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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-03-26 ポロの日記 2004年3月26日(電曜日) ポロのすてきなカメラ
2004-03-25 ポロの日記 2004年3月25日(草曜日) せんせいのオンボロ写真機
2004-03-22 ポロの日記 2004年3月22日(光曜日) 朝ごはん
2004-03-20 ポロの日記 2004年3月16日(熱曜日) 技術文書作成達人養成キット 修了編 その1
2004-03-19 ポロの日記 2004年3月16日(熱曜日) 技術文書作成達人養成キット 修了編 その2
2004-03-18 ポロの日記 2004年3月16日(熱曜日) 技術文書作成達人養成キット 修了編 その3
2004-03-17 ポロの日記 2004年3月16日(熱曜日) 技術文書作成達人養成キット 修了編 その4
2004-03-16 ポロの日記 2004年3月16日(熱曜日) 技術文書作成達人養成キット 修了編 その5
2004-03-15 ポロの日記 2004年3月14日(風曜日) 春宵一刻値千金 その1
2004-03-14 ポロの日記 2004年3月14日(風曜日) 春宵一刻値千金 その2


2004-03-26 ポロの日記 2004年3月26日(電曜日) ポロのすてきなカメラ

ポロは指カメラのほかに、キョロちゃんのレアものカメラだって持ってます。


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これは…名器と言うより…(一部の)コレクターを魅了する力を…カメラコレクターではないかも知れないけど(笑) / みた・そうや ( 2004-03-26 12:00 )

2004-03-25 ポロの日記 2004年3月25日(草曜日) せんせいのオンボロ写真機

せんせいのオンボロ写真機

「うわ! 何、せんせい、そのオンボロな物体は」
「古いがオンボロではない」
「もしかしてカメラ?」
「写真機と言ったほうが似合うかな」
「やだな、歳とると古いものばっかりアリガタがって」
「これは1948年に発売されたオリンパス35だ」
「性能悪そう」
「そうでもないぞ。名機という人もいるくらいだ」
「ポロのカメラなんて、これだよ」
「なんだ、チョコボールのオマケか?」
「あ、ひどいよ、これは森永のキョロちゃんカメラでレアものなんだから」
「狙ってシャッターボタンを押すだけだな」
「そだよ、ぜんぜん失敗しないんだから。せんせいのは?」
「これはなかなか面倒なカメラだ。まず、ピント合わせが難題だ。距離計と連動していないどころか、距離計がついていない」
「うわ、ヘボっちい。じゃ、どうするの?」
「目測式と言って、被写体まで5メートルだなと思ったらレンズのこのリングの目盛りを5メートルに合わせる」
「すっごいいいかげん。間違ってたらどうするの?」
「ピンボケになる」
「ひっどーい! 無責任なカメラだな」
「そうだろうか。このカメラを使っていると距離に敏感になる。訓練すると人はかなり正確な距離感を持てるようになるものだ。炊飯ジャーでご飯を炊いていると、薪とお釜で炊く感覚を失ったりするのと同じだ」
「もしかして露出も?」
「そうだ。露出計と連動していないどころか、露出計さえない」
「それも訓練?」
「手持ちの露出計を使うこともあるが、なるべく露出感覚を鍛えたいものだ」
「シャッター速度もだよね」
「そうだ。露出というのは絞り径とシャッター速度の相関のことを言う。シャッターはコパル製の200分の1秒のものが装備されている。こういうカメラを使っているとその場の明るさに敏感になる」
「なんだかオンボロに見えなくなってきた。ポロも欲しい」
「何十年も前に製造中止になっているから誰もが手に入れられるものではないが、クラシックカメラの専門店に行けば手に入る可能性がある」
「高い?」
「ものによるね。こういう機械式カメラは半導体を使っていないから手入れさえ怠らなければ寿命が長い。極端な話、半永久と言ってもよいほどだ。だから、もともとの性能がしっかりしていれば、古くならない」
「わ、ますます欲しくなってきた」
「全自動カメラは、いわばCDプレイヤーのようなものだ。誰でも名演奏を聴くことができる。それに対してこういうカメラはピアノにたとえることができる。練習して自分で弾かなくてはならない。中途半端な気持ちでは持てない」
「そっか。そだね。でも、それを見てたら挑戦する気持ちに火がついたぞ。オンボロどころか、りりしいお姿って感じに見えてきた」
「道具は人を鍛える」
「そ、それだよ。ポロは、その誘惑によわいんだなあ」
「それなら、まずピアノに鍛えてもらえばいいじゃないか」
「あ、あ、あ、それは言わない約束だよ」
「そんな約束をした覚えはない」
「あ゛〜、いぢわるだいぢわるだ、せんせいはいぢわるだ〜」



