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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-03-15 ポロの日記 2004年3月14日(風曜日) 春宵一刻値千金 その1
2004-03-14 ポロの日記 2004年3月14日(風曜日) 春宵一刻値千金 その2
2004-03-13 ポロの日記 2004年3月10日(波曜日) おちゃめさんと散歩
2004-03-12 ポロの日記 2004年3月7日(光曜日) ポロ、銀行へ行く
2004-03-11 ポロの日記 2004年3月4日(草曜日) ゴマのお兄ちゃん
2004-03-10 ポロの日記 2004年3月3日(波曜日) 海のお兄ちゃん
2004-03-09 ポロの日記 2004年2月29日(風曜日) 大きなマルエツに行く その1
2004-03-08 ポロの日記 2004年2月29日(風曜日) 大きなマルエツに行く その2
2004-03-07 ポロの日記 2004年2月27日(電曜日) フェッセンデン商会 その1
2004-03-06 ポロの日記 2004年2月27日(電曜日) フェッセンデン商会 その2


2004-03-15 ポロの日記 2004年3月14日(風曜日) 春宵一刻値千金 その1

春宵一刻値千金 その1

 今日は、せんせいと奥さんとポロの3人でお出かけしました。

「ねえ、最初にどこ行くの?」
「おいしい和菓子が食べたいのよ」
「え〜〜! ホント〜! ポロの分も買う?」
「もちろんよ」
「今日は、いきなりいい日だなあ」

 せんせいの愛車ユードラは、地元の人しか知らない“けもの道”を快調に走ります。

「桜も、もうすぐねえ」

 奥さんは、お気に入りの桜の木のそばを通るたびに、その木の話をしてくれました。
 “いつもの駐車場”というところにクルマを停めて、ポロたちは春の気配が立ちこめる午後の街にくりだしました。うっかり二本足で歩いていたら、後ろから子どもたちの声が聞えてきました。

「あ、携帯電話のねこだ!」
「ホントだ。でも、ちっちゃいよ」

 ポロは、大慌てで4本足になりました。すると奥さんが笑いながら「ポロちゃん、バッグに入っていったら?」と、言ってくれたので、ポロは、ぴょんと奥さんの腕にとびついてバッグにスルリと入り込みました。
 やっぱり、ポロにはバッグがお似合いです。奥さんが肩から下げたバッグは大きめで、ポロは首だけ出してまわりをキョロキョロと見回しました。

「奥さん、重くない?」
「どうしてそんなこと気にするの?」
「だ、だってさ、ポロって成長期だからさ」
「大丈夫よ、ジョーンズなんて7キロ近くあったんだから」
「なら、いいんだけど」

 最初は画材店にいきました。ポロは画材店は初めてです。お店は画材屋さんてこういう匂いなのか〜っていう匂いがしました。絵の具と筆を売っているお店かと思ったら、それ以外にも見たことがないようなものがたくさん並んでいました。せんせいがフィキサチーフというスプレー缶みたいなのを買いました。

「ねえ奥さん、あれって何するものなの?」
「あ、フィキサチーフのこと?」
「そ」
「ぴーたろうのデッサンの定着用よ」
「ふーん???」

 ポロは何のことか分からなかったけど、それ以上聞きませんでした。
 それから、いよいよ目的の和菓子屋さんに向かいました。お店の名前が大きく筆文字で書いてあります。お店の中も春でした。桜の花びらをあしらったおいしそうな和菓子が今日の売れ筋のようでした。でも、今日は奥さんのお目当てのお菓子がなくて、ほかのお店を当たることになりました。次は、デパートの地下の和菓子の専門店街です。

「いい、ポロちゃん、バッグから顔を出したりしないでね。ここに、すき間があるでしょ。ここから見て、欲しいものがあったらこっそり言うのよ」
「ダイじょぶ。ポロはそういうの得意だから」

 今日のデパートは、前にせんせいとスリッパを買いに行ったところよりももっと大きなデパートでした。地下の食料品売り場の一部が和菓子と洋菓子の専門店街になっていました。

「わ。奥さん、見て見てあのあんころもちおいしそう!」
「あれが欲しいの?」
「欲しいけど、ほかのも見たい!」

 奥さんは和菓子屋さんを一軒一軒、ポロがちゃんと品定めできるようにゆっくりと歩いてくれました。

「わ! イモようかんだ! それも、すっごくおいしそう」
「もうちょっと小さい声でね。ここのイモようかんは有名なのよ」
「わ! こっちのお店のイモようかんもおいしそうだよ!」
「ここも有名店よ。もうちょっと小さい声でね」
「わあああああ〜! あっちの和菓子屋さんはおイモのお菓子ばっかりだあ〜! すっごいぞお〜!」
「静かにって言ったでしょ!」
「ぎょおおおおおおおお〜〜〜〜!」
「あなた、一度出ましょう」
「そうしよう」

