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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-03-04 ポロの日記 2004年2月27日(電曜日) フェッセンデン商会 その4
2004-03-03 ポロの日記 2004年2月27日(電曜日) フェッセンデン商会 その5
2004-03-02 ポロの日記 2004年2月27日(電曜日) フェッセンデン商会 その6
2004-03-01 ポロの日記 2004年2月27日(電曜日) フェッセンデン商会 その7
2004-02-29 ポロの日記 2004年2月27日(電曜日) フェッセンデン商会 その8(最終回)
2004-02-28 ポロの日記 2004年2月25日(波曜日) 技術文書達人養成キット その1
2004-02-27 ポロの日記 2004年2月25日(波曜日) 技術文書達人養成キット その2
2004-02-26 ポロの日記 2004年2月23日(光曜日) ポロ・プロジェクト定例会議 その1
2004-02-25 ポロの日記 2004年2月23日(光曜日) ポロ・プロジェクト定例会議 その2
2004-02-24 ポロの日記 2004年2月21日(風曜日) ポロ、シロ論語を迎え撃つ その1


2004-03-04 ポロの日記 2004年2月27日(電曜日) フェッセンデン商会 その4

フェッセンデン商会 その4

 ポロたちはせんせいの愛車ユードラに乗って、混みあう都内の国道を避けて、細い裏道を急ぎました。前もって電話で事情を話しておいたため、松戸博士のすぐ下の弟の修士さんが店を開けて待っていてくれました。

修「これはこれはとむりんせんせい。お忙しいところをありがとうございます」
せ「大事なお話です」
修「実は、少し前から私どもも異変に気づいておりました」
せ「ほら、ポロ、目を覚ませ」
ポ「でやんで〜、もっど寝がぜろ〜!」
せ「すいません、こいつ寝起きが悪くて」
修「いや、私のためにも徹夜で頑張ってくれたんですから。さあ、ポロさん、お願いですから起きてください」

 お店に入ると、修士さんがお茶とイモようかんを用意してくれたので、ポロはしゃっきりと目が覚めました。

修「では、ポロさん、詳しくお話を聞かせてください」

 ポロは、きのうの夜の、名づけて「お花茶屋事件」のてんまつを全部話しました。

修「そうですか。実はハミルトンからシュレーディンガー商会を狙う悪いたくらみがあるかも知れないから気をつけるようにという知らせが2日前にあったばかりなのです」
せ「ここには、世界をひっくり返すような大発明がいくつもありますからねえ」
修「はい、悪用されると大変なことになります」
ポ「あのさ、今までに悪いやつが買いに来たことないの?」
修「はい、ございます。入り口にその判定センサーがありまして、悪意を持った人間がやってくると別の入り口が開いて普通の模型キットを売っている店へと入っていただくしかけになっております」
ポ「どんなもの売ってるの?」
修「はい、手作りラジオとか、模型などでございます。そちらはそちらでなかなか凝ったものを用意してございます」
せ「ところで修士さん。ポロの話から推理すると、どうやら新小岩あたりにその悪企みのアジトがありそうなんですが、こちらにもフェッセンデン商会と同じ計測機はありますか?」
修「あります。さっそく調べてみましょう」

 修士さんは、いくつもの機械を出してきました。

ポ「わ、これだよこれ!」
修「さようでございましょう。こちらは兄の試作機でございます。ちょっと待ってください。電池をつなぎます」

 修士さんは006P電池をぱちんとつないでスイッチを入れました。フェッセンデン商会の時と同じ順序で次元トレーサー、次元レーダー、次元レシーバーが働いて、ポロ・プロジェクトの様子を3人で聞くことができました。

