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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

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2004-02-27 ポロの日記 2004年2月25日(波曜日) 技術文書達人養成キット その2
2004-02-26 ポロの日記 2004年2月23日(光曜日) ポロ・プロジェクト定例会議 その1
2004-02-25 ポロの日記 2004年2月23日(光曜日) ポロ・プロジェクト定例会議 その2
2004-02-24 ポロの日記 2004年2月21日(風曜日) ポロ、シロ論語を迎え撃つ その1
2004-02-23 ポロの日記 2004年2月21日(風曜日) ポロ、シロ論語を迎え撃つ その2
2004-02-22 ポロの日記 2004年2月21日(風曜日) ポロ、シロ論語を迎え撃つ その3
2004-02-14 ポロの日記 2004年2月10日(火)スティクス川のほとりで その1
2004-02-13 ポロの日記 2004年2月10日(火)スティクス川のほとりで その2
2004-02-12 ポロの日記 2004年2月10日(火)スティクス川のほとりで その3
2004-02-11 ポロの日記 2004年2月10日(火)スティクス川のほとりで その4


2004-02-27 ポロの日記 2004年2月25日(波曜日) 技術文書達人養成キット その2

技術文書達人養成キット その2

第2章 演習
 技術文書というと科学技術の説明書のように思えるが、ほとんど全ての教科書、実用書、社内を巡る書類は技術文書である。以下、各項目に対して演習課題を設けるのでひとつでも飛ばすことなく取り組むこと。

2-1 具体的に書く

 技術文書の命は具体性にある。具体性とは事実の列挙と言い換えることができる。

例文1 製薬会社ドーラメディコの2003年下半期ヒケールの出荷額は前年比14パーセント増の1100万ベリーであった。

2-2 記述された事実が真実とはかぎらない

a. せんせいは五月みどりさんのファンらしい
b. せんせいは五月みどりさんのファンである

 b.を事実の記述と呼ぶが、それが真実であるかどうかは問題としない。それを真実と受け止めるかどうかは、全て読み手の問題である。これについて詳しく知りたい方は、デカルト商会の「ハイデッガー養成キット」をお買い求めください。

<ちゃっかりしてるな、宣伝も入っているのか。ところで、五月みどりさんのことはポロも聞いたことがないな。たしかせんせいは「はしのえみ」さんのファンだったような気がするな。でも、これも確かじゃないから怪しいな。どっちにしろ、書かれたものが本当のことであるかどうかが分からないというのは、いつもせんせいが言ってるな。真実にたどりつくのはポロしだいって。それはポロもよく分かるぞ。でも、ちょっと興味あるな「ハイデッガー養成キット」>

演習課題1 事実の列挙のみによる短文を書け。

ポロの解答  
 イモようかんはおいしい。

養成キットによる添削例
 イモようかんを好む人は和菓子好き全体の70パーセントを占める。

※「おいしい」というのは個人的な感想であるため、これを事実に書き改めると上記のようになる。なお、これは単なる例文なので70パーセントという数字に根拠はない。信頼性を増すために(国民イモようかん調査センター白書2002年版による)と付記することがあるが、それとてどの程度の信頼性であるかは分からない。そのような組織が存在しない可能性もある。

<そっか、事実ってそういうことか。ポロは、感想を書いちゃったんだな。それにしても、書かれていることが本当のことであるのかどうかは分からないんだなあ>

書き直したポロの解答
 ポロは猫である。

養成キットによる添削
 正解。ただし、読み手によっては「我が輩は猫である」のパロディとも受け取られかねないので「ポロは猫」「ポロは猫です」とするのも一方法。

<うーん、そんなことも気にするのか。言われてみれば、確かに読んだ人に余計な勘ぐりを起こさせるかも>

 どうでしたか、技術文書達人養成キット。長くなったので、今回はここまで。ポロの気が向いたら続きをアップします。待てない人は「デカルト商会」でキットを買ってください。くれぐれも途中で巌流さんの「元祖 今川焼」のノボリに惑わされないようにね。なお、松戸一族のお店は通信販売はしていないみたいです。




