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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2003-12-04 ポロ、波動エンジンを作るの巻 その5
2003-10-29 続・月夜の出来事 その1
2003-10-28 続・月夜の出来事 その2
2003-10-27 続・月夜の出来事 その3
2003-10-19 月夜の出来事 その1
2003-10-18 月夜の出来事 その2
2003-10-17 月夜の出来事 その3
2003-10-16 夜明け評論家
2003-04-08 猫の星の歴史教科書第15回「危険なクリスマス」その1
2003-04-07 猫の星の歴史教科書第15回「危険なクリスマス」その2


2003-12-04 ポロ、波動エンジンを作るの巻 その5

 帰りのユードラの中で、ポロは“即席波動エンジン”の完成と同じくらいヒケールも嬉しくて、前から横から上から下から何度も何度も黄色いカプセルを眺めていました。
「ねえ、せんせい」
「ん?」
「ポロ、こんど超絶技巧練習曲聴かせてあげるからね。1回だけだからね。耳そうじしてよっく聴いててよ。今度は販促タイプじゃないからね」
「あはは、楽しみだ」
「せんせいに聴かせるだけじゃもったいないな。せんせい、ポロに芸術劇場借りてよ! そしたらさ、そこでポロみんな呼んで弾くんだ」
「アンコールが来たらどうするんだ?」
「う〜ん、そっか〜。一曲だけで効き目が切れるからなあ。バイエル58番じゃだめかなあ。やっぱ、せんせいだけに聴かせてあげるよ。そしたら、きっとポロのこと見直しちゃうから」
「いやあ、今回の波動エンジンの件でも見直したぞ。ポロはなかなかいいヤツだ。さあ、早く525万円働かなくちゃ」
「わ、そうだった。ポロ、まだ一万円よりたくさんのお金って見たことないけど、宇宙一のイモようかんの和菓子職人になって、あっという間に返しちゃうぞ」
「ま、がんばってくれ」

 次の日、ポロは郵便局に行って宇宙ゆうパックで「即席波動エンジン」を送りだしました。家に帰って送り状をよく見たら、到着は420万年後になっていました。郵便局のロケットには波動エンジンを積んでいないみたいです。ダメだなあ。ポロに頼めば作ってあげるのに。
 というわけでshinさん、ちょっと到着は遅れますが、お湯を用意して楽しみに待っていてください。

おしまい

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2003-10-29 続・月夜の出来事 その1

 ポロは、毎日一生懸命ピアノを練習していました。うまく弾けそうなのは、単純な音並びのバイエル58番だけでした。来る日も来る日も、ポロはピアノに向かって練習しました。
 そうこうしているうちに、本当に満月の晩が近づいてきました。練習を重ねるうちに、ポロは、だんだん覚悟も決まっておだやかな気持ちになっていました。
満月の晩は、よく晴れた星月夜でした。
 あ、来たな・・・。ポロの足が勝手に動き始めました。明るく幻想的な月の下を、ポロはどんどん歩いていきます。10分も歩くと、もうポロの知らない街へ入ってしまいました。それでもポロの足は迷わずに道を曲がり、橋を渡り、どんどん進んで行きました。あれ、風車があるぞ。こんなところがあったのか、なんて思いながらポロは思わぬ遠いところまで来てしまったことに気づきました。
 ・・・夢では近所だったんだけどな・・・
 そう思っていると、見覚えのある景色。あ、ピアノの音だ。
 その気もないのに、お約束どおりポロはピアノの音が漏れる窓辺で鼻歌を歌ってしまいました。


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あっこさん、読んでくださってアリガトございます。つぎのお話もがんばりま〜す! / ポロ ( 2003-11-05 22:50 )
この星が流れている時間、ポロちゃんはピアノを弾いていたのかなぁ…素敵な写真ですね〜。 / あっこ ( 2003-11-04 04:54 )

