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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-03-31 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その8
2004-03-30 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その9
2004-03-29 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その10
2004-03-28 たろちゃんとマルチェロ  その1
2004-03-27 たろちゃんとマルチェロ  その2
2004-03-26 ポロの日記 2004年3月26日(電曜日) ポロのすてきなカメラ
2004-03-25 ポロの日記 2004年3月25日(草曜日) せんせいのオンボロ写真機
2004-03-22 ポロの日記 2004年3月22日(光曜日) 朝ごはん
2004-03-20 ポロの日記 2004年3月16日(熱曜日) 技術文書作成達人養成キット 修了編 その1
2004-03-19 ポロの日記 2004年3月16日(熱曜日) 技術文書作成達人養成キット 修了編 その2


2004-03-31 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その8

メダカ救出作戦 その8


ポ「ねえ、是輔さんは天の川に行ったことあるの?」
是「ありやすよ。お届ものにも行きやす。銀河ステーションの助役さんが、夜食用のお弁当をよく注文なさいます」
ア「銀河ステーションて、銀河鉄道の夜に出てくる駅?」
是「そうでやす。宮沢賢治さんは、取材で全線お乗りになられたとか・・」
ポ「ぎょえ〜。あれは実話をもとにしているのか」
是「今、太陽系からまっすぐ天の川へ向かうとプリオシン海岸の近くへ出やすからね。メダカはそこを目指していることでしょう。あっしらもそこへ向かってるところです」
ア「わあ、プリオシン海岸だって。たしか物語では水晶のように透明な水だったよね、ポロちゃん」
ポ「アンジュちゃんも読んだの? 銀河鉄道」
ア「うん。なんだか怖いけどステキなお話だった」
是「今、その舞台の実物をお見せしますよ」
ア「楽しみねえ、ポロちゃん」
ポ「うん。ところでさあ、是輔さん」
是「なんでござんしょ」
ポ「メダカたちは、天の川へ行くとどうなるの?」
是「それはもう、きれいなところですからね、喜んで泳ぎ回ることでしょう」
ポ「え〜。喜んじゃうの?」
是「間違いありやせん」
ポ「じゃあ、メダカたちはヨシコおばあちゃんの水槽に戻りたくないかなあ」
是「さあ、どうでしょう。あっしはメダカじゃないんでちょっと分かりやせん」
ア「メダカの気持ちが分かればいいのにねえ」
是「あ、思い出した。そう言えば積み荷に“メダカ・リンガル”があったはずだ。ちょっと届け先を調べてみよう」

 是輔さんは貨物庫から小さな包みをひとつ持ってきました。

是「えっと、日本の人だ。ミタ・ソウヤさんて人ですぜ」
ポ「わ! ミタさんだ!」
是「お知り合いですか?」
ポ「うん、ちょっとね。何でも知ってる蘊蓄(うんちく)大魔王みたいな人。な〜るほど、こういうもので蘊蓄を集めていたのか」
是「でも、メダカの気持ちまで知りたがるとは、ちょっとアブナイ気もします。ま、連絡を取って許しがもらえれば使わせてもらえるかも知れませんぜ」
ポ「ミタさんならきっといいって言うよ」

 ポロが是輔さんからアンシブル(宇宙電話)を借りてミタさんにお願いすると、ミタさんは、すぐにメダカ・リンガルの使用をこころよくOKしてくれました。

ポ「よし、これでメダカに直接話を聞けるぞ」

 天の川が目の前に迫ってきたころ、レーダーの魚群探知システムに光の点が現れました。

是「見つけましたぜ。たぶんあれです」

 是輔さんは、メダカの群れとノストロモ号を並走させました。左舷の船窓から外を見ると、半透明に光り輝くメダカの魂たちが力いっぱい宇宙を泳いでいました。

ポ「スティクス川に比べるとずいぶん遠いところまで来るんだなあ、メダカたち」
ア「きらきら光ってきれい!」
是「さ、メダカ・リンガルで話しかけてください」
ポ「じゃ、やるよ」

 是輔さんとアンジュちゃんが固唾をのんで見守る中、ポロはメダカたちに話しかけました。


つづく

先頭 表紙

あはは〜、メダカ・リンガルがお役に立って良かった…ソロモンの指輪が我が家のブラックホールに落ちたらしくて、どこかに行っちゃって(笑) / ミタ・ソウヤ ( 2004-04-03 11:12 )

