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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

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2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント Γ
2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント Δ
2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント E
2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント Z
2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント H
2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント Θ
2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント I
2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント Κ
2007-01-18 ポロの日記 2007年1月18日(草曜日)怪獣現る その1
2007-01-18 ポロの日記 2007年1月18日(草曜日)怪獣現る その2


2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント Γ

 -Γ(ガンマ)-

裏しびれ大学宇宙文明研究室。

ホリテッカン博士「今日、皆さんにお集まりいただいたのは危急の問題が持ち上がったからにほかなりません。宇宙文明研のドレイク博士からご説明いただきましょう」
ドレイク博士「ああ、うう・・、マチルダ博士からの報告がお手許のレジュメにあります。ご覧ください。マチルダ博士のご尽力によって太陽系文明が救われたことは大変喜ばしいことではありますが、その代わりバーナード星系の惑星が滅びるということは、断固あってはなりません。今日は、その解決策について皆さんのご意見をお聞きしたいと思っております」
ホリ博「ご質問がありましたらどうぞ」
是輔「はい!」
ホリ博「どうぞ」
是輔「あっしは三河屋デリバリーサービスの是輔(これすけ)でやす。バーナード星系まで配達に行ったことがありやすんで呼ばれました」
ドレ博「ええ、うう・・・。彼はわたくしが招聘いたしました。ああ、ええ・・、是輔さんは、地球ではもちろん、太陽系で唯一バーナード星系に到達した地球人です」
是輔「へい、あっしはバーナード星系の“ツル”ってえ星に配達に行っておりやす。地球そっくりの星で、みんないい人ばかりが住んでおりやす」
ホリ博「なぜ、いい人たちであるとお考えになるのですかな?」
是輔「へい、あっしが行くのは小さな島国なんですがね、ちょうど日本の田舎みたいなところでして、みなさん穏やかに静かに暮らしていらっしゃるんでさあ」
ホリ博「もう少し具体的にお話いただけませんか」
是輔「具体的って言われても、あっしは口下手なもんでうまく言えねえんですが、隠居するならあそこにしようかなって決めてるんでやす」
ドレ博「ああ、うう・・、要するに、うう・・仮に文明衝突が起こったとしても滅びさせてよいというものではない、ということですな」
是輔「そ、そうでやす!」
ホリ博「なるほど。しかし、このままでは惑星“ツル”はいずれ滅びる運命にあるということですな。マチルダ博士もそれを大変心配しておられる。なんとか救う方策を考えていただきたいと願っておられるようじゃ」
ドレ博「裏神田には深宇宙まで行ける宇宙船がない。三河屋デリバリー・サービスにお願いして調査団を派遣するとしよう」
是輔「へい。あっしが行けるように本部に話してみます」

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2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント Δ

 -Δ(デルタ)-

梅「あ、いいんですよ。あたしがやりますから」
仲居「いえいえ、お客様はそのままお待ちになってください。私たちの仕事ですから」
松「おい、梅。旅館じゃ客は何にもしなくていいんだ。すいませんねえ、こいつ貧乏性でして」
仲「いいえ、いいんですよ。おやさしい奥様でいらっしゃるじゃないですか」

 熟練した印象の着物姿の仲居が、手際よく次々とお膳を準備すると「どうぞごゆっくり」と言って部屋を出ていきました。

梅「人に何かをやってもらうって、うれしいけど何だか居心地が悪いですねえ」
松「たまにはこういうこともなくちゃいけねえんだ。俺たちは客なんだから、お前もどっしりと構えてりゃいい」
梅「それにしても、このお料理はきれいですね。もったいなくて箸がつけられませんよ」
松「竹子のせっかくの心遣いだ。遠慮なく食わせてもらおうぜ」
梅「こんなに贅沢なんかして罰(ばち)が当たらないといいですねえ」
松「当たるもんか。それより、お前を今までいい目にあわせてやれなかった俺こそバチ当たりだぜ」

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2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント E

 -Ε(イプシロン)-

松「おう、早く乗れや」
梅「いまシャッターの鍵を確かめたら行きますよ」

 八百松という屋号の入った軽トラックの運転席から松吉は梅をせかしました。
 季節は秋。澄んだ青空にはすじ雲がたなびき、運転席から顔を出して見上げると、空高く雁のような渡り鳥が飛んで行くのが見えました。

 10分後、八百松号は海辺の町へ向かう村道を南に向かってひた走っていました。梅は結婚以来“ひらゆき村”さえ出た事がなかったので「ゴーヤ村へようこそ」という村境(ざかい)の標識を見た時には「これがゴーヤ村なんだねえ」と感心したように言いました。ゴーヤ村の中心部の商店街を通ると、梅はしきりにそれぞれの店構えの立派さを口にしました。