 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

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2004-02-26 ポロの日記 2004年2月23日(光曜日) ポロ・プロジェクト定例会議 その1

ポロ・プロジェクト定例会議 その1

 ポロは、あまり広くなくて薄暗い会議室をドアのすき間からのぞき込んでいました。どうしてこんなところにいるのか、どうしてのぞき見しているのかなんて、その時は考えませんでした。

 楕円ドーナツ型の10人がけくらいの木目の会議テーブルの正面に議長のような、女の人が座っています。黒っぽいスーツの、いかにも最前線で活躍するキャリアウーマン風の30代のステキな人でした。そのほかに会議に出席している人が男女合わせて7人。それから、議長の正面の壁には大きなスクリーンがあって、やっぱりきれいな女の人が映っていました。

議長「では、ポロ・プロジェクト定例会議を始めます」

-うわっ、何なんだ、ポロ・プロジェクトって!?

議長「はじめに、せんせいの様子から報告してください」
A子「はい。昨日も私のレッスンがありましたが、ポロの執筆量の多さにもかかわらず、せんせいは私だけがポロであることを疑ってはおられないようでした。せんせいのお話の全録音と、ご家族に関する新しい記録はこちらにファイルしてあります」
議長「では、あとで全員に配布をお願いします。確かに、最近一人だけで書いているとは思えないほどの文書が一度にアップされてしまうことがあります。文書量に関する制限、もしくはアップロード順を厳格に決めていかなければならないでしょう。それについては次回の議題としたいと思います。次に音楽コラム担当のB子さん、新しい動きはありますか」

-なに言ってるの。ポロが一人で書いてるんだよ。

B子「せんせいは、作曲の仕事に時間をとられてコラムに向けられる時間が限られてきています。だからといって全部の欠番コラムを埋めてしまうと、お話の部屋との兼ねあいで文書量が多くなりすぎ、複数の人が関わっていることが疑われてしまいます。そのため、適度に欠番を作りながら更新しています」
議長「ひみつの部屋掲示板担当のC太さん、お願いします」
C太「はい、最近ひみつの部屋へのアクセスが不安定ですので、借り換えを検討してもよいかと思っています。その他の書き込みについては、書き込み時刻を早めに設定して夜のうちに多くの方に読んでもらえるようにしたいと思っています。ただし、ポロのいいかげんさを演出するために、ときどき深夜の更新も行ないます」

-アクセス不安定はポロも同感だな。

議長「次はレッスン掲示板担当のD作さん、どうぞ」
D作「順調です。即座の更新ではなく、お話の部屋の執筆中と思われる時間帯には書き込まないなどの注意を払っております」

つづく

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2004-02-25 ポロの日記 2004年2月23日(光曜日) ポロ・プロジェクト定例会議 その2

ポロ・プロジェクト定例会議 その2

議長「では、お話の部屋担当のE次郎さん、お願いします」
E次郎「新たなキャラクターである松戸巌流、および松戸哲学が加わりました。これによって、松戸一族はお互いをみな変人呼ばわりするということ、および誰もがその道を極めなければ気が済まない人格の持ち主であるということが明らかになってきました。その極め方が微妙に横道にずれているところを表現していきたいと思っています」
議長「今回の今川焼きは私も食べたくなりました」

-ポロ、ホントに食べたもん。おしいかったなあ。

E次郎「恐れ入ります。今後、必要があれば数年前にクランベリーヒルで彼が行なった小麦と小豆の品種改良に関するエピソードも加えられると思います」
議長「シロのコラム担当のF美さん、軌道に乗りそうですか」
F美「はい、最初のコラムがアップされてきましたが、どのように添削するかまだ試行錯誤の状態です。この件に関しましてA子さんとE次郎さんにお願いがあります。まず、A子さんは、せんせいから日本語に関するオリジナル・テキストをなるべく多く入手していただきたいのです。E次郎さんは、それを使ったお話か、あるいはテキストをそのまま引用する形でお話の部屋にアップしていただけるでしょうか。そうすれば、ポロはそれに従って添削が可能になります」
議長「それは重要な提案です。添削は、本来高度な作業です。ポロが自然にそれを行なうには基準となる指針が必要でしょう。ぜひ、よろしくお願いします」

-バカにしないでよね。ぽ、ポロにだってできるやい!