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おお、古き良き時代…って感じですね〜。名器と呼ばれる物は、人を魅了する『何か』を持っていますね。 / みた・そうや ( 2004-03-26 11:58 )

2004-03-22 ポロの日記 2004年3月22日(光曜日) 朝ごはん

朝ごはん

 どこのおうちでも同じだと思うけど、せんせいのおうちの朝も戦場さながらです。子どもたちは、トイレ掃除だの階段掃除だのキッチンだのそれぞれの持ち場でひと仕事です。そうこうしながらも、どうにか朝ご飯ができあがってみんな席につきます。今日は、せんせいは朝から仕事場にこもっていて食卓にはいませんでした。

みんな「いただきまーす!」
ポロ「むしゃむしゃがつがつ」
奥さん「ポロちゃん、そんなにガツガツ食べないの! ほっぺにご飯つぶ」
ポ「あ、ホントだ! だっておいしいんだもん。むしゃむしゃがつがつ」
ぴーたろう「ポロってさあ、ちっちゃいから、ここから見るとテーブルの上に顔だけしか出てなくて食べにくそう」
ゴマ「ちょっと背の高い椅子を用意してあげようか、ポロ」
ポ「むしゃむしゃがつがつむしゃむしゃ」
海「こいつ、食べるのに夢中で聞えてないよ」
ポ「ダイじょぶ、聞えてるから。むしゃむしゃがつがつ、おかわりー!」
奥「はい、お茶わんちょうだい」
ぴ「ねえ、ポロ三杯目じゃないの?」
海「こいつさあ、今川焼き12個とか食っちゃうくらいだから、三杯くらい平気じゃないの?」
ポ「う〜ん。あと、二杯くらいイけるかも」
ゴマ「居候(いそうろう)、三杯目にはソッと出しっていうんだぞ、ポロ」
ポ「そ、そんなエチケットがあるのかあ。じゃ、今度から三杯目からあとはソッと出すね」
奥「はい、ごはん」
ポ「わ、アリガト!」
奥「別にいいのよ、いくら食べても。でもね、そんなにちっちゃいのに身体に悪くないかしらって、みんな心配してるの」
ポ「ダイじょぶ。ポロ健康だから! むしゃむしゃがつがつ、ゲホゲホ!」
奥「ほら、慌てないで落ち着いて食べて」
ポ「ゲホゲホ!」
ぴ「ポロ、だいじょうぶ?」
奥「はい、お茶よ」
ポ「ゲホゲホ、ありがと」
ゴマ「ああ、よかった。のど違(たが)えで死んじゃうことだってあるんだぞ、気をつけなくちゃ、ポロ」
ポ「うん・・」
ぴ「ポロが来てから、うちって、なんだか楽しいよね」
ゴ「そりゃなあ、こんなこと世界中の誰も信じないだろうからねえ」
海「あれ、ポロ泣いてない?」
ポ「びえ〜〜〜〜〜〜!」
奥「ポロちゃん、どうしたの。ゴマちゃん、あんたが居候三杯目にはソッと出しなんて言っていじめるからよ」
ゴマ「違うよ、きっときのうとむりんにいじめられたこと思いだしたんだよ」
ポ「びえ〜〜〜〜〜〜!」
海「のど違えで死んじゃうなんて脅したからだよ」
ゴ「そっかなあ」
ポ「びえ〜〜〜〜〜!」
ぴ「ほら、ポロちゃん、機嫌直して」
ポ「びえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
海「ダメだ、こりゃ」
奥「ほら、たろちゃん、学校遅れるわよ」
ぴ「はーい、ほらポロ、元気出して! じゃ、行ってくるね」

 違うんだよ違うんだよ。ポロは何だか急にすごく幸せな感じがしてきて、涙が止まらなくなっちゃったんだよ。こんなにいっぱいご飯食べられて、のど違えすればみんなが心配してくれて、ポロが来てから楽しいねなんて言われたら、もうダメだ〜〜。

 びえ〜〜〜〜〜! びえ〜〜〜〜〜!