2004-03-30 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その9

メダカ救出作戦 その9


ポ「君たち、ヨシコおばあちゃんのメダカたちかい?」
メ「そうですけど、あなたは誰?」
ポ「ポロだよ。ヨシコおばあちゃんちの猫」
メ「まあ、ホントだわ。こんなところまで追いかけてきて私たちを食べる気?」
ポ「ち、ちあうよちあうよ」
ア「ポロちゃん悪いことしてたんじゃないの?」
ポ「し、してないよ、ちょっとしか」
ア「あたしが話すわ、メダカ・リンガル貸して」
ポ「うん」
ア「メダカさん、あたしアンジュよ。分かる? いつもレッスンのかえりにあなたたちのところへ寄っていったでしょ」
メ「あ、アンジュちゃん!」
ア「聞きたいことがあるの」
メ「なんですか?」
ア「あたしたちねえ、あなたたちを助けようと思ってここまで来たんだけど、ひょっとしたら、あなたたちは天の川へ行きたいんじゃないかっていう気もするの。あなたたちの気持ちを教えてほしいの」
メ「ヨシコおばあちゃんには、本当によくしてもらいました。私たちも幸せに暮らしてきましたが、メダカにも寿命があります。今は天の川で次の生まれ変わりに備えてゆっくりしたいと思います」
ア「分かったわ。私たちは何もしないで帰るから」
メ「ありがとう。ヨシコおばあちゃんに、くれぐれもよろしくお伝えください」
ア「ええ、伝えるわ」

 アンジュちゃんは、ちょっとため息をついてから言いました。

ア「ヨシコおばあちゃんも、メダカの幸せを喜ぶはずよ」
ポ「そだね。連れて帰らなくても、きっとこのほうが喜んでくれる」
ア「ねえ、ポロちゃん」
ポ「なあに?」
ア「メダカの幸せって何だろうね」
是「横レス、失礼しますよ。メダカだって、あっしたちと一緒ですよ」
ポ「ポロもそう思うな」

 目の前にプリオシン海岸が迫っていました。是輔さんはノストロモ号を減速させました。メダカたちは小さくなって姿が見えなくなりましたが、天の川に飛び込んだらしいことは、その近くの水面がキラキラと光ったので分かりました。

 是輔さんは、銀河鉄道プリオシン海岸駅近くの広場にノストロモ号を着陸させました。

是「え〜、皆様。これより15分間の休憩を取らせていただきます。お時間になりましたら遅れぬようお戻りください」

 是輔さんはツアーコンダクターのマネをして言いました。
 ポロたち3人は、プリオシン海岸に降り立ちました。水辺まで行くと、ホントに水晶のように透明な水が流れていました。少し歩くと立て札がありました。

<ジョヴァンニとカンパネルラが水に手を入れた場所>

ポ「わあ、観光名所になってる」
是「宇宙、どこへ行ってもこんなもんです。あの駅のキオスクでは「ジョバンニもなか」や「カンパネルラまんじゅう」を売ってますよ」
ポ「わあ、食べたい食べたい!」
是「じゃ、買って帰りやしょう。帰りの船の中でお茶タイムだ。それから、ひとつはミタさんにお礼」

 ポロたちが駅のキオスクで買い物をしていると、向いのホームに銀河鉄道が入ってきました。蒸気機関車だと思っていたら、なんとそれは山陽新幹線500系そっくりでした。

ポ「わ、カッコいい」
是「今でも蒸気機関車だと思いましたか?」
ポ「うん」
ア「あたしも」
是「どこだって時代は変わるんです。これは、たしか日本の新幹線のモデルになった車両です」
ポ「じゃ、設計者の誰かがここに来たの?」
是「そうかも知れないですねえ」
ポ「へえ〜、せんせい、500系のファンだからここに来たら喜ぶだろうなあ」
是「さあ、そろそろ行きやしょう」


つづく

先頭 表紙

2004-03-29 ポロの日記 2004年3月27日(岩曜日) メダカ救出作戦 その10

メダカ救出作戦 その10


 ノストロモ号が上昇を始めると、駅にいた人たちが気づいて手を振ってくれました。三河屋デリバリーサービスはどこでも有名みたいです。アンジュちゃんとポロも舷側の窓にはりついて力いっぱい手を振りました。

「ばいば〜い!」

 最初はプリオシン海岸駅の駅舎が遠くなり、次に線路が遠くなり、見えるのは天の川だけになりました。それから天の川もだんだん遠く離れていき、とうとうただの光の帯になりました。