梅「お父さん。あたしたちももっとがんばってああいう店にしなくちゃね」
松「俺たちは野菜には困らない農村で八百屋やってるんだぜ。今の店で精いっぱいだよ。それに、別に儲からなくたって食っていけてるし、いいじゃないか」
梅「・・・まあそうですけど」

 短い商店街を抜けると大きな丘があり、八百松号がその頂上にたどりつくと、正面にキラキラと輝く海が見えました。

梅「お父さん、海ですよ。きれいですねえ」
松「ああ、こんなにちょっと走るだけで海に来られるんなら、ちょくちょ来りゃあよかったな」
梅「ああ、あたしは海を見ただけで、もうじゅうぶんっていう気持ちですよ」
松「よし、じゃあ海岸に寄り道していくか」

 八百松号は、そのまま海に向けてまっすぐ走っていきました。

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2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント Z

 -Ζ(ゼータ)-

 三河屋デリバリーサービスの配達船ノストロモ号は、ラグランジェポイントにある宇宙ステーション「越後5号」に接舷して第23神田丸の到着を待っていました。
 第23神田丸には、彗星衝突事件で失われてしまった第19神田丸のアルコン隊長、タベルコ曹長らをはじめとするクルーが惑星「ツル」調査隊として乗り込んでいました。
 やがて神田丸が到着し、ノストロモ号に調査隊クルーがやってきました。いつも是輔一人で孤独な航海を続けているノストロモ号の操縦室が、まるでスタートレックのエンタープライズ号のようになりました。

アルコン「この船のエンジンはどういうものですか?」
是「ええ、ちょっくら旧式なんでやすが“ペガサス・エンジン”っていう頼もしいやつなんですよ。じゃ、出発しますからGシートのハーネスをしっかり確認してくだせえ」

 是輔はノストロモ号の巨大な船体を繊細、かつ鮮やかな操艦で越後5号から離舷させるとペガサスエンジンの力を全て解き放ちました。

 ぎゅおわわわわおおおおおおお〜〜〜〜〜〜〜ん!

タベルコ「これはすごい! 息が苦しいほどの加速だ」
是「申し訳ねえです。光速の80パーセントまで加速すれば亜空間に入れやすから、それまで我慢してくだせえ」
タ「とんでもない。感動的な体験だよ!」

 加速度緩和装置は全力で働いていましたが、ペガサスエンジンは、その緩和能力を上回る加速度で宇宙を突き進みました。

 3時間後、いきなり加速が止まったかのように身体が楽になりました。

是「亜空間に突入しやした」
タ「超光速飛行だね?」
是「通常空間から見れば、そうなりやす」
タ「そうか。そういうことだったのか」
是「いえね、あっしは詳しいことは・・・」

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2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント H

 -Η(エータ)-

 松吉と梅は海岸近くの駐車場に八百松号を停めると、波打ち際へと歩いていきました。
 そこでは猫を連れた男が釣りをしていました。

ポ「やっぱりぜんぜん釣れないじゃないか〜」
レ「釣れないほうが幸せだぜ」

梅「まあ、お父さん。猫がしゃべってますよ」
松「あの男が腹話術の練習でもしてるんだろうよ」
梅「まあ、上手ですねえ」

ポ「わ、かかったよ! すんごい大物だ〜。きゃあ〜〜〜〜〜!」
レ「ばか、さおを離せ!」

 ポロは、キャプテンの言うことを聞かずにサオを握りしめていたので、そのまま海に引きずり込まれてしまいました。

 ぼっちゃ〜〜ん!

 ポロを引っ張っているのは巨大な魚でした。それは、この星に太古の昔から棲む巨大怪魚のマグロンだったのでした。

「キャプテン、ビンゴだよ! マグロンだ、助けて〜!」

 ポロが波間でもがいていると、マグロンは決して瞬きすることのない丸い目玉でギロリと睨みつけ、ポロを食べようと近づいてきました。

ポ「きゃあ〜きゃあ〜!」
レ「待ってろ、いま助けにいくからな」

 キャプテン・レンジャーは大声で「へんし〜ん!」と叫ぶと、スーパーヒーロー・キットに着替え始めました。

松「なに悠長なことやってるんだ!」

 キャプテン・レンジャーの様子にいらだった松吉が海に飛び込みました。

梅「まあ、お父さん! 危ないですよ」

 松吉は思いのほか泳ぎがうまく、あっという間にポロを助けて砂浜に戻りました。
 大きな波音がすぐ近くで聞こえたのはその時のことでした。

 ざっぱ〜〜ん! 
 ぷあお〜〜〜ん!
 ぎゃろんぎゃろん!

