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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-01-21 クランベリーヒルの最新画像
2004-01-20 クランベリーヒルだより第2話 ロケットの夏 その1
2004-01-19 クランベリーヒルだより第2話 ロケットの夏 その2
2004-01-18 クランベリーヒルだより第2話 ロケットの夏 その3
2004-01-17 クランベリーヒルだより第2話 ロケットの夏 その4
2004-01-16 クランベリーヒル便り第1話 冬の始まり その1
2004-01-15 クランベリーヒル便り第1話 冬の始まり その2
2004-01-14 クランベリーヒル便り第1話 冬の始まり その3
2003-12-25 ポロのクリスマス その1
2003-12-24 ポロのクリスマス その2


2004-01-21 クランベリーヒルの最新画像

これは、おちゃめさんが送ってくれたクランベリーヒルの写真です。向こうもちょうど冬だったということです。ポロも行きたかったなあ。

ポロ!
おちゃめは、松戸博士のりんご丸でクランベリーヒルに行ってきました。たった6時間の滞在でしたが、猿雅荘が本当にあったのでびっくりしました。オンディー沼も見てきました。三河屋さんが着陸したタバコの野原は一面の雪で、その景色はカレンダーの写真を見ているようでした。添付した写真は、オンディー沼のちかくの樹氷です。マイクロソフトのアイスクリームも食べてきました。

おちゃめ


先頭 表紙

抜けるような青空が綺麗・・・真下からのアングル、う〜ん、さすがはおちゃめさん・・・ / みた・そうや ( 2004-01-22 18:16 )
すごい!すごい!!見入っちゃう! / 甘夏 ( 2004-01-21 12:42 )
すてき!溜息が出ちゃいます。 / こすもす ( 2004-01-21 11:45 )

2004-01-20 クランベリーヒルだより第2話 ロケットの夏 その1

 クリスマスも過ぎたある朝、突風のような風が雪野原に吹きわたりました。真っ白だったクランベリーヒルの丘の緩やかな斜面に、みるみるタバコ畑が現れ、白く雪化粧した常緑樹たちは緑色をとり戻して行きました。雪は溶けてせせらぎとなって流れ、まるで夏のように暖かい季節がやってきたかのようでした。せっかく作ったかまくらの“ニョロニョロ荘”もとけて流れてしまいました。地面のアネロイド気圧計だけが、その痕跡をとどめていました。
 ブラッドベリ・エアリサーチ製の強力なエンジンは、そのうるさいことを除けば、大きなデリバリーシップを一面のタバコの草原に激突させることなく、そっと横たえました。

「ちわーす! 三河屋で〜っす! ご注文の品をお届けにあがりやした〜」

 三河屋さんを出迎えたのはアヒル型スポンジのロケット号でした。
「ぴゆぴゆ!」
「あ、ロケットの兄さん、ご注文の品が揃いました。でもですねえ、丹波の黒豆が手に入らなくて、代わりに白鳥座61番星の第4惑星産なんですよ〜、これで勘弁してください。それから、チョロギもカウスアウストラリス産の別の植物の根っこなんですけどね、その星の別の木の実で赤く染めるとそっくりなんで、この近くでは皆さん、これをお使いです。数の子も北海道産ということだったんですけど、なかなか地球のは手に入りにくくて、牡牛座のサカナがおいしくて有名な星ので、ま、ニシンじゃないんですけど、ホント、そっくりなんですよ。地球だって、シシャモなんて言っておきながらシシャモ売ってないんですから、そんなようなもんです」
「ぴゆぴゆ!」
「あ、はいはい、能書きはいいっすね。じゃ、この冷凍パックとチルドパックに全部入ってますから、もし、不都合がありましたらアンシブルでご連絡ください。ありゃーたした!」

 ごわー! どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど〜!

