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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

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2007-01-08 ポロの日記 2007年1月8日(光曜日)知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その3
2007-01-08 ポロの日記 2007年1月8日(光曜日)知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その4
2006-12-27 ポロの日記 2006年12月27日(波曜日)サンタさんの贈りもの その2
2006-12-26 ポロの日記 2006年12月27日(波曜日)サンタさんの贈りもの その2
2006-12-17 ポロだよ
2006-11-26 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第8回 忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その1
2006-11-26 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第8回 忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その2
2006-11-26 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第8回 忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その3
2006-11-26 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第8回 忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その4
2006-11-15 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第7回 花とひみつ作戦 その1


2007-01-08 ポロの日記 2007年1月8日(光曜日)知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その3

知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その3

フ「雨粒はワシの身体の細胞の隙間を抜けて行きおったのじゃ」

ポロたちは技の深淵をのぞき見た心地でした。

 それからも蚊の大群をかわす稽古、黄色スズメバチの群れの中を抜ける稽古、虎の群れの中をすり抜ける稽古、そして太古の恐竜ヴェロキラプトルの攻撃をかわす稽古などが続けられました。

 いつしか50年が過ぎようとしていました。

ポ「師範、ヨケ道の奥義は深く、いまだに最終到達点が見えてきません」
フ「そのようなものはない。じゃが、ワシはここまでたどりついた」

 そういうとフニャリン師範はピントの合わないホログラフィーのようにボケてゆらゆらした姿になりました。

マ「師範、まさかニュートリノをかわしているのでは!」
フ「さすがはマチルダ博士。そのとおりじゃ。ワシの身体を構成する分子ひとつひとつ、原子ひとつひとつがニュートリノをかわしておるのじゃ」

 ポロたちはヨケ道の奥の深さに戦慄したのでした。

 それから、さらに400年が経ちました。ポロもマチルダ博士も、自分の細胞ひとつひとつを感じられるようになりました。もはや一度に5000本の矢で射られても、その矢がポロたちを突き刺すことはありませんでした。機関銃の弾丸は、どれもカメの歩みのようにノロく、稲妻さえポロたちに近づくことはできませんでした。

 ある日、フニャリン師範が言いました。

 フ「2人ともよく頑張った。もはや銀河系に敵はない。相手がヨケ道の使い手でない限り勝負はあったも同然。しかし、やってみなければ分からないのが勝負の世界の常。くれぐれも気を抜かぬように」
ポ「はっ!」
マ「はい」

 次の瞬間、ポロは作曲工房に戻っていました。ちょうど23センチ4ミリの高さから、内容証明郵便を手に持ったまま床に着地しようとしていました。この手紙を読んでビックリして飛び上がっている間に長い夢を見ていたような気がしました。

 そして、ポロはハドレー亜空間にある惑星Qに運ばれました。

 それは惑星Qの熱帯雨林のようでした。いきなり巨木が倒れてきました。ゼットンの攻撃でした。ポロにとっては子どもだましのようなものでした。遠くでも木の倒れる音がしました。マチルダ博士がバルタンの攻撃をかわしているのでしょう。
 ポロたちが相手の攻撃をかわして退いているうちに、周囲は乾燥した砂漠地帯になりました。見晴らしが良くなったので、ポロとマチルダ博士はやっと出会うことができました。
 周囲には木も石もないので、ゼットンとバルタンは格闘戦をしかけてきました。ポロたちはそれらの攻撃を一度も受けることなく、退きつづけました。敵は、ポロたちの何十倍も体力を使っているのに疲れるそぶりを見せませんでした。

 つづく

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2007-01-08 ポロの日記 2007年1月8日(光曜日)知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その4

知られざる英雄たち 惑星デスマッチ編 その4

 ステージは砂漠から草原へと移り、森林地帯に入りました。ゼットンとバルタンは美しい針葉樹林を破壊しながら、ついに惑星Qを4分の1周して凍てつく極地方にたどり着きました。疲れを見せなかったゼットンとバルタンでしたが、寒さが彼らの体力を急速に奪っていきました。ついに極地方の氷の上で、ゼットンとバルタンも凍りついて果ててしまいました。彼らの星では、なぜ銀河系最強と言われた彼らが破れてしまったのか謎となることでしょう。なにしろ、ポロたちは一度も戦わなかったのですから。
 でも、ポロも体力の限界を迎えていました。へなへなと座り込むと、動けなくなってしまいました。
 その時でした。立ち往生していたゼットンがポロに向かって倒れ込んできたのです。敵がいなくなって安心しきっていたポロは、そんなことに全く気がつきませんでした。

マ「ポロちゃん、危ない!」

 マチルダ博士が飛び出してきて、ポロをしっかりつかむと、こちらに向かって倒れ来るゼットンから離れようとしました。

 ぐわっしゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んんんんん!

