、レーダーの魚群探知システムに光の点が現れました。

是「見つけましたぜ。たぶんあれです」

 是輔さんは、メダカの群れとノストロモ号を並走させました。左舷の船窓から外を見ると、半透明に光り輝くメダカの魂たちが力いっぱい宇宙を泳いでいました。

ポ「スティクス川に比べるとずいぶん遠いところまで来るんだなあ、メダカたち」
ア「きらきら光ってきれい!」
是「さ、メダカ・リンガルで話しかけてください」
ポ「じゃ、やるよ」

 是輔さんとアンジュちゃんが固唾をのんで見守る中、ポロはメダカたちに話しかけました。


つづく

先頭 表紙

あはは〜、メダカ・リンガルがお役に立って良かった…ソロモンの指輪が我が家のブラックホールに落ちたらしくて、どこかに行っちゃって(笑) / ミタ・ソウヤ ( 2004-04-03 11:12 )

2004-03-30 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その9

メダカ救出作戦 その9


ポ「君たち、ヨシコおばあちゃんのメダカたちかい?」
メ「そうですけど、あなたは誰?」
ポ「ポロだよ。ヨシコおばあちゃんちの猫」
メ「まあ、ホントだわ。こんなところまで追いかけてきて私たちを食べる気?」
ポ「ち、ちあうよちあうよ」
ア「ポロちゃん悪いことしてたんじゃないの?」
ポ「し、してないよ、ちょっとしか」
ア「あたしが話すわ、メダカ・リンガル貸して」
ポ「うん」
ア「メダカさん、あたしアンジュよ。分かる? いつもレッスンのかえりにあなたたちのところへ寄っていったでしょ」
メ「あ、アンジュちゃん!」
ア「聞きたいことがあるの」
メ「なんですか?」
ア「あたしたちねえ、あなたたちを助けようと思ってここまで来たんだけど、ひょっとしたら、あなたたちは天の川へ行きたいんじゃないかっていう気もするの。あなたたちの気持ちを教えてほしいの」
メ「ヨシコおばあちゃんには、本当によくしてもらいました。私たちも幸せに暮らしてきましたが、メダカにも寿命があります。今は天の川で次の生まれ変わりに備えてゆっくりしたいと思います」
ア「分かったわ。私たちは何もしないで帰るから」
メ「ありがとう。ヨシコおばあちゃんに、くれぐれもよろしくお伝えください」
ア「ええ、伝えるわ」

 アンジュちゃんは、ちょっとため息をついてから言いました。

ア「ヨシコおばあちゃんも、メダカの幸せを喜ぶはずよ」
ポ「そだね。連れて帰らなくても、きっとこのほうが喜んでくれる」
ア「ねえ、ポロちゃん」
ポ「なあに?」
ア「メダカの幸せって何だろうね」
是「横レス、失礼しますよ。メダカだって、あっしたちと一緒ですよ」
ポ「ポロもそう思うな」

 目の前にプリオシン海岸が迫っていました。是輔さんはノストロモ号を減速させました。メダカたちは小さくなって姿が見えなくなりましたが、天の川に飛び込んだらしいことは、その近くの水面がキラキラと光ったので分かりました。

 是輔さんは、銀河鉄道プリオシン海岸駅近くの広場にノストロモ号を着陸させました。

是「え〜、皆様。これより15分間の休憩を取らせていただきます。お時間になりましたら遅れぬようお戻りください」

 是輔さんはツアーコンダクターのマネをして言いました。
 ポロたち3人は、プリオシン海岸に降り立ちました。水辺まで行くと、ホントに水晶のように透明な水が流れていました。少し歩くと立て札がありました。

<ジョヴァンニとカンパネルラが水に手を入れた場所>

ポ「わあ、観光名所になってる」
是「宇宙、どこへ行ってもこんなもんです。あの駅のキオスクでは「ジョバンニもなか」や「カンパネルラまんじゅう」を売ってますよ」
ポ「わあ、食べたい食べたい!」
是「じゃ、買って帰りやしょう。帰りの船の中でお茶タイムだ。それから、ひとつはミタさんにお礼」