ポ「やっぱりポロの白昼夢じゃなかったね」
修「ちょっと、時間をずらして今の様子を聞いてみましょう」

 ぴゅい〜わ〜〜〜ざざざ〜・・・・

議長の女「E二郎さん、任務ごくろうさまでした。結果について報告してください」
E次郎「はい、昨夜フェッセンデン商会に到着したときには、すでにポロとハミルトンがこちらの動向を探り始めておりました。しかし、変装した私がすぐにハミルトンと入れ替わり、ポロに今見たことは白昼夢であったということに思い込ませることに成功しました」
女「ハミルトンは、どうしましたか?」
E「ここの地下室に閉じこめてあります」
女「逃げ出すことのないように監視を怠らないようにしてください。彼は取引のための大切な人質です」
E「はい、分かりました」

つづく

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2004-03-03 ポロの日記 2004年2月27日(電曜日) フェッセンデン商会 その5

フェッセンデン商会 その5

ポ「わあ、ハミルトンさんを助け出さなくちゃ。けーさつだ、けーさつだ!」
せ「確かにそうなんだが、これは時間が勝負じゃないだろうか」
修「う〜む。そのとおりだと思います。私たちが動き始めたことは彼らはまだ知らないようです。奇襲すれば勝算は大きいでしょう」
せ「すぐにやりましょう。誰か応援は頼めますか」
修「私の方ではディラック商会の弟の学士が頼りになります。あとは変人揃いでアテになりません」
せ「こちらでは、え〜と」
ポ「シロちゃんがいるよ、シロちゃん」
せ「これで5人だ。人数はいいとして、これらの機械の他に何か使えるものはありますか?」
修「はい、ポロさんのお話にあったヒーロー変身キットがあります。5人なので戦隊ものはいかがでしょうか。えーと、たしか<炊き出し戦隊スイハンジャー>とか<神様戦隊ヒカワジンジャー>が売れ残っていましたが」
ポ「ポロはスペース・キャットレンジャーじゃなくちゃやだよ〜」
せ「その冗談のような変身キットは何かの役に立つのですか」
修「はい、コスチュームは高分子アラミド繊維を電波吸収染料で染めたものです。弾も刃物も通さず、レーダーにも映りません。また、ヘルメットには電波を使わないアンシブルという通信規格で話せるトランシーバーが内蔵されています」
せ「それは、すごい。スイハンジャーとヒカワジンジャーの違いは何ですか?」
修「スイハンジャーは長期戦になっても炊き出しには困りません。ヒカワジンジャーは神通力キットが付属しています」
せ「神通力とは何ですか?」
修「実は何だか分からないのです」
せ「松戸博士らしいですね。短期決戦ですからヒカワジンジャーにしましょう」

 そのあと、学士さんと営業の途中で仕事を抜けてきたシロちゃんがシュデンガンガー商会にやってきて、全員で戦隊変身キットに着替えました。神様戦隊なのに赤や青や緑、黄色やピンクで色とりどりでした。偶然、赤いコスチュームを着たせんせいがリーダーにされてしまいました。ポロは、小さいのでブカブカ桃レンジャーでした。

せ「では、ブリーフィングを行ないます。今回の作戦は新小岩周辺に捕らえられているハミルトン松戸氏を救出することを第1の目標とし、あわよくば犯人と思われるポロ・プロジェクトの一団を突き止めることにあります。時間が命の作戦なので、ハミルトン氏救出には警察の手を借りずに行ない、犯人たちの逮捕は、その後警察に任せることにします。では、装備の説明をシュレーディンガー店主の松戸修士さんにお願いします」
修「みなさん、危険な任務にご参加いただき、恐れ入ります。今、皆さんが身に付けていらっしゃる神様戦隊ヒカワジンジャーのコスチュームは弾も通さず、刃物も効かず、レーダーにも映らず、赤外線にも反応しないというスーパーアーマーです」
シロ「おお、そんなにすごいんですか! 急に恥ずかしくなくなった気分です」
修「はい、そのとおりです。しかし、弾が当たれば痛いし、刃物で突かれればそれなりにケガをします。過信しないようにしてください。ヘルメットの通信機は左腕のスイッチで操作します。話したい人の色のボタンを押せば通話できます。白いボタンは一斉通話です。移動には、せんせいのユードラを使います。ユードラには次元トレーサーをはじめとする4台の機械があって、犯人たちの居場所を特定できます。どんな鍵でも開けられるユニバーサル・キー、吹き矢式の麻酔銃、一時的に目くらましに使える閃光弾が全員のベルトに収納されています。以上です」