ア「宇宙ってきれいねえ」
是「ええ、まったくそのとおり。さあ、お茶にしましょうや」
ア「あたしがお茶いれるわ」

 一緒に危険を乗り越えたポロたちは、昔からの知り合いみたいに、すっかり打ち解けて仲良く楽しいティータイムを過ごしました。

ア「そういえば、修士さんもお茶を用意して待っていてくれるって言ってた」
ポ「ポロは、お茶なら何回でもいいな」
是「じゃ、船のスピードを調節して、神田に午後3時につくようにしやしょう」
ポ「だって午後3時なんてとっくに過ぎてるよ。そんなことできるの?」
是「なあに、相対論てやつです」

 途中で、クリューガー60の近くを通りました。

ポ「ねえねえ、是輔さん、あれってクランベリーヒルの太陽でしょ」
是「そうですよ。クランベリーヒルのあるP3は、あの2つの星の周りを回ってやす。昔はよく行ったなあ。とむりんせんせいんちのロケットさんのとこ」
ポ「わあ、クランベリーヒルの話、聞きたいなあ」
是「どんなことがいいですか?」
ポ「そだな。あのさ、干し草の注文の話」
是「ああ、あれか。よく覚えてますぜ。いきなり五つ星の干し草の注文が来やしてね。発注部門が協議した結果、地球のニュージーランド産がいいってことになりやしてね。仕入れも、あっしが行ったんでさあ」

 それからノストロモ号は地球に到達、太平洋上空300キロを巡る周回軌道に入りました。ちょうど国際宇宙ステーションのフリーダムが近くを通る時刻だったので、見つからないように少し時間をずらして軌道に入りました。ポロとアンジュちゃんは是輔さんにお礼を言ってシュデンガンガー商会のシャトルに乗り込みました。

是「あとは自動操縦ですから安心して乗っててください」
ポ「是輔さん、ホントにアリガト!」
ア「是輔さん、ありがとう。またね!」
是「アンジュさん、今度はデートにお誘いしますぜ」
ア「じゃ、火星に連れてって!」
是「お安い御用です」

 ノストロモ号から射出されたシャトルは、宇宙のジェットコースターとなって神田淡路町に向けて降下していきました。
次の日の新聞には、東京神田周辺でUFOの目撃情報が相次いだという記事が紙面をにぎわせたのは言うまでもありません。


おしまい


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

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先頭 表紙

いいなぁ。私も銀河鉄道見たいな〜・・・ / ミタ・ソウヤ ( 2004-04-04 00:09 )

2004-03-28 たろちゃんとマルチェロ  その1

たろちゃんとマルチェロ  その1

たろ「ねえ、マルチェロ」
マル「なに?」
たろ「くたびれたから横にならない」
マル「そうしようと思ってたとこ」
たろ「そう・・・・」
マル「・・・・・・」

つづく


先頭 表紙

2004-03-27 たろちゃんとマルチェロ  その2

たろちゃんとマルチェロ  その2

たろ「ねえ、マルチェロ」
マル「え?」
たろ「田村正和ってカッコいいと思う?」
マル「人間のことは、よく分かんない」
たろ「そう・・・・」
マル「・・・・・・」


 ポロが、野村家に来る少し前のできごとでした。

おしまい


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先頭 表紙

2004-03-26 ポロの日記 2004年3月26日(電曜日) ポロのすてきなカメラ

ポロは指カメラのほかに、キョロちゃんのレアものカメラだって持ってます。


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これは…名器と言うより…(一部の)コレクターを魅了する力を…カメラコレクターではないかも知れないけど(笑) / みた・そうや ( 2004-03-26 12:00 )

