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ポロのお話の部屋

作曲家とむりんせんせいの助手で、猫の星のポロが繰り広げるファンタジーワールドです。
ぜひ、感想をお願いしますね。

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2006-11-15 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第7回 花とひみつ作戦 その4
2006-11-03 ポロの日記 2006年11月1日(波曜日)ポロ新国王の「戴冠宣言」その1
2006-11-02 ポロの日記 2006年11月1日(波曜日)ポロ新国王の「戴冠宣言」その2
2006-11-01 ポロの日記 2006年11月1日(波曜日)ポロ新国王の「戴冠宣言」その3
2006-09-30 ポロの日記 2006年9月30日(岩曜日)忘れられた英雄たち/太陽打ち上げ場編 その1
2006-09-30 ポロの日記 2006年9月30日(岩曜日)忘れられた英雄たち/太陽打ち上げ場編 その2
2006-09-30 ポロの日記 2006年9月30日(岩曜日)忘れられた英雄たち/太陽打ち上げ場編 その3
2006-07-27 ポロの日記 2006年7月27日(草曜日) ポロ・ワールド事典2006年版(データはすべて1月1日のもの)その1
2006-07-16 ポロの絵日記 2006年7月16日 日ようび
2006-07-15 ポロの絵日記 2006年7月15日 土ようび


2006-11-15 Il Gatto Dello Sport提供 お話の森 第7回 花とひみつ作戦 その4

花とひみつ作戦 その4

 すでに訓練生ではなく、正式な対テロ特殊部隊員となった彼らは、沈黙のうちに命令をすばやく飲みこみ、理解し、消化し、指令書を焼却炉に入れて灰にした。そして、その存在がなくなったことを確かめると装備を整えて、ひとり、またひとりと裏神田の町に散っていったのだった。
 それから彼らの姿を見た者は誰もいない。

 最初に変化に気づいたのは町の老人であり、子どもたちであり、猫たちだった。
 いつの間にか裏神田の町に花が咲き始めていた。この大通りにも、あの路地にも、手入れの行われていないはずの庭にも花壇にも、以前はなかった花が咲いていた。花は少しずつ増えていき、そうなると、忙しく働き回る大人たちも変化に気づき始めた。
 殺風景だった裏神田は心安らぐ、あるいは心浮き立つ場所へと徐々に変貌していった。
 裏神田に暮らす人、あるいは裏神田を訪れる人たちは、誰もが知らず知らずのうちに心が晴れるのを感じた。その人が善意を抱いていようと、悪意を持っていようと関係なかった。花は全ての人々の心に平和をもたらしたのだった。

 特殊部隊員たちは裏神田での作戦を終えると、ほかの町へと旅立ったとも言われている。皆さんのまわりで、いつのまにか庭に花が咲いたり、あるいは以前よりも花が増えたり、しおれかけていた花が元気を取りもどしたりすることがないだろうか。
 ひょっとすると、それは裏神田対テロ特殊工作部隊員のせいかもしれない。



作者注:この話は、星新一著「きまぐれロボット」に収められた「花とひみつ」に着想を得て書かれたものです。


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2006-11-03 ポロの日記 2006年11月1日(波曜日)ポロ新国王の「戴冠宣言」その1

ポロ新国王の「戴冠宣言」その1

 ポロは来るべき王位継承の日にそなえて、戴冠宣言の原稿を書いてみました。とむりんせんせいの受け売りだけど、ドーラ国民はきっと共感してくれると思うな。じゃあ、読んでね。