つづく

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2004-03-02 ポロの日記 2004年2月27日(電曜日) フェッセンデン商会 その6

フェッセンデン商会 その6

せ「質問をどうぞ」
学「実際の行動計画について説明してください」
せ「現地に到着してから状況によって検討することになります」
学「分かりました。とむりんせんせい、ポロさん、シロさん。松戸一族のためにこんな危険なことに巻き込んでしまって申し訳ありません」
せ「いえ、これはポロにもかかわりがありますから。では、出発しましょう」

 午後遅い神田の町をギンギンのコスチュームに身を包んだポロたちを乗せたユードラが新小岩に向けて走り始めました。ポロたちを見つけた学校帰りの子どもたちが手を振りました。

せ「テレビのロケ隊だと思われているみたいですね」
学「怪しまれるといけないから適当に愛嬌をふりまいておきましょう」

 そういうと学士さんは子どもたちに笑顔で手を振り返しました。シロちゃんも手を振りました。危ない目にあうかもしれないのに、ポロは何だかワクワクしていました。でもだまっていました。
 途中、コンビニでおむすびを買うことになりました。青ジンジャーのシロちゃんが率先して買いに行ってくれました。たまたま居合わせた子どもたちからすごい人気で、もみくちゃにされて戻ってきました。

シ「いやあ、参りましたよ。でも、ちょっといい気分です」
修「大変でしたね」

 夕方近く、ユードラは新小岩駅近くのコインパーキングに入りました。

修「次元レーダーによると、ここから100メートル以内です」
せ「暗くなるのを待って、全員で手分けして場所を探すことにします。修士さん、手がかりはありますか」
修「はい。ポロさんは夢にせよ犯人たちの顔を見ていますね。非常に狭い範囲ですから、犯人たちがビルに出入りするようなことがあれば、ポロさんなら分かると思います」
せ「よし、ポロは猫だから、普通に歩いていれば目立たないだろう。その桃ジンジャーのコスチュームを脱いで、通信機だけ持って偵察に行くんだ」
ポ「うん、行ってくるよ」

 ポロは、修士さんが地図上で指し示した範囲を頭に叩き込むと、夕暮れの新小岩の町に出ました。うわ、焼き鳥の匂いだ。新小岩っていいところだなあ。そんなことを考えながら10分もあたりを回っているうちに、知っている顔を見かけました。それはE次郎と呼ばれていた人でした。ハミルトンさんに化けていたのもこの人だなあ。たしかに、ハミルトンさんによく似てる。ポロはせんせいにアンシブル通信機で連絡しました。

ポ<せんせい、E次郎っていう人を見つけたよ>
せ<そうか。ところで場所はどこだ>
ポ<どこって言われても、なんて説明すればいいか分かんないよ>
修<ポロさん、近くに何か目印になるものは見えませんか?>
ポ<えっとねえ、あっ、チンコ・ジャンボって書いてある>
せ<ふざけてるんじゃない!>
ポ<ほ、ホントだよ〜!>
修<あ、分かりました。それはパチンコジャンボですね、ポロさん?>
ポ<あ、そうかも。一文字かくれてた。そこから50メートルくらい離れた古い倉庫みたいなビルに入っていったよ>
せ<よし、でかしたぞポロ。今、みんなでそっちに行く>

つづく

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2004-03-01 ポロの日記 2004年2月27日(電曜日) フェッセンデン商会 その7

フェッセンデン商会 その7

 戦隊コスチュームの男たちが日暮れの商店街を抜けてやってきました。もう、注目度抜群! 誰もが振り返りました。しかし、ヒカワジンジャーたちは緊張のせいか全然気にならない様子で、ポロには近づいてくる4人がカッコよく思えました。とくに、戦隊ものを見て育ったにちがいないシロちゃんは、すっかりその気でした。

