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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

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2007-01-18 ポロの日記 2007年1月18日(草曜日)怪獣現る その2
2007-01-18 ポロの日記 2007年1月18日(草曜日)怪獣現る その3
2007-01-08 ポロの日記 2007年1月8日(光曜日)知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その1
2007-01-08 ポロの日記 2007年1月8日(光曜日)知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その2
2007-01-08 ポロの日記 2007年1月8日(光曜日)知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その3
2007-01-08 ポロの日記 2007年1月8日(光曜日)知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その4
2006-12-27 ポロの日記 2006年12月27日(波曜日)サンタさんの贈りもの その2
2006-12-26 ポロの日記 2006年12月27日(波曜日)サンタさんの贈りもの その2
2006-12-17 ポロだよ
2006-11-26 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第8回 忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その1


2007-01-18 ポロの日記 2007年1月18日(草曜日)怪獣現る その2

 怪獣現る その2

 ぴゅーわぴゅーわぴゅーわ!

 お昼過ぎ。ポロたちは、けたたましい警報音に叩き起こされました。

レ「なんだ。なんの警報だ」
ポ「ん〜〜〜、なんだろね」

 どんなに貧乏になっても決して手放さずに整備を続けてきた警報装置のディスプレイを確認すると、“鮫の入り江”に何かが現れたようでした。

レ「よし、出動だ。これは怪獣っぽいぞ」
ポ「行くの?」
レ「当たり前だ。オレたちは、このために存在している。さあ、変身するぞ」

 ポロたちは大きな声で「へんし〜〜〜〜ん!」と叫びながら、古くなって色あせしたスーパーヒーローキットに着替えました。

 オリジナルのガソリン・エンジンからエタノール・エンジンに換装した中古のスーパー・カブにまたがると、キャプテン・レンジャーはポロを前カゴに入れて走り始めました。鮫の入り江までは約30キロ。もう誰も住んでいない無人地域です。

「ふあ〜〜〜〜!」

 キャプテン・レンジャーは潮風の中で大きなあくびをしました。
 5キロも走ると人家はまばらとなって、アスファルト道路もひび割れて、あちらこちらにぺんぺん草が生えていました。
 10キロくらい走って無人地域に入ると、道路はあちらこちら水没していて、そのたびに丘のほうにいちいち迂回しなければなりませんでした。到着を予想していた時刻から何時間も遅れていましたが、岬はまだまだ遠くでした。
 そして、とうとう迂回しようにもどうにもならなくなりました。いつの間にか鮫の入り江を形作っていた岬が島になっていたのです。

レ「ここまでか、くそう」
ポ「スーパー・ヒーローはさ、バットマンカーとか持ってたりするんだよね」
レ「オレたちにだって、このサイクロン号があるじゃないか」
ポ「でもさ、あの島には行けないよ」
レ「おっ、見ろ。あそこに何かあるぞ」

 キャプテン・レンジャーが指さした方向にはボートのようなものが見えました。
 近づいて見ると、それはセメントを混ぜる時に使う、鉄製のトロ舟というものでした。錆びて小さな穴が空いていたので、キャプテン・レンジャーは腰に下げていたタオルを丸めて突っ込みました。

レ「よし、これでサイクロン2号だ」

 ポロたちはトロ舟を海に浮かべると、小さな木の板をオール代わりにしてこぎ出しました。
 夕方の海はとても静かで、ポロたちはピクニックに来たような気分でした。
 島までのちょうど半分くらいのところまで進んだ時、少し離れたところでイルカがジャンプしました。

ポ「平和だなあ。怪獣がいるなんてウソみたいだ」
レ「いや、間違いなくいるぜ」

 つづく

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2007-01-18 ポロの日記 2007年1月18日(草曜日)怪獣現る その3

 怪獣現る その3

 キャプテン・レンジャーの視線をたどると、そこには昔いちど退治したことのある怪獣がいました。それは悪臭怪獣ヘドロンでした。

 ぷあお〜ん!