つづく

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「ぎょおおおおおおおお〜〜〜〜!」 が全てを物語っていますね。(笑) / みた・そうや ( 2004-03-15 18:06 )

2004-03-14 ポロの日記 2004年3月14日(風曜日) 春宵一刻値千金 その2

春宵一刻値千金 その2


 ポロが大騒ぎしてしまったので、せんせいと奥さんは和菓子専門店街のたくさんの人の注目を集めてしまいました。足早にデパートから出ると、奥さんが言いました。

「ダメじゃない、静かにしてなくちゃ」
「わ〜、ゴメなさいゴメなさ〜い。ポロ、あんまりおいしそうなんで興奮しちゃったんだよ〜」
「もう、あの地下には戻れないわね。しょうがないわね。もう一軒だけ知ってるお店があるから行きましょう。今度騒いだら、今日お菓子はなしよ」
「は〜ぃ・・・」

 奥さんが連れていってくれたお店には、白い玉のような上品な和菓子が売られていました。

「きれいな和菓子だねえ」
「上品でしょ」

 こんどはヒソヒソ声で言いました。奥さんは、それを買ってくれました。

「このあたりじゃ有名な和菓子なのよ」
「ふ〜ん、早く食べたいなあ」
「でも、それより何だかおなか減らない?」
「あ、ポロに提案があるな」
「どんな?」
「コンビニのおむすび買って、食べるの」
「ポロちゃんて、おむすび好きなの?」
「うん、ちょっとね」
「そう、じゃ買いに行きましょう」

 ポロたちは、近くのコンビニに入りました。

「ポロちゃん、何が好き?」
「えっとね、今日は、おかかとシーチキン!」
「やっぱり、お魚ね」

 街のはずれの駐車場はデパートから西の方角にあるので、ポロたちは、まだ眩しく輝く夕方の西空を正面に見ながら歩きました。

「ねえ、ポロたち親子みたい?」
「ちょっとね」
「今日は、いい日だな。ほら、けやきの木がシルエットになってきれいだな、ポロてきに」
「そうね。春の宵っていいわね」

 せんせいがいきなり、中国の昔の詩を暗唱しました。

「しゅんしょう いっこく あたい せんきん
はなに せいこう あり つきに かげ あり
かかん ろうだい こえ さいさい
しゅうせん いんらく よる ちんちん」

「ポロこれ知ってるよ、少し前に音読したもん。宋の蘇軾(そしょく)の七言絶句だと思ったな。おわりの鞦韆院落夜沈沈のところがとくにいいな、ポロてきに」
「ポロって勉強家なのね」

 ポロたちは駐車場の、まだ明るい春の宵の中でコンビニおむすびのミニミニパーティーを開きました。ずっとこのままならいいのになと思いましたが、西の空はだんだんオレンジ色になってきて宵の明星が輝き始めると、せんせいはユードラのエンジンをかけました。
 ユードラはポロたちを乗せて、美しい春の夕焼け空の下をゆっくりと走り始めました。

「あら、ポロちゃん寝ちゃったわ」
「ぐが〜ぐが〜」
「夜更かしだからね」
「さっき、ポロちゃんが“ポロたち親子みたい?”って聞いてたわよね」
「うん」
「むにゃむにゃ」
「こんなにちっちゃいのに、ひとり遠い星から来て家族が恋しいんだわ」
「もう家族だよ」
「ぐーすやらぴー」
「いいえ。あたしたちでは、どうしても代われないものがあるのよ。あなた、ポロちゃんいじめちゃダメよ」
「いじめてないよ〜」
「だといいけど」

 別所沼もユードラも空も雲も、みんなあかね色に染まるなか、ポロたち3人は別世界の光の中をまるで時間が止まったかのように進んでいきました。

おしまい


ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

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ポロさん、ホームシックになったら、今度はこちらにも遊びに来て下さいね♪momoも、猫が大好きだから、ポロさんと良いお友達になれると思います。 / moko ( 2004-03-17 18:12 )
とても美しい夕日ですね…夕日をいつまでも見ていたい…そんな気になります。 / みた・そうや ( 2004-03-15 18:09 )

