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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-02-06 クランベリーヒル便り第6話 お客さんがやって来る その1
2004-02-05 クランベリーヒル便り第6話 お客さんがやって来る その2
2004-02-04 クランベリーヒル便り第6話 お客さんがやって来る その3
2004-02-03 クランベリーヒル便り第6話 お客さんがやって来る その4
2004-02-02 クランベリーヒル便り第6話 お客さんがやって来る その5
2004-02-01 ポロの日記 2004年1月29日(木) お味噌の仕込み
2004-01-31 クランベリーヒル便り第5話 楽しいピクニック その1
2004-01-30 クランベリーヒル便り第5話 楽しいピクニック その2
2004-01-29 クランベリーヒル便り第5話 楽しいピクニック その3
2004-01-28 クランベリーヒル便り第5話 楽しいピクニック その4


2004-02-06 クランベリーヒル便り第6話 お客さんがやって来る その1

 宇宙長距離の長電話が終わると、奥さんが長男のぶうよんに言いました。

奥「来週の風曜日にお客さんがいらっしゃるわよ。お行儀よくしてなきゃダメよ」
風「はーい、みいやんにも教えてこよう」

 ぶうよん(風)は、工作室でバルサ材で何かを作っているみいやん(海)に言いました。

風「おい、みいやん。来週の風曜日にお客さんが来るって。おとなしくしてないと母ちゃんコワいぞー」
海「え、コワいの? そりゃ大変だ。ぴーちゃんにも知らせなくちゃ」

 みいやんは、リビングに急ぎました。リビングの床ではぴーちゃんとキティとロケット号がモンスターカードで遊んでいました。

海「大変だよ、ぴーちゃん。かあちゃんよりコワいお客さんが来るって。お行儀よくしないとぶたれちゃうんだぞ」
ぴ「ぴーちゃんやだ」
キティ音声「ピーチャンヤダ」
キティのディスプレイ表示「危険ニ 備エヨ」
ロケット号「ぴ、ぴゆぴゆ!」

 きゅるきゅるきゅる!
 キティの内部視覚エリアに、アーカイブ映像が映し出されました。奥さん接近。近づくゲンコツ。衝撃のあとのスノーノイズ。リプレイ。奥さん接近。近づくゲンコツ。衝撃のあとのスノーノイズ。リプレイ。奥さん接近。近づくゲンコツ。衝撃のあとのスノーノイズ。リプレイ。奥さん接近。近づくゲンコツ。衝撃のあとのスノーノイズ。リプレイ。

ロ「ぴゆぴゆ、ぴゆぴゆ!」
ロケット号に呼びかけられてキティは我に返りました。
キティ表示「無事、是、名馬」

つづく

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2004-02-05 クランベリーヒル便り第6話 お客さんがやって来る その2

 ロケット号の招集で、キッチンで緊急会議が開かれました。

 ロケット号、キティ、自走式掃除機のジョン3兄弟、冷蔵庫のトビー。エアコンのAC-920、それからここに集まることのできなかったものの、オンラインで接続している洗濯機のロビーが、迫り来る危機に対して話し合いました。ところが情報が不足していました。分かっているのはお行儀よくしていないと危険であるということだけで、肝心のお客様に関する事が何も分かりません。情報収集の後、深夜に再び集まることになりました。

 夕方、ロケット号は奥さんに呼び止められました。
奥「ロケット号、ちょっといいかしら」
ロ「ぴゆぴゆ」
奥「来週の風曜日にはとっておきのご馳走を頼んだわよ。5つ星よ、い・つ・つ・ぼ・し! お客様がいらっしゃるの。うしおさんよ」
ロ「ぴゆぴゆ」
思わぬところで情報が手に入りました。