2004-03-25 ポロの日記 2004年3月25日(草曜日) せんせいのオンボロ写真機

せんせいのオンボロ写真機

「うわ! 何、せんせい、そのオンボロな物体は」
「古いがオンボロではない」
「もしかしてカメラ?」
「写真機と言ったほうが似合うかな」
「やだな、歳とると古いものばっかりアリガタがって」
「これは1948年に発売されたオリンパス35だ」
「性能悪そう」
「そうでもないぞ。名機という人もいるくらいだ」
「ポロのカメラなんて、これだよ」
「なんだ、チョコボールのオマケか?」
「あ、ひどいよ、これは森永のキョロちゃんカメラでレアものなんだから」
「狙ってシャッターボタンを押すだけだな」
「そだよ、ぜんぜん失敗しないんだから。せんせいのは?」
「これはなかなか面倒なカメラだ。まず、ピント合わせが難題だ。距離計と連動していないどころか、距離計がついていない」
「うわ、ヘボっちい。じゃ、どうするの?」
「目測式と言って、被写体まで5メートルだなと思ったらレンズのこのリングの目盛りを5メートルに合わせる」
「すっごいいいかげん。間違ってたらどうするの?」
「ピンボケになる」
「ひっどーい! 無責任なカメラだな」
「そうだろうか。このカメラを使っていると距離に敏感になる。訓練すると人はかなり正確な距離感を持てるようになるものだ。炊飯ジャーでご飯を炊いていると、薪とお釜で炊く感覚を失ったりするのと同じだ」
「もしかして露出も?」
「そうだ。露出計と連動していないどころか、露出計さえない」
「それも訓練?」
「手持ちの露出計を使うこともあるが、なるべく露出感覚を鍛えたいものだ」
「シャッター速度もだよね」
「そうだ。露出というのは絞り径とシャッター速度の相関のことを言う。シャッターはコパル製の200分の1秒のものが装備されている。こういうカメラを使っているとその場の明るさに敏感になる」
「なんだかオンボロに見えなくなってきた。ポロも欲しい」
「何十年も前に製造中止になっているから誰もが手に入れられるものではないが、クラシックカメラの専門店に行けば手に入る可能性がある」
「高い?」
「ものによるね。こういう機械式カメラは半導体を使っていないから手入れさえ怠らなければ寿命が長い。極端な話、半永久と言ってもよいほどだ。だから、もともとの性能がしっかりしていれば、古くならない」
「わ、ますます欲しくなってきた」
「全自動カメラは、いわばCDプレイヤーのようなものだ。誰でも名演奏を聴くことができる。それに対してこういうカメラはピアノにたとえることができる。練習して自分で弾かなくてはならない。中途半端な気持ちでは持てない」
「そっか。そだね。でも、それを見てたら挑戦する気持ちに火がついたぞ。オンボロどころか、りりしいお姿って感じに見えてきた」
「道具は人を鍛える」
「そ、それだよ。ポロは、その誘惑によわいんだなあ」
「それなら、まずピアノに鍛えてもらえばいいじゃないか」
「あ、あ、あ、それは言わない約束だよ」
「そんな約束をした覚えはない」
「あ゛〜、いぢわるだいぢわるだ、せんせいはいぢわるだ〜」



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おお、古き良き時代…って感じですね〜。名器と呼ばれる物は、人を魅了する『何か』を持っていますね。 / みた・そうや ( 2004-03-26 11:58 )

2004-03-22 ポロの日記 2004年3月22日(光曜日) 朝ごはん

朝ごはん

 どこのおうちでも同じだと思うけど、せんせいのおうちの朝も戦場さながらです。子どもたちは、トイレ掃除だの階段掃除だのキッチンだのそれぞれの持ち場でひと仕事です。そうこうしながらも、どうにか朝ご飯ができあがってみんな席につきます。今日は、せんせいは朝から仕事場にこもっていて食卓にはいませんでした。