ポ「このビルだよ!」
せ「一気に突入しましょう。目指すのはハミルトンさんの閉じこめられている地下室です」
修「では、このコスチュームを信じて突っ込むとしますか」
シ「いやあ、なんだかワクワクしますね。自分が強くなったような気がします」
学「私もですよ」
せ「犯人を確認したら閃光弾で先制攻撃です」
シ「じゃあ、私から突入します。援護お願いします」

 そう言うと、シロちゃんはカッコよくビルの正面入口ドアから突入していきました。ほかの3人は麻酔吹き矢や閃光弾で援護する準備をして後へ続きました。ポロはシロちゃんが持ってきてくれた桃ジンジャーのコスチュームを大急ぎで着て、ちょっと遅れて後を追いました。
 薄暗い階段を降りていくと、地下室の入り口に先に到着していた4人がいました。

せ「ユニバーサルキーを試そう」

 がちゃがちゃ。

 ドアは、あっけないほど簡単に開きました。

せ「さすが松戸博士作だ」

 すると、いきなり地下室の中から聞き覚えのある松戸博士の大きな声が響きました。

「事件発生以来、17時間42分。合格じゃ!」

 みんながあっけにとられていると、松戸博士が言いました。

博「これはワシの新発明、訓練用模擬事件発生装置のテストじゃ。諸君、ご苦労じゃった」

 捕らえられているはずのハミルトンさんがヒカワジンジャーの隊員たちに向かって拍手していました。

ハ「いやあ、ポロさん、きのうは騙して済みませんでした。皆さんも本当にお見事でした」
せ「これは、一体どういうことですか?」

 一体なにが起こったのか分からないせんせいは、ちょっとブチ切れた様子で言いました。

博「大変、申し訳ない。訓練だと言ったら、これほど緊迫した救出活動にはならんかったじゃろう。しかし、これでワシの発明が悪用される心配も少ないことが分かった。ワシは素晴らしい仲間に恵まれておることも分かった」
せ「それでは、ポロ・プロジェクトも全てその機械が作り出したものですか?」
博「そうじゃ。たいしたものじゃろうて」
ポ「へえ、ポロ、本当かと思っちゃったよ」
せ「全く人騒がせな!」
博「そう言わんくれ。21世紀は危機管理の時代なんじゃ。そして、危機管理というのはシステムではなく、結局のところ人なのじゃ」
シ「分かるような気がします」
博「さあ、ワシのおごりじゃ。近所にうまい店がある。祝杯を上げに行こうではないか」
ポ「わあ、博士、太っ腹だなあ!」

つづく

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2004-02-29 ポロの日記 2004年2月27日(電曜日) フェッセンデン商会 その8(最終回)

フェッセンデン商会 その8(最終回)

 ところが、その建物から外に出るときにヒカワジンジャーたちは気がつきました。着替えはシュデンガンガー商会に置いてきてしまったのでした。事件解決前には、みんな平気で新小岩の商店街を歩いていたのに、今は誰もが恥ずかしくて駐車場まで歩くのも困惑ぎみでした。ましてや、この格好で居酒屋に入るのは気が引けました。

せ「博士、せっかくですが、祝杯をあげるのは次の機会にしましょう」
ヒカワジンジャーたちは、皆うなずいて同意しました。
博「そうか。それは残念じゃ。では、さらばじゃ」

 そう言うと、博士は新小岩駅に向かって歩いていってしまいました。

修「さあ、私たちも帰りましょう」

 ユードラは5人乗りなので、ポロはハミルトンさんの膝の上に乗せてもらいました。ユードラが走り始めると、誰からとなく笑い声が上がりました。

学「あっはっは。いやあ、実は楽しかったですね。本当にヒーローになった気分でしたよ」
シ「はい、高揚感がありましたね」
修「突入を志願したときのシロさんは、ヒーローっぽかった。あっはっは」
せ「この戦隊変身キット、おいくらですか? 欲しくなりました」
修「これは差し上げます。その代わり、招集がかかったらヒカワジンジャー全員集合ですよ」
シ「ああ、不謹慎ですけど本物の事件が起きないかと期待したりしますね」
ポ「ところでさ、このコスチュームの神通力って何だったんだろう?」
修「とうとう分からずじまいでしたね。ま、この次には明らかになるでしょう」