 ヘドロンは、巨大でヘドロだらけの、べちゃべちゃの身体で思いきり暴れていました。

 ぷあお〜〜ん!

ポ「あいつ、前に月島だったか佃島だったかで悪臭をまき散らして大騒ぎしたよね。さあ、はやくやっつけちゃおうよ」
レ「・・・・・・・・」

 キャプテン・レンジャーは黙って、じっとヘドロンを眺めていました。

レ「よう」
ポ「なあに?」
レ「昔、誰かが熊に襲われると猟銃で撃ち殺したりしてたよな」
ポ「うん」
レ「でもよ。熊は悪事を働こうなんて思ってないよな。自然に行動しただけなんだよ。熊の生活圏に入り込んじまったのは人間のほうだったのかも知れないぜ」
ポ「うん」
レ「見ろよ、あいつ」

 ぷあお〜〜〜ん!

ポ「楽しそうだね」
レ「ああ。あいつを迷惑がる人間がいなくなって、あいつの本当の姿がオレたちにも見えてきたってわけさ。あいつは誰にも迷惑かけてないよな」
ポ「うん、今は誰も迷惑してないよ。幸せそうだなあ、ヘドロン」

 ぷあお〜〜〜〜ん!

 しばらくヘドロンの姿を眺めていたポロたちでしたが、陽が沈むと、あたりは急に寒くなってきました。

レ「帰ろうぜ」
ポ「うん。発電のバイトに遅刻しちゃうね」
レ「やっぱ、納豆工場に就職するか・・・」
ポ「スーパー・ヒーローやめちゃうの?」
レ「オレたちには敵が必要だろ」

 ぷあお〜〜〜〜〜ん! ばしゃばしゃ!

ポ「う・・・、うん、そだね」

 ポロたちはトロ舟を漕いで岸までもどり、キャプテン・レンジャーはスーパーカブ“サイクロン号”にまたがるとキック・スタータを思いきり蹴りました。

 ばおん! トロットットットットット・・・。

レ「おい、来る時は必死だったから平気だったけどな、町は遠いぞ」
ポ「うん、分かってるよ」

 ポロはサイクロン号の前カゴから答えました。
 地平線から、いつ地球に墜落しても不思議はないほど近づいた月が昇ってきました。

レ「いい月だ」
ポ「うん」

 それからキャプテン・レンジャーはアクセルを握る右手に力を込めました。

 おしまい

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 ポロの道場

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2007-01-08 ポロの日記 2007年1月8日(光曜日)知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その1

知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その1
 
それは2007年が始まって間もなくのことでした。
 銀河連盟からポロに内容証明郵便が届きました。

 ****** 

 拝啓 ポロ殿
 
 貴殿におかれましては(中略)・・
 さて、この度ご連絡さしあげましたのは(中略)・・・
 以上、お伝えいたします。

 銀河連盟平和調停委員会 土倉真蔵(どぐら・まぐら)

 *******

 内容をかいつまんで説明するとこうなります。
いまから3万年後。太陽系とバーナード星系が接近し、文明衝突が起こって両文明とも滅びてしまうことが判明しました。銀河連盟平和調停委員会では銀河系最大のコンピュータである“銀河シミュレータ”を使ってあらゆる可能性を検討した結果、以下のことが明らかになりました。太陽系では惑星ドーラのアメン王子、そして地球のマチルダ博士の両名がいなくなるといずれ太陽系文明が自然消滅します。バーナード星系では、地球の両名に相当するのがバルタンとゼットンであることが分かっています。銀河連盟としては、この4名による惑星デスマッチを行うことによって将来起こるであろう文明間戦争を回避したい考えです。デスマッチの場となる惑星は銀河連盟が管轄するハドレー亜空間内にある惑星Qで、ここは時間の流れが通常空間とは異なるために、ここに送り込まれた者は、いくら時間を過ごそうとも元の時間に帰ることができます。ただし、帰れるのは相手2人が生命活動を停止した時だけです。なお、バーナード星系の2人は著名な格闘家であり、太陽系の2人にとっては限りなくハンディキャップが大きいので、デスマッチ開始前に銀河武道の達人フニャフニャ・フニャリン師によるトレーニングを用意してあります。