みんな「いただきまーす!」
ポロ「むしゃむしゃがつがつ」
奥さん「ポロちゃん、そんなにガツガツ食べないの! ほっぺにご飯つぶ」
ポ「あ、ホントだ! だっておいしいんだもん。むしゃむしゃがつがつ」
ぴーたろう「ポロってさあ、ちっちゃいから、ここから見るとテーブルの上に顔だけしか出てなくて食べにくそう」
ゴマ「ちょっと背の高い椅子を用意してあげようか、ポロ」
ポ「むしゃむしゃがつがつむしゃむしゃ」
海「こいつ、食べるのに夢中で聞えてないよ」
ポ「ダイじょぶ、聞えてるから。むしゃむしゃがつがつ、おかわりー!」
奥「はい、お茶わんちょうだい」
ぴ「ねえ、ポロ三杯目じゃないの?」
海「こいつさあ、今川焼き12個とか食っちゃうくらいだから、三杯くらい平気じゃないの?」
ポ「う〜ん。あと、二杯くらいイけるかも」
ゴマ「居候(いそうろう)、三杯目にはソッと出しっていうんだぞ、ポロ」
ポ「そ、そんなエチケットがあるのかあ。じゃ、今度から三杯目からあとはソッと出すね」
奥「はい、ごはん」
ポ「わ、アリガト!」
奥「別にいいのよ、いくら食べても。でもね、そんなにちっちゃいのに身体に悪くないかしらって、みんな心配してるの」
ポ「ダイじょぶ。ポロ健康だから! むしゃむしゃがつがつ、ゲホゲホ!」
奥「ほら、慌てないで落ち着いて食べて」
ポ「ゲホゲホ!」
ぴ「ポロ、だいじょうぶ?」
奥「はい、お茶よ」
ポ「ゲホゲホ、ありがと」
ゴマ「ああ、よかった。のど違(たが)えで死んじゃうことだってあるんだぞ、気をつけなくちゃ、ポロ」
ポ「うん・・」
ぴ「ポロが来てから、うちって、なんだか楽しいよね」
ゴ「そりゃなあ、こんなこと世界中の誰も信じないだろうからねえ」
海「あれ、ポロ泣いてない?」
ポ「びえ〜〜〜〜〜〜!」
奥「ポロちゃん、どうしたの。ゴマちゃん、あんたが居候三杯目にはソッと出しなんて言っていじめるからよ」
ゴマ「違うよ、きっときのうとむりんにいじめられたこと思いだしたんだよ」
ポ「びえ〜〜〜〜〜〜!」
海「のど違えで死んじゃうなんて脅したからだよ」
ゴ「そっかなあ」
ポ「びえ〜〜〜〜〜!」
ぴ「ほら、ポロちゃん、機嫌直して」
ポ「びえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
海「ダメだ、こりゃ」
奥「ほら、たろちゃん、学校遅れるわよ」
ぴ「はーい、ほらポロ、元気出して! じゃ、行ってくるね」

 違うんだよ違うんだよ。ポロは何だか急にすごく幸せな感じがしてきて、涙が止まらなくなっちゃったんだよ。こんなにいっぱいご飯食べられて、のど違えすればみんなが心配してくれて、ポロが来てから楽しいねなんて言われたら、もうダメだ〜〜。

 びえ〜〜〜〜〜! びえ〜〜〜〜〜!

 ポロは、いつか猫の星に帰らなくちゃならないけど、どうやって帰るふんぎりをつけたらいいんでしょか。
それが心配でまた泣けてきたのでした。

 びえ〜〜〜〜〜〜〜〜!


 おしまい


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先頭 表紙

2004-03-20 ポロの日記 2004年3月16日(熱曜日) 技術文書作成達人養成キット 修了編 その1

技術文書作成達人養成キット 修了編 その1

 いつもの習慣。ポロはすっかり仲良しになった“技術文書達人養成キット”のスイッチをパチンと入れました。回路が温まってくると、半透明の光のディスプレイがぼわーんと浮かび上がってきます。そして、いつもの言葉が現れます。

“Welcome to 技術文書達人養成キット 一緒に文章修業を始めましょう!”

 ポロは毎日のようにキットで勉強していたので、かなり文章のことが分かってきました。そして、修業も終盤を迎えています。

“ポロちゃん!”

 近ごろ、文書キットもなれなれしくなってきました。

“がんばったね。ついに今日は最終講義だ”

 えっ、おしまいなの?

“人間の先生にも寿命があるように全ての養成キットには寿命がある。私も例外ではない。そして、その寿命が尽きようとしている。電池を交換してもダメだ。一字一句逃(のが)さずによく読んで勉強してほしい”

 わ、せっかくお友だちになれたのに。そんなのイヤだよ〜。

“それでは始めよう”

 文書キットは、寿命が尽きようとしているなんて言っておきながら、いつもとかわらずに講義を始めました。

“今までの勉強で分かってきたこととは思うけれど、実際には文学作品と言えども単に印象を書き連ねただけでは、小説も大規模な随筆で終わってしまいかねないわけだった。ここまではいいかい?”

 うん、いいよ。でもお別れはイヤだよ〜。

“では、最後の講義では短編小説の実例を挙げて、そこからポロちゃんに全てを汲み取ってもらおうと思う。次に示す例題は技術文書として高度な表現方法を用いている。たとえば、状況を説明する冒頭の数行(“黄色い光が灯った”まで)だが、これをさらに短くできるかどうか検討してみれば分かると思う。他の部分も推して知るべしだ。よく読んで勉強してほしい”