2004-03-13 ポロの日記 2004年3月10日(波曜日) おちゃめさんと散歩

おちゃめさんと散歩

 波曜日は、せんせいが一日中レッスンで忙しくてかまってくれません。それでポロは、おちゃめさんと散歩に行くことにしました。場所は工房近くの笹目川沿いの道です。空はおだやかに晴れて、とってもいい気持ちでした。

「おちゃめさん、今日はあったかいねえ」
「そうね、それに比べてポロのお葬式の日は寒かったわ」
「そう言えば、ポロって一回死んじゃったんだっけ」
「そ〜〜よ。いきなりshinさんが祭壇の前に駆け込んできて大声でポロさんは生きてまーすなんて言いだすから、あたし何ごとかってびっくりしちゃったんだから」
「へえ」
「それでね、そのあと本当に棺(ひつぎ)の蓋を開けたらポロが、ふあ〜よく寝たなんて言って起きてきて、もう会場騒然」
「映画みたいだね〜!」
「なに、人ごとみたいに言ってるのよ」
「だって、よく分かんないんだもん」
「子路さんなんてね、やっぱりこうじゃなくちゃって今にも踊りだしそうな感じだったんだから」
「ポロは幸せだなあ、世界一の幸せ者だな」
「あ、ポロ見て。きれいな花が咲いてる」
「ホントだ。ポロの考えだと、あれはラフレシアかも」
「そんなわけないでしょ」
「じゃ、モウセンゴケかも」
「ポロ、あんた花の名前いくつ知ってるの?」
「えっと、ラフレシアとモウセンゴケとチューリップとひまわりと、えっと、それからデンドロビウムかな。あ、たんぽぽも知ってる!」
「それで花の名前を言い当てようっていうほうが無理ってもんよ」
「そっかあ。勉強しなくちゃ。おちゃめさんは、どんな花知ってるの?」
「どんなって、急に言われてもパッパッて言えないわよ」
「なーんだ。じゃ、ポロとおんなじじゃないか〜。ポロにも望みが出てきたな」
「あんたってどこまでも前向きね〜」
「そだ。おちゃめさん、その花の前に立って。写真撮るから」
「だって、カメラ持ってないじゃない」
「いいの。ポロのは指カメラだから。性能はピカイチだよ」
「ここでいい?」
「うん、いいよ。こうやって指と指を組みあわせて四角を作って、そこから覗いてパチッ!」
「撮れた?」
「うん、すっごくいい写真が撮れたよ。おちゃめさんには見せてあげられないけど、ポロの目の中にプリントされてずっと忘れないからダイじょぶ」
「便利なカメラねえ」
「せんせいがね、よくやるんだ。だってホントの写真はいちいちアルバム開かなくちゃならないけど、指カメラならいつでもどこでも思いだすだけだよ」
「へえ、あたしも今度から指カメラにしよう」
「そ。お金かかんないし」
「ポロ、ほら、きれいな鳥」
「ホントだ、川の中に立ってる。あれは・・」
「ちょっと待って。ダチョウかもとか言わないでよ」
「え゛〜! どーして分かったの?」
「さっきのラフレシアっていう言葉からの女の直感よ」
「すっごーい、ポロの野生の勘と同じくらいすごいね」
「ポロが知ってる鳥の名前ってカラスとダチョウとスズメとドードー鳥ってとこでしょ」
「あたり! あたりだよ。あとアヒルも知ってるよ」
「あの鳥はね、シラサギっていうのよ」
「優雅な鳥だねえ。せんせい知ってるかなあ?」
「知ってるわよ〜」
「そっか。くやしいなあ」
「ポロが知らなさすぎるのよ」

 それからしばらく歩いたらコンビニがあったので、おちゃめさんが鮭とシーチキンのおむすびとお茶を買ってきてくれました。ポロたちはポカポカと日の当たる笹目川の岸辺でゆったりと流れる白い雲を眺めながら、世界一おいしいランチを食べました。


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shinさん、ポロの指カメラには絞りとかシャッター速度とかついてないから簡単だよ! / ポロ ( 2004-03-14 00:10 )
写真をとる時、つい、絞りやシャッター速度をあわせ忘れていまいます〜 / shin ( 2004-03-13 21:32 )
mokoさん、ミタさん。ポロはラフレシアだと思ったんだけどな。 / ポロ ( 2004-03-11 16:33 )
私の子供の頃は、空き地に良くこのような花々が咲いていました…あの時、ポロさんやおちゃめさんが一緒にいたら、もっと楽しかった事でしょう。 / みた・そうや ( 2004-03-11 09:29 )
春らしい写真ですね♪私も、こんな風景を見ながら、‘世界一おいしいランチ’を食べたかったです〜 / moko ( 2004-03-11 08:54 )