 大音響とともにゼットンが氷の破片となって飛び散りました。そして、その破片はマチルダ博士の鎖骨を砕きました。ポロをつかんでいたために、いつもなら簡単にかわすことのできる小さな氷塊を避けきれなかったのです。

ポ「ゴメなさい、ゴメなさい! ポロがボケッとしてたからだよ!」
マ「そんなことないわ、ポロちゃんは、そんなに小さいのに全力を出しきって頑張ったわ。さすが王子さまよ」

 それからすぐにポロたちは通常空間に戻されました。
 地球は何の変化もありませんでした。ポロたちが地球を救ったということも、誰も知りませんでした。ま、いっか。
 でも、ひとつだけ変化がありました。

 それは“かちょうふうげつ”を見ればわかります。

 2007年1月7日
 いつも来て下さって、ありがとうございます。
 鎖骨を骨折して、しばらく右手が使えなくなりました。
 残念ですがしばらくお休みします。
 コメントもしばらく閉じさせていただきます。
 春までには再開できると思うので、お待ちいただけたらうれしいです。

 
 はやくよくなってね。

 おしまい

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ポロの掲示板はここ。
ポロの道場

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ポロはマチルダさんと一緒だったから修業もヘーキだったよ。はやくよくなってね〜! / ポロ ( 2007-01-10 00:52 )
つらい修行でしたね。文字にすると、かっこいいです!元気になりました。 / マチルダ ( 2007-01-09 14:50 )

2006-12-27 ポロの日記 2006年12月27日(波曜日)サンタさんの贈りもの その2

サンタさんの贈りもの その1

 ポロはサンタさんのクリスマスのお手伝いを終えて、宇宙そりのドレッドノート号(弩号)に乗って地球に向かっていました。

ポロ「サンタさん、いま、どのあたりを飛んでるの?」
サンタ「ドレッディ、今どこじゃ?」

 弩号の航法コンピュータ(カーナビみたいなやつ)が答えました。

ド「カマーク星系の外縁部を通過中です」
ポ「カマーク星系って“アグリー”のある?」
ド「アグリーという星名では認識されませんが惑星はいくつか存在します」
ポ「ねねねね! サンタさん、ポロ、アグリーっていう星に寄ってみたいな」
サ「どうしてじゃ?」
ポ「うん、かくかくしかじか」
サ「はっはっは、それはただの作り話じゃろう。・・・・・・いや、行こう。ドレッディ、変針だ。アグリーは、あるはずだ。今年最後のプレゼントを配るんじゃ」
ド「了解。たったいまアグリーを認識しました。カマーク星系の惑星アグリーに進路を変更します」

 弩号のトナカイ型ディーン・ドライブエンジンが、少しだけ高周波うなりを上げてそりは向きを変えました。

サ「で、それはどんな星なんじゃ」
ポ「えっとね。カマーク中央政府から遠く離れた辺境の農業惑星だよ。カラス麦が豊かに実って、村人たちは楽しそうに暮らしてるんだ」
サ「いい星じゃ」
ポ「ゴーヤ村っていう農村があってね、そこにはゴジャイとワンダっていう老夫婦がカラス麦を育てながら子どもや孫たちに囲まれて暮らしてるんだ」
サ「ますます、いい星じゃ」
ポ「でね、ゴーヤ村の広場には三河屋デリバリーサービスの“ペンデレツキ号”っていう宇宙船がカラス麦を買いつけに来るんだ。その船を操縦してるのはキャプテン・レンジャーっていうポロの知りあいなんだよ」
サ「うんうん。もっと話しとくれ」
ポ「午後になって日が傾くとカラス麦の穂が金色に光ってきれいに違いないよ」
サ「ドレッディ、ゴーヤ村の午後3時頃に到着時刻を設定するんだ」
ド「了解。ゴーヤ村の緯度と経度を検索します。・・・おや、ちょうど到着時刻が午後3時となるようです」
ポ「うれしいなあ」
サ「村にはどんな森や林があるんじゃ?」
ポ「えっとねえ、針葉樹の森と広葉樹の林が点在してるんだ、たぶん」
サ「それはいい。きっとスダジイもあるんじゃろうな」
ポ「うん、きっとあるよ。アグリースダジイっていう、いっぱい実のなる種類」
サ「では、リスや鳥たちも集まることじゃろう」
ポ「もちろん! 極楽鳥だって来るよ〜」
サ「そ、それは熱帯の鳥じゃろう」
ポ「いいの! アグリー極楽鳥はカラス麦と同じ気候帯に棲んでるの!」
サ「そうじゃった。地球ではないのだから少しも不思議ではないのう」
ポ「そ、そ〜だよ」
ド「お話のとちゅうですが、まもなくアグリーの管制空域に侵入します。いつものように不法侵入してよろしいですか」
サ「当然じゃ」
ド「ステルスモードに移行します」
サ「その必要はない。この星にはスペースガードシステムがないはずじゃ」
ド「了解」