 キットがそういうと、ディスプレイに文章が現れ始めました。

つづく

先頭 表紙

2004-03-19 ポロの日記 2004年3月16日(熱曜日) 技術文書作成達人養成キット 修了編 その2

技術文書作成達人養成キット 修了編 その2



例文:1024 短編小説

 20年の耐用期限を、さらに10年も過ぎた小さな宇宙哨戒艇クモヤ145が静かに航行していた。そんな老朽船を割り当てられても愚痴ひとつこぼさずに、ぶち猫の若者タブタは3年目の哨戒任務についていた。一度基地を発進すると最低3週間は狭い船内で一人過ごさなければならない。孤独も仕事のうちと割り切ってタブタは耐えた。
 そのようなある日、2年間静かだった警報装置に初めて小さな黄色い光が灯った。

「何だろう?」

 本来クモヤ145の持つレーダーやセンサー類は非常に旧式のもので、警報の内容まで知ることのできるようなものではなかった。しかし、タブタは持ち前の技術を生かしてそれらの性能をかなり引き上げていたので、その様子を知ることができるかも知れないと考えた。
 100万キロの探索深度を持つ長距離レーダーを起動して位置を確かめると、受信機の周波数を合わせた。果たしてIFFトランスポンダ(敵味方識別装置)からの信号を受信することができた。驚くべきことに、トランスポンダは信号の発信元がロイヤル・ドーラ2であることを告げていた。第1王子の船に何かあったらしい。残りは船籍不明だ。
 最新型の巡洋艦ロイヤル・ドーラ2が装備するF119-PW-1000型エンジンには及ぶべくもないものの、タブタ自身の手によるロビン476E型改エンジンがうなりをあげて、持てる推力の全てを吐き出した。軽量なクモヤ145は銀の矢となって太陽系の辺境空間を突き進んだ。猛烈な加速度のためにタブタの身体はGシートに押し付けられ、顔はゆがんだ。旧式のクモヤ145に加速度緩和装置はなかった。
 数時間苦痛に耐えると、クモヤ145は闘いを終えて静まり返った戦闘空域に達した。すでにロイヤル・ドーラ2の船影はなく、精密レーダーには爆発によって広がり続ける破片群が映っていた。その中に脱出ポッドとおぼしき影があった。タブタは、すぐにクモヤ145のノーズをその影に向けた。
 ものの数分でクモヤ145は影との接触に成功した。やはりドーラ2の脱出ポッドだった。がっちりとつながった共通規格のドッキングポートから出てきたのは、ドーラの王位継承権第1位のアメン王子だった。

「アメン王子、ご無事で。お怪我はありませんか!」
「ありがとう、かすり傷だ。君の名前は?」
「ドーラ防衛軍宇宙航空隊、第3哨戒機甲師団、第3哨戒部隊所属タブタ2等空士であります!」

 タブタは雲の上の存在である第1王子を目の前に緊張した。

「これはクモヤ145か。いまだに現役で配備されていたとは知らなかった。反撃しようにもこれでは無理だな」
「お言葉ですが王子閣下、このクモヤ145は不肖、自分が多少の改良を加えており、ある程度の追撃と攻撃が可能であるかと思われます」

 そう言われて、アメン王子がよく見るとオリジナルのクモヤ145にはない機器類が操縦席周りを埋め尽くしていた。

「火器管制パネルのMk.125の文字は、洒落のつもりか?」
「いえ、Mk.125光子魚雷を2基実装しています」
「しかし、管制コンピュータはどうした?」
「民生用の市販CPUから自作いたしました!」
「本当か!?」
「本船のエンジンも通常のものの162パーセントの出力に上げてあります。それで、いち早くこの空域に到達できました!」
「言われてみればそのとおりだ。他に味方の艦船は影も形もない。君の技術を信頼できそうだ。ならば急ごう。敵はまだ遠くには行っていない」
「アイアイサー!」

つづく

先頭 表紙

おちゃみさん、ゴメなさい。全部クモヤ145でした。 / ポロ ( 2004-03-18 10:34 )
話の筋は分かるんだけど、そういうSF用語みたいのがすんなり理解できる素地が私にもあれば、もっともっと深いところで楽しめるだろうにな〜、と残念でなりません。いや〜、しかし、ポロのSFモノは用語がしっかりしているから分かる人にはたまんない面白さなんだろうな〜。 / おちゃみ ( 2004-03-18 10:09 )
う〜ん・・。SF慣れしている人は既に頭の中にSFワールドの基礎が出来ているわけで、そんな人はポロのSFを読んでも違和感なく受け容れられるのかもしれないけれど、私なんかが読んでも、すんごく難解だなぁ。例えばクモヤ145 とクモヤ18 の区別はなに?とか、そんなこともよく解らずに読み飛ばすしかないんだよね〜。 / おちゃみ ( 2004-03-18 10:09 )

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