 深夜の集会で、ロケット号はみんなにそのことを説明しました。
ロ「ぴゆぴゆ。ぴゆぴゆ、ぴゆぴゆ。ぴゆぴゆぴゆぴゆ」
キティ翻訳「来週風曜日に牛のお客さんが来てお産します。いつつぼし(意味不明)のご馳走を用意すること」
ビッグジョンBJ「がーがー、がーがーがー、がーがー」
キティ翻訳「お産を控えた牛なら、ぶったり蹴ったりしても不思議はない」
タイニージョンTJ「がーがー?」
キティ翻訳「牛ってなあに?」
リトルジョンLJ「がーがー、がーがー、がーがーがー、がーがー」
キティ翻訳「昔、カエルのおとうさんが子どもに、その説明をしようとしただけでお腹が破裂してしまったという教訓が残されている大きな動物だ」
ロ「ぴゆぴゆ!」
キティ翻訳「その絵本なら、ぴーちゃんが読んでくれたよ」
TJ「がー」
キティ翻訳「こ、こわー」
トビー「ぶーん」
キティ翻訳「とにかく、お行儀よくして、いつつぼしのご馳走を用意しよう。キティ、公共図書館で必要な情報を集めて」
キティ表示「了解」

 キティは、すぐに公共図書館にアクセスして、モーニングスター新聞社編の「作法とマナー」とマゼラン畜産大学編による「3訂版/酪農の理論と実際」をダウンロードしました。
 その日の集会はそこで解散しました。

 キティは夜の集会に備えて、翌日の日中をダウンロードしたデータの整理に費やしました。牛のご馳走が干し草であり、同時に牛のベッドにもなることも分かったので、それだけは先にロケット号に伝えました。それを聞いたロケット号は、さっそく三河屋さんに干し草の注文を出すことにしました。

<発信:クランベリーヒル:野村ロケット号/通信先:三河屋デリバリーサービス様/牛用最高級干し草1トン(いつつぼしのもの)/納期来週岩曜日まで>

つづく

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2004-02-04 クランベリーヒル便り第6話 お客さんがやって来る その3

 折り返し、三河屋さんから返信が届きました。

<発信:三河屋デリバリーサービス:注文センター/通信先:クランベリーヒル/野村ロケット号様/高級干し草1トンのご注文承りました。地球、ニュージーランド産の最高級品を手配いたしました。来週草曜日または岩曜日にお届けいたします>

 これで、ひとまず安心です。
 深夜、また集会が開かれました。今夜からは「作法研究会」です。場所は大型ディスプレイのあるリビングに移されました。作法が問題となるのは自走式のメンバーです。
 「作法とマナー」の映像が始まりました。和服を着た上品な女性が挨拶の模範をしめします。そしてキティが、お辞儀の角度、継続時間、向きなどのパラーメータを解析して皆に伝えると、みんながお辞儀の練習を始めます。ロケット号もジョンたちも何度も何度もくり返しお辞儀の練習をしました。お辞儀のしすぎでメンバーの誰もが、まるで水飲み鳥のようになってしまった明け方、作法研究会はようやく解散しました。

 昼間も猿雅荘には何となく緊張感がただよっていました。いつもは静かな午後の室内も、緊急時に備えてサニタリーを高速で洗濯・乾燥するリハーサルを繰り返す洗濯機のロビーの作動音が響いていたばかりか、掃除を終えたはずのジョンたちもがーがーと動いていました。
 キティとロケット号は子牛を安全に取り上げるための知識を学んでいました。無事に産まれてくれるでしょうか。エアコンのAC-920は、客間の最適温度分布を実現するために試行錯誤を繰り返していました。
 そうしているうちにも、どんどん時間は過ぎていき、連日連夜の作法研究会のおかげで、誰もが挨拶から歩き方までとても上手になりました。
 ある晩、ゲネプロ(ステージで行われる本番同様のリハーサル)が実施されました。

