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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2004-01-15 クランベリーヒル便り第1話 冬の始まり その2
2004-01-14 クランベリーヒル便り第1話 冬の始まり その3
2003-12-25 ポロのクリスマス その1
2003-12-24 ポロのクリスマス その2
2003-12-23 ポロのクリスマス その3
2003-12-22 ポロのクリスマス その4
2003-12-21 ポロのクリスマス その5
2003-12-20 ポロのクリスマス その6
2003-12-19 ポロのクリスマス その7
2003-12-18 ポロのクリスマス その8


2004-01-15 クランベリーヒル便り第1話 冬の始まり その2

ぴ「どけっと号、はやく、はやく!」
 ぴーちゃんは、スポンジのアヒルのロケット号の力でソリを走らせることにしました。
ロ「ぴゆぴゆ!」
 ロケット号が念じると、ケプラー1号は雪を蹴散らして走り始めました。
ケプラー1号「しゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅ!」
 ぶうよんも負けじと猫型ロボットのキティを呼びました。
風「キティ、ガリレオ1号を引っ張ってぴーたろうを追うんだ」
キティ「きてぃ、がりれお1ゴウヲ ヒッパッテ ピータロウヲ オウンダ」
 キティの胸のディスプレイには「ラジャー」の文字がありました。
 キティのキャタピラーが雪をかみ、ガリレオ1号も走り始めました。
ガリレオ1号「シャラシャラキュラキュラ」
海「ふたりともずるいよずるいよ。とむりん、なんとかしてよ」
 みいやんは、ロケット号もキティもとられてしまって泣きべそをかきそうでした。
と「あっはっは、先を越されたな。よし、待っていろ」
 そう言うと、とむりんせんせいは猿雅荘の第4格納庫から背中に背負うエンジン式扇風機を持ってきました。松戸博士が作ったスキーの補助動力装置です。せんせいは、それを背中に背負ってハーネスで身体に固定すると、みいやんを膝の間にかかえて小さなガリレオ2号に無理やり座りました。
と「さあ行くぞ、しっかりとつかまってろよ!」
 せんせいはエンジンのスタータのヒモを思いっきり引きました。
ガリレオ2号「どばばばばばばばばばばばばばば!!」
 ガリレオ2号は、耳をつんざく爆音とともに猛烈にダッシュしました。
海「わあ、とむりん、すごい音だね!」
と「マフラーが壊れているらしい。こりゃうるさくてたまらん! あとで松戸博士に修理してもらおう」
ガリレオ2号「ずばばばばばばばばばばばばばば!!」

 やがて先を行くガリレオ1号が視界に入ってきました。
ガリレオ1号「シャラシャラキュラキュラシャラシャラキュラキュラ」
 爆音に驚いたぶうよんが振り返りました。キティがしっぽのところのフックにロープをかけてスノーボートを牽引しています。犬ぞりならぬ猫ぞりです。
ガリレオ2号「だばばばばばばばばばばばばばば!!」
 あっと言う間に、ガリレオ2号は1号を追い抜いてしまいました。追い抜きざまに、ぶうよんが何かを言ったようでしたが、せんせいにもみいやんにも爆音のすさまじさに何も聞こえませんでした。
 オンディー沼の近くで、とうとうぴーちゃんとロケット号の乗ったケプラー1号をとらえました。
ケプラー1号「しゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅ!」
ガリレオ2号「ざばばばばばばばばばばばばばば!!」
海「やったー! とむりん、これで1番だね」
ガリレオ2号「ごばばばば、ごばっ、ごばばば、ごばっ、ごばっ!」
海「あれ、なんだか変だよ」
と「燃料切れかも知れないな」
ガリレオ2号「ぞば、ぞぞば、ぷすぷす、ぞば、ぞぞば、ぷすぷす」
ケプラー1号「しゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅ!」
ぴ「ばいばーい!」
海「あ、ぴーちゃんに抜かれちゃったよ、とむりん!」
と「ああ、残念だけど、もうすぐ燃料がなくなる」
ガリレオ2号「ぶば、ぷす、ぶばぶば、ぷす、ぷす!」
ガリレオ1号「シャラシャラキュラキュラ」
風「おさき〜!」
海「わ、ぶうよんにも抜かれた!」
ガリレオ2号「ぷすん」
と「止まったな」
 結局、せんせいがボートを降りて歩いてひき始めました。積もったばかりの新雪は柔らかく、せんせいは足をとられて何回もころんでしまいました。そのたびに、みいやんの楽しそうな笑い声が響きました。