 ドーラ国民のみなさん。
 今日、王位を継承し、国王となったトゥトゥ・アンク・アメンです。
 地球留学中はポロと呼ばれていました。とても愛着のある名前なので「ポロ国王」とよばれてもかまわないからね。
 ポロは地球でとてもたくさんのことを学びました。それをドーラの将来のために生かしたいと思ってます。
 この世で一番大切なものは“命”です。
 立法や法の執行はもちろんのこと、ドーラの猫々の生活の隅々にまで、この考えが浸透し、行きわたらなくちゃなりません。安全に気を使うとか、そんな単純なことじゃありません。命の大切さに誰もが気づくことです。そうしないと、ただの言葉になってしまいます。それをドーラ全国民が理解した時、はじめて真の平和が訪れます。
 そして国づくりです。ドーラ中に“高速自転車道”を整備します。別に速く走る必要はありません。快適で限りなく平坦な自転車と徒歩、そしてクルマ椅子などのための専用道路です。こんな快適な道路があったら、多くの猫が高速自転車道を利用したくなることでしょう。きっと快適で素敵な自転車も開発されるに違いありません。国は、この道路の使用を強制したりしません。もし、利用率が低ければ、それは道路に何かよくないことがあるのです。そういう時には、ポロたち王室と議会は全力をあげて道路の改良にとりくみます。
 この道路は他のどんな交通にも優先します。今、自動車道路を横切るためにドーラ国民は信号待ちをして、決して安全とは言えない横断歩道を渡ったり、わざわざ歩道橋を昇り降りしています。でも、これからは違います。自動車なんてアクセルを踏めば簡単に陸橋をオーバーパスし、地下道をアンダーパスすることができます。それに高速自転車道をオーバーパスする陸橋はとても低くて建設コストも高くないことでしょう。それでも大きな予算が必要です。その予算はどうするか。それは簡単なことです。
もし、快適な高速自転車道が整備されたならば、自転車に乗る国民が増えることでしょう。石油消費量が減って、資源の少ないドーラとしては大変よいことです。でも、多くの国民が自転車に乗ることによって得られる最大の恩恵は健康です。現在ドーラの医療費は莫大な金額にのぼっています。これが劇的に減ることが期待されるのです。減った医療費は道路建設費を上回ってお釣りがくるかも知れないという試算さえあります。
 自転車に乗れない猫もいます。高齢猫、障害猫、病猫などの方々です。ポロたちはいつかは歳をとります。だから、これは国民全員の問題です。障害猫と聞くと特別な事情を思い浮かべるかも知れませんが、世の中には、まったく正常で何から何まで平均である猫などいません。だから、これも全ての猫の問題です。同じように病気だって全国民の問題です。

つづく

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2006-11-02 ポロの日記 2006年11月1日(波曜日)ポロ新国王の「戴冠宣言」その2

ポロ新国王の「戴冠宣言」その2

 そういう猫たちのために路面電車をさらに充実させます。新しい路面電車は超低床型で、道路からクルマ椅子のまま簡単に乗り降りでき、目的地に到着するまでクルマ椅子をしっかりと固定する着脱装置を備えています。路面電車にも乗れない猫のためには、国が国費で補助する格安介護タクシーを走らせます。障害が外出の妨げにならない社会こそ高度な社会です。
 映画館、劇場、スポーツ施設、遊園地などの前売り券には路面電車の乗車券をつけて売り出します。これでまた自家用車の使用が減ることでしょう。付属する乗車券は翌日まで有効で、応援するサッカーチームが勝利した時には仲間と夜通し飲み明かしてもダイじょぶです。みんなが公共交通機関を使うようになれば、都会の中心街の駐車場が少なくてすみます。ということは、そういう土地や空間が今よりももっともっと有効利用できるということです。ぜひ緑も増やしましょう。
 このような政策をとるようになれば国民ひとりひとりの考えも次第に変わってくることでしょう。
 それに大きく関わるのが教育問題です。義務教育を単純な年限制に変更します。これはピアノのレッスンと同じです。誰もが横並びに2年生になったら2年生の勉強をするのではなく、9年間、それぞれがきちんと理解に応じて進めるところまで勉強するという制度です。全然分からないのに机に向かって座っている必要はありません。分かるところを勉強してもらいます。勉強の中身も横並びではありません。基本的な読み書き計算以外は、それぞれが自分に合った分野の勉強をしてもらいます。やりかたも自由です。どんどん先へ進んでもよいし、進まずに、より深く追及してもよいのです。ピアノだって練習曲の番号が先へ進んでいる猫が上手なわけではありません。深く理解している猫こそが上手なのです。だから、進みかたの速さを競うような馬鹿げた考えは新しい学校制度では通用しません。歴史年表を全部覚えたところで歴史に詳しくなれたり、理解できたりするものではないのです。
 義務教育の9年を過ぎたら無料ではなくなりますが、もっと勉強してもよいし、仕事に就いてもよいでしょう。義務教育の9年間の中にはマイスターなどの技術者を目指す授業も盛り込まれます。みんな自分に合った方法で勉強してもらいます。大学へ進学したら就職に有利などと言うの幻想に過ぎません。ドーラ教育省は成績がよい猫よりも、優れた技術を身につけたり、真実を見極めることのできる猫を育てなければならないのです。だから、一度社会に出て何歳になっても学校に戻ってくることができます。勉強は必要だと思った時が一番に身につくからです。