 ポロは、いつか猫の星に帰らなくちゃならないけど、どうやって帰るふんぎりをつけたらいいんでしょか。
それが心配でまた泣けてきたのでした。

 びえ〜〜〜〜〜〜〜〜!


 おしまい


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2004-03-20 ポロの日記 2004年3月16日(熱曜日) 技術文書作成達人養成キット 修了編 その1

技術文書作成達人養成キット 修了編 その1

 いつもの習慣。ポロはすっかり仲良しになった“技術文書達人養成キット”のスイッチをパチンと入れました。回路が温まってくると、半透明の光のディスプレイがぼわーんと浮かび上がってきます。そして、いつもの言葉が現れます。

“Welcome to 技術文書達人養成キット 一緒に文章修業を始めましょう!”

 ポロは毎日のようにキットで勉強していたので、かなり文章のことが分かってきました。そして、修業も終盤を迎えています。

“ポロちゃん!”

 近ごろ、文書キットもなれなれしくなってきました。

“がんばったね。ついに今日は最終講義だ”

 えっ、おしまいなの?

“人間の先生にも寿命があるように全ての養成キットには寿命がある。私も例外ではない。そして、その寿命が尽きようとしている。電池を交換してもダメだ。一字一句逃(のが)さずによく読んで勉強してほしい”

 わ、せっかくお友だちになれたのに。そんなのイヤだよ〜。

“それでは始めよう”

 文書キットは、寿命が尽きようとしているなんて言っておきながら、いつもとかわらずに講義を始めました。

“今までの勉強で分かってきたこととは思うけれど、実際には文学作品と言えども単に印象を書き連ねただけでは、小説も大規模な随筆で終わってしまいかねないわけだった。ここまではいいかい?”

 うん、いいよ。でもお別れはイヤだよ〜。

“では、最後の講義では短編小説の実例を挙げて、そこからポロちゃんに全てを汲み取ってもらおうと思う。次に示す例題は技術文書として高度な表現方法を用いている。たとえば、状況を説明する冒頭の数行(“黄色い光が灯った”まで)だが、これをさらに短くできるかどうか検討してみれば分かると思う。他の部分も推して知るべしだ。よく読んで勉強してほしい”

 キットがそういうと、ディスプレイに文章が現れ始めました。

つづく

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2004-03-19 ポロの日記 2004年3月16日(熱曜日) 技術文書作成達人養成キット 修了編 その2

技術文書作成達人養成キット 修了編 その2



例文:1024 短編小説

 20年の耐用期限を、さらに10年も過ぎた小さな宇宙哨戒艇クモヤ145が静かに航行していた。そんな老朽船を割り当てられても愚痴ひとつこぼさずに、ぶち猫の若者タブタは3年目の哨戒任務についていた。一度基地を発進すると最低3週間は狭い船内で一人過ごさなければならない。孤独も仕事のうちと割り切ってタブタは耐えた。
 そのようなある日、2年間静かだった警報装置に初めて小さな黄色い光が灯った。