E次郎「分かりました。やってみましょう。手に入れた技術文書キットを公開する形にします」
A子「早急にテキストを入手します」
議長「クランベリーヒル特派員のG夫さん、そちらの様子はいかがですか?」
スクリーンの紳士が答えました
G夫「春めいてきたことをのぞけば、いつもどおり、何も変わってはいません。皆さんもときどきお出かけください。オンディー沼のほとりでサンドイッチを食べましょう」
議長「素晴らしい提案ですね。実現したらどんなにステキでしょう。では最後にポロ・ルールのH奈さん、お願いします」
H奈「はい、ポロの言葉使い集に変更はありませんが、気をつけていただきたいことがあります。それは大丈夫を表す“ダイじょぶ”の使用についてです。“だいジョブ”という使用例を発見しています。“アリガトございます”“オハヨございます”“ゴメなさい”などと同様に最初がカタカナというルールです。それから、ポロ辞典に先ほどE次郎さんからお話のあった2人のキャラクターと元祖今川焼き屋台、デカルト商会を加えます」
議長「皆さん、ポロのキャラクターの統一が私たちの最優先課題です。十分気をつけてください」

-ここにいるのは、全部にせポロじゃないか。


 ポロは、ここで目が覚めました。夢だったのに何だかドキドキして、それから朝まで眠れませんでした。


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おいしいものならポロは別腹さ! / ポロ ( 2004-02-26 12:55 )
なぞだー!ポロ師匠(本日より師匠に変更)のなぞがまた。それにしても師匠。1,200円分もの今川焼きを食べてしまうとは。ウワバミのようになりませんでしたか? / シロ ( 2004-02-26 00:35 )

2004-02-24 ポロの日記 2004年2月21日(風曜日) ポロ、シロ論語を迎え撃つ その1

ポロ、シロ論語を迎え撃つ その1

 ポロのおとうと弟子のシロ(子路)が、ポロの助手になって修業をすることになりました。最初はコラム書きの修業です。最近、ポロはコラムを書くのがうまくなってきたなあって自画自賛してたんだけど、シロのコラムを読んだら、ポロのより全然すごくてポロは思わず置き手紙を書いてしまいました。

「せんせい、お世話になりました。さがさないでください」

 で、ポロはどうしたかというと、行くところもないのでシュデンガンガー商会に向かいました。
とんとん!
「はい、どうぞ開いております」
「コバワ」
「おや、ポロ様。いかがなさいましたか」
「かくかくしかじか、これこれこういうわけで、シロのコラム迎撃キットが欲しいんですけど・・・」
「それは大変ですね。私のところで扱っているのは道具、装置、一部の化学素材、機械類に限られておりまして、そのようなものは置いておりません。しかし、お役にたちますかどうか、私のイトコがデカルト商会という店をやっておりまして、そこには“文豪養成キット”があったと思います」
「え゛〜〜〜!! そんな便利なものがあったの〜!」
「しかし、なにぶん、変わり者でして」
「ねえねえ、そのお店どこにあるの?」
「日本橋の馬喰町(ばくろちょう)でございます」
「変わった名前だねえ。暴露町ってどこにあるの?」
「はい、ここから東へ向かって神田美土代町、鍛冶町、富山町、岩本町を抜けて東神田のすぐ隣です」
「そんなにいっぱい町を越えていくの〜?」
「はい。ですが、歩いて15分ほどかと」
「うわー、ちっちゃい町ばっかりなんだねえ」
「江戸時代からの名残ですから」
「アリガト!」