 キティがサンプリングした架空のドアチャイムが鳴ります。お客様の到着です。ロケット号の目配せを合図に、全員が照明の消えたままのフロアに一列に並びます。背筋を伸ばして視線は前。一列に並んだ5つの影が整然と玄関に向かいます。歩行速度の関係で、どうしてもタイニージョンが遅れがちになることが分かりました。それで、タイニージョンを先頭に歩くことになりました。玄関に整列すると、お客様に向かって一糸乱れずにお辞儀をします。何度か繰り返されたリハーサルも終わり頃になると、その角度は1度の狂いもないほどでした。部屋への案内、ダイニングへの誘導、すべて<モーニングスター新聞社編/作法とマナー>のとおりでした。みんな満足でした。東の空が白むころ、作法研究会は解散しました。

 草曜日になっても岩曜日になっても三河屋さんはやって来ませんでした。明日は、いよいよお客様が到着してしまいます。ロケット号がアンシブルで問い合わせると、もう出ました、とソバ屋さんのような返事が返ってきました。
 夕方、アンシブルの緊急通信が入りました。

<発信:三河屋デリバリーサービス:配送センター/通信先:クランベリーヒル/野村ロケット号様/ご心配をおかけいたしました注文品未着の件ですが、宇宙嵐のためデリバリーシップの到着が遅れていることが判明しました。風曜日の午前中には必ずお届けいたしますのでそれまでお待ちください>

 本当に届くでしょうか。もし干し草が届かなかったらお客様をお迎えするどころではありません。ロケット号やキティたちは北極星に祈りながらデリバリーシップの到着を待ちました。

つづく

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2004-02-03 クランベリーヒル便り第6話 お客さんがやって来る その4

 とうとう、風曜日の朝がやって来ました。ジョンたちの見事な働きで、床はまるで鏡のように輝き、窓のガラスは外してしまったのかと勘違いするくらい透明度が高く、どこにもチリひとつ見当たりませんでした。

奥「キティ、ロケット号。お客様をお迎えに行ってきますからね、留守番を頼んだわよ」
キティ「きてぃ、ろけっと号。オ客様ヲオ迎エニ行ッテキマスカラネ。留守番ヲ頼ンダワヨ」
奥「いちいち、うるさいわねえ」
キティ「イチイチ、ウルサイワネエ」
キティ表示「イッテラッシャイ」
ロケット号「ぴゆぴゆ」
キティ「ピユピユ」

 せんせいも子どもたちもみんなカーリーに乗り込んで、まだ正式な宇宙空港のないクランベリーヒルのスターシップ定期便臨時発着所に向かいました。
 カーリーが出かけてすぐ、ロケットの夏が始まりました。空気が乾燥しているので、まさに春の嵐です。三河屋のデリバリーシップ「ノストロモ号」がもうもうと砂煙を巻き上げてタバコの野原に着陸しようとしていました。干し草は、なんとか間に合ったようです。

 ごわー! どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど〜!

「ぴ、ぴゆぴゆ!」
「がーがー、がーがー!」

 窓ガラスは砂ぼこりで曇り、床はザラザラです。

「ちわーす、三河屋で〜っす! 遅くなりやした〜」
 是輔さんが、フォークリフトで干し草を運んで来ました。
「ぴゆぴゆ!」
「おっ、ロケットの兄さん。間に合いましたか。そりゃ、よかった。いやあ、参りましたよ宇宙嵐」
「ぴゆぴゆ! ぴゆぴゆ!」
「いやあ、いいんですよ、そんなにお礼言っていただかなくても。喜んでもらえるとうれしいなあ」
「ぴゆぴゆ! ぴゆぴゆ!」
「じゃあ、またよろしくおねがいしやーす。ありゃーたーした!」

 ロケット号の猛抗議は全く通じないまま船に戻った是輔さんはノストロモ号のブラッドベリ・エアリサーチ社製離陸用ブースターを容赦なく全開にしました。

 ごわー! どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど〜!