つづく

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2006-11-01 ポロの日記 2006年11月1日(波曜日)ポロ新国王の「戴冠宣言」その3

ポロ新国王の「戴冠宣言」その3

 企業における定年制度も廃止します。働きたい猫は働ける限り働けばいいでしょう。しかし、実際に仕事ができないのにただ働きたいというだけでは、逆にマイナスになってしまいます。そういう猫は過去に積み上げた技術や経験を後進に伝える仕事に就くのはどうでしょうか。教育だけでは伝えきれず、伝承によってのみ存続する技(わざ)や知識もあることでしょう。要するにドーラ社会全体が教育したり啓蒙したり伝承したりする力を持つようになるのです。
 ドーラの基幹産業は農業です。農業こそドーラの国力の源(みなもと)です。だからといってドーラは、どの職業をも優遇したりしません。仕事に対する対価が公平に得られる社会でなければならないからです。でも、ポロたちが豊かに暮らしていくための基幹産業は農業です。そのためにはドーラの自然を守り、大切にしなければなりません。美しい自然を持つ星だけに本当の農業が育ち、根付きます。
 その美しいドーラを守るために、自然界には存在しない化学物質の放出を禁止します。自然界の持つ微妙なバランスを崩すような開発も禁止です。たとえ今は多少不便でも将来子々孫々に遺恨を残すようなことは一切してはなりません。ポロたちの星ドーラは、なん百まん年経っても美しくあらねばならないからです。
また、単に楽ができるという理由で発達したさまざまな道具が人々の健康を妨げたりすることもありました。便利だからという理由で使われるようになった道具が人々から技術を奪ってしまうということもありました。ドーラ国民は生きていくための最低限の知恵と力だけは失ってはなりません。

 最後に付け加えければならないことがアリます。
 それは、みなさんが王室や政府に頼りすぎてはいけないということです。「王室や議会は何をやってるんだ〜!」とか言ってないで、たとえば自転車道に雨の日も快適に走れるように片側に屋根をつけようとか、よくないところを変えていこうとか自分たちで考えて行動してください。
 だから選挙のときにもよく考えて投票しましょう。お金持ちの候補者に投票すれば、お金持ちの考えで政治をおこなうことでしょう。普通の人に投票すれば普通の人としての考えで政治をおこなうことでしょう。ドーラ社会の成熟度は議会がドーラ社会の縮図であるかどうかで決まります。公平に行われた選挙の結果、雄雌(オス・メス)比率、職業比率などが実社会に近くなれば、それこそがドーラ社会の成熟、そして猫民度の高さを表すものとなります。
 きっとドーラをいい星にします。きっとしますから皆さん応援してください。

おしまい



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2006-09-30 ポロの日記 2006年9月30日(岩曜日)忘れられた英雄たち/太陽打ち上げ場編 その1

忘れられた英雄たち/太陽打ち上げ場編 その1

 まだ天動説の時代のことです。
 ポロは東の海の果ての島にあるお日さまを作る工場(こうば)で働いていました。
 まだ春先でしたが、工場では夏至に打ち上げる大きなお日さまづくりが始まっていました。当時、お日さまの寿命は一日しかありませんでした。そのため、毎日新しいお日さまが必要だったのです。