つづく

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2004-01-14 クランベリーヒル便り第1話 冬の始まり その3

 せんせいの人力そりとなったガリレオ2号がオンディー沼のほとりにつくと、沼は静かな水面をたたえていました。沼の周囲をおおうクランベリーの茂みも全部雪に埋まっています。まるで昔の水墨画を見るような不思議な景色でした。
ぴ「おそいよー!」
風「とむりん、おつかれ!」
と「いい運動になった、ふう」
海「しずかだね」
風「なんだか、すごくいい時間の中にいるような気がする」
ロ「ぴゆぴゆ!」
キティ「ピユピユ!」
 やっとひらがなが読めるようになったぴーちゃんが、すぐにキティの胸のディスプレイのロケット号語訳を読みました。
ぴ「い・い・お・も・い・でって書いてあるよ」
海「うん、思い出になるよ、この景色」

 しばらくして猿雅荘に戻ることになりました。
 帰りは両方のガリレオ号をキティが引いていくことになりました。さすがにスピードが落ちて、身軽なケプラー1号はどんどん先へ行ってしまいました。

 2台のガリレオ号が猿雅荘に到着すると、ぴーちゃんとロケット号が庭先にかまくらを作っていました。ロケット号が念力で屋根の上の雪を上手に積み上げていきます。それをぴーちゃんがぺたぺたと固めていました。それを見たぶうよんとみいやんが、さっそく雪用スコップを持ってきて穴を掘りました。小一時間で、たちまち立派なかまくらができあがりました。
 せんせいは小さなテーブルと、ホワイトガソリンのランタンと小さなストーブを持ってきました。ぶうよんは雪壁を掘って小さな祭壇を作りました。そして、小型のアネロイド気圧計を置きました。
風「ご本尊」
と「それって、ムーミンに出てくるニョロニョロの話だっけ?」
風「そうだよ」
海「じゃ、このかまくらの名前はニョロニョロ荘にしよう!」
風「よし、決まり!」
 そこにロケット号が大きなお鍋と一緒に入ってきました。ぴーちゃんはお椀を持っています。それは、熱々のおしるこでした。もちろんロケット号特製のお新香つき。
 せんせいがお椀によそいわけていると、かあちゃんもやってきました。
ぴ「あ、かあちゃん、やっときた!」
か「まあ、あんたたち好きねえ、こういうの」
風「だって、面白いじゃん」
海「かあちゃん、かあちゃん、オンディー沼とってもきれいだったんだよ」
か「そう。よかったわね」
ぴ「これニョロニョロ荘っていうんだよ」
 かあちゃんは、祭壇の気圧計を見つけて笑いました。
と「さあ、食べよう」
 みんなからおいしい、おいしいという声があがると、ロケット号はひとりひとりの前に行って「ぴゆぴゆ」「ぴゆぴゆ」と言って回りました。

 それからみんな、ホワイトガソリンが全部燃え尽きるまでかまくらでワイワイと過ごしました。クランベリーヒルの冬は始まったばかりです。


おしまい

先頭 表紙

mokoさん、コメントをアリガトございました。今、第2話を書いています。もう少し待ってくださいね〜。クランベリーヒルに行った気になるようなお話にします! / ポロ ( 2004-01-15 18:28 )
今日は台風並みに発達した低気圧の影響で、大雪の所も多いでしょうね!私も、初めて‘大雪’を目にした時は、山の風景を見て‘水墨画’を思い出しました♪雪のある暮らしは大変ですが、楽しみもありますよね。‘かまくら’や‘そり’など、うちの娘も経験したことがないので、一度ぜひ雪を見に連れて行きたいです〜クランベリーヒル、行ってみたいなぁ・・・ / moko ( 2004-01-14 20:55 )