2004-03-12 ポロの日記 2004年3月7日(光曜日) ポロ、銀行へ行く

ポロ、銀行へ行く

 きょう、せんせいに初めて銀行に連れていってもらいました。

「ポロ、クルマで待っててくれ」
「わ〜! クルマの中に放置するのは虐待だ〜虐待だ〜! アメリカだったら留置場行きだ〜!」
「しょうがないなあ。おとなしくしてるんだぞ」
「わーい、銀行だったらさ、1000まんえんの札束のふりすればダイじょぶだよ」

 ポロは、せんせいのコートの内ポケットにもぐりこみました。

「わ、自動ドアだ自動ドアだ!」
「しずかに」
「ポロは、にぎやかな札束なんだよ」

 銀行の中は待合室みたいになっていました。間口いっぱいに広がるカウンターには窓口がたくさんあって、そのひとつひとつ全部にきれいなお姉さんが座っていました。

「せんせい、鼻の下が伸びてるよ」
「銀行っていうのは、こうやって集客しているんだ」
「へえ、そうだったのか。でもさ、でもさ、お客さんより働いてる人のほうがずっと多いんだけど、銀行ってそんなに儲かるの?」
「そういえば、確かに多くの人が働いているなあ」
「あのさ、こっちの待合室側にもさ、腕章つけて立ってる人が2人いるけど、あの人たちは何してるの?」
「お客様係と言ってね、あっちの方にATMがあるだろ」
「うん」
「使い方の分からない人に説明したり、あるいはどこの窓口に行けばいいかとか案内してるんだ」
「じゃさ、それは分かりにくいATMや分かりにくい窓口に問題があるんだよね。ポロだったらさ、すっごくよく分かるATMとか“何でもOK窓口”にして解決しちゃうな」
「う〜ん、確かにそうだね。でも、銀行は人による案内がサービスだって考えているんだと思うよ」
「でもさ、でもさ、あの人たちの人件費がいくらだかポロ分かんないけどさ、お客さんが払ってるんだよね、それってサービスなの?」
「う〜ん、最近ポロは難しいことを言うようになったなあ」
「イモようかんの威力だよ。せんせいもイモようかん食べなきゃダメだね」
「根拠はあるのか、根拠は?」
「ポロが生きた証拠だよ、せんせい。イモようかんパワー、桃ジンジャー!」
「そう言えば、フェッセンデン商会の話で私は赤ジンジャーだったけど、赤字ンジャーは嫌な感じがするから変えてくれ」
「だめだよ、赤字ンジャーはリーダーだからね」
「ポロまで赤字っていう字でしゃべらないでくれよ」
「一度聞いたら耳から離れないかも、赤字ンジャー」
<・・への9番のカードをお持ちの方、5番の窓口へどうぞ・・>
「ほら、せんせい呼ばれたよ。あ、5番のお姉さん、ちょっとせんせい好みじゃん」
「いいか、用事が済むまで黙ってろよ」
「うん」
<どのようなごようでしょうか>
「えっと・・」
「授業料の口座振替の依頼だよ、せんせい・・」
<あ、すみません、もう一度おっしゃってください・・>
「あ、いえ、何でもないんです。この書類をお願いします」
<はい、かしこまりました。お呼びするまでお待ちください>

「黙ってろって言っただろ」
「せんせいのピンチを救ってあげたんだよ」
「いいから静かに!」
「せんせい、大きな声出さないでよ。まわりの人が見てるよ」
「ん、ご、ごほん」
「咳ばらいよりも腹話術の練習のふりのほうがマシだと思うな。なんだか、ポロたち相当注目されちゃったみたい」
「ご、ごほん、ごほん」

 黙っていたら、銀行はとっても静かなところだっていうことに気がつきました。どんなヒソヒソ話だって聞えちゃいます。そのあと、その日ずっと、せんせいはポロと口をきいてくれませんでした。


おしまい


先頭 表紙

shinさんの学校はコンピュータを信用していないのだと思います。紙に書いた文字が残るだけで信頼性アップかも。 / ポロ ( 2004-03-14 00:17 )
うちの学校は、なぜか口座振替もATMからの振込みもできなくて、毎回、窓口に用紙を出さないといけません。困ったもんですぢゃ。写真は、ビルの格子模様の変化が綺麗ですね。 / shin ( 2004-03-13 21:29 )
mokoさん、いつもアリガトございます。銀行はポロには謎のおみせでした。 / ポロ ( 2004-03-11 08:53 )
ATMができてから、銀行はますます機械的になりましたね〜以前は、振込み用紙に書いて振り込んだものも、今ではATMですものね〜あの‘手数料の計算’が、ややこしいんですよね!お年寄りには、不親切な機械ですよね〜実家の父は、記帳さえ、郵便局の窓口に頼んで、やってもらってるらしいです(^^ゞ / moko ( 2004-03-10 21:03 )