 ポロは、松戸さんの描いてくれた手書きの地図をたよりに、夜の神田の町を歩き始めました。しばらく歩くと、ポロの野生の鼻がいい匂いをかぎつけました。ああ、もうたまらない。その匂いのするほうに向かって行くと、今川橋の近くの路地裏に一軒の屋台がありました。

 “元祖 今川焼”

 屋台の中央、アセチレンランプの光に浮かび上がるおじさんの顔は、ちょっとホラーがかっていましたが、あまりいい匂いなのでポロは思わず声をかけました。

つづく

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2004-02-23 ポロの日記 2004年2月21日(風曜日) ポロ、シロ論語を迎え撃つ その2

ポロ、シロ論語を迎え撃つ その2

「おじさん、ひとついくら?」
「お、今夜は猫か。ひとつ100円だ。本物の金じゃないと売らないぞ」
「ポロのお金、本物だよ。せんせいがくれたんだから。はい、ひとつちょうだい!」
「きのう来たのはサラリーマンのふりをしたキツネだった。家に帰って売り上げを数えようとしたら葉っぱが何枚も出てきた」
「ふ〜ん。このへんでもキツネがで出るんだねえ」

 おじさんはお金を光にかざしたり、噛んでみたりしてから、疑ったりして悪かったといって今川焼きをひとつ、新聞紙で作った袋に入れて渡してくれました。

「わあ、おいしい! おいしいよ、もぐもぐ。こんなにおいしいもの食べたことないよ」
「そりゃよかった」
「ねえ、おじさん。もっとちょうだい!」

 ポロは、とうとう全財産の1200円を今川焼きに使い果たしてしまいました。
「ああ、お腹いっぱい食べちゃったよ。またね、おじさん」
「ああ、うちも今日は店じまいだ」
 おじさんは屋台をひく自転車にまたがると、走り始めました。その時です。自転車の前輪の泥よけカバーに書かれていた名前の名字が見えました。そこには白い文字で松戸と書かれているように読めました。

「おじさーん! 待ってよ〜!」

 ポロはすぐに追いかけましたが、角を曲がったところで見失ってしまいました。
しかたなく、ポロはデカルト商会を目指して歩き始めました。
デカルト商会は地図のとおり、事務所や喫茶店がごちゃごちゃとある雑居ビルの地下一階にありました。狭い階段を降りていくと、古びた木のドアに「デカルト商会」という看板がありました。

 とんとん!

「ごめんくださーい」
少したってから、鍵が開く音がしてドアが開きました。
「どんなごようですかな?」
 痩せたおじさんが、ポロをじろりと睨みながら言いました。
「あ、あの。シュデンガンガー商会の松戸修士さんから聞いてきたんですけど」
「おお、それはそれは。お入りなさい」
「お、おじゃましまーす」

 お店は、本屋さんのようでした。あまり広くはありませんが、壁全部が本棚になっていました。

「何をお探しですかな?」
「えっと、文豪養成キットです」
「ほう、それはどのようなわけで?」
「かくかくしかじか、これこれこういうわけです」
「なーるほど。それなら文豪養成キットよりも、技術文書達人養成キットのようがよろしいようですな」
「どうちがうの?」
「これを読んでみてください」
「ポロ、音読、得意なんだよ」
「じゃ、どうぞ、声に出して」
 ・・・5月4日。快晴、気温10度。無風、波はない。調査船シュバルツシルト号は午前8時にポート・チャンドラを出港。1時間ほどで外洋へ到達。進路を南にとる。
「じゃ、次のを読むよ」
「はい、どうぞ」
 ・・・5月4日。私は調査船シュバルツシルト号に便乗して、初めての海の旅に出ることになった。8時頃、誰の見送りもない出港だったが、そんなことも前夜の寝不足も、すがすがしい海の風にあたると全く気にならなかった。

つづく

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文豪と技術文書の違いが見事に…それはそれとして、今川焼き美味しそう・・・ / みた・そうや ( 2004-02-22 11:31 )