 振り返るとヘドロンがマグロンと戦っていました。

 ざっぱ〜〜ん! 
 ぷあお〜〜〜ん!
 ぎゃろんぎゃろん!

レ「おい、大丈夫か?」
ポ「は、はくしょん!」
レ「どなたか存じませんが、ありがとうございます。こら、お前もお礼を言わんか」
ポ「あ、アリガトございます」
松「無事でよかったよ。海ってえのは怖いもんだねえ」
レ「でも、もうマグロンの天敵をほかの星から連れてきましたからね、一安心ですぜ」
梅「・・・・・・・・」

 梅は生まれて初めて見た恐ろしい光景に声も出ませんでした。

 ポロとマチルダ博士が倒したゼットンとバルタンは、この星にいる凶暴な生き物の天敵として生命バランスを保っていたのです。だから、恐ろしい生き物だけれどゼットンとバルタンがいなくなれば惑星「ツル」は生態系が崩れて滅びてしまうところだったのです。ゼットンもバルタンも寿命は100万年と推定されています。ヘドロンはもっとかも知れません。

梅「お父さん、こんな怖いところはやめて、早く温泉に行きましょう」
松「そうだな」

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2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント Θ

 -Θ(テータ)-

ホリ博「・・・・ということは調査隊の結論として、惑星ツルの破局を防ぐには、その巨大魚マグロンの天敵として“ヘドロン”という実在しない怪獣を惑星ツルに移植するほかない、ということですな」
アルコン「そのとおりです。怪獣ヘドロンは実在しませんが、物語救助隊の力を借りれば捕獲可能です」
ドレ博「うう・・、“ローレライ”のラオコーン艦長ならやってのけるでしょうな」
ホリ博「ところで、ヘドロンを遠く惑星ツルまで運べるほど大きな宇宙船はあるのですかな」
是輔「へい。穀類専用の運搬船でやすが、三河屋に“ペンデレツキ号”というのがありやす。こいつは最新のフォトン・エンジンでやすからヘドロンてえやつも安全確実に運べると思いやす。バイトですけど、操縦に慣れたパイロットもいやすし」

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2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント I

 -Ι(イオタ)-

 物語救助隊の旗艦「ローレライ」は物語空間で怪獣ヘドロンを捕獲すると、三河屋デリバリーサービスの穀物専用運搬船“ペンデレツキ号”に転送しました。
 
レンジャー「こちらペンデレツキ号。ヘドロンの到着を確認。惑星ツルへ向かいます」
アルコン「了解。気をつけて」

 ペンデレツキ号はフォトン・エンジン全開で太陽系を離脱しました。

ポ「ポロはアグリーまでしか行ったことないよ」
レ「俺だってそうさ」
ポ「ば、場所わかるの?」
レ「航法コンピュータが知ってるよ」
ポ「遠いかな?」
レ「フォトン・エンジンならどこだって大抵同じさ」

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2007-01-28 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第9回 銀婚式のプレゼント Κ

-Κ(カッパ)-

 竹子へ

 プレゼント、本当にありがとう。
 お母さんは生まれて初めての旅行だったので、なにもかもが珍しくて、あっという間の2日間でした。温泉はポカポカあったかいし、宿では待っているだけでお料理が運ばれてくるし、まるでこの世の天国のようでした。
 海辺にも行きましたけど、大きなお魚と怪獣がいて怖いところだなあと思いました。やっぱりひらゆき村が一番です。では、あなたも身体に気をつけてね。本当にありがとう。

 梅

終わり

 ここは「野村茎一作曲工房HP」に付属する「ポロのお話の部屋」です。HPへは、こちらからどうぞ。

野村茎一作曲工房

Il Gatto Dello Sport(ポロ・プロジェクト)のメールアドレス

il_gatto_dello_sport@hotmail.co.jp

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2007-01-18 ポロの日記 2007年1月18日(草曜日)怪獣現る その1

※これは、ポロの日記2005年6月23日の「昔話」の世界でのできごとです。読んでいない人や忘れてしまった人は「総目次」をポチッとすればすぐに見つかります。

 怪獣現る その1

 その日の夜も、キャプテン・レンジャーとポロは発電ジャケットを着て、自転車こぎのアルバイトをしていました。

ポロ「ふう。ねえ、キャプテン。いつまでもアルバイト生活じゃなくて、ちゃんと就職しようよ。近所の納豆工場が求人してるよ」
レンジャー「なに言ってんだ。お前にはスーパー・ヒーローの誇りってえもんがないのか」
ポ「でもさあ、地球が水浸しになっちゃってから悪い宇宙人も怪獣も現れないじゃないか〜」
レ「それが奴らの狙い目なんだ。スーパーヒーローさえいなくなれば、地球は奴らの天下だ」