 地響きとともに突風が、再び猿雅荘と近所の雑木林を襲いました。三河屋のデリバリーシップのノストロモ号は雪をとかし、枯れたタバコの野原を焦がしながら空高く消えていきました。

風「うわー、たまんないなあ。そこらじゅうタバコの煙でいっぱいだよ」
ぴ「たばこくさいよ〜」
海「ニョロニョロ荘もとけちゃったよ!」
風「また作ればいいよ」
雪遊びに出ていた子どもたちが外から帰ってきました。
ロ「ぴゆぴゆ!」
海「あ、おせちの材料が届いたんだね」
ロ「ぴゆぴゆ!」

 ロケット号は、念じるだけで物を動かすことができます。食材が入った配達用保冷パックが、ふわふわと浮かんでロケット号の後からお行儀よくついていきました。

つづく

先頭 表紙

2004-01-19 クランベリーヒルだより第2話 ロケットの夏 その2

 その数日前のことでした。深夜、家族が寝静まると、ロケット号はキティや仲良しのジョン3兄弟や冷蔵庫のトビーと一緒に、アンシブル・ネットワークの端末の前に集まって、公共図書館からお節料理のレシピを取り寄せては勉強会を開いていたのでした。たくさんあるお節料理の本の中からロケット号が選んだのは「伝統のおせち」という格式高そうなレシピ集でした。
 正式なお節料理の基本はお重です。4段重ねが正式でした。さっそく食器庫をさがすと、3段重ねのお重が見つかりました。正式なおせち料理には、どうしても4段目が必要です。すぐにジョン3兄弟の長男であるビッグジョンが、倉庫から草加せんべいの四角いブリキ缶を持ってきました。漆塗りのお重を重ねると、なんとぴったりでした。
「ぴゆぴゆ」
「がーがー」
「ぴゆぴゆ」
「がーがー」
 話し合いの結果、明日、ジョン3兄弟がドワーフの森に出かけて「漆もどき」の木から黒い樹液を集めてくることになりました。

“伝統のおせち”には、いろいろな料理が出てきます。
 壱の重。
 梅花羹、田作り、伊達巻、栗きんとん、黒豆、紅白かまぼこ、初梅、数の子、春霞。
 弐の重は焼きものです。
 サワラの西京焼き、はじかみ、菊花蕪、伊勢エビ、ブリの照焼き、松葉銀杏、鯛の黄金焼き、松笠烏賊。
 参の重は煮ものです。
 松竹さや、タケノコの含め煮、松笠とこぶし、鶴の子芋、手毬麩、エビの炒り煮、梅花人参、昆布巻き、亀甲椎茸、芽クワイの含め煮。
 与の重は酢のものです。
 蓮根の奉書巻き、鯖生鮨、紅白なます、わかさぎの南蛮漬け、菊花タコ、錦紙巻き。

 レシピといっしょに添えられた料理の写真は、とても美しくファンタスティックでした。ロケット号もキティも見たことのない食材や料理に、夜が更けるのも忘れて見入ってしまうのでした。

 翌日、自走式掃除機のビッグジョンがウルシもどきの木から、真っ黒な樹液を集めて来ました。夜になるとジョン3兄弟が集まって、草加せんべいのブリキ缶を塗りました。塗っては乾かし、塗っては乾かし、とうとうブリキ缶は漆器のように美しい艶の黒い器になりました。
「がーがー」
「がーがー」
「がーがー」
 兄弟3台がそろって、同じ感想を漏らしました。

 翌朝、ジョン3兄弟はロケット号にブリキ缶のお重を見せました。
「ぴゆぴゆ?」
 ロケット号は、何か変だと言いました。リトルジョンが気づきました。金の蒔絵が足りないのでした。すぐに本物のお重と比べてみると、そこには確かに金の扇の蒔絵があります。蒔絵の技法など誰も知らないので、キティが呼ばれました。キティは、すぐにお重の蒔絵をスキャンすると、立体プリンタでブリキ缶にプリントしました。
ロケット号「ぴゆぴゆ!」
リトルジョン「がーがー!」
(キティ翻訳)「すごいできばえ!」
 あとは、食材を注文して料理を作るばかりです。その夜、アンシブル・ネットを通じて三河屋デリバリーサービスに食材が発注されたのでした。

つづく

先頭 表紙

さすがミタさん、蘊蓄大まおう! ポロは何にも知らないので、実はテキトーに書いてます。ゴメなさい。 / ポロ ( 2004-01-18 22:07 )
おせち料理、元々年6回の節分に神前に供えた物で、庶民がお重を食べるようになったのは江戸時代からだそうですね。 / みた・そうや ( 2004-01-17 20:57 )