 読み終わったポロは、正確に23センチ4ミリ飛び上がって叫びました。
 
「わ〜! たいへんだ〜〜〜〜〜〜!」

 そして次の瞬間、ポロは見知らぬ場所にいました。
 そこは明るいような暗いような、暑いような寒いような、広場のようでもあり、洞窟の中のようでもあり、地面のない宇宙空間を漂っているようでもありました。

ポロ「あ、マチルダさん!」
マチルダ博士「ポロちゃん! あなたのところにも内容証明郵便が届いたの?」
ポ「そだよ。ポロたちどうすればいいの?」
マ「そうね、太陽系の運命が私たちにかかっているっていうことだけは確かだわ。ここはフェレル亜空間よ。これだけのことをするんだから冗談とは思えない」
ポ「ポロ、バーナード星系の格闘家と戦って勝てるとは思えないよ」
マ「もっと大きな問題があるわ。私は決して戦わないって決めているの。決めているなんていうと、自分で勝手に決めたみたいだけど、これが私の生きている根拠だから絶対に戦えないの。戦ったら死んじゃうのよ」
ポ「すごいパラドックスだ〜〜〜! これで太陽系はおしまいだ〜〜! ついにせんせいの曲は銀河系に進出せずに終わっちゃうのか〜」
誰か「そうとは限らん」

 つづく

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2007-01-08 ポロの日記 2007年1月8日(光曜日)知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その2

知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その2

 それは見たことのある、白くて長いあごひげをたくわえたおじいさんでした。

ポ「わ、サンタさん!」
サ「いかにも。ワシはクリスマス以外はフニャフニャ・フニャリンという名で、武道の師範をしておるのじゃ」
ポ「わあ、弱そうな名前だなあ」
サンタあらためフニャリン師範「マチルダ殿、ご安心なされ。ワシの武道は決して戦うことがない。そして、それこそ最強の武道なのじゃ」
マ「それはどういうことでしょうか」
フ「ワシの武道は“ヨケ道”というものじゃ。相手の攻撃をかわすことしかせんのじゃ」
マ「永遠にかわし続けることができれば相手は自滅。戦わずして勝てるということですね」
フ「そうじゃ。では、さっそく稽古を始めよう」

 すると、周囲は美しい高原の秋の景色になりました。

フ「散りかかる木の葉を全部よけるのじゃ。木の葉に触れると感電するから気をつけるようにのう」

 ポ「きゃあ〜〜!」

 さっそくポロは木の葉に感電して叫んでしまいました。

 来る日も来る日もポロたちは木の葉をかわし続けました。気がつくと、1ヵ月くらい経っていました。

ポ「フニャリン師範、こんなことをしていたら時間が足らなくなっちゃうよ」
フ「亜空間内では精神時間は流れても実時間と肉体時間は流れんのじゃ。だから、まだお前さんたちがここに来てから1秒だって経ってはおらん。安心して稽古に励め」

 ポロは釈然としなかったけど、3ヵ月が過ぎる頃には木の葉がゆっくりと落ちてくるように見えてきました。

フ「2人ともよくやった。次のシーンはこれじゃ」

 すると、あたりは雪景色となって、ちらほらと雪が舞い降りてきました。

サ「この雪片をすべてかわして見せよ」

 雪は、最初少ししか降ってきませんでしたが、1ヵ月もするとかなりたくさん降ってきました。ポロもマチルダ博士も何度も感電してきゃ〜きゃ〜叫びました。それでも3ヵ月が経つころには雪が止まっているように見えてきました。