 フェッセンデン商会にハミルトンさんを送って、それからシュデンガンガー商会に到着するまで、ユードラの車内は、すっかりおじさんたちの修学旅行と化していたのでした。


 その頃、どこかの会議室。議長席正面の大型プロジェクターを見つめる7人がいました。そこにはリアルタイムでヒカワジンジャーたちがシュレーディンガー商会前で解散するところを映し出されていました。映像が終わると、全員議長のほうに向き直りました。

議長の女「これで、ポロ・プロジェクトは松戸博士が仕組んだものとして一件落着しました。危機管理のキーポイントが人であるのは博士の言うとおりです。しかし、その“人”が、真の危機に気づけないようではおしまいです。彼らの限界はそこにあります。私たちもこの一件から学ぶことはたくさんあるでしょう。では、通常の業務に戻りましょう。解散します」

 居並ぶ出席者たちは静かに一礼すると、音を立てずに椅子から立ち上がって会議室を出ていったのでした。


おしまい

ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

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2004-02-28 ポロの日記 2004年2月25日(波曜日) 技術文書達人養成キット その1

技術文書達人養成キット その1

 ポロは、デカルト商会という陰気なお店に行って「技術文書達人養成キット」を1200円の後払いで買ってきました。苦手なハンダ付けに苦労しながらも、なんとか組立終わりました。組み立てる前は、雨が降ったら知らせてくれる電子回路のような部品1個、人工照明だけで育てた完全水耕栽培の野菜のような部品2個、クリスマスに間に合わせようと頑張っている編みかけの毛糸のマフラーのような部品1個、離れ小島のひみつの洞窟で育てた古酒のような部品1個、オンディー沼の湿地にあるカエルの足跡のような部品3個を見て、作れるかなあって不安でした。でも、組立の手順ていう説明書が分かりやすかったので、ポロにもできました。そっか。あの説明書は技術文書だったんだ! 006P電池1個をスナップホルダにパチンとつないでスイッチを入れると、キットのすぐ上の空間にA4縦文書くらいの薄明るい光のパネルが浮かび上がってきました。あ゛〜〜! これは、スティクス川の渡し守のカロン爺さんのところで見たディスプレイと似てるぞと思って、じーっと見ていたら、回路が暖まってきたのか文字が浮かび上がってきました。

“Welcome to 技術文書達人養成キット 一緒に文章修業を始めましょう!”

 演習課題をやれば採点してくれるし、分からないところは質問すると答えてくれるし、まるで本物の家庭教師みたいです。ポロは、このキットがとても気に入ってしまいました。
 養成講座そのものはかなり長いので、ポロが自慢の要約力を生かしてはじめの部分をまとめたのが下の文章です。じゃあ、みなさんも一緒にどうぞ。


第1章 概要

1.技術文書とは何か
 詩や随筆は人の情念に訴えて心を動かすためにある。それに対して技術文書は、人(仕事)を動かす文書である。

<そーだったのか! そう言われてみればそのとおりだな。ポロ、ちっとも気がつかなかったな>

2.技術文書の条件
 印象ではなく、全てを具体的に表すことが絶対条件である。それらは時間の流れに沿って書かれなければならない。また、接続詞や修飾語で長々と続く文は時間的な前後関係が分かりにくくなることがあるため、一文は短くまとめるのが原則である。

3.事実、推論、判断、感想
 技術文書において、上記の4つは、はっきりと区別されなければならない。すぐに感想を書きたがる人がいるが、多くの場合それがかえって文書としての価値を下げる。全体として事実が最も多く、次に事実の積み重ねによる推論、推論の帰結としての判断の順に少なくなる。感想は、それが読んだ人の役に立つと思われる時のみ書く。