2003-10-28 続・月夜の出来事 その2

「どなたですか?」
 窓が開いて、声をかけたのはあの夢のお姉さんでした。ポロは百回も練習したセリフを言いました。
「ぽ、ポロといいます。グレン・グールドって言いましたけど、そうじゃありません。ぴ、ピアノはバイエル58番なら弾けます!」
緊張のせいか、とても早口の棒読みになってしまいました。
「まあ、おもしろい方ね。それじゃあ、バイエル58番を弾いてくださるかしら?」
「よ、よろこんで」
 ・・・やったー、これでヒケールを飲まなくても済んだぞ。せんせいのことも言わなかったし、問題はバイエル58番だ。がんばれポロ、歴史を変えるんだ!・・・
 ポロは自分で自分をはげましながらピアノに向かいました。

みいどおみいどおみいそおみいどおれえそおふぁあれえみいいいどおおお〜♪

 ・・・ダメじゃないか、いつもせんせいに言われている「子ども弾き」になっちゃってるよ、どしよどしよ・・・

れみれみ、れみ、えっとれみれみえみふぁそみいいいどおおお〜♪

 ・・・わ、おまけに間違えちゃった・・・
 無限のような長い1分が過ぎて、それでもポロはなんとか最後までたどりつきました。
「とってもお上手だったわ」
 ・・・お、お世辞だ〜、これが正真正銘のお世辞だったのか〜! せんせいはお世辞を言わないから、ちっとは言ってほしいなーって思ったけど、お世辞ってこんなにつらいものだったのか〜、せんせいゴメんね〜・・・
「本当よ、あなたは一生懸命だったわ。私もピアノを弾き始めたころはそうだったわ」
「えっ?」
「一生懸命弾いてくれる人なんて、そうはいないものよ」
「ホント?それ、ホント?」
「ええ、本当よ。そんなことあるわけないけれど、なんだかポロさんが私に聴かせるために毎日猛練習してくれたんじゃないかしら、って思ったほどだったわ」
「はは、ははは。いえ、そんなことはありません。ポロはただの通りすがりのピアニスト。実力です、ははは」
 急にポロは態度が大きくなって、目が不自由なのに、お姉さんが用意してくれたお茶とお茶菓子を遠慮しないでパクつきました。それは、イモようかんだったのです。
「お茶の用意くらいできるのよ。でも、きれいに盛りつけたりできているかが気になるの」
「ぽ、ポロ、そんなこと、もぐもぐ、気にしたこと、ありません。もぐもぐ。だって、イモようかん大好きだから。もぐもぐ」
「それは、よかったわ」

 ポロは、すっかり上きげんでお姉さんのお家を後にしました。
 わ、こんなに遠くまで来ちゃって帰り道が分かんないや。でもポロは、せんせいにはない猫の帰巣本能を使って歩き始めました。ふふふ、せんせいに勝った!

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ポロちゃん(ちゃんでいきます。笑)こんばんわ。こちらにもおじゃましてみました。「一生懸命」弾いている姿って素敵だし、聴いている相手のかたにも必ず伝わるものですよね。そう信じて、毎日の練習も常に「一生懸命」弾こうと考えさせられた私でした。 / あっこ ( 2003-11-04 04:50 )

2003-10-27 続・月夜の出来事 その3

ぷるるるるる! ぷるるるるる!
「はい、野村です」
「あ、こちら土浦警察ですが、お宅の迷い猫を保護しています」
「つ、土浦って、茨城県の土浦ですか?」
「はい、こちらまでおいでいただけるでしょうか」
「は、はい」

    *   *   *

「でさ、でさ、せんせい」
「なんだよ」
「イモようかん、おいしかったんだ」
「それで」
「せんせい、機嫌なおしてよ〜」
「土浦まで迎えに行くのは遠かったんだぞ」
「ポロだって遠かったもん。二週間もかかっちゃった」
「もう、マサユメ・カプセルとかヒケールとか、怪しげなものは飲むんじゃないぞ」
「は〜い、せんせい!」
「おまえ、ぜんぜん懲りてないみたいに見えるぞ」
「ポロは、懲りない猫なのよ〜♪ あ、せんせいそっち行かないで・・」