2004-02-22 ポロの日記 2004年2月21日(風曜日) ポロ、シロ論語を迎え撃つ その3

ポロ、シロ論語を迎え撃つ その3

「どうです。前者が技術文書キット、後者が文豪キットです」
「ポロ、技術文書キットにするよ。この例文を読んだだけで、いろんなことに気がついた気がする」
「それはすばらしい。あなたには見込みがある」
「わあ、うれしいなあ」
「これ、いくらですか?」
「はい、1200円です」
「安い! でもね。今、ポロ一文無しなの」
「それは困りましたね」
「ポロ、1200円持ってきたんだけど、ここに来る途中で“元祖 今川焼”っていう屋台で全部使っちゃった」
「巌流ですな」
「なにそれ」
「松戸巌流という遠い親戚なんですが、変わり者でして松戸一族の鼻摘み者です」
「でも、おいしかったなあ、あの今川焼き」
「そうですか。何やらよその星にまで出かけて小麦や小豆の品種改良などにかまけていて、全く商売にならないことをしているとかで・・・」
「ふーん、それで謎が解けたよ。あの今川焼きはおいしすぎるもん。ポロ、がんりゅうさんのファンかも」
「では、シュレーディンガー商会の常連さんということですので、後払いで結構です。こちらをお持ちください」
「わーい、アリガト!」
「ところで、これはキットですから未完成品です。お客様に組み上げていただくことになりますが、どうしても出来ないときには“技術文書達人養成キット組立裏技集”というものも用意してございます」
「うん、ダメだったらまた来るよ」

 ポロは、夜も更けた日本橋の町なかを北に向けて歩き始めました。なんだか身体じゅうにやる気が満ちあふれてくるのを感じていました。

「待っててよ、シロ! ポロの実力を見せちゃうからね!」

 小伝馬町、大伝馬町を通って人形町に入りました。甘酒横丁のあたりで、ポロは、もう道に迷ってしまったことに気がつきました。

「わあ、また遭難しちゃったよ〜! 誰か助けて」


<波乱万丈、解決編を待て!> (実は おしまい)



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みなさん、さっそくのつっこみ、アリガトございます。ポロは今、キットと格闘してるとこです。どーしてこんなものまで組立キットにするのでしょか。 / ポロ ( 2004-02-22 22:06 )
やっぱり、「キット」と言うからには、組立説明書なんて読まずに作ってみたり、改造してみたりするところに醍醐味がありそうですねぇ。んでもって、裏技集に書いてあることも先に見つけてしまうと・・・ / shin ( 2004-02-22 21:49 )
私も、ポロさんと同じキットを買うと思います〜でも、ポロさんの文章はポロさんらしくて良いと思いますよ♪ポロさんにしか書けない、ポロさんの文章ですもの〜自信を持って、頑張って下さいね♪ポロさんの一ファンより・・・ / moko ( 2004-02-22 21:30 )
私は文豪養成キットを買った方がいいかも… / みた・そうや ( 2004-02-22 11:29 )

2004-02-14 ポロの日記 2004年2月10日(火)スティクス川のほとりで その1

 誰かが、泣きながら何かを読み上げていました。
「初めて会ったのに、それがこんな姿になってからであることが信じられません・・」
 あ、読んでるのは、おちゃめさんだ。せんせいもいる。みんな、黒い服を着てる。あ、祭壇にポロの写真が。わ、これはポロのお葬式じゃないか。そういえば、ポロは猫インフルエンザにかかって大変だったなあ。やっぱり死んじゃったのかなあ。ポロここだよ、みんな気づいてよ。でも、どうして天井に浮いてるんだろう。うわ、天井突き抜けちゃった。ポロ、風船になっちゃったみたいだよ。ホントに死んじゃったんだ。わあ、ふわふわして気持ちいいなあ。どんどん高くなっていく。雲の高さまで昇るのかなあ。だんだん近づいてくるなあ、あのちぎれ雲。わあ、どんどんスピードが上がってるなあ。空がどんどん青くなってきた。わあ、霧の中だ。これがきっと雲だな。おっと、晴れたぞ。なんだか、空の上の方が紺色になってきたなあ。あれ、星だ。お星さまが光ってる。きれいだなあ・・・。