2003-12-25 ポロのクリスマス その1

「ねえ、せんせいのところにはサンタさんが来るんでしょ!」
「来るよ」
「今年も来る?」
「来るかも知れないし、来ないかも知れない」
「来るよね?」
「さあ、盛明(もりあき)おじいちゃんがサンタクロースに恩を売ったのは40年以上も前のことだからなあ。そろそろ恩の著作権も切れるんじゃないか?」
「なに言ってるの、せんせい。恩の著作権はずっと続くんだよ。だって、せんせいの子孫のところにもサンタクロースは来ることになってるんだから」
「ふーん、そうか」
「わ、せんせいってサンタさん、どうでもいいの?」
「うん」
「あ゛〜! つまんないよ〜。そんなのつまんないよ〜!」
「ねえねえ、ぴーちゃんはサンタさん、来て欲しいよね」
「え〜、あたしどうでもいいわ」
「わ〜! ポロはこどくだ〜、ぐれてやるぐれてやる!」
「ポロちゃん、まあ、そう言わないで。はい、イモようかん」
「わ、奥さんはいい人だ〜。ポロのたった一人の理解者だ〜」
「喜んでもらえて嬉しいわ。でもね、ちょっと静かにしてね」
「は、は〜ィ。ゴメなさい」

 すっかり意気消沈したポロは、サンタクロースを生け捕りにしてみんなに会わせることにしました。ポロは、シュデンガンガー商会にサンタクロース生け捕りキットを買いに行くことにしました。
 まず、神田の地図をネットで検索してプリントアウトしました。これで迷わないぞ。夜になるのを待って、ポロは国道で信号待ちしているトラックの荷台に飛び乗りました。さっそく、せんせいから無断で借りてきた迷彩模様の小型マグライトで地図を確認します。神田はどこだ? あ、あったあった。へえ、加賀藩前田家の上屋敷はここか。本妙寺を過ぎて、本郷金助町を通って神田明神だな。で、今走ってる国道17号はどれかな。あれ、中仙道しかないな。変だなあ。あ゛〜〜! これ江戸時代の地図じゃないか〜。どうすりゃいいんだポロ! しょうがない。これでもないよりはマシ。あとはポロの野生の勘でいくしかないな。ポロは一抹の不安を胸に通りすぎる夜の景色を眺めていました。

つづく

先頭 表紙

2003-12-24 ポロのクリスマス その2

 1時間くらいで、なんだか見覚えのあるところに出たので、ポロは一度トラックを降りることにしました。湯島聖堂でした。すごいぜ、冴えわたるポロの勘! あ、神田明神もある。たしか、せんせいが子どものころに新聞紙でできた袋に入ったゆで立ての塩エンドウ豆をほおばって「幸せだなあ」って思ったところだったな。塩エンドウで幸せになっちゃうなんてせんせいは安上がりだなあ。その点、ポロはイモようかんだからちょっと高級だな。せんせいに勝ったな。まいったか、せんせい。あ、お茶の水の駅だ。夜遅いのに人がいっぱいいるなあ。お茶の水博士っていう人もいたっけなあ。
 そうこうしているうちに、シュデンガンガー商会に到着しました。真鍮製の金具のついた古びた木のドアから、白熱電球のほのかな明かりがもれています。
「ごめんくださ〜い!」
「あ、これはポロ様。いらっしゃいませ」
「ポ、ポロさまだって! うれしいなあ。ポロさまだもんなあ」
「はい、お客様はみな大切な方でございます。今日はどのようなご用でしょうか」
「あ、あのね、サンタクロース生け捕りキットが欲しいの」
「やや。サンタクロース生け捕りキットは季節モノでございまして、2日前に全て売りきれてしまいました」
「えー、やだよやだよ。欲しいよ〜」
「ここだけの話でございますが、サンタクロースはなかなか賢い方でして、生け捕りキットでは捕まりません。理論的には生け捕り可能なのですが、毎年、その上を行くのがあの方なのでございます」
「ふーん。じゃ、どうすれば捕まえられるの?」
「はあ。私の兄ならば、何かアイディアもあると思うのですが」
「松戸博士のこと?」
「さようでございます。しかし、兄は今、クランベリーヒルにおりまして、なかなか連絡が取れません」
「クランベリーヒルってどこ?。ポロ、トラック乗り継いでどこへでも行っちゃうから」
「それがクリューガー60という恒星系をめぐる惑星上にある町で、トラックでは、ちょっと無理かと」
「どうやれば、行けるの?」
「どうしてもとおっしゃるなら、物質転送機で行けなくはありませんが、宇宙嵐があると転送途中で遭難することがあります」
「嵐がなければいいんでしょ。宇宙天気予報はどう言ってるの?」
「はあ、しばらく快晴かと」
「じゃ、ポロ行くよ。クランベリーヒル」