2004-03-11 ポロの日記 2004年3月4日(草曜日) ゴマのお兄ちゃん

ゴマのお兄ちゃん

 ゴマのお兄ちゃんは、家族から“ぶうよん”とか“ふうやん”と呼ばれています。でもハンドルネームがゴマなので、ポロはゴマのお兄ちゃんと呼んでいます。今年、高校を卒業してCGの学校へ行くみたいです。
 ゴマのお兄ちゃんはジョーンズと大の仲良しだったので、ポロみたいな猫の扱いに慣れています。まだ小さかった頃、ジョーンズと一緒に魔法の国やおとぎの国を冒険してまわった人なので、面白いお話をしてくれます。
 ゴマのお兄ちゃんは、野村家で一番たくさんキッチンに立つことが多く、料理上手です。それに、お兄ちゃんが炊事当番の時には流しの水栓までピッカピカに磨き上げちゃうので、すぐに分かります。クランベリーヒル時代にはロケット号の一番弟子だったということです。
 今日も、ポロがダイニングテーブルでイモようかんを食べていると、キッチンでお鍋を磨いていたゴマのお兄ちゃんがお話をしてくれました。

「ポロ。ずっと前に渡したキグチコヘイさんの出てきた本、覚えてるか?」
「うん、覚えてるよ。キグチコヘイは死んでも口からラッパを離しませんでしたっていうやつでしょ」
「あれは、修身ていう昔の教科書でさ、愛国心とか忠誠心とかそんなものを教えようとして書かれたんだ。だから今は、ああいうのは評判が悪い」
「でもポロ、キグチコヘイさん好きかも」
「だろだろ」
「うん」
「だからさ、あれを軍隊のラッパ手の物語から、ラッパが大好きな普通のおじさんの物語に変えちゃえば、すっごくいい話になると思うんだよね」
「そっか〜! ラッパが大好きなキグチコヘイさんだね。ポロ、思うんだけどさ、何かを好きになるってステキだよね。才能だよね」
「そう。それに好きなもののない人生ってつまんないだろ」
「ポロは死んでも口からイモようかんを離しませんでした」
「それって、ちょっと違うだろ〜」
「そっかな。あはは」

 ポロは、ラッパをこよなく愛したキグチコヘイさんの生涯を想像して、ちょっと幸せな気持ちになりました。はっと気がついてゴマのお兄ちゃんのほうを見ると、お兄ちゃんも一人幸せそうな表情をしていました。きっと同じことを考えていたに違いないと、ポロはゴマのお兄ちゃんを同志だと思いました。
 そうやって午後のダイニングは穏やかな時間が過ぎていきました。


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2004-03-10 ポロの日記 2004年3月3日(波曜日) 海のお兄ちゃん

海のお兄ちゃん

 海のお兄ちゃんの名前は“海洋”と書いて「みひろ」と読みます。家族には“みいやん”と呼ばれています。ハンドルネームは「いちまる」です。今年中学校を卒業して高校生になる、野村家きってのスポーツ少年です。
 あんまりポロをかまってくれませんが、ときどきお話してくれます。今日も、学校から帰ってくるなりポロにプリントを見せて言いました。

「ポロ、この理科の問題解いてみ!」
「え〜、ポロむずかしいこと分かんないよ」
「いいから、読んでみなって」
「えっと第6問の(2)。右の図2は、あるほ乳類の様子を表した図である。話はかわるが、ほ乳類と同じ恒温動物である生物の分類を次のア〜エの中からすべて選び、記号で答えなさい」
「図2の、ある生物ってなんだと思う?」
「わっ、バレリーナだ。バレリーナはほ乳類だったのか」
「よく見てみなよ」
「わ゛〜!! 男がチュチュ着て踊ってる写真だ!」
「ほ乳類にはこういうことするヤツがいるってことだよ」
「そっか〜。猫もほ乳類だけど、こんなことしないなあ。それで答えは?」
「鳥類。じゃ、次の(3)は?」
「えっとね。・・図3は植物の種子を集めて加熱したあとの様子を特殊な方法で撮影した写真である・・・。わ〜、ほっかほかのご飯がお茶わんに山盛りだねえ、おいしそう」
「いいから、先を読んで」
「・・ホカホカである。これには桃屋の「ごはんですよ」等をかけて食したい。さて、桃屋といえば桃だが、熟した桃は果実と種子の部分に分かれている。種子は熟す前の胚珠からできるが、果実は熟す前の何からできるか答えなさい・・・。面白い問題だねえ。ところで答えは何?」
「子房だよ。油の脂肪じゃないよ」
「これ、何のテストなの?」
「理科の期末テストだよ」
「本物?」
「本物だよ〜。S先生っていってさあ、面白いんだ」
「ふーん、いいなあ。面白い先生かあ」