 ポロたちが駅のキオスクで買い物をしていると、向いのホームに銀河鉄道が入ってきました。蒸気機関車だと思っていたら、なんとそれは山陽新幹線500系そっくりでした。

ポ「わ、カッコいい」
是「今でも蒸気機関車だと思いましたか?」
ポ「うん」
ア「あたしも」
是「どこだって時代は変わるんです。これは、たしか日本の新幹線のモデルになった車両です」
ポ「じゃ、設計者の誰かがここに来たの?」
是「そうかも知れないですねえ」
ポ「へえ〜、せんせい、500系のファンだからここに来たら喜ぶだろうなあ」
是「さあ、そろそろ行きやしょう」


つづく

先頭 表紙

2004-03-29 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その10

メダカ救出作戦 その10


 ノストロモ号が上昇を始めると、駅にいた人たちが気づいて手を振ってくれました。三河屋デリバリーサービスはどこでも有名みたいです。アンジュちゃんとポロも舷側の窓にはりついて力いっぱい手を振りました。

「ばいば〜い!」

 最初はプリオシン海岸駅の駅舎が遠くなり、次に線路が遠くなり、見えるのは天の川だけになりました。それから天の川もだんだん遠く離れていき、とうとうただの光の帯になりました。

ア「宇宙ってきれいねえ」
是「ええ、まったくそのとおり。さあ、お茶にしましょうや」
ア「あたしがお茶いれるわ」

 一緒に危険を乗り越えたポロたちは、昔からの知り合いみたいに、すっかり打ち解けて仲良く楽しいティータイムを過ごしました。

ア「そういえば、修士さんもお茶を用意して待っていてくれるって言ってた」
ポ「ポロは、お茶なら何回でもいいな」
是「じゃ、船のスピードを調節して、神田に午後3時につくようにしやしょう」
ポ「だって午後3時なんてとっくに過ぎてるよ。そんなことできるの?」
是「なあに、相対論てやつです」

 途中で、クリューガー60の近くを通りました。

ポ「ねえねえ、是輔さん、あれってクランベリーヒルの太陽でしょ」
是「そうですよ。クランベリーヒルのあるP3は、あの2つの星の周りを回ってやす。昔はよく行ったなあ。とむりんせんせいんちのロケットさんのとこ」
ポ「わあ、クランベリーヒルの話、聞きたいなあ」
是「どんなことがいいですか?」
ポ「そだな。あのさ、干し草の注文の話」
是「ああ、あれか。よく覚えてますぜ。いきなり五つ星の干し草の注文が来やしてね。発注部門が協議した結果、地球のニュージーランド産がいいってことになりやしてね。仕入れも、あっしが行ったんでさあ」

 それからノストロモ号は地球に到達、太平洋上空300キロを巡る周回軌道に入りました。ちょうど国際宇宙ステーションのフリーダムが近くを通る時刻だったので、見つからないように少し時間をずらして軌道に入りました。ポロとアンジュちゃんは是輔さんにお礼を言ってシュデンガンガー商会のシャトルに乗り込みました。

是「あとは自動操縦ですから安心して乗っててください」
ポ「是輔さん、ホントにアリガト!」
ア「是輔さん、ありがとう。またね!」
是「アンジュさん、今度はデートにお誘いしますぜ」
ア「じゃ、火星に連れてって!」
是「お安い御用です」

 ノストロモ号から射出されたシャトルは、宇宙のジェットコースターとなって神田淡路町に向けて降下していきました。
次の日の新聞には、東京神田周辺でUFOの目撃情報が相次いだという記事が紙面をにぎわせたのは言うまでもありません。


おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

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先頭 表紙

いいなぁ。私も銀河鉄道見たいな〜・・・ / ミタ・ソウヤ ( 2004-04-04 00:09 )

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