つづく

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2004-02-02 クランベリーヒル便り第6話 お客さんがやって来る その5

 巻き上げる砂煙で視界は1メートル以下、南極のブリザードなみでした。
 さあ、ジョンたちは掃除のやりなおしです。エアコンのAC-920も吸排気ダクトに吸い込んだ砂を、ブロアーモードで吐き出しました。
 キティとロケット号は、大量の干し草を客間と倉庫に運び入れなければなりません。洗濯機のロビーは、掃除用にたくさんのリネンを供給しました。ジョン3兄弟はモーターの負荷限界まで働き続けました。

 それでもみんなが全力を投じたおかげで、なんとか掃除も終わり、お客様をお迎えする準備が整いました。ロケット号とキティはその具合を確かめるために、客間に敷き詰めた干し草にゴロリと横になってみました。
 思ったよりもクッションの効いた干し草のベッドは、お日さまの匂いがいっぱいに広がってなんだかとてもいい気持ちでした。ロケット号は、いつつぼしの気持ちとはこういうことかなと思いました。これならお客様は満足してくれるに違いありません。イリジウム・チタン合金製のカチカチのキティでさえ気持ちよさそうでした。
 ほどなく、キティのレーダー探索範囲内に帰宅途中のカーリーが入りました。いよいよ本番です。ロケット号の号令で、お迎え部隊が全員、玄関ホール近くのフロアに整列しました。
 お客様をお迎えして、完ぺきな挨拶。そして干し草の敷き詰められた客間にご案内すれば第一のミッションは完了です。緊張するタイニージョンの肩のゴミをリトルジョンが取りました。カーリーのエンジン音が聞こえると、皆かたずを呑んでその時を待ちました。そして、ついにドアチャイムが鳴りました。ロケット号の目くばせを合図に隊列を確認すると、高まる緊張の中、5人は意を決して一糸乱れず玄関に向かって進み始めたのでした。

おしまい

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お日さまの匂いいっぱいの干し草のベッド、贅沢だなぁ。うらやましいです。なんだか、どんどんどんどん、面白くなってきていますね。この後どうなったのか、ものすごく気になります。 / こすもす ( 2004-01-31 15:06 )

2004-02-01 ポロの日記 2004年1月29日(木) お味噌の仕込み

 今日は平日ですが、せんせいの奥さんは今日は会社がお休みです。ポロは音読の練習をしていました。ゴマのお兄ちゃんが用意してくれた漢字ばかりの本ですが、ふりがながふってあるので読むのなんて簡単。
「ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてー」
「ポロちゃん!」
「なあに」
「今日、お味噌を仕込むんだけど手伝ってくれる?」
「うん、やるやる」
 ちょうどお味噌を仕込むシーズンなので、ポロがお手伝いをすることになりました。
「お味噌を手作りするなんてステキだなあ」
「これも闘いなの」
「えっ、どうして?」
「ポロちゃんは、どういうお味噌が好き」
「ポロはイモようかんが好きだな」
「ポロ。あんた、刺されたい?」
「ぷ、ぷるぷるぷるぷる!」
 奥さんの手にはちょうど竹串が。くわばらくわばら。
「お味噌の好みはね、子どもの時に決まるの」
「うんうん、それで」
「だからうちも夫婦で違う好みなの」
「こまったもんだ」
「でもね、うちは相手の好みに対する文句は言わないの。お味噌汁作ってもらって文句言うなんて筋違いだから。当然、買い物行ったり料理するほうが勝ちなわけよ」
「うんうん、それで」
「そういう場合、普通のうちなら絶対主婦の勝ちよ。ところがね、あの人も買い物するし、料理が得意なの知ってのとおり」
「そっか」
「そうなると、さらに先手をとらないと勝てないのよ。お味噌作ったほうが勝ちなわけ」
「深謀遠慮っていうやつだね」
「そんなにすごくないけど、自分で作るとおいしいからっていうのもあるわね」
「わあ、手前味噌っていうやつだ」
「そうなの。その諺は自分で作ってみないと分からないものよ」
「作り方は誰から習ったの?」
「本で勉強」
「えっ、お母さんとかに習ったんじゃないの?」
「違うわ、あ、お豆が吹きこぼれないようによく見ててね。石けんの泡みたいなのがぶわーって出てくるからおタマですくってちょうだい」
「はーい。で、その続きは?」
「本当は、うちで最初にお味噌作ったのはあの人なのよ。お味噌作りの講習会に参加して、お味噌仕込んできたの。そしたらおいしくてびっくりしたの」
「ふーん、せんせいって何でもやるんだね」
「だからね、お味噌が作れるからって安心できないの。先に仕込んだほうが勝ちなのよ」
「闘いっていうのは、先陣争いのことなんだ」
「まあ、そうね」
もう、家中お豆を煮るいい匂いでいっぱいです。
「奥さん、梅干しも作るよね」
「あれは趣味」
「ゴマのお兄ちゃんが、すっごく気に入ってるよ」
「クッキーだってパイだって自分で焼くとすごくおいしいでしょ、それと同じね」
「でも、手作りする人のほうが少ないよね」
「みんな時間がないからじゃないかしら」
「でも、テレビ見てると思うな。だから時間はあるよ」
「じゃ、価値観の問題だわ。梅干し作りよりもテレビに価値を感じているのよ。人のことはとやかく言えないわ」
「ふーん。ポロ、きゅうに何でもかんでも手作りしたくなってきた」
「いいわね。猫の星に帰る前に、地球のいろいろな生活技術を身に付けていけばいいわ。向こうで本にすれば売れるかもね」
「よし、それでポロは大金持ちだ! まずは、やっぱりイモようかんからだな。次はおイモの栽培かな。追及してくとおイモの品種改良にまで進むな、きっと」
「そうね、好きなものからやればいいわ。じゃあ、お豆を煮てる間に味噌瓶の消毒よ」
「はーい!」
 それから、豆を挽いたり麹を混ぜ込んだりして、午後遅く、お味噌の仕込みが終わりました。でも食べられるのはずっと先になります。手作りするって楽しみだなあ。