 それから、ポロは何度かお姉さんのお家を探しましたが、どうしても見つかりませんでした。

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2003-10-19 月夜の出来事 その1

 それは、ある日の午後のお茶の時間のことでした。
 せんせいは作曲を終えてヘロヘロになってリビングに降りてきました。
「せんせい、おつかれ!」
「ああ、くたびれたよ」
「お茶にしよ! ねねね」
 と言っても、ポロは何もできないのでせんせいが全部自分で紅茶とかいれます。
「おくさんがね、ワッフルがあるから食べてもいいって言ってたよ」
「そうか。じゃ、食べようか」
もちろん、ポロはイモようかんです。
「あのね、あのね、せんせい。きのうポロ、ゆめ見たんだよ」
「どんな夢だい」
「聞きたい?」
「いや別に」
「あ、いじわるいわる、聞きたいって言ってよ」
「じゃ、聞きたい」
「でしょでしょ。じゃあ、ポロがとくべつに聞かせてあげるからね、とくべつだよ」


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うわ〜っ!なんておいしそうな焼き色!これは奥様のお手製ですか?先生もポロちゃんもしあわせだな〜。 / 甘夏 ( 2003-10-17 20:51 )

2003-10-18 月夜の出来事 その2

 満月の晩にポロがお散歩していると、どこからかピアノの音が聴こえてきました。
〜おや、どこから聴こえてくるのだろう〜
 それは、すぐ近くの家の一階の窓からでした。ポロが立ち止まって目を閉じて聴き入っていると、ついついいつものクセでピアノに合わせて鼻歌が出てしまったのでした。
「どなたですか?」
 窓が開いて、声をかけたのは盲目の少女でした。ポロは、とっさにネコであることを隠すために、口からでまかせを言いました。
「え、えっと、グールドといいます。グレン・グールド」
「まあ、知っています!」
「ひゃっ! えっと、そうじゃなくてグレン・グールドのファンのとむりんと言います」
「まあ、変わったお名前ね。ピアノを弾かれるのですか」
「ええ、ちょっとだけ」
「まあ、お入りになってピアノを聴かせてくださいな」
 〜やば。ポロ、バイエルしか弾けないもんな。それもへたっぴにしか〜
「さあ、どうぞお入りになって」
 ポロは、なりゆきでピアノの前に招き入れられてしまいました。でも、そのとき思いだしました。ポロだって4次元ポケットを持っているのです。確か、それを飲むと少しの間ピアノが弾けるようになる「ヒケール」というカプセルがあったはず。ヒケールは猫の星の「ドーラ・メディコ」という会社の製品で、マエストロタイプ、ビギナータイプ、個人用、団体用、湿布式、ちょっと大きめとかいろいろと作られていて、ポロもどれか持っているはずでした。がさごそがさごそ。あ、あったあった。えっと、販促キャンペーン用って書いてあります。あ、これ、猫の星中央駅のコンコース歩いてたときキャンペーンやってるお姉さんからもらったやつだ。
 ま、これで、とりあえずピアノが弾けるはず。ポロはせんせいの「月の滴」が弾きたかったので、カプセルに「月の滴」って書いてごくりと飲み込んでピアノに向かいました。
「とむりんさん、何を弾いてくださるの」
「私の作曲した月の滴という曲です。では、お聴きください」
 ポロは鍵盤に指を置いてから、カッコつけて心の中で5つ数えました。1、2、3、4,5・・・ドかちゃかドかちゃかドかちゃかドかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん・・・・
 わ、なんだ、この曲は! あ、ヒケールのキャンペーンソングだ! 販促用ってこういうことだったのか。
 ドかちゃかドかちゃかドかちゃかドかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん・・・・
「あ、あの、とむりんさん、おじょうずなんですけど、こんなに大きな音で弾かれては近所から苦情が来てしまいます」
 ドかちゃかドかちゃかドかちゃかドかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん・・・・
 「と、とまらないよ〜!」
 ドかちゃかドかちゃかドかちゃかドかちゃか、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん、ちゃーんちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん・・・・
 それから何分かたって、やっとヒケールの効果が切れました。
「ふー、やっと止まった」
「とっても賑やかな曲を作曲なさるんですね」
「あ、いえ、それほどでも・・」(なに言ってんだ、ポロ)
「また、遊びに来てくださいね」(帰るとも言ってないのに。はっきり言ってお世辞)
「では、先を急ぎますので」