親方「いいか、夏至のお日さまは一番長く燃えていなければならないんだ。なるべく炭をぎゅうぎゅう詰めにするんだ。いいな」
職工たち「へい!」

 お日さまは炭で作られます。夏用と冬用では使う炭がちがいました。夏はウバメガシの炭を使いますが、冬は松やガジュマルのような南洋材の炭も使います。
 お日さまは、ちょうど打ち上げ花火のような球形をしています。でも、大きさがケタ違いです。平均すると1個5メートルくらいあります。だから、とてもたくさんの炭を使います。炭だけでは全部燃えないので、硫黄や硝石の粉も加えます。この配合はとても難しくて、ちょっとでも間違えると爆発してしまいます。

 次の日の明け方、ポロはお日さまの打ち上げ当番のひとりでした。お日さまは井戸のような穴から打ち上げます。穴は全部で183個あって、それぞれ穴の角度が微妙に異なります。ひとつの穴は1年に2回使います。
 ベテラン打ち上げ職人のヴァッザーリが、今日使う穴に打ち上げ用の火薬をセットしました。こちらは爆発しなければならないので爆薬です。ポロたちヒラの職工は丸太を三つ又に組んだ人力クレーンで春用の太陽を穴の底にに静かに降ろしました。
 ほどなく、計時係のダヴィッドが秒読みを始めました。

ダヴィッド「じゅーきゅーはちななろくごおよんさんにいいちぜろ!」

 点火係のカラッチが火打ち石で導火線に火をつけました。

 しゅるるるるるる・・・・・。

 導火線の火は、どんどん太陽に近づいていきます。ポロたちは安全な塹壕に隠れます。打ち上げ用の火薬に火がつくと、大きな音とともにお日さまが空に打ち上げられます。お日さまは打ち上げられてすぐに燃え始め、炎の直径は何十メートルにもなります。これから、西の果てにある結晶谷に落ちるまで、空を飛び続けるのです。

ヴァッザーリ「よし、みんなよくやった。これで今日も地上は明るい光で満ち、作物も育ち、花も咲くことだろう。ご苦労だった」
職工たち「おう!」

 お日さまは打ち上げられた直後に大きな炎の球体となります。炎の直径は数百メートルになります。最初は打ち上げ用の爆薬の炎の影響でお供え餅のような形になります。だから海を超えて日の出を見るとお日さまに台座がついたように見えます。そのうち、太陽は台座の炎から離れて水平線上に浮かびます。
 最初の頃は炎の温度も低くて、ちょっと赤っぽい色ですが、しばらくすると明るいオレンジ色になってきます。空高く上がる頃にはお日さまは地上から遠くなって小さく見えるようになります。お昼ごろには一番よく燃えて地上も暑くなります。日の出や夕方、お日さまが大きく見えたり、お昼ごろになると暑くなるのはそういうわけがあったのです。

つづく

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2006-09-30 ポロの日記 2006年9月30日(岩曜日)忘れられた英雄たち/太陽打ち上げ場編 その2

忘れられた英雄たち/太陽打ち上げ場編 その2

 さて、打ち上げが終わると夏至の頃に使われる“熱い”お日さま作りの作業が始まります。夏至タイプは6月第2週頃から7月初めまで使われます。作るには冬至タイプの2倍の炭と3倍の工程数が必要です。

 工場の責任者はデューラー親方でした。ヒゲづらのがっしりとした体格で、とても大きな声でした。

親方「誰だ、この夏至前日用の真ん中の炭詰めをやったのは?」
ポロ「はい、ポロです!」
親方「こんなにスカスカじゃ、日当たりが悪くて作物がそだたないぞ!」
ポロ「ハイ! 詰め直します」
親方「おまえの頭と技術の全てを注ぎ込め!」
ポロ「イエッサー!」

 お日さまの中心には直径30センチくらいの芯となる炭玉があります。厚紙でできた2つの半球に炭をぎっしりと詰めて張り合わせるのです。ポロは、それを作っていたのでした。でもポロは体重が軽いので、いくら足で踏み固めても炭はきっちりと固まりません。それで、ポロは杭打ち用の大きな木づちを持ってきて叩いて炭を詰めることにしました。

 ガツン!

 と木づちを振り降ろすと、炭玉が爆発しました。

 どっか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!