おしまい

先頭 表紙

手作り味噌、今作ってる家庭は殆ど無いですよねぇ。昔の家は台所の床下にそう言うのをおく場所がありましたが、今は完全に収納場所ですものね。 / みた・そうや ( 2004-01-30 10:51 )
mokoさん、こすもすさん、読んでくれてアリガトございます。ポロは、お味噌の仕込みを覚えちゃいました。そんなに難しくありませんでした。みなさんのおうちでも、いろいろ手作りしていらっしゃるようですね。ポロてきにもいろいろ挑戦してみようと思います。 / ポロ ( 2004-01-30 08:27 )
お味噌まで自家製とはすごいですね。うちの義母も、梅干しやお漬け物は自家製で、子供たちはそれが大好きです。梅干し作りはいつかきちんと習っておかなきゃ、と思っていますが、毎年バタバタしている間にいつの間にか終わっています。土用干しで雨の心配をしないといけないのが一番大変そうですね。 / こすもす ( 2004-01-30 07:25 )
実家の母も、農家生まれなので、梅干やらっきょう、漬物はつけてます。お味噌も、母が実家にいる間は作ってたそうです。今は、仕込み味噌を注文して、樽に入れておいて、時間がたってから食べてるようです。他の家に比べて、母は和風料理が多かったので、ちょっとバカにしてた時期もありましたが、今になってみると、その生活技術に感心することが多いです。手作りの良さ、見直したいですね♪ / moko ( 2004-01-30 06:34 )

2004-01-31 クランベリーヒル便り第5話 楽しいピクニック その1

 春らしくなってきた光曜日。今日は楽しいピクニックです。子どもたちが目を覚ましたときには、もうせんせいとロケット号がお弁当を作っていました。

海「とむりん、今日のお弁当なに?」
せ「ロケット号特製スモーガスボードだよ」
ロ「ぴゆぴゆ!」
海「早くお昼にならないかなあ。ジュース忘れないでね、ぜったいだからね」
ロ「ぴゆぴゆ!」