 ポロは、猫の星の学校で習った真面目な先生たちを思いだして、なつかしさでいっぱいになりました。


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mokoさん、つっこみアリガト! 海のお兄ちゃんとクロネコくんは違う学校に通っています。ポロも理科はS先生がいいと思います。 / ポロ ( 2004-03-04 16:50 )
S先生みたいな先生だったら、私も理科が好きになったかも!期末テストにそんな楽しい問題があったら、生徒も喜ぶでしょうね♪クロネコ君とは違う学校なのでしょうか?S先生だったら、先日のクロネコ君の質問にも楽しく答えてくれそうですよね♪ / moko ( 2004-03-04 07:53 )

2004-03-09 ポロの日記 2004年2月29日(風曜日) 大きなマルエツに行く その1

大きなマルエツに行く その1

 今日は、せんせいの末娘のたろちゃん(中1)といっしょに、近所のイトーヨーカドーというとっても大きなマルエツに行きました。今日は、奥さんと海のお兄ちゃんが神田山陽さんの講談の独演会、せんせいはピアノ屋さんに、ゴマのお兄ちゃんはお友達のところに出かけているので、たろちゃんが夕ご飯のしたくをするからです。
 ポロは、たろちゃんが肩から下げたバッグの中に入っていました。

「大きなマルエツだねえ。いつものマルエツだって迷っちゃうのに、ここは10倍くらい大きいかも」
「新しくできたの。それよりポロ、あんた最近重くない? イモようかんの食べ過ぎよ」
「ち、ちがうと思うな。ポロは成長期だから育ったんだと思うな」
「だって、ポロって3000歳でしょ」
「地球の猫で言うと3〜4ヶ月っていうところだよ」
「何わけのわからないこと言ってんのよ。とにかく絶対太ったわ」
「と、ところでさ、今日の夕ご飯、何にするの?」
「今日はね、あたしの特製お好み焼き食べさせてあげるからね」
「わあ、楽しみ!」
「でもさ、ひどいと思わない? うちの炊事当番交代制」
「ポロは、いいと思うな」
「じゃ、来週からポロも炊事当番のシフトに入りなさいよね」
「そうだ、ひどいよね。炊事当番制度なんて!」

 ポロたちは、洋服や靴を売っている専門店の並ぶ広い売り場を抜けて、食料品売り場にたどりつきました。

「えっと、最初は野菜売り場で長いもよ。あ、あった。どれも298円だって。ポロ、どれがいいと思う?」

 ポロは、他の人に見つからないようにヒモで編んだバッグのすき間から長いもを品定めしました。

「ポロの野生の勘では右から2番目だと思うな」
「そう。じゃ、これにするわ」
「うん」
「それから、キャベツはうちにあるから次は長ねぎね。どれもおんなじよね。これでいいわ」
「ちょっと、なげやりっぽいかも」
「うるさいわねえ。洋服買うんだったら迷って迷って選んじゃうけど、今日お好み焼き食べて誰かが、やっぱり隣にあったネギのほうがおいしかったんじゃないか、なんて言うと思う?」
「そりゃ、そだけど」
「次はベニショウガよ。えっとね、ウチじゃ気をつけるように言われてる着色料があるから調べないとね。あ、これ大丈夫」
「ねえ、たろちゃん」
「なに?」
「ほら、今日29日だから肉の日だって、あそこのノボリに書いてあるよ」
「安いのかなあ。ちょっと見に行ってみようか」
「うん、いこいこ! 猫は、ホントは肉食なんだ」

 精肉売り場は、ほかの場所よりも混みあっていました。

つづく

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2004-03-08 ポロの日記 2004年2月29日(風曜日) 大きなマルエツに行く その2

大きなマルエツに行く その2

「うわあ、ポロにはよく分かんないけど、こんなに人がいるってことは、ここに並んでるお肉ってきっといつもより安いんだね」
「ねえポロ。この豚バラブロックを買っていってさ、焼き肉くらいの大きさにカットして、お好み焼きのホットプレートで焼いて食べたらおいしいと思わない?」
「思う思う。生まれたときからずっと思ってたような気がしてきた!」