4.構造
 文章は建築と比較することができる。建て増しを繰り返した建築内部が迷路のように迷いやすくなっている。どうように、しっかりと考えてから書かれなかった文章は、途中で気づいたことが増築され迷路となりやすい。それを防ぐためには、文章全体の構造を設計して書くようにする。これは、音楽家が厳格なソナタ形式やロンド形式を用いて作曲することに比べれば難しいことではない。また、構造は「目的の明確化」のためにある。

<ふんふん、概略はこんなところだな。なんだか分かった気がするぞ。でも、まだ書けないから分かった気がするだけだな。今、ポロが思ってるのは技術文書じゃないな。さっそく技術文書みたいに考えてみようかな。いくぞ。「ポロは分かった。でも分かっていなかった」 なんか変だな。でも、こんなところかな。いよいよ次は演習だ>

つづく

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2004-02-27 ポロの日記 2004年2月25日(波曜日) 技術文書達人養成キット その2

技術文書達人養成キット その2

第2章 演習
 技術文書というと科学技術の説明書のように思えるが、ほとんど全ての教科書、実用書、社内を巡る書類は技術文書である。以下、各項目に対して演習課題を設けるのでひとつでも飛ばすことなく取り組むこと。

2-1 具体的に書く

 技術文書の命は具体性にある。具体性とは事実の列挙と言い換えることができる。

例文1 製薬会社ドーラメディコの2003年下半期ヒケールの出荷額は前年比14パーセント増の1100万ベリーであった。

2-2 記述された事実が真実とはかぎらない

a. せんせいは五月みどりさんのファンらしい
b. せんせいは五月みどりさんのファンである

 b.を事実の記述と呼ぶが、それが真実であるかどうかは問題としない。それを真実と受け止めるかどうかは、全て読み手の問題である。これについて詳しく知りたい方は、デカルト商会の「ハイデッガー養成キット」をお買い求めください。

<ちゃっかりしてるな、宣伝も入っているのか。ところで、五月みどりさんのことはポロも聞いたことがないな。たしかせんせいは「はしのえみ」さんのファンだったような気がするな。でも、これも確かじゃないから怪しいな。どっちにしろ、書かれたものが本当のことであるかどうかが分からないというのは、いつもせんせいが言ってるな。真実にたどりつくのはポロしだいって。それはポロもよく分かるぞ。でも、ちょっと興味あるな「ハイデッガー養成キット」>

演習課題1 事実の列挙のみによる短文を書け。

ポロの解答  
 イモようかんはおいしい。

養成キットによる添削例
 イモようかんを好む人は和菓子好き全体の70パーセントを占める。

※「おいしい」というのは個人的な感想であるため、これを事実に書き改めると上記のようになる。なお、これは単なる例文なので70パーセントという数字に根拠はない。信頼性を増すために(国民イモようかん調査センター白書2002年版による)と付記することがあるが、それとてどの程度の信頼性であるかは分からない。そのような組織が存在しない可能性もある。

<そっか、事実ってそういうことか。ポロは、感想を書いちゃったんだな。それにしても、書かれていることが本当のことであるのかどうかは分からないんだなあ>

書き直したポロの解答
 ポロは猫である。

養成キットによる添削
 正解。ただし、読み手によっては「我が輩は猫である」のパロディとも受け取られかねないので「ポロは猫」「ポロは猫です」とするのも一方法。

<うーん、そんなことも気にするのか。言われてみれば、確かに読んだ人に余計な勘ぐりを起こさせるかも>

 どうでしたか、技術文書達人養成キット。長くなったので、今回はここまで。ポロの気が向いたら続きをアップします。待てない人は「デカルト商会」でキットを買ってください。くれぐれも途中で巌流さんの「元祖 今川焼」のノボリに惑わされないようにね。なお、松戸一族のお店は通信販売はしていないみたいです。




 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

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2004-02-26 ポロの日記 2004年2月23日(光曜日) ポロ・プロジェクト定例会議 その1

ポロ・プロジェクト定例会議 その1

 ポロは、あまり広くなくて薄暗い会議室をドアのすき間からのぞき込んでいました。どうしてこんなところにいるのか、どうしてのぞき見しているのかなんて、その時は考えませんでした。

 楕円ドーナツ型の10人がけくらいの木目の会議テーブルの正面に議長のような、女の人が座っています。黒っぽいスーツの、いかにも最前線で活躍するキャリアウーマン風の30代のステキな人でした。そのほかに会議に出席している人が男女合わせて7人。それから、議長の正面の壁には大きなスクリーンがあって、やっぱりきれいな女の人が映っていました。

議長「では、ポロ・プロジェクト定例会議を始めます」

-うわっ、何なんだ、ポロ・プロジェクトって!?