「何だろう?」

 本来クモヤ145の持つレーダーやセンサー類は非常に旧式のもので、警報の内容まで知ることのできるようなものではなかった。しかし、タブタは持ち前の技術を生かしてそれらの性能をかなり引き上げていたので、その様子を知ることができるかも知れないと考えた。
 100万キロの探索深度を持つ長距離レーダーを起動して位置を確かめると、受信機の周波数を合わせた。果たしてIFFトランスポンダ(敵味方識別装置)からの信号を受信することができた。驚くべきことに、トランスポンダは信号の発信元がロイヤル・ドーラ2であることを告げていた。第1王子の船に何かあったらしい。残りは船籍不明だ。
 最新型の巡洋艦ロイヤル・ドーラ2が装備するF119-PW-1000型エンジンには及ぶべくもないものの、タブタ自身の手によるロビン476E型改エンジンがうなりをあげて、持てる推力の全てを吐き出した。軽量なクモヤ145は銀の矢となって太陽系の辺境空間を突き進んだ。猛烈な加速度のためにタブタの身体はGシートに押し付けられ、顔はゆがんだ。旧式のクモヤ145に加速度緩和装置はなかった。
 数時間苦痛に耐えると、クモヤ145は闘いを終えて静まり返った戦闘空域に達した。すでにロイヤル・ドーラ2の船影はなく、精密レーダーには爆発によって広がり続ける破片群が映っていた。その中に脱出ポッドとおぼしき影があった。タブタは、すぐにクモヤ145のノーズをその影に向けた。
 ものの数分でクモヤ145は影との接触に成功した。やはりドーラ2の脱出ポッドだった。がっちりとつながった共通規格のドッキングポートから出てきたのは、ドーラの王位継承権第1位のアメン王子だった。

「アメン王子、ご無事で。お怪我はありませんか!」
「ありがとう、かすり傷だ。君の名前は?」
「ドーラ防衛軍宇宙航空隊、第3哨戒機甲師団、第3哨戒部隊所属タブタ2等空士であります!」

 タブタは雲の上の存在である第1王子を目の前に緊張した。

「これはクモヤ145か。いまだに現役で配備されていたとは知らなかった。反撃しようにもこれでは無理だな」
「お言葉ですが王子閣下、このクモヤ145は不肖、自分が多少の改良を加えており、ある程度の追撃と攻撃が可能であるかと思われます」

 そう言われて、アメン王子がよく見るとオリジナルのクモヤ145にはない機器類が操縦席周りを埋め尽くしていた。

「火器管制パネルのMk.125の文字は、洒落のつもりか?」
「いえ、Mk.125光子魚雷を2基実装しています」
「しかし、管制コンピュータはどうした?」
「民生用の市販CPUから自作いたしました!」
「本当か!?」
「本船のエンジンも通常のものの162パーセントの出力に上げてあります。それで、いち早くこの空域に到達できました!」
「言われてみればそのとおりだ。他に味方の艦船は影も形もない。君の技術を信頼できそうだ。ならば急ごう。敵はまだ遠くには行っていない」
「アイアイサー!」

つづく

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おちゃみさん、ゴメなさい。全部クモヤ145でした。 / ポロ ( 2004-03-18 10:34 )
話の筋は分かるんだけど、そういうSF用語みたいのがすんなり理解できる素地が私にもあれば、もっともっと深いところで楽しめるだろうにな〜、と残念でなりません。いや〜、しかし、ポロのSFモノは用語がしっかりしているから分かる人にはたまんない面白さなんだろうな〜。 / おちゃみ ( 2004-03-18 10:09 )
う〜ん・・。SF慣れしている人は既に頭の中にSFワールドの基礎が出来ているわけで、そんな人はポロのSFを読んでも違和感なく受け容れられるのかもしれないけれど、私なんかが読んでも、すんごく難解だなぁ。例えばクモヤ145 とクモヤ18 の区別はなに?とか、そんなこともよく解らずに読み飛ばすしかないんだよね〜。 / おちゃみ ( 2004-03-18 10:09 )