2004-01-18 クランベリーヒルだより第2話 ロケットの夏 その3

 食材が届いたのは12月29日でした。ロケット号が組んだ調理スケジュールが、キッチンの壁に貼りだされました。調理時間のかかるもの、保存のきくものから順に調理が始まります。昼から降り始めた雪が、ロケットの夏を消し去るまでに時間はかかりませんでした。夕方になると、子どもたちが第2ニョロニョロ荘の建設にとりかかったのが窓の外に見えました。
 夕方になると、ロケット号はおせち料理にばかりかまってはいられなくなります。今日の夕食は温かい料理が中心です。今日は子牛のすね肉を柔らかく煮込んだオッソブーコをメインに、お得意の焼き立てグルジアパンとオゼイユのドレッシングで食べるサラダです。きょうの炊事当番は次男坊のみいやん(海)でしたが、第2ニョロニョロ荘の再建に夢中になっていてすっかり忘れていました。
 ロケット号の館内放送が響きわたりました。
「ぴゆぴゆ!」
 雪だらけになった子どもたちが家の中になだれ込んできます。せんせいや奥さんもダイニングに集合します。みいやんは、当番だったことを思いだしてロケット号に平あやまりして、食器や料理を運びました。
と「さあ、みんな食べよう」
みんな「いただきまーす!」
風「わ、おいしいよロケット号!」
ロ「ぴゆぴゆ!」
と「いや、実にうまいぞ」
ロ「ぴゆぴゆ!」
 ロケット号は胸をはって得意げでした。
か「キティ、メールは来てない?」
キティ「きてぃ、めーるハ キテナイ?」
 キティは作曲支援サンプリングマシンなので、自分に向かって発せられた音や言葉は何でも録音して再生してしまいます。キティの言葉は、胸のディスプレイを読むしかありません。
キティ表示「アンシブル・ネットにログインします」
 ダイニングの大型ディスプレイに着信メールが表示されました。
風「あ、三河屋さんからだ!」
か「開いてみて」
キティ表示「ラジャー」

 拝啓 野村ロケット号様
 先日配達いたしました品物に配達もれがありましたので、再度お届けいたします。
 配達内容 ユリ根(地球産)
 三河屋デリバリーサービス配送本部


風「すごい、地球産のユリ根だって!」
か「のっぺ用ね。必要だわ」
 すると、いきなり例の突風が吹き始めました。轟音と光が周囲に満ち、三河屋のノストロモ号は、すでに着陸態勢に入っていました。
海「あ、第2ニョロニョロ荘が!」
 ぴーちゃんは、すぐに窓際に走っていきました。500メートルほど先のタバコの野原にノストロモ号は今、まさに着陸しようとしていました。広い範囲にわたって雪は溶け、また、このあたり一帯にいっときの夏が訪れました。
ぴ「あ〜あ、またニョロニョロ荘が半分なくなっちゃった」

つづく

先頭 表紙

2004-01-17 クランベリーヒルだより第2話 ロケットの夏 その4

「ちわーす! 三河屋で〜っす! ご注文の品をお届けにあがりやした〜」
「ぴゆぴゆ!ぴゆぴゆ!」
 玄関先でロケット号が三河屋の是輔(これすけ)さんに何やら文句を言ってるようでした。
「いやあ、ロケットの兄さん、そんなに喜んでもらえると2度も来た甲斐があるってもんです」
「ぴゆぴゆ!ぴゆぴゆ!」
「いやあ、そんなにお礼言われちゃうと照れちゃうなあ。じゃあ、また。ありゃーたーした」
「ぴ、ぴゆぴゆ、ぴゆぴゆ!」
 2度もかまくらを溶かされてしまったことへ対する抗議は全く通じないまま、三河屋の是輔さんは、さっさと帰ってしまいました。

 ごわー! どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど〜!