 何十人も働く工場は騒然となりました。すぐに親方がやってきて、黒猫になったポロに向かって怒鳴りましたが、ポロは耳がき〜んとなって、しばらく何も聞こえませんでした。

 幸い、ほかの作りかけのお日さまは誘爆しなかったので最悪の事態は避けられましたが、作業用の治具や道具がいくつも壊れてしまいました。それ以来、工場でのポロの立場はとても悪くなりました。
ポロは、それを挽回しようと、毎日残業して壊れた道具の修理や治具の組み立てをしました。そんなとき黙って手伝ってくれたのがデューラー親方でした。そんなわけで、口は悪いし短気だけど親方はみんなから信頼されていました。

 時は過ぎて、いよいよ“芒種”(ぼうしゅ)という夏至の前の季節がやってきました。芒種の頃のお日さまは「芒種玉」と呼ばれます。芒種玉ともなると、お日さまは今までに比べて格段に大きく重くなり、ほとんど夏至玉と同格で、打ち上げ作業もとても難しくなってきます。

 今年初めての芒種玉打ち上げの夜明けがやってきました。
 芒種用の打ち上げ穴は垂直にちかく掘られています。動滑車を使った人力クレーンを使っても、何十人もの力が必要でした。とくに打ち上げ用火薬の量が多いので、どすんと落としてしまったら爆発してしまうかも知れません。

 無事、芒種玉のお日さまは打ち上げ穴の底に収まりました。

 計時係のダヴィッドがカウントダウンして、点火係のカラッチが火打ち石で導火線に火をつけました。

 ・・・・・・・・・。

 しかし、お日さまは空に上がりませんでした。導火線の火が消えてしまったのです。

つづく

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2006-09-30 ポロの日記 2006年9月30日(岩曜日)忘れられた英雄たち/太陽打ち上げ場編 その3

忘れられた英雄たち/太陽打ち上げ場編 その3


カラッチ「導火線が不良品だ。導火線を作ったのはパンニーニじゃないのか?」
親方「そんなことを言っているヒマはない。お日さまの打ち上げを遅らせるわけにはいかんのだ」

 デューラー親方は自分の身体にロープを結びつけると、みんなに言いました。

親方「今から穴に入って残った導火線に火をつけてくる。合図をしたらすぐに引き上げてくれ」
カラッチ「親方、点火係は俺です。行かせてください」
パンニーニ「導火線の責任は自分にあります。自分が行きます」
親方「一刻を争うんだ。今、ロープを身につけているのはワシだけだ」

 親方はカラッチから火打ち石を受け取って穴に入っていきました。

 みんな、しっかりとロープを握って親方の合図を待ちました。合図があったら力の限り引っ張るためです。
少しして穴の底から声がしました。

親方「よしいいぞ。引いてくれ!」

 誰もが力の限りロープを引きました。

 ぶちっ!

 すると、にぶい音とともにロープが切れました。ロープを引いていた者たち全員がひっくり返ってしまいました。
 すぐに立ち上がったカラッチ別のロープを持って穴に垂らしました。

カラッチ「親方、つかまってください。すぐに引き上げます!」
親方「ダメだ。間に合わない。お前たち、すぐに塹壕に避難するんだ。炎にやられちまうぞ!」

 パンニーニが叫びました。

「みんな、すぐに避難しろ!」

 ポロたちは後ろ髪を引かれる思いでしたが、塹壕に向かって走りました。そのとき、パンニーニはカラッチとともに親方を助けようと穴のふちで最後の力をふりしぼっていました。

 ポロたちが退避用の塹壕に飛び込むと同時に、あたり一帯に爆発音が響き渡りました。

 どぅおおおおおおを〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んんんんんんん!!