フ「では、次の段階に進もう」

 雪は雨に変わりました。ポロたちは傘もさしていないのに、ぜんぜん濡れずにすみました。

ポ「マチルダさん、これじゃ傘屋さんは倒産しちゃうね」
マ「そんなことはないわ。いくらよけることができても、私は雨が降ったらちゃんと傘をさすもの」
ポ「そうだね」

 雨に変わって1週間後、ポロはフニャリン師範に質問しました。

ポ「師範。今は雨粒と雨粒の間によけるだけの隙間があるけど、ザーザー降りになってよけるところがなくなったら、いくら雨粒の動きが見えてもよけられないよ」

 すると、いきなり土砂降りになりました。ポロとマチルダ博士はたちまちびしょぬれになってしまいました。雨があがってから、フニャリン師範を見ると、ぜんぜん濡れていませんでした。

 つづく

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2007-01-08 ポロの日記 2007年1月8日(光曜日)知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その3

知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その3

フ「雨粒はワシの身体の細胞の隙間を抜けて行きおったのじゃ」

ポロたちは技の深淵をのぞき見た心地でした。

 それからも蚊の大群をかわす稽古、黄色スズメバチの群れの中を抜ける稽古、虎の群れの中をすり抜ける稽古、そして太古の恐竜ヴェロキラプトルの攻撃をかわす稽古などが続けられました。

 いつしか50年が過ぎようとしていました。

ポ「師範、ヨケ道の奥義は深く、いまだに最終到達点が見えてきません」
フ「そのようなものはない。じゃが、ワシはここまでたどりついた」

 そういうとフニャリン師範はピントの合わないホログラフィーのようにボケてゆらゆらした姿になりました。

マ「師範、まさかニュートリノをかわしているのでは!」
フ「さすがはマチルダ博士。そのとおりじゃ。ワシの身体を構成する分子ひとつひとつ、原子ひとつひとつがニュートリノをかわしておるのじゃ」

 ポロたちはヨケ道の奥の深さに戦慄したのでした。

 それから、さらに400年が経ちました。ポロもマチルダ博士も、自分の細胞ひとつひとつを感じられるようになりました。もはや一度に5000本の矢で射られても、その矢がポロたちを突き刺すことはありませんでした。機関銃の弾丸は、どれもカメの歩みのようにノロく、稲妻さえポロたちに近づくことはできませんでした。

 ある日、フニャリン師範が言いました。

 フ「2人ともよく頑張った。もはや銀河系に敵はない。相手がヨケ道の使い手でない限り勝負はあったも同然。しかし、やってみなければ分からないのが勝負の世界の常。くれぐれも気を抜かぬように」
ポ「はっ!」
マ「はい」

 次の瞬間、ポロは作曲工房に戻っていました。ちょうど23センチ4ミリの高さから、内容証明郵便を手に持ったまま床に着地しようとしていました。この手紙を読んでビックリして飛び上がっている間に長い夢を見ていたような気がしました。

 そして、ポロはハドレー亜空間にある惑星Qに運ばれました。

 それは惑星Qの熱帯雨林のようでした。いきなり巨木が倒れてきました。ゼットンの攻撃でした。ポロにとっては子どもだましのようなものでした。遠くでも木の倒れる音がしました。マチルダ博士がバルタンの攻撃をかわしているのでしょう。
 ポロたちが相手の攻撃をかわして退いているうちに、周囲は乾燥した砂漠地帯になりました。見晴らしが良くなったので、ポロとマチルダ博士はやっと出会うことができました。
 周囲には木も石もないので、ゼットンとバルタンは格闘戦をしかけてきました。ポロたちはそれらの攻撃を一度も受けることなく、退きつづけました。敵は、ポロたちの何十倍も体力を使っているのに疲れるそぶりを見せませんでした。

 つづく

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2007-01-08 ポロの日記 2007年1月8日(光曜日)知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その4