風「また作るからいいよ、ロケット号」
ロ「ぴゆ〜」
耳をつんざく轟音と強烈な光を残して、全長70メートルを超えるノストロモ号は夜空へと吸い込まれて行きました。猿雅荘の周囲の気温は30度を超え、松戸博士の設計した自動空調システムが冷房モードに運転を切り替えました。テーブルの上で湯気を立てている料理が、一瞬にして季節はずれになりました。
と「ビシ・ソワーズがお似合いかな」
 せんせいは、冷たいスープの名前を言いました。
 とてもよく気の利くロケット号が冷たいクランベリーのジュースを全員分用意しました。
風「こういうのって、けっこう好きだな」
海「みいやんも!」
と「たしかに、日常ではない感じだな」
ぴ「あめがふってるよ」
と「そうか。またそのうち雪に戻るよ」
 キティがヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲「冬」の第2楽章を流し始めました。それは雨の降る冬の夜、暖かく平和な室内を描写した音楽なのでした。
 食事が終わると、当番のみいやんとロケット号はキッチンで仲良く食器洗いを始めました。リビングわきの格納庫には、ヴィヴァルディの音楽にうっとりと聴き入る掃除機のジョン3兄弟がいました。
 それからほどなく、雨は雪に変わりました。

おしまい

先頭 表紙

shinさん、読んでくれてアリガトございます。ポロもクランベリーヒルに住んでみたいと思います。松戸博士のところに居候させてくれないものでしょか。それから、ロケット号の言葉はキティがほんやくしてくれます。でも、たしかにロケリンガルがあると便利かも。 / ポロ ( 2004-01-21 10:01 )
まだ地球に居て小さかった頃、1度だけ母方の実家で小さなカマクラを作ったことがあります。凧揚げや羽根突きもやったりして、最も正月らしい正月を過ごせた時期でした。今はもう、御節料理も作りません。自分もクランベリーヒルで暮らしたいです〜 う〜ん、ロケット号は松戸博士にロケリンガルを作ってもらうと便利な気がするけど、でも、やっぱり無いほうがロケット号っぽいかな・・・ / shin ( 2004-01-19 00:59 )

2004-01-16 クランベリーヒル便り第1話 冬の始まり その1

 せんせいのおうちのカップボードには、アヒル型スポンジのロケット号が住んでいます。これは、ロケット号からポロが直接聞いた驚きに満ちた物語をまとめたものです。ロケット号が語ってくれたお話は、どれもみんな、どうしてポロがここにいなかったんだろうと思うものばかりでした。説明が足りなくて分かりにくいところもあると思いますが、いくつかのお話を読み進むうちにきっと分かってもらえることでしょう。


クランベリーヒル便り 第1話 冬の始まり その1

 クランベリーヒルにも冬がやって来ました。森から抜けてすぐの見晴らしのよい猿雅荘(せんせいのおうちの名前です)のまわりににも雪がチラつきはじめました。夕方になると、3人の子どもたちは家に入って、リビングの大窓から遠くに見えるタバコ畑がだんだん白く染まっていくのを飽きずに眺めていました。
海「オンディー沼にも降ってるのかなあ」
風「あたり前じゃないか」
海「でも沼には積もらないよねえ」
風「いっぱい降れば積もるよ」
ぴ「あした、みにいこ!」
風「ダメだよ。雪の中じゃ危ないよ」
その時、キッチンからロケット号の呼ぶ声がしました。
ロ「ぴゆぴゆ」
ぴ「あ、ぴーちゃん当番だった!」
 一番小さなぴーちゃんがキッチンへ走っていきました。そうしている間にも、雪はどんどん降り積もりました。食事を終えて、みんながリビングで思い思いに本を読んだり、漢字の練習をしたりしている間にも雪は静かに静かに周りの景色を変えていったのでした。

 次の朝は、前の日の天気がウソのように晴れ上がりました。真っ白に積もった雪に日の光が反射してキラキラ光っています。
 朝食を終えると、とむりんせんせいは一人張り切っていました。
と「さあ、みんな外へ出てこい! スノーボートを出すぞ」
 子どもたちは、みんなソリ遊びが大好きでした。料理用のバットを大きくしただけのようなプラスチック製のソリは、それぞれ名前がつけられていました。一番小さなぴーちゃんの赤いソリは“ケプラー1号”、ぶうよんとみいやんのソリは、それぞれ“ガリレオ1号”“ガリレオ2号”と名づけられて、太いフェルトペンで名前が大きく書かれていました。