 明るく熱い芒種のお日さまは、何ごともなかったかのように空に浮かび上がりました。

 すぐにポロたちは塹壕を出て打ち上げ穴に向かいましたが、熱くて近づくことさえできませんでした。温度が下がってから、みんなで親方やカラッチ、パンニーニを探しましたが、どこにもいないばかりか、骨ひとつ見つかりませんでした。

 それから約千年後、1543年5月24日に太陽打上場が廃止となりました。永久太陽が発明されて「地動説」の時代となったからです。
 今ではお日さまを作る技術も失われ、デューラー親方やカラッチやパンニーニのように命がけで太陽を燃やし続けた人たちのことを覚えている人はだれもいなくなってしまいました。

おしまい



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2006-07-27 ポロの日記 2006年7月27日(草曜日) ポロ・ワールド事典2006年版(データはすべて1月1日のもの)その1

ポロ・ワールド事典2006年版(データはすべて1月1日のもの) その1

 お話の部屋ことや、裏作曲工房のことがなんでもわかるエンサイクロペディアだよ。ABCやアイウエオ順じゃないからね。

 ポロ 猫 ♂ ドーラ歴で3000歳くらい 地球の年齢だとまだ若者
本名「トゥトゥ・アンク・アメン」。「トゥトゥ」は「チュチュ」みたいに短く読んでね。冥王星よりも遠いところを回る小さな星「ドーラ」第17王朝の第1王子。父親は賢王と名高いトトメス152世。わけあって10年前に地球にやってきて作曲工房に居候している。

 せんせい 天才無名人気作曲家 ♂ かれこれ半世紀。
作曲工房主宰。ポロはせんせいから「本当のこととは何か」を学んだ。とゆーか、せんせいはみんなに「本当のこととは何か」を伝えるために存在している。せんせいは過去に奥さんと一緒に英雄ジョーンズを育てるという偉業をなしとげた。

 松戸博士 マッドサイエンティスト ♂ 70歳くらい
せんせいと仲良しの科学者。バック・トゥ・ザ・フューチャーのドクみたいな人。クランベリーヒルの「猿雅荘」で暮らしている。(はず)

 ロケット号 アヒル型のお風呂スポンジ ♂ 製造年は1990頃らしい
クランベリーヒルに住むマーリンという魔法使いによって命を吹き込まれて以来、せんせいファミリーの大事な家族になった。料理名人。でも、地球ではただのスポンジに戻ってしまうので、今はクランベリーヒルで松戸博士と生活。

 ジョーンズ 猫の英雄 ♂ 故猫
猫の星では教科書にも載っている偉大な猫。ジョーンズのあとにせんせいファミリーにやってきたポロは、同じ猫としてつらい立場にある。ジョーンズの冒険物語には悲しすぎる内容のものもあって、すべてが公開されているわけではない。

 銀河連盟
銀河系の知的生命による政府はお互いに協力しあって宇宙のさまざまな危機に対応しているんだけど、地球はまだ文明レベル(地球人が考えるのと少しちがう基準だよ)が低いので加盟が認められていない。銀河連盟の本部は惑星ミネルヴァにある。

 裏神田共和国 世界統一政府 国連未加盟
レベルが高すぎて(?)、現実世界からはみ出してしまった人たちが作った政府。世界中に広がる組織で地球に一つなので銀河連盟に加盟を認められている。作曲工房関係者は望めば誰でも裏神田国民になれます。

 クランベリーヒル クリューガー60第2惑星にある分譲地の名前 10年前までせんせい家族が住んでいた。ポロは、この時代のことを話で聞いているだけで知らない。すっごく楽しそうなのでちょっとくやしい。

 レッドツェッペリン号
ポロの自家用飛行船。松戸博士考案。

 シュレーディンガー商会
裏神田商店街の裏道に面した謎のお店。店主は松戸博士の弟の松戸修士(まつど・しゅうじ)さん。松戸博士が発明した、チョーすごいものを売っている。ポロは、ここで500まん円もする波動エンジンを買って、それが全部借金なので返済に苦労している。


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2006-07-16 ポロの絵日記 2006年7月16日 日ようび






ポロがシティアートと漬け物と五重塔の研究を終えて作曲工房に帰ると、たろちゃんが夕ごはんを作って待っててくれた。





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2006-07-15 ポロの絵日記 2006年7月15日 土ようび






たろちゃんに弟子入りして自信をつけたポロは、さっそく裏神田しびれ大学の路地裏でシティ・アートに挑戦してみた。絵はうまく描けたけど、名前のPとB、LとRをまちがえた。絵だけを勉強してもダメだとわかった。おなかもへった。芸術とはおなかが減るものだ。





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