 そこへ猫型作曲支援ロボットのキティが来て、できあがったお弁当や折畳みテーブルをクルマのカーリーのトランクに運び始めました。
 ぴーちゃんやぶうよんも起きてきました。
風「まだ夜明け前なのに、とむりんもロケット号も早いね」
ぴ「ぴーちゃん、ねむい。ふあ〜」
せ「ぴーたろう、かあちゃんを起こしてきて。朝ごはんだ」
ぴ「はーい」

 みんなが朝食を食べ始めた頃、奥さんが起きてきました。ロケット号が用意した朝食は、ガスパチョとポルトガル風のポテトパイでした。
奥「ふあ〜、みんなおはよう」
海「かあちゃん、遅いよ。とむりんとロケット号なんて日の出前からお弁当作ってたんだから」
奥「まあ、ありがとう。でも、みんな覚えておいて。全ての男は女の幸せのためにいるのよ」
せ「そ、そうだったのか〜!」
ロ「ぴゆぴゆ!」
せんせいとロケット号は、思わずお互いの顔を見ました。
みいやんがポテトパイをおかわりするころ、ロケット号が熱い紅茶をついでまわりました。
風「わ、この紅茶いい匂い!」
奥「クランベリーヒル産よ。栽培に成功した人がいるの」
せ「こりゃいい。地球産の高級茶に負けてないぞ」
ロ「ぴゆぴゆ」
 ロケット号はなんだか誇らしげでした。

せ「総員乗り込め。さあ、出発だ!」
 キティは先にトランクに乗り込んでいました。家族5人とロケット号は、小さなカーリーにぎゅうぎゅう詰めになって席に収まりました。
せ「ジョンたち。留守は任せたぞ」
ぴ「行ってくるよ〜!」
BJ「がーがー」
LJ「がーがー」
TJ「がーがー」
 玄関ポーチまで見送りに出てきた自走式掃除機のビッグジョンに後を頼んでカーリーは発進しました。

カーリー「おはようございます、せんせい。今日はメトセラ湖までお連れすればよろしいかしら?」
せ「ああ、頼むよ」
奥「あたし、このクルマきらいよ」
カ「まあ、そうおっしゃらないで」
奥「どうして、こんなに癇にさわる話し方するのかしらね」
せ「松戸博士のプログラムだよ」
奥「男って、ホントにしょうがないわね」
海「ねえ、空飛んで行こうよ。カーリー、今日は飛べる天気でしょ?」
カ「付近に雷雲はありません。飛行可能です」
せ「よし、飛行を許可するぞ」
カ「飛行許可受令。ディーンドライブ起動。シートベルトの着用をお薦めします」
カーリーがそういうと、車体がふわりと宙に浮かびました。高度を100メートルほどにとり、カーリーの航法装置は100キロほど離れたメトセラ湖に進路をとりました。
風「メトセラ湖って初めてだね。大きいの?」
せ「カーリー、メトセラ湖の情報を」
カ「了解。メトセラ湖は面積15平方キロメートル、湖面標高700メートルの周囲を森に囲まれた湖です。一昨年、クランベリーヒル第5次探検隊によって発見されました。今後移民が増えればリゾート開発されることも考えられます」
風「15平方キロか。オンディー沼よりぜんぜん大きいね」

つづく

先頭 表紙

2004-01-30 クランベリーヒル便り第5話 楽しいピクニック その2

 30分ほどでメトセラ湖上空に到着すると、カーリーはぐるりと湖を一周してから湖畔の東側の広々とした草地に着陸しました。周囲の森は、だんだんと緑になってきたという感じで、早春のムードいっぱいでした。
 トランクから降り立ったキティは、ロケット号と一緒に折畳みテーブルや椅子を並べてキャンピング・リビングを設営しました。子どもたちは、水際で裸足になって、まだ冷たい湖水の感触に歓声をあげていました。奥さんは、近くの鱗木の木陰にハンモックをかけて昼寝、せんせいとロケット号は早くも昼食の準備です。
 しかしキティはドップラーレーダーに何かの気配を感じて哨戒行動に出ました。
森の中を進んで行くと、はじめの数百メートルは何事もありませんでしたが大きなブナもどきの木陰で何かを見つけました。それは、冬に雪の森で出会ったのと同型の3体のメカ・モンスターでした。