つづく

先頭 表紙

2003-12-23 ポロのクリスマス その3

 物質転送機は、ニュースでやってた昔のだるまストーブの形をしていました。ポロは、中に入るとハエが紛れ込んでいないかどうか確かめました。ハエと一緒に転送されると「恐怖のハエ猫」になってしまうからです。
転送ボタンが押されると、きゅうに気持ちが悪くなってきました。うわあ、吐きそうだ〜! 
 ポロは、大きな葉っぱがいっぱい並ぶ、さんさんと陽の光がそそぐ畑でゲロゲロ吐いていました。2度と転送機になんか入るもんか。ゲロゲロ〜。
「どうしたね、まるで転送されてきたみたいな様子だが」
横には白衣をきたおじいさんがしゃがみこんでポロを見ていました。
「ぽ、ポロと言います」
「お、しゃべれるのか!」
「と、とむりんせいせいの助手をしてます」
「おうおう、とむりん君のところから来たのか! ワシが松戸じゃ。さあさ、家に行こう」
 松戸博士は、ポロを抱き上げるとすぐ近くの丘の上にある家まで連れていってくれました。
「よく来たな。しかし、生き物は転送してはいかんと言っておいたのじゃが」
「うん、ポロもやめたほうがいいと思ったよ。う、まだ気持ちわる・・」
「回復まで2〜3時間はかかるじゃろ。それまでゆっくり休めばよい」
ポロは、暖炉のそばのソファで休ませてもらいました。

 夕方、すっかり元気になったポロは、松戸博士とダイニングテーブルに向かっていました。博士の発明した自動ディナー調理機が用意した夕ご飯はサイコーでした。
「それでね、サンタクロース生け捕りしたくて、シュデンガンガー商会に行ったら売り切れだって」
「それを言うならシュレーディンガー商会じゃ。サンタクロースなら別に生け捕りにする必要はないぞ。明日の晩にここに立ち寄るからの」
「えー、ホント?」
「本当じゃとも。この家も、とむりん君が建てたものじゃ。子どもたちをテレビのないところで育てたいと言って6年間クランベリーヒルで暮らしておったのじゃ。ロケット号は元気にしとるか?」
「え、ロケット号なんていないよ」
「変じゃのう。スポンジのアヒルじゃが。このディナー調理機の調整はロケット号がやったんじゃ」
「あ〜、それならダイニングのカップボードに入ってる。なんでお風呂スポンジをカップボードに入れておくんだろうと思ったんだけど、あれってロケット号って言うんだ」
「おお、そうか。やはりこの星を出ると魔法が解けてしまうのじゃな」
「キティという猫型ロボットもおったのじゃが、あれはとむりん君の細君と折り合いが悪くてのう。そうじゃ、掃除機のジョン3兄弟はどうしておる」
「いるけど、あまり使われてないよ。今はロバートっていう掃除機ががんばってる」
「そうか、だいぶ暮らし向きも変わったようじゃの」
「ねえ、博士。ポロ、そのころのせんせいたちのお話聞きたいな」
「そうか。それなら、日記の過去ログがコンピュータに残っているはずじゃ。それをコピーして渡そう」
「わ〜、アリガト。博士!」
「明日は、この近所を案内しよう」