つづく

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2006-12-26 ポロの日記 2006年12月27日(波曜日)サンタさんの贈りもの その2

サンタさんの贈りもの その2

 弩号キャビンのディスプレイに、地球によく似た星が小さく映し出されていました。

ポ「きれいな星だねえ」
サ「ああ、本当に美しい星じゃ」
ド「大型宇宙船が一隻赤道周回軌道にいます」

 拡大モードになったディスプレイには無塗装のチタン合金の大きな船体に“ペンデレツキ”の文字が読み取れました。

ポ「あ、三河屋デリバリーサービスのペンデレツキ号だよ。キャプテン・レンジャーが来てるのかも。偶然だなあ」
サ「まったくじゃ」
ド「ゴーヤ村への接近軌道に入ります」

 アグリーの成層圏を抜ける頃、空が明るくなりました。ポロたちの真下には広大な田園風景が広がっていました。

サ「よし、ドレッディ。高度2000フィートでゴーヤ村の上空を散策しよう」
ド「了解」

ポ「カラス麦畑が金色に光ってるよ!」
サ「ああ、いい眺めだ。ドレッディ、人気(ひとけ)のないところを見つけて着陸だ」
ド「了解。着陸します」

 弩号は広葉樹の林の中にある広場のようなところに降下しました。
 ポロとサンタさんは外に出て深呼吸すると、黄色く葉の色づいた広葉樹の林を見回しました。

ポ「わ、鳥がいる。極楽鳥じゃないか〜! ほら、やっぱりポロの言ったとおりだよ」
サ「そうじゃな」
ポ「リスがドングリを集めてるよ」
サ「何もかもポロどんの言うとおりじゃ。あっはっは」
ド「警告! 1マイル以内に人の気配です」
サ「よし、ポロどん。もうひと仕事じゃ」
ポ「うん」

 弩号は大空に舞い上がるとゴーヤ村の中心部を目指しました。
 遠くに広場が見えてきました。広場にはペンデレツキ号の着陸船があり、キャプテン・レンジャーらしき人影がカラス麦を買い取っていました。

サ「よし、派手に行くぞ。ドレッディ、スレーベルを鳴らすんじゃ」

-しゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃん!

 ポロは弩号キャビンのバックドアを開けると、大きな袋から光の粉を撒き始めました。
 すこしして、広場から人々の楽しそうな笑い声が聞こえてきました。

ポ「サンタさん、昼間に粉を撒くのって初めてだね」
サ「ああ、この星では何もかも初めてじゃ。あっはっは」

 その時、ポロはやっと気がつきました。
 贈り物をもらったのはポロだったのでした。

おしまい


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2006-12-17 ポロだよ

せんせいからもらったポロだよ。
そっ〜くりだ〜!


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2006-11-26 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第8回 忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その1

忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その1

 麦が豊かに実る季節。穏やかな日が続き、人々も幸せな日々を送っていました。
広大な領土を持つカマーク帝国の西の辺境にある農業惑星アグリーには、中央政府のある惑星カマークで起こりつつある不穏な政変の様子など微塵も感じさせない平和がありました。
 カマーク帝国の西部辺境星域を過ぎると、そこには未開の惑星がいくつかあり、昔からカマーク皇帝政府は次の征服目標としてそれらの星々を狙っていました。その中には太陽系も入っていましたが、まだ地球各国は、そのことには気づいていませんでした。しかし全く交流がなかったわけでもなく、惑星アグリーは首都惑星カマークよりも近いクリューガー60星系と交易関係を持っていました。クリューガー60の第2惑星には地球の裏神田政府が開拓した魅惑の町「クランベリーヒル」がありました。最近では人口も増え、三河屋デリバリーサービスの支社も置かれるほどの発展ぶりです。