メカ・モンスター「がちゃがちゃ」

 彼らがこちらにレーザー照準を合わせるよりも早く、キティのCDS(対コンピュータ攻撃デバイス)が火ならぬ電磁波を吐きました。キティの精密照準は、松戸博士のこだわりの成果です。一瞬にしてメカ・モンスターは沈黙、キティは、さらに森の奥へと進みました。1時間ほどの間に、ざっと30体ほどのメカモンスターを沈黙させました。こんなにモンスターがいては、せんせい一家が楽しい休日を過ごすにはメトセラ湖畔は向いていないかも知れません。キティが一度キャンプに戻ってそれを報告しようかと思ったところ、レーダーにさらに大きな反応がありました。レーダーに従って奥に進むと、そこには何かの建築物がありました。

 その頃、湖畔のキャンピング・リビングでは盛大なディナーが始まろうとしていました。ロケット号特製のスモーガスボードは、北欧のオープンサンドイッチで、いろいろと用意されたトッピングを思い思いに乗せて食べます。芝エビのワイン蒸し、スライスされたローストビーフ、トマトのミモザ風、アンディーブのサラダ、杏のシロップ漬け、塩漬け豚バラ肉の唐辛子あえなど、たくさんのお皿が並びましたが、その中でもロケット号お得意のニシンのマリネが絶品でした。
海「うまい!」
風「そりゃ、ロケット号特製だからね」
奥「本当、おいしいわ。一家に一台ロケット号ね」
せ「わ、わしも手伝ったんだぞ」
奥「あらそう。おいしいわよ」
ロ「ぴゆぴゆ」
風「あれ、ジャグは?」
せ「あ、いけない。忘れてきたかも知れないな」
風「ちょっと見てくるよ、もしなかったら、カーリーの燃料電池から水もらってくる」
奥「あれって、純水よね」
せ「大丈夫、今日は濃い紅茶をいれるから」
ロ「ぴゆぴゆ!」
ぴ「キティちゃんは、どこ?」
せ「そのへんにいるんじゃないか?」
奥「役に立たない猫ね」
家族全員、それはそれは大変な食欲で、ロケット号の用意した昼食は、ほとんど全部なくなりました。
海「もう食べられない」
風「食った食った」
奥「あ〜、シアワセ」
ロ「ぴゆぴゆ、ぴゆぴゆ!」
ロケット号は胸を張って自慢げでした。

つづく

先頭 表紙

2004-01-29 クランベリーヒル便り第5話 楽しいピクニック その3

 キティが見つけた建物は、急ごしらえのプレハブ風で、うす緑色の壁には看板がかけられていました。

 従業員募集 メトセラ製作所
 どなたにもできる簡単な作業です。委細面談。高給優遇。社保完。
 作業内容:機械部品のライン組立

 キティが窓から覗くと、スライムやゴブリンたちがラインで何かの機械を組み立てていました。さらに先の工程へ進むと、それが何であるか分かりました。メカ・モンスターでした。キティは、自分が今、何をすべきなのか分かっていました。メトセラ製作所の組立工場から十分離れると、キティは対コンピュータ攻撃システムであるCDSを粗照準モードに切り替えて、フル出力で照射しました。無音のうちに攻撃は終わりましたが、その成果は明らかでした。制御コンピュータが誤作動してラインがでたらめに動き始めると、危険を感じたスライムやゴブリンたちがパニックを起こして逃げ始めたからです。まさに蜘蛛の子を散らすとはこのことでしょう。彼らは森の奥めざして放射状に逃げていきました。
 もし、キティが満足するということを知っていたならば、その表情はきっと満足げであったことでしょう。
 キティは哨戒行動を終えて、湖畔のキャンピングリビングに戻ることにしました。