つづく

先頭 表紙

2003-12-22 ポロのクリスマス その4

 次の朝、博士はポロをカーリーという空飛ぶ自動車に乗せてくれました。
「おはようございます、博士。今日はどちらまで」
カーリーはステキな女の人の声で話します。
「おはよう、カーリー。オンディー沼を起点に周辺を回ってくれ」
「了解、まかせてね」
「か、カーリーさん、よろしく」
「まあ、子猫ちゃんはじめまして」
「ポロだよ。ポロ。とむりんせんせいの助手なんだよ」
「まあ、とむりんせんせいはお元気かしら?」
「うん、元気だよ」
「またお会いしたいわ」
「このクルマもとむりん君のものじゃった。これも細君と折り合いが悪くての。地球へ帰るとき置いていった」
「では、ハーネスのチェックをしてください」
そういうとカーリーはゆるやかに上昇して水平飛行を始めました。すぐ下をきのうの畑が通りすぎていきます。
「タバコ畑じゃ。この星にはたくさん自生しておるが、栽培もさかんじゃ」
「へえ、タバコってあんなに大きな葉っぱなのか。時代に逆らう星だね」
「はっはっは、そうかも知れん」
遠くに湖が見えてきました。
「オンディー沼じゃ。とむりん君の子どもたちがよく遊びに来ておった」
「サカナはいるの?」
「さあ、どうじゃろ。ワシもとむりん君も釣りはやらんのじゃ。カーリー、ちょっと降りてくれ」
「ラジャー・ウィルコ!」
「なんて言ったの?」
「うん、そうじゃな。合点でえ!というところかな」
「おもしろいクルマ!」

 ゆるやかなすり鉢の底に鏡のような水面のオンディー沼は静かで不思議な空間でした。
「ここには水の精のオンディーヌがいるそうじゃ。ワシは会ったことがないが、ロケット号の日記にはオンディーヌと出あったという記述が何度もでてくる」
「へえ、ポロも会いたいなあ」
「ところで、アイスクリームは好きかな」
「うん、ポロ大好き。イモようかんの次に好きだよ」
「有名な店があるんじゃ、行こう」
 カーリーでしばらく行くと、にぎやかな町に出ました。オラクルベリーという町だそうです。賑やかなオラクルアベニューに面して、その店はありました。
“ビルの店 マイクロソフト”
「創業者は、ここで一旗あげたあと、その儲けで地球でもビジネスをしているという話じゃ」
「ぽ、ポロ、その会社知ってるかも」
「ほう、地球でもここのアイスクリームは有名かね」
「せんせいはリンゴのアイスのほうが好きみたい」
 でも、すっごくおいしいアイスクリームでした。松戸博士は、ポロをカジノにつれていってくれました。

つづく

先頭 表紙

2003-12-21 ポロのクリスマス その5

「ポロ、カジノでの賭け方を伝授しよう」
「絶対、勝つ方法なの?」
「ああ、そうじゃ」
「すっごーい! 教えて教えて。ポロね、借金王なの。500まんえん」
「そりゃ、大変だ。よく聞くんじゃぞ」
「うんうん!」
「まずはルーレットだ。ここでは赤か黒に掛けることにしよう。当たれば2倍になって返ってくるルールだ」
「うん」
「みんな、次は赤なのか黒なのか予想して賭けるが、ワシは違う。赤か黒、どちらかだけに賭け続けるのじゃ」
「どうして? だって、それじゃ半分しか当たらないから儲からないよ」
「まあ、聞きなさい」
「最初、赤に100ベリー賭ける。ベリーというのはここの通貨単位じゃ」
「うん」
「外れたとする。損をしたのは100ベリーじゃ。次に、また赤に200ベリーを賭ける」
「うん」
「また、はずれたとする。損をしたのは300ベリーじゃ。今度は400ベリーを賭ける」
「うん」
「またハズれるかな?」
「うーん、黒がそんなに続くわけないから、そろそろ当たるかも」
「もし勝てば800ベリーが戻ってくる。投資した額が合計700ベリーだから100ベリーの勝ちというわけだ」
「わ、これを繰り返せば絶対損しないね、せんせいに教えてあげようっと」
「ほぼ、損はしないと言ってもよいだろう。だが、非常に低い確率じゃが、一度も当たらないうちに全財産を使い果たすとパーになる。だから、こういう方法を使ってもギャンブルはギャンブルじゃ」
 ポロは、その日、博士から10000ベリー借りてルーレットに挑戦しました。しめて1000ベリーの儲け。すごいなあ博士。でも1ベリーは、だいたい1円なので、ポロの借金を返すのはまだまだ大変です。
 地下のカジノから外へ出ると、もう暗くなっていました。
「大変だ、博士。サンタさんが来ちゃうよ」
「ははは、大丈夫」
 カーリーに乗り込むと博士が訊ねました。
「サンタは今どこじゃ?」
「少々お待ちを、博士」
「サンタさんからメールが届いています。読み上げますか?」
「そうしてくれ」
「松戸博士、今年も一晩お世話になります。そこにいるワシを生け捕りにしようという不届きな猫に成敗するから覚悟せい、とお伝え下され」
「わ、なんで知ってるの? 誰が言ったの?」
「ははは、サンタは何でも知っておるのじゃ。だから生け捕りキットなどでは捕まらん」
「ポロ、懲らしめられちゃうかなあ。やだなあやだなあ」
「ジョークじゃよ、ジョーク。サンタはそういう人なんじゃ」