つづく

先頭 表紙

2004-01-15 クランベリーヒル便り第1話 冬の始まり その2

ぴ「どけっと号、はやく、はやく!」
 ぴーちゃんは、スポンジのアヒルのロケット号の力でソリを走らせることにしました。
ロ「ぴゆぴゆ!」
 ロケット号が念じると、ケプラー1号は雪を蹴散らして走り始めました。
ケプラー1号「しゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅ!」
 ぶうよんも負けじと猫型ロボットのキティを呼びました。
風「キティ、ガリレオ1号を引っ張ってぴーたろうを追うんだ」
キティ「きてぃ、がりれお1ゴウヲ ヒッパッテ ピータロウヲ オウンダ」
 キティの胸のディスプレイには「ラジャー」の文字がありました。
 キティのキャタピラーが雪をかみ、ガリレオ1号も走り始めました。
ガリレオ1号「シャラシャラキュラキュラ」
海「ふたりともずるいよずるいよ。とむりん、なんとかしてよ」
 みいやんは、ロケット号もキティもとられてしまって泣きべそをかきそうでした。
と「あっはっは、先を越されたな。よし、待っていろ」
 そう言うと、とむりんせんせいは猿雅荘の第4格納庫から背中に背負うエンジン式扇風機を持ってきました。松戸博士が作ったスキーの補助動力装置です。せんせいは、それを背中に背負ってハーネスで身体に固定すると、みいやんを膝の間にかかえて小さなガリレオ2号に無理やり座りました。
と「さあ行くぞ、しっかりとつかまってろよ!」
 せんせいはエンジンのスタータのヒモを思いっきり引きました。
ガリレオ2号「どばばばばばばばばばばばばばば!!」
 ガリレオ2号は、耳をつんざく爆音とともに猛烈にダッシュしました。
海「わあ、とむりん、すごい音だね!」
と「マフラーが壊れているらしい。こりゃうるさくてたまらん! あとで松戸博士に修理してもらおう」
ガリレオ2号「ずばばばばばばばばばばばばばば!!」

 やがて先を行くガリレオ1号が視界に入ってきました。
ガリレオ1号「シャラシャラキュラキュラシャラシャラキュラキュラ」
 爆音に驚いたぶうよんが振り返りました。キティがしっぽのところのフックにロープをかけてスノーボートを牽引しています。犬ぞりならぬ猫ぞりです。
ガリレオ2号「だばばばばばばばばばばばばばば!!」
 あっと言う間に、ガリレオ2号は1号を追い抜いてしまいました。追い抜きざまに、ぶうよんが何かを言ったようでしたが、せんせいにもみいやんにも爆音のすさまじさに何も聞こえませんでした。
 オンディー沼の近くで、とうとうぴーちゃんとロケット号の乗ったケプラー1号をとらえました。
ケプラー1号「しゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅ!」
ガリレオ2号「ざばばばばばばばばばばばばばば!!」
海「やったー! とむりん、これで1番だね」
ガリレオ2号「ごばばばば、ごばっ、ごばばば、ごばっ、ごばっ!」
海「あれ、なんだか変だよ」
と「燃料切れかも知れないな」
ガリレオ2号「ぞば、ぞぞば、ぷすぷす、ぞば、ぞぞば、ぷすぷす」
ケプラー1号「しゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅ!」
ぴ「ばいばーい!」
海「あ、ぴーちゃんに抜かれちゃったよ、とむりん!」
と「ああ、残念だけど、もうすぐ燃料がなくなる」
ガリレオ2号「ぶば、ぷす、ぶばぶば、ぷす、ぷす!」
ガリレオ1号「シャラシャラキュラキュラ」
風「おさき〜!」
海「わ、ぶうよんにも抜かれた!」
ガリレオ2号「ぷすん」
と「止まったな」
 結局、せんせいがボートを降りて歩いてひき始めました。積もったばかりの新雪は柔らかく、せんせいは足をとられて何回もころんでしまいました。そのたびに、みいやんの楽しそうな笑い声が響きました。