 惑星アグリーでも、とりわけ広く田園地帯が広がる一帯の隅にあるゴーヤ村に、今日もカラス麦を買い付ける船がやってきました。
 三河屋デリバリーサービスの穀類専用運搬船“ペンデレツキ号”の着陸船がその船体を村の中央広場に横たえると、いつものとおり陽気なチャイムと元気な声が響きました。

「ぴんぽんぴんぽ〜ん! ちゃーす、三河屋でございやす!」

 農夫たちは収穫したてのカラス麦を荷車に積んで、つぎつぎと広場にやってきました。三河屋で毎年この時期だけ季節雇用されている、ペンデレツキ号パイロットのキャプテン・レンジャーは、広場に穀類用の3次元超長波計測器を持ち出して、持ち込まれたカラス麦の品質と重量を調べては、決められた価格どおりにイリジウム金貨で支払いを済ませていきました。太陽系は銀河系の中でもイリジウムが豊富で、カマーク帝国が太陽系を狙う目的のひとつにもなっていました。
 今年は例年になくカラス麦の品質が高く、三河屋クランベリーヒル支店がキャプテン・レンジャーのために用意したイリジウム金貨が、あやうく足りなくなるところでした。

「ありゃーたーした〜!」

 夕陽が傾き、涼風が吹き渡る頃、キャプテン・レンジャーは“ペンデレツキ号”着陸船の反重力エンジンに最大離陸パワーをかけました。全長100メートルを超える着陸船が風船のようにフワリと浮かび上がりましたが、見送る人々には炎も熱も巻き起こる風も吹きつけることがありませんでした。もう“ロケットの夏”など過去のものとなっていたのです。(2004年1月20日「ロケットの夏」参照)
 アグリー上空350kmの軌道上にある巨大な本船とドッキングするとペンデレツキ号はフォトン・エンジン駆動によってクランベリーヒルへと向かいました。船が惑星アグリーの離脱軌道を正確にたどっている事を確かめると、キャプテン・レンジャーは宇宙ラジオの周波数を「アマルテア放送局」に合わせました。いつも楽しみにしている「今日のお話」の時間は「レミングの恩返し」(“ポロのお話の部屋”2005年8月5日参照)でした。

つづく

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2006-11-26 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第8回 忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その2

忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その2

 カラス麦をイリジウム金貨と交換して、ちょっとした財を蓄えた気分になった老いた農夫ゴジャイは、孫たちに何を買ってやろうかと笑顔を浮かべて家路につきました。
 家では、子どもや孫たちと一緒に、前世も夫婦だったのではないかと2人とも信じて疑わない老いた妻ワンダが得意のイワシ料理を用意して待っていました。惑星アグリーは、その昔、惑星“ドーラ”からの移民によって開拓された猫の星だったのです。
 家に戻ると、家族たちと夕食が待っていました。

ワンダ「おじいさん、成果はどうでしたか?」
ゴジャイ「ああ、去年よりもずっと高く売れたよ。今年一年は家族安泰じゃ」

 すると、息子のマクゴジャイが言いました。

マク「父さん、安泰じゃないかも知れないよ」
ゴジャイ「なぜ、そんなことを言うんだ」
マク「気がかりなことがあるんだ」
ゴジャイ「言ってみなさい」
マク「皇帝を倒そうという勢力が動きを早めているらしんだ」
ゴジャイ「それは本当か!」
マク「せっかく平和が続いているのに、反乱軍は帝国の領土拡大が遅いので苛立っているんだ」
ゴジャイ「もう、領土はいらんだろう」
マク「でも、太陽系を征服すればイリジウム鉱山を持つ小惑星がたくさん手に入る」
ゴジャイ「ということは、皇帝を倒した後、太陽系に近いアグリーが戦場の最前線になるということじゃな」
マク「そうだと思う」
ゴジャイ「反乱軍は太陽系を未開文明の地と思っておるのではないか?」
マク「そうだと思うよ。銀河連盟に入っていないし」
ゴジャイ「わしも詳しくは知らんが、三河屋のキャプテン・レンジャーという男と話した限りでは、地球は多くの国家に分裂しておって銀河連盟に参加する資格がないということじゃった。しかし、国家を超えた裏神田政府というものがあって、秘かにいろいろな星と交流しているらしい。そういう訳で科学技術については銀河連盟先進星レベルになっておる」
マク「ああ、三河屋の宇宙船を見ただけで分かるよ。しかも、あの大きさでも着陸モジュールだって言うじゃないか。噂じゃ、軌道上の本船はフォトン・エンジンを装備した超大型船らしいよ」
ゴジャイ「噂などではない。キャプテン・レンジャーもそう言っておった。それも、すべて一人で操船できるそうじゃ。太陽系は、そう簡単には攻略できんじゃろう」
マク「でも、反乱軍は皇帝を倒して正規軍を使えるようになったらやろうとするだろう」
ゴジャイ「愚かなことだ。また多くの死者を出す」