つづく

先頭 表紙

2003-12-20 ポロのクリスマス その6

 カーリーが博士の家に到着してしばらくすると、降るような星空にホーキ星のようなものが現れました。ポロたちは空を見上げました。
「あれがサンタのドレッドノート号じゃよ。白く曳いた尾は力場の生みだすフィールドじゃ。ピーターパンも同じ理由で飛ぶ」
「ふーん、きれいだねえ」
 ドレッドノート号が接地すると、淡く白い光が消えてその姿がはっきりと見えました。
「わ、安っぽい」
 まるで、むかしの遊園地の乗り物のような作りのトナカイの人形とソリでした。
「お待ちしていましたぞ、サンタ卿」
「お世話になりますぞ、博士」
「ぽ、ポロです。ば、バイエル59番も弾けるようになりました!」
 本物のサンタを前に緊張したポロは、またまたあらぬことを口走ってしまいました。
「おう、ポロどんか」
「ひゃっ、ポロをどんぶりにしてもおいしくないと思います。保証します」
「はっはっは。食べたりせんよ。松戸博士のところに来たということは見事ワシを生け捕りにしたようなもんじゃ。とむりんせんせいや家族のみんなは元気かね」
「あ、みんな元気です」
「それは、よかった」

 ポロは、それから盛明おじいちゃんが修理したというドレッドノート号のグラヴィトン・コンバータの支柱を見せてもらったり、せんせいのこども時代の話を聞かせてもらったりして楽しい夜を過ごしました。

 次の朝、ポロはサンタさんに地球まで送ってもらうことになりました。
「博士、カーリー、お世話になりました」
「おお、そうじゃ、これを持ってくとよい」
博士は小さな箱をくれました。
「これなあに?」
「はっはっは。玉手箱じゃよ。不用意に開けるでないぞ」
「わあ、こわいなあ」

「ドレッディ、ディーンドライブ起動じゃ」
「ディーンドライブ起動します」
一番後ろのトナカイが答えると、ポロのまわりに淡い白い光が広がりました。
 ドレッドノート号はゆっくりと地面を離れて上昇を始めました。博士が手を振っています。ポロもソリから身を乗り出して両手もしっぽも振り続けました。
「さよならー、博士ー、また来るねー!」
 ディーンドライブの駆動音が大きくなってソリに小さな振動も伝わるようになると、ドレッドノート号は一気に高度を上げました。博士の家とタバコ畑がだんだん小さくなっていきます。オンディー沼もよく見えます。まるでおもちゃの家が並んでいるようなオラクルベリーの町並みも見えてきました。
 空は青からウルトラマリン、そして暗くなってきました。
「成層圏飛行中、間もなく熱圏との境界面を通過します。通過」
 トナカイがいろいろな事を報告してくれます。2つの恒星の連星系のクリューガー60AとBがまぶしく輝いています。まだ、太陽は見えません。