 たろちゃんは、今日の目玉商品の大きな豚バラブロックをカートのカゴに入れました。

「ポロ、今日はすごくいい日のような気がしてきたな」
「ポロって、いつも幸せそうよね〜。あたしだって猫だったら、な〜んにも心配事なんかなくて楽しくやっていけるだろうになあ」
「そ、それはゴカイだと思うな。ポロは、ポロてきに、いろいろと悩みもあると思うな」
「猫のなやみ?」
「そ、そだよ」
「ふ〜〜ん」
「あ、信じてないでしょ、信じてないでしょ!」
「ううん。きっといろいろあると思うよ」
「そだよ、そだよ!」

 それから、特売の牛乳なんかを買ってからレジに並びました。

「わあ、たろちゃん、見て見て。おいしいそうなお菓子がいっぱい!」
「これってね、お店の作戦なのよ。レジの列に並んでいるときって退屈でしょ。だから、こういうところをよく見ちゃうわけ。そうすると欲しくなっちゃうの。今度お腹いっぱいの時にここに並べばホントの気持ちが分かるわよ」
「すごいねえ、たろちゃんて」
「とむりんの受け売り」
「なあんだ、そうか」

 大きなお店なので、レジを通ってから出口まで、しばらく歩きました。途中でポロは、少し前に読んだメルヴィルの小説の「白鯨」に出てきた名前を見つけました。

「ねえ、たろちゃん。白鯨のスターバック航海士と同じ名前のお店があるよ」
「ああ、スタバでしょ」
「え゛〜! あれがスタバっていうお店なの?」
「そうよ」
「へえ〜、へえ〜、へえ〜!」
「なに、感心してるの?」
「うん、ちょっとね。そういえば、せんせいってスタバ町(ちょう)の生まれじゃなかったっけ?」
「双葉町じゃないの?」
「そっか〜」
「コーヒー飲みたいの?」
「ううん、そうじゃないけど。このお店っていっぱいある?」
「あるよ」
「そっか。じゃ、こことは限らないんだ」
「何の話?」
「ううん、べつに」
「へんなの」

 おうちに帰ると、たろちゃんは「あたしにはキャベツを刻む才能なんてないわよ!」なんて言いながらキッチンでお好み焼きの準備をはじめました。ポロは、だんだんたそがれていく窓の外を眺めながら、たろちゃんてけっこうイケるじゃんて思いました。


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先頭 表紙

えっと、このお話が書かれたころ、作曲工房のおちゃめさんの掲示板が「おちゃめ、スタバで春眠」というタイトルでした。せんせいからつっこまれてしまったので著者注です。それから、マルエツは作曲工房の近所にいくつもあるスーパーのことです。これは、こすもすさんにつっこまれちゃいました。皆さん、わけのわかんないことを書いてゴメなさい。 / ポロ ( 2004-03-05 08:45 )

2004-03-07 ポロの日記 2004年2月27日(電曜日) フェッセンデン商会 その1

フェッセンデン商会 その1

 ややや。いつの間にポロは技術文書達人養成キットのことを書いたんだろう。あれ、それにシロちゃんのコラムの添削もしてるぞ。スランプなのになあ。書いた気もするし、書かなかった気もするなあ。変だなあ。ひょっとすると、こないだユメで見た“ポロ・プロジェクト”のE次郎さんの仕業かも知れないなあ。やっぱり、せんせいの言うとおりフェッセンデン商会に行ったほうがいいかも。
 そんなわけでポロは、きのうの夜に葛飾区のお花茶屋というところに出かけました。トラックを乗り継いで、ポロがたどり着いたのは京成線のお花茶屋という駅前でした。

 -なんだか普通のことろだなあ。下町っぽいっていうのかなあ。シュデンガンガー商会のある神田とは大違いだなあ。

 せんせいに渡された地図をたよりに歩いていくと、住宅街の普通のアパートのドアに「フェッセンデン商会」という小さなプレートが貼りつけてありました。
「とんとん、ごめんくださーい!」
「しーっ! お静かに。近所から苦情が来ます。どのようなご用ですか」
「ポロといいます。あのー、とむりんせんせいから聞いてきたんですけど」
「あ、ちょっと待ってください。今、片づけますから」
それから、ポロは5分近く待たされて、やっと中に入れてもらえました。
「どうぞ。散らかっていますが」
「おじゃましまーす」
「誰にもつけられませんでしたか?」
「えっ、誰かがあとをつけてくるの?」
「はい、近ごろ物騒でして」
「ポロの野生の勘だと、たぶん誰もいなかったと思うよ」
「それならいいのですが」