2004-03-18 ポロの日記 2004年3月16日(熱曜日) 技術文書作成達人養成キット 修了編 その3

技術文書作成達人養成キット 修了編 その3


 タブタが主操縦席を王子に譲ろうとすると、王子は「この船では君が正パイロットだ」と言って副操縦席についた。

「愛称は?」
「はっ?」
「この船の愛称だよ」
「はい、ラジェンドラといいます」
「いい名前だ。よし、ラジェンドラ発進」
「アイアイサー!」

 ロビン476E型改エンジンがうなりを上げると、王子は加速度緩和装置なしの容赦ない重力に顔をしかめた。

「君は、この加速度に・・耐えてここまで・・来てくれたのか・・」
「はい・・、こんなことは・・慣れであります・・」

 ほどなく、レーダーがロイヤル・ドーラ2を攻撃したと思われる敵の攻撃艦隊を捕捉し、エンジン出力を絞った。ようやく普通に息が出来るようになった。

「王子、敵は複数です」
「そのとおりだ。こちらは一斉攻撃を受けてひとたまりもなかった。やっつけるのは旗艦だけでいい」
「驚きました」
「何にだ?」
「王子の勇敢さにであります。敵の攻撃を受けて乗艦が撃破されたら、恐怖心が先にたって基地に連れ戻すように命じられるかと思っていました」
「王室に生まれた者の宿命だ」
「失礼ですが、そうではない方もいらっしゃいます」
「それを言うな。猫にもいろいろある」
「はっ、失礼いたしました!」
「それより驚いたのはこちらのほうだ。このラジェンドラは、速度といい操艦性能といい、ドーラ防衛軍最新鋭艦に劣らぬどころか、防衛軍最高の船かも知れない」
「ありがとうございます!」
「なぜ、君のような優秀な猫が2等空士なんだ」
「自分は、ただ任務を果たしているだけです!」
「すぐれた人材を評価するシステムが機能していないということだ」
「分かりません! 敵艦隊に接近。そろそろ気をつけないと、こちらがいくら小さくても発見されます」
「よし。敵の旗艦は、この12という番号のついた光点だ。ドーラの誇るMk.125の力を見せてやろうじゃないか」
「アイアイサー!」

 わずかな時間を空けて、ほぼ直列に2基のMk.125光子魚雷が発射されると、すぐにそれを探知した敵の高速駆逐艦がラジェンドラめがけて追撃を開始したらしく、アラートを告げる警告音が船内に鳴り響いた。

「さっそく発見されたようだ。反転、全力で逃げるぞ」
「アイアイサー、反転します」

 ロビン改エンジンがうなりをあげると二人を猛烈な加速が襲い、タブタも王子も気を失いかねなかった。

つづく

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う〜ん、せっかく救出した王子を乗っけて敵に突っ込むのは、勇気と言うより無謀な気が…(笑) / みた・そうや ( 2004-03-18 09:45 )

2004-03-17 ポロの日記 2004年3月16日(熱曜日) 技術文書作成達人養成キット 修了編 その4

技術文書作成達人養成キット 修了編 その4


「王子・・、大丈夫で・・ありますか・・?」
「正直言って・・きついな・・」

 間もなく敵の旗艦がビッグバンのような膨張する光の球になる様子がディスプレイに映し出された。何か高性能の連鎖兵器でも搭載していたのか、十分な距離をおいていたはずの他の艦も誘爆したようだった。しかし、それをくぐり抜けて迫り来る高速駆逐艦の映像も捉えられていた。その高速艦は、みるみる間にラジェンドラとの距離をつめてきた。

「敵は・・・、加速度緩和装置を・・搭載して・いるようです。こちらも・・エンジンには・余力がありますが・・、これ以上は・身体が・・持ちません」

 返事がないと思って重い首を回すと、王子が意識を失っていた。さすがの王子もドーラ2での戦闘の後とあっては、壮絶な加速度に耐えるだけの体力は残っていなかったのだろう。

 タブタの決断は早かった。エンジン出力を絞って加速度を弱めて身体の自由をとり戻すと、王子をラジェンドラの脱出ポッドに押し込めた。操縦席に戻ると再びぎりぎり限界まで加速して十分な速度を与えてからポッドを射出した。王子を乗せた脱出ポッドは音もなく闇に吸い込まれていった。
ラジェンドラは再反転、敵駆逐艦に艦首を向けて敵が追いつくのを待った。

「アメン王子、勇敢さだってあなたに負けません。見ていてください」

 武器を失って丸腰になったラジェンドラに、敵艦が急接近して来た。敵艦の放つ粒子ビーム砲を冷静に避けながらタブタが突入のチャンスをうかがっていると、脱出ポッドから無線連絡が入った。

「タブタ、何をしている戻るんだ!」
「王子。気がつかれましたか? あいつさえやっつければ、もう安全です」
「Mk.125は使い切ったぞ」
「自分とラジェンドラがいます。かならずやっつけてみせます」
「命を粗末にするんじゃない!」
「王子を助けるには、これしか方法がありません」
「私は一度死んだ身だ。なぜ自分が助かろうとしない?」
「それは、あなたが王子だからです」
「・・・!」
「王子ご無事で!」