知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その4

 ステージは砂漠から草原へと移り、森林地帯に入りました。ゼットンとバルタンは美しい針葉樹林を破壊しながら、ついに惑星Qを4分の1周して凍てつく極地方にたどり着きました。疲れを見せなかったゼットンとバルタンでしたが、寒さが彼らの体力を急速に奪っていきました。ついに極地方の氷の上で、ゼットンとバルタンも凍りついて果ててしまいました。彼らの星では、なぜ銀河系最強と言われた彼らが破れてしまったのか謎となることでしょう。なにしろ、ポロたちは一度も戦わなかったのですから。
 でも、ポロも体力の限界を迎えていました。へなへなと座り込むと、動けなくなってしまいました。
 その時でした。立ち往生していたゼットンがポロに向かって倒れ込んできたのです。敵がいなくなって安心しきっていたポロは、そんなことに全く気がつきませんでした。

マ「ポロちゃん、危ない!」

 マチルダ博士が飛び出してきて、ポロをしっかりつかむと、こちらに向かって倒れ来るゼットンから離れようとしました。

 ぐわっしゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んんんんん!

 大音響とともにゼットンが氷の破片となって飛び散りました。そして、その破片はマチルダ博士の鎖骨を砕きました。ポロをつかんでいたために、いつもなら簡単にかわすことのできる小さな氷塊を避けきれなかったのです。

ポ「ゴメなさい、ゴメなさい! ポロがボケッとしてたからだよ!」
マ「そんなことないわ、ポロちゃんは、そんなに小さいのに全力を出しきって頑張ったわ。さすが王子さまよ」

 それからすぐにポロたちは通常空間に戻されました。
 地球は何の変化もありませんでした。ポロたちが地球を救ったということも、誰も知りませんでした。ま、いっか。
 でも、ひとつだけ変化がありました。

 それは“かちょうふうげつ”を見ればわかります。

 2007年1月7日
 いつも来て下さって、ありがとうございます。
 鎖骨を骨折して、しばらく右手が使えなくなりました。
 残念ですがしばらくお休みします。
 コメントもしばらく閉じさせていただきます。
 春までには再開できると思うので、お待ちいただけたらうれしいです。

 
 はやくよくなってね。

 おしまい

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ポロの道場

先頭 表紙

ポロはマチルダさんと一緒だったから修業もヘーキだったよ。はやくよくなってね〜! / ポロ ( 2007-01-10 00:52 )
つらい修行でしたね。文字にすると、かっこいいです!元気になりました。 / マチルダ ( 2007-01-09 14:50 )

2006-12-27 ポロの日記 2006年12月27日(波曜日)サンタさんの贈りもの その2

サンタさんの贈りもの その1

 ポロはサンタさんのクリスマスのお手伝いを終えて、宇宙そりのドレッドノート号(弩号)に乗って地球に向かっていました。

ポロ「サンタさん、いま、どのあたりを飛んでるの?」
サンタ「ドレッディ、今どこじゃ?」

 弩号の航法コンピュータ(カーナビみたいなやつ)が答えました。

ド「カマーク星系の外縁部を通過中です」
ポ「カマーク星系って“アグリー”のある?」
ド「アグリーという星名では認識されませんが惑星はいくつか存在します」
ポ「ねねねね! サンタさん、ポロ、アグリーっていう星に寄ってみたいな」
サ「どうしてじゃ?」
ポ「うん、かくかくしかじか」
サ「はっはっは、それはただの作り話じゃろう。・・・・・・いや、行こう。ドレッディ、変針だ。アグリーは、あるはずだ。今年最後のプレゼントを配るんじゃ」
ド「了解。たったいまアグリーを認識しました。カマーク星系の惑星アグリーに進路を変更します」