 それから、はっと気がつくと、ポロは黄色いきれいなお花畑にいました。お花畑をどこまでもずっと進んで行くと、大きな川岸に出ました。ちょっと考えてから
上流に向かって歩いていきました。すると、小さな家があったので訪ねてみました。
「ごめんくださーい!」
 し〜ん。
「ごめんくださーい!」
「誰じゃ?」
 ちょっとヨボヨボな感じのおじいさんが奥の部屋から出てきました。
「ポロと言います。ここはどこですか」
「おお、しゃべれるだか。話す猫に会うのはこれで二匹目じゃ」
「ポロの前にも、しゃべれる猫が来たの?」
「そうじゃな、もう10年以上前のことになるだな」
「どんな猫?」
「白と黒のぶち猫じゃった」
「白と黒のぶち猫?」
「もしかして、ここどこ?」
「スティクス川の渡し場。ワシは渡し守のカロン」
「え゛〜!!! それじゃ、その猫ってジョーンズっていう名前じゃなかった?」
「そうじゃ、そうじゃ、たしかジョーンズとか言っておっただのう」
「わ〜、やっぱりポロ死んじゃったんだ〜、えーん、えん!」
「泣くでない、この川を渡るまでは死んでしまったわけではないだよ」
「え、ホント?」
「本当だとも」
「だって、ジョーンズだって助からなかったよ」
「いや、あの猫は誰かを助けに行くと言って自分からこの川を渡っちまった。勇敢でりりしい猫じゃっただ」
「わあ〜、どうせポロは臆病でめめしい猫だよ〜、えーん、えん!」
「ちょっと待っとれ」
そういうとカロン爺さんは、超薄型の液晶ディスプレイみたいなものを持ってきました。
「さあ、よく見るんじゃ」
 画面の中は、ポロのお葬式がライブ中継されていました。今度はせんせいが何か話しています。
「・・・ポロは、疑うことを知らぬ猫でした。ポロにいやな思いをさせられた人はいなかったに違いありません。ピアノは少しも上達しませんでしたが、いつも前向きで明るくて、周囲の誰をも勇気づけてくれました。ポロの語る不思議なストーリーは多くの人を魅了しました。ポロに会うためにホームページにアクセスしてくる人も数多くいました・・・・」
 せんせい、ピアノが上達しないなんていうのは余計だよ。ポロにはヒケールがあるんだから。

つづく

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2004-02-13 ポロの日記 2004年2月10日(火)スティクス川のほとりで その2

「もう少し前を見てみるだよ」
 カロン爺さんが操作すると、一週間前のポロが映し出されました。ポロはダイニングでおいしそうにイモようかんを食べていました。カロン爺さんは、その前の日の映像を映し出しました。ポロが、おいしそうにイモようかんを食べていました。その前の日に合わせると、やっぱりイモようかんを食べていました。その10日前に合わせても、一ヶ月前に合わせても、やっぱりポロはイモようかんを食べていました。
「おまえさんは、イモようかんを食べる以外にすることはないのか?」
「えっと・・・・。うん、ちょっと思いつかないかも」
「実はだな、ワシの今日の三時のお茶に、たまたまイモようかんを用意しただよ。食べるか?」
「うん。食べる食べる」
「これは、たぶんワシが食べるために用意しようと思ったのではなくて、イモようかん好きな猫が来ることの予定調和っちゅうもんじゃ」
「いただきまーす! わあ、おいしいよ、これ。せんせいの手作りイモようかんみたいだ」
「そりゃ、よかっただ。今日の渡し舟の最終便はもう出てしまったから、お前さんは明日の朝一番の船で向こう岸に渡ってもらうことになるだよ」
「えっ、ポロはスティクス川なんて渡りたくないよ」