つづく

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2006-11-26 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第8回 忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その3

忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その3

 現在帝国を統治しているのは、太陽を意味する名を持つ“ラー皇帝”でした。
 ゴジャイは、若い頃“カマーク騎士団”に名を連ねる宇宙騎士でした。穏やかなラー皇帝は、領土拡大を続けてきたそれまでの政策をスローダウンして、帝国には、しばしの平和な時代が訪れていたのです。平和になると騎士団は解散し、騎士の多くは一般市民としてそれぞれの星に戻っていったのでした。
 その時ゴジャイの顔に浮かんだ微妙な表情を妻のワンダは見逃しませんでした。

 その晩、ゴジャイは夜更けまでコンピュータ・ネットワークに向かっていました。
 それから毎晩というもの、家族が寝静まると、ゴジャイは牧草サイロの地下にある格納庫で騎士団時代の古い宇宙船や気密戦闘服の整備にとりかかりました。それらは旧式になってはいましたが、いつでも使えるようにと、基本整備だけは欠かしたことがなかったのです。
 以前この星を担当していた三河屋の是輔(これすけ)という男から聞いた、名前は忘れたけれどドーラ防衛軍の一兵卒が改造した哨戒艇について、分かる事は全て調べあげていました。三河屋を通じて、すでにロビン・エンジンも手に入れ、自分の戦闘艇“スルバラン号”に搭載済みでした。(2005年9月27日“空飛ぶタブタ”参照)
 
 --なにせ、ここは辺境だからな。速くないと出遅れる・・・・

 スルバラン号のエンジンカバーを閉じると、ゴジャイは誰に言うともなく声に出しました。

 妻のワンダは、その日が来る事を覚悟していました。騎士の妻になったときから、ずっと予感していたことでした。

 ある日の夜明け、ゴジャイは地下格納庫と地上とを結ぶ扉を40年ぶりに開きました。物音に気づいた息子のマクゴジャイとその妻が外に出てきました。

マク「父さん、なにしてるんだ」

 目の前には、高校生だった頃、歴史の教科書に載っていた騎士団の戦闘艇がありました。

ワンダ「父さんはカマーク騎士団の一員だったのよ」
マク「・・・・・・・」
ゴジャイ「後のことは任せた。わしらは皇帝のために生きてきた。これからもそうだ」
マク「こんな旧式の戦闘艇じゃ反乱軍に太刀打ちできないよ。母さん、止めなくていいの!」
ワンダ「騎士にそんなことを言っても無理よ・・・」
マク「でも無謀すぎるよ。年寄りが一人、ノコノコ出かけて行ってどうなるっていうんだ」
ゴジャイ「カマーク騎士団を侮(あなど)るではない」
マク「ほかにもいるのか」
ゴジャイ「ああ、帝国のあちらこちらに生き残りがいる。一人残らず皇帝の元に馳せ参じるじゃろう。大丈夫、必ず戻る。今までも一度も戦場から戻らなかった事はない」

 そう言うとゴジャイは多少透明度の落ちた高密度樹脂の防弾気密へルメットをかぶってスルバラン号のコクピットに乗り込みました。

つづく

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2006-11-26 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第8回 忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その4

忘れられた英雄たち 外伝「老兵は死なず」その4

ゴジャイ「みんな家に入れ。こいつは反重力エンジンじゃないんだぞ」

 ワンダの目に涙が浮かびましたが、いつか夫は戻るという予感もありました。
 息子夫婦は目の前で何が起こっているのか、まだよく整理できていない様子でした。勤勉な農夫であり、誰よりも反戦平和主義者であった老いた父が、甲冑のような戦闘服に身を包んで戦場に向かおうとしているのです。
 