 弩号のトナカイ型ディーン・ドライブエンジンが、少しだけ高周波うなりを上げてそりは向きを変えました。

サ「で、それはどんな星なんじゃ」
ポ「えっとね。カマーク中央政府から遠く離れた辺境の農業惑星だよ。カラス麦が豊かに実って、村人たちは楽しそうに暮らしてるんだ」
サ「いい星じゃ」
ポ「ゴーヤ村っていう農村があってね、そこにはゴジャイとワンダっていう老夫婦がカラス麦を育てながら子どもや孫たちに囲まれて暮らしてるんだ」
サ「ますます、いい星じゃ」
ポ「でね、ゴーヤ村の広場には三河屋デリバリーサービスの“ペンデレツキ号”っていう宇宙船がカラス麦を買いつけに来るんだ。その船を操縦してるのはキャプテン・レンジャーっていうポロの知りあいなんだよ」
サ「うんうん。もっと話しとくれ」
ポ「午後になって日が傾くとカラス麦の穂が金色に光ってきれいに違いないよ」
サ「ドレッディ、ゴーヤ村の午後3時頃に到着時刻を設定するんだ」
ド「了解。ゴーヤ村の緯度と経度を検索します。・・・おや、ちょうど到着時刻が午後3時となるようです」
ポ「うれしいなあ」
サ「村にはどんな森や林があるんじゃ?」
ポ「えっとねえ、針葉樹の森と広葉樹の林が点在してるんだ、たぶん」
サ「それはいい。きっとスダジイもあるんじゃろうな」
ポ「うん、きっとあるよ。アグリースダジイっていう、いっぱい実のなる種類」
サ「では、リスや鳥たちも集まることじゃろう」
ポ「もちろん! 極楽鳥だって来るよ〜」
サ「そ、それは熱帯の鳥じゃろう」
ポ「いいの! アグリー極楽鳥はカラス麦と同じ気候帯に棲んでるの!」
サ「そうじゃった。地球ではないのだから少しも不思議ではないのう」
ポ「そ、そ〜だよ」
ド「お話のとちゅうですが、まもなくアグリーの管制空域に侵入します。いつものように不法侵入してよろしいですか」
サ「当然じゃ」
ド「ステルスモードに移行します」
サ「その必要はない。この星にはスペースガードシステムがないはずじゃ」
ド「了解」

つづく

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2006-12-26 ポロの日記 2006年12月27日(波曜日)サンタさんの贈りもの その2

サンタさんの贈りもの その2

 弩号キャビンのディスプレイに、地球によく似た星が小さく映し出されていました。

ポ「きれいな星だねえ」
サ「ああ、本当に美しい星じゃ」
ド「大型宇宙船が一隻赤道周回軌道にいます」

 拡大モードになったディスプレイには無塗装のチタン合金の大きな船体に“ペンデレツキ”の文字が読み取れました。

ポ「あ、三河屋デリバリーサービスのペンデレツキ号だよ。キャプテン・レンジャーが来てるのかも。偶然だなあ」
サ「まったくじゃ」
ド「ゴーヤ村への接近軌道に入ります」

 アグリーの成層圏を抜ける頃、空が明るくなりました。ポロたちの真下には広大な田園風景が広がっていました。

サ「よし、ドレッディ。高度2000フィートでゴーヤ村の上空を散策しよう」
ド「了解」

ポ「カラス麦畑が金色に光ってるよ!」
サ「ああ、いい眺めだ。ドレッディ、人気(ひとけ)のないところを見つけて着陸だ」
ド「了解。着陸します」

 弩号は広葉樹の林の中にある広場のようなところに降下しました。
 ポロとサンタさんは外に出て深呼吸すると、黄色く葉の色づいた広葉樹の林を見回しました。

ポ「わ、鳥がいる。極楽鳥じゃないか〜! ほら、やっぱりポロの言ったとおりだよ」
サ「そうじゃな」
ポ「リスがドングリを集めてるよ」
サ「何もかもポロどんの言うとおりじゃ。あっはっは」
ド「警告! 1マイル以内に人の気配です」
サ「よし、ポロどん。もうひと仕事じゃ」
ポ「うん」

 弩号は大空に舞い上がるとゴーヤ村の中心部を目指しました。
 遠くに広場が見えてきました。広場にはペンデレツキ号の着陸船があり、キャプテン・レンジャーらしき人影がカラス麦を買い取っていました。

サ「よし、派手に行くぞ。ドレッディ、スレーベルを鳴らすんじゃ」

-しゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃん!