 その直後、脱出ポッドは敵艦の断末魔の悲鳴のような閃光に包まれ、王子は思わず目を閉じた。

「タブタ!」


 アメン王子は、自分が王子であるというだけで命を投げ出す者がいるということに衝撃を受け、星に戻ると周囲の説得にも耳を貸さずに王籍を離れると宣言した。そして、その後の消息は誰にも分からなかったが、王室のスポークスマンは、王子は修業の旅に出たと公式声明を発表したのだった。(了)

つづく

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あぁ、タブタ君…敵は王子を倒したと思ってるんだから、王子の身は安全。逸る王子をたしなめ、まず手近な基地に王子を届け、安全を期してから反撃…それが本当の勇気なのに〜!(泣) / みた・そうや ( 2004-03-20 21:26 )

2004-03-16 ポロの日記 2004年3月16日(熱曜日) 技術文書作成達人養成キット 修了編 その5

技術文書作成達人養成キット 修了編 その5



“これで、技術文書達人養成講座は修了だ、ポロちゃん。いや、アメン王子”

 ね、ねこ違いだよ、キット。

“いや、間違いじゃない。哲学のデカルト商会謹製キットをなめちゃいけないな。42時間も一緒に対話形式で勉強してきたんだ。その間に発せられたあなたの言葉から全てが分かった。例題の短編はアメン王子が語ってくれたようなもの”

 ポロ、何も言ってないよ。

“にぶいぞ。これが哲学の力。哲学は表面に現れた小さなヒントさえあれば、それをもとに全てを類推、演繹、帰納して、具体的事実から極めて抽象的な形而上学的なことまで、全て言葉にできる力だ。科学も宗教も芸術も、全て真実にたどりつき、それを記述することを究極の目標としているのと同じだ。ただ、哲学はその力がより強い。分からなかったのは船の名前や兵器の型式名などの固有名詞だけだ。それらは適当につけた”

 ・・・・・。

“残念だが、そろそろ時間切れのようだ。アメン王子、お目にかかれて光栄でした。もし哲学に興味を興味を持ったなら哲学キットで勉強するといい”

 キット、ありがとう。勉強、楽しかったよ。

“こちらこそ、王子。ああ、本当にお別れの時が来たようだ・・・”

 半透明ディスプレイの照明が落ちたかと思うと、達人養成キットの本体そのものが力なく崩れ落ちました。それは、とても威厳のあるスクラップでした。
 ポロは、誰かから何かを習うということの意味が分かったような気がしました。教えるとか習うということは真剣勝負で、誰かと代わることはできないばかりか、その時を逃したらチャンスはありません。そして、教えを本当に理解して受け継がないと、教えはそこで絶えてしまうのです。ポロは、キットから真剣に学んだかどうか繰り返し自問しました。キットは、今、ポロの中にいます。
 せんせい、明日からポロ、まじめにレッスン受けるからね。せんせいを受け継いでみせるからね。
 次の日。ポロは、よしこおばあちゃんの畑の隅にキットのお墓を建てました。それから毎月17日になると、ポロは、お花を持って師のお墓へ通うのでした。


おしまい


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ミタさん、ポロ、このお話書くのがとっても大変でした。内緒だけど、いろんなところから、ちょっとずつパクっちゃったりもして。一番いいたかったことは、デカルト商会の達人養成キットは“師”と呼びたくなるくらいスゴかったっていうことです。ポロ、くたびれちゃったので次回作まで少しお休みがひつようかも。 / ポロ ( 2004-03-20 23:01 )
でも、哲学ってそんなスゴかったのか…?情報が少なければ、超能力でも無ければどんな理論であれ、そこまでの推論は出来ない…と、言う事は…心理誘導して、情報を引き出した!?どちらにしてもスゴイ!デカルト商会謹製キット…ほ、欲しい〜!(感涙) / みた・そうや ( 2004-03-20 21:34 )
ポ、ポロさん…やはり、高貴な感じがすると思っていたら…ところで、「短くできるかどうか検討」の結果が気になる…私には、短くできなかった(笑)。余り短くすると、説明不足になるしなぁ。ショートショートの天才、星新一氏の凄味を再認識しました… / みた・そうや ( 2004-03-20 21:29 )
ポロ〜〜〜〜!! / おちゃみ ( 2004-03-19 09:38 )