つづく

先頭 表紙

2004-01-14 クランベリーヒル便り第1話 冬の始まり その3

 せんせいの人力そりとなったガリレオ2号がオンディー沼のほとりにつくと、沼は静かな水面をたたえていました。沼の周囲をおおうクランベリーの茂みも全部雪に埋まっています。まるで昔の水墨画を見るような不思議な景色でした。
ぴ「おそいよー!」
風「とむりん、おつかれ!」
と「いい運動になった、ふう」
海「しずかだね」
風「なんだか、すごくいい時間の中にいるような気がする」
ロ「ぴゆぴゆ!」
キティ「ピユピユ!」
 やっとひらがなが読めるようになったぴーちゃんが、すぐにキティの胸のディスプレイのロケット号語訳を読みました。
ぴ「い・い・お・も・い・でって書いてあるよ」
海「うん、思い出になるよ、この景色」

 しばらくして猿雅荘に戻ることになりました。
 帰りは両方のガリレオ号をキティが引いていくことになりました。さすがにスピードが落ちて、身軽なケプラー1号はどんどん先へ行ってしまいました。

 2台のガリレオ号が猿雅荘に到着すると、ぴーちゃんとロケット号が庭先にかまくらを作っていました。ロケット号が念力で屋根の上の雪を上手に積み上げていきます。それをぴーちゃんがぺたぺたと固めていました。それを見たぶうよんとみいやんが、さっそく雪用スコップを持ってきて穴を掘りました。小一時間で、たちまち立派なかまくらができあがりました。
 せんせいは小さなテーブルと、ホワイトガソリンのランタンと小さなストーブを持ってきました。ぶうよんは雪壁を掘って小さな祭壇を作りました。そして、小型のアネロイド気圧計を置きました。
風「ご本尊」
と「それって、ムーミンに出てくるニョロニョロの話だっけ?」
風「そうだよ」
海「じゃ、このかまくらの名前はニョロニョロ荘にしよう!」
風「よし、決まり!」
 そこにロケット号が大きなお鍋と一緒に入ってきました。ぴーちゃんはお椀を持っています。それは、熱々のおしるこでした。もちろんロケット号特製のお新香つき。
 せんせいがお椀によそいわけていると、かあちゃんもやってきました。
ぴ「あ、かあちゃん、やっときた!」
か「まあ、あんたたち好きねえ、こういうの」
風「だって、面白いじゃん」
海「かあちゃん、かあちゃん、オンディー沼とってもきれいだったんだよ」
か「そう。よかったわね」
ぴ「これニョロニョロ荘っていうんだよ」
 かあちゃんは、祭壇の気圧計を見つけて笑いました。
と「さあ、食べよう」
 みんなからおいしい、おいしいという声があがると、ロケット号はひとりひとりの前に行って「ぴゆぴゆ」「ぴゆぴゆ」と言って回りました。

 それからみんな、ホワイトガソリンが全部燃え尽きるまでかまくらでワイワイと過ごしました。クランベリーヒルの冬は始まったばかりです。


おしまい

先頭 表紙

mokoさん、コメントをアリガトございました。今、第2話を書いています。もう少し待ってくださいね〜。クランベリーヒルに行った気になるようなお話にします! / ポロ ( 2004-01-15 18:28 )
今日は台風並みに発達した低気圧の影響で、大雪の所も多いでしょうね!私も、初めて‘大雪’を目にした時は、山の風景を見て‘水墨画’を思い出しました♪雪のある暮らしは大変ですが、楽しみもありますよね。‘かまくら’や‘そり’など、うちの娘も経験したことがないので、一度ぜひ雪を見に連れて行きたいです〜クランベリーヒル、行ってみたいなぁ・・・ / moko ( 2004-01-14 20:55 )

2003-12-25 ポロのクリスマス その1

「ねえ、せんせいのところにはサンタさんが来るんでしょ!」
「来るよ」
「今年も来る?」
「来るかも知れないし、来ないかも知れない」
「来るよね?」
「さあ、盛明(もりあき)おじいちゃんがサンタクロースに恩を売ったのは40年以上も前のことだからなあ。そろそろ恩の著作権も切れるんじゃないか?」
「なに言ってるの、せんせい。恩の著作権はずっと続くんだよ。だって、せんせいの子孫のところにもサンタクロースは来ることになってるんだから」
「ふーん、そうか」
「わ、せんせいってサンタさん、どうでもいいの?」
「うん」
「あ゛〜! つまんないよ〜。そんなのつまんないよ〜!」
「ねえねえ、ぴーちゃんはサンタさん、来て欲しいよね」
「え〜、あたしどうでもいいわ」
「わ〜! ポロはこどくだ〜、ぐれてやるぐれてやる!」
「ポロちゃん、まあ、そう言わないで。はい、イモようかん」
「わ、奥さんはいい人だ〜。ポロのたった一人の理解者だ〜」
「喜んでもらえて嬉しいわ。でもね、ちょっと静かにしてね」
「は、は〜ィ。ゴメなさい」