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吸い込まれそうなお月さまと空…。すてき…。 / 甘夏 ( 2003-10-17 20:47 )

2003-10-17 月夜の出来事 その3

「というわけでね、せんせいのファンを一人減らしちゃったの。ごめんね、ごめんね」
「どうせ夢じゃないか」
「ぎくっ!」
「なんだ、その擬態語は」
「じつはね、じつはね。この夢もドーラ・メディコ製のマサユメ・カプセル飲んだから見た夢なの。これからホントのことになるの。もう確率100パーセント」
「なんだ、そりゃ」
「ポ、ポロ、ピアノの練習してこよっと」


おしまい


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うちの息子(3歳)にもこんなふうに見えているのかなと思うと、むやみに「いたずらするな!」と叱れなくなります…反省。常に目線を変えて、美しいものを見つけられるようになりたいです。 / あっこ ( 2003-11-04 04:58 )
甘夏さん、おいでくださってアリガトございます。ここにもときどき遊びにきてください。せんせいはガラスが趣味なので、ポロも師匠のえいきょうを受けまくっています。 / ポロ ( 2003-10-17 23:02 )
おもしろいアングルだね〜。ビー玉コロコロ楽しいね。ポロちゃんからはこんな風に見えてるんだね…。 / 甘夏 ( 2003-10-17 21:00 )

2003-10-16 夜明け評論家

せんせいは、自称「夜明け評論家」です。
夕日評論家っていう人はいますけど、夜明け評論家は少ないと思います。でも、彗星捜索なんてしてる人は、夕焼けよりも朝焼けのほうが親しみがあるかも知れません。せんせいも、そのなれの果てかも。
ポロは朝寝坊なので、夜明けとは縁がありません。みなさんはいかがですか?


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2003-04-08 猫の星の歴史教科書第15回「危険なクリスマス」その1

ポロでーす! クリスマスシリーズの最後のお話は、未来のお話です。盛明おじいちゃんも、せんせいもご先祖さまになってしまっています。ずっと未来になってもクリスマスがあるので、ポロは安心しました。では、どうぞー!



危険なクリスマス 

 手錠をかけられた赤服の男は神妙な様子で受付前を通り過ぎていきました。
 「この手の入管法違反は今年5人目だ」
そんな声が受け付けカウンターの奥から聞こえてきました。

 JR東日本では、踏切一時停止をうながす新しい標識の設置を急いでいました。角の丸い逆三角形のその標識には、大きく開いて差し出された手のひらとトナカイとそりが描かれていました。
 しかし、その晩も東北地方の標識のある踏切には、めちゃめちゃに壊れたそりと脱線した夜行貨物列車の傍らに、しょんぼりとたたずむサンタクロース姿の男がいました。

 昨年からの突然のサンタクロース姿の男たちの大量出現と、ひんぱんに起こる彼らとのトラブルに世界は戸惑っていました。おまけに、航空法や入国管理法、家屋への不法侵入など、さまざまな法律に違反して逮捕されたその男たちはひたすら黙秘を続け、誰もが取り調べにも自供にも応じないのでした。そんなサンタ関連の報道が増えるに連れて、人々のサンタクロースに対するイメージはファンタジーから不気味なものに変わっていったのでした。

 風太はその晩、眠らずにベッドの中で待っていました。ススムじいちゃんから聞いたサンタクロースは不気味でも怖くもなかったからです。連日のニュースがどうしても信じられません。
 -じいちゃんの話が本当なら、今夜こそ、ぼくのところにも本物のサンタがやってくるだろう。北側の窓のロックは配電盤のスイッチで元から切ってあるし、ぬかり はないはずだ。
 風太が眠さのあまりウトウトしはじめた頃、枕元に立つ影がありました。
 「おじさん、サンタだろ?」
 「ふ・う・たくん・じゃ・な?」
 様子が変でした。サンタクロースは、それだけ言うとその場に倒れ込んでしまいました。