 春のクランベリーヒルは天気が変わりやすいのでした。昼過ぎから、雲行きが怪しくなってきました。湖畔ではすでにキャンプの撤収をすませて行方不明のキティを探していました。
「キティ!」
「キティ!」
「キティちゃん、どこ〜!」
 キティの極指向性超高感度集音センサーは、遠くからでも家族の呼び声をとらえました。

 しゅらしゅらきゅらきゅらしゅらしゅらきゅらきゅら

 キティは全速力で湖畔を目指しました。

 キティが湖畔に戻ると、みんなブーブー文句を言っていました。
奥「あんた、どこに行ってたのよ。勝手なことしちゃダメよ」
キティ「アンタ、ドコニ行ッテタノヨ。勝手ナコトシチャだめヨ」
奥「うるさいわね、ふざけないで」
キティ「ウルサイワネ、フザケナイデ」
キティは、サンプリングマシンとしての機能を果たしただけでしたが、それが奥さんの逆鱗に触れて、奥さんはキティをゲンコツで叩きました。

 ボカン!
 きゅるるるるひゅーん

 イリジウム・チタン合金のボディはびくともしませんでしたが、ゲンコツのショックでキティのCPUが停止してしまいました。
ぴ「あ、キティちゃんのことこわしちゃった」

 カーリーに乗り込むと、案の定雨が降り始めました。
風「ぎりぎりセーフだね」
せ「ま、午前中晴れたからいいかな」
奥「もう、あんな役に立たない猫は連れてくるのよしましょ」
せ「何かしていてくれたのかも知れないよ」
奥「なにを?」
せ「分かんないけど」
奥「何もしてないに決まってるわ」

つづく

先頭 表紙

2004-01-28 クランベリーヒル便り第5話 楽しいピクニック その4

 その日の夜、リビングにはジョン3兄弟、再起動して動けるようになったキティ、ロケット号が集まりました。
 キティが光カプラで端末にログインすると、リビングの大型モニタに森の風景が映し出されました。早春の美しい森です。しかし、森を進んで行くとメカ・モンスターたちが現れます。キティのCDSで彼らは次々と沈黙していきました。クライマックスはメトセラ製作所のライン映像でした。スライムやゴブリンたちがせっせと働いています。
「ぴゆぴゆ」
 ロケット号はライン奥にいる人型異星人を見逃しませんでした。初めて見る異星人でしたが、明らかにクランベリーヒルのモンスターたちとは違っていました。
「がーがー」
 リトルジョンも気づきました。どうやら、これは異星人たちが労働力を求めてクランベリーヒルに建設した工場のようでした。
 映像では工場がズームアウトしていきます。キティが工場全体を攻撃するために後退しているようでした。やがてCDSのフル出力攻撃があったことがモニタ右上のキティの内部情報表示で分かりました。ラインは停止し、スライムたちがパニックを起こしていることが工場の窓からうかがえました。モンスターたちが工場から逃げ出すのを見て、2人の異星人も慌てふためいているようでした。
「ぴゆぴゆ!」
「がーがー!」
 ロケット号やジョンたちは、キティを褒めたたえました。
 キティの映像は、やがて湖畔に向かいます。しかし、湖畔に到着してみると、そこに映し出されたのは迫り来る奥さんのゲンコツでした。衝撃の瞬間、映像は揺れ、その後スノーノイズだけになりました。
「ぴ、ぴゆ」
「が、がー」
 その場にいた全員が固まりました。

 やがてキティがログアウトすると深夜の集会は終わり、猿雅荘に本当の夜がやってきました。

おしまい

先頭 表紙

ミタさん、ちゃんと後日談があります。待っててね。 / ポロ ( 2004-01-30 19:34 )
キティちゃん、ご苦労様でした。でも、メトセラ製作所…気になるなぁ。 / みた・そうや ( 2004-01-30 10:46 )

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