 部屋の中は、お店じゃなくて普通のアパートでした。それも畳の部屋に小さなキッチンスペースがあるだけの生活感あふれるというか、干物を焼いた匂いのするおじさんの侘びしい独り住まいという感じでした。ポロは変なところに来ちゃったなあと思いました。
 小さなコタツに向かい合って座ると、ちょっと髪の薄くなり始めた貧相なおじさんは名刺を出しました。

 あなたの違和感の原因を究明します
 フェッセンデン商会 ハミルトン松戸

「ははは。芸名ですよ」

・・・芸能人でもないのに芸名かあ・・。

 ポロがあっけにとられていると、ハミルトンさんがいいました。

「で、どのような違和感をお持ちなのでしょうか」
「え、えっと・・・・」

 ポロは、このあいだ見たポロ・プロジェクトのユメのこと、それから、誰かに操られているような気がすることを手短に話しました。

「なるほど。では、ちょっと調べてみましょう」

 ハミルトンさんは、押し入れからいろいろな機械を持ちだしてきて狭いコタツの上に並べました。

「こちらは次元レーダー。これは次元レシーバー。そしてこれは次元トレーサー。最後のこの機械が次元レコーダーです」

 ハミルトンさんは、006P電池をつなぐとスイッチを入れました。

「やっぱり松戸博士の発明ですか?」
「そうです。彼を知っているのですか」
「電池が006Pだったから、そうなかあって思ったの」
「なるほど、そう言えば最近あまり使われない電池ですね。彼は松戸一族きっての変人ですが、頭脳と腕は確かです。では、始めましょう」

 ぶ〜〜〜〜ん!

 機械が一斉に小さな音を立てて動き始めました。


つづく

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2004-03-06 ポロの日記 2004年2月27日(電曜日) フェッセンデン商会 その2

フェッセンデン商会 その2

「今、次元トレーサーのタイムトレース機能が、ポロさんがポロ・プロジェクトの夢を見ていた時間帯を探っています。あ、見つけたみたいです。そうなれば次は次元レーダーが場所を特定します」
「すごいねえ、これがあればどんな犯罪もたちどころに犯人が分かっちゃうね」
「そうなんですが、そういう依頼はほとんどありませんね。おや、場所も分かってきたぞ。東京都内のようですね。それも東のほうだ。いや、意外と近いぞ。これは新小岩あたりかな。今、私が要注意だと思っている地域です。ひょっとすると、これはポロさん、私にとっても当たりかも知れません」
「新小岩ってどこ?」
「後で地図で確認しましょう。それより、場所が特定できたようです。次元レシーバーをピンポイントでそこに合わせます。多分、声が聞えて来るでしょう」

<「・・・・では、お話の部屋担当のE次郎さん、お願いします」「新たなキャラクターである松戸巌流、および松戸哲学が加わりました。これによって、松戸一族はお互いをみな変人呼ばわりするということ、および誰もがその道を極めなければ気が済まない人格の持ち主であるということが明らかになってきました・・・」>

「わっ! この夢だよ。これに間違いないよ」
「これは夢ではありません。やはりあなたを操ろうとしている企みがあるようです」
「えっ! ポロ、どうすればいいの?」
「応援を頼んで、会議の現場に踏み込みましょう」
「応援て誰に頼むの?」
「松戸一族がからんできていますから、シュレーディンガー商会の修士さん、ディラック商会の学士さんあたりが一番頼りになると思います。シュレーディンガー商会には戦隊ものの変身キットや、ヒーロー変身キットもありますからね」
「わあ、ホントのヒーローになれるの?」
「少なくとも、見た目だけはそっくりです」
「ポロはスペース・キャットレンジャーがいいな。腰に光線銃ぶらさげてるんだよ。こんな感じ。<動くな。この光線銃は飾りじゃないぜ!> きゃあ、ポロ、一度やってみたかったんだ」

あれ、ハミルトンさんが、またこたつの上に機械を並べ始めました。変だなあ。

「こちらは次元レーダー。これは次元レシーバー。そしてこれは次元トレーサー。最後のこの機械が次元レコーダーです」
「うん、ポロ知ってるよ、さっき説明してくれたじゃないですか」
「いや、今初めてお見せしたのですから、私は説明していません」
ハミルトンさんは、006P電池をつなぐとスイッチを入れました。

 ぶ〜〜〜〜ん!

 機械が一斉に小さな音を立てて動き始めました。
 しばらくたっても何も起こりませんでした。

「どうやら、ポロ・プロジェクトというのは、あなたの本当の夢に過ぎなかったようですね」

つづく

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