 化石燃料が底をついてしまった地球では太陽光発電や風力発電で電力をまかなっていましたが、自然エネルギーは気まぐれで、風のないくもりや夜は電力不足に悩まされていました。ポロたちは、夜になると時給800円で自転車型ペダル発電機をこぐのが日課でした。それに、冬になると身体と外気で大きな温度差が生じるので、それを利用して発電するゼーベック・ジャケットというのを着るだけでお金が貰えます。ペダル発電機をこぐと体温が上がってジャケットの発電効率も上がるので一石二鳥でした。
 道路も昔よりも狭くなって、特に歩道には黄色いラインが引かれていて、みんなそこを歩きました。黄色いラインは圧電素子の列で、そこを人や犬が歩くと発電する仕組みでした。
 朝になると、ポロたちはそんな道を歩いて海岸近くの掘っ立て小屋に帰るのでした。
 どうして海岸近くに住んでいるのかというと、陸地がどんどん後退して海が迫ってくるからです。お金持ちは海から離れた高台に住みたがり、ぼんびーなポロたちに残されたのは安い海岸地帯だけだったのです。
 関東平野は、もうほとんど海に呑みこまれてしまっていて、人々は残された陸地である、昔は丘陵地帯だったところで暮らしていました。昇ったばかりのお陽さまが朝凪の海面をキラキラと照らしています。

ポ「お休みなさい、キャプテン」
レ「ああ、ぐっすり寝ようや」

 野生のパパイヤの漬け物と納豆で朝ご飯を食べ終わったポロたちは、その夜のペダルこぎに備えて眠りにつきました。

 つづく

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ばっかすさん、読んでくれてアリガト〜! ポロってさ、何にもわからずに書いてたりするから微妙なツッコミはナシだよ〜! / ポロ ( 2007-01-20 21:26 )
ゼーベック効果で発電?マイクロマシンなら動くかな? / ばっかす ( 2007-01-20 20:06 )

2007-01-18 ポロの日記 2007年1月18日(草曜日)怪獣現る その2

 怪獣現る その2

 ぴゅーわぴゅーわぴゅーわ!

 お昼過ぎ。ポロたちは、けたたましい警報音に叩き起こされました。

レ「なんだ。なんの警報だ」
ポ「ん〜〜〜、なんだろね」

 どんなに貧乏になっても決して手放さずに整備を続けてきた警報装置のディスプレイを確認すると、“鮫の入り江”に何かが現れたようでした。

レ「よし、出動だ。これは怪獣っぽいぞ」
ポ「行くの?」
レ「当たり前だ。オレたちは、このために存在している。さあ、変身するぞ」

 ポロたちは大きな声で「へんし〜〜〜〜ん!」と叫びながら、古くなって色あせしたスーパーヒーローキットに着替えました。

 オリジナルのガソリン・エンジンからエタノール・エンジンに換装した中古のスーパー・カブにまたがると、キャプテン・レンジャーはポロを前カゴに入れて走り始めました。鮫の入り江までは約30キロ。もう誰も住んでいない無人地域です。

「ふあ〜〜〜〜!」

 キャプテン・レンジャーは潮風の中で大きなあくびをしました。
 5キロも走ると人家はまばらとなって、アスファルト道路もひび割れて、あちらこちらにぺんぺん草が生えていました。
 10キロくらい走って無人地域に入ると、道路はあちらこちら水没していて、そのたびに丘のほうにいちいち迂回しなければなりませんでした。到着を予想していた時刻から何時間も遅れていましたが、岬はまだまだ遠くでした。
 そして、とうとう迂回しようにもどうにもならなくなりました。いつの間にか鮫の入り江を形作っていた岬が島になっていたのです。

レ「ここまでか、くそう」
ポ「スーパー・ヒーローはさ、バットマンカーとか持ってたりするんだよね」
レ「オレたちにだって、このサイクロン号があるじゃないか」
ポ「でもさ、あの島には行けないよ」
レ「おっ、見ろ。あそこに何かあるぞ」

 キャプテン・レンジャーが指さした方向にはボートのようなものが見えました。
 近づいて見ると、それはセメントを混ぜる時に使う、鉄製のトロ舟というものでした。錆びて小さな穴が空いていたので、キャプテン・レンジャーは腰に下げていたタオルを丸めて突っ込みました。

レ「よし、これでサイクロン2号だ」

 ポロたちはトロ舟を海に浮かべると、小さな木の板をオール代わりにしてこぎ出しました。
 夕方の海はとても静かで、ポロたちはピクニックに来たような気分でした。
 島までのちょうど半分くらいのところまで進んだ時、少し離れたところでイルカがジャンプしました。

ポ「平和だなあ。怪獣がいるなんてウソみたいだ」
レ「いや、間違いなくいるぜ」

 つづく

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