つづく

先頭 表紙

2003-12-19 ポロのクリスマス その7

「重力圏離脱、ディーンドライブを停止、ワープ8で太陽系を目指します」
「ポロ、スターボウは知っているかの?」
「あ、猫の星で習ったよ。亜高速で進む宇宙船から見える虹のこと?」
「そうじゃ。光速を超えるまでの少しの間だけじゃが、きれいなもんじゃ」
 サンタさんがそういうと、星ぼしの光が直線になって前のほうに集まり始めました。
「わあ、青くて丸い光の輪だ!」
 でも、それも一瞬で終わると、まわりは何も見えなくなりました。
「ワープ8、太陽圏到達まで8時間です」
「ポロどん、メリークリスマスじゃ! さあ、ワシからのプレゼントはこれじゃ」
「わあ、アリガト!」
 サンタさんがくれたのは、なんとヒケール一箱でした。包み紙には北極星のマーク。
「この間、大切なヒケールを風邪薬と間違えて使ってしまったじゃろ」
「サンタさんて、なんでも知ってるんだね」
「マエストロタイプが6錠、最近開発されたヴィルトゥオーゾタイプが6錠入っておる。名演奏でみんなを一泡ふかせてやるんじゃろ?」
「うーん、たのしみだなあ!」
「ヴィルトゥオーゾタイプは、アルカンやソラブジが演奏できるようになったとドーラメディコの広報誌に書いてあった」
「へえ、アルカンとかソラブジなんて知らないや」
「ワシも知らん。わっはっは」
 サンタさんは、おいしい紅茶とおイモのケーキで小さなパーティーを開いてくれました。ドレッドノート号も仲間に入ってトランプもやりました。神経衰弱はドレッドノート号が勝って、7並べはサンタさんが勝ちました。ウスノロマヌケという変なゲームは、ポロが勝ちました。
「今日は、ポロどんがいてくれるから実に楽しい!」
「そういえば、サンタさんはいつもひとり?」
「ドレッディと一緒というところかな。星から星への旅ガラスじゃよ」
「ほかの星にもクリスマスがあるの?」
「もちろん、そうじゃ」
 楽しく過ごす間に、太陽系が近づきました。
「減速します。ワープ7、6、5、4、3、2、1。火星近傍で亜光速になります」
 いきなり、スターボウが現れ、すぐあとに星空がもどって来ました。
「わあ、火星だね、あれ三日月みたい」
「そうじゃ」
「今年の夏に、せんせいに望遠鏡で見せてもらったよ、ポロ」
「そうか、きれいじゃったろう」
「うん、でも、そばで見るともっとすごいね」
「荒涼としておるが、何やら迫力のある星じゃ」
 ドレッドノート号は、さらに速度を落として地球に近づきました。
「地球周回軌道に入ります。ステルスモードに移行します」
「よし、ダミーを放出じゃ」
 ピカピカ光るドレッドノート号の模型が発射されました。
「あれなあに?」
「ああ、あれはノーラッドの追跡をかわすためのダミーだよ。ノーラッドはワシらを捕捉しようと躍起になっておる。じゃが、追いかけるのは見えやすいダミーじゃ。さあ、ワシらは仕事じゃ」
「プレゼント配るの?」
「そうじゃ。地球を担当しておるサンタは数が多い。ワシは日本担当じゃ。ドレッディ、高度を下げてくれ」
「ラジャー」