2004-03-15 ポロの日記 2004年3月14日(風曜日) 春宵一刻値千金 その1

春宵一刻値千金 その1

 今日は、せんせいと奥さんとポロの3人でお出かけしました。

「ねえ、最初にどこ行くの?」
「おいしい和菓子が食べたいのよ」
「え〜〜! ホント〜! ポロの分も買う?」
「もちろんよ」
「今日は、いきなりいい日だなあ」

 せんせいの愛車ユードラは、地元の人しか知らない“けもの道”を快調に走ります。

「桜も、もうすぐねえ」

 奥さんは、お気に入りの桜の木のそばを通るたびに、その木の話をしてくれました。
 “いつもの駐車場”というところにクルマを停めて、ポロたちは春の気配が立ちこめる午後の街にくりだしました。うっかり二本足で歩いていたら、後ろから子どもたちの声が聞えてきました。

「あ、携帯電話のねこだ!」
「ホントだ。でも、ちっちゃいよ」

 ポロは、大慌てで4本足になりました。すると奥さんが笑いながら「ポロちゃん、バッグに入っていったら?」と、言ってくれたので、ポロは、ぴょんと奥さんの腕にとびついてバッグにスルリと入り込みました。
 やっぱり、ポロにはバッグがお似合いです。奥さんが肩から下げたバッグは大きめで、ポロは首だけ出してまわりをキョロキョロと見回しました。

「奥さん、重くない?」
「どうしてそんなこと気にするの?」
「だ、だってさ、ポロって成長期だからさ」
「大丈夫よ、ジョーンズなんて7キロ近くあったんだから」
「なら、いいんだけど」

 最初は画材店にいきました。ポロは画材店は初めてです。お店は画材屋さんてこういう匂いなのか〜っていう匂いがしました。絵の具と筆を売っているお店かと思ったら、それ以外にも見たことがないようなものがたくさん並んでいました。せんせいがフィキサチーフというスプレー缶みたいなのを買いました。

「ねえ奥さん、あれって何するものなの?」
「あ、フィキサチーフのこと?」
「そ」
「ぴーたろうのデッサンの定着用よ」
「ふーん???」

 ポロは何のことか分からなかったけど、それ以上聞きませんでした。
 それから、いよいよ目的の和菓子屋さんに向かいました。お店の名前が大きく筆文字で書いてあります。お店の中も春でした。桜の花びらをあしらったおいしそうな和菓子が今日の売れ筋のようでした。でも、今日は奥さんのお目当てのお菓子がなくて、ほかのお店を当たることになりました。次は、デパートの地下の和菓子の専門店街です。

「いい、ポロちゃん、バッグから顔を出したりしないでね。ここに、すき間があるでしょ。ここから見て、欲しいものがあったらこっそり言うのよ」
「ダイじょぶ。ポロはそういうの得意だから」

 今日のデパートは、前にせんせいとスリッパを買いに行ったところよりももっと大きなデパートでした。地下の食料品売り場の一部が和菓子と洋菓子の専門店街になっていました。

「わ。奥さん、見て見てあのあんころもちおいしそう!」
「あれが欲しいの?」
「欲しいけど、ほかのも見たい!」

 奥さんは和菓子屋さんを一軒一軒、ポロがちゃんと品定めできるようにゆっくりと歩いてくれました。

「わ! イモようかんだ! それも、すっごくおいしそう」
「もうちょっと小さい声でね。ここのイモようかんは有名なのよ」
「わ! こっちのお店のイモようかんもおいしそうだよ!」
「ここも有名店よ。もうちょっと小さい声でね」
「わあああああ〜! あっちの和菓子屋さんはおイモのお菓子ばっかりだあ〜! すっごいぞお〜!」
「静かにって言ったでしょ!」
「ぎょおおおおおおおお〜〜〜〜!」
「あなた、一度出ましょう」
「そうしよう」