議長「はじめに、せんせいの様子から報告してください」
A子「はい。昨日も私のレッスンがありましたが、ポロの執筆量の多さにもかかわらず、せんせいは私だけがポロであることを疑ってはおられないようでした。せんせいのお話の全録音と、ご家族に関する新しい記録はこちらにファイルしてあります」
議長「では、あとで全員に配布をお願いします。確かに、最近一人だけで書いているとは思えないほどの文書が一度にアップされてしまうことがあります。文書量に関する制限、もしくはアップロード順を厳格に決めていかなければならないでしょう。それについては次回の議題としたいと思います。次に音楽コラム担当のB子さん、新しい動きはありますか」

-なに言ってるの。ポロが一人で書いてるんだよ。

B子「せんせいは、作曲の仕事に時間をとられてコラムに向けられる時間が限られてきています。だからといって全部の欠番コラムを埋めてしまうと、お話の部屋との兼ねあいで文書量が多くなりすぎ、複数の人が関わっていることが疑われてしまいます。そのため、適度に欠番を作りながら更新しています」
議長「ひみつの部屋掲示板担当のC太さん、お願いします」
C太「はい、最近ひみつの部屋へのアクセスが不安定ですので、借り換えを検討してもよいかと思っています。その他の書き込みについては、書き込み時刻を早めに設定して夜のうちに多くの方に読んでもらえるようにしたいと思っています。ただし、ポロのいいかげんさを演出するために、ときどき深夜の更新も行ないます」

-アクセス不安定はポロも同感だな。

議長「次はレッスン掲示板担当のD作さん、どうぞ」
D作「順調です。即座の更新ではなく、お話の部屋の執筆中と思われる時間帯には書き込まないなどの注意を払っております」

つづく

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2004-02-25 ポロの日記 2004年2月23日(光曜日) ポロ・プロジェクト定例会議 その2

ポロ・プロジェクト定例会議 その2

議長「では、お話の部屋担当のE次郎さん、お願いします」
E次郎「新たなキャラクターである松戸巌流、および松戸哲学が加わりました。これによって、松戸一族はお互いをみな変人呼ばわりするということ、および誰もがその道を極めなければ気が済まない人格の持ち主であるということが明らかになってきました。その極め方が微妙に横道にずれているところを表現していきたいと思っています」
議長「今回の今川焼きは私も食べたくなりました」

-ポロ、ホントに食べたもん。おしいかったなあ。

E次郎「恐れ入ります。今後、必要があれば数年前にクランベリーヒルで彼が行なった小麦と小豆の品種改良に関するエピソードも加えられると思います」
議長「シロのコラム担当のF美さん、軌道に乗りそうですか」
F美「はい、最初のコラムがアップされてきましたが、どのように添削するかまだ試行錯誤の状態です。この件に関しましてA子さんとE次郎さんにお願いがあります。まず、A子さんは、せんせいから日本語に関するオリジナル・テキストをなるべく多く入手していただきたいのです。E次郎さんは、それを使ったお話か、あるいはテキストをそのまま引用する形でお話の部屋にアップしていただけるでしょうか。そうすれば、ポロはそれに従って添削が可能になります」
議長「それは重要な提案です。添削は、本来高度な作業です。ポロが自然にそれを行なうには基準となる指針が必要でしょう。ぜひ、よろしくお願いします」

-バカにしないでよね。ぽ、ポロにだってできるやい!