ワンダ「さあ、家に入りましょう」

 それから間もなく、夜明けのゴーヤ村にロビン・エンジンの轟音が響き渡りました。
音速を超えたのが思ったよりも早く、雷のように地上に襲いかかったソニックブーム(衝撃波面)がゴーヤ村周辺の人々を目覚めさせ、驚かせました。

 大気圏を抜けると、ゴジャイはコンピュータをネットワークに接続して仲間たちに呼びかけました。

「いざ、カマーク・ラー皇帝の元へ!」
「おう!」

 たちまち反応が返ってきました。
 ゴジャイは航法コンピュータが正確に惑星カマークを指していることを確かめ、あらためてスルバラン号の操縦桿を握りしめたのでした。

 完
 

 この物語は、これで終わりです。でも、もし皆さんが何ごともなくこれを読んでおられるとしたら、それはカマーク騎士団が反乱軍の制圧に成功した証に違いありません。 つい最近のできごとなので、まだ騎士ゴジャイ帰還の報は入ってきていません。でも、きっと生きて戻る事でしょう。ドーラの誇るタブタ2等空士の技術で守られたスルバラン号は、きっと惑星アグリーに向けて全速力で航行中のはずです。
 
 じゃあまた。


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Il Gatto Dello Sport(ポロ・プロジェクト)のメールアドレス

il_gatto_dello_sport@hotmail.co.jp

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2006-11-15 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第7回 花とひみつ作戦 その1

花とひみつ作戦 その1

 粋な女将の切り盛りする小料理屋「あじさい亭」(“味最低”とは単なる同音か?)の路地近くに、裏神田警察の対テロ工作部隊員の募集ポスターが張り出されていた。それを見たキャプテン・レンジャーは、ついに自分の居場所を見いだしたと思った。さっそくアメン王子(世を忍ぶ名を“ポロ”ともいう)を誘って応募した。

ポロ「やだよう、ポロはテロリストなんてコワいよ〜!」
レンジャー「だから、そんな奴らがコワくなくなる訓練を受けるんじゃないか」
ポ「やる、やるよ。テロリストよりも強くなっちゃえばコワくないもんね」
レ「そうとも、行くぜ」

 採用通知が届き、指定された日時に裏神田警察に出頭すると、2人は地下のアルマジロ防衛軍の訓練センターに行くように命令された。

 地下へ長い階段を降りて、ようやく訓練センターに到着すると、すぐにブリーフィングルームでガイダンスが始まった。教官はアルマジロ防衛軍のブッカー軍曹だった。

ブッカー「私が君たちの最初の訓練をするブッカーだ」
レ「・・上官なのに部下とはこれいかに・・・」
ブ「私語は慎め! 以後、このようなことがあったら全員モップ掛け10キロだ」
全員「し〜ん」
ブ「これから全員に制服と装備を整えてもらう。テロとの戦いは命がけだ、何も見落とすな、見過ごすな。装備は正しく、早く、的確に使ってこそ初めて活きる。では、装備担当教官の指示に従って完全装備の後、1時間後に再集合だ。以上解散」

 ポロとレンジャーは、総重量10キログラムほどの超軽量ステルススーツを着用すると、再びブリーフィングルームに集まった。

ブ「諸君。これからさっそく模擬戦を行う。裏神田の一部を実物大で再現した訓練用セットが用意されている。君たちにそこを警備してもらいたい。こちらで用意したテロリスト役の隊員が町の中央部、ちょうど裏しびれ大学から半径100メートル以内で照明弾を打ち上げる事ができたらテロ防衛失敗だ。町の大きさは一辺が約500メートル。君たちは中心部の100メートルを守るだけでよい。80名対ひとり。君たちに分があるはずだ。では、健闘を祈る」

 キャプテン・レンジャーは防衛側の指揮官に選ばれ、地図を元に隊員たちの配置を決めていった。勝手知ったる裏神田の町。ねずみ一匹通さぬような緻密な計画を見せられ、隊員たちはレンジャーの采配に歓声を上げて応えた。

 全員が配置につくと、どこからかブッカー軍曹の声が聞こえてきた。

ブ「諸君、テロリスト侵入60秒前だ。警戒を始めたまえ」

 全員が警棒と当たってもケガをしないワックス弾の入った銃を渡されてテロリストに備えた。
3分後、町の中央から照明弾が上がり、ポロたち警備隊を照らした。

ブ「訓練終了。テロリスト阻止は失敗した。新たな指揮官を選任して30分後の第2回の訓練に備えよ」

つづく

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