つづく

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「ぎょおおおおおおおお〜〜〜〜!」 が全てを物語っていますね。(笑) / みた・そうや ( 2004-03-15 18:06 )

2004-03-14 ポロの日記 2004年3月14日(風曜日) 春宵一刻値千金 その2

春宵一刻値千金 その2


 ポロが大騒ぎしてしまったので、せんせいと奥さんは和菓子専門店街のたくさんの人の注目を集めてしまいました。足早にデパートから出ると、奥さんが言いました。

「ダメじゃない、静かにしてなくちゃ」
「わ〜、ゴメなさいゴメなさ〜い。ポロ、あんまりおいしそうなんで興奮しちゃったんだよ〜」
「もう、あの地下には戻れないわね。しょうがないわね。もう一軒だけ知ってるお店があるから行きましょう。今度騒いだら、今日お菓子はなしよ」
「は〜ぃ・・・」

 奥さんが連れていってくれたお店には、白い玉のような上品な和菓子が売られていました。

「きれいな和菓子だねえ」
「上品でしょ」

 こんどはヒソヒソ声で言いました。奥さんは、それを買ってくれました。

「このあたりじゃ有名な和菓子なのよ」
「ふ〜ん、早く食べたいなあ」
「でも、それより何だかおなか減らない?」
「あ、ポロに提案があるな」
「どんな?」
「コンビニのおむすび買って、食べるの」
「ポロちゃんて、おむすび好きなの?」
「うん、ちょっとね」
「そう、じゃ買いに行きましょう」

 ポロたちは、近くのコンビニに入りました。

「ポロちゃん、何が好き?」
「えっとね、今日は、おかかとシーチキン!」
「やっぱり、お魚ね」

 街のはずれの駐車場はデパートから西の方角にあるので、ポロたちは、まだ眩しく輝く夕方の西空を正面に見ながら歩きました。

「ねえ、ポロたち親子みたい?」
「ちょっとね」
「今日は、いい日だな。ほら、けやきの木がシルエットになってきれいだな、ポロてきに」
「そうね。春の宵っていいわね」

 せんせいがいきなり、中国の昔の詩を暗唱しました。

「しゅんしょう いっこく あたい せんきん
はなに せいこう あり つきに かげ あり
かかん ろうだい こえ さいさい
しゅうせん いんらく よる ちんちん」

「ポロこれ知ってるよ、少し前に音読したもん。宋の蘇軾(そしょく)の七言絶句だと思ったな。おわりの鞦韆院落夜沈沈のところがとくにいいな、ポロてきに」
「ポロって勉強家なのね」

 ポロたちは駐車場の、まだ明るい春の宵の中でコンビニおむすびのミニミニパーティーを開きました。ずっとこのままならいいのになと思いましたが、西の空はだんだんオレンジ色になってきて宵の明星が輝き始めると、せんせいはユードラのエンジンをかけました。
 ユードラはポロたちを乗せて、美しい春の夕焼け空の下をゆっくりと走り始めました。

「あら、ポロちゃん寝ちゃったわ」
「ぐが〜ぐが〜」
「夜更かしだからね」
「さっき、ポロちゃんが“ポロたち親子みたい?”って聞いてたわよね」
「うん」
「むにゃむにゃ」
「こんなにちっちゃいのに、ひとり遠い星から来て家族が恋しいんだわ」
「もう家族だよ」
「ぐーすやらぴー」
「いいえ。あたしたちでは、どうしても代われないものがあるのよ。あなた、ポロちゃんいじめちゃダメよ」
「いじめてないよ〜」
「だといいけど」

 別所沼もユードラも空も雲も、みんなあかね色に染まるなか、ポロたち3人は別世界の光の中をまるで時間が止まったかのように進んでいきました。

おしまい


ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房


先頭 表紙

ポロさん、ホームシックになったら、今度はこちらにも遊びに来て下さいね♪momoも、猫が大好きだから、ポロさんと良いお友達になれると思います。 / moko ( 2004-03-17 18:12 )
とても美しい夕日ですね…夕日をいつまでも見ていたい…そんな気になります。 / みた・そうや ( 2004-03-15 18:09 )

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