 風太の両親がファーストエイドキットでサンタクロースの両脚の出血を止め、ネット端末から遠隔医療システムで指示を仰いで血圧の安定剤を処方してもらいました。
 ママ「あなた、おとうさまの言ってらした事って本当だったのね」
 パパ「ああ、オヤジは変人だったからなあ。みんなからあまり信用されてなかったし」
 まもなく、サンタクロースが意識をとりもどしました。
 サンタ「おお、おお!」
 そう言うとサンタクロースは涙でなにも言えなくなってしまいました。

その2へつづく

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2003-04-07 猫の星の歴史教科書第15回「危険なクリスマス」その2

 パパ 「いいんです、いいんです。ゆっくりお休みください。警察に引き渡したりしませんから」
 それからサンタは眠り続け、翌日の昼過ぎに目を覚ましたようでした。3人そろって昼の食事を持って行くと、サンタは平静を取り戻していました。
 サンタ「なんとお礼申しあげればよいか分かりません。しかし、ひどいことになった。危なく命を落とすところじゃった」
 パパ「さきほど、風太からかなり詳しい話を聞きました。風太はススムという、まあ、私の亡くなった父なんですが、そのススムからいろいろな話を聞かされていまして、ススムは祖母のミオリから、そのミオリという祖母は、さらに父親のとむりんから、とむりんは、その父親の盛明という人から話を聞いていたようです」
 サンタ「そのとおりじゃ、そのとおりじゃ。盛明じいさんか。もういつのことになるのじゃろう。あれは氷川神社の森じゃった。ワシが不時着しとったら重力変換器の修理を手伝ってくれてのう。それはそれは好青年じゃった」
 サンタクロースは、昔を懐かしむような表情で言いました。
 パパ「ところで、今年のサンタクロースの大発生はどういうわけですか」
 サンタ「長い話じゃから、なるべく簡単に言おう。ワシは地球のサンタじゃ。地球オリジナルというわけじゃな。しかし、実は宇宙にもサンタはたくさんおった。彼らは集まって銀河系サンタ連盟を組織して、サンタの便宜を図っておった。それで、銀河系サンタ連盟から誘われたワシも、連盟に加わったというわけじゃ。これが失敗じゃった。ここまではよいかの」
風太 「はい、それからどうなったんですか」
 サンタ「そのうち、現場の事情も分からぬ馬鹿な評議員がサンタの見聞を広めようと、配置替えを提案した。どでかい人事異動じゃ。決まり切った風景に飽きの来ていた連中が、ここぞとばかりに賛成してな、ワシも地球担当をはずされてしもうた。おまけに地球の人口は、ひとつの惑星としては桁はずれに多いときておる。地球に慣れておらんサンタが、突然、大量に異郷の地に割り当てられて赴任したんじゃ。いくら汎用カムフラージュ訓練を受けていても、地球には通用せん。地球には地球のやりかたがあるのじゃ。ワシがいくら主張しても奴ら全然とりあわんかった。言語トレーニングさえ受けていない連中だから警察でも黙秘と勘違いしておるようじゃ。黙秘ではない、地球語を知らんのじゃ」
 風太 「へえ、サンタクロースにも転勤があるのか」
 風太が感心したように言いました。
 ママ 「なんだか信じられないわ」
 サンタ「ワシも未だに信じられん。本部へは彼らから救難信号が雨あられと届いての。ワシが救助隊の指揮を任されたのじゃ」
 風太 「やっぱり、地球のことは地球のサンタさんじゃなくちゃね」
 サンタ「そのとおり。しかし、救助母船が地球降下軌道に入ろうとしたとき、衝突小天体を破壊するスペースガードシステムに捕捉されたのじゃ。今までそんなものにつかまったことはなかった。ワシらのステルス技術は高いのじゃ。おそらく配船担当者が地球の2世紀くらい昔のデータでステルス未対策母船を用意しまったのじゃろうな。もっと科学技術レベルの低いところを担当しておったサンタを乗せる船じゃった。ミサイル攻撃を受けた母船からベイルアウト、つまり緊急脱出して難をのがれたというわけじゃ。しかし、脱出に使ったワシのそりが、またガードシステムの対空攻撃を受けたのじゃ。それで、こんな怪我を負ってしもうた」

その3へつづく

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