E次郎「分かりました。やってみましょう。手に入れた技術文書キットを公開する形にします」
A子「早急にテキストを入手します」
議長「クランベリーヒル特派員のG夫さん、そちらの様子はいかがですか?」
スクリーンの紳士が答えました
G夫「春めいてきたことをのぞけば、いつもどおり、何も変わってはいません。皆さんもときどきお出かけください。オンディー沼のほとりでサンドイッチを食べましょう」
議長「素晴らしい提案ですね。実現したらどんなにステキでしょう。では最後にポロ・ルールのH奈さん、お願いします」
H奈「はい、ポロの言葉使い集に変更はありませんが、気をつけていただきたいことがあります。それは大丈夫を表す“ダイじょぶ”の使用についてです。“だいジョブ”という使用例を発見しています。“アリガトございます”“オハヨございます”“ゴメなさい”などと同様に最初がカタカナというルールです。それから、ポロ辞典に先ほどE次郎さんからお話のあった2人のキャラクターと元祖今川焼き屋台、デカルト商会を加えます」
議長「皆さん、ポロのキャラクターの統一が私たちの最優先課題です。十分気をつけてください」

-ここにいるのは、全部にせポロじゃないか。


 ポロは、ここで目が覚めました。夢だったのに何だかドキドキして、それから朝まで眠れませんでした。


 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

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先頭 表紙

おいしいものならポロは別腹さ! / ポロ ( 2004-02-26 12:55 )
なぞだー!ポロ師匠(本日より師匠に変更)のなぞがまた。それにしても師匠。1,200円分もの今川焼きを食べてしまうとは。ウワバミのようになりませんでしたか? / シロ ( 2004-02-26 00:35 )

2004-02-24 ポロの日記 2004年2月21日(風曜日) ポロ、シロ論語を迎え撃つ その1

ポロ、シロ論語を迎え撃つ その1

 ポロのおとうと弟子のシロ(子路)が、ポロの助手になって修業をすることになりました。最初はコラム書きの修業です。最近、ポロはコラムを書くのがうまくなってきたなあって自画自賛してたんだけど、シロのコラムを読んだら、ポロのより全然すごくてポロは思わず置き手紙を書いてしまいました。

「せんせい、お世話になりました。さがさないでください」

 で、ポロはどうしたかというと、行くところもないのでシュデンガンガー商会に向かいました。
とんとん!
「はい、どうぞ開いております」
「コバワ」
「おや、ポロ様。いかがなさいましたか」
「かくかくしかじか、これこれこういうわけで、シロのコラム迎撃キットが欲しいんですけど・・・」
「それは大変ですね。私のところで扱っているのは道具、装置、一部の化学素材、機械類に限られておりまして、そのようなものは置いておりません。しかし、お役にたちますかどうか、私のイトコがデカルト商会という店をやっておりまして、そこには“文豪養成キット”があったと思います」
「え゛〜〜〜!! そんな便利なものがあったの〜!」
「しかし、なにぶん、変わり者でして」
「ねえねえ、そのお店どこにあるの?」
「日本橋の馬喰町(ばくろちょう)でございます」
「変わった名前だねえ。暴露町ってどこにあるの?」
「はい、ここから東へ向かって神田美土代町、鍛冶町、富山町、岩本町を抜けて東神田のすぐ隣です」
「そんなにいっぱい町を越えていくの〜?」
「はい。ですが、歩いて15分ほどかと」
「うわー、ちっちゃい町ばっかりなんだねえ」
「江戸時代からの名残ですから」
「アリガト!」

 ポロは、松戸さんの描いてくれた手書きの地図をたよりに、夜の神田の町を歩き始めました。しばらく歩くと、ポロの野生の鼻がいい匂いをかぎつけました。ああ、もうたまらない。その匂いのするほうに向かって行くと、今川橋の近くの路地裏に一軒の屋台がありました。

 “元祖 今川焼”

 屋台の中央、アセチレンランプの光に浮かび上がるおじさんの顔は、ちょっとホラーがかっていましたが、あまりいい匂いなのでポロは思わず声をかけました。

つづく

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