 その少し前のことでした。ここは神田淡路町。
「ごめんください!」
 どんどんどん!
「ごめんください!」
 どんどんどん!
「どなたですか? 今日は定休日です」
「分かっています。shinと言います。どうしても欲しいものがあるのです」
「店は明日の夜に開けますから、それまで待ってください」
「ポロさんが、危ないんです」
「えっ、ポロさんがどうかなさったのですか?」
「死んでしまいました」
「本当ですか!? まさかイモようかんをのどに詰まらせたとか」
「死因は違いますが、確かです」
「しかし死んでしまったら、危ないも何もないじゃないですか」
「いや、まだスティクス川を渡っていないはずです。スティクス川救難キットがシュレーディンガー商会にあると聞いてやって来たのです」
「おう、そう言えば、ひとつだけ試作品があったはず」
「ありますか!?」
「確かあったはずです。今鍵をあけます。どうぞお入りください」
「お休みのところ、おそれいります」
「私もポロさんには500万円ほど貸しがありますから、できれば生き返って欲しいものです」
 カウンターの奥から店主の松戸さんが持ってきたのは、埃だらけの古びた箱でした。
「これです。兄の試作品なのでお代は要りません。どうぞお持ちください。ただし、動作保証はありません。最悪の場合、救援に向かったあなたも戻れなくなる可能性があります」
「分かりました。危険だろうとは思います。でも、人生に本当に大事なことは少ししかないような気がするんです。これは命をかけてもいいことなんじゃないかと思えるんです」
 shinの真剣なまなざしに、松戸さんは全てを悟ったようなような気がしました。
「私は、今、あなたから人生を教えられたような気がする。ちょっと待ってください」
 松戸さんは、店の奥から首にさげるペンダントのようなものを持ってきました。
「これは、イシュマルの石と呼ばれるものです。我が家に代々伝わっている家宝です。これがきっと役に立つことでしょう。それが何であるかは聞かないでください。私は知る機会がなかった。しかし多分あなたは、これが何であるかを知ることになる。常に肌身離さず持っていてください」
「ありがとうございます。お守りだと思って持っていきます」


つづく

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2004-02-12 ポロの日記 2004年2月10日(火)スティクス川のほとりで その3

 shinは、宿に戻ると早速キットを組み立てました。
 スティクス川救難キットは3つの部分からできていました。組立は簡単でした。一つ目はたくさんのコイルから成る次元横滑り装置。二つ目はレーダー。三つ目の機能はよく分かりませんでした。動力源は006p乾電池です。予備も買いそろえました。
 shinはポロの葬儀が行われているペット葬儀社の葬祭場に急ぎました。葬儀は進行中のようでした。そのまま葬祭場脇の倉庫に入り込むと、誰にも見つからない物陰で横になり、次元横滑り装置の“アストラルトリップ”という表示のボタンを押しました。
 ぼわーんという気持ちになったと思うと、shinは自分の横たわる姿を上から眺めていました。shinは自分の身体から抜け出したのです。それから、思いだしたように手を伸ばして救難キットを掴みました。救難キットのすごいとところは、幽体になってからも持ち運べるところです。これがないと戻ってこられません。手書きの説明書には開発の苦労が長々と書いてありましたが、急いでいたのでもし戻れたら読もうと思っただけでした。
 倉庫の天井を突き抜けてshinは空高く舞い上がっていきました。ポロの身体が火葬される前に救出作戦を終了しなければなりません。気持ちが焦って、shinは空を泳ぎました。なぜか平泳ぎです。誰かが見ていたら空にカエルがいるかのように思ったことでしょう。shinは高所恐怖症であることも忘れ、両手で空気をかいてひたすら高空を目指しました。

 スティクス川両岸に広がるお花畑に着くと、shinは救出キットのマニュアルに従って、三つ目の機能をオンにしました。shinの幽体がさらに薄くなって、ほとんど見えなくなりました。なるほど、姿を隠すための機能なのでした。shinは、ここでは招かれざる客に違いありません。
 次いで、レーダーを動かしました。北の方に何かあります。shinは小走りにそちらに向かいました。ほどなく建物が見えてきました。それと同時に首から下げたイシュマルの石がぼんやりと赤く光り始めました。

 ・・・何かの警告だろうか?