 すっかり意気消沈したポロは、サンタクロースを生け捕りにしてみんなに会わせることにしました。ポロは、シュデンガンガー商会にサンタクロース生け捕りキットを買いに行くことにしました。
 まず、神田の地図をネットで検索してプリントアウトしました。これで迷わないぞ。夜になるのを待って、ポロは国道で信号待ちしているトラックの荷台に飛び乗りました。さっそく、せんせいから無断で借りてきた迷彩模様の小型マグライトで地図を確認します。神田はどこだ? あ、あったあった。へえ、加賀藩前田家の上屋敷はここか。本妙寺を過ぎて、本郷金助町を通って神田明神だな。で、今走ってる国道17号はどれかな。あれ、中仙道しかないな。変だなあ。あ゛〜〜! これ江戸時代の地図じゃないか〜。どうすりゃいいんだポロ! しょうがない。これでもないよりはマシ。あとはポロの野生の勘でいくしかないな。ポロは一抹の不安を胸に通りすぎる夜の景色を眺めていました。

つづく

先頭 表紙

2003-12-24 ポロのクリスマス その2

 1時間くらいで、なんだか見覚えのあるところに出たので、ポロは一度トラックを降りることにしました。湯島聖堂でした。すごいぜ、冴えわたるポロの勘! あ、神田明神もある。たしか、せんせいが子どものころに新聞紙でできた袋に入ったゆで立ての塩エンドウ豆をほおばって「幸せだなあ」って思ったところだったな。塩エンドウで幸せになっちゃうなんてせんせいは安上がりだなあ。その点、ポロはイモようかんだからちょっと高級だな。せんせいに勝ったな。まいったか、せんせい。あ、お茶の水の駅だ。夜遅いのに人がいっぱいいるなあ。お茶の水博士っていう人もいたっけなあ。
 そうこうしているうちに、シュデンガンガー商会に到着しました。真鍮製の金具のついた古びた木のドアから、白熱電球のほのかな明かりがもれています。
「ごめんくださ〜い!」
「あ、これはポロ様。いらっしゃいませ」
「ポ、ポロさまだって! うれしいなあ。ポロさまだもんなあ」
「はい、お客様はみな大切な方でございます。今日はどのようなご用でしょうか」
「あ、あのね、サンタクロース生け捕りキットが欲しいの」
「やや。サンタクロース生け捕りキットは季節モノでございまして、2日前に全て売りきれてしまいました」
「えー、やだよやだよ。欲しいよ〜」
「ここだけの話でございますが、サンタクロースはなかなか賢い方でして、生け捕りキットでは捕まりません。理論的には生け捕り可能なのですが、毎年、その上を行くのがあの方なのでございます」
「ふーん。じゃ、どうすれば捕まえられるの?」
「はあ。私の兄ならば、何かアイディアもあると思うのですが」
「松戸博士のこと?」
「さようでございます。しかし、兄は今、クランベリーヒルにおりまして、なかなか連絡が取れません」
「クランベリーヒルってどこ?。ポロ、トラック乗り継いでどこへでも行っちゃうから」
「それがクリューガー60という恒星系をめぐる惑星上にある町で、トラックでは、ちょっと無理かと」
「どうやれば、行けるの?」
「どうしてもとおっしゃるなら、物質転送機で行けなくはありませんが、宇宙嵐があると転送途中で遭難することがあります」
「嵐がなければいいんでしょ。宇宙天気予報はどう言ってるの?」
「はあ、しばらく快晴かと」
「じゃ、ポロ行くよ。クランベリーヒル」

つづく

先頭 表紙


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