つづく

先頭 表紙

2003-12-18 ポロのクリスマス その8

「サンタさん、プレゼントってどんなもの?」
「モノをプレゼントするのは、特別な場合だけじゃ。ワシ以外には誰もプレゼントできないものじゃ」
「え〜、なんだろう?」
「さあ、ポロどん、手伝ってくれるかな」
「うん、いいよ」
 ポロが渡されたのは、例のたっぷり膨らんだしろい布の袋でした。
「中身を手ですくって空に撒くんじゃ」
 ポロが袋に手を入れると、銀色の光の粉がふわふわと舞い始めました。
「わあ、きれい!」
「どんどん撒いていいぞ」
 粉は光りながら地上に向けて降っていきます。粉といっても、触っても何もありません。あるのは光だけでした。
「ねえ、サンタさん、これなあに?」
「ははは、ポロどん、今どんな感じじゃ?」
「うん、なんだか、とっても幸せな感じだよ〜!」
「それじゃよ、それ」
「え〜、幸せのもとなの?」
「そんなようなもんじゃ。効果は1回、期限は1年じゃ」
「それって、どういうこと?」
「この光を浴びたものは、何かのきっかけで幸福感にひたることができるのじゃ。ただし一回、そのきっかけも1年以内にないと効果がなくなる」
「じゃあさ、たとえば、秋に神田明神の境内でゆで立ての塩エンドウ食べて、おいしいなあって思ったことがきっかけで幸せになることある?」
「複雑な状況設定じゃが、もちろん、あり得るじゃろう」
「ふーん、ポロ納得しちゃったよ〜。いいなあ、北極星印、幸せのもと!」
「さあ、北海道は終わった。次は東北じゃ」
「東北って、福島県があるとこ?」
「そうじゃ。福島県にはいっぱい撒きたいのかの? たくさん撒いたからといって余計幸せになるというものでもないのじゃ」
「いいの」
 ポロは、福島県に光の粉をじゃんじゃん撒きました。埼玉県にもじゃんじゃん撒きました。東京なんて、もう力の限り撒きました。静岡県も同じくらい撒きました。岐阜県には、袋を逆さまにしちゃうほど撒きました。京都にもいっぱいいっぱい撒きました。広島県では袋の中に入り込んで、後ろ足で砂をかける要領でじゃんじゃんまきました。
「何をむきになって撒いとるんじゃ?」
「掲示板にね、書き込んでくれる人の住んでるとこにはいっぱい撒いたの」
「ひとつまみ撒けば、効果は公平なんじゃが、まあ、ポロどんの思いが伝わるということもあるじゃろう」
「そうだよ。いまね、岐阜県でね、お茶漬け食べて幸せだなあって思った人がいるに違いないんだから」
 最後に光の粉を撒いたのは波照間島でした。その頃には、ポロはすっかり光の粉にやられて、笑いが止まらなくなっていました。
「わははは。サンタさん、終わったよ、わはははは」
「おお、ポロどん、よかったのう。わはは」
 サンタさんも光にやられちゃったみたいです。わはは。わははは。
 それから、ドレッドノート号は作曲工房の近くの小学校にふわりと降りました。
「わはは。じゃあね、サンタさん。ドレッディ、乗せてくれてアリガト」
「うおっほっほっほ、ポロどん、また来年。あっはっは!」
「わはは。ごきげんよう、ポロさん。わはは。わはは」
 ドレッディまでが笑っていました。ポロたちは大笑いしながら別れました。スレーベルの音と笑い声が一緒になって空に消えていきました。

 作曲工房に帰ると、せんせいたちが笑っていました。
「わはは、せんせい、ただいま!」
「わはは、ポロ、どこ行ってたんだ!」
「そうよ、ポロ、どこいってのよ、あっはっは!」

 その頃、ポロが光の粉を撒きすぎてしまった地方では、みんなが笑い転げていたのでした。ゴメなさい、みんなポロのせいでした。

おしまい

先頭 表紙

ポロさん、ありがとう!お陰で幸せな気分になりました♪サンタさんからのプレゼントも来たし♪ / ミタ・ソウヤ ( 2003-12-26 12:56 )
みなさん、読んでくれてアリガトございます! / ポロ ( 2003-12-26 12:46 )
広島にも勢い良くまいてくれてありがとう。ポロちゃんのかっこうを想像するとクスッて笑ってしまいました。お陰でとっても心穏やかに過ごすことが出来たクリスマスでした。私はイブより25日の方が奥ゆかしくて好きです。 / のりちゃん ( 2003-12-26 11:07 )
東京にも横浜にもたくさんまいてくれてありがとう♪ 星を見ながら「なんかしあわせだなぁ〜」と思って帰宅したら本当に嬉しいプレゼントがあったの。いいお話をありがとう☆ / とねちゃん ( 2003-12-26 01:19 )
京都にもいっぱいいっぱい撒いてくれて、ありがとう。今日はとってもうれしい日でした。笑うと幸せになれるね。きっと森田さんも笑ってたと思います。 / こすもす ( 2003-12-25 22:38 )
福島県にも、粉をたくさんまいてくれてありがとう♪読んだら、やっぱり一人で笑い転げちゃいました(*^_^*) / moko ( 2003-12-25 20:44 )

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