 shinは注意深く進むことにしました。建物に近づくと話し声が漏れ聞こえてきました。

「ねえ、カロンさん。イモようかん、これでおしまい?」
「そうだよ。おまえさん、全部食っちまっただ」
「えー、このへんにマルエツないの〜?」
「おまえさん、結構たちの悪い猫なんだなあ。ジョーンズとは大違いだ」
「ほえ〜。だって、ジョーンズは英雄だもん。で、ポロは天才!」
「まったく、飼い主の顔が見たいもんだ」
「飼い主か〜。飼い主は大天才だよ」
「それじゃイモようかん、一度に四日分も喰らうにちげえねえだ」
「そんなことないよ〜」

 shinは、とむりんせんせいのことを思いだして、笑いをこらえるのに精いっぱいでした。しかし、のんびりしてはいられません。ポロの身体が火葬されてしまっては全ては水の泡だからです。shinは、ポロの近くの窓をそっと叩きました。
 ポロが振り向きましたが、窓には何も見えなかったので、また元の方向を向いてしまいました。shinは、消え去り機能を解除して姿を見えるようにすると、もう一度窓を叩きました。今度はポロが気づきました。shinは人さし指に唇を当てて、声を出さないようにと伝えるしぐさをすると、唇の動きで話しかけました。

<shinです>

 ポロは、どういうわけだか、すぐにそれがshinであることを直感し外へ出ました。
「おう、どこへ行くだか?」
「うん、ちょっと川岸を散歩してくるよ」


つづく

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2004-02-11 ポロの日記 2004年2月10日(火)スティクス川のほとりで その4

 小屋の裏手で2人は会いました。
「わあ、shinさんだね!」
「そうです。ポロさん初めまして」
「こんなところで会うなんて。shinさんはどうして死んじゃったの?」
「死んでなんかいません。シュレーディンガー商会の<スティクス川救難キット>で助けに来ました」
「え、ホント! ポロ助かるの?」
「はい、戻れればの話ですが。急ぎましょう!」

 その時、イシュマルの石が眩しいほどに輝きました。
「それ、なあに?」
「イシュマルの石と言います。何に役立つのかよく分かりません、教えてもらってないんです」
「ポロ分かったよ、それは危険を知らせるんだ」
 ポロが指さす方向をshinが振り向くと、鎧をまとって剣を持った冥界の警備兵が2人、こちらに向かって来るところでした。
「ポロさん、つかまって。キットの消え去り機能で姿を隠します」

 ぶーん。

「わ、ホントに消えた」
「でも、彼らには見えているようですね。全然動じていない」
 shinは、ポロを背負うと警備兵の反対方向に向かって走り始めました。
「ねえshinさん、どうやって元の世界に戻るの?」
「そう言えば、まだマニュアルの最後のところを読んでいませんでした」
 そう言うと、shinはポケットから松戸博士の手書きのマニュアルを出してポロに渡しました。
「ポロ、音読得意だよ。えっと、帰還方法っていうところだね」
「そこです。読んでください」
「臨死体験を持つ人の多くがスティクス川を渡るのをやめたり、お花畑を引き返した直後に冥界を離れている。これは、現世と冥界をつなぐ通路がスティクス川付近にあることを示している。しかし、その位置、数ともに定まってはおらず、その発見が帰還の鍵を握る。発見方法はいくつかあり、ひとつはレーダーに現れる淡い点をひとつひとつ調べること、次の方法は確率は低いが、誰かがちょうど冥界に現れたときには、そこが通路である。最後の方法は、ほとんど可能性があるとは思えないが、もしあなたがイシュマルの石を持っているならば、それを握って帰還を念じればよい」

 うおおおおおおおおお〜〜〜!!!!!!

 大きな叫び声に二人が振り返ると、いつの間にか背後に迫っていた警備兵の降り降ろす巨大な剣がふたりの頭上に迫っていました。

「きゃあああああああああ〜〜〜〜〜!!!!」
「うわあああああああああ〜〜〜〜〜!!!!」


つづく

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