 ポロは弩号キャビンのバックドアを開けると、大きな袋から光の粉を撒き始めました。
 すこしして、広場から人々の楽しそうな笑い声が聞こえてきました。

ポ「サンタさん、昼間に粉を撒くのって初めてだね」
サ「ああ、この星では何もかも初めてじゃ。あっはっは」

 その時、ポロはやっと気がつきました。
 贈り物をもらったのはポロだったのでした。

おしまい


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2006-12-17 ポロだよ

せんせいからもらったポロだよ。
そっ〜くりだ〜!


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2006-11-26 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第8回 忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その1

忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その1

 麦が豊かに実る季節。穏やかな日が続き、人々も幸せな日々を送っていました。
広大な領土を持つカマーク帝国の西の辺境にある農業惑星アグリーには、中央政府のある惑星カマークで起こりつつある不穏な政変の様子など微塵も感じさせない平和がありました。
 カマーク帝国の西部辺境星域を過ぎると、そこには未開の惑星がいくつかあり、昔からカマーク皇帝政府は次の征服目標としてそれらの星々を狙っていました。その中には太陽系も入っていましたが、まだ地球各国は、そのことには気づいていませんでした。しかし全く交流がなかったわけでもなく、惑星アグリーは首都惑星カマークよりも近いクリューガー60星系と交易関係を持っていました。クリューガー60の第2惑星には地球の裏神田政府が開拓した魅惑の町「クランベリーヒル」がありました。最近では人口も増え、三河屋デリバリーサービスの支社も置かれるほどの発展ぶりです。

 惑星アグリーでも、とりわけ広く田園地帯が広がる一帯の隅にあるゴーヤ村に、今日もカラス麦を買い付ける船がやってきました。
 三河屋デリバリーサービスの穀類専用運搬船“ペンデレツキ号”の着陸船がその船体を村の中央広場に横たえると、いつものとおり陽気なチャイムと元気な声が響きました。

「ぴんぽんぴんぽ〜ん! ちゃーす、三河屋でございやす!」

 農夫たちは収穫したてのカラス麦を荷車に積んで、つぎつぎと広場にやってきました。三河屋で毎年この時期だけ季節雇用されている、ペンデレツキ号パイロットのキャプテン・レンジャーは、広場に穀類用の3次元超長波計測器を持ち出して、持ち込まれたカラス麦の品質と重量を調べては、決められた価格どおりにイリジウム金貨で支払いを済ませていきました。太陽系は銀河系の中でもイリジウムが豊富で、カマーク帝国が太陽系を狙う目的のひとつにもなっていました。
 今年は例年になくカラス麦の品質が高く、三河屋クランベリーヒル支店がキャプテン・レンジャーのために用意したイリジウム金貨が、あやうく足りなくなるところでした。

「ありゃーたーした〜!」

 夕陽が傾き、涼風が吹き渡る頃、キャプテン・レンジャーは“ペンデレツキ号”着陸船の反重力エンジンに最大離陸パワーをかけました。全長100メートルを超える着陸船が風船のようにフワリと浮かび上がりましたが、見送る人々には炎も熱も巻き起こる風も吹きつけることがありませんでした。もう“ロケットの夏”など過去のものとなっていたのです。(2004年1月20日「ロケットの夏」参照)
 アグリー上空350kmの軌道上にある巨大な本船とドッキングするとペンデレツキ号はフォトン・エンジン駆動によってクランベリーヒルへと向かいました。船が惑星アグリーの離脱軌道を正確にたどっている事を確かめると、キャプテン・レンジャーは宇宙ラジオの周波数を「アマルテア放送局」に合わせました。いつも楽しみにしている「今日のお話」の時間は「レミングの恩返し」(“ポロのお話の部屋”2005年8月5日参照)でした。

つづく

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